JP6570892B2 - 介護用クッション - Google Patents
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Description
一方でこのような安静状態を続けてしまうと、体圧が集中する部位に褥瘡が生ずる場合があり、その予防のために適宜の時間ごとに体位変換を行うことが必要となっている。
このような介護手法に適するものとし種々の介護用クッションが提案されている。
このような手法の場合、介護者は要介護者の身体荷重の下方に直接手を入れるのではなく、把手を引き上げるようにして要介護者の体位変換を促すものであり、いわば間接的に身体部分を持ち上げるような操作がなされている。当然ながらこのような手法は、介護者に体力的負担が大きく、また介護者、要介護者両者共に、体位変換、ケアの際、自然な力加減が体感できない、いわばしっくり感が得難いものであった。
そしてこれら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち介護者にとっては力の加減を行い易く、一方、要介護者にとっては、受ける力が自然に身体に伝わり、無理のない体位変換の介助を受けることができる。
またポケット部が裏返し状に引き出し自在に構成されており、この部位が張り出した裏返し張出部とすることにより、体位変換等の操作を行うことができる。更にこれだけで終わらずに、体位変換後に介護者の体の下へとクッションをさし入れた際に、クッション材がどうしても偏在してしまうことが、本体部の内部へとポケット部を設けたことによって、本体部内のクッション材を、ポケット部に挿入した手によって移動させる調整ができる。このための体位変換から、適切なポジショニングを行う操作まで一連の動作を、ポケット部があることで実現できる。
またポケット部が奥拡がり状に形成されているから、ポケット部に手を差し入れた際、掌を内部で広げて安定感等がより得られ易い。またポケット部を裏返し状に引き出して裏返し張出部とする際には、クッション材を布地ごと掌で握って一緒に引き出しやすい。更にポケット部を引き出した後には、そのポケット部がすなわち裏返し張出部となり、この幅が本体部と連通する部分の幅より幅広となるので、裏返し張出部内に位置するクッション材を本体部側に戻り難くすることができる。
具体的に介護用クッション1は、袋状の表皮材2と、この表皮材2の内側に充填されるクッション材3とを具えて成るものであり、要介護者Mの身体部位を支持する本体部5に対し、その内側に入り込むポケット部6を具えている。
以下、介護用クッション1を構成する各部材について詳細に説明する。
そして上下一対の表皮材2を、本体部5の表側になる面を対向させて重ね合わせるとともに、その周囲(周端部付近)を、その一部を除いて縫合したのち、未縫合部分から、表皮材2を引き出して反転させて袋状に構成する。この際、ポケット部表皮材21は本体部5の内側に配置されることになり、結果として、本体部5の内側に入り込むようにポケット部6が形成される。
次いで上下一対の表皮材2の間に適量のクッション材3が充填され、最後に未縫合部を縫合して本体部5が形成される。
この実施例では一例として、φ1〜3mm程度のポリスチレン発泡材から成る球状ビーズ3aと、10mm角の通気ウレタンキューブ3bと、の双方を用いるようにした。なお球状ビーズ3aと通気ウレタンキューブ3bとの混合比は、一例として50:50〜25:75とされるものであり、蒸れ難さ、流動性の確保、価格等を総合的に考慮した配合比が選択される。
なお表皮材2内におけるクッション材3の流動性を確保することにより、本体部5内でその配置位置を変更して、表皮材2の形状に制約されながらも全体形状の変更が可能となるものである。
またクッション材3は粒塊状物に限定することはなく、たとえば綿材でも、後述するようにポケット部6に挿入された手で掴んだり指でつまんで綿材の一部が本体部5内で移動できるものであれば採用を否定しない。
なお前記表皮材2、クッション材3の素材としては、水洗い及び熱風乾燥が可能な素材を採用することが衛生面特に介護施設や病院等の要求面でより好ましい。その場合には、球状ビーズ3aの代わりに、ポリプロピレン素材の小径パイプビーズ(例えば、株式会社小川コルマ社製 P.Pミニパイプ)など乾燥温度に耐えうる素材のビーズを適用することができる。
まず本体部5は、要介護者Mの身体部位を支持する部位であり、この実施例では一例として前述したように平面視湾曲状とした細長状のものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば後ほど他の実施例で述べるような適宜の形状が取り得るものである。
なお、本体部表皮材20とポケット部表皮材21とを一枚の布で一体に作った場合には、ポケット部6を本体部5の内側に入り込むようにした際、連通部が折り返したようになったポケット入口61を構成するようにできる。このため、介護者Cがポケット入口61をすぐに発見しやすくなり、また手を入れやすくできるので、介護者Cのサポートしやすさが格段と向上する。
更に図1に示すように、表裏の本体部表皮材20を縫製する部位にポケット部6を設ける場合には、図2(c)に示すように表面の本体部表皮材20と裏面の本体部表皮材20布の各一枚のみで制作が容易にでき、また、縫製のラインに沿って外観としても一体感が得られる。
ここで、表面の本体部表皮材20と裏面の本体部表皮材20との各一体の布によって表皮材2を構成する場合には、縫製部に設けられるポケット部6は要介護者Mの人体に水平に近くなるように展開することとなり、介護者Cの手が要介護者Mの人体に沿うような、自然な方向にポケット部6を形成することができる。
ここで奥広がり状とは、ポケット部6の奥側の一部または全部がポケット入口61の幅より広くなっていることをいうものであり、図示のように中が広い台形とされる。更にポケット部6の奥行きは限定しないが、手首まで入る程度の深さがあれば体位変換の際に介護者Cの腕にかかる負担を少なくすることができ、サポートしやすく望ましい。
またこの実施例では図2(a)に示すように、ポケット部6を平面視弧状の本体部5の外弧部の二カ所に形成するようにしたが、後ほど他の実施例で述べるような適宜の箇所に適宜の数設けるようにしてもよい。
具体的にはこの引き出し状態において、裏返し張出部7の内側は本体部5と連通した状態となるため、裏返し張出部7内に、本体部5に充填されていたクッション材3を移動させることが可能となるものである。すなわち本体部5は実質的に減容されて嵩が減ることとなる。
〔体位変換〕
まず介護者Cによる要介護者Mの体位変換の形態について説明する(図3参照)。
この場合、図2(a)に示されるようにポケット部6が形成された介護用クッション1を用い、介護者Cは図3(b)に示すようにポケット入口61に手または指を挿入するものであり、ポケット部表皮材21の寸法設定にもよるが、概ね手首あたりまでがポケット部6内に位置することとなる。そして要介護者Mの体の下へと介護用クッション1を差し入れるものであり、この際、要介護者Mの身体荷重の下方に直接手を入れることが可能となる。
またポケット部6が奥拡がり状に形成されているから、ポケット部6(ポケット入口61)に手を差し入れた際の安定感等がより得られ易く、更にポケット部6全域に広げた手を位置させることができる。
更にまたポケット部6(ポケット入口61)が適宜の数設けられることにより、操作により適した部位に手を差し入れることができる。
そしてこのような体位変換の手法は、介護者Cにとっては力加減を調整し易く、一方、要介護者Mにとっては受ける力が自然に身体に伝わり、安心感と、無理のない体位変換が行われるものである。
具体的には図示は省略するが、例えば図3(d)に示すように体位変換した要介護者Mの体位を安定維持する場合、体位変化に用いた介護用クッション1を要介護者Mの肩から腰にかけての位置にずらす。この際、本体部5内においてはクッション材3がどうしても偏在してしまうが、介護者Cは、ポケット部6に挿入した手により本体部5の内部においてクッション材3を移動させる調整を行うことができる。このため、要介護者Mの体位変換から適切なポジショニングを行う操作までの動作を一連の動作として実現することができる。
次に要介護者Mの体位の安定維持の形態について説明する(図4参照)。要介護者Mの体位の安定的な維持に当たっては、表皮材2の外側から介護用クッション1を部分的に押圧して独立粒塊状のクッション材3を偏在させたり、ポケット部6に手を差し入れてポケット部表皮材21越しにクッション材3の位置を動かすことにより、支持作用を行う本体部5を容易に要介護者Mの体位になじんだ形状とすることができる。
なおこのような手法では、表皮材2内でクッション材3が移動するとはいえ、表皮材2の形状に因む内容積は決まっていることから、部位によってはまだ圧力が強くなってしまう等、理想的な形状を得難い場合も予想される。このような場合には、本発明の介護用クッション1にあっては、図4(b)、(c)に示すようにポケット入口61からポケット部表皮材21を裏返し状に引き出して裏返し張出部7とするとともに、本体部5に充填されていたクッション材3を裏返し張出部7内に移動させることができるから、本体部5内のクッション材3の体積を減容させ、要介護者Mの状況に応じた更に適切な形状を選択することができる。
なおこのような要介護者Mの体位の安定維持を図るにあたっては、後述する他の実施例で示すような、形状を異ならせた複数の介護用クッション1を図7に示すように組み合わせることにより、より繊細な耐圧分散と体位の安定維持を実現することができる。
本発明の介護用クッション1は、図1〜4に示すとともに、上述のように説明した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想に基づいて以下に示すような実施例を採ることもできる。
まず介護用クッション1に設置されるポケット部6の位置は、上述の基本となる実施例では表裏の本体部表皮材20を縫製する部位としたが、上述のポケット部6の作用効果を発現させることのできる部位であれば、本体部5の側周の適宜の個所とすることができる。具体的には介護用クッション1が使用される状態において、要介護者Mに接触させる頻度が少ない位置とすることが好ましい。つまり、介護用クッション1は、通常は使用形態に応じた形状をしており、その使用形態において要介護者Mに頻繁に接触させる部分が設計上想定されているため、その部分以外の位置にポケット部6を配置すればよい。
そして、複数のポケット部6を形成する場合には、要介護者Mの体位変換等の作業をし易い位置に配置すればよい。例えば本体部5の側周であって、要介護者Mの身体を支持する面の左右または上下に対向する位置へとポケット部6を複数設ければ、体位変換を行うときに人体を支える左右または上下のバランスが取りやすくでき、配置の向きを変える場合にも対応しやすい。
ここで本体部5の側周とは、本発明の介護用クッション1が底面、上面、側周面の区別が明確に成されるものではないため、本体部5の表面を全域を意味するものとする。
以下、第二〜第十の実施例について具体的に説明する。
なおこの場合、前出の上下一対の表皮材2を重ね合わせるとともに、その周囲を縫合する製造手法は採り難いため、本体部表皮材20とポケット部表皮材21とを別部材として構成し、これらを一体化するような製造形態を採ることができる。なお、図の断面で本体部5の中心位置かそれよりも要介護者Mの体により近い位置にポケット部6を設けることにより、介護者Cは要介護者Mの体をポケット部6に挿入した手により感じながらサポートすることができ、更に本体部5の内部においてクッション材3を移動させて行われる圧力の調整も、体により近い位置で行うことができる。
2 表皮材
20 本体部表皮材
21 ポケット部表皮材
3 クッション材
3a 球状ビーズ
3b 通気ウレタンキューブ
5 本体部
50 本体部要素
51 仕切
6 ポケット部
61 ポケット入口
7 裏返し張出部
M 要介護者
C 介護者
Claims (6)
- 袋状の表皮材と、この表皮材の内側に充填されるクッション材とを具えて成る本体部と、この本体部の少なくとも一部に設けられたポケット部とを具えた介護用クッションであって、
前記ポケット部は、前記クッション材と接触可能に本体部の内側へ入り込むように構成され、且つ奥拡がり状の台形状に形成され、
このポケット部を構成しているポケット部表皮材は、前記本体部を構成している本体部表皮材の内面に非固定とされるものであり、ポケット部が本体部の内側で可動性を有し、
また前記クッション材はポケット部の動きに応じて変形または移動可能であることを特徴とする介護用クッション。
- 前記クッション材は、クッション効果を発現する粒塊状物であり、前記ポケット部周辺に位置するクッション材が、ポケット部に挿入された手の動きに応じ移動可能とされていることを特徴とする請求項1記載の介護用クッション。
- 前記ポケット部表皮材を本体部内から引き出して裏返し張り出し部を形成した状態において、この裏返し張出部に、本体部に充填されていたクッション材を移動させるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の介護用クッション。
- 前記ポケット部は、本体部の側周であって要介護者の身体を支持する面の左右または上下に対向する位置へと複数が具えられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の介護用クッション。
- 前記本体部は複数枚の本体部表皮材の周端部付近を縫合して形成され、この縫合部位に前記ポケット部が設けられることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の介護用クッション。
- 前記本体部及びポケット部は、上下一対の面対称の表皮材を重ね合わせるとともに、その周端部付近が縫合されて成るものであり、
この表皮材は、本体部表皮材とポケット部表皮材とが一体に形成されたものであることを特徴とする請求項5記載の介護用クッション。
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