以下、歩行器等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における歩行器1000の斜視図(図1(a))、および歩行器1000の上フレーム2を水平に180度回転させた状態の斜視図(図1(b))である。
図2は、本実施の形態における歩行器1000の側面図(図2(a))、および歩行器1000の上フレーム2を水平に180度回転させた状態の側面図(図2(b))である。
図3は、本実施の形態における歩行器1000のブロック図である。
歩行器1000は、下フレーム1、上フレーム2、2つの前輪103、2つの後輪104、回転操作受付部106、ロック機構107、ブレーキ部108、第一の移動用スイッチ109a、第二の移動用スイッチ109b、一以上のセンサ120、出力部121、モータ122、回転制御部123、および停止ブレーキ部124を備える。図においては、一例として一以上のセンサ120が、第一のセンサ120a、第二のセンサ120b、および第三のセンサ120cの三種類のセンサである場合を示している。なお、図3においては、説明の便宜上、ロック機構107、ブレーキ部108、第一のセンサ120a、第二のセンサ120b、第三のセンサ120c、モータ122、回転制御部123、および停止ブレーキ部124が、それぞれ一つである場合を示しているが、これらは、いずれも二以上であっても良い。
下フレーム1には、複数の車輪である前輪103および後輪104が取り付けられている。また、上フレーム2は、後方が開放しており、下フレーム1に対して水平に回転可能となるよう、下フレーム1の上方に設けられている。上フレーム2は、通常、左右の両方向に回転可能であるが、左右のいずれか一方向にのみ回転可能であっても良い。
下フレーム1は、レール部材11、脚部材12、横木部材13、連結部材14、補強部材15、および下支持部材16を備えている。脚部材12は、下フレーム1の左の下部と、右の下部とに設けられている。
各脚部材12は、ここでは一例として、略U字形状を有しており、その端部が下方を向くよう配置されている。脚部材12の端部の一方は、歩行器1000の前方に位置し、他方は、歩行器1000の後方に位置しており、脚部材12の前方の端部には、前輪103が取り付けられ、後方の端部には後輪104が取り付けられている。前輪103は、水平方向に回転可能となるよう取り付けられている。なお、後輪104も、水平方向に回転可能となるよう取り付けられるようにしてもよい。また、ここでは、下フレーム1の左右にそれぞれ2つの車輪を取り付けた場合について説明したが、左右に3以上の車輪を取り付けてもよい。また、下フレーム1のその他の下部にも車輪を取り付けるようにしてもよい。横木部材13は、その両端が、脚部材12の両端近傍に取り付けられている。また、左右の脚部材12は、その前方側の端部の近傍が連結部材14で連結されている。また、連結部材14と、左右の脚部材12の上部の前方部分とが、それぞれ補強部材15で連結されている。下フレーム1の左右の脚部材12(あるいは、横木部材13)および連結部材14は、平面形状が、歩行器1000の後方側が開放された(つまり、後方側に両端を有する)略U字形状となるよう配置されている。この左右の脚部材12(あるいは、横木部材13)および連結部材14で囲まれた領域は、ユーザが歩行に利用可能なサイズの領域であることが好ましい。脚部材12の端部間の長さは、例えば、700mmから900mmの範囲である。また、連結部材14の幅は、500mmから700mmの範囲である。ただし、これらの長さは適宜変更可能である。
なお、下フレーム1の前方は、洋式トイレの前方下部の空間に配置可能な高さを有することが好ましく、例えば、高さが150mm以下であることが好ましい。例えば、連結部材14の最上部の高さが150mm以下となることが好ましい。連結部材14の前方は、洋式トイレの前方下方の奥には位置可能となるよう、下フレーム1の後部方向にくぼんだ形状を有していることが好ましい。
左右の脚部材12の上部には、それぞれ下支持部材16を介してレール部材11が配置されている。レール部材11の詳細については後述する。
下フレーム1は、高さを調節するための機構を備えていても良い。例えば、脚部材12や、下支持部材16等が、高さを調節するための機構を備えていても良い。
なお、上記の下フレーム1の構成は一例であり、レール部材11等の上フレーム2を回転させるための機構や、車輪等を備えていれば、上記以外の構成であっても良い。また、下フレーム1の形状等は問わない。
上フレーム2は、スライダ部材21、ハンドル部材22、支持部材23、および取手24を備える。
スライダ部材21は、上フレーム2の下部に設けられている。スライダ部材21は、後方の一部を切り欠いた環状の平面形状を有している部材である。スライダ部材21は、例えば、板状、あるいは管状の部材である。この切り欠いた部分の幅は、例えば、ユーザが出入り可能な幅であることが好ましい。このスライダ部材21が、下フレーム1の左右に設けられたレール部材11に移動可能となるよう保持されることにより、上フレーム2は、下フレーム1に対して水平に回転可能となるよう、下フレーム1の上方に配置される。
ハンドル部材22は、上フレーム2の上方、例えば上部に配置される。ハンドル部材22は、歩行器1000の少なくとも前方に設けられている。ハンドル部材22は、例えば、上方に伸びる一以上の支持部材23を介して、スライダ部材21上に配置される。例えば、ハンドル部材22は、歩行器1000の前方から左右の後方に向かって曲がった形状を有している。また、ハンドル部材22は、後方が開放された形状を有している。例えば、ハンドル部材22は、後方に、ユーザが出入り可能なサイズの開口を有している。例えば、ハンドル部材22は、平面形状が、略U形状を有しており、その端部が、歩行器1000の後部を向くように、後方に曲げられて配置されている。ハンドル部材22は、スライダ部材21の形状に近い形状を有していることが好ましい。また、スライダ部材21で囲まれた部分と、ハンドル部材22とで囲まれた部分とのサイズは、それぞれ、その部分にユーザが位置することが可能なサイズであることが好ましい。下フレーム1上に上フレーム2を取り付けた場合におけるハンドル部材22の高さは、歩行時にユーザが把持可能な高さ、例えば、70〜100mmの高さであることが好ましい。
歩行器1000は、通常の歩行に利用される際には、下フレーム1の前方方向と、上フレーム2の前方方向とが一致する状態で利用される。この状態は、上フレーム2を下フレーム1に対して水平に回転させていない状態と考えてもよい。下フレーム1の前方方向とは、例えば、一方の脚部材12の後輪104が取り付けられている端部から前輪103が取り付けられている端部に向かう方向である。あるいは、上フレーム2の回転中心から2つの前輪103を結ぶ線の中点に向かう方向や、下フレーム1全体における2つの前輪103を結ぶ線の中点が位置する方向であってもよい。上フレームの前方方向とは、例えば、上フレーム2の開放されている部分(例えば、開放されている部分の中心)から、上フレーム2の回転中心に向かう方向である。あるいは、上フレーム2の回転中心からハンドル部材22の中心に向かう方向や、上フレーム2全体におけるハンドル部材22の中心が位置する方向等であっても良い。
なお、ハンドル部材22は、上フレーム2を回転させる際に、ユーザがハンドル部材22を把持した状態で上フレームの回転にあわせて回転できるよう、少なくともユーザに把持される部分が常に露出していることが好ましい。例えば、上フレーム2の回転に合わせてハンドル部材22が動く際に通過する位置、例えば空間には、カバー等が設けられていないことが好ましい。より好ましくは、ハンドル部材22全体が、上フレーム2の回転時においても常に露出している構造であることが好ましい。
上フレーム2の左右の側方には、例えば、それぞれ取手24が設けられている。ここでは、一例として、取手24は、上フレーム2の側方の後方に設けられた支持部材23に対して水平となるよう一端が取り付けられた棒状の部材である。取手は、いわゆるグリップであっても良い。なお、取手24の支持部材23に取り付けられていない端部は、下方に折り曲げられて、スライダ部材21の端部側の上部に取り付けられている。この取手24の高さ位置は、例えば、便座やベッド等に着座したユーザが立ち上がる際につかまる取手として適した高さ位置であることが好ましい。例えば、高さ位置は、550mmから650mmの範囲であることが好ましい。なお、ここでの取手24の高さ位置は、例えば、取手24の水平部分の高さ位置と考えてもよい。
左右に配置されたレール部材11は、それぞれ、歩行器1000の内側に向かって湾曲した平面形状を有するガイド部材111と、このガイド部材の両端に設けられた2組のローラ部材112とを有している。ガイド部材111には、スライダ部材21を移動可能となるよう配置可能な溝111aが設けられており、スライダ部材21は、この溝111aの底面により上方に支持されている。溝111aの平面形状は、例えば、スライダ部材21の平面形状に沿った、環の一部を取り出した形状を有している。ローラ部材112は、ローラ(図示せず)を備えており、ローラは、その回転軸が鉛直方向となるよう配置されている。ローラは、溝111a内に配置されたスライダ部材21と接している。また、一対のローラ部材112は、溝を111aを挟んで、それぞれのローラが対向するよう配置されている。スライダ部材21は、複数のローラ部材112の対によって、溝111aに沿って移動可能となるよう水平方向に挟持されている。これにより、平面形状が一部を切り欠いた環状であるスライダ部材21は、その環の中心を回転軸として、水平に回転移動可能となるよう、左右のレール部材11により保持されている。そして、スライダ部材21が、レール部材11の溝111aに沿って移動することで、上フレーム2全体が水平に回転移動する。これにより、上フレーム2を下フレーム1に対して回転させる際に、歩行器1000を利用するユーザが立つことができる領域に、ハンドル部材22等が進入することが無く、回転時にユーザが立つ領域が確保される。なお、溝111aの上部やローラ部材112の上部は、溝方向に突出しており、溝111a内に配置されたスライダ部材21が、溝111aの上方から、抜け落ちないようになっていることが好ましい。
なお、上記の上フレーム2の構成は一例であり、スライダ部材21等の上フレーム2を下フレーム1上において、下フレーム1に対して回転させるための機構や、ユーザが歩行時等に把持するためのハンドル部材22等の部材を備えていれば、上記以外の構成であっても良い。また、上フレーム2の形状等も、後方が開放された形状であれば、どのような形状であっても良い。また、上フレーム2の支持部材23等が高さを調節するための機構を備えていても良い。
また、上述した下フレーム1や上フレーム2の大きさや形状等は、ユーザが歩行時に利用可能な大きさや形状等であることが好ましい。特に、環状のスライダ部材21やレール部材11の直径等は、歩行器1000を利用するユーザが、その内部に立つことが可能な大きさ、例えば、500mmから700mm程度の範囲の大きさであることが好ましい。
回転操作受付部106は、上フレーム2の水平な回転を制御するための操作を受け付ける。水平な回転の制御とは、例えば、水平な回転をロックすることや、このロックを解除することやその両方である。この操作は、例えば、ロック機構107を制御するための操作である。回転操作受付部106は、例えば、回転制御を制御するための操作を受け付けるスイッチである。スイッチは、押しボタンスイッチであっても、スライドスイッチ等のどのような機構のスイッチであっても良い。また、回転操作受付部106は、同様の操作を受け付けるためのタッチ式のセンサや、近接センサ、感圧センサ等のセンサであっても良い。また、回転操作受付部106は、レバー等であっても良い。回転操作受付部106は、例えば、上フレーム2の回転のロックを解除する操作を受け付けるスイッチである。回転操作受付部106は、上フレーム2に設けられていることが好ましく、上フレームのハンドル部材22に設けられていることが、ユーザが歩行器1000を利用して歩行可能な状態で操作が行えるという点で、より好ましい。
歩行器1000には、ロック機構107が設けられている。ロック機構107は、上フレーム2の水平な回転のロックを行なう機構である。ロック機構107による回転のロックは、通常、解除可能である。ロック機構107は、例えば、回転操作受付部106が受け付けた操作に応じて、上フレーム2の回転のロック、およびロックの解除の少なくとも一方を行なう。
ロック機構107は、例えば、下フレーム1と上フレーム2とが水平方向においてなす角度が、一以上の予め指定された角度となった状態で、水平方向の回転をロックする。下フレーム1と上フレーム2とがなす角度とは、例えば、下フレーム1の前方方向と、上フレーム2の前方方向とがなす角度である。例えば、ロック機構107は、下フレーム1の前方方向と、上フレーム2の前方方向とがなす角度が0度および180度である状態で、上フレーム2の水平方向の回転をロック可能である。なお、ロック機構107は、下フレーム1と上フレーム2とがなす角度が、その他の角度でロック可能であってもよい。
ロック機構107は、例えば、スライダ部材21のレール部材11に対する移動をロックすることで、上フレーム2の回転をロックする。ロック機構107は、例えば、スライダ部材21とレール部材11とが一以上の予め指定された位置関係となった状態で、スライダ部材21の移動をロックする。ロック機構107は、例えば、レール部材11のガイド部材111の近傍や、ガイド部材111の内部等に設けられている。
ロック機構107としては、例えば、特開平7−104376号公報に示されているようなロック機構が利用可能である。
以下、ロック機構107の一例について説明する。
図7は、本実施の形態のロック機構107の一例を説明するための、スライダ部材21がロック可能な状態ではあるが、ロックされていない状態を示すスライダ部材21およびレール部材11の水平断面図(図7(a))、スライダ部材21がロックされた状態を示す水平断面図(図7(b))、およびロック機構が解除された状態を示す水平断面図(図7(c))である。
このロック機構107は、レール部材11の溝111aの内面(例えば、側面)から突出しうるバネ等により付勢されたロックピン1071、と、このロックピン1071を溝111aの内面から突出しない待避位置に保持するバネ1072と、ロックピン1071の軸1074を、溝111aとは反対方向に移動させることで、このロックピン1071を、待避位置に保持する保持機構1073とを備えている。また、スライダ部材21の内壁の、このスライダ部材21を溝111aに沿って移動させた場合にロックピン1071と対向可能な任意の位置には、ロックピン1071の先端に嵌合する穴や、切り込み等の凹部2101を設けておく。なお、この凹部2101は、ロック機構107の一部と考えても良く、一部と考えて無くても良い。また、ロックピン1071を待避位置に保持する保持機構1073は、例えば、回転操作受付部106が受け付けた操作に応じて動作可能となるようにする。ここでの動作は、ロックピン1071の軸1074を、溝111aとは反対側に移動させる動作である。例えば、回転操作受付部106が受け付けた操作に応じて、電動で動作するようにしてもよい。なお、軸1074等を移動させる保持機構1073等の構成は、公知技術であるため、ここでの説明は省略する。
このロック機構においては、保持機構1073を用いてロックピン1071を待避位置に保持していない状態(例えば、、軸1074を、溝111aとは反対側に移動させていない状態)において、スライダ部材21を移動させると、スライダ部材21の凹部2101が設けられていない部分においては、図7(a)に示すように、ロックピン1071は、その先端がスライダ部材21の表面により押し戻されて溝111aから待避した状態となるため、スライダ部材21が移動可能であるとともに、スライダ部材21の凹部2101と対向した位置においては、ロックピン1071は、バネ1072による付勢により、溝111aの内面から突出して、スライダ部材21の凹部2101内に嵌め合わせられ、これにより、図7(b)に示すように、スライダ部材21の移動がロックされることとなる。つまり、スライダ部材21がロックされる。また、保持機構1073により、軸1074を溝111aとは反対方向に移動させて、ロックピン1071を待避位置に保持した状態とすると、図7(c)に示すように、ロックピンが、溝111aに突出しなくなるため、スライダ部材21は、レール部材11の溝111a内を自由に移動可能となる。つまり、スライダ部材21が上記のようにロックピン1071の突出によりロックされていた場合、ロックが解除されることとなる。
これにより、例えば、回転操作受付部106が、ロックを解除する操作を受け付けていない場合には、保持機構1073が、ロックピン1071を待避位置に保持しないようにして、スライダ部材21が、凹部2101とロックピン1071とが嵌合した位置でロックされるようにし、回転操作受付部106が、ロックを解除する操作を受け付けている際には、ロックピン1071を待避位置に保持して、スライダ部材21がロックされない状態とすることで、回転操作受付部106に対して操作を行なっていない場合には、スライダ部材21の凹部2101とロックピン1071とが嵌合する位置においては、上フレーム2の回転が自動的にロックされるとともに、回転操作受付部106が、ロックを解除する操作を受け付けた場合にだけ、このロックを解除できるようになる。
また、このようなロック機構においては、スライダ部材21に設ける凹部2101の位置により、上フレーム2をロックする位置を特定することができる。例えば、下フレーム1と上フレーム2とのなす角度が0度となっている状態の、スライダ部材21のロック機構のロックピン1071の先端に対向する位置に凹部2101を設けることで、下フレーム1と上フレーム2とのなす角度が0度となった状態で、上フレーム2の回転をロックすることができる。かかることは180度等のその他の角度においても同様である。
なお、本実施の形態においては、上記のようなロック機構107が、左右のレール部材11に設けられている場合を例に挙げて説明する。ロック機構107を、左右に設けることで、スライダ部材21が、一方のレール部材11の溝111aから離れた場合においても、スライダ部材21を他方のレール部材11に設けられたロック機構107でロック可能となる。
なお、上記で挙げたロック機構107は一例であり、ロック機構107として、他の機構を用いるようにしても良い。例えば、自動車のハンドルのロック機構や、レンズ交換式カメラのマウントのロック機構等に相当する構成を、ロック機構107として用いても良い。また、ロック機構によりローラ部材112の回転を停止させることで、スライダ部材21の移動をロックするようにしても良い。
第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bは、ブレーキ部108を操作するためのスイッチである。第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bは、例えば、ハンドル部材22の左右に設けられている。第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bは、例えば、ハンドル部材22の左右のユーザが歩行時に把持する位置やその近傍に設けられている。第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bは、例えば、オンまたはオフの状態が保持されるスイッチであっても良いが、スイッチを押している間だけオン状態(あるいはオフ状態)が保たれるスイッチであることが好ましい。また、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bは、センサを利用したスイッチであっても良い。なお、第一の移動用スイッチ109aと、第二の移動用スイッチ109bとは、片手で同時に操作できない位置に配置されていることが好ましく、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bと、回転操作受付部106とは、片手で同時に操作できない位置に配置されていることが好ましい。これにより、例えば、歩行器1000が移動している際に、上フレーム2を回転させないようにすることが可能となる。
一以上のブレーキ部108は、車輪の回転を停止させる。ブレーキ部108は、通常、このブレーキ部108が取り付けられた車輪の回転を停止させる。ブレーキ部108は、例えば、左右の後輪104に対してそれぞれ取り付けられ、左右の後輪104の回転を停止させる。また、左右の前輪103の回転を停止させても良い。ブレーキ部108は、通常、停止対象となる車輪に取り付けられる。なお、ブレーキ部108が車輪の回転の停止させることを、ここでは、車輪にブレーキをかける、あるいは、歩行器1000にブレーキをかけると呼ぶ場合がある。また、ブレーキ部108が、車輪の回転の停止を解除することを、ブレーキを解除すると呼ぶ場合がある。かかることは、後述する停止ブレーキ部124についても同様である。ここでは、一例として、2つのブレーキ部108が、左右の後輪104にそれぞれ取り付けられており、それぞれのブレーキ部108が、それぞれが取り付けられた後輪104の回転を停止可能である場合を例に挙げて説明する。ブレーキ部108としては、通常の車輪に利用可能なブレーキが利用可能である。ブレーキ部108としては、例えば、ディスクブレーキや、ドラム式ブレーキや、キャリバーブレーキ等の一般的なブレーキが利用可能である。
ブレーキ部108は、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bの両方が予め指定された状態となっていない場合に、車輪の回転を停止させる。ブレーキ部108は、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bの両方が予め指定された状態となっていない場合に、車輪の回転を停止させる。例えば、ブレーキ部108は、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bの両方が予め指定された状態であるオン状態となっていない場合に、車輪の回転(例えば、左右の後輪104の回転)を停止させる。これにより、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bの両方がオン状態にならない限りは歩行器1000が移動しなようにすることにより、ユーザが、歩行器1000を正しく使わない場合には歩行器1000が移動しないようにして、事故の発生を未然に防ぐことができる。
なお、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bを設ける代わりに、一つの移動用スイッチ(図示せず)を設けるようにし、ブレーキ部108は、この移動用スイッチの状態によって車輪の回転を停止させるようにしても良い。
モータ122は、一以上の車輪を回転させる。例えば、モータ122は、下フレーム1が前方方向に移動するよう車輪を回転させる。歩行器1000は、一以上のモータ122を備えている。モータ122は、例えば、左右の後輪104に、一以上のギアや、ベルト等を介してそれぞれ取り付けられており、それぞれの後輪104を回転させる。モータ122は、例えば、予め指定された回転数で回転する。また、モータ122は、車輪の回転数に応じて、モータ122自身の回転数を決定し、この回転数で回転するようにしても良い。モータ122は、歩行者の移動を補助するためのモータ122と考えてもよい。モータ122の回転数やトルク等は、後述する回転制御部123により制御されるようにしても良い。
モータ122は、例えば、ブレーキ部108による車輪の停止が解除された場合に、モータ122が車輪を回転させるようにしてもよい。例えば、モータ122は、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bの両方が、予め指定された状態となった場合に、車輪を回転させるようにしても良い。
モータ122は、速度や回転数等を予め指定された値等に保つためのフィードバック制御が可能なモータであってもよい。このフィードバック制御は、例えば、モータ122に与える電流値を変更することにより行なわれるフィードバック制御である。
一以上のセンサ120は、歩行器1000の利用に関する情報を検出する。歩行器1000の利用に関する情報は、歩行器1000の移動時の取得される情報や、歩行器1000に移動時以外において、歩行器1000にかかる力等を示す情報等である。歩行器1000の利用に関する情報は、例えば、歩行器1000を利用する際の歩行器1000の速度や、歩行器1000のモータ122に流れる電流値や、歩行器1000にかかる床反力等である。なお、本実施の形態においては、歩行器1000が、この一以上のセンサ120の検出結果に応じた動作を行なう場合について説明する。センサ120の検出結果に応じた動作は、例えば、歩行器1000を減速させるための動作や、歩行器1000についての警告等の出力である。
本実施の形態では一例として、一以上のセンサ120が、第一のセンサ120a、第二のセンサ120b、および第三のセンサ120cの三種類のセンサである場合について説明する。ただし、一以上のセンサ120は、これら以外のセンサを含んでいても良く、また、これらの三種類のセンサの一部だけを含んでいても良い。
一以上の第一のセンサ120aは、歩行器1000の利用に関する情報である歩行器1000の速度を検出する。ここでの速度は、例えば移動速度である。第一のセンサ120aは、例えば、車輪の回転速度を検出する非接触のセンサや、車輪の車軸の回転速度を検出する回転計等である。例えば、第一のセンサ120aは、一以上の車輪の回転速度を検出し、この回転速度から歩行器1000の速度を取得しても良い。回転速度は、単位時間当たりの回転数である。また、第一のセンサ120aは歩行器1000の加速度を検出し、検出した加速度に対して積分等の演算を行なうことで移動速度を取得しても良い。なお、車輪の回転速度を、歩行器1000の速度と考えてもよい。ここでは、1つの第一のセンサ120aが、左の後輪104の近傍にそれぞれ配置されており、左の後輪104の回転速度を検出し、検出した回転速度から歩行器1000の速度を取得する場合を例に挙げて説明する。なお、第一のセンサ120aは速度が検出可能なセンサであれば、どのようなセンサであっても良い。
一以上の第二のセンサ120bは、歩行器1000の利用に関する情報である歩行器1000の一以上のモータ122に印加される電流値を検出する。第二のセンサ120bは、電流値を測定するセンサである。第二のセンサ120bは、電流計であっても良い。ここでは、1つの第二のセンサ120bが、左の後輪104に取り付けられたモータ122に電流を供給する回路等に取り付けられており、取り付けられたモータ122の電流値を取得する場合を例に挙げて説明する。なお、第二のセンサ120bは電流量が検出可能なセンサであれば、どのようなセンサであっても良い。
一以上の第三のセンサ120cは、歩行器1000の利用に関する情報である歩行器1000の一以上の車輪にかかる床反力を検出する。床反力とは、歩行器1000の一の車輪が床を押す力に対応して、床が車輪に与える反作用の力である。例えば、第三のセンサ120cは、車輪にかかる圧力を、床反力として検出する。第三のセンサ120cは、例えば、圧力センサである。第三のセンサ120cは、予め指定された圧力が加えられた場合にオンするスイッチ等であっても良い。例えば、二以上の第三のセンサ120cは、歩行器1000の左右の前輪103と、脚部材12の前方の端部との間にそれぞれ配置され、左右の前輪103にそれぞれ加わる圧力を検出する。なお、第三のセンサ120cは床からの圧力が検出可能なセンサであれば、どのようなセンサであっても良い。
一以上の回転制御部123は、一以上の第一のセンサ120aが検出した速度に応じて、車輪の回転を抑制または加速する。回転制御部123は、例えば、車輪に対して負荷や回転方向とは逆方向のトルク等をかけることにより回転を抑制させる。また、車輪に対してかかる負荷を減少させたり、車輪の回転方向にトルク等をかけることにより回転を加速させる。負荷やトルクをかける手段は問わない。例えば、回転制御部123は、車輪に対して粘性ブレーキ制御を行なうことで、車輪の回転を抑制させる。粘性ブレーキとは、電気粘性流体に電流を流した場合に、粘性が増加することを利用したブレーキである。例えば、回転制御部123は、車輪の車軸と連結されたいわゆる粘性ブレーキであり、この粘性ブレーキの電気粘性流体に流す電流を変化させることで、車輪の回転を抑制する度合いを変化させることができるものである。粘性ブレーキは、粘性流体ブレーキとも呼ばれる。粘性ブレーキについては公知技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、回転制御部123は、粘性ブレーキの粘性を減少させることで、車輪の回転を加速させても良い。また、回転制御部123は、制御信号等を出力することにより、モータ122に与える電圧等を制御することにより、車輪の回転数や車輪にかかるトルクを変更して、車輪の回転の抑制や加速を行なうものであっても良い。
回転制御部123は、例えば、一以上の第一のセンサ120aが検出した速度に応じて、段階的に、あるいは連続的に車輪の回転を抑制または加速させる。回転制御部123は、例えば、一以上の第一のセンサ120aが検出した速度の増加に従って、回転制御部123が取り付けられた車輪(例えば、2つの後輪)に与える回転を抑制する力を連続的または段階的に増加させて、車輪の回転を抑制する。同様に、一以上の第一のセンサ120aが検出した速度の変化(例えば、減少等)に応じて、車輪の回転を加速させても良い。例えば、速度の減少に従って、車輪に与える回転を抑制する力を連続的または段階的に減少させて、あるいは、車輪の回転方向にトルクをかけることによって、車輪の回転を加速させる。
例えば、段階的な制御の例について説明すると、第一のセンサ120aが検出した速度が第一の閾値を超えた場合に、回転制御部123は、第一の抑制力で、車輪の回転を抑制する。具体的には、回転制御部123は、電気粘性流体に流す電流を一段階あげて電気粘性流体の粘性を増加させて、車輪の回転を抑制させる。また、回転制御部123は、第一のセンサ120aが検出した速度が第二の閾値(ただし、第二の閾値は、第一の閾値よりも大きい値であるとする)を超えた場合に、回転制御部123は、第二の抑制力(ただし、第二の抑制力は、第一の抑制力よりも強い抑制力であるとする)で、車輪の回転を抑制する。具体的には、回転制御部123は、電気粘性流体に流す電流を二段階あげて電気粘性流体の粘性を増加させて、車輪の回転を抑制する。加速の場合も同様に、段階的に加速を行なうようにしても良い。
また、回転制御部123は、いわゆるフィードバック制御を行なうことで、車輪の回転速度が、予め指定された値、あるいは予め指定された範囲内の値となるよう車輪の回転を抑制または加速するようにしても良い。フィードバック制御については、公知技術であるため、詳細な説明は省略する。
出力部121は、一以上の第二のセンサ120bが検出したモータ122の電流値に応じて、警告を出力する。例えば、出力部121は、一以上の第二のセンサ120bが検出したモータ122の電流値が予め指定された閾値以上である場合に、警告を出力する。閾値が複数ある場合、出力部121は、電流値が閾値以上であると判断された閾値に応じた警告を出力しても良い。また、出力部121は、例えば、一以上の第二のセンサ120bが検出したモータ122の電流値が、予め指定された範囲内の値である場合に、予め指定された警告を出力する。予め指定された範囲が複数ある場合、出力部121は、電流値が満たす範囲に応じた警告を行なう指示を出力しても良い。なお、出力部121は、センサ120毎に警告を出力させても良く、複数のセンサ120が検出した電流値を統計処理した値(例えば平均値)に応じて、一の警告を出力させても良い。
出力部121が出力する警告はどのような警告であっても良い。ここでの警告の出力は、例えば、警告を示す画像や文字列の出力や、警告の音声や、警告音の出力や、警告を示すランプ等の点灯や点滅である。出力される警告の内容は、例えば、閾値以上である電流値を検出した第二のセンサ120b等に対応したものであっても良い。
ここでの警告とは、例えば、歩行器1000を利用しているユーザに対して与える警告である。警告は、例えば、歩行器1000に対して無理な負荷をかけていることに関する警告である。警告は、ユーザに対して注意を喚起するための警告であっても良い。
例えば、出力部121は、右側の前輪103に取り付けられた第二のセンサ120bが検出した電流値が閾値以上である場合に、「右側に無理な力がかかっています」等の音声出力や、文字列の表示を行なう。あるいは、右側の前輪103に異常があることを示すランプ等(図示せず)を点灯させても良い。
また、出力部121による警告の出力は、予め指定された送信先への警告の送信であってもよい。例えば、予め指定された一以上の送信先を指定するアドレス情報等が、図示しない格納部に予め格納されており、出力部121は、このアドレス情報等を用いて、警告を予め指定された一以上の送信先に送信する。ここでの送信は、例えば、電子メールによる送信や、ショートメッセージングサービスによる送信や、SNS等への投稿である。予め指定された送信先は、例えば、歩行器1000のユーザの介護人や、看護人、病院等の職員等である。この場合に送信される警告は、歩行器1000のユーザのユーザ識別子、例えば氏名等を含む警告であることが好ましい。
また、出力部121は、1以上のセンサ120が検出した床反力が、予め指定された条件を満たす場合に、上記と同様に、音声や警告音等の警告を出力するようにしても良い。また、この警告の出力は、上記と同様の警告の送信であってもよい。出力する警告は、例えば、歩行器1000に無理な力がかかっていることを示す警告や、歩行器1000にかかる力のバランスが崩れていることを示す警告等である。ここでの一以上のセンサ120は、例えば、一以上の第三のセンサ120cである。予め指定された条件は、例えば、後述する停止ブレーキ部124が車輪の回転を停止させる際に利用する条件と同様の条件が利用可能である。このように警告を出力することで、歩行器1000のユーザや、このユーザの介護者等の注意を喚起して、例えば、ユーザの転倒等を防ぐことができる。
出力部121は、モニタやスピーカーや通信手段等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部121は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
一以上の停止ブレーキ部124は、一以上の第三のセンサ120cが検出した床反力が、予め指定された条件を満たす場合に、車輪の回転を停止させる。停止ブレーキ部124の構成としては、上述したブレーキ部108と同様の構成のものが利用可能である。なお、一の車輪に取り付けられたブレーキ部108を、同じ車輪にとり付けられた停止ブレーキ部124として兼用してもよい。
予め指定された条件は、どのような条件であっても良い。予め指定された条件は、例えば、歩行器1000の利用に支障をきたす可能性があると判断される状況を判断するための条件である。予め指定された条件は、例えば、少なくとも1つの第三のセンサ120cが検出する床反力、即ち圧力が、予め指定された閾値以上である、という条件である。また、予め指定された条件は、2つの第三のセンサ120cが、左右の前輪103に対して取り付けられてる場合に、この2つの第三のセンサ120cが検出する床反力(圧力)が、予め指定された値以上異なる、という条件である。
なお、一の車輪に取り付けられた第三のセンサ120cが検出した床反力が、予め指定された条件を満たす場合に、歩行器1000の全ての停止ブレーキ部124が車輪の回転を停止させるようにしても良く、一部の停止ブレーキ部124(例えば、条件を満たすと判断された第三のセンサ120cが取り付けられた車輪の停止ブレーキ部124)だけが車輪の回転を停止させるようにしても良い。
なお、上記の歩行器1000において、回転制御部123の車輪の回転の抑制力が、車輪の回転を停止可能なものである場合、一の車輪に取り付けられた回転制御部123を、同じ車輪に取り付けられたブレーキ部108および停止ブレーキ部124としても用いるようにして良い。
なお、上述した回転操作受付部106とロック機構107との接続、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bとブレーキ部108との接続、第一のセンサ120aと回転制御部123との接続、第二のセンサ120bと出力部121との接続、および第三のセンサ120cと停止ブレーキ部124との接続は、それぞれ有線接続であっても良く、無線接続であっても良い。
また、ここでは図示しないが、歩行器1000には、一例として電力源として充電式のバッテリーが取り付けられているものとする。ただし、電力源はどのようなものであっても良い。
次に、歩行器1000の動作の一例について図4のフローチャートを用いて説明する。ここでは一例として、回転操作受付部106が受け付ける回転操作が、ロック解除の操作である場合について説明する。また、第一の移動用スイッチ109aと第二の移動用スイッチ109bとの両方がオンとなった状態で、ブレーキ部108が車輪にブレーキをかける場合について説明する。また、ここでは、回転制御部123が車輪の回転の抑制だけを行なう場合を例に挙げて説明する。
(ステップS100)一以上のブレーキ部108は、第一の移動用スイッチ109aがオンか否かを判断する。オンである場合、ステップS101に進み、オンでない場合、ステップS102に進む。
(ステップS101)一以上のブレーキ部108は、第二の移動用スイッチ109bがオンか否かを判断する。オンである場合、ステップS105に進み、オンでない場合、ステップS102に進む。
(ステップS102)一以上のブレーキ部108は、それぞれが取り付けられた車輪の回転を停止させる。即ち、車輪にブレーキをかける。また、モータ122が回転している場合、モータ122は回転を停止する。なお、既にブレーキがかけられている場合は、再度、ブレーキをかけることを省略しても良い。
(ステップS103)ロック機構107は、回転操作受付部106が、上フレーム2の回転のロックを解除する操作を受け付けたか否かを判断する。受け付けた場合、ステップS104に進み、受け付けていない場合、ステップS100に戻る。
(ステップS104)ロック機構107は、スライダ部材21のロックを解除する。そして、ステップS100に戻る。
(ステップS105)一以上のブレーキ部108は、それぞれが取り付けられている車輪の停止を解除する。即ち、車輪にかけていたブレーキを解除する。既に解除されている場合、この処理は省略しても良い。
(ステップS106)モータ122は回転を開始する。なお、既に回転している場合は、そのまま回転を続ける。
(ステップS107)回転制御部123は、第一のセンサ120aが、速度を検出したか否かを判断する。検出した場合、ステップS108に進み、検出していない場合、ステップS112に進む。
(ステップS108)回転制御部123は、ステップS107で検出された速度が、第二の閾値以上であるか否かを判断する。閾値以上である場合、ステップS110に進み、閾値以上でない場合、ステップS109に進む。回転制御部123が複数設けられている場合(例えば、複数の車輪に対して、それぞれ設けられている場合)、この判断は、一の回転制御部123が行なうようにしてもよい。かかることは、以下のステップS109においても同様である。
(ステップS109)回転制御部123は、ステップS107で検出された速度が、第一の閾値以上(ただし、第二の閾値>第一の閾値であるとする)であるか否かを判断する。閾値以上である場合、ステップS111に進み、閾値以上でない場合、ステップS112に進む。
(ステップS110)回転制御部123は、車輪に対して第二の抑制力を加える。例えば、複数の車輪に対して、それぞれ回転制御部123が設けられている場合、各回転制御部123が、車輪に対して第二の抑制力を加える。かかることは、以下のステップS111においても同様である。そして、ステップS112に進む。
(ステップS111)回転制御部123は、車輪に対して第一の抑制力(ただし、第二の抑止力>第一の抑止力であるとする)を加える。そして、ステップS112に進む。
(ステップS112)出力部121は、第二のセンサ120bが、モータ122にかかる電流値を検出したか否かを判断する。検出した場合、ステップS113に進み、検出していない場合、ステップS115に進む。
(ステップS113)出力部121は、ステップS112で検出された電流値が閾値以上であるか否かを判断する。閾値以上である場合、ステップS114に進み、閾値以上でない場合、ステップS115に進む。
(ステップS114)出力部121は、警告を出力する。出力部121は、例えば、予め指定された送信先に警告を送信してもよい。そして、ステップS115に進む。
(ステップS115)停止ブレーキ部124は、一以上の第三のセンサ120cが床反力を検出したか否かを判断する。複数の停止ブレーキ部124が設けられている場合(例えば、複数の車輪に対して、それぞれ設けられている場合)、この判断は、そのうちの一のの停止ブレーキ部124が行なっても良く、各停止ブレーキ部124が行なっても良い。検出した場合、ステップS116に進み、検出していない場合、ステップS100に戻る。
(ステップS116)停止ブレーキ部124は、検出した床反力が閾値以上であるか否かを判断する。閾値以上である場合、ステップS117に進み、閾値以上でない場合、ステップS100に戻る。なお、複数の第三のセンサ120cが床反力を検出した場合、検出した床反力が閾値以上のものがあるか否かを判断し、閾値以上のものがある場合、ステップS117に進み、ない場合、ステップS100に戻る。
(ステップS117)一以上の停止ブレーキ部124は、それぞれが取り付けられた車輪にブレーキをかける。そして、ステップS100に戻る。
なお、ステップS115からステップS117において、停止ブレーキ部124が閾値以上の床反力を検出した場合に、車輪にブレーキをかける代わりに(あるいは、これらのステップS115からステップS117による処理に加えて)、出力部121が、閾値以上の床反力を検出したか否かを判断し、検出した場合に、警告を出力する処理を行なうようにしてもよい。
なお、図4のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
以下、本実施の形態における歩行器1000の具体的な動作について説明する。ここでは、歩行器1000を用いて、ユーザが洋式トイレを利用する動作を例に挙げて説明する。また、ここでは、ハンドル部材22の左側に第一の移動用スイッチ109aが、また、右側に第二の移動用スイッチ109bが設けられており、これらがいずれも押している状態にのみオンとなるスイッチであるとする。
図5は、ユーザが歩行器1000を利用して洋式トイレの前に移動した状態を示す図(図5(a))、および歩行器1000を利用して洋式トイレの前で向きを変えた状態を示す図(図5(b))である。
図6は、ユーザが歩行器1000を利用して洋式トイレの便座に座った状態を示す図(図6(a))、および歩行器1000を利用して洋式トイレの便座から立ち上がる際の状態を示す図(図6(b))である。
まず、ユーザが、下フレーム1と上フレームとがともに前方方向に向けられた状態でロック機構111により水平方向の回転がロックされた歩行器1000の開放された後部から、歩行器1000の内側に移動する。そして、ハンドル部材22の第一の移動用スイッチ109aが設けられた部分を左手で握り、第二の移動用スイッチ109bが設けられた部分を右手で握ったとすると、握った力により、第一の移動用スイッチ109aと第二の移動用スイッチ109bの両方がオンとなるため、左右の後輪104に取り付けられたブレーキ部108によるブレーキが解除され、左右の後輪104にそれぞれ取り付けられたモータ122が回転を始める。ユーザが、ハンドル部材22を握った状態で歩行器1000を押すと、歩行器1000が移動を開始する。モータ122は、左右の後輪104を回転させることで、歩行器1000の移動を支援する。
ユーザが歩行器1000を利用してトイレのブースまで移動し、図5(a)に示すように、歩行器1000の下フレーム1の前方が、洋式トイレ500の前方下部の空間に位置するように歩行器1000を移動させた状態で、ユーザが右手を第二の移動用スイッチ109bから離すと、第一の移動用スイッチ109aと第二の移動用スイッチ109bの両方がオンとならないため、左右に設けられたブレーキ部108は、左右の後輪にブレーキをかける。
次に、ユーザが、ハンドル部材22に設けられた回転操作受付部106であるスイッチを押すと、回転操作受付部106は、回転のロックを解除する操作を受け付ける。回転操作受付部106がロックを解除する操作を受け付けると、ロック機構107は回転のロックを解除する。具体的には、スライダ部材21のロックを解除する。例えば、ロック機構107は、図7に示したようなロックピンを備えた構成を有しているものとする。ここでは、スイッチを押した状態においては、ロック機構107はロックを解除し、スイッチが押されていない場合は、ロック可能な状態になるものとすると、回転操作受付部106であるスイッチを押した状態でハンドル部材22を左、または右に移動させると、ロックが解除されているため、スライダ部材21が、レール部材11に対して移動して、上フレーム2が回転する。ユーザが回転操作受付部106であるスイッチを押すことをやめても、スライダ部材21の特定の位置(例えば、スライダ部材21の内側に設けられた凹部(図示せず))が、ロック機構107に対応した位置(例えば、ロック機構107が有する付勢されたロックピンに対向する位置)に移動するまでは、上フレーム2を下フレーム1上を回転させることができる。ユーザが上フレーム2の回転にあわせて、体を回転させることで、ユーザは上フレーム2とともに、体の向きを変更することができる。下フレーム1の前方方向と、上フレーム2の前方方向とがなす角度が180度となった時点で、スライダ部材21の特定の位置が、ロック機構107に対応した位置に配置されることとなり、ロック機構107によりスライダ部材21の移動がロックされ、上フレーム2が回転移動できなくなる。この時点で、歩行器1000は、図5(b)に示すように、上フレーム2の前方方向が、下フレーム1の前方方向に対して180度異なる向きとなり、上フレーム2の開放された後部が、洋式トイレ500側に配置されることとなる。また、ユーザは、上フレーム2とともに回転するため、ユーザの体の向きは、洋式トイレ500に背を向けた向きとなる。この状態で、ユーザが腰を下ろすと、図6(a)に示すように、ユーザは、洋式トイレ500の便座に着座することができる。上フレーム2の後部は開放されているため、着座の際の邪魔になることがない。また、下フレーム1の前方が、洋式トイレ500の前方下部の空間に入る高さであるため、歩行器1000を洋式トイレに十分に近づけた状態で、上フレーム2を回転させることが可能となり、ユーザが便座に着座する際に、下フレーム1の前方が、着座の邪魔にならないようにすることができる。
また、ユーザが便座から立ち上がる際には、左右に設けられた取手24をつかんで起き上がることで、歩行器1000を支えとして利用して容易に立ち上がることができる。
次に、歩行器1000を用いて、ユーザが移動している場合について説明する。なお、ここでは、後輪104に取り付けられたモータ122が電流を変化することでフィードバック制御を行なうモータであるとする。また、ここでは、第一のセンサ120aと、第二のセンサ120bとが、左側の後輪104に対して取り付けられているものとする。
第一のセンサ120aは、順次、この第一のセンサ120aが取り付けられた左側の後輪104の回転速度を検出して、歩行器1000の速度を取得する。そして、左側の後輪104に取り付けられた回転制御部123は、第一のセンサ120aが検出した速度が、予め指定された第二の閾値以上であるか否かを判断する。そして、第二の閾値以上である場合、左右の後輪104にそれぞれ取り付けられた回転制御部123は、それぞれが取り付けられた後輪104に対して、予め指定された大きさの第二の抑制力を与えて、車輪の回転を抑えて、歩行器1000の速度を低下させる。例えば、回転制御部123が、粘性ブレーキである場合、流体に、第二の電流値の電流を流すことで、電流値に応じた力で、車輪の回転を抑える。第二の抑制力を与える。また、第二の閾値以上でない場合、さらに、回転制御部123は、速度が第一の閾値(ただし、第二の閾値>第一の閾値であるとする)以上であるか否かを判断し、第一の閾値以上であれば、左右の後輪104に取り付けられた回転制御部123は、それぞれが取り付けられた後輪104に対して、予め指定された大きさの第一の抑制力(ただし、第二の抑制力>第一の抑制力とする)を与えて、車輪の回転を抑えて、歩行器1000の速度を低下させる。例えば、回転制御部123が、粘性ブレーキである場合、流体に、第一の電流値(ただし、第二の電流値>第一の電流値であるとする)の電流を流すことで、電流値に応じた力で、車輪の回転を抑える。このようにして、歩行器1000の速度の増加に応じて段階的に増加する抑制力を車輪に与えることで、歩行器1000がユーザの歩行を補助する上で適切ではない速度で移動することを効率的に防ぐことが可能となる。
また、例えば、上記のように、ブレーキ部108によるブレーキを解除して、モータ122が回転している状態で、ユーザが、力を加えて無理に歩行器1000を停止させようとしたとすると、モータ122はフィードバック制御しているため、モータ122に流れる電流が増加する。このため、第二のセンサ120bが検出するモータの電流値が増加する。そして、出力部121が、第二のセンサ120bが検出した電流値が予め指定された閾値以上であるか否かを判断し、その判断の結果、閾値以上であると判断されると、出力部121は、予め指定された警告を出力する。ここでは、例えば、「無理な力を加えないで下さい」等の音声を出力する。
また、出力部121は、予め指定された文字列と、歩行器1000のユーザの氏名と、現在の時刻等とを有するテキスト情報を、メール等で、予め指定された送信先に送信する。例えば、送信されるテキスト情報は、例えば、「日本一郎さんが、10時50分に、歩行器に対して不適切な力を加えたことを通知します。」等である。また、予め指定された送信先は、ユーザの介護人であり、予め図示しない格納部等に格納されているこの介護人のメールアドレスが上記のメール送信に利用されるものとする。これにより、介護人に、歩行器1000の利用に関する警告を通知することができる。
また、左右の前輪103の左右の脚部材12の前方の端部との間に設けられた2つの第三のセンサ120cが順次、床反力を検出する。ここでは、第三のセンサ120cが検出する圧力を床反力とする。そして、左右の後輪104に設けられた停止ブレーキ部124の一方は、各第三のセンサ120cが検出した床反力が、それぞれ、予め指定された条件を満たすか否かを判断する。ここでは、左右の第三のセンサ120cが検出する床反力の差の絶対値が、予め指定された閾値以上であるか否かを判断する。そして、閾値以上である場合、左右の停止ブレーキ部124は、それぞれが取り付けられた後輪104に対してブレーキをかける。これにより、例えば、ユーザが左右の前輪103にかける力が、アンバランスになった場合に、歩行器1000を停止させることで、歩行器1000の転倒等を未然に防ぐことができる。なお、出力部121が、さらに、予め指定された閾値以上の床反力を各第三のセンサ120cが検出したか否かを判断し、検出した場合に、警告を出力する処理を行なうようにしてもよい。この場合の予め指定された閾値は、停止ブレーキ部124が利用する閾値よりも小さい値であることが好ましい。これにより、停止ブレーキ124がブレーキをかけるよりも前の状態で、警告を出力することが可能となる。
以上、本実施の形態によれば、上フレームを下フレームに対して水平に回転させることができ、狭い空間等で容易に方向転換を行なって所望の座面に着座することができる。
なお、本実施の形態の歩行器1000を用いることで、ユーザは姿勢を保持した状態で転回等を行なうことができるため、本実施の形態の歩行器1000は、例えば、高齢者等のユーザが、商品棚から商品等を取ったりおいたりする際の作業を行なう際の補助用のカートとしても利用可能である。
なお、本実施の形態においては、上フレーム2を下フレーム1上において下フレーム1に対して水平に回転させるための機構として、下フレーム1に設けられたレール部材11と上フレーム2に設けられたスライダ部材21とを移動可能に組合わせた回転機構について説明したが、本発明においては、上フレーム2を下フレーム1上において下フレーム1に対して回転させるための回転機構としてどのような回転機構を備えていても良い。例えば、図示していないが、下フレーム1の上部に設けられた上述したスライダ部材21と同様のスライダ部材と、上フレーム2の下部に設けられた上述したレール部材11と同様のレール部材とを移動可能に組合わせた回転機構を備えるようにしてもよい。また、上記のローラ部材112の変わりに、ベアリング等を用いるようにしてもよい。ただし、どのような回転機構においても、下フレーム1に設けられる部分が、上フレーム2を回転させる前と、180度回転させた後とでユーザの歩行や着座等の動作を妨げないよう、下フレーム1の前方側と、後方側との両側が、開放されている構造を有していることが好ましい。また、回転機構がどのような構成であったとしても、回転の際に、歩行器1000を利用するユーザが立つことができる領域が確保されるよう上フレーム2を下フレーム1に対して回転させることが可能な構造であることが好ましい。例えば、下フレーム1を上方から見た中心と、上フレーム2を上方からみた中心とが略同一位置に位置することが好ましい。
なお、本発明においては、ロック機構107、ブレーキ部108、回転制御部123、出力部121、停止ブレーキ部124等の構成要素が行なう処理のうちの一部については、図示しない制御部が行なうようにしても良い。例えば、上記において説明した回転操作受付部106が受け付けた操作に応じたロック機構107の動作の制御、第一の移動用スイッチ109aおよび第二の移動用スイッチ109bが受け付けた操作に応じたブレーキ部108の制御、第一のセンサ120aの検出結果に応じた回転制御部123の制御、第二のセンサ120bの検出結果に応じた出力部121の制御、および第三のセンサ120cの検出結果に応じた停止ブレーキ部124の制御等を、それぞれの構成要素が行なう代わりに、図示しない制御部等が行なうようにしても良い。ここでの制御は、制御のための判断処理等も含むと考えてよい。なお、制御部は、例えば、論理回路等の専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、MPU等のプログラム実行部がプログラムを実行することによって実現されてもよい。このように、本発明においては、ロック機構107や、ブレーキ部108や、回転制御部123や、出力部121や、停止ブレーキ部124等の構成要素が、ユーザの操作やセンサ120等の検出結果に応じて、結果的に上述したような動作を行なうことができればよい。
なお、上記実施の形態においては、上フレーム2の後方が開放されている場合について説明したが、本発明においては、上フレーム2の後方を開放可能な構成としても良い。例えば、上記実施の形態1に示した上フレーム2に代えて、後方が開放しており、下フレーム1に対して水平に回転可能となるよう下フレーム1の上方に設けられた上フレーム2を用いるようにしてもよい。
例えば、上フレーム2を下フレーム1に対して回転させるための機構を構成する上フレーム2のスライダ部材21の平面形状を、切り欠き部のない環状とし、その後方部分が開閉可能な構造としても良い。
図8は、後方部分を開閉可能とした環状のスライダ部材21の一例を説明するための、スライダ部材21の後方部分を閉じた状態の後面図(図8(a))、および後方部分を上方向に開いた状態を示す後面図(図8(b))である。なお、ここでは、レール部材11等は省略している。
スライダ部材21の開閉可能な後方部分21aは、例えば、上記実施の形態1において示した一部を切り欠いた環状のスライダ部材21の、この切り欠いた部分に相当する位置に配置される部分、あるいは、その一部分である。この後方部分21aの幅は、人が出入り可能な幅であることが好ましい。
例えば、図8(a)に示すように、環状のスライダ21の後方部分21aを、スライダ21のこの後方部分21aの一端と隣接する部分21bに、蝶番21cや、図示しない回転軸等によって、回動可能となるよう取り付けられるようにすることで、この後方部分を、上方向(図8(b))や下方向に跳ね上げ可能となるようにしても良い。あるいは後方に開く構造としても良い。
このような構造とすることにより、上記実施の形態と同様に、所望の座面の前で上フレームを回転させて容易に方向転換を行ない、歩行器1000の上フレーム2の後方部分21aを開いて、上フレーム2の開放された後方から容易に座面に着座することができる。また、例えば、移動時等には、上フレーム2の後方部分21aを閉じることで、ユーザが歩行する際等に、後方をガードしたり、ユーザが候補に倒れないよう支持したりすることができる。
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをMPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、格納部(例えば、ハードディスクやメモリ等の記録媒体)にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。