JP6573105B2 - Tmd機構 - Google Patents
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Description
このTMD機構は、定常振動に対する揺れの低減効果が大きいことから、従来から風揺れ対策や交通振動対策に使われてきたが、近年では超高層建物の長周期地震動対策としても適用されている。
また、複数の第2免震支承は、Y方向を中心軸線方向とする第2仮想円弧面に沿って配置されることにより、X方向に対して傾斜配置され、Y方向に対しては傾斜せずに配置される。このため、第2免震支承のばね定数をX方向とY方向とで異なる値とすることができる。
そして、TMD機構は、第1免震支承および第2免震支承のばね定数それぞれをX方向とY方向とで異なる値に設定できることにより、固有振動数がX方向とY方向とで異なる構造物に対しても、X方向の振動およびY方向の振動の両方に同調させることができる。
また、第1仮想円弧面および第2仮想円弧面は、一方が鉛直方向上側に突出し、他方が鉛直方向下側に突出していることにより、第1仮想円弧面および第2仮想円弧面の半径と第1免震支承および第2免震支承の水平剛性とを所定の値に設定することで、錘体を鉛直軸線回りに回転させずに略並進運動させることができる。
本発明では、構造物の曲げが卓越する方向を第1免震支承および第2免震支承が傾斜配置される方向(X方向)とすることにより、構造物のロッキングに対しても、第1免震層および第2免震層により錘体が一の水平方向に延びる軸線回りに回動することができる。このため、錘体が傾斜して横力によって大きく変位することを防止できる。
このような構成とすることにより、想定外の過大な地震力によって錘体が想定外に移動しようとした場合に、緩衝体が錘体と緩衝し、錘体の移動量を規制することができる。
図1に示すように、本実施形態によるTMD機構1は高層建物(構造物)11の頂部の床に設けられている。
TMD機構1は、高層建物11の頂部の床に固定された固定部2と、固定部2の上側に設けられた錘体3と、固定部2と錘体3との間に設けられた中間構造体4と、中間構造体4と固定部2との間に設けられた複数の第1免震支承5,5…と、中間構造体4と錘体3との間に設けられた複数の第2免震支承6,6…と、錘体3の振動を減衰させる減衰部7と、を有している。
複数の第1免震支承5,5…は、中間構造体4と固定部2との間に第1免震層50を形成していて、複数の第2免震支承6,6…は、中間構造体4と錘体3との間に第2免震層60を形成している。
錘体3の下面31の円弧面の半径寸法と、固定部2の上面21の円弧面の半径寸法とは、略同じ半径寸法に設定されている。
中間構造体4の上面42は、鉛直方向下側に窪んだ(突出する)円弧面に形成され、複数の第2免震支承6,6…が接続されている。中間構造体4の上面42の円弧面の軸線はY方向に延在している。
中間構造体4の下面41の円弧面の軸線、中間構造体4の上面42の円弧面の軸線、固定部2の上面21の円弧面の軸線、および錘体3の下面31の円弧面の軸線は、すべて鉛直方向に重なる位置に配置されている。
中間構造体4は、固定部2と錘体3との間に配置されると、下面41が固定部2の上面21と鉛直方向に間隔をあけて平行に配置され、上面42が錘体3の下面31と鉛直方向に間隔をあけて平行に配置されている。
複数の第1免震支承5,5…は、それぞれの中心軸線方向(第1上部支承板51と第1下部支承板52とを結ぶ方向)の中間構造体4と固定部2との相対変位を規制し、それと直交する方向の中間構造体4と固定部2との相対変位を許容するように構成されている。
複数の第2免震支承6,6…は、それぞれ中心軸線方向(第2上部支承板61と第2下部支承板62とを結ぶ方向)の中間構造体4と錘体3との相対変位を規制し、それと直交する方向の中間構造体4と錘体3との相対変位を許容するように構成されている。
第1免震支承5の積層ゴム53と第2免震支承6の第2積層ゴム63とは、同じ仕様に設計されている。
一対の錘体接続部71,71は、平面視における錘体3の一対の対角近傍からそれぞれ下方に突出している。一対の建物接続部72,72は、高層建物11の上面の平面視における錘体3の他の一対の対角近傍と鉛直方向に重なる位置からそれぞれ上方に突出している。錘体接続部71,71の下端部は高層建物11の上面とは離間し、建物接続部72,72の上端部は錘体3の下面と離間している。錘体接続部71,71の下端部近傍と、建物接続部72,72の上端部近傍とは水平方向に重なる位置に配置されている。
第1免震層50および第2免震層60の2つの免震層が上下2段に配置されていることによるTMD機構1の振動特性については、免震層を上下2段に傾斜配置した免震構造物の振動特性が記載された「磯田和彦・高橋▼てい▲一・和田章・彦根茂・堀富博・竹内徹 やじろべえ型免震構造の研究(その2:簡易モデルによる振動理論)、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月」(文献1とする)を参照する。文献1では、具体的な振動モデルや固有振動数・固有モードの計算方法が提示されており、構造物頂部から吊り下げられた免震構造物の振動特性を定式化している。
上部回転中心12aと下部回転中心13aとのX方向の相対変位をu1とすると、u1=−2Rθ1で示される。上部回転中心12aと錘体3とのX方向の相対変位をu2とすると、u2=u1+(R−a)θ2=(R−a)θ2−2Rθ1で示される。
第2免震層60のばね応力をf1とすると、f1=KRθ1で示される。第1免震層50のばね応力をf2とすると、f2=KR(θ2−θ1)で示される。
1次および2次の固有角振動数ω1,ω2は下式で求められる。
なお、上記の説明は、複数の第1免震支承5,5…および第2免震支承6,6…をそれぞれ傾斜配置したX方向に関するものである。Y方向の振動特性については、傾斜の影響がない第1免震支承5,5…と第2免震支承6,6…とを2段重ねしただけものであるため、単に第1免震支承5,5…および第2免震支承6,6…で設定した剛性を1/2とすればよく、式(2)に対応する固有角振動数ω2と固有周期Tは下記となる。
錘体3は、形状が5m(X方向寸法)×5m(Y方向寸法)×2.5m(高さ寸法)の質量m=500tonの鋼材とし、回転慣性モーメントIθ=1280ton.m2としている。中間構造体4から錘体3の重心までの寸法a=3mとし、第1円弧面12の半径および第2円弧面13の半径R=18mとし、第1免震層50および第2免震層60それぞれの総せん断剛性は、K=2200kN/mとする。重力加速度g=9.8m/sec2とする。
なお、複数の第1免震支承5,5…および複数の第2免震支承6,6…がX方向に対してを傾斜配置され、Y方向に対しては傾斜せずに配置されている。
また、|θ1/θ2|=2.53となり、上記の式(7)を満足するので、錘体3はほとんど回転せず並進する。
なお、Y方向には支承の傾斜がないので式(8)よりT=4.24secとなり、X方向の方が1割ほど長周期化することがわかる。
上述した本実施形態によるTMD機構1では、複数の第1免震支承5,5…は、それぞれ第1円弧面12に沿って配置されることにより、X方向に対して傾斜配置され、Y方向に対しては傾斜せずに配置される。このため、第1免震支承5,5…のばね定数をX方向とY方向とで異なる値とすることができる。
また、複数の第2免震支承6,6…は、それぞれ第2円弧面13に沿って配置されることにより、X方向に対して傾斜配置され、Y方向に対しては傾斜せずに配置される。このため、第2免震支承6,6…のばね定数をX方向とY方向とで異なる値とすることができる。
そして、TMD機構1は、第1免震支承5,5…および第2免震支承6,6…のばね定数それぞれをX方向とY方向とで異なる値に設定できることにより、固有振動数がX方向とY方向とで異なる高層建物11に対しても、X方向の振動およびY方向の振動の両方に同調させることができる。
また、第1円弧面12は上方に突出し、第2円弧面13は下方に突出していることにより、第1円弧面12および第2円弧面13の半径Rと、第1免震支承5,5…および第2免震支承6,6…の水平剛性Kと、を設定することで、錘体3を鉛直軸線回りに回転させずに略並進運動させることができる。
例えば、上記の実施形態では、第1免震支承5,5…は、積層ゴムを用いた積層ゴム支承であるが、固定部2の上面と中間構造体4の下面とがすべり面となって接するすべり支承としてもよい。また、上記の実施形態では、第2免震支承6,6…は、積層ゴムを用いた積層ゴム支承であるが、錘体3の下面と中間構造体4の上面とがすべり面となって接するすべり支承としてもよい。
また、上記の実施形態では、減衰部としてオイルダンパ73を用いているがオイルダンパ73以外の減衰機構を用いてもよい。
また、上記の実施形態では、錘体3の過度の変位を規制する緩衝材8が設けられているが、錘体3の過度の変位の虞がない場合などには設けられていなくてもよい。
2 固定部
3 錘体
4 中間構造体
5 第1免震支承
6 第2免震支承
7 減衰部
8 緩衝材
12 第1円弧面(第1仮想円弧面)
13 第2円弧面(第2仮想円弧面)
14 第1仮想鉛直線
15 第1仮想円
16 第2仮想鉛直線
17 第2仮想円
P1 第1交点(交点)
P2 第2交点(交点)
Claims (2)
- 構造物の振動を低減するためのTMD機構において、
前記構造物の上方に設けられた錘体と、
前記構造物と前記錘体との間に設けられた中間構造体と、
前記中間構造体と前記構造物との間に設けられて第1免震層を形成する複数の第1免震支承と、
前記中間構造体と前記錘体との間に設けられて第2免震層を形成する複数の第2免震支承と、
前記錘体の振動を減衰させる減衰部と、を有し、
前記複数の第1免震支承は、それぞれの中心軸線方向の前記中間構造体と前記構造物との相対変位を規制するとともに前記中心軸線方向と直交する方向の前記中間構造体と前記構造物との相対変位を許容し、
前記複数の第2免震支承は、それぞれの中心軸線方向の前記中間構造体と前記構造物との相対変位を規制するとともに前記中心軸線方向と直交する方向の前記中間構造体と前記構造物との相対変位を許容し、
一の水平方向を中心軸線方向とする仮想円弧面を第1仮想円弧面とし、前記一の水平方向に直交する仮想鉛直面を第1仮想鉛直面とし、該第1仮想鉛直面内において前記第1仮想円弧面の中心軸線と直交する仮想鉛直線を第1仮想鉛直線とすると、前記複数の第1免震支承は、前記第1仮想円弧面に沿って配置されるとともに、それぞれの中心軸線が前記第1仮想鉛直面内に配置されて前記第1仮想鉛直線と前記第1仮想円弧面との交点を通るような向きに配置され、
前記一の水平方向を中心軸線方向とし前記第1仮想円弧面の上側に配置された仮想円弧面を第2仮想円弧面とし、前記一の水平方向に直交する仮想鉛直面を第2仮想鉛直面とし、該第2仮想鉛直面内において前記第2仮想円弧面の中心軸線と直交する仮想鉛直線を第2仮想鉛直線とすると、前記複数の第2免震支承は、前記第2仮想円弧面に沿って配置されるとともに、それぞれの中心軸線が前記第2仮想鉛直面内に配置されて前記第2仮想鉛直線と前記第2仮想円弧面との交点を通るような向きに配置され、
前記第1仮想円弧面と前記第2仮想円弧面とは半径の値が等しく、
前記第1仮想円弧面および前記第2仮想円弧面は、一方が鉛直方向上側に突出し、他方が鉛直方向下側に突出していることを特徴とするTMD機構。 - 前記錘体の軌道上に前記構造物に支持された緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のTMD機構。
Priority Applications (1)
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JP2015142011A JP6573105B2 (ja) | 2015-07-16 | 2015-07-16 | Tmd機構 |
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JP2017025943A (ja) | 2017-02-02 |
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