JP6570124B2 - 口腔ケア組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、殺菌、抗菌作用を発揮する唾液を口腔内により多く分泌させることにより、口腔内の健康を維持する上で好適な口腔ケア組成物に関するものである。
歯磨きは、口腔内の健康維持を図るために従来より日常生活に取り入れられている。この歯磨きは、歯磨き剤を付着させた歯ブラシにより歯をブラッシングする必要があり、高齢者や身体障害者等にとって困難な作業を伴う場合もある。また歯磨きを行う際には、水が必要になるが、例えば震災時における避難場所のように水の供給が無い場合には、歯磨きをすることができないという問題点があった。
これに加えて歯磨きに使用する歯磨き剤は、各種研磨剤が大量に含まれ、また泡立てることを目的として各種発泡剤が含まれる。例えば特許文献1には、研磨剤成分として燐酸水素カルシウムや炭酸カルシウム等を使用した歯磨材が開示されている。これらの成分が含まれる歯磨き剤を用いて歯磨きすると、口腔内を痛めてしまい、強い刺激を感じることや殺菌剤による痛みが生じる場合がある。また歯を磨き過ぎることにより、研磨剤の成分により歯そのものを削ってしまう虞もある。更にこの歯磨き剤に含まれる成分により、舌に生存する善玉菌まで死滅させてしまう場合もある。
このため、歯磨きに代わる手段により、口腔内の健康維持増進を図る技術が従来より研究され、そのうちの一つとして唾液を積極的に活用する技術も検討されている。
唾液は、口腔内のpHを一定に保つ役割を果たす。唾液中の重炭酸塩イオン(HCO3 -)の働きにより、口腔内のpHがより中性となるように保持されることとなる。一般的にう蝕(虫歯)は、歯垢の中に酸が大量に生成されることにより、口腔内のpHが酸性に傾き、歯の表面のカルシウムやミネラルを溶かしはじめるいわゆる脱灰が起点となる。しかし、この唾液が大量に分泌されることにより、唾液自身が保有する緩衝作用に基づいて口腔内がいち早く中性に戻ることとなる。さらに唾液は、酸によって溶けた歯の表面のカルシウムやミネラルを補充し、修復するいわゆる再石灰化作用を発揮する。
即ち、歯が健全状態を維持するためには、唾液の働きにより脱灰が生じた歯にミネラルが供給され、ミクロのレベルでの脱灰と再石灰化が均衡していることが必要となる。一般的に飲食後には歯垢内のpHが低下傾向となり、脱灰と再石灰化の均衡がくずれ、脱灰の進展が再石灰化を上回るようになるとう蝕が進行することとなる。逆に再石灰化の進展が脱灰を上回るようになるとう蝕が回復に向かい、歯が再石灰化することとなる。
このような脱灰と再石灰化のバランスを図るために、例えば特許文献2、3には、リン酸化オリゴ糖により口腔内の唾液のpHを中性付近で安定させることにより、う蝕の進行を抑える技術が開示されている。具体的には、口腔内にリン酸化オリゴ糖を添加することにより、口腔内の唾液などに存在するリン酸およびカルシウムを歯の再石灰化を狙うものである。
しかしながら、リン酸化オリゴ糖を添加することにより確かに唾液のpHの上昇に向けて作用させることが可能となるが、歯磨きを併用しない限り、う蝕を完全に防止することができない。
また特許文献4においても、歯の再石灰化とリン酸カルシウムとの関係に着目し、りん酸カルシウムを介して再石灰化促進作用を評価する方法も提案されているが、これらの技術か開示されていても、結局は歯磨き無しではう蝕を完全に防止し、ひいては口腔内の健康維持増進を図ることができない。
特開2004−26816号公報 特開2002−325556号公報 特開2009−258112号公報 特開2008−286556号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、歯磨きを行うことなく、う蝕を完全に防止し、ひいては口腔内の健康維持増進を図ることが可能な口腔ケア組成物を提供することにある。
本発明は、以下の成分からなる口腔ケア組成物を錠剤等の固形物に仕上げ、これを口腔内にて含ませて溶解させる。これにより、唾液を大量に分泌させるとともに、そのpHを高く調整することにより、唾液の持つ抗菌作用、再石灰化作用等を好適に発揮させる。これにより、実際に歯磨きを行うこと無くう蝕を防止し、ひいては口腔内の健康維持増進を図るものである。
即ち、第1の発明に係る口腔ケア組成物は、口腔内に含ませることにより口腔内の健康を増進する口腔ケア組成物において、組成物全質量に対する質量%で、リン酸化オリゴ糖カルシウム:1〜30%、ラクトフェリン:0.01〜10%、重炭酸アンモニウム:1〜20%を含有することを特徴とする。
上述した構成からなる本発明によれば、被験者の口腔内に含ませることにより、この口腔ケア組成物に含有されているリン酸化オリゴ糖カルシウム及びラクトフェリンが互いの存在により相乗的に作用して、唾液をより大量に分泌させることになる。このとき、上述した重炭酸ナトリウムや炭酸カリウム又は炭酸水素カリウムが含有されていることにより、更に唾液の分泌が促されることとなる。
このようにして、口腔内における唾液の分泌が促進されることにより、食物の消化が助けられ、口腔内にある食べかすを洗い流す自浄作用が高まることとなる。また口腔内における殺菌作用をも発揮され、更には口腔内のpHがよりアルカリとなるように保持されることとなり、う蝕の発生や進行を防止することが可能となり、また再石灰化の作用も発揮させることが可能となる。
特に本発明では、大量の唾液の分泌促進が実現できるため、被災地等のような水が無い場所においても、これを口に含ませておくことにより、歯磨きをすることなくう蝕の発生や進行を防止することが可能となる。また高齢者や身体障害者等のように、歯磨きが困難な者が、本発明を適用した口腔ケア組成物を口に含ませることにより、歯磨きをすることなくう蝕の発生や進行を防止することが可能となる。
さらに本発明を適用した口腔ケア組成物は、口腔内における唾液の分泌を促すことで、高齢者等に多く現れるドライマウスの症状を緩和させることも可能となる。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、唾液により発現される作用に着目し、これを大量に分泌させ、口腔内の健康維持増進を図ることが可能な口腔ケア組成物を発明した。唾液により発現される主な作用は以下である。
唾液は、消化酵素のアミラーゼが含まれている。このアミラーゼは、食物に含まれる糖質を分解することにより体内において吸収しやすくする効果を発現させる。唾液は、このような酵素としてのアミラーゼが含まれることで、食物の消化を助ける作用を奏するものである。
また口腔内にある食物と唾液とが混和することにより、適当なサイズの食塊を生成させることができる。このため唾液は、食物の飲み込みを助ける作用を奏するものである。また唾液は、口腔内にある食べかすを洗い流すいわゆる自浄作用を発揮する。即ち、よく噛むことで分泌する唾液の量が増加し、自浄作用が高まることとなる。
唾液には外部から口や鼻等を介して浸入してくる細菌に対する抗菌作用を発揮するリゾチームも含まれている。また唾液には、口腔の中を洗い流す役目も果たし、唾液が大量に分泌されることにより、口腔内の汚れを除去することができ、ひいては口臭を防ぐことも可能となる。
また唾液は、口腔内のpHを一定に保つ役割を、いわゆる緩衝作用を発揮する。唾液中の重炭酸塩イオン(HCO3 -)、リン酸塩イオン、カルシウムイオン、タンパク質の働きにより、口腔内のpHがより中性となるように保持されることとなる。唾液は、安静にしているときには主に顎下腺から分泌され、口腔内に刺激を与えたときには主に耳下腺から分泌される。顎下腺から分泌される唾液には、カルシウムイオンとリン酸イオンとが豊富に含まれており、口腔内では歯や歯石を構成するリン酸カルシウムを形成するのに十分な状態(過飽和状態)となっている。一般的にう蝕(虫歯)は、歯垢の中に酸が大量に生成されることにより、口腔内のpHが酸性に傾き、歯の表面のカルシウムやミネラルを溶かしはじめるいわゆる脱灰が起点となる。また、一般に歯石は、口腔内のpHが酸性に傾くことで、リン酸イオンとカルシウムイオンとが結合し、リン酸カルシウムが形成されることにより生じる。しかし、カルシウムイオンと結合したタンパク質、リン酸イオン、重炭酸塩イオンが、口腔内に刺激を与え、耳下腺による唾液の分泌を促進して唾液が大量に分泌されることにより、唾液自身が保有する緩衝作用に基づいて口腔内がいち早く中性に戻ることとなる。口腔内のpHが中性に保持される場合には、カルシウムイオンがリン酸イオンと結合するよりも先に唾液に含まれるタンパク質に結合されることで、歯石の元となるリン酸カルシウムが形成されるのを防止する。
更に唾液は、酸によって溶けた歯の表面のカルシウムやミネラルを補充し、修復するいわゆる再石灰化作用を発揮する。
このように唾液は、健康な口腔組織を維持するうえで非常に重要であり、唾液の分泌量が増加すると、う蝕の防止に大きな影響を与えるだけでなく、義歯の予後や摂食、嚥下、会話などにも大きな影響を与え、生活の質の向上に寄与することとなる。
本発明者らは、これら唾液の持つ作用をより好適に発揮させる条件について鋭意検討した。その結果、以下に示す成分からなる口腔ケア組成物とし、これを被験者の口腔内に含ませることにより、唾液をより大量に分泌させることができることを実験的に検証した。その結果、リン酸化オリゴ糖カルシウムとラクトフェリンと重炭酸アンモニウムとを混合することによる相乗効果に基づいて、唾液の分泌量を飛躍的に上げることができることを新たに見出した。このリン酸化オリゴ糖カルシウムは水に溶けやすい物質であるのに対してラクトフェリンは、水に溶けにくい物質である。即ち、互いに水和性の異なるリン酸化オリゴ糖カルシウムとラクトフェリンと重炭酸アンモニウムとを混合して一つの口腔ケア組成物とするという従来には無い発想に基づくものである。この口腔ケア組成物は、リン酸化オリゴ糖カルシウムとラクトフェリンが混合されるものに限らず、リン酸化オリゴ糖カルシウムとプロテオグリカンとが混合されるものであってもよい。
即ち、本発明に係る口腔ケア組成物は、口腔内に含ませることにより口腔内の健康を増進する口腔ケア組成物であって、組成物全質量に対する質量%で、リン酸化オリゴ糖カルシウム:1〜30%、ラクトフェリン:0.01〜10%を含有し、更に重炭酸アンモニウム:1〜20%を含有する。また、本発明に係る口腔ケア組成物は、口腔内の唾液分泌を促進するものとして用いられるとともに、リン酸化オリゴ糖カルシウム:1〜30%、ラクトフェリン:0.01〜10%を含有し、更にラクトパーオキシターゼ:1〜20%を含有するものであってもよい。また、本発明に係る口腔ケア組成物は、口腔内に含ませることにより口腔内の健康を増進する口腔ケア組成物であって、組成物全質量に対する質量%で、リン酸化オリゴ糖カルシウム:1〜30%、プロテオグリカン:0.01〜10%を含有する。この口腔ケア組成物は、更にラクトパーオキシターゼ:1〜20%を含有するものであってもよいし、更に重炭酸塩:1〜20%を含有するものであってもよい。
また本発明を適用した口腔ケア組成物では、難消化性デキストリン、ジャンピニオンエキス粉末、キシリトール、香料、微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム等の何れか1以上を残部に含有するものであってもよい。
以下、本発明を適用した口腔ケア組成物について、その成分と含有量の限定理由について説明する。なお、各成分の含有量は、組成物全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときには単に%と記載して表すこととする。
リン酸化オリゴ糖カルシウム:1〜30%
リン酸化オリゴ糖カルシウムは、北海道産のジャガイモを原料とした澱粉由来の成分である。ジャガイモの澱粉にはリン酸基が結合している部位があり、その澱粉に酵素を作用させて抽出及び精製し、カルシウム塩として調製したものが、リン酸化オリゴ糖カルシウムである。このリン酸化オリゴ糖カルシウムは、口腔内に含ませることにより、唾液を大量に分泌させる作用を引き起こさせる。また、このリン酸化オリゴ糖カルシウムは、カルシウム源としての機能を発揮することに加え、う蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌の栄養源にならず、更に口腔内のpH低下を緩衝作用によって抑制する機能も発揮しえる。リン酸化オリゴ糖カルシウムは、溶解したカルシウムイオンが唾液中において増強されることにより、歯の再石灰化も促進させることが可能となる。
このようなリン酸化オリゴ糖カルシウムの含有量が1%未満では、リン酸化オリゴ糖カルシウムの本来保有する機能を発揮し得ず、上述した所期の効果を奏することができない。一方、リン酸化オリゴ糖カルシウムの含有量が30%を超えた場合には、効果が飽和してしまうとともに、これを多く含有させることによる原料コストが増加してしまうこととなる。リン酸化オリゴ糖カルシウムを30%を超えるほど大量に添加してしまうことになれば、乳児に対して却って毒性の強いものとなってしまう。このため、リン酸化オリゴ糖カルシウムの含有量は1〜30%とする。
タンパク質:0.01%〜10%
タンパク質は、カルシウムイオンが結合され、高分子量(分子量約8万以上)のタンパク質である。このタンパク質は、口腔内でカルシウムイオンが結合されることで、タンパク質分解酵素に破壊されにくくなり、構造的に安定化する。また、タンパク質は、口腔内を刺激して耳下腺からの唾液を分泌させる作用を引き起こさせる。
タンパク質は、例えば、ラクトフェリン、プロテオグリカン等である。
ラクトフェリンは、動物の体内で広く分布している分子量約8万の鉄結合性の糖タンパク質である。ラクトフェリンは、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等)の初乳、移行乳、常乳、末期乳、又はこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等を乳原料とし、例えばイオン交換クロマトグラフィー等の公知の分離・精製方法を用いることで、前記原料から分離して得られるものを用いることができる。このラクトフェリンは、更に植物(トマト、イネ、タバコ)から生産されたものであってもよいし、遺伝子組み換えによって得られるものであってもよい。更にラクトフェリンは、市販品を使用してもよいし、公知の方法により調製して使用することができる。ラクトフェリンは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このようなラクトフェリンは、口腔内に含ませることにより、唾液を大量に分泌させる作用を引き起こさせる。
このラクトフェリンが奏しえる中核機能としては、免疫的寛容の導入、異物認識の強化、血管新生の阻害、オピオイド作用の増強等である。免疫的寛容の導入により、自己免疫疾患、各種アレルギーに対する改善効果が期待できる。また異物認識の強化により、例えば感染症、特に日和見感染症に対し改善効果が期待できる。またラクトフェリンは、炎症が誘導する血管新生を阻害する効果も奏するため、癌を始めとする血管新生病に有効である。一方、ラクトフェリンは脳内麻薬と称される内因性オピオイドの効果を高めため、疼痛に対する鎮痛効果をも発揮しえる。
ラクトフェリンは、上述した唾液の分泌効果に加え、アルツハイマー病を始めとする神経変性疾患を治療、予防できる可能性もある。
プロテオグリカンは、動物の体内に存在する分子量約10万以上の糖タンパク質であって、コンドロイチン硫酸等の糖が含有されている。プロテオグリカンは、例えば、サケ鼻軟骨から抽出されるものを用いることができる他、市販されているものを用いることができる。このようなプロテオグリカンは、口腔内に含ませることにより、唾液を分泌させる作用を引き起こさせる。プロテオグリカンは、前述した唾液の分泌効果に加え、コラーゲンやヒアルロン酸と細胞外マトリックスを作ることで身体組織や皮膚組織を維持し、関節痛に対する鎮痛効果を発揮する。
このようなタンパク質の含有量が0.01%未満では、タンパク質の保有する機能を発揮し得ず、上述した所期の効果を奏することができない。一方、タンパク質の含有量が10%を超えた場合には、効果が飽和してしまうとともに、これを多く含有させることによる原料コストが増加してしまうこととなる。このため、タンパク質の含有量は0.01〜10%とする。
重炭酸塩:1〜20%
重炭酸塩は、例えば、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、重炭酸アンモニウム等である。重炭酸ナトリウムは、一般に重曹と称されるもので、ふくらし粉、清涼飲料などの添加剤として各種の食品分野や、人工透析剤、胃腸薬などの医薬品分野において、さらに消火剤、浴用剤、洗浄剤などとして広く使用されている。このような重炭酸ナトリウムを、口腔内に含ませることにより、唾液を大量に分泌させる作用を引き起こさせる。
重炭酸アンモニウムは、膨張剤、添加剤として各種の食品分野や、胃腸薬などの医薬品分野において、さらに消火剤などとして広く使用されている。このような重炭酸アンモニウムを、口腔内に含ませることにより、唾液を分泌させる作用を引き起こさせる。
このような重炭酸塩の含有量が1%未満では、重炭酸塩の本来保有する機能を発揮し得ず、上述した所期の効果を奏することができない。一方、重炭酸塩の含有量が20%を超えた場合には、効果が飽和してしまう。このため、重炭酸塩の含有量は1〜20%とする。
ラクトパーオキシターゼ:1〜20%
ラクトパーオキシターゼは、ラクトフェリンと同様に、唾液や乳に含まれる生体防御成分であり、歯周病菌等の各種細菌に対して抗菌作用を示す酵素である。このようなラクトパーオキシターゼを含有することにより、唾液の分泌を促す。このラクトパーオキシターゼが全質量に対する質量%で1%未満である場合には、抗菌作用をより効果的に発現させることができない。一方、このラクトパーオキシターゼが全質量に対する質量%で20%超である場合には、効果が飽和してしまう。このため、このラクトパーオキシターゼによる唾液分泌作用と抗菌作用を好適に発現させるためには、ラクトパーオキシターゼの含有量は1〜20%とする。
残部の含有物
難消化性デキストリンは、とうもろこし、小麦、米、豆類、イモ類、タピオカなどの植物由来の澱粉を加酸および/または加熱して得た焙焼デキストリンを、必要に応じてαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼで処理した後、必要に応じて脱塩、脱色した水溶性食物繊維であり、難消化性の特徴を持つものをいう。本発明を適用した口腔ケア組成物では、錠剤として構成する場合における増量剤として使用され、その含有量は特に限定されるものではなく適量添加される。
ジャンピニオンエキス粉末は、マッシュルームから抽出される成分であり、口臭等の臭いを消去するために適量添加される。
キシリトールは、天然に存在する五炭糖の糖アルコールであり、本発明において添加するものについては、その供給源としてはいかなる公知のものであってもよい。このキシリトールを添加することにより、口腔ケア組成物を錠剤として構成した場合に飲みやすくすることが可能となる。キシリトールの含有量は特に限定されるものではなく適量添加される。
香料は、様々な植物や一部の動物から抽出された天然香料、あるいは化学的に合成された合成香料を多数調合して得られるものである。例えばオレンジの香料を添加することにより口腔ケア組成物を錠剤として構成した場合に飲みやすくすることが可能となる。また、メントールの香料を添加することにより、これを飲んだ際にスッとするような感覚を発現させることが可能となる。この香料の含有量は特に限定されるものではなく適量添加される。
微粒二酸化ケイ素は、ケイ酸ナトリウムを塩酸や硫酸で分解した微粒状なものであり、硬度を調整するために適量添加されるものであるが、その添加は必須ではない。
ステアリン酸カルシウムは、ステアリン酸とパルミチン酸のカルシウム塩であり、粉状製品の滑沢性、流動性付与や固結防止、又は製品組織の乳化、粘性を高める効果のあるパーム由来脂肪酸を使用したものである。ステアリン酸カルシウムの含有量は特に限定されるものではなく適量添加される。
本発明を適用した口腔ケア組成物は、上述した含有量からなる各成分を錠剤又は粉末状等の固体状にして具現化されるものであってもよいし、液体として具現化されるものであってもよい。
このような本発明を適用した口腔ケア組成物を被験者の口腔内に含ませることにより、この口腔ケア組成物に含有されているリン酸化オリゴ糖カルシウム、ラクトフェリン及び重炭酸アンモニウムが互いの存在により相乗的に作用して、唾液をより大量に分泌させることになる。また、リン酸オリゴ糖カルシウムのカルシウム分がラクトフェリンといち早く結合し、ラクトフェリンがタンパク質分解酵素に構造破壊されにくくなるため、これを構造的に安定化させることが可能となる。また、リン酸化オリゴ糖カルシウム及びプロテオグリカンが混合されることで、リン酸化オリゴ糖カルシウムのカルシウムが口腔内の唾液に含まれるリン酸イオンと結合するより先にプロテオグリカンと結合するため、口腔内で歯石の元となるリン酸カルシウムが形成されるのを防止することが可能となる。
その結果、口腔内における唾液の飛躍的な分泌が生じ、ドライマウスの症状を緩和させることも可能となる。このとき、上述した重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、ラクトパーオキシターゼが含有されていることにより、更に唾液の分泌が促されることとなる。
このようにして、口腔内における唾液の分泌が促進されることにより、食物の消化が助けられ、口腔内にある食べかすを洗い流す自浄作用が高まることとなる。また口腔内における殺菌作用をも発揮され、更には口腔内のpHがより中性となるように保持されることとなり、う蝕の発生や進行を防止することが可能となり、また再石灰化の作用も発揮させることが可能となる。
特に本発明では、大量の唾液の分泌促進が実現できるため、被災地等のような水が無い場所においても、これを口に含ませておくことにより、歯磨きをすることなくう蝕の発生や進行を防止することが可能となる。また高齢者や身体障害者等のように、歯磨きが困難な者が、本発明を適用した口腔ケア組成物を口に含ませることにより、歯磨きをすることなくう蝕の発生や進行を防止することが可能となる。
また本発明を適用した口腔ケア組成物は、口腔内における唾液の分泌を促すことで、高齢者等に多く現れるドライマウスの症状を緩和させることも可能となる。
以下に、本発明で使用した試験方法、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の例において単に%のみ記載されている場合は、質量%を示すものとする。
本発明では、実験的検討を行うために得たサンプル錠剤について、表1、2に示すように、被験者A〜Eの5名に対して口に含ませ、唾液分泌量を計測した。
Figure 0006570124
Figure 0006570124
被験者Aは50代男性、被験者Bは60代男性、被験者Cは40代男性、被験者Dは50代女性、被験者Eは50代女性である。この被験者A〜Eは何れもドライマウス症状のある者である。特に被験者Eは、舌癌の手術後、抗癌剤による治療中であり、通常であると唾液が殆ど分泌しない状態にある者である。
これら各被験者A〜Eについて、以上の表1、2に示す成分からなるサンプル錠剤を1分間に亘り口に含ませ、口腔内に溜まった唾液を計量カップに吐き出させてその量を測定した。サンプル錠剤は、いずれも500mgの錠剤で構成し、それぞれ表1に示す各成分について表中の数値からなる%含有させ、残部は、デキストリン等のような澱粉成分により構成している。
比較例1は、単にサンプル錠剤をデキストリンのみで構成した、いわゆるバルク状態のサンプルである。比較例2〜3において唾液分泌を促す成分は、重炭酸ナトリウムのみであり、これについて含有量を互いに異ならせて構成している。比較例4〜7において唾液分泌を促す成分は、リン酸化オリゴ糖カルシウムのみであり、これについて含有量を互いに異ならせて構成している。比較例8〜10において、唾液分泌を促す成分は、ラクトフェリンのみであり、これについて含有量を互いに異ならせて構成している。比較例11〜12において唾液分泌を促す成分は、重炭酸アンモニウムのみであり、これについて含有量を互いに異ならせて構成している。比較例13〜14において、唾液分泌を促す成分は、ラクトパーオキシターゼのみであり、これについて含有量を互いに異ならせて構成している。
これら比較例2〜14は、成分の含有量が高くなるにつれて、被験者A〜E何れも唾液分泌量が多くなる傾向が見られていた。
本発明例1は、重炭酸アンモニウムが5%、リン酸化オリゴ糖カルシウムが10%、ラクトフェリンが1%であるのに対して、比較例7は、リン酸化オリゴ糖カルシウムが20%のみ、比較例10は、ラクトフェリンが1%のみ、比較例11は、重炭酸アンモニウムが5%のみ含有するものである。本発明例1は、比較例6、10、11の合計の唾液分泌量を上回っていることからも、これら各成分を混合して一つの組成物とすることによる相乗効果が現れているものと考えられる。
本発明例2は、本発明例1に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、ラクトフェリンの含有率に加えて、重炭酸アンモニウムを16%含有した例である。重炭酸アンモニウムの含有量を高めることにより、唾液分泌量を更に増加できることが示されている。
比較例15は、本発明例1に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、ラクトフェリンの含有率に加えて、重炭酸アンモニウムを25%とすることにより、1〜20%の範囲を超えるように設定したものである。重炭酸アンモニウムの含有量を高めることにより、唾液分泌量を更に増加できることが示されている。しかしながら、比較例15は、このように唾液分泌量を増加させることができる一方で、重炭酸アンモニウムの原料コストが増加してしまう。
また、比較例16は、リン酸化オリゴ糖カルシウムを35%とすることにより、1〜30%の範囲を超えるように設定したものである。本発明例1、2は、何れもリン酸化オリゴ糖カルシウムが1〜30%の範囲に含まれているため、被験者5人分の唾液分泌量の総量が250mlを超えていた。比較例16は、リン酸化オリゴ糖カルシウムが30%を超えているため、唾液分泌量が本発明例2と比べて低下傾向にあり、またリン酸化オリゴ糖カルシウムが30%を超えると原料コストの負担が多くなってしまう。これに加えて、この比較例16を摂取した被験者のうちの複数人が、お腹がゆるくなる等の症状を訴えたことからも、このリン酸化オリゴ糖カルシウムを添加しすぎることによるデメリットが現れてきてしまう。
本発明例3〜5、比較例17は、リン酸化オリゴ糖カルシウム、ラクトフェリンの含有率に加えて、ラクトパーオキシターゼの含有量を異ならせた例である。本発明例3〜5は、ラクトパーオキシターゼの含有量が増加するのに伴って、唾液分泌量を増加できることが示されている。比較例17は、ラクトパーオキシターゼを35%することにより、1〜20%の範囲を超えるように設定したものである。ラクトパーオキシターゼの含有量を高めることにより、唾液分泌量を更に増加できることが示されている。しかしながら、比較例17は、このように唾液分泌量を増加させることができる一方で、ラクトパーオキシターゼの原料コストが増加してしまう。
本発明例6、7は、本発明例4に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、ラクトフェリン、ラクトパーオキシターゼの含有率に加えて、重炭酸ナトリウムの含有量を異ならせた例である。本発明例6、7の方が重炭酸ナトリウムが添加されている分において本発明例4よりも唾液の分泌量が増加している。
本発明例8、9は、本発明例4に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、ラクトフェリン、ラクトパーオキシターゼの含有率に加えて、重炭酸アンモニウムの含有量を異ならせた例である。本発明例8、9の方が重炭酸アンモニウムが添加されている分において本発明例4よりも唾液の分泌量が増加している。
また、本発明例7の方が本発明例9よりも唾液量が多いことから、重炭酸ナトリウムの方が重炭酸アンモニウムよりも唾液を分泌する作用が大きいものと推察される。
本発明例10〜13は、重炭酸塩を添加することなく、リン酸化オリゴ糖カルシウム、プロテオグリカンを含有した例である。また、比較例18は、プロテオグリカンを0.05%含有した例である。この本発明例10〜13においても、比較例4、18の合計の唾液分泌量を上回っていることからも、これら各成分を混合して一つの組成物とすることによる相乗効果が現れているものと考えられる。
本発明例14、15は、本発明例12に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、プロテオグリカンの含有率に加えて、ラクトパーオキシターゼの含有量を異ならせた例である。本発明例14、15の方がラクトパーオキシターゼが添加されている分において本発明例12よりも唾液の分泌量が増加している。
本発明例16は、本発明例12に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、プロテオグリカンの含有率に加え、重炭酸ナトリウムを16%含有した例である。本発明例16の方が重炭酸ナトリウムが添加されている分において唾液の分泌量が増加している。
本発明例17は、本発明例12に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、プロテオグリカンの含有率に加え、重炭酸アンモニウムを16%含有した例である。本発明例17の方が重炭酸アンモニウムが添加されている分において唾液の分泌量が増加している。
本発明例18は、本発明例15に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、プロテオグリカン、ラクトパーオキシターゼの含有率に加え、重炭酸ナトリウムを16%含有した例である。本発明例18の方が重炭酸ナトリウムが添加されている分において唾液の分泌量が増加している。
本発明例19は、本発明例15に示すリン酸化オリゴ糖カルシウム、プロテオグリカン、ラクトパーオキシターゼの含有率に加え、重炭酸アンモニウムを16%含有した例である。本発明例19の方が重炭酸アンモニウムが添加されている分において唾液の分泌量が増加している。

Claims (1)

  1. 口腔内に含ませることにより口腔内の健康を増進する口腔ケア組成物において、
    組成物全質量に対する質量%で、
    リン酸化オリゴ糖カルシウム:1〜30%、
    ラクトフェリン:0.01〜10% 、
    重炭酸アンモニウム:1〜20%を含有すること
    を特徴とする口腔ケア組成物。
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