以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態の一例を詳細に説明する。
最初に、本実施形態に係る粉塵抑制システムが使用される作業現場について説明する。
作業現場100には、図1に示す如く、周囲に足場120が組まれ、足場120の外側に養生シート122が取付けられている。足場120の内側の作業現場100には解体対象物である建築物104が位置している。建築物104では、後述する粉塵抑制システム130の流体放出機132から散布された流体FDの被覆した部分(包囲部分)である作業箇所102が、作業機械110で解体される。作業機械110は、例えば、無限軌道で方向自在に移動可能とされている。作業機械110には運転室112が設けられている。運転室112から、アーム116の先端に設けられた作業部118と、無限軌道と、を自在に操作することができる。本実施形態では、作業部118は圧砕機であり、作業機械110はいわゆる「クラッシャー」とされている。なお、運転室112に持ち込まれた送信機134(図5(A))で流体放出機132を遠隔制御することができる(送信機134は、運転室112の外部で、操作されていてもよい)。なお、作業箇所102は、作業部118が建築物104に直接的に接する部分を含む、作業部118の解体によって粉塵が直接的に発生する箇所をいう。また、流体FDは少なくとも、水、或いは泡状物を含むようにされている。即ち、流体FDは、水、水溶液(泡状物の原液を含む)、水と他の物質の混合物であればよい。或いは、流体FDは、気泡を含む流動性のある泡状物であればよい。
次に、本発明に係る粉塵抑制システム130の概略構成について、図1、図2(A)、(B)を用いて説明する。
粉塵抑制システム130は、1台の送信機134(図5(A))による遠隔操作によって建築物104の作業箇所102に対して粉塵の発生を抑制可能な流体FDを放出する1台以上の流体放出機132を有している。ここで、流体放出機132は、送信機134からの送信信号STを受信して流体FDの放出する方向を制御する制御機構146と、制御機構146を自身の径方向内側及び上下方向内側に脱着可能に支持する支持フレーム172と、を備える。なお、本実施形態では、送信機134と受信機148とは、電波法令で定められた特定小電力無線局の規格に準拠して出力と周波数とが定められている。このため、送信機134を流体放出機132から50m〜100m離して遠隔操作とすることができる。また、本実施形態では、流体放出機132は、大きさが1m未満(例えば直径300mmφ、H600mm)で重量が数10kg程度(例えば20kg)とされている。
以下、送信機134と流体放出機132の各構成要素(部材)の詳細について説明する。
前記送信機134は、図5(A)に示すような携帯可能な直方体形状とされており、図3(A)に示す如く、制御信号入力部136とCHセレクタ138と局部発振器140と変調回路142とを有する。なお、図5(A)において、符号PSWは、電源装置144のON/OFFを行うスイッチである。
制御信号入力部136は、図5(A)に示す如く、2つの左右方向回転指示ボタン136Aと、2つの上下方向傾斜指示ボタン136Bと、2つの開閉指示ボタン136Cと、を有する。左右方向回転指示ボタン136Aは、回転部材176の右回転を指示する信号を出力するボタンと、回転部材176の左回転を指示する信号を出力するボタンと、を備える。上下方向傾斜指示ボタン136Bは、放出ノズル178D(後述)の水平方向に対する傾斜角度θ(図4(A))を大きくすることを指示する信号を出力するボタンと、放出ノズル178Dの水平方向に対する傾斜角度θを小さくすることを指示する信号を出力するボタンと、を備える。開閉指示ボタン136Cは、弁駆動装置170の開閉弁170Aの開状態を指示する信号を出力するボタンと、開閉弁170Aの閉状態を指示する信号を出力するボタンと、を備える。このため、制御信号入力部136は、図3(A)に示す如く、いずれかのボタンを作業者が押している間は、そのボタンに対応した制御信号SC(6ビット信号)が制御信号入力部136から出力される。
CHセレクタ138は、図5(A)に示す如く、周波数セレクタ138Aと番号セレクタ138Bとから構成され、制御対象とする流体放出機132を特定する信号を出力する。周波数セレクタ138Aは、図3(A)に示す如く、局部発振器140で扱われる特定の周波数帯域内に設けられた複数のキャリヤ周波数fi(本実施形態ではi=1〜4)のうちの1つのキャリヤ周波数fiを定める出力をする。番号セレクタ138Bは、流体放出機132を特定するための番号j(本実施形態ではj=1〜4)のうちの1つの番号を定める出力をする。このため、CHセレクタ138の選択で、最大16(=4*4)台の流体放出機132を識別でき、流体放出機132それぞれに異なる制御信号SCを送信することが可能である。本実施形態では、制御信号入力部136の6ビットの制御信号SCと番号セレクタ138Bの2ビットの識別信号SD1とから8ビットの送信信号STを生成している。
局部発振器140は、図3(A)に示す如く、CHセレクタ138の出力に接続され、周波数セレクタ138Aで定められたキャリヤ周波数fiを生成し出力する。
変調回路142は、図3(A)に示す如く、制御信号入力部136の出力、CHセレクタ138の出力、及び局部発振器140の出力に接続されている。変調回路142は、送信信号STでキャリヤ周波数fiを変調し電波として、アンテナから放射させる構成となっている。なお、電源装置144は、具体的には、各種電池であり、送信機134の上記各構成要素に必要な電力を供給する。
前記制御機構146は、図3(B)に示す如く、受信機148と、制御装置156と、第1回転装置166と、第2回転装置168と、弁駆動装置170と、を備える。
受信機148は、図5(B)に示すような直方体形状とされているが、図4(B)、(C)では、受信機148は制御装置156と一体構成とされている。受信機148は、図3(B)に示す如く、CHセレクタ150と局部発振器152と復調回路154とを有し、送信機134からの送信信号STを受信する。なお、図5(B)において、符号PSWは、電源装置164のON/OFFを行うスイッチである
CHセレクタ150は、図5(B)に示す如く、周波数セレクタ150Aと番号セレクタ150Bとから構成されている。周波数セレクタ150Aと番号セレクタ150Bは、周波数セレクタ138Aと番号セレクタ138Bと同一の機能なので、説明は省略する。なお、番号セレクタ150Bは、制御装置156に2ビットの識別信号SD2を出力する。また、図3(B)に示す局部発振器152も、局部発振器140と同一の機能なので、説明は省略する。
復調回路154は、図3(B)に示す如く、アンテナで受信した電波を復調して、8ビットの受信信号SRを制御装置156に出力する機能を有する。つまり、周波数セレクタ150Aで特定されるキャリヤ周波数fk(本実施形態ではk=1〜4)がキャリヤ周波数fiと同一のとき(fk=fi)には、復調された受信信号SRは、送信信号STと同一となる(SR=ST)。なお、キャリヤ周波数fkとキャリヤ周波数fiとが同一でない場合には、アンテナで受信した電波は復調されずに、復調回路154からは受信信号SRを出力しない。
制御装置156は、図3(B)に示す如く、論理回路158と、スイッチ回路160と、駆動回路162と、を備える。そして、制御装置156は、受信機148から出力される受信信号SRに従い第1回転装置166と第2回転装置168と弁駆動装置170とを制御する。
論理回路158は、図3(B)に示す如く、受信機148の復調回路154の出力及びCHセレクタ150の出力に接続されている。論理回路158は、受信信号SRのうちの流体放出機132を特定するための識別信号SD1を判別する。つまり、論理回路158は、受信信号SRのうちの2ビットの識別信号SD1とCHセレクタ150の番号セレクタ150Bの2ビットの識別信号SD2とを比較する。そして、論理回路158は、識別信号SD1と識別信号SD2とが同一であればON信号を出力し、識別信号SD1と識別信号SD2とが異なればOFF信号を出力する。
スイッチ回路160は、図3(B)に示す如く、復調回路154の出力及び論理回路158の出力に接続されている。スイッチ回路160は、論理回路158の出力により、受信信号SRのうちの第1回転装置166、第2回転装置168、及び弁駆動装置170を制御する制御信号SCのON/OFFを行う。つまり、スイッチ回路160は、6ビットの制御信号SCを論理回路158のON/OFF信号で同時にON/OFFする。即ち、送信機134のCHセレクタ138の設定と受信機148のCHセレクタ150の設定とが同一のときには、送信機134の制御信号入力部136で入力した6ビットの制御信号SCがスイッチ回路160から出力される。
駆動回路162は、図3(B)に示す如く、スイッチ回路160の出力に接続されており、第1駆動回路162Aと第2駆動回路162Bと弁駆動回路162Cとを有する。第1駆動回路162Aの出力は、第1回転装置166に接続されている。そして、第1駆動回路162Aは、6ビットの制御信号SCのうちの2つの左右方向回転指示ボタン136Aで指定される信号に従い、第1回転装置166を駆動する。第2駆動回路162Bは、第2回転装置168に接続されている。そして、第2駆動回路162Bの出力は、6ビットの制御信号SCのうちの2つの上下方向傾斜指示ボタン136Bで指定される信号に従い、第2回転装置168を駆動する。弁駆動回路162Cの出力は、弁駆動装置170に接続されている。そして、弁駆動回路162Cは、6ビットの制御信号SCのうちの2つの開閉指示ボタン136Cで指定される信号に従い、弁駆動装置170を駆動する。つまり、駆動回路162は、スイッチ回路160から出力された制御信号SCに基づき、第1回転装置166、第2回転装置168、及び弁駆動装置170を駆動する。なお、電源装置164は、受信機148、論理回路158、スイッチ回路160、及び駆動回路162に電力を供給する。電源装置164は、図2(A)、図4(A)、(B)、(C)に示す、電源アダプタ164Aと充電池164Bとを備える。このため、電源アダプタ164Aで直接交流コンセント(AC100V)から電源を取ることができる。あるいは、充電池164B(例えばDC12V)を電源として使用することもできる。なお、本実施形態では、電源装置164として60W以上の電力が供給可能となっている。
第1回転装置166は、図2(A)、図4(A)、(B)、(C)に示す如く、第1回転軸166Aとケーシング166Bと第1モータ部166Cとケーシング166Bに収納された変速機構とを備える。第1回転装置166では、鋳造したケーシング166Bで、第1回転軸166Aと、第1モータ部166Cと、変速機構とを支持している。変速機構は、第1モータ部166Cの出力を減速して第1回転軸166Aから出力する構成となっている。なお、第1回転軸166Aと第1モータ部166Cとは、ケーシング166Bの同一側面側に突出するように設けられている。
第2回転装置168も、図2(A)、図4(A)、(B)、(C)に示す如く、第2回転軸168Aとケーシング168Bと第2モータ部168Cと変速機構とを備える。第2回転装置168は、第1回転装置166と同一とされているので、説明は省略する。
弁駆動装置170は、図2(A)、図4(A)、(B)、(C)に示す如く、ボール弁で流体FDの放出を制限する機構であり、開閉弁170Aと弁モータ部170Bとを備える。開閉弁170A自体は、流体FDを移動させる図4(C)で示された「コ」の字形状のパイプ内部に収納されている。このパイプに、傾斜部材178(後述)の導入部178Bに接続される導入配管180と、流体供給源186(後述)に接続される供給配管182とが連結されている。つまり、導入配管180は、流体FDを開閉弁170Aから傾斜部材178の放出ノズル178Dまで導く。そして、供給配管182は、流体FDを流体供給源186から流体放出機132の開閉弁170Aまで導く。弁駆動装置170は流体FDを当該パイプ内で水平方向に導き、開閉弁170Aは水平方向に移動する流体FDを遮断する構成となっている。言い換えれば、開閉弁170Aは、流体FDの水平方向への移動を制御することが可能である。
前記支持フレーム172は、図2(A)、図4(A)、(B)に示す如く、支持部材174と、支持部材174に第1回転軸166Aで水平面内の回転が可能となるように支持される回転部材176と、を備える。
支持部材174は、鋼材でできており(アルミ材でもよい)、図2(A)に示す如く、リング部174Aと支持梁部174Bとシャフト部174Cとを備える。リング部174Aは円環形状であり、その底面174AAが足場120や建築物104などに直接接触する。支持梁部174Bは、リング部174A内側から径方向内側に延びる複数の板状部材であり、リング部174Aの中心に位置するシャフト部174Cに溶接されている。シャフト部174Cは、円筒形状の部材である。第1回転軸166Aをシャフト部174Cの内側に嵌入した状態でボルトBtを締結することで、第1回転軸166Aとシャフト部174Cとが連結される(第1回転軸166Aの軸心O1と支持部材174の中心とは一致する)。つまり、支持部材174は、第1回転装置166の下方にあり、第1回転装置166との脱着が可能な構成となっている。
回転部材176は、アルミ材(アルミニウム或いはアルミニウム合金)でできており、図2(A)に示す如く、第1回転装置166が脱着可能に取付けられるターンテーブル体176Aと、ターンテーブル体176Aの上面に固定される上部フレーム体176Bと、ターンテーブル体176Aの下面に固定される下部フレーム体176Cと、を備える。
ターンテーブル体176Aは、円盤形状の部材であり、2つの貫通孔176AA、176ABが設けられている。貫通孔176AAは導入配管180が貫通するために設けたものであり、貫通孔176ABは第1回転装置166の形状逃げのために設けたものである。ターンテーブル体176Aの上面の径方向内側には充電池164Bが脱着可能に配置されている。また、ターンテーブル体176Aの下面の径方向内側には、受信機148と制御装置156と電源アダプタ164Aと第1回転装置166と弁駆動装置170とがそれぞれ脱着可能に配置されている。なお、第1回転軸166Aの軸心O1は、ターンテーブル体176A(回転部材176)の中心と一致するようにされている。
上部フレーム体176Bは、図2(A)、図4(A)、(B)に示す如く、1対の逆U字形状であって第1回転軸166Aの軸心O1を挟んでターンテーブル体176Aに立設された立設フレーム部176BAと、立設フレーム部176BAの頭頂部176BAA同士を連結する連結フレーム部176BBと、を備えている。立設フレーム部176BAは、第2回転装置168の第2回転軸168Aが上側となり第2モータ部168Cが下側となる状態で、脱着可能に第2回転装置168を支持する構成となっている。即ち、上部フレーム体176Bは、第2回転軸168Aが第1回転軸166Aに直交するように、第2回転装置168を支持している。このとき、第2回転装置168の第2回転軸168Aと第2回転軸168Aを回転させる第2モータ部168Cとは共に回転部材176の径方向内側に向けられている。第2回転軸168Aは、傾斜部材178を脱着可能に支持している。傾斜部材178の先端、つまり放出ノズル178Dが第2回転軸168Aで傾斜回転しても、放出ノズル178Dは絶えず連結フレーム部176BBを通過するようにされている。
同時に、図4(A)に示す如く、ターンテーブル体176Aの上面に配置される部材(充電池164Bと傾斜部材178)は、支持フレーム172のターンテーブル体176A及び上部フレーム体176Bの外形に接する点線(接線)LN1の内側に配置されている。本実施形態における接線とは、支持フレーム172の外形には接するもののいずれの位置でも外形に交差しない線をいう。例えば、図4(A)に示す点線LN2は、上部フレーム体176Bの外形とは接するものの、ターンテーブル体176Aの外形には交差している。このため、点線LN2は、本実施形態における接線には該当しない構成となっている。また、図(4)(A)、(B)、(C)に示す如く、ターンテーブル体176Aの下面に配置される部材(受信機148と制御装置156と電源アダプタ164Aと第1回転装置166と弁駆動装置170)は、支持フレーム172のターンテーブル体176A及び下部フレーム体176Cの外形の接線の内側に配置されている。つまり、本実施形態では、制御機構146は全て支持フレーム172の外形の接線の内側に配置されている。
なお、傾斜部材178は、アルミ材でできており、図2(A)、図4(A)、(B)に示す如く、支持部178Aと導入部178Bとノズル支持部178Cと放出ノズル178Dとを備える。支持部178Aは、筒状部材であり、その内側に第2回転軸168Aが脱着可能に取付けられる。導入部178Bは、内部に流体FDを導く流路が設けられた部材であり、支持部178Aに支持されている。導入部178Bは、支持部178Aが第2回転軸168Aに取付けられると、流体FDを導入配管180から第2回転軸168Aに並行に導く。導入部178Bは、導入配管180の接続される部分に導入口178BAを備えている。導入口178BAの方向が第2回転軸168Aの軸心O2に向けられているので、導入配管180は第2回転軸168Aの軸心O2を通過するようにされている。ノズル支持部178Cは、内部に流体FDを導く流路が設けられた部材であり、支持部178Aに支持されている。ノズル支持部178Cは、導入部178Bに接続され、導入部178Bに導かれる流体FDを径方向外側に向いた放出ノズル178Dに導く。放出ノズル178Dは筒状部材であり、放出ノズル178Dの方向は第1回転軸166Aの軸心O1を通過するようにされている。放出ノズル178Dは、流体FDを第2回転装置168で制御された傾斜角度θに放出する。即ち、第2回転装置168は、第1回転軸166Aと直交する第2回転軸168Aで流体FDを放出する放出ノズル178Dを回転部材176に対して傾斜可能に支持している構成である。なお、流体FDが泡状物の場合には、泡状物が直接流体供給源186から供給されるが、放出ノズル178Dが例えば空気を吸い込む構造(図示略)とされていてもよい。この場合には、流体FDが泡状物の原料(液体)とされて、放出ノズル178Dから放出された際に泡状物の原料が液体から泡状物に合成されてもよい。その場合には、多量の泡状物を勢いよく、放出ノズル178Dから放出(散布)させることができる。放出ノズル178Dの形状は、流体FDが水である場合と泡状物の場合とでは(遠隔操作で)異なるようにされていてもよい。或いは、泡状物に対応可能に放出ノズル178Dの形状が統一されていてもよい。なお、放出ノズル178Dの内径が供給配管182の内径よりも小さくされている。このため、供給配管182を通る流体FDの流速は放出ノズル178Dで更に速められることになる。
なお、図4(A)、(B)に示す符号184は、リミットSWであり、第2回転軸168Aによる放出ノズル178Dの傾斜角度θの範囲を制限している。本実施形態では、傾斜角度θは0°〜90°である。ちなみに、放出ノズル178Dの第1回転装置166による回転角度は0°〜180°である。
下部フレーム体176Cは、図2(A)、図4(A)、(B)に示す如く、ターンテーブル体176Aの外周に沿って立設された複数の支柱フレーム部176CAと、制御機構146の径方向外側に配置される円環形状であって複数の支柱フレーム部176CAに支持されるリングフレーム部176CBと、を備える。支柱フレーム部176CAは、棒状部材であり、具体的には、受信機148、制御装置156、電源アダプタ164A、第1回転装置166、及び弁駆動装置170の外側に配置されている。支柱フレーム部176CAの長さは、受信機148、制御装置156、電源アダプタ164A、第1回転装置166、及び弁駆動装置170のターンテーブル体176Aの下面から占有する厚みよりも長くされている。このため、支柱フレーム部176CAの下端に接続されるリングフレーム部176CBよりも、受信機148、制御装置156、電源アダプタ164A、第1回転装置166、及び弁駆動装置170は、ターンテーブル体176A側に位置することとなる。なお、ターンテーブル体176Aの外周には、図4(A)、(B)の破線で示す如く、下部フレーム体176Cを覆う弾性部材188(例えば板状の合成ゴム)が2枚、全周を覆うように配置されている。
なお、流体放出機132は、例えば足場120等の点検の際に交換が容易で、且つ配置位置の変更が自在であるように、充電池164Bで駆動されているが、図示せぬ発電機に電源が接続されて駆動されてもよい。
図2(A)、(B)に示す如く、流体放出機132への流体FDの供給を、供給配管182を介して行う流体供給源186が設けられている。流体供給源186は、図1に示す如く、作業現場100における環境の変動の少ないところでメンテナンスが比較的容易である場所、例えば、作業箇所102から離れた地面に設置されている。流体供給源186は、図2(B)に示す如く、ポンプ部186Aと2つのタンク部186Bを備える。ポンプ部186Aは、タンク部186Bから導入される流体FDの圧力を増大可能としている。2つのタンク部186Bは、互いに異なる流体FDを格納している。本実施形態では、一方のタンク部186Bが水(水を主成分とする水溶液を含む)を保持し、もう一方のタンク部186Bが泡状物或いは泡状物となる原液を保持している。流体供給源186は、例えば図示せぬ発電機に電源が接続されて駆動されている。なお、タンク部186Bの切り替えは、手動でもよいし、送信機134にボタンを設けてそのボタンのON/OFFにより遠隔操作で行ってもよい。
なお、流体供給源186の1台から1台の流体放出機132に流体FDが供給されてもよいが、流体供給源186の1台から複数の流体放出機132に流体FDが供給されていてもよい。その際には、1台の流体供給源186に複数の流体放出機132が並列に接続されてもよいし、直列に接続されてもよい(例えば、並列の場合は平面的に並んだ複数の流体放出機132に兼用とされる構成でもよい。また、直列の場合は足場120の高さ方向に並んで載置される構成でもよい)。なお、流体FDが水の場合にはポンプ部186Aをなくして、直接水道の蛇口に供給配管182を接続していてもよい。供給配管182は、建築物104を囲む足場120に固定されている。
次に、流体放出機132の重心位置CGの高さH0と開閉弁170Aについて、図4(B)を用いて説明する。
上述の如く、ターンテーブル体176Aの下面には、アルミ部材でできた回転部材176よりも比重の大きな支持部材174と、受信機148と、充電池164Bを除く制御装置156と、第1回転装置166と、弁駆動装置170と、が配置されている。これに対して、ターンテーブル体176Aの上面には、(第1回転装置166と同一の)第2回転装置168とアルミ材でできた傾斜部材178と、充電池164Bのみが配置される。このため、流体放出機132の重心位置CGの高さH0は、図4(B)に示す如く、ほぼターンテーブル体176Aの高さ近傍となっている。これに対して、開閉弁170A自体は、弁駆動装置170の下端に設けられ、その高さはH1とされている。即ち、流体放出機132は、重心位置CG以下の高さに流体FDの放出を制限する開閉弁170Aを備えている構成となっている。
次に、粉塵抑制システム130を用いた粉塵抑制方法について、主に図1を用いて説明する。
まず、建築物104の解体に必要な領域(作業機械110の配置転換のための領域を含む)の囲むように足場120を構成し、その外側に養生シート122を取付ける。ここで、足場120の高さは必ず、解体される建築物104の高さよりも高く構成される。そして、例えば、解体される建築物104の作業箇所102よりも放出ノズル178Dの位置が高くなるように、流体放出機132を足場120或いは建築物104に載置する。流体放出機132は単に載置するだけでもよく、場合によっては足場120に固定してもよい。流体放出機132は、互いに異なる位置に複数載置され、それぞれの流体放出機132からの流体FDを同一の作業箇所(解体する部分)102に放出可能とする。実際の流体放出機132の数と間隔は、流体放出機132から放出(散布)される流体FDの飛距離や時間当たりの散布量で適宜定めることができる。
次に、作業機械110の作業部118で作業箇所102に向けて、その近傍の1つ以上の流体放出機132を、運転室112の作業者或いは別の作業者により送信機134を操作することで遠隔制御により動作させる。そして、放出ノズル178Dで作業箇所102の上から流体FDを所定の範囲(例えば、作業部118が直接接触しなくても作業部118の接触で、粉塵の発生しそうな範囲までを含む)に所定の量(粉塵の飛散の抑制にある程度効果が出る以上の量)を散布する。このとき、風や湿度の関係で流体FDとして、泡状物と水とを適宜に散布するようにしてもよい。
次に、流体FDの散布された作業箇所102に対して作業部118を接触させて解体を行う。このとき、例えば流体放出機132からの流体FDの散布は継続して行うことで、粉塵の飛散抑制を効果的に行うことができる。なお、流体FDが泡状物のときには、目標とする作業箇所102の解体が達成できたかどうかの確認を行うため、泡状物の散布を一時的に中止し、水でその泡状物を消失させるようにしてもよい。
上記作業箇所102の解体が達成できたら、次の作業箇所102に向けて作業部118を移動させる。同時、若しくはそれ以前に対応する流体放出機132を動作させ、次の作業箇所102を作業部118で解体する。これを繰り返すことで、高層化された建築物104の上の階から迅速に解体を進めることができる。なお、建築物104の解体が進み、作業箇所102が当初載置された流体放出機132の高さと大きく差が出て、作業箇所102に的確に流体FDを散布できない状態となるようであれば、流体放出機132を適正な高さに載置しなおすこととなる。
流体放出機132に対しては、開閉弁170Aの動作で流体FDの放出と遮断とを切り替えた際に流体FDを放出する圧力が外力変動として加わる。本実施形態では、上述したように、この外力変動が流体放出機132の重心位置CG以下の高さに位置する開閉弁170Aの位置に加わることとなる。即ち、この外力変動が水平方向の外力成分を有していた場合には、その水平方向の外力成分は重心位置CGと支持部材174の底面174AAの位置とに分散されることとなる。このため、本実施形態では、その外力変動を重心位置CGよりも上の高さで受ける場合に比べて、その外力変動による重心位置CGにかかる力を減衰できる。つまり、開閉弁170Aの動作に伴う流体放出機132の位置変動や転倒のおそれを低減することが可能である。
また、本実施形態では、開閉弁170Aが流体FDの水平方向への移動を制御している。このため、開閉弁170Aの動作で生じる外力変動は水平方向のみとなるで、流体放出機132の上下変動を防止することが可能である。
また、本実施形態では、流体放出機132が、支持部材174と、支持部材174に第1回転軸166Aで水平面内の回転が可能となるように支持される回転部材176と、第1回転軸166Aに直交する第2回転軸168Aで回転部材176に傾斜可能に支持され且つ流体FDを放出する放出ノズル178Dと、を備えている。このため、回転部材176が回転しても重心位置CGの高さH0は変化せずに、放出ノズル178Dが傾斜した際だけ重心位置CGの高さH0が変化するようになる。ここで、本実施形態では、第2回転軸168Aにより放出ノズル178Dとともに傾斜する部材は、放出ノズル178Dを含む傾斜部材178のみとなっている。このため、第1回転装置166と第2回転装置168とにより、放出ノズル178Dの放出方向をどのように変化させても流体放出機132の重心位置CGの高さH0の大幅な変化を発生させず、流体放出機132の位置変動を招く可能性を更に低減することが可能である。
また、本実施形態では、流体FDを開閉弁170Aから放出ノズル178Dまで導く導入配管180が、第2回転軸168Aの軸心O2を通過するようにされている。このため、開閉弁170Aで制御された流体FDは第2回転軸168Aの軸心O2を通過することとなる。即ち、第2回転軸168Aの回転方向にかかる外力変動を低減することができ、第2回転軸168Aに支持される放出ノズル178Dの傾斜角度θが開閉弁170Aによる流体FDの制御で変化してしまうおそれを低減することができる。
また、本実施形態では、流体放出機132への流体FDの供給を、導入配管180を介して行う流体供給源186が設けられている。このため、流体放出機132は流体供給源186の機能を備えなくてよいので、流体放出機132を軽量小型にすることが可能である。
また、本実施形態では、導入配管180が足場120に固定されている。このため、流体放出機132が足場120や建築物104から仮に転倒・落下しても、足場120に固定された導入配管180により、流体放出機132にかかる転倒・落下の衝撃を緩衝することができる。即ち、流体放出機132の転倒・落下による変形・破損を防止することができる。なお、流体放出機132が足場120に載置される場合には、流体放出機132の載置位置で作業箇所102の位置を制限することがなく、更に足場120から外部へ飛散する粉塵を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、流体供給源186の1台から複数の流体放出機132に流体FDが供給される場合もある。この場合には、流体供給源186の管理・維持が容易となる。また、複数の流体放出機132へ供給する流体FDの原料の間違えも低減することができる。
また、本実施形態では、流体FDが少なくとも水、或いは泡状物を含む。このため、流体FDが水であると、建築物104を効果的に濡らすことができる。また、流体FDが泡状物であると、水分の過剰な放出を回避でき、散水だけしか行わないのに比べると水の使用量を大幅に削減でき、節水をすることができる。そして、粉塵の発生を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、流体放出機132が互いに異なる位置に複数載置され、それぞれの流体放出機132からの流体FDは同一の作業箇所102に放出可能とされている。このため、作業箇所102に複数の方向から流体FDを放出して、多面的に作業箇所102を流体FDで覆う或いは包囲することができる(流体FDが水の場合には「包囲する」が「濡らす」の意味となる)。このため、粉塵の発生をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、遠隔操作が1台の送信機134から複数の流体放出機132に対してなされる。このため、流体放出機132を操作する作業者の数を低減でき、且つ複数の流体放出機132を効率的に動作させることが可能である。
また、本実施形態では、流体放出機132が作業機械110ではなく足場120や建築物104に載置されている。つまり、流体放出機132の動作は、作業機械110の動作とは独立して行うことができる。このため、予め流体FDで作業箇所102を包囲することを迅速に行うことができ、短い時間で解体作業を進めながら、粉塵の飛散の抑制を効果的に行うことができる。
また、本実施形態では、流体FDとして泡状物を散布し一時的にその泡状物を除去したい場合には、流体FDを水に切り替えて作業箇所102を包囲している泡状物を部分的(場合によっては全体的に)に除去することが可能である。例えば、建築物104の特定の部分のみを解体するような場合、作業途中でその位置などを容易に再確認することもできる。
また、本実施形態では、流体放出機132が遠隔制御されるので、粉塵の発生箇所である作業箇所102近傍への散水作業者の配置を不要としている。即ち、高い足場120からの作業者による散水作業もなく、作業者の労働安全の確保と結果的に作業環境の改善が図れる。更に、作業者への危険度を低減できるので、保険などの事故対応へのコストを低減することもできる。
また、本実施形態では、放出ノズル178Dが作業箇所102の上方にあるので、放出ノズル178Dが作業箇所102の下方にくる場合に比べて、より少ない流体FDで確実に作業箇所102へ散布することができる。なお、これに限らず、必ずしも作業箇所よりも放出ノズルの位置が高くならなくてもよい。
また、本実施形態では、送信機134のCHセレクタ138と受信機148のCHセレクタ150とは同一の機能とされている。このため、送信機134と受信機148の組合せに制限がなく、送信機134及び受信機148の複数台の保守管理や手配を容易に行うことができる。しかも、CHセレクタ138(150)は、周波数セレクタ138A(150A)と番号セレクタ138B(150B)とから構成されている。このため、1台の送信機134で最大16台の流体放出機132を順番に操作することもできるし、4台の送信機134で4台の流体放出機132を同時に操作することもできる。従って、本実施形態では、複数台の流体放出機132を適宜効率よく操作することができる。
即ち、本実施形態によれば、流体放出機132が固定されずに単に載置された場合でも、所定の作業箇所102に流体FDを的確且つ安定して放出することが可能である。
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
例えば、第1実施形態では、開閉弁170Aが流体FDの水平方向への移動を制御するようにしていたが、本発明はこれに限定されず、開閉弁が流体FDの垂直方向への移動を制御するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、流体放出機132が、支持部材174に第1回転軸166Aで水平面内の回転が可能となるように支持される回転部材176と、第1回転軸166Aに直交する第2回転軸168Aで回転部材176に傾斜可能に支持される放出ノズル178Dと、を備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば支持部材で回転部材を傾斜させ、傾斜した回転部材上で放出ノズルが回転するように構成されてもよい。
また、第1実施形態では、導入配管180が第2回転軸168Aの軸心O2を通過するようにされていたが、本発明はこれに限定されずに、導入配管が第2回転軸の軸心O2を通過しなくてもよい。
また、第1実施形態では、流体放出機132への流体FDの供給を、導入配管180を介して行う流体供給源186が設けられていたが、本発明はこれに限定されずに、流体放出機が流体供給源と一体化されていてもよい。
また、第1実施形態では、導入配管180が足場120に固定されていたが、本発明はこれに限定されずに、導入配管が足場から離れた状態であってもよい。
また、第1実施形態では、流体供給源186の1台から複数の流体放出機132に流体FDが供給されている場合もあったが、本発明はこれに限定されずに、流体供給源の1台から1台の流体放出機に流体FDが供給されている場合だけでもよい。
また、第1実施形態では、流体FDが少なくとも水、或いは泡状物を含んでいたが、本発明はこれに限定されずに、流体FDが水だけでもよいし、泡状物だけでもよい。
また、第1実施形態では、流体放出機132が互いに異なる位置に複数載置され、それぞれの流体放出機132からの流体FDは同一の作業箇所102に放出可能とされていたが、本発明はこれに限定されずに、流体放出機が同一の作業箇所に流体FDを散布できなくてもよい。
また、第1実施形態においては、放出ノズル178Dが1つであり、タンク部186Bを切り替えることで異なる流体FDを放出ノズル178Dまで供給していたが、これに限定されない。例えば、異なる流体FDが別系統で放出ノズルまで供給されていてもよい。
また、第1実施形態では、作業現場100に作業機械110が1台であったが、本発明はこれに限定されず、作業機械が複数台用いられてもよい。例えば、図6に示す第2実施形態の如く、2台の作業機械210A、210Bが建築物204のそれぞれ別々の作業箇所202A、202Bで独立に解体を行ってもよい。この図6に示す場合には、粉塵抑制システムが13台の流体放出機232A〜232Nを備えて、作業箇所202Aに対しては3台の流体放出機232C〜232Eが動作し、作業箇所202Bに対して2台の流体放出機232M〜232Nが動作している。そして、他の流体放出機232A、232B、232F〜232Lが停止しており、節水をしながら効率的に粉塵の飛散を抑制することができる。
また、上記実施形態では、流体放出機132のみから流体FDが放出されていたが、本発明はこれに限定されず、作業機械の作業部からも、流体FDが散布されてもよい。その際には、作業箇所をより多面的に流体FDで包囲でき、作業箇所で発生する粉塵の飛散を効果的に抑制することができる。同時に、作業現場で使用される流体放出機の数を低減することもできる。このため、流体放出機の制御の負荷を低減でき、より低コストで、粉塵の飛散を抑制することも可能である。
また、上記実施形態においては、作業機械として所謂「クラッシャー」を例に説明しているが、本発明の適用はこれに限られない。例えば、杭打ち機、杭抜き機、ブルドーザー、トラクターショベル、パワーショベル、バックホー、ドラグライン、クラムシェル、クローラドリル、アースドリル、クレーン、ロードカッター、ブレーカー等に適用しても同様の効果を得ることができる。要するに、土木作業や建設作業、解体作業において、粉塵が発生し得る作業を行う作業機械に対して幅広く適用することが可能である。