JP5187127B2 - 構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法 - Google Patents

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本発明は、構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法に関する。
一般に構造物が偏心建物11の場合、つまり、図1A及び図1Bに示すように建物11の重心Gの平面位置と剛心Qとの間にずれが有る場合には、地震や風等により剛心Q周りの捻れ振動が励起され、剛性の低い構面は地震応答が増幅されて振幅が大きくなる。そのため、建物1の損傷・被害が拡大する虞がある。
このような捻れ振動の抑制に関する開示技術としては、例えば特許文献1が挙げられる。
特開2007−332643号
一方、建物11が上部構造体11uと下部構造体11dとから構成され、これらの間に免震層21が介装されている場合には、上部構造体11uの回転慣性質量を用いて下部構造体11dの捻れ振動を抑制可能と考えられる(図2A及び図2Bを参照)。
しかしながら、従来このような上部構造体11uを下部構造体11dの捻れ振動抑制のための回転慣性質量体(マスダンパー)として用いるという概念自体が無かったことから、当該捻れ振動を効果的に抑制すべく免震層21の回転減衰係数C等といった制振に係るパラメータを最適化する手法も存在せず、その結果、上述の捻れ振動抑制の観点から建物11を設計する際に支障を来す虞があった。
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、免震層を介して下部構造体に支持された上部構造体を有する構造物が、所定の軸芯周りに捻れ振動すると想定される場合に、前記上部構造体の回転慣性質量を用いて前記下部構造体の捻れ振動を抑制すべく、前記捻れ振動の制振に係るパラメータを設定する方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1に示す構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法は、
地盤に支持された下部構造体と、免震層を介して前記下部構造体に支持された上部構造体とを有する構造物が、所定の軸芯周りに捻れ振動すると想定される場合に、前記上部構造体の回転慣性質量を用いて前記下部構造体の捻れ振動を抑制すべく、前記捻れ振動の制振に係るパラメータを設定する方法であって、
前記パラメータは、前記上部構造体の前記軸芯周りの回転慣性質量I[kN×m×s/rad]、前記下部構造体の前記軸芯周りの回転慣性質量I[kN×m×s/rad]、前記上部構造体と前記地盤との間の前記軸芯周りの回転剛性値K[kN×m/rad]、前記免震層の前記軸芯周りの回転剛性値K[kN×m/rad]、及び、前記免震層が前記上部構造体と前記下部構造体との間の前記軸芯周りの捻れ振動を減衰する際の回転減衰係数C[kN×m×s/rad]であり、
前記パラメータI,I,K,K,Cに基づいて、前記下部構造体の前記軸芯周りの回転角θ[rad]の伝達関数を求め、
求められた前記伝達関数に基づいて前記パラメータI,I,K,K,Cの値を決めることを特徴とする。
上記請求項1に示す発明によれば、下部構造体の前記回転角θ1の伝達関数を求め、当該伝達関数に基づいて前記パラメータI,I,K,K,Cの値を決めるので、前記下部構造体の捻れ振動を有効に抑制することができる。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
前記軸芯の平面位置は、前記構造物の重心の平面位置から水平方向に偏心していることを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、前記下部構造体の重心位置は前記軸芯から偏心しているので、下部構造体は捻れ振動し易くなる。よって、上記請求項1に係る作用効果を効果的に享受することができる。
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
前記免震層は、前記上部構造体と前記下部構造体との間の水平方向の振動を減衰する減衰装置を有し、
前記軸芯から前記減衰装置までの距離を変更することにより、前記回転減衰係数Cを変更することを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、前記回転減衰係数Cの値を所期の目標値に容易に設定可能となる。
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
前記免震層は、前記上部構造体を前記下部構造体に対して水平方向に相対変位可能に支承する支承部材を有し、
前記支承部材は、前記上部構造体と前記下部構造体との相対変位時に相対変位量に応じた大きさの復元力を相対変位が小さくなる方向に付与する復元部材としても機能し、
前記軸芯から前記支承部材までの距離を変更することにより、前記回転剛性値Kを変更することを特徴とする。
上記請求項4に示す発明によれば、前記回転剛性値Kの値を所期の目標値に容易に設定可能となる。
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
前記免震層に設けられた規制部材によって、前記上部構造体は、前記下部構造体に対して前記軸芯周りの相対回転のみが許容され、水平方向の相対並進変位は不能に案内されていることを特徴とする。
上記請求項5に示す発明によれば、前記上部構造体を、前記軸芯周りの捻れ振動抑制用の回転慣性質量体として特化させることができるので、下部構造体の捻れ振動を効果的に抑制可能となる。
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
前記伝達関数は、横軸が振動数で、縦軸が前記回転角θに係る振動伝達率のグラフとして求められ、
前記パラメータI,I,K,K,Cの少なくとも一つを複数水準に振って前記水準毎に前記伝達関数を求めて、求められた前記伝達関数のなかで、前記振動伝達率の最大値が最も小さくなる伝達関数を選び、選ばれた伝達関数に係るパラメータI,I,K,K,Cの値を前記構造物に係る値として設定することを特徴とする。
上記請求項6に示す発明によれば、前記捻れ振動の抑制に適した前記パラメータI,I,K,K,Cの値を設定可能となる。
請求項7に示す発明は、請求項6に記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
前記伝達関数のグラフが2つのピーク値を有するとともに、前記2つのピーク値が同じ値になるように前記パラメータI,I,K,K,Cを設定することを特徴とする。
上記請求項7に示す発明によれば、前記捻れ振動の抑制に最も適した値をパラメータI,I,K,K,Cに設定可能となる。
本発明に係る構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法によれば、構造物の上部構造体の回転慣性質量を用いて、下部構造体の捻れ振動を有効に抑制することができる。
===本実施形態===
<<<本実施形態に係る捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法>>>
図2A及び図2Bは、構造物の一例としての偏心建物11の平面図及び側面図である。なお、図2Aの平面図は図2B中のA−A断面図である。
偏心建物11は、その重心Gの平面位置と、建物11の捻れ振動時の回転中心たる剛心Q(特許請求の範囲の「所定の軸芯」に相当)の平面位置とが、水平方向にずれている建物である。図示例では、建物11の右側にエレベーターや階段等の高剛性のコア部11aを有し、建物11の左側に居室等といった前記コア部11aよりも低剛性な部分11bが形成されており、これにより、建物11の重心Gよりも右側に剛心Qが位置している。このように重心Gと剛心Qとが偏心している場合には、地震や風等により建物11にモーメントが入力された際に、建物11に大きな捻れ振動が励起する虞がある。
一方、この建物11は複数階(例えば6階)からなる。そして、所定階を境に、上下方向に関して上部層11u(特許請求の範囲の「上部構造体」に相当)と下部層11d(特許請求の範囲の「下部構造体」に相当)とに区分され、上部層11uと下部層11dとの間には、免震層21が介装されている。免震層21は、積層ゴム等の支承部材22と、オイルダンパー等の減衰装置24と、を有する。支承部材22は、下部層11d上において水平方向の相対変位可能に上部層11uを支持し、これにより、上部層11uは下部層11dに対して水平免震される。なお、ここでは、支承部材22に積層ゴムを用いているので、当該支承部材22は、下部層11dの基準位置から水平方向に変位した上部層11uを前記基準位置に復帰させるための復元部材としても機能する。つまり、支承部材22は、上部層11uと下部層11dとの水平方向の相対変位時に、その相対変位量に応じた大きさの復元力を相対変位が小さくなる方向に付与する。減衰装置24は、上部層11uと下部層11dとの水平方向の相対速度に係る振動を減衰力によって減衰する。なお、上部層11uと下部層11dとの間には、支承部材22及び減衰装置24が、それぞれ複数並列配置されている。
ここで、このような免震層21を備えている場合には、上部層11uを、下部層11dの捻り振動抑制のための回転慣性質量体(マスダンパー)として用いることができる。図3は、その捻り振動のモデル図であり、建物11を質点系でモデル化している。
図3中の質点2は上部層11uの等価質点であり、質点1は下部層11dの等価質点である。I[kN×m×s/rad]は質点2の剛心Q周りの回転慣性質量であり、I[kN×m×s/rad]は質点1の剛心Q周りの回転慣性質量である。K[kN×m/rad]は免震層21の剛心Q周りの回転剛性値であり、K[kN×m/rad]は下部層11dと地盤GNDとの間の部分(以下、第1層と言う)の剛心Q周りの回転剛性値である。この回転剛性値Kは免震層21の復元部材(この例では支承部材22が兼ねる)によって生じる。C[kN×m×s/rad]は免震層21の剛心Q周りの捻れ振動を減衰する際の回転減衰係数である。この回転減衰係数Cは免震層21の減衰装置24によって生じる。θ[rad]は地盤GND基準の質点2の回転角であり、θ[rad]は地盤GND基準の質点1の回転角である。
これらのパラメータI,I,K,K,Cを用いれば、図3の振動モデルにおける、剛心Q周りのモーメントの釣り合いに関する運動方程式は、質点1については下式1で表され、質点2については下式2で表される。
そして、この建物11の捻れ振動特性を評価する場合には、上述の式1及び式2を連立等して解いて回転角θの伝達関数に係る基礎式を求めるとともに、当該基礎式中のパラメータI,I,K,K,Cに、建物11の設計仕様に対応する所定値を代入して建物11に固有の伝達関数を求め、当該伝達関数に基づき捻れ振動特性をグラフ化等して評価する。
例えば、下式3が伝達関数の基礎式である。
そして、建物11のパラメータが、例えばI=1、I=0.3、K=1、K=0.079、C=0.182の場合には、図4に示すように伝達関数がグラフ化される。ここで、縦軸は振動伝達率T(=|θ/θ1st|=|θ/(M/K)|)であり、横軸は無次元振動数比λ(=ω/√(K/I))である。
そして、一般的には、振動伝達率Tが小さい程、下部層11dの回転角θ、つまり下部層11dの捻れ変形が小さく抑えられる。すなわち、伝達関数における振動伝達率Tの最大値が小さい程、質点2たる下部層11dの捻れ振動が生じ難くなり、建物11は捻れ振動の抑制性に優れると言うことができる。
従って、建物11の構造設計段階において、未だ上記パラメータI,I,K,K,Cの値が決まっていない場合には、これらパラメータI,I,K,K,Cを以下の手順で決定すると良い。
先ず、図5A乃至図7Cの各図の右上に示すように、パラメータI,I,K,K,Cを適宜な候補値の組み合わせで複数パターン設定する。図示例では、Kの値を3水準振るとともに、更に、Kの各値につきCの値を3水準振って、計9パターンの組み合わせを設定している。
そうしたら、上述の伝達関数の基礎式たる式3に各パターンのパラメータI,I,K,K,Cを代入して、パターン毎に伝達関数をグラフ化する。そして、グラフ化された複数の伝達関数の中で、振動伝達率Tの最大値が最も小さくなるパターンを選び、この選ばれたパターンのパラメータI,I,K,K,Cの値を設計値とする。例えば、図示例では、パターン1−1乃至パターン3−3の9つの伝達関数のうちで、振動伝達率Tの最大値が最も小さい伝達関数は、パターン2−2の伝達関数であるので、当該パターン2−2が選ばれる。そして、このパターン2−2に係るK=0.177及びC=0.135が当該建物11の設計値として決定される。
ちなみに、上述の例示において、I、I、及びKの水準を振らずに定数としたのは、これらの値は、建物11自体の構造仕様から一義的に決まってしまうことが多いからである。つまり、逆に言えば、K及びCの方は免震層21に係るパラメータであって比較的変更調整し易いことから、上述ではこれらK及びCの水準を振っていたのである。従って、I、I、及びKも変更可能であれば、これらの水準を振って決めても良いのは言うまでもない。
ところで、図5A乃至図5Cを見ると、C=0では、振動伝達率Tが2つの振動数比λにおいて発散状に立ち上がり、C=∞では、振動伝達率Tが1つの振動数比λにおいて発散状に立ち上がり、0<C<∞の値においては、振動伝達率Tはピーク値を有するように変化することがわかる。そして、この傾向は、Kの値が異なる図6A乃至図6C、及び図7A乃至図7Cでも同様である。
また、ピーク値を有する図5B、図6B、及び図7Bの比較からは、互いに同値の2つのピーク値を有する図6Bにおいて振動伝達率Tのピーク値は最小になることがわかる。よって、振動伝達率の最大値が最小となる最適な伝達関数の見つけ方としては、例えば、伝達関数のグラフが2つのピーク値を有し、且つ、これら2つのピーク値が同じ値になることを目安にすれば良いと考えられる。
なお、この2つのピーク値が同じ値になるようなKの値(この例では、K=0.177)においては、図8に示すように、C=0の伝達関数とC=∞の伝達関数との交点p1と、最適な伝達関数のピーク値p2とが一致するという関係にある。従って、最適なパラメータI,I,K,K,Cの求め方は、以下となる。
先ず、下式4を解いて、C=0の伝達関数とC=∞の伝達関数との交点のωを求める。
次に、前述の式3たる伝達関数の基礎式(3)の2乗をC及びωで微分すると、下式5及び下式6が得られる。
そして、これら式4、式5、及び式6は、ω、C、K、K、I、及びIをパラメータとする連立方程式を構成する。よって、これら連立方程式に対してK、I、Iに任意の値を設定(代入)することで、残りのω、C、Kが連立方程式の解として求めることができ、そして、このようにして求められたK及びCの各値が、下部層11dの剛心Q周りの捻れ振動を最も効率的に低減するための回転剛性値Kおよび回転減衰係数Cとなる。
ところで、上述では免震層21の設計を、捻れ振動の抑制の観点から行っていたが、望ましくは、これに併せて、水平方向の並進振動の抑制性能も考慮して設計すると良い。すなわち、上部層11uを、下部層11dの並進振動を抑制するための慣性質量体としても好適に使用できるように免震層21を設計すると良い。
その場合には、先ず、水平方向の並進振動を抑制すべく免震層21の水平並進方向の剛性値K[kN/m]の設計を行い、しかる後に、剛心Q周りの回転剛性値K[kN×m/rad]の調整を行うのが実用的であるが、それには、免震層21の水平並進方向の剛性値(以下、並進剛性値Kと言う)を変化させることなく、前記剛心Q周りの回転剛性値Kのみを任意に調整できることが必要である。
ここで、図9Aに示すように、水平方向を互いに直交するX方向及びY方向で規定した場合、免震層21の並進剛性値Kは、X方向の並進剛性値KとY方向の並進剛性値Kとに分けて考えることができる。また、免震層21の並進剛性値Kは、下部層11d上に並列配置されたn個の支承部材22の各並進剛性値K(j)の合算値であるので、免震層21のX方向の並進剛性値K及びY方向の並進剛性値Kは、それぞれ、各支承部材22のX方向の並進剛性値K(j)及びY方向の並進剛性値K(j)を用いて下式7及び下式8のように表せる。
他方、免震層21の剛心Q周りの回転剛性値Kは、下式9で表せる。なお、下式9中のL(j)及びL(j)は、それぞれ、各支承部材22から下部層11dへ付与される復元力の作用位置P(j)と剛心Q位置との間のX方向の距離及びY方向の距離である。
そして、これら式7乃至式9を参照すると、免震層21の回転剛性値Kを調整するには、L(j)及びL(j)のみを変化させれば良く、つまり、並進剛性値K,Kと共通パラメータのK(j),K(j)の方は変えずに済むことがわかる。よって、例えば、免震層21の回転剛性値Kを小さくする方向に調整したい場合には、図9Aの実線のように各支承部材22の位置を剛心Q側に近づければ良く、逆に、免震層21の回転剛性値Kを大きくする方向に調整したい場合には、図9Aの二点鎖線のように各支承部材22の位置を剛心Qから離せば良い。そして、これにより、並進剛性値Kを変えること無く、回転剛性値Kのみを調整することが可能となる。
これと同様のことが、免震層21の減衰装置24の設計にも言える。すなわち、水平方向の並進振動を抑制すべく、免震層21の水平並進方向の減衰係数C[kN×s/m]の設計を行った後に、回転減衰係数C[kN×m×s/rad]の調整を行う場合には、免震層21の水平並進方向の減衰係数C(以下、並進減衰係数Cと言う)を変化させることなく、前記回転減衰係数Cのみを任意に調整できることが必要である。
ここで、図9Bに示すように、免震層21の並進減衰係数Cは、X方向の並進減衰係数CとY方向の並進減衰係数Cとに分けて考えることができる。また、免震層21の並進減衰係数Cは、上部層11uと下部層11dとの間に並列配置されたm個の減衰装置24の各並進減衰係数C(j)の合算値であるので、免震層21のX方向の並進減衰係数C及びY方向の並進減衰係数Cは、それぞれ、各減衰装置24のX方向の並進減衰係数C(j)及びY方向の並進減衰係数C(j)を用いて下式10及び下式11のように表せる。
他方、免震層21の剛心Q周りの回転減衰係数Cは、下式12で表せる。なお、下式12中のD(j)及びD(j)は、それぞれ、各減衰装置24から下部層11dへ付与される減衰力の作用位置P(j)と剛心Q位置との間のX方向の距離及びY方向の距離である。
そして、これら式10乃至式12を参照すると、免震層21の回転減衰係数Cを調整するには、D(j)及びD(j)を変化させれば良く、つまり、並進減衰係数C,Cと共通パラメータのC(j),C(j)の方は変えずに済むことがわかる。よって、例えば、免震層21の回転減衰係数Cを小さくする方向に調整したい場合には、図9Bの実線のように各減衰装置24の位置を剛心Q側に近づければ良く、逆に、免震層21の回転減衰係数Cを大きくする方向に調整したい場合には、図9Bの二点鎖線のように各減衰装置24の位置を剛心Qから離せば良い。そして、これにより、並進減衰係数Cを変えること無く、回転減衰係数Cのみを調整することが可能となる。
ちなみに、図9Bでは、上式12中の並進減衰係数C(j),C(j)の説明の関係上、減衰装置24の方向をX方向及びY方向から斜めに傾けていたが、何等これに限るものではなく、例えば、図2Aに示すように減衰装置24をX方向又はY方向と平行に設置しても良い。
<<<伝達関数の基礎式(3)の導出法について>>>
ここで、前述の伝達関数の基礎式(3)の導出法について説明する。前述したように、図3の振動モデルにおける剛心Q周りのモーメントのつり合いに関する運動方程式は、質点1については下式13で、また質点2については下式14で表される。
ここで、先ず、式13について、質点1に作用する剛心Q周りの外乱モーメントMを下式15のようにおく。
なお、上式15中のθ1stは、前記第1層の静的変形角であり、つまり、剛心Q周りの外乱モーメントMと回転剛性値Kによる復元モーメントとが等しくなるときの静的な変形角を意味する。
また、式14については、質点2に作用する剛心Q周りの外乱モーメントMを下式16のようにおく。
=0 …(16)
これは、質点2は免震層21よりも上部に位置するため、一般的に偏心率が小さいと考えられる免震層21の影響によって、質点2の並進方向の地震応答に起因する剛心Q周りの外乱モーメントMは小さいとみなせるためである。
よって、これらを考慮すると、式13及び式14は下式17及び下式18のようになる。
さらに、上式17及び上式18について正弦定常振動状態を想定すると、虚数単位i(=√(−1))及び正弦調和振動状態における円振動数ωを用いて、回転角θに係る回転角速度及び回転角加速度は下式19及び下式20のように表せて、これらを上式17及び上式18に代入すると、下式21及び下式22を得る。
そして、これら上式21及び上式22を、θとθに関する連立方程式としてθについて解くと、下式23が得られる。
上式23を、剛心Q周りの外乱モーメントMによって生じる前記静的変形角θ1stに対する、回転変形(回転角)θ1の応答倍率として表すと下式24が得られる。
そして、当該式24の絶対値が質点1の伝達関数(周波数応答倍率)となる。このとき、式24は虚数単位iを含む複素数であるため、右辺の分子・分母を、それぞれiを含む項とiを含まない項とにわけ、各項の2乗和を求めて平方根をとることにより、式24の絶対値を導出できる。これより、質点1の伝達率|θ1st|は下式25で表せ、当該式14が、前述した式3たる伝達関数の基礎式(3)である。
===本実施形態に係る建物11の変形例===
図10A及び図10Bは、本実施形態に係る建物11の変形例の平面図及び側面図である。なお、図10Aの平面図は図10B中のA−A断面図である。
上述の実施形態に係る建物11では、免震層21により、上部層11uと下部層11dとは水平方向に関して任意方向への相対変位が許容されていたが、この変形例の建物11では、上部層11uと下部層11dとは、剛心Q周りの相対回転のみが許容され、水平方向の並進相対変位は不能に規制されている。
このように相対変位を規制する案内部材の一例としては、上部層11uの下面において剛心Qと同芯に設けられた凸部27と、下部層11dの上面に一体に設けられ前記凸部27が挿入される凹部28と、を有した構成が挙げられる。すなわち、凹部28が凸部27に挿入された状態においては、上部層11uは下部層11dに対して剛心Q周りに相対回転自在であるが、これら凹部28及び凸部27の係合によって水平方向の並進相対変位は不能に拘束される。なお、これ以外の点は、上述の建物11とほぼ同じであり、例えば、免震層21は前述の建物11と同様、支承部材22と減衰装置24とを有している。
そして、このような構成によれば、並進剛性値K及び並進減衰係数Cにとらわれることなく、回転剛性値K及び回転減衰係数Cのみを考慮して調整することが可能であり、これらの値K,Cの最適化を行い易くなるというメリットがある。
ちなみに、この例では、凸部27と凹部28とを摺接させているが、これらの間にベアリングを介装しても良い。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、本発明に係るパラメータの設定方法を、偏心建物11に適用したが、何等これに限るものではなく、建物の重心Gの平面位置と剛心Qの平面位置とが一致した建物の設計に適用しても良い。
上述の実施形態では、免震層21の支承部材21に積層ゴムが用いられ、支承部材が前記復元部材を兼ねていたが、復元部材を支承部材とは別部材にしても良い。
上述の実施形態では、減衰装置24として速度比例型のダンパーを想定して説明したが、履歴型(変位依存型)の減衰装置であっても(若干変化はあるものの)同様の方法が活用でき、同様の効果が期待できる。
図1A及び図1Bは、偏心建物11の平面図及び側面図である。 図2A及び図2Bは、本実施形態に係る構造物の一例としての偏心建物11の平面図及び側面図である。 建物11の上部層11uを下部層11dの捻り振動抑制のための回転慣性質量体として用いる場合の捻り振動のモデル図である。 回転角θの伝達関数のグラフである。 図5A乃至図5Cは、パターン1−1乃至パターン1−3の伝達関数のグラフである。 図6A乃至図6Cは、パターン2−1乃至パターン2−3の伝達関数のグラフである。 図7A乃至図7Cは、パターン3−1乃至パターン3−3の伝達関数のグラフである。 最適なパラメータI,I,K,K,Cの値の求め方の説明図である。 図9Aは、免震層21の水平方向の並進剛性値Kを変えずに回転剛性値Kのみを調整する方法の説明図であり、図9Bは、免震層21の水平方向の並進減衰係数Cを変えずに回転減衰係数Cのみを調整する方法の説明図である。 図10A及び図10Bは、本実施形態に係る建物11の変形例の平面図及び側面図である。
符号の説明
11 偏心建物(構造物)、11a コア部、11b 低剛性な部分、
11d 下部層、11u 上部層、
21 免震層、22 積層ゴム(支承部材、復元部材)、
24 減衰装置、27 凸部、28 凹部、
G 重心、Q 剛心、GND 地盤

Claims (7)

  1. 地盤に支持された下部構造体と、免震層を介して前記下部構造体に支持された上部構造体とを有する構造物が、所定の軸芯周りに捻れ振動すると想定される場合に、前記上部構造体の回転慣性質量を用いて前記下部構造体の捻れ振動を抑制すべく、前記捻れ振動の制振に係るパラメータを設定する方法であって、
    前記パラメータは、前記上部構造体の前記軸芯周りの回転慣性質量I[kN×m×s/rad]、前記下部構造体の前記軸芯周りの回転慣性質量I[kN×m×s/rad]、前記上部構造体と前記地盤との間の前記軸芯周りの回転剛性値K[kN×m/rad]、前記免震層の前記軸芯周りの回転剛性値K[kN×m/rad]、及び、前記免震層が前記上部構造体と前記下部構造体との間の前記軸芯周りの捻れ振動を減衰する際の回転減衰係数C[kN×m×s/rad]であり、
    前記パラメータI,I,K,K,Cに基づいて、前記下部構造体の前記軸芯周りの回転角θ[rad]の伝達関数を求め、
    求められた前記伝達関数に基づいて前記パラメータI,I,K,K,Cの値を決めることを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
  2. 請求項1に記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
    前記軸芯の平面位置は、前記構造物の重心の平面位置から水平方向に偏心していることを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
  3. 請求項1又は2に記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
    前記免震層は、前記上部構造体と前記下部構造体との間の水平方向の振動を減衰する減衰装置を有し、
    前記軸芯から前記減衰装置までの距離を変更することにより、前記回転減衰係数Cを変更することを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
    前記免震層は、前記上部構造体を前記下部構造体に対して水平方向に相対変位可能に支承する支承部材を有し、
    前記支承部材は、前記上部構造体と前記下部構造体との相対変位時に相対変位量に応じた大きさの復元力を相対変位が小さくなる方向に付与する復元部材としても機能し、
    前記軸芯から前記支承部材までの距離を変更することにより、前記回転剛性値Kを変更することを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
    前記免震層に設けられた規制部材によって、前記上部構造体は、前記下部構造体に対して前記軸芯周りの相対回転のみが許容され、水平方向の相対並進変位は不能に案内されていることを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
    前記伝達関数は、横軸が振動数で、縦軸が前記回転角θに係る振動伝達率のグラフとして求められ、
    前記パラメータI,I,K,K,Cの少なくとも一つを複数水準に振って前記水準毎に前記伝達関数を求めて、求められた前記伝達関数のなかで、前記振動伝達率の最大値が最も小さくなる伝達関数を選び、選ばれた伝達関数に係るパラメータI,I,K,K,Cの値を前記構造物に係る値として設定することを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
  7. 請求項6に記載の構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法であって、
    前記伝達関数のグラフが2つのピーク値を有するとともに、前記2つのピーク値が同じ値になるように前記パラメータI,I,K,K,Cを設定することを特徴とする構造物の捻れ振動の制振に係るパラメータの設定方法。
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