JP6565394B2 - 樹脂組成物の製造方法及び成型品の製造方法 - Google Patents
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Description
それらの樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸などが挙げられ、天然物から製造可能である上に、耐熱性に優れ、色相、機械強度のバランスが取れたプラスチックである。
しかし、相溶化剤は原料ポリマーに対応したものを選択する必要があるところ、微細相分離構造を形成させ、所望の特性を有するポリマーアロイを得ることができる相溶化剤の選択は極めて困難であり、いまだに良好な相溶化剤が見出されていないポリマーの組み合わせもある。
また、特許文献2には、常温常圧で液体の溶媒を高温高圧状態の流体に変えて非相溶な2種以上のポリマーを相溶化させ、次いで急激に圧力を低下させ溶媒を気化させて100nm以下の微細相分離構造を持つポリマーアロイを製造する方法が開示されている。
しかしながら、この製造方法によっても再度熱成型等の過酷な熱処理や混練を行った場合は微細相分離構造が破壊されてしまうことがあり、微細相分離構造を有するポリマーアロイを活用するためには不充分であった。
本発明のポリマーアロイに用いられる樹脂(A)とフッ素樹脂(B)の組み合わせとしては、お互いに非相溶又は相溶性に乏しい樹脂であれば特に限定されない。中でもポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリグリコール酸樹脂などの熱分解しやすい樹脂と耐熱性の高いフッ素樹脂との組み合わせが好適な例として挙げられる。
樹脂(A)としては、適宜変更することが可能であるが、ポリエステル樹脂であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂は、開環重合性モノマーを重合して得られたものであることが好ましい。また、樹脂(A)としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びこれらの共重合体から選ばれる1種類以上であるものを好適に用いることができる。以下詳細を説明する。
本実施形態で用いられる開環重合性モノマーは、エステル結合を環内に有するものが好ましい。このような、開環重合性モノマーとしては、例えば、環状エステル、環状カーボネートなどが挙げられる。
R−C*−H(−OH)(−COOH) 一般式(1)
(一般式(1)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、一般式(1)において、「*」は、不斉炭素を表す。)
本実施形態において、得られるポリマーの分子量を制御するために、開環重合開始剤を加えてもよい。即ち、開始剤量の調整によりポリマーの高分子量化が可能である。開環重合開始剤としては、公知のものが使用でき、アルコール系であれば例えば脂肪族アルコールのモノ、ジ、又は多価アルコールのいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれであっても構わない。
開環重合開始剤としては、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジアルコール;グリセロール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、エリスリトール、トリエタノールアミン等の多価アルコール;及び乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
また、開環重合に際しては、必要に応じてその他添加物を添加してもよい。添加剤の例としては、界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、無機粒子、各種フィラー、離型剤、可塑剤、その他類似のものが挙げられる。必要に応じて重合反応後に重合停止剤(安息香酸、塩酸、燐酸、メタリン酸、酢酸、乳酸等)を用いてもよい。
フッ素樹脂(B)としては、公知のものを用いることができるが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(PFOEA)、ポリクロロトリフロオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。
フッ素樹脂(B)は、パーフルオロアルキル基を有することが好ましく、また上記の中でもポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることが好ましい。
アロイ化する際には、必要に応じて相溶化剤を添加してもよい。相溶化剤としては、ポリマーアロイを形成させたい各樹脂にそれぞれ相溶することができるセグメントが存在するオリゴマー又はポリマーが挙げられる。上記相溶化剤がポリマーであるときは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマーのいずれでもよい。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
続いて樹脂組成物の製造方法について図を用いて説明する。図1は、温度と圧力に対する物質の状態を示す相図である。図2は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。
本実施形態における「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、(3)のいずれかの領域に存在するときの状態を意味する。
上記クロロフルオロカーボンとしては、例えば、クロロジフルオロメタン、ジクロロトリフルオロエタン等が挙げられる。
上記低分子量アルカンとしては、例えば、n−ブタン、プロパン、エタン等が挙げられる。
これらの中でも二酸化炭素が安価で、安全性が高いため好適であり、特に超臨界二酸化炭素を用いることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物を製造する方法は、上記圧縮性流体を加熱及び加圧して高温高圧流体又は超臨界流体とし、この状態で上記材料を混合する工程を行う。
上記高温高圧流体又は超臨界流体の好ましい温度は、40℃〜180℃であり、さらに好ましくは60℃〜150℃である。上記高温高圧流体又は超臨界流体の温度が40℃未満であると、得られるポリマーアロイの微小相分離構造の形成が不充分となることがあり、180℃を超えると樹脂が分解、着色、強度低下などの問題を起こすことがある。
アロイ化は、特に制限されるものではなく、適宜変更が可能であり、また公知の方法を用いることができる。本実施形態においては、上記の圧縮性流体中で、前記樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)の大気圧下での融点よりも低い温度で行う。
本実施形態では、例えば、目的とする製品の形に樹脂(A)を成型し、これとフッ素樹脂(B)を例えば耐圧容器に入れ、圧縮性流体を導入しアロイ化する方法や、上記の材料を反応装置に導入しアロイ化する方法等が挙げられる。なお、反応装置としては、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、特開2014−95067に開示されるような装置を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)を用いて相転移現象を観測したときに、少なくとも、用いた2種類以上の樹脂のうちいずれかの樹脂についての相転移現象が消失するか、又は、それぞれの樹脂の相転移現象の起こる温度とは異なる温度において相転移現象が観測される。これは、ポリマーアロイが超微小相分離構造をとっていることを示すものである。
また、本実施形態では、樹脂組成物の表面の水接触角が85°以上であることが好ましい。これにより、撥水性の機能発現を向上させることができ、品質が良好な樹脂組成物を提供することができる。
本発明の樹脂組成物は、撥水性を有するシートやフィルム、繊維など各種用途に広く用いることができる。
また、本発明の樹脂組成物を用いて製造される成型品も本発明の1つである。本発明の樹脂組成物を用いてなる成型品は、公知の成形手段、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形等の成形手段を用いて作製することができる。
なお、本実施形態において、成型品とは、成形されたものを示し、単体としての成型品のみでなく、トレー本体のような成型品を有する部品や、取っ手が取り付けられたトレーのような成型品も含まれる。
2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(ダイキン工業社製、商品名R1820)を100重量部、AIBN(和光純薬社製、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.25重量部を耐圧容器に入れ、これに二酸化炭素を加圧ポンプで供給し、30MPa、80℃に調節しながら、40時間反応を行った。つぎに0℃まで温度を下げた後、背圧弁を使用して圧力を常圧まで下げ、白色のフッ素樹脂(PFOEA)を得た。融点は72.5℃、GPC測定(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量は57600であった。
ポリ乳酸ペレット(融点176℃、重量平均分子量206000)を加熱成型器で190℃、3分間、1.5MPaでヒートプレスを行い、ポリ乳酸シートを作製した。得られたポリ乳酸シート100重量部とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン工業社製、商品名ルブロンL2、融点250℃以上)1重量部を耐圧容器に入れて、80℃、30MPaになるように二酸化炭素を導入し、30分間アロイ化処理を行った。
得られたポリ乳酸シートについて水接触角測定を行った結果、水接触角は90.1℃であった。またSEM−EDS装置を用いた測定によるフッ素原子のマッピング結果を確認したところ、図3(a)に示されるようになり、フッ素樹脂(B)が微分散されていることを確認した。
また、XPS装置によるフッ素樹脂の深さ方向に対する濃度変化を測定したところ、バルク表面からバルク内部にかけてフッ素樹脂濃度が変化する傾斜構造を有することが確認された。さらに最表面層にはフッ素樹脂の処方量(1重量%)より高濃度でフッ素樹脂が分散されていた。結果を図4に示す(測定方法は後述する)。
実施例1において、使用するフッ素樹脂、その添加量、アロイ化条件(温度、圧力、時間)を下記表1のように変更する以外は、実施例1と同様とした。
実施例17におけるPFOEAの傾斜構造の測定結果を図5に示す。最表面層にはフッ素樹脂の処方量(1重量%)より高濃度でフッ素樹脂が分散されていることがわかる。
実施例1のポリ乳酸(融点176℃)100重量部とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(融点250℃以上)10重量部を卓上型二軸混練機(HAAKE社製)を使用して、190℃、40rpmで2回溶融混練を行った。得られた混練ストランドをペレタイズしたのち、加熱成型器で190℃、3分間、1.5MPaでヒートプレスを行い、PTFEを混練したポリ乳酸シートを作製した。
得られたポリ乳酸シートについて、水接触角を測定した。結果を表2に示す。またSEM−EDS装置を用いた測定によるフッ素原子のマッピング結果を確認したところ、図3(b)に示されるようになり、フッ素樹脂(B)は微分散されていなかった。
また、XPS装置によるフッ素樹脂の深さ方向に対する濃度変化を測定したところ、不均一で無秩序な結果となり、傾斜構造は認められなかった。
比較例1において、使用するフッ素樹脂、その添加量、溶融混練条件(温度、回転数)、シート作製条件(温度、時間)を下記表2のように変更する以外は、比較例1と同様とした。
上記実施例、比較例で得られたポリ乳酸シート及びポリグリコール酸シートについて以下の測定及び評価を行った。
水接触角の測定は以下のようにして行った。
自動接触角計CA−W型(協和界面科学社製)を使用し、ポリ乳酸シート及びポリグリコール酸シート上にオートディスペンサー(同社製AD−31)で水滴を10個形成し、それぞれの接触角を測定し、その平均値を算出した。
得られたポリ乳酸シート及びポリグリコール酸シートにおけるフッ素樹脂(B)のドメインサイズの測定は以下のようにして行った。
SEM−EDS装置(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名S−4200)を用いて撮影した10000倍率のSEM画像についてフッ素原子のマッピングを行い、その中から任意に取り出した100個の分散ドメイン径について平均を算出した。このとき、500倍率のSEM−EDS画像についても粗大な分散ドメインがないことを確認する。もし500倍率の画像で粗大ドメインが認められた場合は、その画像の分散ドメイン径を算出し値とした。
傾斜構造の評価では、XPS装置(X線光電子分光法装置、AXIS−ULTRA(Kratos社製))を用いてDepth測定を行い、フッ素原子の深さ方向の定量を行った。エッチング時間0分、A分、B分(A分、B分は任意)でのフッ素樹脂濃度をそれぞれC0(%)、C1(%)、C2(%)として求める。評価基準は以下の通りである。
○:C0>C1>C2
△:C0>C1≒C2
×:C0≒C1≒C2
12 フッ素樹脂(B)のドメイン
Claims (12)
- 少なくとも樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)を圧縮性流体中で、前記樹脂(A)及びフッ素樹脂(B)の大気圧下での融点よりも低い温度でアロイ化させることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
- 前記樹脂(A)が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記ポリエステル樹脂が、開環重合性モノマーを重合して得られたものであることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記開環重合性モノマーが、ラクチド及びグリコリドから選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記樹脂(A)が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びこれらの共重合体から選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記フッ素樹脂(B)が、パーフルオロアルキル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記フッ素樹脂(B)が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記圧縮性流体が、超臨界二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記フッ素樹脂(B)が100nm以下となるドメイン構造を形成し、前記樹脂(A)中に分散した海島構造の島部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記フッ素樹脂(B)の濃度が、前記樹脂組成物の最表面から内部にかけて減少することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 表面の水接触角が、85°以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法を用いて製造することを特徴とする成型品の製造方法。
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