JP6569194B2 - 耐食性に優れた表面処理溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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(1)ポリビニルフェノール誘導体などの有機樹脂と酸成分とエポキシ化合物とを反応させて得られる被覆剤、シランカップリング剤、およびバナジウム化合物等を配合した処理液から皮膜を形成する技術(特許文献1〜4)
(2)水性樹脂とチオカルボニル基とバナジン酸化合物とリン酸を含む皮膜を形成する技術(特許文献5)
(3)Tiなどの金属化合物と、フッ化物、リン酸化合物等の無機酸および有機酸とを含む処理液から皮膜を形成する技術(特許文献6〜12)
(4)Ce、La、Y等の希土類元素とTi、Zr元素の複合皮膜を形成し、その皮膜中でめっき界面側に酸化物層、表面側に水酸化物層を濃化させる技術(特許文献13)や、CeとSi酸化物の複合皮膜を形成する技術(特許文献14)
(6)特定のインヒビター成分とシリカ/ジルコニウム化合物からなる複合皮膜を形成する技術(特許文献17)
(7)水溶性ジルコニウム化合物と、テトラアルコキシシランと、エポキシ基を有する化合物と、キレート剤と、バナジン酸と、所定の金属化合物とからなる複合皮膜を形成する技術(特許文献18)
(8)特定のシラン化合物と、炭酸ジルコニウム化合物と、バナジン酸化合物と、硝酸化合物からなる複合皮膜を形成する技術(特許文献19)
上記(5)の技術では、耐食性を確保するために、上層に樹脂皮膜を用いているため、上記(1)、(2)の技術と同様の問題がある。
以上のように、現在までに提案されているクロムフリー処理鋼板では、平板部耐食性と湿潤環境下での耐変色性とを両立できないことが判った。
(i)シラン化合物(A)が表面処理液の全固形分中で30〜70質量%
(ii)炭酸ジルコニウム化合物(B)のZrO2換算質量とシラン化合物(A)の質量の比(B/A)が0.3〜2.0
(iii)バナジン酸化合物(C)のV換算質量とシラン化合物(A)の質量の比(C/A)が0.010〜0.15
溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層の表層には、厚さが0.5nm以上10.0nm未満のAl酸化物層が形成されている必要がある。溶融亜鉛めっきでは、めっき浴中に微量Alが含まれるため、亜鉛めっき層中には微量のAlが含有されることになるが、亜鉛めっき層中に含有されたAlは酸素との強い親和性を示すため、亜鉛めっき表層にAl酸化物層が形成される。
Al酸化物層の厚さは、亜鉛めっき層のAl含有量に影響されるだけでなく、溶融亜鉛めっき鋼板を大気中で放置あるいは数百℃で加熱することで厚くすることができるので、これらの条件(大気中で放置する条件、加熱条件など)を調整することにより、厚めに調整することができる。一方、アルカリ脱脂による化学的なエッチングや表面の研削などにより、Al酸化物層の厚さを薄くすることもできる。したがって、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板に表面処理の前処理として施されるアルカリ脱脂において、アルカリ脱脂液の濃度や処理時間を調整することで、Al酸化物層の厚さを調整することができる。
Al酸化物層の厚さは、断面TEM観察により測定することができる。本発明では、無作為に選択された5箇所の測定値の平均値をもって、Al酸化物層の厚さとする。
本発明で用いる表面処理皮膜形成用の表面処理液は、グリシジル基を有するシランカップリング剤(a1)、テトラアルコキシシラン(a2)およびホスホン酸(a3)から得られる、加水分解性基を有するシラン化合物(A)と、炭酸ジルコニウム化合物(B)と、バナジン酸化合物(C)と、水を含有する。なお、この表面処理液は、6価クロムなどのクロム化合物(但し、不可避的不純物として含まれるクロム化合物を除く。)を含有しない。
シラン化合物(A)は、Si元素に直接結合する加水分解性基を有するシラン化合物であって、加水分解性基は水分と反応することによりシラノール基を形成する。シラン化合物(A)は、Si元素に結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、Si元素に結合する基の一部が加水分解性基であるものでもよい。
ホスホン酸(a3)としては、ヒドロキシエチレンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、エチレジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
加水分解性基を有するシラン化合物(A)は、シランカップリング剤(a1)とテトラアルコキシシラン(a2)との低縮合物と、ホスホン酸(a3)とを、反応温度1〜80℃で10分間〜20時間程度反応させ、オートクレープ処理を行うことなどにより得ることができる。
加水分解性基を有するシラン化合物(A)は、グリシジル基を有するシランカップリング剤(a1)と、テトラアルコキシシラン(a2)と、ホスホン酸(a3)とを反応させることにより、シランカップリング剤(a1)と、テトラアルコキシシラン(a2)が、水とホスホン酸(a3)により加水分解されて配位するものと考えられる。この加水分解反応およびホスホン酸(a3)による配位が同時に起こることにより得られたものであり、室温域での安定性が極めて高く、長期の保存に耐えるシラン化合物を生成する。
表面処理液中でのシラン化合物(A)の含有量は、表面処理液の全固形分中で30〜70質量%とする。シラン化合物(A)の含有量が30質量%未満では耐食性が確保できず、一方、含有量が70質量%を超えると却って耐食性が低下する。
シラン化合物(A)は、炭酸ジルコニウム化合物(B)と混合することにより、一旦乾燥すると再度水には溶解しないバリアー的効果を有する。
バナジン酸化合物(C)としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、バナジルアセチルアセトネートなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
潤滑剤の含有量は、表面処理液の全固形分中で1〜10質量%が好ましく、3〜7質量%がより好ましい。潤滑剤の含有量を1質量%以上とすることで潤滑性能の向上効果が得られ、10質量%以下であれば亜鉛系めっき鋼板の耐食性が低下することはない。
表面処理液は、上記した成分を脱イオン水、蒸留水などの水中で混合することにより得られる。表面処理液の固形分濃度は適宜選択すればよい。また、表面処理液には、必要に応じてアルコール、ケトン、セロソルブ系の水溶性溶剤、消泡剤、防菌防カビ剤、着色剤などを添加してもよい。ただし、これら(すなわち、成分(A)〜(C)と水と潤滑剤以外の添加成分)は本発明で得られる性能を損なわない程度に添加することが重要であり、添加量は表面処理液の全固形分中で5質量%未満とすることが好ましい。
表面処理液を溶融亜鉛めっき鋼板の表面に塗布する方法としては、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー塗布法などの任意の方法を採ることができる。処理される溶融亜鉛めっき鋼板の形状等によって適宜最適な方法を選択すればよい。例えば、処理される溶融亜鉛めっき鋼板がシート状であれば、ロールコート法やバーコート法、或いは、表面処理液を溶融亜鉛めっき鋼板表面にスプレーした後、ロール絞りや気体を高圧で吹きかけて塗布量を調整するスプレー塗布法を用いるのが適当である。また、溶融亜鉛めっき鋼板が成型品の場合は、表面処理液に浸漬して引き上げ、必要に応じて圧縮エアーで余分な表面処理液を吹き飛ばして塗布量を調整する方法などが適当である。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は種々の用途に適用することができ、例えば、建築、電気、自動車等の各種分野で使用される材料などに好適に用いられる。
下記の市販の溶融亜鉛めっき鋼板を供試板として用いた。
(i)溶融亜鉛めっき鋼板(GI):板厚0.8mm、めっき目付量60/60(g/m2)
(ii)合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA):板厚0.8mm、めっき目付量40/40(g/m2)
なお、めっき目付量は鋼板両面の各めっき付着量であり、例えば、めっき目付量60/60(g/m2)とは、鋼板の両面のそれぞれに60g/m2のめっき層を有することを意味する。
なお、めっき表層のAl酸化物層の厚さは、下記するように前処理のアルカリ脱脂液濃度および処理時間を調整することにより調整した。
上記供試板(溶融亜鉛めっき鋼板)の表面にアルカリ脱脂(日本パーカライジング(株)製「ファインクリーナーE6406」を使用説明書に基づいて処理)を施し、表面の油分や汚れを取り除くとともに、Al酸化物層の厚さを調整した。具体的には、めっき表層にAl酸化物層が形成されためっき鋼板をアルカリ脱脂するに当たり、アルカリ脱脂液濃度が高いほど、また処理時間が長いほど、Al酸化物層の厚さは小さくなるので、表3の条件でアルカリ脱脂を行い、Al酸化物層の厚さを調整した。次に、水道水で水洗して供試板の表面が水で100%濡れることを確認した後、純水(脱イオン水)を流しかけ、次いで、100℃雰囲気のオーブンで水分を乾燥し、これを試験板として使用した。
表面処理液用の化合物としては、以下のものを用いた。
(3-1)シラン化合物(A)の製造
・製造例1(シラン化合物A1)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランと脱イオン水とを混合し、アンモニア水を滴下し、シラン化合物を沈殿させた。脱イオン水で洗浄後、ホスホン酸としてニトリロトリス(メチレンスルホン酸)を加えてかき混ぜ、シラン化合物A1を得た。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの混合物を、脱イオン水にホスホン酸としてヒドリキシエチレンジホスホン酸を混合した混合液中に、20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し、シラン化合物A2を得た。
・製造例3(シラン化合物A3)
製造例2のシラン化合物A2を、さらに80℃で1時間熟成し、シラン化合物A3を得た。
B1:炭酸ジルコニウムアンモニウム
B2:炭酸ジルコニウムナトリウム
(3-3)バナジン酸化合物(C)
C1:メタバナジン酸アンモニウム
C2:バナジルアセチルアセトネート(V:19.2質量%)
上記化合物を表1および表2に示す割合にて水中で混合し、固形分が15質量%の表面処理液を得た。
上記の表面処理液をバーコート処理またはスプレー処理により各試験板に塗布し、その後、水洗することなく、そのまま熱風炉で乾燥させ、皮膜を形成させた。乾燥条件は、炉雰囲気温度と炉に入れている時間により調節した。
バーコート処理とスプレー処理は、以下のように行った。
・バーコート処理:表面処理液を試験板に滴下して、#3〜5バーコーターで処理した。使用したバーコーターの番手と表面処理液の固形分濃度を変化させることにより、所定の皮膜付着量となるように調整した。
・スプレー処理:表面処理液を試験板にスプレー処理し、ロールコーターにて皮膜付着量の調整を行った。ロールコーターの条件と表面処理液の固形分濃度を変化させることにより、所定の皮膜付着量となるように調整した。
(6-1)耐食性
上記表面処理皮膜を形成した試験板から70mm×150mmのサイズの試験片を切り出し、この試験片の裏面と端部をビニールテープでシールして、JIS−Z−2371−2000に準拠した塩水噴霧試験(SST)を実施した。塩水噴霧試験における白錆発生面積率が5%となるまでの時間を測定し、耐食性を以下のように評価した。
◎:白錆発生面積率が5%となるまでの時間が240時間以上
○:白錆発生面積率が5%となるまでの時間が120時間以上、240時間未満
△:白錆発生面積率が5%となるまでの時間が72時間以上、120時間未満
×:白錆発生面積率が5%となるまでの時間が72時間未満
上記表面処理皮膜を形成した試験板から70mm×150mmのサイズの試験片を2枚切り出し、対象面を重ね合わせてトルク強度20kgfで締め付けたものを、50℃、98%RHの恒温槽に4週間保持し、保持前後の試験片の色調を評価した。保持前後の試験片の色調を分光色彩計で測定し、その色調をLab表色系のL値で表し、保持前後のL値の差ΔLで耐変色性を以下のように評価した。
◎:ΔL≧−2
○:−2>ΔL≧−5
△:−5>ΔL≧−10
×:ΔL<−10
試験板の断面をTEMで観察してAl酸化物層の厚さを測定し、無作為に選択された5箇所の測定値の平均値をもって、Al酸化物層の厚さとした。
本発明条件を満足しない比較例は、耐食性、湿潤環境下での耐変色性のいずれかが不十分である。これに対して本発明例は、表面処理皮膜中にクロム化合物を含有することなく、優れた耐食性および湿潤環境下での耐変色性が得られている。
Claims (2)
- 亜鉛めっき層の表層に厚さが0.5nm以上10.0nm未満のAl酸化物層が形成された溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、グリシジル基を有するシランカップリング剤(a1)とテトラアルコキシシラン(a2)との低縮合物と、ホスホン酸(a3)とを反応させることにより得られる、加水分解性基を有する縮合度が2〜30のシラン化合物(A)と、炭酸ジルコニウム化合物(B)と、バナジン酸化合物(C)と、水を含有し、下記(i)〜(iii)の条件を満足する表面処理液(但し、硝酸化合物を含有する表面処理液と、Ti、Al、Znの中から選ばれる少なくとも1種を含有する金属化合物を含有する表面処理液を除く。)を塗布し、乾燥することにより形成された、片面当たりの付着量が100〜800mg/m2の表面処理皮膜を有することを特徴とする表面処理溶融亜鉛めっき鋼板。
(i)シラン化合物(A)が表面処理液の全固形分中で30〜70質量%
(ii)炭酸ジルコニウム化合物(B)のZrO2換算質量とシラン化合物(A)の質量の比(B/A)が0.3〜2.0
(iii)バナジン酸化合物(C)のV換算質量とシラン化合物(A)の質量の比(C/A)が0.010〜0.15 - 亜鉛めっき層の表層に厚さが0.5nm以上10.0nm未満のAl酸化物層が形成された溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、グリシジル基を有するシランカップリング剤(a1)とテトラアルコキシシラン(a2)との低縮合物と、ホスホン酸(a3)とを反応させることにより得られる、加水分解性基を有する縮合度が2〜30のシラン化合物(A)と、炭酸ジルコニウム化合物(B)と、バナジン酸化合物(C)と、水を含有し、下記(i)〜(iii)の条件を満足する表面処理液(但し、硝酸化合物を含有する表面処理液と、Ti、Al、Znの中から選ばれる少なくとも1種を含有する金属化合物を含有する表面処理液を除く。)を塗布し、乾燥することにより、片面当たりの付着量が100〜800mg/m 2 の表面処理皮膜を形成することを特徴とする表面処理溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(i)シラン化合物(A)が表面処理液の全固形分中で30〜70質量%
(ii)炭酸ジルコニウム化合物(B)のZrO 2 換算質量とシラン化合物(A)の質量の比(B/A)が0.3〜2.0
(iii)バナジン酸化合物(C)のV換算質量とシラン化合物(A)の質量の比(C/A)が0.010〜0.15
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