本発明は、一般に、スーパーオキシドジスムターゼ1またはSOD1としても公知のスーパーオキシドジスムターゼ[Cu−Zn]に特異的に結合する新規分子に関し、特に、SOD1タンパク質およびミスフォールド/凝集形態のSOD1を認識するヒト抗体、それらのフラグメント、誘導体および変異体に関する。加えて、本発明は、血漿およびCSF中のSOD1およびミスフォールド/凝集SOD1種を同定するための診断ツールとしても価値があり、ルー・ゲーリック病またはシャルコー病としても公知の筋萎縮性側索硬化症(ALS)などのミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾患を治療するための受動的ワクチン接種戦略においても価値がある、上述の結合分子、抗体およびそれらの模倣物を含む医薬組成物および診断用組成物に関する。
タンパク質蓄積、修飾および凝集は、非常に多くの神経変性病の病的態様である。運動ニューロン病としても公知の、神経変性病のサブグループは、運動ニューロンの漸進的変性および死滅を特徴とする。この疾患群の最も一般的なメンバーの1つ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の制御に責任を負うニューロン、特に、脊髄、脳幹および運動皮質内の運動ニューロンを攻撃する、急速進行性で例外なく致死性の神経学的疾病である(Bruijnら、Annu.Rev.Neurosci.27(2004),723−749)。全ALS症例の90から95パーセントにおける病因が不明であり、明確に関連づけられる危険因子がない(散発性ALS、sALS)。全ALS症例の5から10パーセントのみが遺伝性(家族性ALS、fALS)であり、それらの約20パーセントは、スーパーオキシドジスムターゼ1またはSOD1としても公知の、スーパーオキシドジスムターゼ[Cu−Zn]酵素を産生する遺伝子の突然変異に起因する(Bruijnら、Annu.Rev.Neurosci.27(2004)、723−749;Valentineら、Annu.Rev.Biochem.74(2005)、563−593;Andersen、Curr.Neurol.Neurosci.Rep.6(2006)、37−46)。
ヒトSOD1は、32kDaホモ二量体金属酵素であり、染色体21上にその遺伝子座があり、主として、サイトゾル、核およびペルオキシソーム内に局在するが、真核細胞のミトコンドリア膜間腔内にも局在する。それは、触媒銅イオンおよび構造亜鉛イオンに結合する活性部位を含有する。SOD1の機能的役割は、スーパーオキシドラジカルの二原子酸素および過酸化水素への不均化を触媒し、そのようにしてスーパーオキシドの定常状態濃度および細胞への酸化ストレスを低下させる、抗酸化酵素として作用することである(Fridovich、Science 201(1978)、875−879)。
SOD1タンパク質全体にわたって100を超える異なる突然変異が公知であり(http://alsod.iop.kcl.ac.uk/;Andersen、Amyotroph.Lateral Scler.Other Motor Neuron Disord.増刊号1(2000)、S31−42;Andersenら、Amyotroph.Lateral Scler.Other Motor Neuron Disord.2(2001)、63−69;Gaudetteら、Amyotroph.Lateral Scler.Other Motor Neuron Disord.1(2000)、83−89)、D90A突然変異を除く全てが優性遺伝病の原因となる。突然変異体SOD1がどのようにしてALSをもたらすのかは完全には解明されていない。それぞれの突然変異体SOD1−タンパク質の安定性、金属イオン親和性および酵素的活性に様々な影響を及ぼす突然変異もあるが、及ぼさないものもある(Valentineら、Annu.Rev.Biochem.74(2005)、563−593;ValentineおよびHart、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100(2003)、3617−3622;Lindbergら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102、9754−9759;Taylorら、Science 296(2005)、1991−1995)。しかし、SOD1ヌルマウスはALSを発現しない(Reaumeら、Nat.Genet.13(1996)、43−47)という事実と併せてこの疾病の優性遺伝は、ALSにおけるSOD1媒介毒性が、前記突然変異に起因する1つ以上の毒性機能の減少によってではなく獲得によって引き起こされることを示唆している。
3つ(G37R、G85RおよびG93A)の公知ヒト突然変異は、トランスジェニックマウスモデルにおいて広範に特性付けされている(BruijnおよびCleveland、Neuropathol.Appl.Neurobiol.22(1996)、373−87;Gurney、N.Engl.J.Med.331(1994)、1721−1722;Rippsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(1995)、689−93;Wongら、Neuron 14(1995)、1105−16)。ヒト突然変異体タンパク質は、内因性マウスSOD1と等しいレベルまたはそれより数倍高いレベルでユビキタス発現される。野生型ヒトSOD1の過発現に反して、それらの突然変異型の過剰発現は、動物におけるヒト疾病に類似した病状を伴うALSの発現につながる。例えば、ALS患者からの組織との比較対象となる、変異体SOD1の凝集体に富むタンパク質性封入体が、ニューロンおよび星状膠細胞において(Stieberら、Neurol.Sci.173(2000)、53−62)神経細胞体沈着物としておよび様々なミトコンドリア区画に付随する高分子複合体として(ManfrediおよびXu、Mitochondrion 5(2005)、77−87)、ならびに小胞体内で(Kikuchiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103(2006)、6025−6030)発見された。
前記封入体は、SOD1を単独で含有しない。これらの追加の、おそらく同様にALSの原因となる化合物の1つは、TAR DNA結合タンパク質43(TDP−43)である。TDP−43をコードする遺伝子(TARDBP)の病原性突然変異が、家族性および散発性ALS患者において最近報告されており、fALS症例の少なくとも3.3%の原因であるようである(Neumannら、Science 314(2006)、130−133;Rutherfordら、PLoS Genet.4(2008)、e1000193)。
SOD1は、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)患者の脳における酸化障害の主標的であるとさらに報告されている。全SOD1レベルが増加され、アミロイド老人斑および神経原線維変化に関連づけられるタンパク質性凝集体がAD脳において発見された(Choiら、J.Biol.Chem.280(2005),11648−11655)。
SOD1の凝集につながる正確な機序は分かっていない。しかし、一般的な仮説は、突然変異によって誘導される立体構造変化に起因するタンパク質ミスフォールディングの結果としてのSOD1の凝集を示唆している(Bruijnら、Science 281(1998)、1851−1854;ChattopadhyayおよびValentine、Antioxid.Redox.Signal 11(2009)、1603−1614;Furukawaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103(2006)、7148−7153;Prudencioら、Hum.Mol.Genet.18(2009)、3217−3226;Wangら、PLoS Biol.6、e170(2008))。ミスフォールド突然変異体またはwtSOD1はグリア細胞によって細胞外環境にも分泌され、そこで運動ニューロンの選択的死滅を誘発し得る(Urushitaniら、Nature Neuroscience 9(2006)。108−118f)。これは、突然変異体SOD1毒性の細胞非自律的性質、および最初の症状が発現し次第の病状の急速な進行についての説明となる可能性がある。
既に述べたように、全てのインシデントの90〜95パーセントを占める特発型のALSの原因は解明されていない。しかし、家族性ALS型に関する観察に類似して、野生型(wt)SOD1のミスフォールディングが大多数の散在性ALS症例に随伴すると考えられてもいる(Boscoら、Nature Neuroscience 13(2010)、1396−1403)。野生型SOD1は、大規模な翻訳後修飾、例えばサブユニット二量体化、残基Cys57とCys146間のサブユニット間ジスルフィド結合の構築、および銅と亜鉛の配位の対象となる。これらの過程の破壊は全て野生型SOD1を凝集させることが証明されており(Durazoら、J.Biol.Chem.277(2009)、15923−15931;Estevezら、Science 286(1999)、2498−2500;Rakhitら、J.Biol.Chem.279(2004)、15499−15504;Lindbergら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(2004)、15893−15898)、したがって、特発性ALS型の可能性のある発症モデルをもたらすであろう。
突然変異体またはミスフォールドSOD1を標的にする免疫療法は、家族性ALS型の動物モデルにおいて勇気づけられる成果をもたらした。能動免疫は、SOD1トランスジェニックマウスにおいて、運動ニューロン減少を減弱し、SOD1レベルを低減させることにより、疾病の発症および死ぬべき運命を遅延させた。その寿命延長は、抗体力価に相関した(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA104(2007)、2495−2500;Cashman、NDI conference Uppsala 2009、Takeuchiら、J Neuropathol Exp Neurol(2010)、1044−1056)。
受動免疫は、体重減少および後肢反射障害を遅延させ、寿命も延長した(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA104(2007)、2495−2500;Cashman、NDI conference Uppsala 2009;Gros−Louis Fetal、J.Neurochem 2010)。
これらの発見は、SOD1を標的にする能動免疫療法アプローチに付随する潜在的恩恵を強調している。この高い潜在能力にかかわらず、能動免疫療法はもちろん受動免疫療法についてのアプローチも、特定の治療エンドポイントに向けてのそれらの効力に対して様々な効果を生じさせ得る。ADの前臨床マウスモデルでのまたはヒトでのAβ指向性アプローチについて証明されているように、それらは、有害事象、例えば、自己免疫病、髄膜脳炎、脳アミロイド血管症増加、および脳溢血の誘導を随伴する場合もある(Pfeiferら、Science 298(2002)、1379;Furlanら、Brain 126(2003)、285−291;Wilcockら、J.Neuroinflammation 1:24(2004);Leeら、FEBS Lett.579(2005)、2564−8;Wilcockら、Neuroscience 144(2007)、950−960;Schenk、Nat.Rev.Neurosci.3(2002)、824−828;Orgogozoら、Neurology 61(2003)、46−54)。これは、大量の細胞外タンパク質沈着を伴わないALSの状況では然程問題にはならないであろうが、それでもやはり考慮に入れるべきである。
上で述べたことをまとめると、効果的で安全な治療法でミスフォールド/凝集SOD1タンパク質に対処する新規治療戦略が、至急必要とされている。
ヒト免疫系によって進化的に最適化され、親和性成熟されるヒト抗体での受動免疫は、効力および安全性が優れている確率が高い、有望な新規治療手段をもたらすであろう。
本発明は、天然抗SOD1特異的ヒトモノクローナル抗体の単離のために健常ヒト被験体のSOD1特異的免疫反応を利用する。詳細には、本発明に従って行った実験により、ALSの徴候のない健常ヒト被験体のプールからのモノクローナルSOD1特異的抗体の単離に成功した。
したがって、本発明は、SOD1を特異的に認識することができるヒト抗体、抗原結合フラグメントおよび類似の抗原結合分子を対象とする。「SOD1を特異的に認識する」、「SOD1に/に対して特異的な抗体」および「抗SOD1抗体」は、天然形態のSOD1またはミスフォールドもしくは凝集SOD1アイソフォームに対する抗体を特異的に、一般的に、および集合的に意味する。完全長、ミスフォールドおよび凝集形態に対して選択的なヒト抗体を本明細書において提供する。
本発明の特に好ましい実施形態において、前記ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントは、図1に示すように可変領域VHおよび/またはVLを特徴とする抗体の免疫学的結合特性を明示する。
抗体の抗原結合フラグメントは、一本鎖Fvフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント、およびF(ab’)2フラグメント、または任意の他の抗原結合フラグメントであり得る。下記の特定の実施形態において、前記抗体またはそのフラグメントは、ヒトIgGアイソタイプ抗体である。あるいは、前記抗体は、キメラヒト−マウスまたはマウス化抗体であり、後述のマウス化抗体は、動物における診断方法および研究に特に有用である。
さらに、本発明は、本発明の抗体もしくはその活性フラグメントを含む、またはアゴニストおよび同族分子を含む、または代替的としてそのアンタゴニストを含む組成物に関し、ならびにミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾患、例えばALS、の予防、診断または治療においてそのような組成物を使用する免疫治療および免疫診断方法であって、有効量の該組成物を、それを必要としている患者に投与する方法に関する。
必然的に、本発明は、下で定義する異なる独特な特性を有する抗体をそれぞれ産生する不死化ヒトB記憶リンパ球およびB細胞に及ぶ。
本発明は、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドにも関する。好ましくは、前記可変領域は、図1に示すように可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
したがって、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および該ベクターで形質転換された宿主細胞、ならびにSOD1に対して特異的である抗体および等価の結合分子の産生のためのそれらの使用も包含する。抗体およびそれらの模倣物の組み換え産生のための手段および方法、ならびに抗体であってもよいし、なくてもよい競合結合分子についてのスクリーニング方法は、当技術分野において公知である。しかし、本明細書に、特にヒトへの治療適用に関して、記載するように、本発明の抗体は、当該抗体に対する免疫反応であって、そうでなくキメラおよびさらにはヒト化抗体について観察される免疫反応が実質的にないという意味で、ヒト抗体である。
さらに、サンプル中のSOD1を同定するために使用することができる組成物および方法を本明細書に開示する。開示する抗SOD1抗体を使用して、ヒト血液、CSFおよび尿をサンプル中のSOD1の存在について、例えばELISAベースのアッセイまたは表面適応アッセイ(surface adapted assay)によりスクリーニングすることができる。本明細書に開示する方法および組成物は、ミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾患、例えばALS診断に役立つことができ、ならびに疾病進行および治療効力をモニターするために使用することができる。
したがって、本発明の特定の目的は、ミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療、診断または予防するための方法を提供することである。前記方法は、SOD1を標的にする抗体である有効濃度のヒト抗体または抗体誘導体を、被験体に投与することを含む。
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体によって特異的に認識されるSOD1のエピトープを有するペプチドを提供する。前記ペプチドは、下の「発明を実施するための形態」および「実施例」において示すようなアミノ酸配列、または1つ以上のアミノ酸が置換、欠失および/もしくは付加されているその修飾配列を含む、またはそれらの配列から成る。加えて、本発明は、被験体における筋萎縮性側索硬化症を診断するための方法を提供し、この方法は、該被験体の生体サンプル中の前記ペプチドに結合する抗体の存在を判定する段階を含む。
本発明のさらなる実施形態は、後続の説明および実施例からはっきりと理解できるであろう。
ヒト抗体NI−204.10D12(A)、NI−204.12G7(B)、NI−204.10A8(C)、NI−204.9F6(D)、NI−204.11F11(E)、NI−204.67E12(F)、NI−204.6H1(G)、NI−204.12G3(H)、NI−204.7G5(I)、NI−204.7B3(J)、NI−204.34A3(K)およびNI−204.25H3(L)の可変領域、すなわち、重鎖およびカッパ/ラムダ軽鎖、のアミノ酸およびヌクレオチド配列。枠組み(FR)および相補性決定領域(CDR)を示し、CDRに下線を引く。重鎖連結領域(JH)および軽鎖連結領域(JK)も示す。クローニング戦略のため、前記重鎖および軽鎖のN末端のアミノ酸配列は、ことによるとFR1内にプライマー誘導改変を含有し得るが、該改変は、抗体の生物学的活性に実質的に影響を及ぼさない。コンセンサスヒト抗体を提供するために、元のクローンのヌクレオチドおよびアミノ酸配列をデータベース内の該当するヒト生殖細胞系可変領域配列とアライメントし、該可変領域配列に従って調整した;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(英国、ケンブリッジ)により提供されているVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を参照されたい。PCRプライマーのためにコンセンサス生殖細胞系配列から外れる可能性があると考えられるアミノ酸であって、それ故、該アミノ酸配列内で置換されていると考えられるアミノ酸を太字で示す。
ヒト組み換え抗体のスーパーオキシドジスムターゼ1結合特異性。(A)ダイレクトELISAでのヒトSOD1への組み換えNI−204.10D12の特異的結合。(B)ダイレクトELISAでのヒトSOD1への組み換えNI−204.12G7の特異的結合。(C)ダイレクトELISAでのヒトSOD1への組み換えNI−204.10A8の特異的結合。(D)ダイレクトELISAでのヒトSOD1への組み換えNI−204.9F6の特異的結合。
組み換えヒト由来抗SOD1抗体のEC50決定。(A)ELISAプレートを組み換えヒトSOD1で被覆し、示されている濃度の組み換えヒト由来抗体NI−204.10D12(●)、NI−204.10A8(■)、NI−204.9F6(▲)またはNI−204.12G7(▼)と共にインキュベートした。抗体NI−204.10D12、NI−204.10A8およびNI−204.12G7は、高親和性で組み換えヒトSOD1と結合し、それぞれ10.0nM、2.7nMおよび0.4nMのEC50を有する。NI−204.9F6は、組み換えSOD1に結合し、104.8nMというナノモル範囲内のEC50を有する。
立体構造エピトープの形成に好適であるヒトSOD1の漸増被覆濃度でのEC50分析。ダイレクトELISAを使用する漸増被覆濃度(▼30μg/mL;▲10μg/mL;■1μg/mL;●0.1μg/mL;組み換えヒトSOD1の被覆濃度)の組み換えヒトSOD1に対するヒト抗体NI−204.10D12(A)、NI−204.10A8(B)、NI−204−9F6(C)およびNI−204.12G7(D)のEC50決定、ならびにマウスモノクローナル抗体SOD−1 72B1結合親和性(E)。決定されたEC50値を下の表(F)に示す。 NI−204.10D12抗体(A)およびNI−204.12G7抗体(D)は、ほぼ確実に露出しているもしくは高い被覆濃度で形成されるヒトSOD1のエピトープ、または組み換えヒトSOD1の付随するミスフォールドもしくは凝集を優先的に標的にする。NI−204.10A8(B)およびNI−204.9F6抗体(C)両方は、生理的タンパク質立体構造およびミスフォールド/凝集SOD1両方に存在するヒトSOD1のエピトープを認識する。
ダイレクトELISAを用いるスーパーオキシドジスムターゼ1凝集体(■)および生理的二量体(●)に対するNI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7およびNI−204.9F6のEC50決定ならびにSOD−1 72B1結合親和性。(A)生理的ヒトSOD1二量体へではなくミスフォールド/凝集ヒトSOD1への組み換えNI−204.10D12の高い結合親和性。(B)ヒト生理的SOD1二量体とミスフォールド/凝集ヒトSOD1の両方へのNI−204.10A8の高い結合親和性。(C)生理的ヒトSOD1二量体へではなくミスフォールド/凝集ヒトSOD1への組み換えNI−204.12G7の高い結合親和性。(D)ミスフォールド/凝集ヒトSOD1への組み換えNI−204.9F6のわずかに優先的な結合。(E)市販SOD−1 72B1抗体のミスフォールド/凝集ヒトSOD1への優先的結合なし。
NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7およびNI−209.9F6は、SOD1G93Aトランスジェニックマウスモデルにおいて病的スーパーオキシドジスムターゼ1凝集体を認識する。免疫組織化学分析は、疾病末期のB6.Cg−Tg (SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニック動物の脊髄におけるSOD1病態および/または生理的SOD1の、キメラNI−204.10D12抗体(A)での;ヒトNI−204−10A8抗体(B)での、ヒトNI−204.12G7抗体(C)での、ヒトNI−204.9F6抗体(D)でのおよびEPR1726抗SOD1抗体(E)での検出を示す。
NI.204.10D12は、ペプスキャン分析によって評価すると、ヒトSOD1の中央ドメインに結合する。抗体結合は、アミノ酸85−107をカバーするペプチドで発生する。したがって、NI.204.10D12結合エピトープは、配列DGVADVSを有するアミノ酸93−99(配列番号2)を含む。
組み換えヒト由来抗体NI−204.10D12は、野生型ヒト、G93Aヒト突然変異体および野生型マウスSOD1タンパク質に由来するアミノ酸配列を有するSOD1合成ペプチドに、同等の親和性で結合する。これらの合成ペプチドは、同定NI−204.10D12結合エピトープをカバーする。
疾病末期のB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニック脊髄の免疫組織化学分析。疾病末期のB6.Cg−Tg (SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニック動物の脊髄におけるSOD1病態および/または生理的SOD1の、NI−204.10D12、50nM(A);NI−204−12G7、5nM(B);NI−204.11F11、5nM(C);NI−204.10A8、50nM(D);NI−204.67E12、5nM(E);NI.204.6H1、5nM(F);NI.204.12G3、50nM(G);NI.204.7G5、50nM(H);NI.204.25H3、50nM(I);NI.204.34A3、50nM(J);NI.204.7B3、50nM(K)ならびに対照抗体C4F6(L)およびB8H10(M)での検出。
(A)NI−204.10D12抗体で受動免疫したB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスのカプラン・マイヤー生存曲線。PBS(●)またはNI−204.10D12 SOD1特異的抗体(■)のいずれかで脳室内治療したB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスのカプラン・マイヤー生存曲線。 (B)NI−204.10D12抗体での受動免疫に基づくB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスにおける体重減少の減弱。外科的ポンプ埋め込み後に判定した、ベースライン体重の百分率として表した、PBS(破断線)またはNI−204.10D12 SOD1特異的抗体(普通の線)で脳室内治療したB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの体重;*p<0.05。
NI−204.10D12抗体での受動免疫によるB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスにおける握力の向上。外科的ポンプ埋め込み後の、ベースライン握力に対する百分率として表した、PBS(破線)またはNI−204.10D12 SOD1特異的抗体(普通の線)いずれかで脳室内治療したB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの握力;*p<0.05。
慢性NI−204.10D12抗体治療に基づくB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの脊髄における運動ニューロン減少の減弱。PBSまたはNI−204.10D12 SOD1特異的抗体いずれかでの脳室内治療したB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスにおける腰部脊髄腹側角における運動ニューロン数。(A)ニッスル染色に基づく運動ニューロン数。データは平均±SEMを表す。(B)NeuN染色に基づく運動ニューロン数。データは平均±SEMを表す。**p<0.01。
発明の詳細な説明
I.定義
タンパク質蓄積、修飾および凝集は、非常に多くの神経変性病、例えばハンチントン病、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)の病的態様である(Taylorら、Science 296(2005)、1991−1995)。タンパク質のミスフォールディング、凝集および沈殿は、これらの疾病では神経毒性に直接関係しているようである。天然ホモ二量体、銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)タンパク質(野生型とALS1変異体の両方)は、分子内ジスルフィド結合の不在下または結合した亜鉛イオンの不在下では線維状凝集体を形成する傾向がある。ルー・ゲーリック病またはシャルコー病としても公知の、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾患は、ミスフォールド/凝集SOD1に関係づけられる。さらに、前に述べたように、同じくタンパク質のミスフォールディングを誘導し得るSOD1の酸化修飾がADおよびPDにおいて認められており、SOD1の凝集は、AD患者におけるアミロイド班および神経原線維変化と関連づけられ(Choiら、J.Biol.Chem.280(2005)、11648−11655)これは、これらの疾病の病態における可能性のあるSOD1の役割を含意する。
ALSの臨床的特徴は、随意筋の制御に責任を負う運動ニューロン、特に、脊髄、脳幹および運動皮質における運動ニューロンの漸進的変性および死滅である。疾病の経過は急速進行性であり、顕著な特徴徴候として漸進的筋肉弱化を伴い、るいそう(萎縮)および捲縮(線維束性収縮)が患者の60%に発生し、主として呼吸不全により例外なく致死性であり、平均生存期間は3から5年である。
ALSのほとんどの症例(約90〜95%)は、散発性(sALS)であり、残りは家族性遺伝性(fALS)である。fALSのおおよそ20%は、SOD1遺伝子の突然変異との遺伝的関連を示す。ALSの分子機構はほとんどの場合とらえどころがないが、幾つかの研究は、sALSおよびfALS両方の患者において異所性SOD1種を見つけることができることを示すデータを提供し、それによりこのSOD1種を可能性のある共通起源として提案している(Gruzmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104(2007)、12524−12529)。
トランスジェニックALSマウスモデルにおいて、ALS患者からの組織との比較対象となる、突然変異体SOD1の凝集体に富むタンパク質性封入体が、ニューロンおよび星状膠細胞において(Stieberら、Neurol.Sci.173(2000)、53−62)神経細胞体沈着物としておよび様々なミトコンドリア区画に付随する高分子複合体として(ManfrediおよびXu、Mitochondrion 5(2005)、77−87)、ならびに小胞体内で(Kikuchiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103(2006)、6025−6030)発見された。さらに、ミスフォールド突然変異体またはwtSOD1は、グリア細胞によって細胞外環境にも分泌され、そこで運動ニューロンの選択的死滅を誘発し得る(Urushitaniら、Nature Neuroscience 9(2006)。108−118)。これは、突然変異体SOD1毒性の観察された細胞非自律的性質、および最初の症状が発現し次第の病状の急速な進行ついての説明となる可能性がある。
用語「SOD1」を、SOD1の天然単量体または二量体を特異的に指すために同義的に使用する。用語「SOD1」を、SOD1の他の立体構造異性体、例えばSOD1のオリゴマーまたは凝集体を一般に識別するためにも使用する。用語「SOD1」を、SOD1の全てのタイプおよび形態を集合的に指すためにも使用する。
ヒトSOD1についてのタンパク質配列は、MATKAVCVLKGDGPVQGIINFEQKESNGPVKVWGSIKGLTEGLHGFHVHEFGDNTAGCTSAGPHFNPLSRKHGGPKDEERHVGDLGNVTADKDGVADVSIEDSVISLSGDHCIIGRTLVVHEKADDLGKGGNEESTKTGNAGSRLACGVIGIAQ(配列番号1)である。
154aaのSOD1のアミノ酸配列は、文献および適切なデータベースから検索することができる;例えばShermanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80(1983)、5465−9;Kajiharaら、J.Biochem.104(1988)、851−4;GenBank swissprot:locus SODC_HUMAN、アクセッション番号P00441を参照されたい。「野生型」または組み換えヒトSOD1アミノ酸配列は、配列番号1による上述の配列によって表される。
本明細書に開示するヒト抗SOD1抗体は、SOD1およびそのエピトープに、ならびにSOD1の様々な立体構造およびそれらのエピトープに、特異的に結合する。例えば、SOD1、完全長SOD1および病的ミスフォールド/凝集SOD1に特異的に結合する抗体を本発明において開示する。本明細書で使用する場合、SOD1に「特異的に結合する」、「選択的に結合する」または「優先的に結合する」抗体への言及は、他の無関係なタンパク質に結合しない抗体を指す。一例では、本明細書に開示するSOD1抗体は、SOD1またはそのエピトープに結合することができ、および他のタンパク質についてはバックグラウンドの約2倍より高い結合を示さない。SOD1立体構造異性体に「特異的に結合する」または「選択的に結合する」抗体は、SOD1の全ての立体構造には結合しない、すなわち、少なくとも1つの他のSOD1立体構造異性体には結合しない抗体を指す。例えば、体外およびALS組織両方においてSOD1の凝集形態に優先的に結合することができる抗体を本明細書に開示する。本発明のヒト抗SOD1抗体は、SOD1特異的免疫反応を呈する健常ヒト被験体のプールから単離されたので、それらの抗体が該被験体によって現実に発現されこと、および例えば、ヒト様抗体の提供を試みるための1つの一般的方法のこれまでの代表であったヒト免疫グロブリン発現ファージライブラリー、から単離されたものでないことを強調するために、本発明のSOD1抗体を「ヒト自己抗体」と呼ぶこともある。
「1つの(aまたはan」」のものという用語は、1つ以上のそのものを指し、例えば、「1つの抗体」は、1つまたはそれ以上の抗体を示すことを理解されることに留意されたい。また、「1つの(a(またはan))」、「1つ以上の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書で同義的に使用することができる。
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」、ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、アミド結合(また、ペプチド結合としても知られている)によって直線的に連結されたモノマー(アミノ酸)からなる分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指し、生成物の特定の長さを指さない。したがって、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「ペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つ以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれらと同義的に使用され得る。
「ポリペプチド」という用語はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化反応、アミド化、公知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解的切断が挙げられるが、これらに限定されない、ポリペプチドの発現後の修飾、または非天然発生的なアミノ酸の修飾からなる生成物を指すことを意図する。ポリペプチドは、天然の生物起源から派生する、または組み換え技術によって生成され得るが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されるものではない。ポリペプチドは、化学合成によるものを含む、任意の方法で生成され得る。
本発明のポリペプチドは、約3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、または2,000個以上のアミノ酸の大きさからなり得る。ポリペプチドは、定義された3次元の構造を有し得るが、必ずしもこのような構造を有するものではない。定義された3次元の構造を有するポリペプチドは、折り畳まれたと呼ばれ、定義された3次元の構造を有さず、むしろ、多数の異なる構造を取り入れることができるポリペプチドは、折り畳まれていないと呼ばれる。本明細書で使用される糖タンパク質という用語は、例えば、セリン残基またはアスパラギン残基等のアミノ酸残基の酸素含有もしくは窒素含有の側鎖を介してタンパク質に付加される、少なくとも1つの炭水化物部分と共役するタンパク質を指す。
「単離(された)」ポリペプチドまたはそのフラグメント、変異体、もしくは誘導体により、その自然環境にはないポリペプチドを意図する。精製の特定の水準は必要とされない。例えば、単離ポリペプチドは、その天然または自然環境から除去することができる。組み換えによって生成されたポリペプチドおよび宿主細胞の発現したタンパク質は、任意の適した技法により、分離、断片化、または、部分的に、もしくは実質的には精製されている天然または組み換えポリペプチドである場合、本発明の目的のために単離されていると考えられる。
また、本発明のポリペプチドとして、前述のポリペプチドのフラグメント、誘導体、類似体、または変異体、およびそれらのいずれかの組み合わせをも含む。「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」、および「類似体」という用語は、本発明の抗体または抗体ポリペプチドを指す場合、対応する天然結合分子、抗体、またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも幾つかを保持する任意のポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドのフラグメントは、本明細書の他の部分で論じられる特異抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解フラグメント、ならびに欠失フラグメントを含む。本発明の抗体および抗体ポリペプチドの変異体は、上に記載のフラグメント、およびアミノ酸置換、欠失、または挿入のため、変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。変異体は、自然発生、または非自然発生のものであり得る。非自然発生変異体は、当技術分野において既知の突然変異生成技術を使用して、生成され得る。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失、または付加を含み得る。例えば、本発明の抗体および抗体ポリペプチド等のSOD1特異的結合分子の誘導体は、天然ポリペプチドに認められない追加の特性を呈するために変化しているポリペプチドである。例としては、融合タンパク質が挙げられる。また、変異体ポリペプチドは、本明細書において、「ポリペプチド類似体」とも称され得る。本明細書で使用される、結合分子もしくはそのフラグメント、または抗体、または抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側基の反応により化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する対象ポリペプチドを指す。また、「誘導体」として、20の標準アミノ酸からなる1つ以上の自然発生アミノ酸誘導体を含有する、これらのペプチドを含む。例えば、4−ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換され得、5−ヒドロキシリジンは、リジンと置換され得、3−メチルヒスチジンは、ヒスチジンと置換され得、ホモセリンは、セリンと置換され得、オルニチンは、リジンと置換され得る。
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数の核酸、ならびに複数の核酸を包含することを意図し、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)もしくはプラスミドDNA(pDNA)等の単離核酸分子もしくは構築物を指す。ポリヌクレオチドは、従来のリン酸ジエステル結合または非従来的結合(ペプチド核酸(PNA)に認められるような、例えば、アミド結合)を含み得る。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチドに存在する、例えば、DNAまたはRNAフラグメント等のいずれか1つ以上の核酸セグメントを指す。「単離(された)」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然環境から除去されている、核酸分子、DNA、またはRNAを意図する。例えば、ベクター中に含有される抗体をコードする組み換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のためには、単離されることが考えられる。単離ポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞中に維持される組み換えポリヌクレオチド、または溶液中で(部分的または実質的に)精製されるポリヌクレオチドを含む。単離RNA分子は、本発明のポリヌクレオチドの生体内または体外RNAの転写を含む。本発明に従って、単離ポリヌクレオチドまたは核酸は、合成的に生成される当該の分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネータ等の調節要素であり得る、または含み得る。
本明細書で使用される「コーディング領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、コーディング領域の一部であると考えられ得るが、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネータ、イントロン等の任意のフランキング配列は、コーディング領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコーディング領域が、例えば、単一ベクター上の単一ポリヌクレオチド構築物、または、例えば、別々の(異なる)ベクター上の別々のポリヌクレオチド構築物に存在することができる。さらに、任意のベクターは、単一コーディング領域を含み得る、または2つ以上のコーディング領域を含み得、例えば、単一ベクターは、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードし得る。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、結合分子、抗体、またはそのフラグメント、変異体、もしくは誘導体をコードする核酸に融合される、あるいは融合していない、異種コーディング領域をコードし得る。異種コーディング領域としては、分泌シグナルペプチドまたは異種官能ドメイン等の特殊化した要素またはモチーフが挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施形態において、ポリヌクレオチドまたは核酸は、DNAである。DNAの場合は、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、プロモーターおよび/または1つ以上のコーディング領域と作用可能に連結する他の転写または翻訳調節要素を含み得る。作用可能な連結とは、例えば、ポリペプチド等の遺伝子生成物に対するコーディング領域が、調節配列の影響または制御下で、遺伝子生成物の発現を生じさせる方法において、1つ以上の調節配列に連結することである。2つのDNAフラグメント(ポリペプチドコーディング領域およびそれに連結するプロモーター等)は、プロモーター機能の導入によって所望の遺伝子生成物をコードするmRNAの転写が生じる場合、および2つのDNAフラグメント間の連鎖の性質が、遺伝子生成物の発現を誘導するための発現調節配列の能力を妨げない、または転写されるDNA鋳型の能力を妨げない場合、「作用可能に連結する」又は「作動的に関連する」とされる。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写にもたらすことができる場合、ポリペプチドをコードする核酸と作用可能に連結する。プロモーターは、所定の細胞においてのみ、DNAの実質的な転写を誘導する細胞特異的なプロモーターであり得る。プロモーターのほかに、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナル等の他の転写調節要素が、細胞特異的な転写を誘導するために、ポリヌクレオチドと作用可能に連結することができる。適したプロモーターおよび他の転写調節領域を本明細書に開示する。
様々な転写調節領域が、当業者には公知である。これらは、サイトメガロウイルス(イントロンAと共に、前初期プロモーター)、サルウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス等)からのプロモーターおよびエンハンサーセグメント等に限定されない、脊椎動物細胞に作用する、転写調節領域が挙げられるが、これらに限定されない。他の転写調節領域は、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギβグロビン等の脊椎動物遺伝子、ならびに、真核生物細胞において遺伝子発現を制御可能な他の配列から派生するものを含む。追加の適した転写調節領域は、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンホカイン誘発プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンにより誘導できるプロモーター)を含む。
同様に、様々な翻訳調節要素は、当業者には公知である。これらとしては、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、およびピコナウイルス(特に、内部リボソーム侵入部位、またはIRES、CITE配列とも称される)から派生する要素が挙げられるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形である、RNAである。
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コーディング領域は、分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードする追加のコーディング領域に連結し、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの分泌を誘導し得る。シグナル仮説によれば、哺乳類細胞により分泌されるタンパク質は、粗面小胞体にわたる成長タンパク質鎖の輸出が開始されると、成熟タンパク質から開裂されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞により分泌されるポリペプチドは、通常、ポリペプチドのN末端に融合されるシグナルペプチドを有し、ポリペプチドの分泌型または「成熟型」を生成するために、完全または「全長」ポリペプチドから開裂されることを承知している。ある実施形態において、例えば、免疫グロブリン重鎖または軽鎖シグナルペプチド等の天然シグナルペプチド、または、それと作用可能に連結するポリペプチドの分泌を誘導する能力を保持するその配列の官能誘導体を使用する。代替として、異種哺乳類シグナルペプチド、またはその官能誘導体が使用され得る。例えば、野生型リーダー配列をヒト組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)またはマウスβグルクロニダーゼのリーダー配列と置換され得る。
別途記載されない限り、「疾患(disorder)」および「疾病(disease)」という用語は、本明細書で同義的に使用される。
本発明の文脈で使用されるように、「結合分子」は、主として、抗体、およびそのフラグメントに関するが、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合性複合体(MHC)分子、熱ショックタンパク質(HSP)等のシャペロン、ならびにカドヘリン、インテグリン、C型レクチン、および免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバー等の細胞間接着分子が挙げられるが、これらに限定されない、SOD1に結合する他の非抗体分子も指し得る。したがって、以下の実施形態のほとんどは、明確にする目的のみのためで、本発明の範囲を限定せず、治療薬および診断用薬の開発のために好ましい結合分子を示す抗体および抗体様分子に関して論じられる。
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書で同義的に使用される。抗体または免疫グロブリンは、少なくとも重鎖の可変ドメインを含み、通常は、少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む、SOD1結合分子である。脊椎動物系の基本的な免疫グロブリン構造は、比較的よく理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)を参照されたい。
下記でより詳細に論じるように、「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる様々な広範なクラスのポリペプチドを含む。当業者ならば、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはエプシロン(γ、μ、α、θ、δ、ε)として分類され、それらのクラスの中で、幾つかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)に分類されることを十分に理解するであろう。本鎖の特質が、抗体の「クラス」を、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとして決定する。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1等の免疫グロブリンのサブクラス(イソタイプ)は、よく特徴付けられており、機能的特殊性を与えることが知られている。これらのクラスおよびイソタイプのそれぞれの修飾された形は、本開示を考慮した当業者にはより容易に認識することができるので、それらは本発明の範囲内にある。全ての免疫グロブリンクラスは、明らかに本発明の範囲内にあるが、以下の議論は、概して、免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関しては、標準免疫グロブリン分子は、分子量約23,000ダルトンの2本の同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量約53,000〜70,000ダルトンの2本の同一の重鎖ポリペプチドを含む。これらの4つの鎖は、典型的には、「Y」の立体配置で、ジスルフィド結合により連結され、軽鎖は、「Y」の入口で開始し、可変領域を通して継続する重鎖をひとまとめにする。
軽鎖は、カッパあるいはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖あるいはラムダ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般的に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合し、2本の重鎖の「末端」部分は、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、あるいは、遺伝子組み換え宿主細胞のいずれかにより産生される場合、ジスルフィド共有結合または非共有結合により互いに結合する。重鎖では、アミノ酸配列は、Y立体配置の二股の末端のN末端から各鎖の最後のC末端まで延びる。
軽鎖および重鎖は共に、構造的および機能的相同性の領域で分けられる。「定常」および「可変」という用語を、機能的に使用する。これに関し、軽鎖(VL)および重鎖(VH)部分の両方の可変ドメインが、抗原認識および特異性を決定することは理解されよう。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2、またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合性、補体結合性等の重要な生化学的特性を与える。慣習的に、定常領域ドメインの番号は、抗原結合部位または抗体のアミノ末端から離れるほど大きくなる。N末端部分は、可変領域であり、C末端部分は、定常領域であり、CH3およびCLドメインは、それぞれ、重鎖と軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。
上で示すとおり、可変領域により、抗体は抗原のエピトープを選択的に認識し、それに特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットは、一体となって可変領域を形成し、これは3次元の抗原結合部位を特徴付ける。この抗体の4次元構造は、Yの各アームの末端に存在するように抗原結合部位を形成する。さらに具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびVL鎖のそれぞれにある3つのCDRによって特徴付けられる。SOD1に特異的結合するのに十分な構造を含む、任意の抗体または免疫グロブリンフラグメントは、本明細書において、「抗原結合性フラグメント」または「免疫特異性フラグメント」として、同義的に示される。
自然発生抗体では、抗体は、各抗原結合ドメインに存在する6つの超可変領域(「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる)を含む。これは、抗体が水性環境中で3次元立体構造を取る際、抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置するアミノ酸の短い不連続の配列である。CDRは比較的保存された四つの「枠組み領域」または「枠組み」に隣接され、それは分子間変化がより少ない。枠組み領域は、主としてβシート立体構造を採り、CDRはβシート構造と接続し、時にはβシート構造の一部を形成するループを形成する。したがって、枠組み領域は、鎖間の非共有相互作用により、CDRを正しい配向に配置を提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRにより形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原のエピトープと相補的な面を確定する。この相補的な面は、抗体がその類似したエピトープと非共有結合することを促進する。CDRおよび枠組み領域をそれぞれ含むアミノ酸は、正確に定義されているため、当業者により、任意の所定の重鎖または軽鎖可変領域に対して、容易に同定することができる(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,Kabat,E.,et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983)、およびChothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987)を参照されたく、これらは参照することによりその全体を本明細書に組み込む)。
当技術分野内で使用される、および/または認められる、2つ以上の用語の定義がある場合、本明細書で使用される用語の定義は、別様に明記されない限り、かかる全ての意味を含むことを意図する。具体的な例は、「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用であり、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内で認められる不連続の抗原結合部位を説明する。この特定の領域は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”(1983)およびChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−917(1987)により記述されており、参照することにより本明細書に組み込まれ、定義には、互いに対して比較される場合、アミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。それでもなお、抗体、あるいはその変異体のCDRを指すいずれの定義の適用も、本明細書で定義され使用される、用語の範囲内であることを意図する。上に記載のそれぞれの参考文献により定義される、CDRを包含する適切なアミノ酸残基は、比較として、表Iに示される。特定のCDRを包含する厳密な残基番号は、CDRの配列および大きさにより異なるであろう。当業者は、どの残基が抗体の可変領域アミノ酸配列を与えられた、ヒトIgGサブタイプ抗体の特定の超可変領域またはCDRを含むのかを日常的に決定することができる。
1表I中の全てのCDR定義の番号付けは、Kabatらにより説明される番号付けの取り決めに従う(下記参照)。
Kabatらはまた、任意の抗体に適用できる可変ドメイン配列に対する番号方式も定義した。当業者は、その配列自体を超えた任意の実験データに依存することなく、この、任意の可変ドメイン配列への「Kabat番号付け(numbering)」体系を明確に割り当てることができる。本明細書で使用される「Kabat番号付け(numbering)」は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequence of Proteins of Immunological Interest”(1983)により説明される番号付け体系を指す。別途指定されない限り、本発明のその抗体または抗原結合フラグメント、変異体、または誘導体の特異的アミノ酸残基配置の番号付けへの言及は、Kabat番号付け(numbering)体系に従うものである。但し、それは理論的なものであり、本発明の全ての抗体に対して同等に適用できない場合もあり得る。例えば、一番目のCDRの位置に依存して、続くCDRはいずれかの方向にシフトし得る。
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体、または誘導体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類抗体、マウス抗体またはキメラ抗体、一本鎖抗体、例えば、Fab、Fab’、およびF(ab’)2等のエピトープ結合フラグメント、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLあるいはVHドメインのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示される抗体への抗Id抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。ScFv分子は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、免疫グロブリン分子のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)またはサブクラスからなり得る。
一実施形態において、本発明の抗体は、IgMでも、5価構造を有するその誘導体でもない。特に、本発明の特定の用途、特に治療上の使用において、IgMは、それらの5価構造によるIgMおよび親和性成熟の欠失が、多くの場合、非特異的交差反応および非常に遅い親和性を示すため、IgG、他の2価抗体、または対応する結合分子よりも有用ではない。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体はポリクローナル抗体ではない。すなわち、血漿免疫グロブリンサンプルから得られる抗体の混合物ではなく、実質的煮特定の1種類の抗体から構成される。
一本鎖抗体を含む抗体フラグメントは、単独で、または、ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体または一部と組み合わせて、可変領域を含み得る。また、本発明において、ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインを有する可変領域の任意の組み合わせを含むSOD1結合フラグメントも含む。本発明の抗体またはその免疫特異性フラグメントは、鳥類および哺乳類を含む、任意の動物起源からであり得る。好ましくは、該抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリ抗体である。別の実施形態において、該可変領域は、軟骨魚綱(例えば、サメから)由来であり得る。
一態様において、本発明の抗体は、ヒトから単離されたヒトモノクローナル抗体である。場合により、ヒト抗体の枠組み領域をデータベース内の該当するヒト生殖細胞系可変領域配列とアライメントし、該可変領域配列に従って採用する;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(英国、ケンブリッジ)により提供されているVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を参照されたい。例えば、真の生殖細胞系配列から外れている可能性があると考えられるアミノ酸は、クローニング工程中に組み込まれるPCRプライマー配列に起因し得る。ファージ提示抗体ライブラリーまたは異種マウスからの一本鎖抗体フラグメント(scFv)などの人工的に生成されたヒト様抗体と比較して、本発明のヒトモノクローナル抗体は、(i)代用動物のものではなくヒト免疫反応を用いて得られることを特徴とし、すなわち、本抗体は、ヒト体内でその適切な立体構造の天然SOD1に反応して生成され、(ii)その個体を保護したことを特徴とし、またはSOD1の存在のために少なくとも有意であり、および(iii)本抗体はヒト起源のものであるので、自己抗原に対する交差反応の危険が最小限であることを特徴とする。したがって、本発明による用語「ヒトモノクローナル抗体」、「ヒトモノクローナル自己抗体」および「ヒト抗体」等は、ヒト起源のものであるSOD1結合分子、すなわち、ヒト細胞、例えばB細胞もしくはそのハイブリドーマ、から単離された、またはヒト細胞、例えばヒト記憶B細胞、のmRNAから直接クローニングされたcDNAから単離されたSOD1結合分子を示すために用いられる。ヒト抗体は、アミノ酸置換が該抗体内で例えば結合特性を向上させるためになされていたとしても、やはり「ヒト」である。
ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体、または下に記載するおよび例えばKucherlapatiらにより米国特許第5,939,598号明細書に記載されたような、1つ以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックな動物であって、内因性免疫グロブリンを発現しない動物に由来する抗体を、本発明の真のヒト抗体と区別するためにヒト様抗体と示す。
例えば、ファージディスプレイから概して単離される合成および半合成抗体などのヒト様抗体の重鎖および軽鎖の対合は、それが元のヒトB細胞中に存在したときの元の対合を必ずしも表さない。したがって、先行技術分野で一般に使用されているような組み換え発現ライブラリーから得られるFabおよびscFvフラグメントは、免疫原性および安定性に対する可能性のある関連効果全てに関して人工的であると見なすことができる。
対照的に、本発明は、選択されたヒト被験体から単離された親和性成熟抗体であって、それらの治療上の有用性および人間におけるそれらの寛容性を特徴とする抗体を提供する。
本明細書で使用する用語「マウス化抗体」または「マウス化免疫グロブリン」は、本発明のヒト抗体からの1つ以上のCDRと、マウス抗体配列に基づくアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入を含有するヒト枠組み領域とを含む抗体を指す。前記CDRを提供するヒト免疫グロブリンを「親」または「アクセプター」と呼び、前記枠組み変化をもたらすマウス抗体を「ドナー」と呼ぶ。定常領域が存在する必要はないが、存在する場合、それらは、通常、マウス抗体定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%以上同一である。それ故、一部の実施形態において、完全長マウス化ヒト重または軽鎖免疫グロブリンは、マウス定常領域と、ヒトCDRと、多数の「マウス化」アミノ酸置換を有する実質的ヒト枠組みとを含有する。典型的に、「マウス化抗体」は、マウス化可変軽鎖および/またはマウス化可変重鎖を含む抗体である。例えば、マウス化抗体は、例えばキメラ抗体の可変領域全体が非マウスであるので、典型的キメラ抗体を包含しない。「マウス化」工程によって「マウス化」された修飾抗体は、CDRを提供する親抗体と同じ抗原に結合し、通常、親抗体と比較してマウスにおける免疫原性が低い。
本明細書で使用される「重鎖部分」という用語は、免疫グロブリン重鎖から派生するアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中間、および/または下方ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、その変異体またはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明で用いる結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明で用いる結合ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全てまたはその一部)が欠失し得る。上記で説明される、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、アミノ酸配列に関して、自然発生する免疫グロブリン分子と異なるように、修飾され得ることを当業者により理解されるであろう。
本明細書に開示される、ある抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体において、マルチマーの1本のポリペプチド鎖の重鎖部分は、該マルチマーの第2のポリペプチド鎖上の重鎖部分に同一である。代替として、本発明の重鎖部分含有モノマーは、同一ではない。例えば、各モノマーは、例えば、異なる標的結合部位を含み得、二重特異性抗体を形成する。
別の実施形態において、本明細書に開示する抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体は、1本のポリペプチド鎖で構成され、例えばscFvであり、ならびに可能性のある生体内治療および診断適用のために細胞内で発現されることとなる(細胞内抗体)。
本明細書に開示される、診断および治療方法で用いる結合ポリペプチドの重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子から派生され得る。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子から派生するCH1ドメインおよびIgG3分子から派生するヒンジ領域を含み得る。別の例においては、重鎖部分は、一部において、IgG1分子から派生するヒンジ領域、および一部において、IgG3分子から派生するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部において、IgG1分子から派生するキメラヒンジ領域、および一部において、IgG4分子から派生するキメラヒンジ領域を含むことができる。
本明細書で使用される「軽鎖部分」という用語は、免疫グロブリン軽鎖から派生するアミノ酸配列を含む。好ましくは、該軽鎖部分は、VLまたはCLドメインのうちの少なくとも1つを含む。
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドエピトープの最小の大きさは、約4〜5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチドまたはポリペプチドエピトープは、好ましくは、少なくとも7個、さらに好ましくは、少なくとも9個、最も好ましくは、少なくとも約15〜約30個のアミノ酸を含む。CDRが、その三級形態において、抗原ペプチドまたはポリペプチドを認識することができるため、エピトープを含むアミノ酸は、隣接する必要がなく、場合によっては、同じペプチド鎖上でなくてもよい。本発明において、本発明の抗体により認識されるペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、さらに好ましくは少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または約15〜30個のSOD1の連続または不連続アミノ酸の配列を含む。
本明細書で同義的に使用される「特異的に結合する」、または「特異的に認識する」により、結合分子、例えば、抗体は、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合し、結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間で幾つかの相補性を引き起こすことを一般的に意味する。本定義によれば、無作為な非関連エピトープに結合するよりもさらに容易に、その抗原結合ドメインを介して、そのエピトープに結合する場合、抗体は、エピトープに「特異的に結合する」とされる。「特異性」という用語は、本明細書では、ある抗体があるエピトープに結合する相対的親和性を示す。例えば、抗体「A」は、抗体「B」よりも所与のエピトープに対して高い特異性を有すると考えられる、または抗体「A」は、関連したエピトープ「D」に対して有するものよりも高い特異性があるエピトープ「C」に結合すると言われ得る。
存在する場合、その全ての文法形式での用語「免疫学的結合特性」または抗原との抗体の他の結合特性は、抗体の特異性、親和性、交差反応性および他の結合特性を指す。
「選択的に結合する」とは、結合分子、例えば、抗体は、関連した、類似の、同種、または相似エピトープに結合するよりもさらに容易に、一つのエピトープに特異的に結合することを意味する。したがって、所与のエピトープに「選択的に結合する」抗体は、このような抗体が関連したエピトープと交差反応し得るとしても、関連したエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が高い。
非限定の例のために、結合分子、例えば、抗体は、第1のエピトープに、第2のエピトープの抗体のKDより少ない解離定数(KD)で結合する場合、選択的に、該第1のエピトープに結合すると考えられ得る。別の非限定の例において、抗体は、第1のエピトープに、その抗体の第2のエピトープに対するKDより少なくとも1桁分少ないKDの親和性で結合する場合、選択的に、第1の抗原に結合すると考えられ得る。別の非限定の例において、抗体は、第1のエピトープに、その抗体の第2のエピトープに対するKDより少なくとも2桁分少ないKDの親和性で結合する場合、選択的に、第1のエピトープに結合すると考えられ得る。
別の非限定の例において、結合分子、例えば、抗体は、第1のエピトープを第2のエピトープの抗体のK(オフ)より少ないオフ率(k(オフ))で結合する場合、選択的に、第1のエピトープに結合すると考えられ得る。別の非限定の例において、抗体は、第1のエピトープに、その抗体の第2のエピトープに対するK(オフ)より少なくとも1桁分少ないK(オフ)の親和性で結合する場合、選択的に、第1のエピトープに結合すると考えられ得る。別の非限定の例において、抗体は、第1のエピトープに、その抗体の第2のエピトープに対するK(オフ)より少なくとも2桁分少ないK(オフ)の親和性で結合する場合、選択的に、第1のエピトープに結合すると考えられ得る。
結合分子、例えば、本明細書に開示された抗体もしくは抗原結合フラグメント、変異体、または誘導体は、本明細書に開示されるSOD1またはそのフラグメントもしくは変異体に、5×10−2秒−1、10−2秒−1、5×10−3秒−1、または10−3秒−1以下のオフ率(k(オフ))で結合すると言える。さらに好ましくは、本発明の抗体は、本明細書に開示されたSOD1、またはそのフラグメントもしくは変異体は、5×10−4秒−1、10−4秒−1、5×10−5秒−1、もしくは10−5秒−1、5×10−6秒−1、10−6秒−1、5×10−7秒−1もしくは10−7秒−1以下のオフ率(k(オフ))で結合すると言える。
結合分子、例えば、本明細書に開示された抗体もしくは抗原結合フラグメント、変異体、または誘導体は、本明細書に開示されたSOD1またはそのフラグメントもしくは変異体に、103M−1秒−1、5×103M−1秒−1、104M−1秒−1、または5×104M−1秒−1以上のオン率(k(オン))で結合すると言える。さらに好ましくは、本発明の抗体は、本明細書に開示されたSOD1、またはそのフラグメントもしくは変異体に、105M−1秒−1、5×105M−1秒−1、106M−1秒−1、または5×106M−1秒−1もしくは107M−1秒−1以上のオン率(k(オン))で結合すると言える。
結合分子、例えば、抗体は、ある程度まで、そのエピトープへの参照抗体の結合を遮断するほど、選択的にそのエピトープに結合する場合、参照抗体を所与のエピトープに結合することを競合的に阻害すると言われる。競合阻害は、当技術分野において任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイにより判定され得る。抗体は、参照抗体を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、所与のエピトープに結合することを競合的に阻害すると言うことができる。
本明細書で使用される「親和性」という用語は、個々のエピトープを結合分子、例えば、免疫グロブリン分子のCDRで結合する強度の尺度を指す。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、27〜28頁を参照されたい。本明細書で使用される「親和力」という用語は、免疫グロブリンの集団と抗原との間の複合体の総合安定性、つまり、免疫グロブリン混合物と抗原との機能的な混合強度を指す。例えば、Harlowの29〜34頁を参照されたい。親和力は、特異的エピトープを有する集団における個々の免疫グロブリン分子の親和性、また、免疫グロブリンと抗原の結合価の両方に関連する。例えば、ポリマー等の2価のモノクローナル抗体と、高度に反復しているエピトープ構造を有する抗原との間の相互作用は、高親和力の1つである。抗原に対する抗体の親和性または親和力は、任意の適した方法を用いて実験により決定することができる;例えば、Berzofskyら、「Antibody−Antigen Interactions」In Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press New York、NY (1984)、Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company New York、NY(1992)、および本明細書に記載の方法を参照されたい。抗原に対する抗体の親和性を測定するための一般技術としては、ELISA、RIA、および表面プラズモン共鳴が挙げられる。特定の抗体−抗原相互作用の測定親和性は、異なる条件、例えば塩濃度、pHのもとで測定すると変動し得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えば、KD、IC50の測定は、好ましくは、抗体および抗原の標準溶液、ならびに標準緩衝液を用いて行う。
本発明の結合分子、例えば、抗体もしくは抗原結合フラグメント、その変異体もしくは誘導体はまた、それらの交差反応性に関して説明される、または指定され得る。本明細書で使用される「交差反応性」という用語は、1つの抗原に対して特異的な抗体の、第2の抗原と反応する能力、すなわち、2つの異なる抗原物質の間での関連性の尺度を指す。したがって、抗体は、その形成を誘発するもの以外のエピトープに結合する場合、交差反応性がある。交差反応性エピトープは、一般に、誘発するエピトープと、多くの同一の相補的構造上の特色を含み、場合によっては、原型よりもよく実際に適合し得る。
例えば、ある抗体は、関連するが、同一でないエピトープ、例えば、参照エピトープに対して、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野において公知の方法を使用して算出され、本明細書に記載されるような)を有するエピトープに結合するという点において、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満の同一性(当技術分野において公知の方法を使用して算出され、本明細書に記載されるような)を有するエピトープに結合しない場合、交差反応性がほとんどない、または交差反応性がないと言われ得る。抗体は、あるエピトープに対して、そのエピトープのいずれの他の類似体、オーソログ、またはホモログにも結合しない場合、「高度に特異的」と判断され得る。
結合分子、例えば、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体はまた、SOD1へのそれらの結合親和性において、記載される、または特定され得る。好ましい結合親和性は、解離定数またはKdが5×10−2M未満、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、または10−15Mを有するものを含む。
前に表されるように、サブユニット構造および様々な免疫グロブリンのクラスの定常領域の3次元構造は、公知である。本明細書で使用される「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖の第1の(ほとんどのアミノ末端)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域へのアミノ末端である。
本明細書で使用される「CH2ドメイン」という用語は、例えば、従来の番号付けスキーム(244〜360の残基、Kabat番号付け(numbering)体系、および231〜340の残基、EU番号付け(numbering)体系)を使用して、抗体の約244〜360の残基から延在する重鎖分子部分を含む。前掲書中のKabat EAらを参照されたい。CH2ドメインは、別のドメインと密接して対にならないという点において、独特である。むしろ、2つのN結合型分枝炭水化物鎖を、無傷の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に置く。また、CH3ドメインは、CH2ドメインからIgG分子のC末端に延在し、約108の残基を含むことも文書で十分に立証される。
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結する重鎖分子の部分を含む。本ヒンジ領域は、約25個の残基を含み、順応性がある故に、2つのN末端抗原結合領域を単独で移動させることが可能である。ヒンジ領域は、3つの異なるドメイン、すなわち上部、中間、および下方ヒンジドメインに再分割することができる(Roux et al.,J.Immunol.161(1998):4083−4090)。
本明細書で使用される「ジスルフィド結合」という用語は、2つの硫黄原子間で形成される共有結合を含む。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成する、または第2のチオール基で架橋することができる、チオール基を含む。ほとんどの自然発生するIgG分子において、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合により連結され、2本の重鎖は、Kabat番号付け(numbering)体系(226位または229位、EU番号付け(numbering)体系)を使用して、239位および242位に対応する、2つのジスルフィド結合により連結される。
本明細書で使用される「連結される」、「融合される」、または「融合」は、同義的に使用される。これらの用語は、化学的結合を含む、いかなる手段または組み換え手段による、2つ以上の要素または成分の結合をも指す。「インフレームの融合」とは、元のORFの正確な翻訳リーディングフレームを維持するように、連続したより長いORFを形成するための2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)の結合を指す。したがって、組み換え融合タンパク質は、(セグメントは、本来は、通常、そのように結合しない)元のORFによりコードされるポリペプチドに対応する、2つ以上のセグメントを含む、単一タンパク質である。本リーディングフレームは、このようにして、融合されたセグメントを通して連続するようにされるが、本セグメントは、例えば、インフレームのリンカー配列により、物理的に、または空間的に分離され得る。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドは、インフレームで融合され得るが、「融合した」CDRが、連続ポリペプチドの一部として共翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリン枠組み領域、または追加のCDR領域をコードするポリヌクレオチドにより分離し得る。
本明細書で使用される「発現」という用語は、遺伝子が、例えば、RNAまたはポリペプチド等の生化学物質を生成する過程を指す。本過程は、遺伝子ノックダウン、ならびに、一時的発現および安定発現の両方が挙げられるが、これらに限定されない、細胞内での、遺伝子の機能的存在の任意の発現を含む。それは、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、またはいずれの他のRNA生成物への遺伝子の転写、およびポリペプチドへのこのようなmRNAの翻訳を含むが、これらに限定されない。最終の所望の生成物が生化学物質である場合、発現は、その生化学および任意の前駆体の生成を含む。遺伝子の発現は、「遺伝子生成物」を生成する。本明細書で使用される遺伝子生成物は、例えば、遺伝子の転写により生成されるメッセンジャーRNA等の核酸、あるいは転写から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載される遺伝子生成物は、例えば、ポリアデニル化等の転写後修飾した核酸、または、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の添加、他のタンパク質のサブユニットとの関連、タンパク質分解的切断等の転写後修飾したポリペプチドをさらに含む。
本明細書で使用する用語「サンプル」は、被験体または患者から得た任意の生体材料を指す。一態様において、サンプルは、血液、脳脊髄液(「CSF」)または尿を含み得る。他の態様において、サンプルは、全血、血漿、血液サンプルから濃縮されたB細胞、および培養細胞(例えば、被験体からのB細胞)を含み得る。サンプルとしては、生検材料、または神経組織をはじめとする組織サンプルも挙げることができる。さらに他の態様において、サンプルは、全細胞および/または細胞の溶解産物を含み得る。当技術分野において公知の方法によって血液サンプルを採集することができる。一態様では、200μL緩衝液(20mM Tris、pH7.5、0.5%Nonidet、1mM EDTA、1mM PMSF、0.1M NaCl、IX Sigmaプロテアーゼ阻害剤、ならびにIX Sigmaホスファターゼ阻害剤1および2)中、4℃でボルテックスすることによって、ペレットを再懸濁させることができる。その懸濁液を間欠的にボルテックスしながら20分間氷上で保持することができる。15,000xgで5分間、約4℃での回転後、上清のアリコートを約−70℃で保存することができる。
本明細書で使用される「治療(処置)する」または「治療(処置)」という用語は、治療的処置および予防的もしくは再発防止の両方を指し、その目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進展等の望ましくない生理学的変化または疾患を予防する、または遅延する(軽減する)ことである。有益な、または所望の臨床結果は、検出可能または検出できないにかかわらず、症状の緩和、疾病の範囲の縮小、疾病の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾病の進行の遅延もしくは緩徐化、疾病状態の改善もしくは緩和、および鎮静(部分的または完全な)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合の予想される生存と比較して、生存期間の延長を意味することができる。治療を必要とする者は、状態もしくは疾患に既に罹患する者、ならびに、状態もしくは疾患を有する傾向がある者、または状態もしくは疾患の発現を予防している者を含む。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」、または「哺乳類」は、任意の対象、特に、哺乳類の対象、例えば、診断、予後、予防、または治療が望ましいヒト患者を意味する。
II.抗体
本発明は、実施例において例証する抗体について略述するような免疫学的結合特性および/または生物学的特性を好ましくは明示するヒト抗SOD1抗体およびそれらの抗原結合フラグメントに一般に関する。本発明に従って、SOD1に対して特異的なヒトモノクローナル抗体を健常ヒト被験体のプールからクローニングした。
本発明に従って行った実験過程で、ヒト記憶B細胞培養物の調整培地中の抗体を、組み換えまたはミスフォールド/凝集SOD1タンパク質への結合およびウシ血清アルブミン(BSA)への結合について並行してスクリーニングした。組み換えまたはミスフォールド/凝集SOD1については陽性だったがBSAについては陽性でなかったB細胞培養物のみを抗体クローニングに付した。第二のスクリーニングラウンドでも、凝集SOD1について陽性であったB細胞培養物を抗体クローニングに付した。
特異的抗体に単離する最初の試みは、血漿中の循環SOD1抗体のレベル上昇を示唆する、SOD1への高い血漿結合活性を有する健常ヒト被験体のプールに焦点を合わせた。意外にもこれらの試みはSOD1特異的ヒト記憶B細胞の産生に失敗したので、高いSOD1血漿反応性について予備選択されていないまたはSOD1に対して低い血漿反応性を有した健常ヒト被験体のプールから本発明に記載の抗体を単離した。
この措置のために、幾つかの抗体を単離することができた。選択された抗体をクラスおよび軽鎖サブクラス決定のためにさらに分析した。その後、記憶B細胞培養物からの選択された適切な抗体メッセージをRT−PCRによって転写し、クローニングし、組み合わせて組み換え産生用の発現ベクターにする;添付の実施例を参照されたい。HEK293またはCHO細胞におけるヒト抗体の組み換え発現、その後の、ヒト組み換えSOD1に対する該ヒト抗体の結合特異性についての特性付け(図2および3)およびそれらの病的ミスフォールド/凝集形態への該ヒト抗体の示唆的結合についての特性付け(図4から図6)により、SOD1に対して高特異的であり、病的ミスフォールド/凝集形態のSOD1タンパク質を示唆的に認識するヒト抗体が初めてクローニングされたことを確認した。第二の実験ラウンドにより、図9に示すように上の発見を確認した。本発明の抗体の結合親和性に関する情報をまとめてある表IIIも参照されたい。
したがって、本発明は、一般に、単離された自然発生ヒトモノクローナル抗SOD1抗体ならびにその結合フラグメント、誘導体および変異体に関する。本発明の一実施形態において、本抗体は、完全長組み換えSOD1および/または病的ミスフォールド/凝集形態の組み換えSOD1に(図4および実施例2参照)、生理的SOD1二量体の凝集体に(図5および実施例3参照)ならびに生体内でSOD1凝集体に(図6および実施例4参照)特異的に結合することができる。一実施形態において、本発明の抗体は、SOD1のC末端に特異的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗体は、SOD1のN末端に特異的に結合する。さらなる実施形態において、本発明の抗体は、SOD1の中央ドメインに特異的に結合する(実施例5、および要約については表IVを参照されたい)。
一実施形態において、本発明は、NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.9F6、NI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3から成る群より選択される参照抗体と同じSOD1エピトープに特異的に結合する抗SOD1抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体を対象とする。エピトープマッピングにより、aa93−99DGVADVS(配列番号2)を含むヒトSOD1の微小管結合ドメイン内の配列が、本発明の抗体NI−204.10D12によって認識される独特な線状エピトープとして同定された。エピトープマッピングにより、本発明の抗体NI−204.10A8によって認識されるエピトープが局在しているaa10−60を含むSOD1 N末端ドメイン内の配列が同定された。さらなるマッピングにより、本発明の抗体NI−204.10A8によって認識されるエピトープが、aa9−55 LKGDGPVQGIINFEQKESNGPVKVWGSIKGLTEGLHGFHVHEFGDNT(配列番号52)を含む配列に限定された。実施例5および実施例5の表IVに詳細に記載するように、本発明の以下の抗体のエピトープもマッピングした。それらは以下のものを含むSOD1配列内に局在する:抗体NI−204.12G7についてはaa73−83 GGPKDEERHVG(配列番号51);抗体NI−204.11F11についてはaa113−119 IIGRTLV(配列番号53);抗体NI−204.6H1についてはaa85−95 LGNVTADKDGV(配列番号54);抗体NI−204.12G3についてはaa121−135 HEKADDLGKGGNEES(配列番号55);抗体NI−204.7G5についてはaa101−107 EDSVISL(配列番号56);抗体NI−204.7B3についてはaa137−143 KTGNAGS(配列番号57);抗体NI−204.34A3についてはaa85−95 LGNVTADKDGV(配列番号58);および抗体NI−204.25H3についてはaa73−79 GGPKDEE(配列番号59)。
最も有利なこととして、本発明の抗体NI−204.10D12によって認識されるエピトープは、他の種、例えばマウスおよびラットにおいても高度に保存され、抗体を用いるそれぞれの動物モデルでの追加の研究ツールに本発明の抗体を備えさせることができる。さらに、初期の実験的観察に拘束されることを意図しないが、実施例4で実証し、図6に示すように、本発明のヒトモノクローナルNI−204.10D12およびNI−204.12G7抗SOD1抗体は、好ましいことに、病的ミスフォールド/凝集SOD1に特異的に結合することおよび脊髄組織における生理的形態のSOD1を実質的に認識しないことを特徴とする。それ故、本発明は、結合特異性を有する、したがって、診断および治療のために特に有用である1セットのヒトSOD1抗体を提供する。本発明の結合特異性についてのさらなる詳細および概要についての図9および表IIIも参照されたい。
一実施形態において、本発明の抗体は、実施例に記載するような例示的NI−204.10D12抗体の結合特性を呈する。加えて、または代替として、本発明のSOD1抗体は、詳細には実施例3および実施例4に従って分析したとき、生理的SOD1二量体ではなく病的ミスフォールド/凝集SOD1を優先的に認識する。加えて、または代替として、本発明の抗SOD1抗体は、ヒトSOD1の病因性突然変異体、特に、実施例4に記載するものに結合する。本文脈での結合特異性は、例示的NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7およびNI−204.9F6抗体について図3、それぞれ図4に示すような範囲であり得、すなわち、約10pMから100nMの半最大有効濃度(EC50)、最も好ましくは、NI−204.10D12およびNI−204.10A8について示すように野生型SOD1に対して約100pMから10nMのEC50、またはNI−204.12G7について示すように野生型SOD1に対して約10pMから1nMのEC50を有する。加えてまたは代替として、前記結合特異性は、本発明の例示的抗体について実施例8および実施例8の表IIIに示すような範囲であり得、すなわち、野生型(組み換え)SOD1に対して、NI−204.7G5およびNI−204.7B3について示すように約10pMから100nMの半最大有効濃度(EC50)、最も好ましくは約100pMから75nMのEC50;NI−204.6H1およびNI−204.34A3について示すように約10pMから100 nMの、最も好ましくは約100pMから10nMのEC50;またはNI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.12G3およびNI−204.25H3について示すように約100pMから10nMの、最も好ましくは約10 pMから1nMのEC50を有する。
一部の精製抗体は、多彩な生体分子、例えばタンパク質に結合する。当業者には理解されるように、特異的なという用語を、本明細書では、SOD−1タンパク質またはそのフラグメントより他の生体分子のほうが、抗原結合分子、例えば、本発明の抗体の1つ、に有意に結合しないことを示すために使用する。好ましくは、SOD−1以外の生体分子への結合レベルは、結果として、SOD−1への親和性の、それぞれ、多くとも20%以下に過ぎない、10%以下、5%以下に過ぎない、2%以下に過ぎないまたは1%以下に過ぎない(すなわち、少なくとも5、10、20、50または100倍低い)結合親和性となる。
それ故、好ましくは、本発明の抗SOD1抗体は、実施例3でダイレクトELISAにより例示するように、および実施例4で説明する免疫組織化学的染色により脊髄に関して例示するように、病的形態のSOD1、例えば、病的ミスフォールド/凝集SOD1に優先的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗SOD1抗体は、実施例2および実施例3でダイレクトELISAにより例示するように、組み換えSOD1と病的ミスフォールド/凝集形態のSOD1両方に優先的に結合する。
前に述べたように、SOD1凝集体はまた、AD患者のアミロイド老人斑および神経原線維変化に付随して見つけることができる。したがって、一実施形態において、本発明の抗体は、アルツハイマー病の治療に有用であり得る。
本発明は、NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.9F6、NI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3から成る群より選択される抗体のものと同一の抗原結合ドメインを含む抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体に関する。
本発明は、幾つかのそのような結合分子、例えば、抗体およびその結合フラグメントであって、それらの可変領域、例えば結合ドメインに、図1に図示するアミノ酸配列のいずれか1つを含むVHおよび/またはVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを特徴し得る結合分子をさらに例示する。上で特定した可変領域をコードする、対応するヌクレオチド配列を、下の表IIに示す。VHおよび/またはVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的セットを図1に図示する。しかし、以下で論ずるように、当業者は、加えてまたは代替として、CDR2およびCDR3の場合、それらのアミノ酸配列が図1に示すものと1個、2個、3個またはさらにそれ以上のアミノ酸の点で異なるCDRを使用できるということを十分に承知している。
一実施形態において、本発明の抗体は、図1に図示するようなVHおよび/またはVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞中に存在したときと同種の重鎖−軽鎖対合の保存を特徴とする。あるいは、本発明の抗体は、図1に図示するようなVHおよび/またはVL領域を有する抗体の少なくとも1つとSOD1への結合について競合する抗体、またはその抗原結合フラグメント、誘導体もしくは変異体である。それらの抗体は、特に治療適用のために、ヒト抗体であってもよい。あるいは、前記抗体は、マウス、マウス化およびキメラマウス−ヒト抗体であり、これらは動物における診断方法および研究に特に有用である。
一実施形態では、培養される単一またはオリゴクローナルB細胞の培養物と該B細胞によって産生された抗体を含有する該培養物の上清とを、それらの中の抗SOD1抗体の存在および親和性についてスクリーニングすることにより、本発明の抗体を提供する。前記スクリーニング工程は、国際公開第WO2004/095031号パンフレット(この開示内容は、参照により本明細書に組み込まれている)に記載されているものなどの、感受性組織アミロイド班免疫反応性(TAPIR)アッセイ段階;国際公開第WO2008/081008号パンフレットに記載されているものなどの、脳および脊髄切片での凝集SOD1への結合についてのスクリーニング段階;配列番号1によって表されるアミノ酸配列のSOD1に由来するペプチドの結合についてスクリーニングする段階;配列番号1によって表されるアミノ酸配列の組み換えヒトSOD1の結合についてスクリーニングする段階;配列番号1によって表されるアミノ酸配列の生理的SOD1二量体の凝集体の結合についてスクリーニングする段階、および結合が検出される抗体または該抗体を産生する細胞を単離する段階を含む。
上で述べたように、ヒト免疫反応に基づいて産生されるため、本発明のヒトモノクローナル抗体は、特定の病態に関連したものであるエピトープであって、例えばマウスモノクローナル抗体の産生のための免疫工程の場合およびファージディスプレイライブラリーの体外スクリーニングの場合には、それぞれ、利用できないまたは免疫原性が低いであろうエピトープを認識することとなる。したがって、本発明のヒト抗SOD1抗体のエピトープが独特であり、本発明のヒトモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに結合し得る他の抗体が存在しないことを明記することは賢明である;抗体NI−204.10D12の独特なエピトープを示す図7、ならびに抗体NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.11F11、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3の独特なエピトープを示す表IVも参照されたい。
したがって、本発明は、一般に、SOD1への特異的結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗SOD1抗体およびSOD1結合分子にも及ぶ。より具体的には、本発明は、NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8、NI−204.9F6、NI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3から成る群より選択される参照抗体と同じSOD1エピトープに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体を対象とする。
抗体間の競合は、試験下で免疫グロブリンがSOD1などの共通抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイによって判定される。非常に多くのタイプの競合的結合アッセイが公知である、例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら、Methods in Enzymology 9(1983)、242−253参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら、J.Immunol.137(1986)、3614−3619およびCheungら、Virology 176(1990)、546−552参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(HarlowおよびLane、Antibodies,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)参照)、I125標識を使用する固相直接標識RIA(Morelら、Molec.Immunol.25(1988)、7−15およびMoldenhauerら、Scand.J.Immunol.参照)。32(1990),77−82.典型的に、このようなアッセイは、固体表面に結合された精製SOD1またはその凝集体、またはこれらのいずれかを保有する細胞と、標識されていない試験免疫グロブリンと、標識された参照免疫グロブリン、すなわち本発明のヒトモノクローナル抗体との使用を伴う。競合的阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で前記固体表面または細胞に結合した標識の量を判定することによって測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。好ましくは、書き添える実施例においてELISAアッセイについて説明するような条件下で競合的結合アッセイを行う。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)としては、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および発生する立体障害のために参照抗体が結合するエピトープに十分近位の隣接抗体に結合する抗体が挙げられる。通常、競合抗体が過剰に存在すると、それは、共通抗原への参照抗体の特異的結合を少なくとも50%または75%阻害するであろう。それ故、本発明は、NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8、NI−204.9F6、NI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3から成る群より選択される参照抗体がSOD1に結合するのを競合的に阻害する抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体にさらに関する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的には免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる、または免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離ポリペプチドを提供し、重鎖可変領域のうちの少なくとも1つのVH−CDR、または重鎖可変領域のVH−CDRのうちの少なくとも2つは、本明細書に開示された抗体からの参照重鎖VH−CDR1、VH−CDR2、またはVH−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。代替として、VHのVH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3領域は、本明細書に開示された抗体からの参照重鎖VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。したがって、本実施形態によると、本発明の重鎖可変領域は、図1に示される群に関連するVH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1は、Kabatシステムにより定義されるVH−CDRを示す一方、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムにより定義されるVH−CDRもまた、本発明に含み、図1に提示されるデータを使用して、当業者により容易に同定され得る。
別の実施形態において、本発明は、VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3領域は、図1に示される、VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3群に同一である、ポリペプチド配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的には免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる、または免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離ポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3領域は、いずれか1つのVH−CDRにおいて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのアミノ酸置換を除いて、図1に示される、VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3群に同一である、ポリペプチド配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む、本質的には免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる、または免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離ポリペプチドを提供する。ある実施形態において、アミノ酸置換は、保存的である。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的には免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる、または免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離ポリペプチドを提供し、軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つのVL−CDR、または軽鎖可変領域のうちの少なくとも2つのVL−CDRは、本明細書に開示された抗体からの参照軽鎖VL−CDR1、VL−CDR2、またはVL−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。代替として、VLのVL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3領域は、本明細書に開示された抗体からの参照軽鎖VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。したがって、本実施形態に従い、本発明の軽鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチドに関連してVL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1は、Kabatシステムにより定義されるVL−CDRを示す一方、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムにより定義されるVL−CDRもまた、本発明に含む。
別の実施形態において、本発明は、VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3領域は、図1に示される、VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3群に同一である、ポリペプチド配列を有する、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む、本質的には免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる、または免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離ポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3領域は、いずれか1つのVL−CDRにおいて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのアミノ酸置換を除いて、図1に示される、VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3群に同一である、ポリペプチド配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)を含む、本質的には免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる、または免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる単離ポリペプチドを提供する。ある実施形態において、アミノ酸置換は、保存的である。
免疫グロブリンまたはそのコードするcDNAは、さらに修飾され得る。したがって、さらなる実施形態において、本発明の方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fab−フラグメント、二重特異的抗体、融合抗体、標識化抗体、またはそれらのうちのいずれか1つの類似体を生成するためのステップのうちのいずれか1つを含む。対応する方法は、当業者には公知であり、例えば、Harlow and Lane“Antibodies,A Laboratory Manual”,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988に記載される。該抗体の誘導体は、ファージ提示法により得られる場合、BIAcoreシステムに利用される、表面プラズモン共鳴は、本明細書に記載の抗体のうちのいずれか1つのファージ抗体と同一のエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるために使用することができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97−105、Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7−13)。キメラ抗体の産生は、例えば、国際公開第WO89/09622号に記載される。ヒト化抗体の産生方法は、例えば、欧州特許第EP−A1 0 239 400号および国際公開第WO90/07861号に記載される。本発明に従って、利用される抗体のさらなる起源は、いわゆる異種抗体である。マウスにおけるヒト抗体等の異種抗体の産生のための一般的原理は、例えば、国際公開第WO91/10741号、第WO94/02602号、第WO96/34096号、および第WO96/33735号に記載される。上記に論じられるように、本発明の抗体は、様々な型に存在し、完全抗体のほかに、例えば、Fv、Fab、およびF(ab)2を含む、ならびに一本鎖を含み得る。例えば、国際公開第WO88/09344号を参照されたい。
本発明の抗体またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当技術分野において既知の従来の技法を使用して、例えば、アミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/または組み換え、および/または単独、あるいは組み合わせのいずれかで、当術分野において既知のいずれの他の修飾を使用することにより、さらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎をなすDNA配列におけるこのような修飾を導入する方法は、当業者に公知である。例えば、Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.およびAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)を参照されたい。本発明の抗体の修飾は、1つ以上の構成アミノ酸における化学的および/または酵素的誘導体化を含み、例えば、側鎖修飾、骨格修飾、ならびにNおよびC末端修飾、例えば、アセチル化、水酸化、メチル化、アミド化、および炭水化物または脂質部分、共同因子等の付着を含む。同様に、本発明は、記載の抗体またはカルボキシル末端での免疫刺激リガンド等の異種分子に融合されたアミノ末端での幾つかのそのフラグメントを含む、キメラタンパク質の産生を包含する。例えば、対応する技術的詳細に関しては、国際公開第WO00/30680号を参照されたい。
さらに、本発明は、上に記載される、結合分子を含むもの、例えば、重鎖CDR3(HCDR3)は、抗原抗体相互作用において、さらに高い変動率、および優勢な関与を有する領域であることが、しばしば、観察されているため、言及された抗体、特に、重鎖のCDR3のうちのいずれか1つの可変領域のCDR3領域を含む、小ペプチドを包含する。このようなペプチドは、本発明に従って、有用な結合剤を生成するための組み換え手段により、容易に合成される、または生成され得る。このような方法は、当業者には公知である。ペプチドは、例えば、市販の自動ペプチドシンセサイザーを使用して、合成することができる。ペプチドは、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込み、細胞を発現ベクターに変えてペプチドを産生することにより、組み換え技術によって、産生することができる。
それ故、本発明は、本発明のヒト抗SOD1抗体に指向され、言及した特性を提示する、すなわちSOD1を特異的に認識する任意の結合分子、例えば抗体またはその結合フラグメントに関する。このような抗体および結合分子を、本明細書に記載のELISAおよび免疫組織化学によってそれらの結合特異性および親和性について試験することができる。例えば実施例を参照されたい。前記抗体および結合分子のこれらの特性をウエスタンブロットによって試験することもできる。本発明に従って行ったその後の実験の予備的結果により、本発明の抗体のヒト抗SOD1抗体、特に抗体NI−204.10D12およびNI−204.12G7は、ヒトG93A SOD1を過発現するトランスジェニックマウスにおいてSOD1病態に別様に結合することが明らかになった。NI−204.10D12およびNI−204.12G7は、後角でより前角ならびに白質の前および後柱でのほうが見つけられる頻度が高い、ヒト筋萎縮性側索硬化症の際に見られるものに類似した神経フィラメントに富むスフェロイドにおいて、および神経フィラメントに富む封入体で満たされた肥厚ジストロフィー性神経突起において、病的ミスフォールド/凝集SOD1への強い結合指向性を示す。抗体の優先的結合は、スーパーオキシドジスムターゼ1の異常凝集体から主として成る、細胞内分散封入体、レヴィー小体様封入体および細胞外凝集体内でも観察され得る;実施例4および図6を参照されたい。これらの実験(実施例4および図9参照)の反復により、上述の評価が裏付けられ、本発明のさらなる抗体の結合特異性についての予備発見が拡大される。上記所見に従って、本発明の抗体は、ALSモデルマウスの腰部脊髄における異なるSOD1病態パターンを明らかにすることができる。特に、抗体NI−204−12G7ならびにさらに抗体NI−204.11F11、NI.204.6H1、NI.204.12G3、NI.204.25H3、NI.204.34A3およびNI.204.7B3は、細胞質SOD1封入体(主として運動ニューロンにおけるもの)および細胞外SOD1凝集体を含むSOD1病態の可視化のために本発明に従って使用することができる。動物組織中の病的形態のSOD1に対するこの結合特異性により、本明細書(実施例3および8参照)に示す生化学実験に加えて、脳内でのミスフォールド/凝集SOD1の出現を随伴する疾病の治療および診断における本発明の抗体の有用性が強調される。
抗体NI−204.10A8は、上で説明した実験においてヒト生理的SOD1二量体およびミスフォールド/凝集ヒトSOD1への同等の結合親和性を示した。しかし、実験の部(実施例8)で詳細に示すように、抗体NI−204.10A8での反復実験は、生理的SOD1および凝集SOD1に対する結合親和性の有意な減少も示した。これらの発見は、前記抗体の保存感受性を示すように思われ、少なくとも一部は、この保存感受性が、20nM、実施例3において算出するとそれぞれ30nMから、表IIIに示すように両方の形態のSOD1について100nMを超えるまでの生理的SOD1立体構造とミスフォールド/凝集SOD1立体構造両方について観察される親和性変化の原因であるだろう。
この態様での一実施形態において、本発明は、温度および/または保存非感受性抗体であって、長期保存期間にわたっておよび/または非生理的温度、すなわち4℃未満の温度への曝露、特に約−80℃から−20℃での保存の後にそれらの結合能力を少なくとも大部分保持する抗体を提供する。さらに、一実施形態において、本発明は、長期保存後に改良された結合親和性および/または親和性を示す、温度および/または保存感受性である抗体をさらに提供する。本明細書で言及するこの親和性変化を、生理的SOD−1タンパク質およびそれぞれのミスフォールド/凝集SOD−1タンパク質の識別的結合から非識別的結合への変化と定義する。
予備的染色結果について、図9に示す全ての抗体は、適切な抗体濃度を用いると、細胞内分散封入体、びまん性細胞質構造および空胞構造の染色を示す。参照抗体B8H10との比較対象となるより大きな凝集体の染色(図9M)により、本発明の抗体は2群に分けられる:抗体NI204−12G7、NI204−11F11、NI204−6H1、NI204−12G3、NI204−7G5、NI204−25H3、NI204−34A3およびNI204−7B3(図9B、C、F、G、H、I、J およびK)は、脊髄腹側角におけるこれらの凝集体を染色し、これに対してNI204−10D12、NI204−10A8およびNI204−67E12(図9A、Dおよび E)は、これらの構造を染色せず、可溶性ミスフォールド形態の突然変異体ヒトSOD1に対して特異的である参照抗体C4F6(図9L)に類似している(Boscoら、2010、Nat Neuroscience 13(11);1396−1403)。加えて、抗体NI204−10D12、NI204−6H1およびNI204−7G5は、脊髄背側角切片における膠様質のびまん性染色を示す。
B細胞またはB記憶細胞の培養から直接免疫グロブリンを得るための代替手段として、細胞を、その後の発現および/または遺伝子操作に対して、再配列された重鎖および軽鎖遺伝子座の起源として使用することができる。再配列された抗体遺伝子を適切なmRNAから逆転写し、cDNAを産生することができる。必要に応じて、重鎖定常領域は、異なるイソタイプの重鎖定常領域と交換する、または共に除去することができる。該可変領域は、一本鎖Fv領域をコードするために連結することができる。多数のFv領域を連結し、利用することができる、1つ以上の標的またはキメラ重鎖および軽鎖の組み合わせに結合能力を与えることができる。遺伝物質が利用可能となると、所望の標的に結合する能力を共に保有する上に記載の類似体の設計は容易である。抗体可変領域のクローニング方法、および組み換え抗体の産生方法は、当業者に公知であり、例えば、Gilliland et al.,Tissue Antigens 47(1996),1−20、Doenecke et al.,Leukemia 11(1997),1787−1792に記載される。
一旦、適切な遺伝物質を得、必要に応じて、類似体をコードするために修飾されると、最小限に、重鎖および軽鎖の可変領域をコードするものを含むコード配列を、標準組み換え宿主細胞にトランスフェクトすることができるベクター上に含まれる、発現系に挿入することができる。このような様々な宿主細胞を使用し得るが、効率的過程のためには、哺乳類細胞が好ましい。本目的のために有用な典型的な哺乳類細胞株としては、CHO細胞、HEK293細胞、またはNSO細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
抗体または類似体の産生は、その後、宿主細胞の成長およびコード配列の発現に適切な培養状態下で、修飾された組み換え宿主を培養することにより行われる。抗体は、その後、培養物からそれらを単離することにより回復される。発現系は、得られる抗体を培地中に分泌されるが、細胞内産生も可能であるように、シグナルペプチドを含むように設計されることが好ましい。
上記に従って、本発明はまた、本発明の抗原または結合分子をコードするポリヌクレオチドに関し、該抗体の場合、好ましくは、上に記載の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域である。典型的には、ポリヌクレオチドによりコードされる該可変領域は、該抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
当業者は、上に記載の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインを、他のポリペプチドまたは所望の特異性および生物学的機能の抗体の構築物のために使用することができることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はまた、上に記載の可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、有利に、添付の実施例に記載される、抗体と同一または類似の結合特性を実質的に有する、ポリペプチドおよび抗体を包含する。当業者は、結合親和性が、CDR内または超可変環状内でアミノ酸置換を作製することにより増進し得ることを理解しており(Riechmann, et al, Nature 332 (1988), 323−327)、それは、Kabatに定義されるように、CDRで部分的に重複する。したがって、本発明はまた、抗体に関し、1つ以上の記述されたCDRは、1つ以上のアミノ酸置換、好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖のうちの1つまたは両方において、図1に記載されるように、可変領域の2つまたは全て3つのCDRを含む。
結合分子、例えば、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、当業者に公知のように、1つ以上のエフェクター機能を媒介する定常領域を含むことができる。例えば、相補体のC1成分の抗体定常領域への結合は、相補体系を活性化し得る。相補体の活性化は、細胞の病原体のオプソニン化および溶解において重要である。相補体の活性化はまた、炎症反応を刺激し、自己免疫過敏性にも関与し得る。さらに、抗体は、細胞上のFc受容体(FcR)に結合する抗体Fc領域上におけるFc受容体結合部位で、Fc領域を介して、様々な細胞上の受容体に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(エプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)、およびIgM(ミュー受容体)を含む、抗体の異なるクラスに対して特異的である、多くのFc受容体が存在する。細胞表面上で抗体のFc受容体への結合は、多くの重要かつ様々な生物学的反応を誘発し、それには、抗体被覆された粒子の巻き込みおよび破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞により抗体被覆された標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、またはADCCと称する)、炎症性メディエータの放出、免疫グロブリン産生の胎盤通過および制御が含まれる。
従って、本発明のある実施形態は、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体を含み、1つ以上の定常領域ドメインのうちの少なくとも一部分は、ほぼ同一の免疫原性の全不変抗体と比較する場合、低減されたエフェクター機能、非共有結合的に二量化する能力、SOD1凝集および蓄積の部位で特定するための増大する能力、血中半減期の低減、もしくは増大する血中半減期等の所望の生化学的性質を提供するために、削除される、またはそれ以外の方法で改変される。例えば、本明細書に記載される、診断および治療方法で用いる、ある抗体は、免疫グロブリン重鎖に類似するポリペプチド鎖を含むが、1つ以上の重鎖ドメインの少なくとも一部分を欠失する、ドメイン欠失抗体である。例えば、ある抗体において、修飾抗体の定常領域の1つの全ドメインを欠失する、例えば、CH2ドメインの全てまたはその一部を欠失する。他の実施形態において、本明細書に記載される診断および治療方法で用いる、ある抗体は、定常領域、例えば、IgG重鎖定常領域を有し、グリコシル化を排除するために改変され、本明細書の他の部分にアグリコシル化抗体または「アグリ」抗体と言われる。このような「アグリ」抗体は、酵素的に、ならびに、定常領域において、合意のグリコシル化部位を改変することにより調製され得る。理論により結合されないが、「アグリ」抗体は、生体内で改善された安全かつ安定性のあるプロファイルを有し得ると考えられている。アグリコシル化抗体を産生し、所望のエフェクター機能を有する方法は、例えば、国際公開第WO2005/018572号に認められ、その全体において参照することにより組み込まれる。
本明細書に記載される、ある抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体において、当技術分野において既知の技術を使用して、Fc部分を変異させ、エフェクター機能を削減され得る。例えば、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点変異または他の手段によって)は、循環する修飾抗体の結合するFc受容体を削減し、それにより、SOD1局在を増大する。他の場合において、本発明と一致する定常領域修飾は、相補体結合を緩和し、ひいては、血中半減期および共役された細胞毒素の非特異性の関連性を削減し得る。定常領域のさらに別の修飾は、増大する抗原特異性または抗体柔軟性のため、局在化の強化を可能にするジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を修飾するために使用され得る。得られる生理学的プロファイル、バイオアベイラビリティ、およびSOD1局在、生体内分布、ならびに血中半減期等の修飾の他の生化学的影響は、過度な実験を行うことなく、公知の免疫学的技法を使用して、容易に測定および定量化され得る。
本明細書に記載するある抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体では、Fc部分を突然変異させて、または代替タンパク質配列に交換して、例として、Fcγ受容体、LRPもしくはThy1受容体による抗体の受容体媒介エンドサイトーシスを増進することにより、または抗体を生細胞に該細胞を害することなくシャトルすることを可能にすると言われている「スーパー抗体技術(Super Antibody Technology」(Expert Opin.Biol.Ther.(2005),237−241)により、抗体の細胞取り込み量を増加させることができる。例えば、抗体結合領域と、細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドとの、または細胞表面受容体ばかりでなくSOD1にも結合する特異的配列を有する二重もしくは多重特異性抗体との融合タンパク質の産生を、当技術分野において公知の技術を用いて巧みに実行することができる。本明細書に記載する一定の抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体では、Fc部分を突然変異させるもしくは代替タンパク質配列に交換することができ、または該抗体を、その血液脳関門透過を増加させるように化学的に修飾することができる。
本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体の修飾型は、当技術分野において既知の技法を使用して、全前駆体または親抗体から作製され得る。例示的な技法は、本明細書でさらに詳細に論じられる。 本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体を、当技術分野において既知の技法を使用して、作製または製造することができる。ある実施形態において、抗体分子またはそのフラグメントは、「組み換え技術によって産生された」、すなわち、組み換えDNA技術を使用して産生される。抗体分子またはそのフラグメントを作製する例示的な技法は、本明細書の他の部分でさらに詳細に論じられる。
本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体はまた、修飾される、例えば、共有結合は、抗体がその類似したエピトープに特異的に結合することを阻止しないように、抗体への任意の型の分子の共有結合による誘導体も含む。例えば、限定されないが、抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化反応、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合等により修飾される、抗体を含む。任意の多数の化学修飾を、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等が挙げられるが、これらに限定されない、公知の技法により実施することができる。さらに、本誘導体は、1つ以上の非古典的なアミノ酸を含み得る。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、処置される動物、例えば、ヒトにおける、有害免疫反応を引き出さない。ある実施形態において、結合分子、例えば、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、患者、例えば、ヒト患者から派生し、有害免疫反応の発生を緩和する、または最小化する、例えば、ヒトから派生する同一の種に実質的に使用される。
脱免疫化をもまた、抗体の免疫原性を低減するために使用することができる。本明細書で使用される「脱免疫化」という用語は、T細胞エピトープを修飾するために、抗体の改変を含む(例えば、国際公開第WO9852976A1号、第WO0034317A2号を参照されたい)。例えば、出発抗体からのVHおよびVL配列を分析し、それぞれのV領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」は、相補性決定領域(CDR)および配列内の他の重要な残基に関してエピトープの配置を示す。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープは、最終抗体の活性を変化させる危険性が低い、代替的アミノ酸置換を同定するために、分析される。一連の代替的VHおよびVL配列は、アミノ酸置換の組み合わせを含み、設計され、これらの配列は、本明細書に開示された診断および治療方法で用いる、一連の結合ポリペプチド、例えば、SOD1特異的抗体、またはその免疫特異性フラグメントに実質的に組み込まれ、それらは、その後、機能に対する試験をする。典型的には、12個から24個の変異抗体を生成し、試験する。修飾されたVおよびヒトC領域を含む、完全な重鎖および軽鎖遺伝子は、その後、発現ベクターにクローンされ、次のプラスミドを全抗体の産生のために細胞株に導入した。該抗体は、その後、適切な生化学的および生物学的アッセイで比較され、最適変異体を同定する。
モノクローナル抗体を当技術分野において既知の広範な技法を使用して調製することができ、それらの技法には、ハイブリドーマ、組み換え、ファージ提示法、またはそれらの組み合わせの使用が含まれる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野において既知の、例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.(1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas Elsevier,N.Y.,563−681(1981)に教示されているものを含む、ハイブリドーマ技法を使用して産生することができる(該参考文献は、その全体において、参照することにより組み込まれる)。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通して産生される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、それを産生する方法でなく、任意の真核性、原核生物、またはファージクローンを含む、単一クローンから派生する抗体を指す。したがって、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通して産生される抗体に限定されない。モノクローナル抗体を、当技術分野において既知の広範な技法を使用して、調製することができる。ある実施形態において、本発明の抗体は、本明細書に記載されるように、エプスタイン・バー・ウイルスでの転換を介して不死化されているヒトB細胞から派生される。
公知のハイブリドーマ過程(Kohler et al.,Nature 256:495(1975))において、哺乳類からの比較的短命、または致命的なリンパ球、例えば、本明細書に記載される、ヒト対象から派生されるB細胞が、不死腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)で融合され、したがって、ハイブリッド細胞、または「ハイブリドーマ」を産生し、それらは共に、不死であり、B細胞の遺伝的にコードされた抗体を産生することができる。得られるハイブリッドを、選択、希釈、および単一抗体の形成のための特異的遺伝子を含む、それぞれの個々の株で再生により、単一の遺伝子株に分離される。これらは、抗体を産生し、所望の抗原に対して同種であり、その純粋な遺伝起源(genetic parentage)に関して「モノクローナル抗体」と呼ばれる。
そのようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない、親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含む、適した培養培地中に播種および培養する。当業者は、ハイブリドーマの形成、選択、および成長のための試薬、細胞株、および培地が、多くの供給元から市販され、標準化プロトコルが確立されていることを理解するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、所望の抗原に対してモノクローナル抗体の産生のために分析される。ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、本明細書に記載される、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ネオエピトープ結合法等の体外検定により決定される。所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、希釈過程を限定することによりサブクローン化し、標準方法により増殖され得る(例えばGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp59−103(1986))。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、タンパク質A、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、もしくは親和性クロマトグラフィー等の従来の精製手順により、培養培地、腹水、もしくは血清から分離され得ることをさらに理解されよう。
別の実施形態において、リンパ球は、マイクロマニピュレーションにより選択すし、可変遺伝子を単離することができる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫がある、または免疫が生まれつきある、例えば、ヒト等の哺乳類から単離し、約7日間体外で培養することができる。培養物は、審査基準に合う特定のIgGに対してスクリーニングされる。陽性ウェルからの細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞を、FACSにより、または補体媒介溶血プラークアッセイにおいて、それらを同定することにより、単離することができる。Ig産生B細胞は、1つの管にマイクロマニピュレーションすることができ、VHおよびVL遺伝子は、例えば、RT−PCRを使用して、増幅することができる。VHおよびVL遺伝子は、抗体発現ベクターにクローン化し、発現のために細胞(例えば、真核生物または原核生物細胞)にトランスフェクトすることができる。
代替として、抗体産生細胞株は、熟練者に公知の技法を使用して、選択および培養され得る。このような技法は、様々な実験マニュアルおよび主要な刊行物に記載される。この点において、以下に記載されるように、本発明で用いる適した技法は、Current Protocols in Immunology,Coligan et al.,Eds.,Green Publishing Associates and Wiley−Interscience,John Wiley and Sons,New York(1991)に記載され、それは、その全体において参照することにより本明細書に組み込まれ、それには、付録物を含む。
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントを公知の技術によって産生することができる。例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメントを組み換え産生することができ、または酵素、例えば(Fabフラグメントを産生するために)パパインもしくは(F(ab’)2フラグメントを産生するために)ペプシン、を使用して免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断により生産することができる。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。このようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異的部分を放射性同位体などの検出試薬に結合することを含む免疫診断手順での使用に十分なものである。
本明細書に記載するものなどのヒト抗体は、ヒト患者での治療目的使用に特に望ましい。本発明のヒト抗体は、健常ヒト被験体であって、彼らの年齢のため、神経変性疾患、例えばALSを発現する危険があると推測され得る被験体から、または前記疾患を有する患者であるが、疾病経過が異常に安定しているまたは異常に軽度な疾病形態である患者から単離される。しかし、老人の健常で無症状の被験体は、それぞれに、若年被験体より規則的に抗SOD1防御抗体を発現するであろうと予想するのが賢明だが、本発明のヒト抗体を得るための源として若年被験体もまた使用することがある。これは、家族型のALSの発現する素因を有するが、高齢の成人より効率的に免疫系が機能するので無症状のままである若年患者に特に当てはまる。
一実施形態において、本発明の抗体は、抗体分子の少なくとも1つの重または軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。対象抗体に含めることができる少なくとも1つのCDRを含む例示的抗体分子をここで説明する。
本発明の抗体は、抗体の合成のための当技術分野において既知の任意の方法、特に、化学合成により、または好ましくは、本明細書に記載される、組み換え発現技法により、産生することができる。
一実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、合成定常領域を含み、1つ以上のドメインは、部分的に、または完全に欠失される(「ドメイン欠失抗体」)。ある実施形態において、適合する修飾抗体は、ドメイン欠失された構築物または変異体を含み、完全CH2ドメインは除去されている(ΔCH2構築物)。他の実施形態に関して、短い連結ペプチドは、欠失ドメインと置換され、可変領域に対して運動の柔軟性および自由度を提供し得る。当業者は、このような構築物が、抗体の異化作用率におけるCH2ドメインの調節特性の故、特に好ましいことを理解するであろう。ドメイン欠失構築物は、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して、派生することができる(例えば、国際公開第WO02/060955A2号および第WO02/096948A2号を参照されたい)。本ベクターを改変し、CH2ドメインを欠失し、ドメインを欠失したIgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供する。
ある実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、ミニ抗体である。ミニ抗体は、当技術分野に記載の方法を使用して生成することができる(例えば、米国特許第5,837,821号または国際公開第WO94/09817A1号を参照されたい)。
一実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、単量体サブユニット間での関連を可能にする限り、数個のアミノ酸またはただ1個のアミノ酸だけの、欠失または置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択されたエリアにおける単一アミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低減するのに十分であり、それにより、SOD1局在を増大し得る。同様に、調節されるエフェクター機能(例えば、相補体結合)を制御する1つ以上の定常領域ドメインの一部を単に欠失することが望ましい場合がある。定常領域のこのような部分的欠失は、対象の定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を無傷のままにする一方、抗体の選択された特性(血中半減期)を改善し得る。さらに、上記で触れたように、開示された抗体の定常領域は、得られる構築物のプロファイルを強化する1つ以上のアミノ酸の変異または置換を通じて合成され得る。この点において、保存結合部位(例えば、Fc結合)により提供される活性を阻害し、修飾抗体の立体構造および免疫原性プロファイルを実質的に維持することが可能であり得る。さらに別の実施形態は、エフェクター機能等の望ましい特性を強化するために、定常領域への1つ以上のアミノ酸の付加を含み、または、さらに細胞毒素または炭水化物の付着を提供する。このような実施形態において、選択された定常領域ドメインから派生する特定配列を挿入または複製することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本明細書に記載の抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含む、本質的にはそれらからなる、またはそれらからなる、抗体を提供し、抗体またはそれらのフラグメントは、SOD1に免疫特異的に結合する。アミノ酸置換を生じる部位特異的な突然変異生成およびPCR媒介突然変異生成が挙げられるが、これらに限定されない当業者に既知の標準技法を、抗体をコードするヌクレオチド配列において、変異体を導入するために使用することができる。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、参照VH領域、VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL領域、VL−CDR1、VL−CDR2、またはVL−CDR3に関して、50個未満のアミノ酸置換、40個未満のアミノ酸置換、30個未満のアミノ酸置換、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、または2個未満のアミノ酸置換をコードする。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の電荷がある側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の電荷がある側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。代替として、変異体を、例えば、飽和突然変異生成等によって、コード配列の全て、またはその一部に沿って無作為に導入し、結果として得られた変異体は、生物学的活性に対してスクリーニングされ、活性(例えば、SOD1に結合する能力)を維持する変異体を同定することができる。
例えば、抗体分子の枠組み領域においてのみ、またはCDR領域においてのみ、変異を導入することは可能である。導入された変異は、例えば、抗原を結合するための抗体の能力に影響がない、またはほとんどない、サイレントまたは中性ミスセンス変異であり得、実際には、幾つかのこのような変異は、どんなものであれ、アミノ酸配列を変化しない。変異のこれらの型は、コドン使用頻度を最適化する、またはハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。本発明の抗体をコードするコドン向けに最適化されたコーディング領域は、本明細書の別の場所に開示される。代替として、非中性のミスセンス変異は、抗原を結合する抗体の能力を変化し得る。ほとんどのサイレントおよび中性ミスセンス変異体の局在は、枠組み領域内であり得るが、ほとんどの非中性ミスセンス変異の局在は、絶対条件ではないが、CDR内であり得る。当業者は、抗原結合活性において変化なし、または結合活性において変化あり(例えば、抗原結合活性における改善または抗体特異性における変更)等の所望の特性を有する、変異分子を設計し、試験することができるであろう。突然変異生成に続き、コードされたタンパク質は、定期的に発現され得、コードされたタンパク質(例えば、SOD1の少なくとも1つのエピトープを免疫特異的に結合する能力)の機能的および/または生物学的活性は、本明細書に記載の技法を使用して、または当技術分野において既知の定期的に修飾する技法により、決定することができる。
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドからなり得、それらは、非修飾RNAもしくはDNA、または修飾RNAもしくはDNAであり得る。例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、および一本鎖と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、もしくはさらに典型的には、二本鎖もしくは一本鎖と二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含む、ハイブリッド分子からなり得る。加えて、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの双方を含む、三本鎖領域からなり得る。抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性もしくは他の理由のために修飾された、1つ以上の修飾塩基、またはDNAもしくはRNA骨格を含み得る。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基およびイノシン等の異常塩基を含む。様々な修飾を、DNAおよびRNAに対して行うことができるので、「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的に、または代謝的に修飾された型を包含する。
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリン重鎖部分または軽鎖部分)から派生するポリペプチドの非自然的変異体をコードする単離ポリヌクレオチドは、1つ以上のアミノ酸置換、付加、または欠失がコードされたタンパク質に導入されるように、免疫グロブリンのヌクレオチド配列に1つ以上のヌクレオチド置換、付加、または欠失を導入することにより、生成することができる。変異は、部位特異的な突然変異生成およびPCR媒介突然変異生成等の標準技法により導入され得る。好ましくは、保存アミノ酸置換は、1つ以上の非必須アミノ酸残基で行われる。
公知のとおり、RNAは、元のB細胞、あるいは、他の形質転換された細胞から、グアニジンイソチオシアネート抽出法および遠心分離またはクロマトグラフィーに続く調製法等の標準技法によって単離され得る。望ましい場合、mRNAは、オリゴdTセルロース上におけるクロマトグラフィー等の標準技法により総RNAから単離され得る。適した技法は、当技術分野においては熟知されている。一実施形態において、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、公知の方法に従って、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼを使用して、同時、あるいは別々のいずれかで行われ得る。PCRは、公開された重鎖および軽鎖DNA、ならびにアミノ酸配列に基づいて、合意定常領域プライマーまたはさらに特異的なプライマーにより開始され得る。上で論じられるように、PCRも、抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用され得る。この場合において、ライブラリーは、合意プライマーまたはマウス定常領域プローブ等のさらに大きい相同プローブによりスクリーニングされ得る。
DNA、典型的にはプラスミドDNAは、当技術分野において既知の技法を使用して、細胞から単離され、例えば、組み換えDNA法に関する前述の参照において、詳しく記載される標準の公知の技法に従って、制限地図および配列され得る。当然のことながら、DNAは、単離過程またはその後の分析中、任意の点で、本発明に従って合成され得る。
一実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む、本質的には免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸からなる、または免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸からなる単離ポリヌクレオチドを提供し、重鎖可変領域のうちの少なくとも1つのCDR、または重鎖可変領域のうちの少なくとも2つのVH−CDRは、本明細書に開示された抗体からの参照重鎖VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。代替として、VHのVH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3領域は、本明細書に開示された抗体からの参照重鎖VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。したがって、本実施形態によると、本発明の重鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関してVH−CDR1、VH−CDR2、またはVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む、本質的には免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸からなる、または免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸からなる単離ポリヌクレオチドを提供し、軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つのVL−CDR、または軽鎖可変領域のうちの少なくとも2つのVL−CDRは、本明細書に開示された抗体からの参照軽鎖VL−CDR1、VL−CDR2、VL−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。代替として、VLのVL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3領域は、本明細書に開示された抗体からの参照軽鎖VL−CDR1、VL−CDR2、およびVL−CDR3アミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である。したがって、本実施形態に従い、本発明の軽鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関してVL−CDR1、VL−CDR2、またはVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、図1に示される、VH−CDR1、VH−CDR2、およびVH−CDR3群に同一である、ポリペプチド配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む、本質的にはそれらからなる、またはそれらからなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
当技術分野において既知のとおり、2つのポリペプチドもしくは2つのポリヌクレオチドの間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドもしくはポリヌクレオチドのアミノ酸もしくは核酸配列を、第2のポリペプチドもしくポリヌクレオチドの配列と比較することにより決定される。本明細書で論じられる場合、任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドに少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるか否かは、例えば、(それに限定されないが)BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)等、当技術分野において既知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを使用して、決定することができる。BESTFITは、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局在相同アルゴリズムを使用し、2つの配列の間で相同の最良のセグメントを見つける。特定の配列が、例えば、本発明に従って、参照配列に95%同一であるか否かを決定するために、BESTFITまたは任意の別の配列アラインメントプログラムを使用する場合、当然ながら、同一性のパーセンテージが参照ポリペプチド配列の全長にわたって算出され、参照配列におけるアミノ酸の総数の最大5%の相同性における格差が許容されるように、パラメータを設定する。
本発明の好ましい実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、表IIに示すような抗SOD1抗体のVHまたはVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む、該核酸から本質的に成る、または該核酸から成る。この点において、前記軽および/または重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドが、両方の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードすることもあり、または一方だけの免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードすることもあることは、当業者には容易に理解されるであろう。
表II:SOD1特異的抗体のVHおよびVL領域のヌクレオチド配列。
本発明はまた、他の部分で記載されるように、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントも含む。さらに、本明細書に記載されるように、融合ポリヌクレオチド、Fabフラグメント、および他の誘導体をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明により考慮される。
ポリヌクレオチドは、当技術分野において任意の方法により産生または製造され得る。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られている場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成したオリゴヌクレオチド(例えば、Kutmeier et al.,BioTechniques 17:242(1994)に記載されるもの)から構成され得、それらは、簡潔に述べると、抗体をコードする、これらのオリゴヌクレオチドをアニーリング、およびライゲーションする配列の一部を含む、重複するオリゴヌクレオチドの合成、その後、PCRによりライゲーションされたオリゴヌクレオチドの増幅に関与する。
代替として、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、適した源からの核酸から生成され得る。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンを入手することができないが、抗体分子の配列が分かっている場合、抗体をコードする核酸は、3’および5’末端の配列にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用して、PCR増幅により、または、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために、特定の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用して、クローニングすることにより、適したソース(例えば、抗体を発現するために選択されたハイブリドーマ細胞等のSOD1特異抗体を発現する任意の組織もしくは細胞から生成された抗体cDNAライブラリーまたはcDNAライブラリー、あるいはそこから単離された核酸、好ましくはポリA+RNA)から化学的に合成される、または得られ得る。PCRにより生成された増幅核酸は、その後、当技術分野において公知の任意の方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作のために当技術分野において公知の方法、例えば、組み換えDNA技法、部位特異的な突然変異生成、PCR等(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)およびAusubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1998)に記載の技法であり、それらは、それらの全体において、本明細書に参照することにより共に組み込まれる)を使用して、操作され得、異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成するように、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を行う。
IV.抗体ポリペプチドの発現
本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体を提供するために単離遺伝物質を操作した後、抗体をコードするポリヌクレオチドは、典型的には、所望の量の抗体を産生するために使用され得る宿主細胞に導入するために発現ベクターに挿入される。抗体もしくはそのフラグメント、誘導体、または類似体の組み換え発現、例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖または軽鎖を、本明細書に記載した。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチド、またはその一部(好ましくは、重鎖または軽鎖可変ドメインを含有する)が得られた後、抗体分子の産生のためのベクターは、当技術分野において公知の技法を使用して、組み換えDNA技術により産生され得る。したがって、ヌクレオチド配列をコードする抗体を含有するポリヌクレオチドを発現することによりタンパク質を調製する方法を本明細書に記載する。当業者に公知の方法を使用して、配列、ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルをコードする抗体を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、体外組み換えDNA技法、合成技法、および生体内遺伝子組み換えが挙げられる。本発明は、したがって、本発明の抗体分子をコードするヌクレオチド配列、またはその重鎖もしくは軽鎖、またはプロモーターに作動可能に連結される、重鎖もしくは軽鎖可変ドメインを含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得(例えば、国際公開第WO86/05807号、国際公開第WO89/01036号、および米国特許第5,122,464号を参照されたい)、抗体の可変ドメインを、重鎖または軽鎖全ての発現に対するこのようなベクターにクローンし得る。
本明細書に使用される「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、本発明に従って、宿主細胞における所望の遺伝子に導入し、発現する賦形剤として使用されるベクターを意味する。当業者に既知のとおり、このようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、およびレトロウイルスからなる群から容易に選択され得る。一般的に、本発明に適合するベクターは、選択マーカー、適切な制限部位を含み、所望の遺伝子のクローニング、および真核生物または原核生物細胞中に侵入する、および/または複製する能力を促進する。本発明の目的のために、多数の発現ベクター系を利用し得る。例えば、ベクターの1つのクラスは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVもしくはMOMLV)、またはSV40ウイルス等の動物ウイルスから派生するDNA要素を利用する。他のベクターは、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニック系の使用を伴う。さらに、DNAを染色体に統合する細胞は、導入宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することにより選択され得る。マーカーは、栄養要求性宿主への原栄養性、バイオサイド耐性(例えば、抗生物質)、または銅等の重金属への耐性を提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子を、発現するようにDNA配列に直接結合、または同時形質転換により同一の細胞への導入かのいずれかを行うことができる。追加の要素もまた、mRNAの最適合成に必要とされ得る。これらの要素は、シグナル配列、スプライスシグナル、ならびに、転写プロモーター、エンハンサー、および終結シグナルを含み得る。
特に好ましい実施形態において、クローン可変領域遺伝子を、上で論じられたた重鎖および軽鎖定常領域遺伝子(好ましくは、ヒト)と共に、発現ベクターに挿入する。一実施形態において、これは、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号に開示)と称される、Biogen IDEC,Inc.の専用発現ベクターを使用して達成される。本ベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、およびリーダー配列を含有する。本ベクターは、可変および定常領域遺伝子の取り込み、CHO細胞におけるトランスフェクション、次いで、培地およびメトトレキサート増幅を含有するG418において選択すると、抗体の非常に高いレベルの発現を生じることが認められている。当然ながら、真核生物細胞における発現を引き出すことが可能な任意の発現ベクターを、本発明において使用し得る。適したベクターの例としては、プラスミドpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1、およびpZeoSV2(Invitrogenから市販、San Diego,CA)、およびプラスミドpCI(Promegaから市販、Madison,WI)が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、免疫グロブリンが重鎖および軽鎖である場合、適切に高レベルを発現する多数の形質転換細胞のスクリーニングは、例えば、ロボットシステムにより実行することができる、日常的な実験である。ベクター系はまた、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号に教示されるが、これらのそれぞれは、その全体において、本明細書に参照することにより組み込まれる。本系は、例えば、>30pg/細胞/日等の、高い発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系は、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
他の好ましい実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、米国特許出願公開第2003−0157641 A1号に開示されるもの等のポリシストロニック構築物を使用して、発現され得、その特許はその全体において、本明細書に組み込まれる。これらの発現系において、抗体の重鎖および軽鎖等の関心対象となる多数の遺伝子生成物を、単一のポリシストロニック構築物から産生し得る。これらの系は、内部リボソーム侵入部位(IRES)を有利に使用し、抗体の比較的高いレベルを提供する。適合するIRES配列は、本明細書にも組み込まれる米国特許第6,193,980号に開示される。当業者は、このような発現系を使用し、本願に開示される全ての抗体を効果的に産生し得ることを理解するであろう。
さらに一般的には、抗体の単量体サブユニットをコードするベクターまたはDNA配列が調製されると、発現ベクターを、適切な宿主細胞に導入することができる。宿主細胞へのプラスミドの導入は、当業者に公知の様々な技法により達成することができる。これらは、リポトランスフェクション(例えばFufene(登録商標)又はリポフェクタミンを用いる)を含むトランスフェクション(電気泳動およびエレクトロポレーションを含む)、原形質融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAを使った細胞融合、マイクロインジェクション、および無傷のウイルスによる感染が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、宿主へのプラスミド導入は標準的なリン酸カルシウム共沈降法によってなされる。発現構築物を内部に持つ宿主細胞は、軽鎖および重鎖の産生に適切な条件下で増殖され、重鎖および/または軽鎖タンパク質合成に対して分析される。例示的なアッセイ技法は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞選別装置(FACS)、免疫組織化学等を含む。
発現ベクターは、従来の技法により宿主細胞に導入され、トランスフェクト細胞は、その後、従来の技法により培養され、本明細書に記載の方法で用いるための、抗体を産生する。したがって、本発明は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞、または異種プロモーターに作動可能に連結される、その重鎖もしくは軽鎖を含む。二重鎖抗体の発現のために好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖を共にコードするベクターは、下記の詳細のように、全免疫グロブリン分子の発現のための宿主細胞において、共発現され得る。
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクターである、ポリペプチドを派生した重鎖をコードする第1のベクター、およびポリペプチドを派生した軽鎖をコードする第2のベクターを用いて同時形質導入し得る。2つのベクターは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの同じ発現を可能にする、同一選択可能なマーカーを含有し得る。代替として、重鎖および軽鎖ポリペプチドの双方をコードし得る単一ベクターを使用することができる。このような状況において、軽鎖は、過度の毒性のない重鎖を避けるために重鎖の前に有利に置かれる(Proudfoot,Nature 322:52(1986)、Kohler,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197(1980))。重鎖および軽鎖のためのコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
本明細書で使用される「宿主細胞」とは、組み換えDNA技法を使用し、少なくとも1つの異種遺伝子をコードし、構築されたベクターを内部に持つ細胞を指す。組み換え宿主からの抗体の単離のための過程の記述において、「細胞」および「細胞培養」という用語は、同義的に使用され、別途明らかに特定されない限り、抗体の起源を意味する。言い換えれば、「細胞」からのポリペプチドの回収とは、沈降された全細胞、または培地および懸濁した細胞の双方を含有する細胞培養からのいずれかからのものを意味し得る。
様々な宿主発現ベクター系を、本明細書に記載の方法で用いる抗体分子を発現するために利用することができる。このような宿主発現系は、関心対象となるコード配列が、産生、次いで、精製され得る媒体を示すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされる際、そのままで、本発明の抗体分子を発現し得る細胞も示す。これらは、抗体をコードする配列を含有する、組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたバクテリア(例えば、大腸菌、枯草菌)等の微生物;抗体をコードする配列を含有する、組み換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属、ピチア属)、抗体をコードする配列を含有する、組み換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、組み換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))に感染した、もしくは抗体をコードする配列を含有する組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系、または、哺乳類細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインプロモーター)、もしくは哺乳類ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)から派生するプロモーターを含有する、組み換え発現構築物を内部に持つ哺乳類細胞系(例えば、COS、CHO、NOS、BLK、293、3T3細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、大腸菌等の細菌性細胞、さらに好ましくは、特に、全組み換え抗体分子の発現のための真核生物細胞が、組み換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要中間早期遺伝子プロモーター要素等のベクターと共に、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)等の哺乳類細胞は、抗体のために有効な発現系である(Foecking et al.,Gene 45:101(1986)、Cockett et al.,Bio/Technology 8:2(1990))。
タンパク質発現に使用される宿主細胞株は、多くの場合、哺乳類起源からなり、当業者は、その中で発現する所望の遺伝子生成物に最も適している、特定の宿主細胞株を選択的に決定する能力があると考えられる。例示的な宿主細胞株は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44、およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40 T抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、および293(ヒト腎臓)が挙げられるが、これらに限定されない。CHO細胞および293細胞が、特に好ましい。宿主細胞株は、典型的には、商業源、アメリカ組織培養細胞系統保存機関(American Tissue Culture Collection)から、または発表された文献から入手可能である。
加えて、挿入配列の発現を調節、または所望の特定の方法において、遺伝子生成物を修飾および処理する、宿主細胞株を選ぶことができる。このような修飾(例えば、グリコシル化)およびタンパク質生成物の過程(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子生成物の翻訳後の過程および修飾に対する、特性および特定の機構を有する。適切な細胞株または宿主系を選び、発現した異種タンパク質の正しい修飾および過程を確保することができる。この最後に、遺伝子生成物の1次転写、グリコシル化、およびリン酸化反応の適切な過程のための細胞機構を有する、真核生物宿主細胞を使用し得る。
長期間、組み換えタンパク質の高収率生産には、安定発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株を改変して生成得る。複製のウイルス起源を含有する発現ベクターを使用するよりむしろ、宿主細胞を、適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位等)、および選択可能なマーカーにより制御されたDNAで形質転換することができる。外来DNAを導入した後、改変細胞は、1〜2日間、強化培地で増殖させ、その後、選択可能な培地に取り替えることができる。組み換えプラスミドにおいて選択可能なマーカーは、選択への耐性を与え、細胞が染色体へのプラスミドを安定的に取り込み、同様に、細胞株をクローンし、拡大することができる病巣を形成することを可能にする。本方法は、抗体分子を安定的に発現する細胞株を改変するのに有利に使用され得る。
数多くの選択系を、すなわち、ヘルペスシンプレックスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell 22:817 1980)遺伝子を、それぞれ、tk−、hgprt−、またはaprt細胞で利用することができることを含むが、これらに限定されず、使用され得る。また、代謝拮抗物質耐性を、以下の各遺伝子の選択の基礎として使用することができる。メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al.,Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980)、O’Hare et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981))、マイコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981))、アミノグリコシドG−418に耐性を与えるneo Clinical Pharmacy 12:488−505、Wu and Wu,Biotherapy 3:87−95(1991)、Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993)、Mulligan,Science 260:926−932(1993)、およびMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993)、TIB TECH 11(5):155−215(May,1993)、およびハイグロマイシンに耐性を与えるhygro(Santerre et al.,Gene 30:147(1984)。使用することができる組み換えDNA技術の当技術分野において一般に既知の方法は、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993)、Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)、およびin Chapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994)、Colberre−Garapin et al.,J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載され、それらは、その全体において参照することにより組み込まれる。
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅により増加され得る(閲覧用として、Bebbington and Hentschel,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning,Academic Press,New York,Vol.3.(1987)を参照されたい)。ベクター系発現抗体におけるマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養に存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子の複写の数を増加させるであろう。増幅領域が抗体遺伝子に関連するため、抗体の産生はまた、増加するであろう(Crouse et al.,Mol.Cell.Biol.3:257(1983))。
体外生成は、大量の所望のポリペプチドを与えるためにスケールアップ(scale−up)を可能にする。組織培養条件下で、哺乳類細胞培養のための技法は、当技術分野において既知であり、例えば、エアリフト型リアクター、もしくは連続撹拌式リアクター等における均質懸濁物培養、または、例えば、ホローファイバー内、マイクロカプセル、あるいはアガロースマイクロビーズもしくはセラミックカートリッジ状での固定化もしくは捕捉化細胞培養が挙げられる。必要ならば、および/または所望であるならば、ポリペプチドの溶液は、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの選択的生合成後、または本明細書に記載のHICクロマトグラフィーステップ前もしくは、その後に、例えば、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセルロースクロマトグラフィー、または(免疫)親和性クロマトグラフィー等の通常のクロマトグラフィー法により精製することができる。
本発明の遺伝子コード抗体、もしくはその抗原結合フラグメント、変異体、または誘導体はまた、バクテリアまたは昆虫または酵母または植物細胞等の非哺乳類細胞を発現することができる。核酸を容易に受け入れるバクテリアは、大腸菌もしくはサルモネラ属の株等の腸内細菌科、枯草菌等のバシラス科、肺炎球菌、連鎖球菌、およびインフルエンザ菌のメンバーを含む。バクテリアにおいて発現する場合、異種ポリペプチドは、典型的には、封入体の一部になることがさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは、単離、精製され、その後、機能分子に組織化されなければならない。抗体の四価型が望ましい場合には、サブユニットは、その後、四価抗体に自己組織化するであろう(国際公開第WO02/096948号)。
バクテリア系において、数多くの発現ベクターが、発現される抗体分子を対象とした使用により異なるが有利に選択され得る。例えば、抗体分子の医薬組成物の生成のために、大量のこのようなタンパク質を産生する場合、容易に精製される融合タンパク質生成物の高レベルの発現を誘導するベクターは、望ましいものであり得る。このようなベクターとしては、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al.,EMBO J.2:1791(1983))が挙げられるが、これに限定されず、そこでは、抗体をコードする配列は、融合タンパク質を産生するように、lacZコーディング領域を有するフレーム内のベクター、およびpINベクター(Inouye & Inouye,Nucleic Acids Res.13:3101−3109(1985)、Van Heeke & Schuster,J.Biol.Chem.24:5503−5509(1989))等に個々にライゲーションされ得る。pGEXベクターも、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として、外来ポリペプチドを発現するために、使用され得る。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性であり、溶解細胞から、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着および結合、次いで、遊離グルタチオンの存在下での溶出により容易に精製することができる。このpGEXベクターは、このクローニングされた標的遺伝子生成物は、GST部分から放出できるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
原核生物に加えて、真核微生物も使用され得る。数多くの他の株、例えば、ピキアパストリス(Pichia pastoris)は、一般に入手可能であるが、出芽酵母、または一般のパン酵母は、真核微生物の中で最も一般に使用される。サッカロミセス属の発現のために、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb et al.,Nature 282:39(1979)、Kingsman et al.,Gene 7:141(1979)、Tschemper et al.,Gene 10:157(1980))が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン、例えば、ATCC受託番号44076またはPEP4−1に増殖する能力を欠失する酵母の変異株のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する(Jones,Genetics 85:12(1977))。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl損傷部の存在は、そこで、トリプトファンの非存在下での増殖による形質転換を検出する有効環境を提供する。
昆虫系において、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして、典型的に使用される。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞において増殖する。抗体をコードする配列は、このウイルスの非必須の領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングされ得、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれ得る。
本発明の抗体分子を組み換え発現させたら、本発明の全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特にプロテインAの後に特異的抗原に対する親和性によるもの、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、例えば硫酸アンモニウム沈殿法によるものまたはタンパク質精製のための他の標準的な技術によるものを含む、当技術分野の標準的手順に従って精製することができる;例えばScopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982)を参照されたい。あるいは、本発明の抗体の親和性を増加させるために好ましい方法が米国特許出願公開第2002−0123057号A1明細書に開示されている。
V.融合タンパク質および複合体
ある実施形態において、抗体ポリペプチドは、アミノ酸配列、または通常、抗体と関連しない1つ以上の部分を含む。例示的な修飾物を、さらに詳細を以下に記載する。例えば、本発明の一本鎖fv抗体フラグメントは、柔軟性リンカー配列を含む、または修飾し、機能部分(例えば、PEG、薬物、毒素、または蛍光、放射性、酵素、核磁気、重金属などの標識)を加えることができる。
本発明の抗体ポリペプチドは、融合タンパク質を含む、本質的にはそれらからなる、またはそれらからなり得る。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位、および少なくとも1つの異種部分、すなわち、本来は自然に連結されない一部を有する、SOD1結合ドメインを含む、キメラ分子である。アミノ酸配列は、通常は、融合ポリペプチドにおいて統合される別々のタンパク質に存在し得る、またはそれらは、通常は、同一のタンパク質に存在し得るが、融合ポリペプチドにおいて新しい配置に置かれる。融合タンパク質は、例えば、ポリヌクレオチドを化学合成、または作成し、翻訳することにより、作成され得、ペプチド領域が所望の関係をもってコードされる。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに適用される、「異種」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較される実体の残りのものとは異なる実体から派生することを意味する。例えば、本明細書で使用される、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくはその類似体に融合される、「異種ポリペプチド」は、同一の種の非免疫グロブリンポリペプチド、または異なる種の免疫グロブリンもしくは非免疫グロブリンポリペプチドから派生する。
本明細書の他の部分でさらに詳細に論じられるように、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、さらに、NもしくはC末端で異種ポリペプチドに組み換えによって融合され得る、またはポリペプチドもしくは他の組成物に化学的に接合され得る(共有および非共有接合を含む)。例えば、抗体は、検出アッセイにおける標識として有用な分子および、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、もしくは毒素等のエフェクター分子に、組み換えによって融合され得る、または接合され得る。例えば、国際公開第WO92/08495号、第WO91/14438号、第WO89/12624号、米国特許第5,314,995号、および欧州特許出願第EP396,387号を参照されたい。
本発明の抗体、または抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわち、ペプチド等配電子体によって互いにつながれたアミノ酸からなり得、20個の遺伝子をコードするアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。抗体は、翻訳後の過程等の自然過程、または当技術分野において公知の化学修飾法により修飾され得る。このような修飾は、基本の教科書、およびより詳細な論文、ならびに膨大な研究文献において十分に記載される。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノもしくはカルボキシル末端を含む抗体、または炭水化物等の部分においてなど、どこでも生じることができる。修飾の同一の型は、所与の抗体における幾つかの部位で、同一、または異なる程度で存在し得ることを理解されよう。また、所与の抗体は、修飾の多くの型を含有し得る。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として、分枝され得、それらは、分枝の有無にかかわらず、環状であり得る。環状、分枝、および分枝環状抗体は、翻訳後自然過程に由来し得る、または合成方法により作成され得る。修飾は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、交差結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有交差結合の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解過程、リン酸化反応、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、アルギニン化等のトランスファーRNAが媒介するアミノ酸のタンパク質への付加、およびユビキチン化を含む。(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York 2nd Ed.,(1993)、Posttranslational Covalent Modification Of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983)、Seifter et al.,Meth Enzymol 182:626−646(1990)、Rattan et al.,Ann NY Acad Sci 663:48−62(1992)を参照されたい)。
本発明はまた、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体、および異種ポリペプチドを含む、融合タンパク質も提供する。一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体の任意の1つ以上のVH領域のアミノ酸配列、または本発明の抗体、またはそのフラグメントもしくは変異体の任意の1つ以上のVL領域のアミノ酸配列、および異種ポリペプチド配列を有する、ポリペプチドを含む、本質的にはそれらからなる、またはそれらからなる。別の実施形態において、本明細書に開示された診断および治療方法で用いるための融合タンパク質は、抗体、またはそのフラグメント、変異体、もしくは誘導体の任意の1つ、2つ、3つのVH−CDRのアミノ酸配列、または抗体、またはそのフラグメント、変異体、もしくは誘導体の任意の1つ、2つ、3つのVL−CDRのアミノ酸配列、および異種ポリペプチド配列を有する、ポリペプチドを含む、本質的にはそれらからなる、またはそれらからなる。一実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体、もしくは変異体のVH−CDR3のアミノ酸配列、および異種ポリペプチド配列を有する、ポリペプチドを含み、融合タンパク質は、SOD1の少なくとも1つのネオエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列、および本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体、もしくは変異体の少なくとも1つのVL領域のアミノ酸配列、および異種ポリペプチド配列を有する、ポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVHおよびVL領域は、SOD1の少なくとも1つのネオエピトープに特異的に結合する、単一源抗体(またはscFvもしくはFabフラグメント)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書に開示される診断および治療方法で用いる、融合タンパク質は、抗体の任意の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上VH CDRのアミノ酸配列、抗体、またはそのフラグメント、変異体の任意の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のVL CDRのアミノ酸配列、および異種ポリペプチド配列を有する、ポリペプチドを含む。好ましくは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上のVH−CDRまたはVL−CDRは、本発明の単一源抗体(またはscFvもしくはFabフラグメント)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子はまた、本発明により含有される。
文献に報告される例示的な融合タンパク質は、T細胞受容体(Gascoigne et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:2936−2940(1987))、CD4(Capon et al.,Nature 337:525−531(1989)、Traunecker et al.,Nature 339:68−70(1989)、Zettmeissl et al.,DNA Cell Biol.USA 9:347−353(1990)、およびByrn et al.,Nature 344:667−670(1990))、L−セレクチン(ホーミング受容体)(Watson et al.,J.Cell.Biol.110:2221−2229(1990)、およびWatson et al.,Nature 349:164−167(1991))、CD44(Aruffo et al.,Cell 61:1303−1313(1990))、CD28およびB7(Linsley et al.,J.Exp.Med.173:721−730(1991))、CTLA−4(Lisley et al.,J.Exp.Med.174:561−569(1991))、CD22(Stamenkovic et al.,Cell 66:1133−1144(1991))、TNF受容体(Ashkenazi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535−10539(1991)、Lesslauer et al.,Eur.J.Immunol.27:2883−2886(1991)、およびPeppel et al.,J.Exp.Med.174:1483−1489(1991))、ならびにIgE受容体(Ridgway and Gorman,J.Cell.Biol.Vol.115,Abstract No.1448)等の融合を含む。
本明細書の他の場所に論じられるように、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、当技術分野において既知の方法を使用して、ポリペプチドの生体内の半減期を増大する、またはイムノアッセイで用いるために、異種ポリペプチドに融合され得る。例えば、一実施形態において、PEGは、本発明の抗体に接合され、生体内の半減期を増大することができる。Leong,S.R.,et al.,Cytokine 16:106(2001)、Adv.in Drug Deliv.Rev.54:531(2002)、またはWeir et al.,Biochem.Soc.Transactions 30:512(2002)を参照。
さらに、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、それらの精製または検出を促進するためのペプチド等のマーカー配列に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、特に、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,Calif.,91311)に提供されるタグ等のヘクサヒスチジン(hexa−histidine)ペプチド(HIS)であり、それらの多くは、市販されている。例えば、Gentz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)に記載されるように、ヘクサヒスチジン(hexa−histidine)は、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質から派生するエピトープに対応する、「HA」タグ(Wilson et al.,Cell 37:767(1984))、および「フラッグ」タグが挙げられるが、これらに限定されない。
融合タンパク質は、当技術分野において公知の方法を使用して、調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号および第5,225,538号を参照されたい)。融合が行われる精密な部位を、実験的に選択し、融合タンパク質の分泌または結合特性を最適化し得る。融合タンパク質をコードするDNAを、その後、発現のための宿主細胞にトランスフェクトする。
本発明の抗体は、非接合型で使用され得る、または、例えば、分子の治療的な特性を改善するため、標的検出を促進するため、または画像化、もしくは患者の治療のために、様々な分子のうちの少なくとも1つに接合され得る。
本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、精製を実施する場合、精製前または精製後のいずれかで、標識化または接合することができる。特に、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体は、治療薬、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的反応修飾物質、医薬品、またはPEGに接合され得る。
従来の抗体を含む抗毒素である複合体は、当技術分野において広範に説明される。毒素は、従来の結合技法により、抗体に結合され得る、またはタンパク質毒素部分を含有する抗毒素を融合タンパク質として産生することができる。本発明の抗体を、対応する方法で使用し、このような抗毒素を取得することができる。このような抗毒素の実例は、Byers,Seminars Cell.Biol.2(1991),59−70およびFanger,Immunol.Today12(1991),51−54により記載されるものである。
当業者は、複合体がまた、接合される選択された薬剤により異なる様々な技法を使用して、組み立てられ得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンを有する複合体は、例えば、SOD1結合ポリペプチドをビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル等のビオチンの活性化エステルと反応させることにより調製される。同様に、蛍光マーカーを有する複合体は、結合剤、例えば、本明細書に記載されるものの存在下で、またはイソチオシアネート、好ましくは、フルオレセインイソチオシアネートとの反応により、調製され得る。本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体の複合体は、類似の方法において調製される。
本発明は、診断薬または治療薬に接合された本発明の抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体をさらに包含する。前記抗体を診断使用して、例えば、神経変性病の存在を立証することができ、神経変性病を獲得する危険性を示すことができ、例えば施した治療および/または予防レジメンの効力を判定するための臨床試験手順の一部として、神経変性病、すなわちミスフォールド/凝集SOD1の出現を示すまたはミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病、の発現または進行をモニターすることができる。前記抗体またはその抗原結合フラグメント、変異体もしくは誘導体を検出可能物質に結合することによって、検出を助長することができる。検出可能物質としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、様々な陽電子放射断層撮影を用いる陽電子放射性金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる;例えば、本発明に従って診断薬として使用するための抗体に接合することができる金属イオンについては米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。適した酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適した補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適した蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;ならびに適した放射性材料の例としては、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。
抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体はまた、化学発光化合物にそれを結合することにより検出可能に標的化することもできる。化学発光タグ抗体の存在は、その後、化学反応の経過中に起こる発光の存在を検出することにより決定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルである。
抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体を検出可能に標的化することができる方法の1つは、それを酵素に連結することにより、および酵素イムノアッセイ(EIA)において、連結生成物を使用するものである(Voller,A.,“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)”Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville,Md.,Diagnostic Horizons 2:1−7(1978))、Voller et al.,J.Clin.Pathol.31:507−520(1978)、Butler,J.E.,Meth.Enzymol.73:482−523(1981)、Maggio,E.(ed.),Enzyme Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,Fla.,(1980)、Ishikawa,E.et al.,(eds.),Enzyme Immunoassay,Kgaku Shoin,Tokyo(1981)。抗体に結合する酵素は、例えば、分光光度法、蛍光分析法、または視覚的方法により検出することができる、化学部分を産生するための方法において、適切な基質、好ましくは、発色性基質と反応するであろう。抗体を検出可能に標識化するために使用することができる酵素は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、アルファグリセロリン酸塩、デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、ベータガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコーゼ−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、検出は、酵素に対する発色性基質を利用する比色分析法により達成することができる。検出はまた、同様に調製された標準と比較すると、基質の酵素反応の範囲の目視比較により達成され得る。
検出はまた、様々な他のイムノアッセイを使用して、達成され得る。例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体を放射活性物質で標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用を通して、抗体を検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,(March,1986))、それらは本明細書に参照することにより組み込まれる)。放射性同位体は、ガンマカウンター、シンチレーションカウンター、またはオートラジオグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない、手段により検出することができる。
抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体はまた、152Eu、またはランタニド系列の他のもの等の蛍光放出金属を使用して、検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート基を使用して、抗体に付着させることができる。
抗体、またはその抗原結合フラグメント、変異体、もしくは誘導体に、様々な部分を接合するための技法は公知であり、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.(1985)、Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),Marcel Dekker,Inc.,pp.623−53(1987)、Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ‘84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475−506(1985)、“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),Academic Press pp.303−16(1985)、およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.62:119−58(1982)を参照されたい。
ある実施形態において、結合分子、例えば、結合ポリペプチドの安定性または有効性を強化する一部分、例えば、抗体またはその免疫特異フラグメントを接合することができる。例えば、一実施形態において、PEGは、本発明の結合分子に接合され、生体内の半減期を増大することができる。Leong,S.R.,et al.,Cytokine 16:106(2001)、Adv.in Drug Deliv.Rev.54:531(2002)、またはWeir et al.,Biochem.Soc.Transactions 30:512(2002)を参照されたい。
VI.組成物および使用方法
本発明は、組成物であって、上述のSOD1結合分子、例えば本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたはそれらの誘導体もしくは変異体、あるいは本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含む組成物に関する。本発明の組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含むことがある。さらに、本発明の医薬組成物は、該医薬組成物の所期の用途に依存してインターロイキンまたはインターフェロンなどのさらなる薬剤を含むことがある。ミスフォールド/凝集SOD1の出現を示すまたはミスフォールド/凝集SOD1に関連した神経変性病の治療、例えば、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病またはパーキンソン病の治療において使用するための追加の薬剤は、有機小分子、抗SOD1抗体、およびそれらの組み合わせから成る群より選択することができる。それ故、特定の好ましい実施形態において、本発明は、神経変性病の予防的および治療的処置用の、被験体における神経変性病の進行もしくは神経変性病処置に対する反応のモニター用の、または被験体の神経変性病発現危険度の判定用の医薬組成物または診断用組成物を調製するための、SOD1結合分子、例えば、本発明の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはそれらのうちのいずれか1つの結合特異性と実質的に同じ結合特異性を有する結合分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の使用に関する。
それ故、一実施形態において、本発明は、脳および中枢神経系それぞれにおけるSOD1の異常蓄積および/または沈着を特徴とする神経変性疾患を治療する方法に関し、この方法は、治療有効量の本発明の上述のSOD1結合分子、抗体、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞のうちのいずれか1つをそれを必要とする被験体に投与することを含む。用語「神経変性障害」は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS−PDC)、ダウン症候群、およびパーキンソン病(PD)などの疾病を含むが、これらに限定されない。用語「神経筋疾患」は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾病を含むが、これらに限定されない。別の言明がない限り、神経変性のという用語と神経性のという用語を同義的に使用する。筋萎縮性側索硬化症の記述に限定して、神経変性のという用語、神経性のという用語、および神経筋のという用語も、同義的に使用する。
本発明の治療アプローチの特別な利点は、本発明の抗体が、ミスフォールド/凝集SOD1の出現を示すまたはミスフォールド/凝集に関連した疾患、例えばALS、の徴候がない健常ヒト被験体からのB細胞またはB記憶細胞に由来すること、およびそれ故、一定の確率で、ミスフォールド/凝集SOD1に関連した臨床的に顕性の疾病を予防することができるまたは該臨床的に顕性の疾病の発症もしくは進行を遅延することができることに存する。典型的に、本発明の抗体は、体性胞成熟(somatic maturation)、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変異による標的SOD1分子への高親和性結合の選択性および有効性についての最適化、も既に首尾よく完了している。
生体内の、例えばヒトにおけるこのような細胞が、自己免疫反応またはアレルギー反応という意味で、類縁もしくは他の生理的タンパク質または細胞構造によって活性化されないという知識も医学的に大いに重要である。これは、臨床試験相を通してうまく生存する機会のかなりの増加を意味するからである。言ってみれば、少なくとも1名のヒト被験体での予防的または治療的抗体の前臨床および臨床開発前に効率、認容性および耐容性が既に実証されている。したがって、本発明のヒト抗SOD1抗体は、治療薬としてのその標的構造特異的効率と、その副作用の確率減少の両方が、その臨床成功確率を有意に増加されると予想することができる。
本発明は、上記の成分、例えば本発明の抗SOD1抗体、その結合フラグメント、誘導体もしくは変異体、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、の1つ以上を充填した1つ以上の容器を含む、製薬用および診断用それぞれのパックまたはキットも提供する。医薬またはバイオ製品の製造、使用または販売を監督する政府機関により定められた形式の注意書きであって、ヒトへの投与のための製造、使用または販売についての該機関による承認を表す注意書きを、そのような容器(単数または複数)に付随させることができる。加えてまたは代替として、前記キットは、適切な診断アッセイで使用するための試薬および/または説明書を含む。前記組成物、例えば、本発明のキットは、もちろん、ミスフォールド/凝集SOD1の存在を随伴する疾患の危険度評価、診断、予防および治療に特に適しており、ならびに特に、例えば筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS−PDC)、ダウン症候群またはパーキンソン病の治療に適用することができる。
本発明の医薬組成物は、当技術分野において周知の方法に従って調合することができる;例えば、University of Sciences in PhiladelphiaによるRemington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)、ISBN 0−683−306472を参照されたい。適した製薬用担体は当技術分野において周知であり、それらとしては、リン酸緩衝食塩溶液、水、エマルジョン、例えば油/水型エマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。そのような担体を含む組成物を周知の従来の方法によって調合することができる。これらの医薬組成物を適した用量で被験体に投与することができる。適した組成物の投与を、異なる方法で、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、局所または皮内投与または脊髄もしくは脳内送達によって果たすことができる。エーロゾル製剤、例えば、鼻内噴霧製剤は、保存薬および等張剤を伴う、活性薬剤の精製水溶液または他の溶液を含む。好ましくは、そのような製剤は、鼻粘膜と適合性のpHおよび等張状態に調整する。直腸内または膣内投与用の製剤は、適した担体を用いて坐剤として提供することができる。
さらに、本発明は、本発明の薬物を投与するために頭骨に小さな穴をあける今では標準的な(しかし幸いにも滅多に行われない)技術を含むが、好ましい態様では、前記結合分子、特に、本発明の抗体または抗体ベースの薬物は、血液脳関門を横断することができ、それにより静脈内または経口投与が可能である。
用量レジメンは、主治医および臨床学的因子により決定されるであろう。医学的分野において公知のとおり、任意の1人の患者に対する用量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および経路、健康状態全般、および同時に投与される他の薬物を含む、多くの因子により異なる。典型的な用量は、例えば、0.001から1000μg(または本範囲における発現もしくは発現の抑制のための核酸の)範囲であり得るが、特に、前述の要因を考慮して、本例示的範囲を下回るもしくは上回る用量も想定される。一般に、用量は、例えば、宿主体重の約0.0001から100mg/kg、さらに通常は、0.01から5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kg等)の範囲であり得る。例えば、用量は、体重あたり1mg/kgもしくは体重あたり10mg/kg、または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは、少なくとも1mg/kgであり得る。上記の範囲の用量中間体はまた、本発明の範囲内であることを意図する。対象は、このような用量を毎日、代替日に、毎週、または実証的分析により決定される任意の他の計画に従って、投与され得る。例示的な治療は、長期、例えば、少なくとも6ヶ月にわたって、反復投与における投与を必要とする。追加の例示的な治療レジメンは、2週間に1回、または1ヶ月に1回、または3〜6ヶ月に1回の投与を伴う。例示的な用量計画は、連続日において、1〜10mg/kgもしくは15mg/kg、代替日において、30mg/kg、または毎週、60mg/kgを含む。幾つかの方法において、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時投与され、そこでは、投与されるそれぞれの抗体の用量は指示された範囲内である。経過は、定期評価により監視され得る。非経口的投与の調製は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含む。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射用有機エステルである。水溶性担体は、食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、または懸濁液を含む。非経口用賦形剤は、塩化ナトリウム液、リンガーデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油を含む。静脈内賦形剤は、液体および栄養補給液、電解質補給液(リンゲルのデキストロース等に基づく等)等を含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等の保存剤および他の添加剤も存在し得る。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の使用目的により異なるが、ドーパミン等の薬剤または精神薬理薬物をさらに含み得る。
さらに、本発明の医薬組成物は、該医薬組成物の所期の用途に依存してドーパミンまたは精神薬理学的薬物などの薬剤をさらに含むことがある。
さらに、本発明の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物が受動免疫のために抗SOD1抗体またはその結合フラグメント、誘導体もしくは変異体を含む場合、該医薬組成物をワクチンとして調合することができる。背景技術の部で述べたように、凝集SOD1種は、血漿およびCSFにおいて細胞外で報告されており(Gruzmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104(2007)、12524−12529)、ならびにヒト化マウス抗体での能動的および受動的ワクチン接種を用いるトランスジェニックマウス系統での研究により、脳内のSOD1凝集体についての脳内レベル低減、行動障害の進行遅速、および死亡遅延が明らかになった(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104(2007)、2495−2500)。したがって、本発明のヒト抗SOD1抗体および等価のSOD1結合分子での受動免疫は、背景技術の部で既に論じたような能動免疫療法概念の幾つかの有害作用を回避するのに役立つと予想するのが賢明である。したがって、本発明の本抗SOD1抗体およびそれらの等価物は、例えば筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS−PDC)、ダウン症候群またはパーキンソン病などの、ミスフォールド/凝集SOD1の存在を示すまたはミスフォールド/凝集によって引き起こされる疾病の予防または改善のためのワクチンとして特に有用であろう。
一実施形態では、本発明の抗体の組み換え二重または多重特異性構築物を使用することが有益であり得る。参考のために、FischerおよびLeger、Pathobiology 74(2007)、3−14を参照されたい。そのような二重特異性分子を、1つの結合アームがSOD1を標的にし、第二の結合アームが別のエンティティー、例えばAβもしくはアルファ−シヌクレイン、またはSOD1の病的立体構造を標的にするように設計することができるであろう。あるいは、脳内への抗体の透過を助長するために脳血液関門に存在するタンパク質を標的にするように第二の結合アームを設計することができる。
一実施形態では、細胞膜をより容易に透過できるであろう本発明の抗体の組み換えFab(rFab)および一本鎖フラグメント(scFv)を使用することが有益であり得る。例えば、AβのN末端領域内のエピトープを認識するモノクローナル抗体WO−2のキメラ組み換えFab(rFab)および一本鎖フラグメント(ScFv)の使用を記載している、オンライン先行発表のRobertら、Protein Eng.Des.Sel.(2008)Oct 16;S1741−0134を参照されたい。前記改変フラグメントは、(i)アミロイド線維形成を予防することができ、(ii)既製Aβ1−42原線維を脱凝集させることができ、および(iii)全IgG分子と同様に効率的に体外でAβ1−42オリゴマー媒介神経毒性を阻害することができた。前記エフェクター機能のない小型FabおよびscFv改変抗体形式の使用について認められている利点としては、血液脳関門のより効率的な通過、および炎症性副作用を誘発する危険性の最小化が挙げられる。さらに、scFvおよび単一ドメイン抗体は、完全長抗体の結合特異性を保持することに加えて、該抗体を単一遺伝子として発現させることができ、および細胞内抗体として哺乳動物細胞において細胞内発現させることができ、それらの標的のフォールディング、相互作用、修飾または細胞内局在を改変する可能性がある;総説については、例えばMillerおよびMesser、Molecular Therapy 12(2005)、394−401を参照されたい。
異なるアプローチで、Mullerら、Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237−241には、 抗体を生細胞に、それらを害することなく、シャトルすることができると言われている技術プラットフォーム、いわゆる「スーパー抗体技術」が記載されている。このような細胞透過抗体は、新たな診断および治療の窓を開く。用語「TransMabs」は、これらの抗体のために作られた。
さらなる実施形態において、ミスフォールド/凝集SOD1の出現に関連した疾病の治療に有用な他の抗体の共投与または逐次投与が望ましいことがある。一実施形態では、それらの追加の抗体を本発明の医薬組成物に含める。被験体を治療するために使用することができる抗体の例としては、ベータ−アミロイド、アルファ−シヌクレイン、TDP−43およびタウをターゲットにする抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、ミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病の治療に有用な他の神経保護薬の共投与または逐次投与が望ましいことがある。一実施形態では、それらの追加の薬剤を本発明の医薬組成物に含める。被験体を治療するために使用することができる神経保護薬の例としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、グルタミン酸作動性受容体アンタゴニスト、キナーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、抗炎症薬、ジバルプロエクスナトリウムまたはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の医薬組成物と併用することができる他の神経保護薬の例は、当技術分野において記述されている;例えば国際公開第WO2007/011907号パンフレットを参照されたい。一実施形態において、それらの追加の薬剤は、ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストである。
治療有効用量または量は、症状または状態を改善するのに十分な活性成分の量を指す。上述の組成物の治療効力および毒性、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%にとって致死的な用量)は、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順により決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療指数であり、それを比、LD50/ED50として表すことができる。好ましくは、前記組成物中の治療薬は、例えば筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS−PDC)、ダウン症候群またはパーキンソン病の場合、正常な行動および/または認知特性を回復するまたは保つのに十分な量で存在する。
上述のことから、本発明が、上記抗体の少なくとも1つのCDRを含むSOD1結合分子の任意の使用、特に、上述のミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾患、特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)、の診断および/または治療のための使用を包含することは明白である。好ましくは、前記結合分子は、本発明の抗体またはその免疫グロブリン鎖である。加えて、本発明は、本明細書において上で説明した言及抗体のいずれか1つの抗イディオタイプ抗体に関する。これらは、抗原結合部位付近の抗体可変領域に位置する独特な抗原性ペプチド配列に結合する抗体または他の結合分子であり、例えば、被験体のサンプル中の抗SOD1抗体の検出に有用である。
別の実施形態において、本発明は、本発明の上記SOD1結合分子、抗体、抗原結合フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞のいずれか1つと、場合により、適する検出手段、例えば免疫または核酸ベースの診断方法で従来使用されている試薬、とを含む診断用組成物に関する。本発明の抗体は、例えばイムノアッセイでの使用に適しており、イムノアッセイでは本発明の抗体を液相で利用することができ、または固相担体に結合させることができる、本発明の抗体を利用することができるイムノアッセイの例は、直接的または間接的いずれかの形式での競合および非競合イムノアッセイである。そのようなイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原および抗体を多くの異なる担体に結合させることができ、それらを使用して、それらに特異的に結合する細胞を単離することができる。周知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱が挙げられる。本発明のために、担体の性質は、可溶性であってもよいし、または不溶性であってもよい。当業者に公知の多くの異なる標識および標識方法がある。本発明において使用することができる標識のタイプの例としては、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物が挙げられる;本明細書において上で論じた実施形態も参照されたい。
さらなる実施形態により、SOD1結合分子、特に本発明の抗体を、個体における疾患を診断するための方法にも使用することができ、この方法は、血液サンプル、リンパサンプルまたは任意の他の体液サンプルであってよい体液サンプルを被験個体から得ること、および抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で本発明の抗体とその体液サンプルを接触させることによるものである。その後、そのような複合体のレベルを当技術分野において公知の方法によって判定し、対照サンプル中で生ずるものより有意に高いレベルはその被験個体における疾病を示す。同様に、本発明の抗体が結合している特異的抗原も使用することができる。それ故、本発明は、結合分子、例えば、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを含む体外イムノアッセイに関する。
これに関連して、本発明は、このために特に設計された手段にも関する。例えば、抗体ベースのアレイを使用することができ、例えば、SOD1を特異的に認識する本発明の抗体または等価の抗原結合分子をそのアレイに負荷する。マイクロアレイイムノアッセイの設計は、Kusnezowら、Mol.Cell Proteomics 5(2006)、1681−1696に要約されている。したがって、本発明は、本発明に従って同定されたSOD1結合分子が負荷されたマイクロアレイにも関する。
一実施形態において、本発明は、被験体におけるミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾患を診断する方法に関し、この方法は、本発明の少なくとも1つの抗体、そのSOD1結合フラグメント、またはそれらのうちのいずれか1つの結合特異性と実質的に同じ結合特異性を有するSOD1結合分子を用いて、診断すべき患者からのサンプル中のSOD1および/またはミスフォールド/凝集SOD1の存在を判定することを含み、この場合、病的ミスフォールドおよび/または凝集SOD1の存在は、神経変性疾患の指標となり、ならびに生理的SOD1二量体形態のレベルと比較して病的ミスフォールドおよび/または凝集SOD1のレベルの増加は、該被験体における神経変性疾患の進行についての指標となる。
診断すべき被験体は、その疾病について無症状または症状発現前であることもある。好ましくは、前記対照被験体は、ミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病、例えば、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS−PCD)、ダウン症候群またはパーキンソン病を有し、この場合、病的ミスフォールド/凝集SOD1のレベルと参照基準の間の類似性は、診断すべき被験体が神経変性病を有することを示す。代替としてまたは加えて、第二の対照としての対照被験体は神経変性疾患を有さず、この場合、生理的SOD1量体のレベルならびに/または病的ミスフォールドおよび/もしくは凝集SOD1のレベルと参照基準の間の差は、診断すべき被験体が神経変性疾患を有することを示す。好ましくは、診断すべき被験体と対照被験体(単数または複数)の年齢を合わせる。分析すべきサンプルは、病的ミスフォールドおよび/または凝集SOD1を含有すると推測される任意の体液、例えば、血液、CSFまたは尿サンプルであり得る。
生理的SOD1二量体のレベルならびに/または病的ミスフォールドおよび/もしくは凝集SOD1のレベルを当技術分野において公知の任意の適した方法によって評価することができ、この評価は、例えば、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、二次元ゲル電気泳動、質量分光分析(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型−MS(MALDI−TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化−飛行時間型(SELDI−TOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)続いてのタンデム質量分析(MS/MS)、およびレーザーデンシトメトリーから選択される1つ以上の技術によってSOD1を分析することを含む。好ましくは、SOD1の前記生体内画像診断は、陽電子放射断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、近赤外(NIR)光イメージングまたは磁気共鳴画像診断(MRI)を含む。
本発明に従って適応することができる抗体および関連手段を使用する、SOD1の検出のための、およびミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病、例えばALS、の進行をモニターするための、およびそのような疾病の治療をモニターするための抗体ベースの方法は、国際公開第WO2007/098607号および同第WO2007/025385号パンフレット(全ての内容が参照により本明細書に組み込まれている)にも記載されている。本発明のSOD1特異的抗体、結合フラグメント、誘導体または変異体を用いることを除いて、これらの方法を記載されているとおりに適用することができる。
VII.立体構造特異的SOD1エピトープを有するペプチド
さらなる態様において、本発明は、本発明の任意の抗体によって特異的に認識されるSOD1のエピトープを有するペプチドに関する。好ましくは、このようなペプチドは、配列番号2、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58もしくは配列番号59で示されるアミノ酸配列、または1つ以上のアミノ酸が置換、欠失および/もしくは付加されているそれらの修飾配列を含み、または該配列から成り、該ペプチドは、本発明の任意の抗体によって、好ましくは抗体NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8、NI−204.11F11、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3それぞれによって抗体NI−204.25H3によって、認識される。
本発明の一実施形態において、そのようなペプチドは、前記被験体の生体サンプル中のペプチドに結合する抗体の存在を判定する段階を含む、被験体におけるミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病、例えばALS、の診断に使用することができ、ならびに本発明の上記ペプチドを認識する抗体のレベルを測定することおよびそれらの測定値を、比較対象となる年齢および性別の健常被験体において認められるレベルと比較することによる該被験体における該疾病の診断に使用することができる。本発明の前記ペプチドに対して特異的な測定抗体レベルの上昇は、該被験体においてミスフォールド/凝集SOD1に関連した疾病を診断する指標となるであろう。本発明のペプチドを、本明細書において前に説明したようなアレイ、キットおよび組成物にそれぞれ調合することができる。
これらおよび他の実施形態は、本発明の記述および実施例により開示され、包含される。本発明に従って用いられる材料、方法、使用および化合物のいずれか1つに関するさらなる文献を、例えば電子デバイスを用いて、公的ライブラリーおよびデータベースから検索することができる。例えば、米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)および/または国立医学図書館(National Libraty of Medicine)によって提供されている公的データベース「Medline」を利用することができる。さらなるデータベースおよびウェブアドレス、例えば、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory:EMBL)の一部である欧州バイオイフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI)のものは、当業者に公知であり、およびインターネット検索エンジンを用いてそれらを得ることができる。生物工学に関する特許情報の総説、ならびに遡及検索および文献速報のために有用な特許情報の適切な供給源の通覧は、Berks、TIBTECH 12(1994)、352−364に与えられている。
上の開示は、本発明を一般に説明するものである。別の言明がない限り、本明細書で使用する用語には、2000年に改訂され、2003年に再版されたOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、Oxford University Press、1997、ISBN 0 19 850673 2に提供されているような定義が与えられている。本明細書の本文を通して幾つかの文書が引用されている。完全な文献引用情報は、特許請求の範囲の直ぐ前の本明細書末尾において見つけることができる。全ての引用参考文献(本願中の至る所で引用されている参考文献、発行特許、公開特許出願、ならびに製造業者の仕様書および説明書などを含む)の内容は、参照により本明細書に特に組み込まれているが、引用されているいずれかの文書が実際に本発明についての先行技術であることを認めるものではない。
以下の特定の実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができるが、これらの実施例は、単に例証を目的として本明細書に提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
以下の実施例は、本発明をさらに例証するものであるが、いかなる点においても本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。実施例1から7における下記実験を、クローニングした抗体NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8、NI−204.9F6、NI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3、すなわち、ヒト可変重および軽鎖の生殖細胞系(GL)配列に合わせていない枠組み1(FR1)Ig可変領域に関して例証し、説明する;図1参照。
材料および方法
本明細書において用いるものなどの従来の方法についての詳細な説明は、引用文献の中で見つけることができる;BeersおよびBerkowにより編集された「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」、第17版(Merck&Co.、Inc.2003)も参照されたい。
本発明の実施は、別の指示がない限り、当業者の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の技術を用いることとなる。本発明の実施に有用な一般技術のさらなる詳述について、実施者は、細胞生物学および組織培養に関する標準的な教科書および総説を参照することができる;本実施例に引用する参考文献も参照されたい。分子生化学および細胞生化学に関する一般的方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrookら、Harbor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology、第4版(Ausubelら編、John Wiley&Sons 1999);DNA Cloning、第IおよびII巻(Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(HamesおよびHiggins編、1984);Transcription And Translation(HamesおよびHiggins編、 1984);Culture Of Animal Cells(FreshneyおよびAlan、Liss,Inc.、1987);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(MillerおよびCalos編);Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology、第3版(Ausubelら編);およびRecombinant DNA Methodology(Wu編、Academic Press);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(MillerおよびCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology、第154および155巻(Wuら編);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.、N.Y.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、第I−IV巻(WeirおよびBlackwell編、1986);Protein Methods(Bollagら、John Wiley&Sons 1996);Non−viral Vectors for Gene Therapy(Wagnerら編、Academic Press 1999);Viral Vectors(KaplittおよびLoewy編、Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(Lefkovits編、Academic Press 1997);ならびにCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(DoyleおよびGriffiths、John Wiley&Sons 1998)のような標準的教科書の中で見つけることができる。本開示において言及する遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、供給業者、例えば、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma−AldrichおよびClonTechから入手できる。細胞培養および培地回収に関する一般技術は、Large Scale Mammalian Cell Culture(Huら、Curr.Opin.Biotechnol.8(1997)、148);Serum−free Media(Kitano、Biotechnology 17(1991)、73);Large Scale Mammalian Cell Culture(Curr.Opin.Biotechnol.2(1991)、375);およびSuspension Culture of Mammalian Cells(Birchら、Bioprocess Technol.19(1990)、251);Extracting information from cDNA arrays、Herzelら、CHAOS 11(2001)、98−107に概説されている。
SOD1特異的B細胞の同定方法およびそれぞれの抗体のクローニング方法
特に記載のない限り、SOD1特異的B細胞の同定、および所望の特異性を提示する抗SOD1抗体の分子クローニング、ならびにそれらの組み換え発現および機能の特性付けは、一般に、国際公開第WO2008/081008号として公開された国際出願第PCT/EP2008/000053号の実施例および補足的方法の部に記載されているとおりに行った、または行うことができ、該参考文献の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。SOD1特異的B細胞の同定および所望の特異性を提示するSOD1抗体の分子クローニングならびにそれらの組み換え発現および機能の特性付けのための新規方法を本願の中で提供する。上で説明したように、本発明の一実施形態では、単一またはオリゴクローナルB細胞の培養物を培養し、該B細胞によって産生された抗体を含有する該培養物の上清を、その中の新規抗SOD1抗体の存在および親和性についてスクリーニングする。このスクリーニング工程は、国際公開第WO2004/095031号パンフレット(この開示内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれている)に記載されているような感受性組織アミロイド班免疫反応性(TAPIR)アッセイ段階;実施例4に記載し、図6に示すような、突然変異ヒトSOD1形態を発現するトランスジェニックマウスの脊髄組織を用いてSOD1の病的凝集体についてスクリーニングする段階;類似に実施例5に記載し、図7に示すような配列番号1によって表されるアミノ酸配列のSOD1に由来するペプチドと抗体NI−204.10D12についてのエピトープ立体構造実験によるペプチドの結合についてスクリーニングする段階;配列番号1によって表される前記アミノ酸配列の完全長SOD1の結合についてスクリーニングし、国際公開第WO2008/081008号パンフレットに記載されているように、ならびに実施例1に記載し、図2、5および7に示すように、結合が検出される抗体または該細胞を産生する細胞を単離する段階を含む。
SOD1抗原
組み換えヒトSOD1は、Biomol(ドイツ国ハンブルク)から購入した。ヒト赤血球からの野生型SOD1(生理的二量体)および他の全ての試薬は、別途言及しなければSigma−Aldrich(スイス国ブーフス)から購入した。
ヒトSOD1抗体スクリーニング
ELISA:
被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42、pH9.6)中3.3μg/mLまたは5μg/mLの濃度に希釈した組み換えヒトSOD1(Biomol、ドイツ国ハンブルク)またはBSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)のいずれかで96ウェルマイクロプレート(Corning)を一晩、4℃で被覆した。あるいは、被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)中34μg/mLの濃度の体外酸化ヒトSOD1で被覆した96ウェルマイクロプレート(Corning)を使用する。プレートをPBS−T pH7.6中で洗浄し、2%BSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)を含有する、PBS/0.1%Tween−20を用いて1時間、室温で非特異的結合部位をブロックした。B細胞調整培地を記憶B細胞培養物プレートからELISAプレートに移し、1時間、室温でインキュベートした。ELISAプレートをPBS−T中で洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)接合抗ヒト免疫グロブリンポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch、英国ニューマーケット)を使用して結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。培地中に含有された抗体の、BSAへの結合ではなく、組み換えSOD1への結合を示したB細胞培養物のみを、抗体クローニングに付した。
MULTI−ARRAY(登録商標)マイクロプレートスクリーニング
標準96ウェル10−Spot MULTI−SPOTプレート(Meso Scale Discovery、米国)を、PBS中30ug/mLのSOD1(Biomol、ドイツ国ハンブルク)で被覆した。3%BSAを含有するPBS−Tで非特異的結合部位を1時間、室温でブロックし、その後、B細胞調整培地と共に1時間、室温でインキュベートした。プレートをPBS−T中で洗浄し、その後、SULFO−Tag接合抗ヒトポリクローナル抗体(Meso Scale Discovery、米国)と共にインキュベートした。PBS−Tでの洗浄後、SECTOR Imager 6000(Meso Scale Discovery、米国)を使用する電気化学発光測定により、抗体の結合を検出した。
SOD1抗体の分子クローニング
記憶B細胞を含有するサンプルを健常ヒト被験体から得た。選択された記憶B細胞培養物の生B細胞を回収し、mRNAを調製する。その後、ネステッドPCRアプローチを用いて、免疫グロブリン重および軽鎖配列を得る。
ヒト免疫グロブリン生殖細胞系レパートリーの全ての配列ファミリーを表すプライマーの組み合わせを、リーダーペプチド、VセグメントおよびJセグメントの増幅に使用する。5’末端にはリーダーペプチド特異的プライマーを、および3’末端には定常領域特異的プライマー使用して、第一ラウンド増幅を行う(Smithら、Nat Protoc.4(2009),372−384).重鎖およびカッパ軽鎖のための第二ラウンド増幅は、5’末端にはVセグメント特異的プライマーを、および3’末端にはJセグメント特異的プライマーを使用して行う。ラムダ軽鎖のための第二ラウンド増幅は、5’末端にはVセグメント特異的プライマーを、および3’末端にはC領域特異的プライマーを使用して行う(Marksら、Mol.Biol.222(1991)、581−597;de Haardら、J.Biol.Chem.26(1999),18218−18230).
所望の特異性を有する抗体クローンの同定を、完全抗体の組み換え発現に基づくELISAでの再スクリーニングによって行う。完全ヒトIgG1抗体またはキメラIgG2a抗体の組み換え発現は、「正しい読み枠内の」可変重鎖および軽鎖配列の発現ベクターへの挿入により、該発現ベクターが、リーダーペプチドをコードする配列を該可変領域配列の5’末端に、および適切な定常ドメイン(単数または複数)をコードする配列を3’末端に補足することによって果たされる。そのために、前記プライマーは、前記可変重および軽鎖配列の抗体発現ベクターへのクローニングを助長するように設計された制限部位を含有した。シグナルペプチドとヒト免疫グロブリンガンマ1またはマウス免疫グロブリンガンマ2aの定常ドメインとを有する重鎖発現ベクターにインフレームの免疫グロブリン重鎖RT−PCR産物を挿入することによって、重鎖免疫グロブリンを発現させる。シグナルペプチドとヒトカッパ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを供給する軽鎖発現ベクターにインフレームのカッパ軽鎖RT−PCR産物を挿入することにより、カッパ軽鎖免疫グロブリンを発現させる。シグナルペプチドとヒトまたはマウスラムダ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを供給するラムダ軽鎖発現ベクターにインフレームのラムダ軽鎖RT−PCR産物を挿入することにより、ラムダ軽鎖免疫グロブリンを発現させる。
Ig重鎖発現ベクターおよびカッパまたはラムダIg軽鎖発現ベクターのHEK293またはCHO細胞(またはヒトもしくはマウス起源の任意の他の適切なレシピエント細胞系統)への同時トランスフェクションにより、機能的組み換えモノクローナル抗体を得る。その後、標準的なプロテインカラム精製を用いて調整培地から組み換えヒトモノクローナル抗体を精製する。一過的にトランスフェクトされた細胞または安定的にトランスフェクトされた細胞いずれかを使用して、無制限量の組み換えヒトモノクローナル抗体を産生することができる。直接Ig発現ベクターを使用すること、またはIg可変領域を異なる発現ベクターに再クローニングすること、いずれかによって、組み換えヒトモノクローナルを産生する細胞系統を確立することができる。F(ab)、F(ab)2およびscFvなどの誘導体もこれらのIg可変領域から産生することができる。
抗体
マウスモノクローナル抗SOD1抗体72B1(Santa Cruz Biotechnology、米国サンタクルーズ)およびウサギモノクローナル抗SOD1抗体EPR1726(Epitomics、米国バーリンゲーム)を製造業者のプロトコルに従って使用した。組み換えヒトまたはキメラSOD1抗体NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.9F6、NI−204.11F11、NI−204.67E12、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3, NI−204.34A3およびNI−204.25H3は、本発明の抗体である。別の言明がない限り、それらをHEK293またはCHO細胞において発現させ、調整培地から精製し、その後の用途に直接使用した。実施例1から4では、本発明の精製組み換え抗体を使用した。
ダイレクトELISA
炭酸塩ELISA被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)中3.3/mLの濃度に希釈した組み換えヒトSOD1タンパク質(Biomol、ドイツ国ハンブルク)で、4℃で一晩、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を被覆した。2%BSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)と0.5%Tween20とを含有するPBSを用いて2時間、室温で非特異的結合部位をブロックした。HRPと接合したロバ抗ヒトIgGg抗体(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)を使用して本発明のヒト抗体(NI−204.10D12、NI−204.9F6、NI−204.12G7およびNI−204.10A8)の結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。GraphPad Prismソフトウェア(米国サンディエゴ)を使用する非線形回帰により、ED50値を推定した。
トランスジェニックマウス
B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスを使用して、本発明のSOD1抗体(およびそれらの結合特異性を有する分子)を検証した。
前記トランスジェニックマウス系統は、ALSについての非常によく確立され、特性付けされているマウスモデルである。このALSマウスモデルの脊髄に関する顕著な神経病理学的特徴は、後角でより前角ならびに白質の前および後柱でのほうが見つけられる頻度が高い、ヒト筋萎縮性側索硬化症の際に見られるものに類似した神経フィラメントに富むスフェロイドの存在;免疫反応性神経フィラメントに富む封入体で満たされた肥厚ジストロフィー性神経突起の存在;神経細胞体の空胞、グリア増殖症および星状細胞増多症の存在を特徴とする運動ニューロン変性である。スーパーオキシドジスムターゼ1タンパク質の異常凝集体から主として成る、細胞内分散封入体、レヴィー小体様封入体および細胞外凝集体が、追加の顕著な神経病理学的特徴である。
実施例1 ヒトSOD1抗体の標的および結合特異性の検証
単離された抗体の認識標的としてのSOD1を検証するために、上で説明したようにダイレクトELISAアッセイを行った。例示的組み換えヒトNI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.9F6およびNI−204.10A8抗体については、炭酸塩ELISA被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)中3.3μg/mLの濃度に希釈した、組み換えヒトSOD1(Biomol、ドイツ国ハンブルク)でまたはBSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)で96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を被覆し、該抗体の結合効率を試験した。ELISAにより、例示的NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.9F6およびNI−204.10A8抗体は、ヒトSOD1に特異的に結合する。BSAへの結合は観察されなかった;図2参照。
例示的抗体NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.9F6およびNI−204.10A8の半最大有効濃度(EC50)の決定のために、様々な抗体濃度で追加のダイレクトELISA実験を行った。炭酸塩ELISA被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)中3.3μg/mLの濃度に希釈した組み換えヒトSOD1(Biomol、ドイツ国ハンブルク)で96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を被覆し、前記抗体の結合効率を試験した。HRPと接合したロバ抗ヒトIgGg抗体(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)を使用して結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。
GraphPad Prism(米国サンディエゴ)ソフトウェアを使用する非線形回帰により、ED50値を推定した。組み換えヒト由来抗体NI−204.10D12、NI−204.10A8およびNI−204.12G7は、高親和性で組み換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ1と結合し、それぞれ10.0nM、2.7nMおよび0.4nMのEC50を有する。抗体NI−204.9F6は、組み換えヒトスーパーオキシドジスムターゼ1に結合し、ナノモル範囲(104.8nM)のEC50を有する;図3参照。したがって、NI−204.10D12、NI−204.12G7、 NI−204.10A8およびNI−204.9F6抗体は、家族性ALSのための適したヒト由来候補薬であり、スーパーオキシドジスムターゼ1突然変異体を過発現する確立されたトランスジェニックマウスモデルでそれらを研究することができる。
実施例2 ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の漸増被覆濃度についての、したがって立体構造エピトープの形成の選好についてのEC50分析
立体構造エピトープへのNI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7およびNI−204.9F6の結合能力を判定するために、被覆用緩衝液中、異なる4つの被覆濃度(0.1;1;10または30μg/mL)のヒト組み換えSDO1(Biomol、ドイツ国ハンブルク)を用いてダイレクトELISA実験を行った。一次抗体ヒトNI−204.10D12、ヒトNI−204.10A8、ヒトNI−204.9F6およびマウスモノクローナル抗体SOD−1 72B1(Santa Cruz Biotechnology、米国サンタクルーズ)を、示されている濃度(図4)に希釈し、1時間、室温でインキュベートした。HRPと接合したヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)またはロバ抗ヒトIgGg(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)抗体いずれかを使用して結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。GraphPad Prism(米国サンディエゴ)ソフトウェアを使用する非線形回帰により、ED50値を推定した。
ダイレクトSOD1 ELISAを用いて、低および高被覆濃度のヒト組み換えSOD1について、抗体の作用強度を示す半最大有効濃度(ED50)を判定した。24nMのEC50を有する組み換えNI−204.10D12の高い親和性が、高いヒトSOD1タンパク質被覆密度(10または30μg/mL)について観察された(図4AおよびF)。より低いヒトSOD1被覆濃度で親和性の実質的降下が観察され、NI−204.10D12についてはEC50が相応じて25倍近くまで増加した(図4AおよびF)。0.4nMのEC50を有する組み換えNI−204.12G7の非常に高い親和性結合が、高いヒトSOD1タンパク質被覆濃度(10または30μg/mL)について観察された(図4DおよびF)。より低いヒトSOD1被覆濃度で親和性の実質的降下が観察され、NI−204.12G7についてはEC50が相応じて195倍近くまで増加した(図4DおよびF)。対照的に、NI−204.10A8抗体は、既に低いヒトSOD1タンパク質被覆密度(0.1および1μg/mL)で高結合性で結合し、それぞれ96nMおよび19nMのEC50を有する(図4BおよびF)。10μg/mLのヒトSOD1タンパク質被覆濃度でNI−204.10A8の結合親和性のさらなる増加が観察され、EC50は2nMに増加した(図4BおよびF)。NI−204.9F6抗体は、NI−204.10A8抗体の結合特性に非常に類似している組み換えヒトSOD1タンパク質への結合特性を示す(図4C)。しかし、NI−204.9F6結合親和性は、NI−205.10A8について判定された結合親和性よりはるかに低い(図4B、CおよびF)。
市販SOD−1 72B1抗体は、より低いヒトSOD1被覆密度で結合親和性の強い増加を示さなかった(図4D)。
ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1被覆濃度を増加させるNI−204.10D12のEC50分析は、高いSOD1被覆濃度で親和性の強い獲得を明示した。24nMのEC50が10μg/mLの被覆で測定されたが、この値は、低いSOD1被覆密度(0.1μg/mL)については25倍近くに増加した。これは、親和性の相当な降下を示唆する。NI−204.10D12に類似して、NI−204.12G抗体のEC50分析は、高いSOD1被覆濃度で親和性の非常に強い獲得を明示した。0.4nMのEC50が10μg/mLの被覆で測定されたが、この値は、低いSOD1被覆密度(0.1μg/mL)については195倍近くに増加した。これは、親和性の相当な降下を示唆する。これらの発見は、ELISAプレート上での高い局所濃度の組み換えヒトSOD1ついての起こり得る自然凝集によって説明される可能性が高く、ならびにSOD1ミスフォールディングまたは凝集体形成により露出されるNI−204.10D12およびNI−204.12G7抗体のエピトープを示す。対照的に、NI−204.10A8抗体の高いSOD1被覆濃度(10μg/mL)での親和性の獲得と共に低密度被覆(0.1μg/mL)での高い親和性結合は、この抗体が、生理的タンパク質立体構造で存在するヒトSOD1のエピトープを認識できることを示す。NI−204.9F6は、全てのSOD1濃度でNI−204.10A8より低い結合親和性と、高い被覆濃度でのわずかな親和性獲得を示し、これは、この抗体が、生理的立体構造で存在するヒトSOD1のエピトープも認識することができることを示唆している。
実施例3 生理的SOD1二量体へのおよび体外ミスフォールド/凝集SOD1への結合分析
金属触媒酸化反応を用いて体外スーパーオキシドジスムターゼ1凝集を誘導した(Rakhitら、J.Biol.Chem.279 (2004)、15499−504)。ヒト赤血球からの野生型SOD1(二量体)および多の全ての試薬は、Sigma−Aldrich(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)から購入した。凝集のために、4mMアスコルビン酸と0.2mM CuCl2とを含有する10mM Tris酢酸緩衝液、pH7.0中で10μMヒトSOD1を48時間37℃でインキュベートした。対照として、10μMヒトSOD1を10mM Tris酢酸緩衝液、pH7.0中で48時間、37℃でインキュベートした。
生理的ヒトSOD1二量体または体外凝集ヒトOSD1二量体のいずれかを被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)中34μg/mLの濃度で用いて96ウェルマイクロプレート(Corning)を被覆した。2%BSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)を含有する、PBS/0.1%Tween(登録商標)−20を用いて1時間、室温で非特異的結合部位をブロックした。一次抗体ヒトNI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8、NI−204.9F6およびマウスモノクローナル抗体SOD−1 72B1(Santa Cruz Biotechnology、米国サンタクルーズ)を、示されている濃度に希釈し、1時間、室温でインキュベートした。HRPと接合したヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)またはロバ抗ヒトIgGg抗体(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)いずれかを使用して結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。GraphPad Prismソフトウェア(米国サンディエゴ)を使用する非線形回帰により、ED50値を推定した。
ヒトNI−204.10D12(図5A)およびNI−204.12G7(図5C)抗体は、ミスフォールド/凝集ヒトSOD1に優先的に結合し、それぞれ15nMおよび3.6nMのEC50を有する。ヒトNI−204.9F6(図5D)抗体は、ミスフォールド/凝集ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1にわずかに優先的に結合し、127nMのEC50を有する。これらの発見は、NI−204.10D12、NI−204.12G7およびNI−204.9F6抗体が、生理的形態ではなくミスフォールド/凝集形態のヒトスーパーオキシドジスムターゼ1の病理学的に意味のある立体構造の、露出されるヒトSOD1のエピトープを優先的に標的にすることを示唆している。
対照的に、NI−204.10A8抗体は、ヒト生理的SOD1二量体およびミスフォールド/凝集ヒトSOD1と同等の親和性で結合し(図5B)、それぞれ、19.1nMおよび29.5nMのEC50を有する。これらの発見は、ミスフォールド/凝集形態および生理的形態のヒトスーパーオキシドジスムターゼ1の病理学的に意味のある立体構造両方の、露出されるヒトSOD1のエピトープを標的にすることを示唆している。
市販SOD−1 72B1抗体は、ヒト生理的SOD1二量体およびミスフォールド/凝集ヒトSOD1にほぼ同等の親和性で結合する;図5E参照。
金属触媒酸化によって誘導されるSOD1凝集体は、ALS生体内スーパーオキシドジスムターゼ1凝集体でのものと同一の特性を有する。NI−204.10D12(図5A)およびNI−204.12G7(図5C)は、ミスフォールド/凝集SOD1などの治療上意味のある病的形態のヒトSOD1への顕著な結合を示す。SOD1凝集体への結合は、生理的二量体より選好されるようである。NI−204.9F6(図5D)は、治療上意味のある病的形態のヒトスーパーオキシドジスムターゼ1へのわずかに優先的な結合を示す。しかし、NI−204.9F6抗体のミスフォールド/凝集SOD1に対する結合親和性は、NI−204.10D12およびNI−204.12G7抗体について判定された親和性より低い。
興味深いことに、NI−204.10A8抗体(図5B)は、NI−204.10D12、NI−204.12G7およびNI−204.9F6抗体とは対照的に、生理的二量体よりSOD1凝集体への優先的結合を示さない。この抗体は、低ナノモル範囲で、高親和性で、両方のSOD1種に結合する。
これらの発見は、病理学的に意味のある立体構造のSOD1タンパク質に標的化されるヒト由来NI−204.10D12およびNI−204.12G7抗体の治療上魅力的なプロファイル、ならびにNI−204.10A8抗体がNI−204.10D12およびNI−204.12G7抗体のものとは異なる生化学的特性を保有することを強調する。したがって、ヒト由来NI−204.10A8は、分子NI−204.10D12およびNI−204.12G7のものとは異質の特性を有する、ALSのための可能性のある治療抗体に相当する。
さらに、これらの発見は、ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1の被覆濃度を増加させる前記結合分析と一致する。
実施例4 トランスジェニックマウス脊髄組織におけるSOD1の病的凝集体に結合するNI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8およびNI−204.9F6の結合の評価
疾病末期のB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの脊髄をリン酸緩衝4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、パラフィン包埋し、5μm切片に切断した。ギ酸前処理後、切片を異なる抗スーパーオキシドジスムターゼ1抗体:キメラNI−204.10D12(50nM)、ヒトNI204−10A8(50nM)、ヒトNI−204.12G7(20nM)、ヒトNI−204.9F6(50nM)およびEPR1726抗SOD1(Epitomics、1:10000)と共にインキュベートし、その後、ビオチン化ロバ抗マウスまたはビオチン化ロバ抗ヒトまたはビオチン化ロバ抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd;1:250)のいずれかと共にインキュベートした。抗体シグナルをVectastain ABCキット(Vector Laboratories)で増幅し、ジアミノベンジジン(Dako)で検出した。
スーパーオキシドジスムターゼ1へのNI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10D12およびNI−204.9F6の結合を疾病末期のB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスからの脊髄切片の免疫組織化学分析により特性付けした。
NI−204.10D12は、主として、SOD1病態ならびに細胞内分散封入体のびまん性染色を示す;図6A参照。
NI−204.12G7は、細胞質SOD1封入体、主として運動ニューロンにおけるもの、および細胞外SOD1凝集体を含む、SOD1病態の顕著な染色を示す(図6C)。
NI−204.10A8は、細胞質SOD1封入体、主として運動ニューロンにおけるもの、および細胞外SOD1凝集体を含む、SOD1病態の顕著な染色を示す(図6B)。さらに、この抗体は、脊髄組織の強いびまん性染色によって証明されるように、高感度で病的SOD1も認識するようである(図6B)。
これらの発見は、前記3つの抗体の生化学的結合特性と一致する:ミスフォールド/凝集SOD1への強い結合選好性を示すNI−204.10D12およびNI−204.12G7抗体、ならびに生理的SOD1二量体およびミスフォールド/凝集SOD1への同等の結合親和性を示すNI−204.10A8抗体。
NI−204−9F6抗体は、被験染色条件下で非常に弱く反応し、主として細胞内SOD1および細胞内分散SOD1封入体を検出する;図6D参照。
ヒトSOD1を特異的に検出するが、マウスSOD1を検出しない、市販EPR1726抗SOD−1抗体は、生理的SOD1および病的SOD1凝集体両方に高感度で結合する;図6E。
本発明の全ての抗体を試験するために、上記の実験を反復した。図9に示すように、ヒト由来SOD1特異的抗体は、B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの腰部脊髄において、異なるSOD1病態パターン、例えば、分散されたパターン、細胞内封入体パターン、細胞質封入体パターンおよびより大きいパターン、主として細胞外のSOD1凝集体パターンを明示した。
図9に示した全ての抗体は、適切な抗体濃度を用いると、細胞内分散封入体、びまん性細胞質構造および空胞構造の染色を示す。参照抗体B8H10との比較対象となるより大きな凝集体の染色(図9M)により、本発明の抗体は2群に分けられる:抗体NI−204.12G7(図9B)、NI−204.11F11(図9C)、NI−204.6H1(図9F)、NI−204.12G3(図9G)、NI−204.7G5(図9H)、NI−204.25H3(図9I)、NI−204.34A3(図9J)およびNI−204.7B3(図9K)は、脊髄腹側角においてこれらの凝集体を染色し、これに対してNI−204.10D12(図9A)、NI−204.10A8(図9D)、NI−204.67E12(図9E)は、これらの構造を染色せず、可溶性、ミスフォールド形態の突然変異体ヒトSOD1(Boscoら、2010、Nat Neuroscience 13(11);1396−1403)に特異的である参照抗体C4F6(図9L)に類似している。加えて、抗体NI204.10D12、NI204.6H1およびNI204.7G5は、脊髄背側角切片において膠様質のびまん性染色を示す。
さらに、前記抗体の一部 (NI−204.10D12(図9A)、NI−204.10A8(図9D)およびNI−204.67E12(図9E))は、脊髄組織の強いびまん性染色によって証明されるように、高感度で生理的SOD1も認識するようである。
市販C4F6(MediMabs、カナダ;#MM−0070−2)およびB8H10(MediMabs、カナダ;#MM−0070)抗体を対照抗体として使用した。C4F6抗体またはB8H10抗体とのインキュベーションに続いて、ビオチン化ウマ抗マウス二次抗体(Vector Laboratories;1:250)とのインキュベーションを行った。抗体シグナルをVectastain ABCキット(Vector Laboratories)で増幅し、ジアミノベンジジン(Dako)で検出した。この染色は、2つの異なる染色パターンを明示した:C46A抗体は、点状/びまん性染色を示した(図9L)のに対し、B8H10抗体は、主として、粒状SOD1封入体およびSOD1凝集体を染色した(図9M)。
結論
これらのデータは、NI−204抗体がB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスモデルにおいて病的スーパーオキシドジスムターゼ1構造を認識することを立証する。
実施例5 NI−204抗体エピトープマッピング
オーバラップペプチドのスキャンをエピトープマッピングのために用いた。ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1の全配列を、個々のペプチド間に11aaオーバーラップがある合計36の直鎖状15量体ペプチドとして合成し(JPT Peptide Technologies、ドイツ国ベルリン)、ニトロセルロース膜にスポットした。その膜を5分間、メタノール中で活性化し、その後、室温でTBS中で10分間洗浄した。非特異的結合部位を2時間、室温で、Roti(登録商標)−Block(Carl Roth Gmbh+Co.KG、ドイツ国カールスルーエ)でブロックした。ヒトNI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.11F11、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3それぞれNI−204.25H3抗体(1μg/mL)を3時間、室温で、Roti(登録商標)−Block中でインキュベートした。HRP接合ロバ抗ヒトIgG二次抗体を使用して、一次抗体の結合を判定した。ECLおよびImageQuant 350検出(GE Healthcare、スイス国オッテルフィンゲン)を使用してブロットを現像した。
NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.11F11、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3それぞれによりNI−204.25H3抗体により認識されるスーパーオキシドジスムターゼ1タンパク質内のエピトープをマッピングするために、ペプスキャン膜(pepscan membrane)と全スーパーオキシドジスムターゼ1タンパク質配列をカバーする36の15aaペプチド(ペプチド間に11のアミノ酸のオーバーラップ)を使用した。図7に具体例として示すように、ペプチド番号22、23および24へのNI−204.10D12の顕著な結合が観察され、これは、この抗体によって認識されるエピトープがSOD1の中央ドメインに局在することを示す。したがって、NI−204.10D12結合エピトープは、SOD1アミノ酸93−99内に局在すると予測される。NI−204.10D12は、脂肪および配列DGVADVSの下線の付いたアミノ酸93−99(配列番号2)から成る中央ドメインに結合する。本発明のヒト由来SOD1特異的抗体NI−204.10D12、NI−204.10A8、NI−204.12G7、NI−204.11F11、NI−204.6H1、NI−204.12G3、NI−204.7G5、NI−204.7B3、NI−204.34A3およびNI−204.25H3の類似に同定された結合エピトープを下の表IVにまとめる。
表IV:ヒトSOD1タンパク質配列の示されているアミノ酸配列内の異なるヒト由来SOD1特異的抗体の同定結合エピトープ。
ND:PepSpot技術の使用により結合エピトープ同定なし。
実施例6 野生型、G93A突然変異体およびマウスSOD1由来ペプチドへのNI−204.10D12結合
スーパーオキシドジスムターゼ1タンパク質のNI−204/10D12結合エピトープをカバーするビオチン化ペプチド(JPT Peptide Technologies、ドイツ国ベルリン)をPBS中50μg/mLの濃度で用いて4℃で一晩、ストレプトアビジン被覆96ウェルマイクロプレート(Fischer Scientific)を被覆した。2%BSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)を含有する、PBS/0.1%Tween−20を用いて1時間、室温で、非特異的結合をブロックした。一次抗体キメラNI−204.10D12を示されている濃度に希釈し、1時間、室温でインキュベートした。HRPと接合したヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson immunoResearch、英国ニューマーケット)を使用して結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。
キメラ組み換えNI−204.10D12抗体は、野生型ヒト、G93Aヒトおよびマウススーパーオキシドジスムターゼ1タンパク質に由来する同定NI−204.10D12結合エピトープをカバーするアミノ酸配列を有する合成ペプチドに、濃度依存的様式で結合する(図8)。NI−204.10D12は、前記3つの異なるSOD1種に同等の親和性で結合する。ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1におけるNI−204.10D12エピトープ内にある位置93でのアミノ酸交換は、家族性形態のALSに結び付けられる。これらの発見は、NI−204.10D12抗体が散発性および家族性ALSの治療に適した候補薬であることを示す。
実施例7 本発明の抗体の生体内試験
上で既に説明したしょうに、抗ヒトSDO1抗体の直接脳室内注入に基づく受動免疫アプローチを用いるトランスジェニックマウス系統での研究により、そのような治療が、SOD1 fALSマウスモデルにおいて寿命を延長することおよび運動ニューロン減少を減弱することにより疾病を軽減し得ることは証明されている(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.104(2007)、2495−2500;Gros−Louisら、J.Neurochem.(2010)113、1188−1199)。対照的に、能動的ワクチン接種アプローチは、有意な防御を付与することができなかった(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.104 (2007)、2495−2500)。しかし、能動的ワクチン接種は、老人集団の有意な割合がワクチン接種に対する非応答者であると予想されるので、ヒトでは特に利用できないことがある。さらに、SOD1に対する免疫反応に随伴する潜在的副作用は、制御が難しい場合がある。本発明のSOD1結合分子が、マウス抗体について上で説明したのと同様のSOD1凝集体の脳内レベル低減を果たすことは、病的ミスフォールド/凝集SOD1種に対するそれらの同様の結合特性のため、合理的に予想することができる。
しかし、ヒト免疫系内での進化的最適化および親和性成熟のため、本発明の抗体は、健常ヒト被験体から単離され、安全性プロファイルが優れているおよび免疫原性がない可能性が高いため、価値ある治療ツールをもたらす。マウス抗体の代わりにヒト抗体を用いて上述の出版物に記載の試験方法により、これらの予想される治療効果を、確認することができる。詳細には、スクリーニングすべき抗体を動物に多様な可能な経路、例えば、腹腔内抗体注射、頭蓋内注射、脳室内脳内注入で適用し、治療効果について試験した。
AβおよびSOD1(G93A)突然変異体の共発現は、ダブルトランスジェニックマウスにおいて緩衝液不溶性SOD1凝集体の上昇をもたらし、これはALS発現におけるAβの潜在的役割を示唆している(Liら、Aging Cell.5(2006)、153−165)。SOD1トランスジェニックマウスの脳へのベータ−アミロイド調製物の事前の脳内注射後に、上述のいずれかの適用可能性を利用して、Aβ誘導SOD1病態に対する治療効果を評価することができる。
本発明の抗体の治療効果の評価および確認は、前記マウスの筋肉萎縮の発症に起因する体重変化および全生存時間をモニターすることにより行うことができる。筋肉萎縮の発症前に、協調運動または動作いずれかに関する多様な運動障害を、治療の結果としての発生遅延について試験することができる。これは、例えば回転棒、握力試験、伸展反射試験、足把持持久力試験(paw grip endurance testing)、Y迷路、新規物体認識試験またはオープンフィールド活動などの、標準的な行動試験によって行うことができる(Crawley,J.N.(2000)What’s Wrong with My Mouse?:Behavioral Phenotyping of Transgenic and Knockout Mice.Wiley−Liss、New York)。
さらに、毒性細胞内封入体の形成のモニタリング、脊髄切片を用いる運動ニューロンの染色および計数、全ヒトSOD1染色、ならびに/または逐次的脊髄抽出による脊髄可溶性および不溶性SOD1レベルの生化学的判定を含む、組織化学的方法を用いることができる(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.104(2007),2495−2500)。
実施例8 天然SOD1二量体、変性/酸化SOD1および組み換えSOD1への結合分析
方法
体外スーパーオキシドジスムターゼ1凝集
金属触媒酸化反応を用いて体外スーパーオキシドジスムターゼ1凝集(Rakhitら、J.Biol.Chem.279(2004)、15499−15504に従って)を誘導した。ヒト赤血球からの天然SOD1(二量体)および多の全ての試薬は、Sigma−Aldrich(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)から購入した。凝集のために、4mMアスコルビン酸と0.2mM CuCl2とを含有する10mM Tris酢酸緩衝液、pH7.0中で10μMヒトSOD1を48時間37℃でインキュベートした。対照として、10μMヒトSOD1を10mM Tris酢酸緩衝液、pH7.0中で48時間、37℃でインキュベートした。
体外スーパーオキシドジスムターゼ1変性
Zetterstromら、J Neurochem.117(2011)、91−99に従って、スーパーオキシドジスムターゼ1変性反応を行った。ヒト赤血球からの天然SOD1(二量体)および多の全ての試薬は、Sigma−Aldrich(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)から購入した。変性のために、23μMヒトSOD1を3.5M塩化グアニジウムおよび25mM EDTA、pH7.0中で4時間、22℃でインキュベートした。その後、5mM EDTA、pH7.0を含有するPBSに対して変性溶液を透析し、20,000gで遠心分離してSOD1凝集体を除去し、変性SOD含有上清を回収した。
ダイレクトELISA
天然ヒトSOD1二量体または体外変性/酸化ヒトSOD1または組み換えSOD1(Biomol、ドイツ国)のいずれかを被覆用緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)中20μg/mLの濃度で用いて96ウェルマイクロプレート(Corning)を被覆した。2%BSA(Sigma−Aldrich、スイス国ブーフス)を含有する、PBS/0.1%Tween(登録商標)−20を用いて1時間、室温で非特異的結合部位をブロックした。一次抗体を示されている濃度に希釈し、1時間、室温でインキュベートした。HRPと接合したロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体、またはHRPと接合したヤギ抗マウスIgG(H+L)特異的抗体のいずれかを使用して結合を判定し、その後、標準的な比色アッセイでHRP活性を測定した。
EC50決定
GraphPad Prismソフトウェア(米国サンディエゴ)を使用する非線形回帰により、ED50値を推定した。
結果
天然ヒトSOD1二量体、変性/酸化ヒトSOD1および組み換えSOD1に対する異なるヒト由来SOD1特異的抗体のEC50を、それらの異なるSOD1種を20μg/mL濃度で被覆してダイレクトELISAにより決定した。前記異なるSOD1種に対する前記ヒト由来SOD1特異的抗体について判定された結合親和性を下の表IIIにまとめる。
表III:異なるSOD1種に対する異なるヒト由来SOD1特異的抗体の結合親和性。
ヒトSOD1特異的抗体は、組み換えおよび変性/凝集ヒトスーパーオキシドジスムターゼ1に優先的に結合し、ピコモルから低ナノモル値の範囲のEC50を有する。これらの発見は、NI−204抗体の大部分が、天然形態ではなく変性/酸化形態のヒトスーパーオキシドジスムターゼ1の病理学的に意味のある立体構造の、露出されるヒトSOD1のエピトープを優先的に標的にすることを示唆している。抗体NI−204.67E12、NI−204.10A8およびNI−204.9F6だけは、異なるSOD1種を区別せず、 NI−204.67E12抗体はピコモルの高い総合結合親和性を有し、ならびに抗体NI−204.10A8およびNI−204.9F6はナノモル範囲の親和性を有する。
結論
金属触媒酸化によって誘導されるスーパーオキシドジスムターゼ1凝集体およびフォールディングされていないSOD1は、ALS関連、体内スーパーオキシドジスムターゼ1凝集体に類似したまたは該凝集体と同一の特性を保有する。幾つかのヒト由来SOD1特異的抗体は、治療上意味のあるミスフォールド形態のヒトスーパーオキシドジスムターゼ1、例えば、フォールディングされていない/酸化されたSOD1への顕著な結合を示す。フォールディングされていない/酸化されたスーパーオキシドジスムターゼ1への結合は、天然二量体より選好されるようである。これらの発見は、病理学的に意味のある立体構造のスーパーオキシドジスムターゼ1タンパク質に対して標的化される本発明のヒト由来SOD−1抗体の治療上魅力的なプロファイルを強調する。
その後、間に数か月の遅延期間を設けて実施例3および8を行った。この間、抗体NI−204.10D12、NI−204.12G7、NI−204.10A8およびNI−204.9F6は、数か月間の凍結・融解に起因する損傷を最小にするためにCaCl2およびMgCl2不含のリン酸緩衝食塩水、pH7.4(Invitrogen)中で少量ずつ、4℃で、または好ましくは−20℃、もしくは−80℃で保存した。
一般に、結合親和性に関して類似したデータが両方の実験で得られた場合、抗体NI−204.10A8は、生理的SOD−1に対しておよび凝集SOD−1に対しても、20nM、実施例3において算出するとそれぞれ30nMから、表IIIに示すように両方の形態のSOD1について100nMを超えるまでの結合親和性の有意な減少を示した。
タンパク質が、そのような安定性の減少につながることがある氷−水表面変性、凍結濃縮および低温変性を冷凍中に被ることは公知である。例えば、KolheおよびBadkar、Biotechnology Progress 27(2011)、494−504;Haweら、Eur J Pharm Sci.38(2009)、79−87;Lu Yら、J Pharm Sci.97(2008)、1801−1812;ならびにGlick SM、J Clin Endocrinol Metab.37(1973),461−462を参照されたい。本態様において、本発明が提供する抗体は異なる安定性プロファイルを示し、使用前に少なくとも数か月という長期間にわたって保存することができる抗体(例えば、NI−204.10D12およびNI−204.12G7)もあり、産生後に凍結段階なしで使用しなければならない抗体(例えば、NI−204.10A8)もある。
実施例9 NI−204.10D12治療効力:生体内概念実証
抗ヒトSDO1抗体の直接脳室内注入に基づく受動免疫アプローチを用いるトランスジェニックマウス系統での研究により、そのような治療が、SOD1 fALSマウスモデルにおいて寿命を延長することおよび運動ニューロン減少を減弱することにより疾病を軽減し得ることは証明されている(Urushitaniら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.104(2007)、2495−2500;Gros−Louisら、J.Neurochem.(2010)113、1188−1199)。
B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウス系統をヒト由来SOD−1抗体の治療効力の評価に使用した。このトランスジェニックマウス系統は、ALSについてのよく確立され、特性付けされているマウスモデルである。NI−204.10D12抗体の治療効力の評価および確認を、前記マウスの筋肉萎縮の発症に起因する体重変化および全生存期間をモニターすることによって行った。筋肉萎縮の発症前に、動作に関する運動障害を、治療の結果としての発生遅延について足把持持久力試験により試験した。さらに、運動ニューロン減少のNI−204.10D12媒介減弱を評価するための脊髄切片での運動ニューロンの染色および計数に、組織化学的方法を用いた。慢性治療レジメン中のマウス抗ヒト抗体反応を回避するために、マウスIg2a定常ドメインに融合したNI−204.10D12ヒト可変ドメインから成るキメラバージョンのNI−204.10D12抗体を研究に使用した。
方法
脳内注入のためのAlzet(登録商標)浸透圧ミニポンプの外科的埋め込み
60日齢B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスに深麻酔(フェンタニル/ミダゾラム/メデトミジン)し、小さな正中切開を施して頭骨を露出させ、抗体溶液またはPBSを充填した滅菌Alzet(登録商標)ミニポンプ(ALZET Osmotic Pumps;Cupertino、米国カリフォルニア、モデル1004、長さ1.5cm、直径0.6cmおよび空重量0.4g加重)を挿入することができるようにマウスの背部の肩甲骨中央領域に皮下ポケットを作製した。その後、脳定位固定装置内にマウスの頭部を固定し、骨縫合接合部ブレグマを基準点として使用して頭骨に穴をあけ、Alzet(登録商標)脳内注入キット3カニューレを左側脳室へと低下させた;ブレグマに従って調整する;AP、−0.2mm;ML、0.9mm;およびDV、2.5mm。カニューレの配置後、2本の小さなネジを頭骨内に配置し、歯科用セメントを塗布して頭骨にしっかりと取り付けた。ナロキソン(56952(Swissmedic)、OrPha Swiss GmbH、スイス国キュスナハト)、フルマゼニル(48280(Swissmedic)、Roche Pharma(Schweiz)、スイス国ライナッハ)/アチパメゾール(60562(Swissmedic)、Dr.E.Graub AG、スイス国ベルン)およびメタカム(Boehringer Ingelheim、ドイツ国)を解毒剤および術後鎮痛薬として皮下投与し、さらに飲料水中のメタカムおよびブプレノルフィン(41931、44100(Swissmedic)、Reckitt Benckiser Healthcare、英国)/フェニルブタゾン(42726(Swissmedic)、Streuli Pharma AG、スイス国ウツナッハ)/アミノフェナゾン/ベンジルペニシリン(56271(Swissmedic)、Grunenthal Pharma AG、スイス国グラールス)/ジヒドロストレプトマイシン(42790(Swissmedic)、Streuli Pharma AG、スイス国ウツナッハ)を鎮痛薬/抗生物質として1週間与えた。術後、回復を促進するためおよび脱落を低減するために、マウスを3日間、ヒートパッド上で飼育し、カーゴの床に含水飼料を置いた。
Alzet(登録商標)浸透圧ミニポンプモデル1004が、抗体またはPBS溶液を1時間につき0.11μL=1日につき2.64μLの持続注入速度で合計28日の期間にわたって側脳室に送る。ポンプ内の抗体溶液の濃度を、1日につき0.1mg/kg体重になるように選択した。
ポンプ交換
28日ごとに浸透圧ミニポンプを交換した。B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスに吸入麻酔(3.5%Sevofluran(53211(Swissmedic)、Abbott AG、スイス国バール)によって深麻酔し、ポンプの上に小切開を施し、ポンプを脳内注入用カニューレから取り外し、取り出した。新たに充填されたポンプを挿入し、注入用カニューレに接続し、創傷クリップを使用して切開部位を閉じた。
握力分析
握力測定装置(Ugo Basile、イタリア国コメロ、カタログ番号47106)を使用して、マウスの握力を測定した。このシステムにはセンサーに接続しているグリッドが備えられている。4本の足がグリッドをつかむまでマウスを低下させ、その後、握った足を離すまで穏やかに引き戻した。3回の施行にわたってマウスが達成した最大の力を電子的に記録した。
臨床エンドポイント
マウスが横向きに寝てから15秒以内に自らを起こすことができないことにより、重症動作不能運動ニューロン病の臨床エンドポイントを定義した。運動ニューロン病の被定義臨床エンドポイントに、実験時間中の任意の時点で、到達していなかったマウスのカプラン・マイヤー生存分析によって、生存確率を試験した。
免疫組織化学および運動ニューロン計数
疾病末期のB6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの脊髄をリン酸緩衝4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、パラフィン包埋し、5μm切片に切断した。ニッスル染色(0.5%クレシルバイオレット溶液(Sigma−Aldrich、C5042))については、切片をニッスル溶液で3分間、室温で染色し、その後、3分間、蒸留水で洗浄した。標準プロトコルに従って、切片をさらに処理した。NeuN染色については、ギ酸前処理後、切片をモノクローナルNeuN抗体、1:1000希釈(MAB377;Milipore)と共にインキュベートした。抗体シグナルを標準DAB検出システムで増幅した。NeuN染色は、自動Leica BondMax(商標)染色システム(Leica、ドイツ国ヴェッツラー)で行った。
動物1匹につき8個の腰部脊髄切片(それぞれ100μmの間隔をあけた)の両方の側腹角における30μmより大きい直径を有するニッスル陽性またはNeuN陽性ニューロンを計数した。
結果
SOD1を標的にするヒト由来抗体の薬理学的治療効果を評価するために、B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスに、日齢60日で開始して3ヶ月間、直接脳室内脳内注入によりNI−204.10D12抗体を慢性投与した。慢性204.10D12抗体治療は、SOD1トランスジェニックマウスの寿命を11日まで有意に延長し、平均生存時間は、慢性NI−204.10D12注入を受けたマウスでは164±3日であり、これに対してビヒクル処置群では153±4日であった(p<0.05;図10(A))。さらに、B6.Cg−Tg(SOD1*G93A)1Gur/Jトランスジェニックマウスの慢性NI−204.10D12治療は、PBS治療対照群と比較して、全疾病経過を通して体重減少の有意な遅延をもたらした(図10(B))。SOD1トランスジェニックマウスにおいて疾病進行中に観察された重度進行性運動障害は、ビヒクル対照と比較して抗体治療群での握力動作改善によって明らかであるように、NI−204.10D12治療によって改善された(図11)。腰部脊髄側腹角における運動ニューロンの補足の定量分析は、ビヒクル治療マウスと比較してNI−204.10D12で治療したマウスにおける運動ニューロン減少の有意な減弱を明示した。これは、NI−204.10D12治療が突然変異体SOD−1過発現によって媒介される運動ニューロンの変性から保護できることを示唆している(図12)。これらの発見は、慢性投与により疾病発症を遅延することができ、生存を延長することができ、体重および運動動作を向上させることができ、ならびに神経変性を改善することができる、ヒト由来SOD1特異的抗体の絶大な治療効果を強調する。したがって、ヒト由来SOD1特異的抗体は、ALSの治療のための有望な新規候補薬である。
実施例10 SOD1抗体のIgG生殖細胞系ファミリー分類
異なるヒトSOD1特異的抗体の可変領域の配列分析により、NI−204抗体を生殖細胞系IgGファミリーに分類することができる(表V)。
ヒトNI−204抗体を生殖細胞系Vセグメントファミリーに分類するために、MRC Centre for Protein Engineering(英国ケンブリッジ)によって提供されているデータベースVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)で、元の可変領域のヌクレオチド配列をヒト生殖細胞系配列とアラインした。それらの生殖細胞系を、重鎖についてはそれらの遺伝子座によって、および軽鎖についてはそれらのVbase登録番号によって特定した(下の表Vを参照されたい)。
表V:生殖細胞系免疫グロブリン配列比較によるNI−204抗体ファミリーの分類(抗体名の最後の文字がそれらのタイプを示す:H−重、K−カッパ、L−ラムダ)