以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態である二重容器用キャップ1が、これに適合する二重容器本体2に装着された状態を示す。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、後述する蓋体30が位置する側を上方(図1(a)における上側)とし、底部4fが位置する側を下方(図1(a)における下側)とする。二重容器用キャップ1は、キャップ本体10、及び蓋体30で構成されている。また、二重容器本体2は、内層体3、及び外層体4で構成されている。なお、図1(a)は、保管状態における二重容器本体2の状態を示している。
まず、二重容器本体2について説明する。本実施形態では、二重容器本体2は、内層体3の合成樹脂素材と外層体4の合成樹脂素材とを積層して形成されるパリソンに対し、押出しブロー成形を行うことによって積層剥離容器を形作っている。そして、二重容器本体2を構成する内層体3の材料にはエチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)又はナイロンを用いている。また、外層体4の材料には、低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)を用いており、特にLDPEを用いた場合には高いスクイズ性を付与することができる。しかし、この態様に限定されず、例えば二軸延伸ブロー成形を行うことによって積層剥離容器を形成する場合には、内層体3の材料にはポリプロピレン(PP)を用い、外層体4の材料にはポリエチレンテレフタレート(PET)を用いてもよい。また、内層体3及び外層体4の材料には、相互に相溶性が低い他の樹脂を用いることができる。更に、二重容器本体2は、積層剥離容器ではなく、外層体と内層体とを個別に形成して組み付けるものであってもよい。
図1(a)に示すように、内層体3は、減容変形可能に形成されるものであって、本実施形態では、積層状態で形成された二重容器本体2に対し、外層体4から剥離させることで得られるものである。内層体3は、その内側に内容物を収容する収容空間Sを備えている。
外層体4は、円筒状の口部周壁4aに、復元自在な可撓性を有する胴部4e、及び胴部4eの下端を閉鎖する底部4fを連結したものである。図1(a)に示すように、口部周壁4aの外周面には、後述するキャップ本体10の外周壁11に設けた雌ねじ部12にねじ係合させるための雄ねじ部4bを設けている。このように、二重容器本体2は、雄ねじ部4bによりキャップ本体10を強固に固定することができる。また、雄ねじ部4bの下方には、ネックリング4gが設けられている。
なお、図1(a)において、外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させた後に外層体4が自らの剛性により元の形状に復元すると、外層体4と内層体3との間の空間が負圧となる。このとき、図1(b)に示す、ブロー成形によって形成された底部4fのピンチオフ部に形成されるスリット4sから、外層体4と内層体3との間の空間に空気が導入される。
次に、二重容器用キャップ1を構成するキャップ本体10について図1(a)を用いて説明する。キャップ本体10は、口部周壁4aを取り囲む外周壁11を備えていて、外周壁11の内周面には、口部周壁4aの雄ねじ部4bにねじ係合する雌ねじ部12が形成されている。また、外周壁11の上部には、頂壁19が一体に連結されている。そして、雄ねじ部4bを雌ねじ部12にねじ係合させ、二重容器本体2の口部上端2bをキャップ本体10の頂壁19の下面に当接させることによって、キャップ本体10を二重容器本体2の口部2aにしっかりと固定することができる。頂壁19の中央部には注出筒14が配置され、注出筒14の上端面14eには、図2に示すように内容物を注出する注出孔14aが設けられている。また、図1(a)に示すように、頂壁19の外周端には係合突部19dが設けられ、蓋体30を閉じる時に蓋体30の内周面に設けられた蓋体突部37がアンダーカット係合して蓋体30をキャップ本体10に対して固定する。なお、外周壁11の上端には、外周方向に向けてヒンジ38aが設けられており、キャップ本体10に対して後述する蓋体30を開閉可能に結合している。
本実施形態において、注出孔14aは、注出筒14の上端に形成された上端面14e上において、円周上に等間隔で複数個設けられている。なお、注出孔14aの配列、直径及び個数については上記態様には限定されず、粉状又は粒状の内容物の大きさ等に合わせて適宜選択することができる。例えば、注出孔14aは1箇所のみに設けられるように構成されていてもよい。
蓋体30は、図1(a)に示すように、キャップ本体10の外周壁11の上端においてヒンジ38aを介して連結されており、ヒンジ38aを折り曲げることによって注出孔14aを覆い隠すことができる。蓋体30の下面には係合筒34及び筒体36が設けられている。蓋体30を閉めたときに係合筒34の内周面が注出筒14の外周面に係合すると共に、筒体36は注出孔14a内に嵌入する。
蓋体30の上壁31の中央には、図2に示すように上壁段部31eが設けられており、上壁段部31eの下端から延びる底壁39の中央には排出孔39aが設けられている。排出孔39aは、円形の孔の周囲に複数の半円状の孔部が設けられた貫通孔である。排出孔39aには、一方向弁15の弁軸15bが挿入され、上壁31の下面から弁固定端15cが突出している。そして、上壁31の上面には上方が凸となる球弧面形状を有する薄肉部材で形成された弁体15aが排出孔39aを覆うように設けられている。弁体15aの外周端は、図1(a)に示す保管状態においては底壁39の上面に当接しているため、内層体3の内部の空気が一方向弁15を通過して外部に排出されることがない。
なお、本実施形態において、蓋体30は、ヒンジ38aを介してキャップ本体10と一体成形されているが、この態様には限定されない。例えば、蓋体30がキャップ本体10とは別体のものとして構成され、両者が更なる連結手段によって連結されるように構成されていてもよい。また、蓋体30は、ねじやアンダーカットでキャップ本体10に装着するように構成してもよく、これらの態様は全て蓋体30がキャップ本体10に連結されている状態を指すものとする。
上記のように構成される二重容器用キャップ1から内容物を吐出するにあたっては、折り曲げられたヒンジ38aを戻して蓋体30を開き、注出孔14aに嵌合している筒体36を抜き去り、二重容器本体2を図1(a)の起立姿勢から図の左回りに回転させて傾倒姿勢に姿勢変更する。これによって、粉状又は粒状の内容物は、自重で落下して注出孔14aから吐出される。このとき、外層体4の胴部4eを押圧し、外層体4と内層体3との間の空気を介して内層体3を減容変形させることにより内層体3内部が正圧となり、内容物を更に勢いよく注出孔14aから吐出することができる。なお、胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させた場合には、外層体4は自らの剛性により元の形状に復元するため、外層体4と内層体3との間に負圧が発生する。この負圧により外部の空気が底部4fのピンチオフ部のスリット4sから外層体4と内層体3の間の空間に導入される。
ところで、内容物が注出孔14aから吐出する場合には、吐出された内容物に代わって内層体3内には注出孔14aから空気が導入される。このとき、外部が多湿環境である場合には内層体3内に湿った空気が入り込んでしまうことになる。
内容物の吐出が終了すると、利用者は二重容器本体2を傾倒姿勢から図1(a)の起立姿勢へと戻し、蓋体30を閉める。次に利用者は、外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させる。これにより、内層体3の内部は正圧となり、内層体3内の空気は、図2に実線矢印で示すように、注出孔14aと筒体36との間隙から上方に抜けた後、排出孔39aの半円状の孔部を通過して、一方向弁15に至る。弁体15aは、内層体3内部の正圧により先端が僅かに上方に変位するため、空気は弁体15aと底壁39の上面との間隙を通過して外部へと排出される。なお、図2において、上方に変位した弁体15aの位置を二点鎖線によって示している。
そして胴部4eの押圧を止めると、弁体15aは再び底壁39の上面に当接する。このように一方向弁15の機能によって、内層体3内の空気を排出しつつ、外部から空気が内層体3内に流入するのを防止する。これにより、内層体3内の空気が適切に外部に排出されるため、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。そして、内層体3内は、保管に適した密閉状態を維持することが可能となる。また、このとき外層体4の剛性により押圧された胴部4eは元の形状に戻るため、排出された空気の体積の分だけ底部4fに形成されたスリット4sから外層体4と内層体3の間の空間に空気が取り込まれる。
なお、利用者が流通時及び保管時により完全な密閉状態を要求する場合には、蓋体30に図3に示すような上蓋40を更に設けることが望ましい。上蓋40は、ヒンジ38bにより蓋体30の蓋体周壁33に連結されている。また、二重容器本体2の口部上端2bには流通時にのみ用いられることを想定したシール部材2dが剥離可能な状態で接着固定されている。利用者は、使用前にキャップ本体10を二重容器本体2から取り外してシール部材2dを剥がし、再度キャップ本体10を二重容器本体2に固定してから使用を開始する。そして、蓋体30全体を開いて内容物を吐出した後に、上蓋40のみ開いた状態で蓋体30を閉じて、胴部4eを押下することにより、内層体3内部の空気を排出することができる。空気の排出後は更に上蓋40を閉じることにより二重容器本体2を密閉状態に保つことができる。
ここで、流通時から使用時に至るまでの二重容器本体2の状態について図4〜図5を用いて説明しておく。図4は、上蓋40を有しないタイプの二重容器用キャップ1を二重容器本体2に取り付けた流通時における状態を示している。二重容器本体2の口部上端2bにはシール部材2dが取り付けられており、二重容器本体2は、内層体3が外層体4から剥離されているものの減容変形していない状態を示している。利用者は、図4の状態からまず蓋体30付きキャップ本体10を二重容器本体2から取り外し、シール部材2dを剥がしてから再度、蓋体30付きキャップ本体10を装着する。次に蓋体30を開いて二重容器本体2を起立姿勢から倒立姿勢へと姿勢変更して内容物を吐出する。そして、図5に太い矢印で示すように、外層体4の胴部4eを押下すると内層体3が共に減容変形するため、内層体3の内部が正圧となる。これによって、一方向弁15が開放され、内層体3内部の空気が弁体15aを経由して外部に排出される(図5に破線矢印で示す)。その後、利用者が胴部4eの押圧を止めると、内部の空気が排出されたために内層体3は減容変形した状態を維持するが、外層体4は、自身の復元力により元の形状に戻るため、図5に示すような内層体3と外層体4との間の空間が形成される。このとき内層体3と外層体4との間の空間は負圧となるため、図5に実線矢印で示すように底部4fのピンチオフ部のスリット4sから外層体4と内層体3の間の空間に外部の空気が導入される。
なお、流通時には、内層体3が外層体4からすでに剥離されている旨の説明をおこなったが、製造時に両者を剥離させていない場合もある。この場合には胴部4eの押圧によって内層体3を減容変形させて底部4fのスリット4sから内層体3と外層体4との間に空気を導入することによって両者を剥離させることができる。。また、口部上端2bへのシール部材2dの接着についても、一方向弁15の密閉性が十分であると判断すれば、適宜省略される。
以上述べたように、本実施形態によれば、二重容器本体2に装着可能な二重容器用キャップ1において、蓋体30が内層体3の内部の正圧によって空気を外部に排出可能な一方向弁15と排出孔39aとを有するように構成した。これによって蓋体30を閉じると内層体3内の空気が容易に排出可能となる一方、外部からの空気の流入を防止することができる。従って、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。
また、本実施形態によれば、内層体3の内部の空気を排出して内層体3の体積を内容物の残量に合わせて小さく維持することができる。これによって、例えば内容物が錠剤である場合に錠剤が内層体3の内部で大きく動くことがないので、当該錠剤の欠け、割れ等を防止することができる。
また、本実施形態によれば、一方向弁15は、上方が凸となる球弧面形状を有する薄肉部材で形成されるようにした。これによって安価な成型部品を用いて内層体3内の空気が容易に排出可能となる一方、外部からの空気の流入を防止することができる。
また、本実施形態によれば、更なる上蓋40により排出孔39aを覆うように構成したので、より保管に適した密閉性の高い状態にすることができる。また、上蓋40により排出孔39aを覆うことによって容器全体の見栄えが向上する他、一方向弁15を傷及び埃から保護することができる。
図6は、本発明の第2実施形態である二重容器用キャップ5が、これに適合する二重容器本体2に装着された状態を示す。
外層体4は、円筒状の口部周壁4aに、復元自在な可撓性を有する胴部4e、及び胴部4eの下端を閉鎖する底部4fを連結したものである。図7に示すように、口部周壁4aの外周面には、後述するキャップ本体50の外周壁51に設けた係合リブ52にアンダーカット係合させるための係合凸壁4b'を設けている。従って、二重容器本体2は、係合凸壁4b'によりキャップ本体50を強固に固定することができる。
なお、図6において、外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させた後に外層体4が自らの剛性により元の形状に復元すると、外層体4と内層体3との間の空間が負圧となる。このとき、ブロー成形によって形成された底部4fのピンチオフ部に形成されるスリットから、外層体4と内層体3との間の空間に空気が導入される。
次に、二重容器用キャップ5を構成するキャップ本体50について図7を用いて説明する。ここでは、第1実施形態のキャップ本体10との構成上の差異点に絞って説明する。キャップ本体50は、頂壁59の中央に注出筒54が設けられており、内層体3の内部の内容物を外部に吐出するための注出孔54aを構成している。注出筒54の上端には内容物が二重容器本体2から漏れ出さないようにするためのシール部材2eが接着されている。シール部材2eは二つに折り返した形状を有しており、利用者が上半分を摘むことにより容易に剥がすことが可能である。第1実施形態と比較すると、本実施形態ではシール部材2eが注出筒54の上端に接着されているため、利用者はキャップ本体10を取り外すことなくシール部材2eを剥離して使用可能状態にすることができる。
キャップ本体50は、口部周壁4aを取り囲む外周壁51を備えていて、外周壁51の内周面には、口部周壁4aの係合凸壁4b'にアンダーカット係合する係合リブ52が形成されている。頂壁59の外周端には係合突起が設けられ、蓋体60を閉じる時に蓋体60の蓋体周壁63の内周面に設けられた蓋体突起がアンダーカット係合して蓋体60をキャップ本体50に対して固定する。外周壁51の上端には、外周方向に向けてヒンジ68が設けられており、キャップ本体50に対して後述する蓋体60を開閉可能に結合している。
次に蓋体60について図7を用いて説明する。蓋体60についても第1実施形態の蓋体30との構成上の差異点に絞って説明する。
本実施形態の蓋体60は、図7に示すように、上壁61の中央には排出孔69aが設けられている。排出孔69aは、円形の孔の周囲に複数の半円状の孔部が設けられた貫通孔である。排出孔69aには、一方向弁55の弁軸55bが挿入され、上壁61の下面から弁固定端55cが突出している。そして、上壁61の上面には上方が凸となる球弧面形状を有する薄肉部材で形成された弁体55aが排出孔69aを覆うように設けられている。なお、弁体55aは、第1実施形態の弁体15aと比較すると球弧面の曲率半径が大きく半径も大きい。従って、弁体55aは、第1実施形態の弁体15aと比較して外周端が上方に変位し易く、より小さな正圧で開放状態となる。なお、弁体55aの外周端は、図7に示す保管状態においては上壁61の上面に当接しているため、内層体3の内部の空気が一方向弁55を通過して外部に排出されることがない。上壁61の下面から下方には係合筒64が垂下しており、蓋体60を閉じたときに先端に設けられている係合突部が注出筒54の外周面に設けられている係合部にアンダーカット係合して内容物が注出筒54の周囲に漏れ出さないようにしている。
上記のように構成される二重容器用キャップ5から内容物を吐出するにあたっては、折り曲げられたヒンジ68を戻して蓋体60を開き、二重容器本体2を図6の起立姿勢から図の左回りに回転させて傾倒姿勢に姿勢変更することによって、粉状又は粒状の内容物は、自重で落下して注出孔54aから吐出される。このとき、外層体4の胴部4eを押圧し、外層体4と内層体3との間の空気を介して内層体3を減容変形させることにより内層体3内部が正圧となり、内容物を更に勢いよく注出孔54aから吐出することができる。なお、胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させた場合には、外層体4は自らの剛性により元の形状に復元するため、外層体4と内層体3との間に負圧が発生する。この負圧により外部の空気が底部4fのピンチオフ部のスリットから外層体4と内層体3の間の空間に導入される。
内容物の吐出が終了すると、利用者は二重容器本体2を傾倒姿勢から図8の起立姿勢へと戻し、蓋体60を閉める。次に利用者は、外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させる。これにより、内層体3の内部は正圧となり、内層体3内の空気は、図8に破線矢印で示すように、注出孔54aから上方に抜けた後、排出孔69aの半円状の孔部を通過して、一方向弁55に至る。弁体55aは、内層体3内部の正圧により先端が僅かに上方に変位するため、空気は弁体55aと上壁61との間隙を通過して外部へと排出される。
そして胴部4eの押圧を止めると、弁体55aは再び上壁61の上面に当接する。このように一方向弁55の機能によって、内層体3内の空気を排出しつつ、外部から空気が内層体3内に流入するのを防止する。これにより、内層体3内の空気が適切に外部に排出されるため、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。そして、内層体3内は、保管に適した密閉状態を維持することが可能となる。
以上述べたように、本実施形態によれば、二重容器本体2に装着可能な二重容器用キャップ5において、蓋体60が内層体3の内部の正圧によって空気を外部に排出可能な一方向弁55と排出孔69aとを有するように構成した。これによって第1実施形態と同様に蓋体60を閉じると内層体3内の空気が容易に排出可能となる一方、外部からの空気の流入を防止することができる。従って、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。
また、本実施形態によれば、注出孔54aの上端にシール部材2eを剥離可能な状態で接着するように構成した。これによって、利用者は、使用を開始する際に強固に固定されているキャップ本体50を二重容器本体2から取り外してシール部材を剥がす必要がなく、蓋体60を開けることによりシール部材2eを容易に剥がして使用を開始することができる。
図9(a)は、本発明の第3実施形態である二重容器用キャップ7が、これに適合する二重容器本体2に装着された状態を示す。なお、本実施形態における二重容器本体2及びキャップ本体70の構成は第2実施形態と同一である。従って、ここでは蓋体80の構成について、第1、第2実施形態との差異点に絞って説明する。
本実施形態の蓋体80は、図9(a)に示すように、係合筒84よりも中心寄りの位置において、上壁81から下方に垂下する弁部周壁86を有しており、弁部周壁86の下端から内周方向に弁部底壁89が延びている。弁部底壁89の中央には、一方向弁75に内層体3内部の空気を導くための空気導入孔89aが設けられている。弁部周壁86と弁部底壁89とで構成される空間内には、円筒側面形状を有する弁部中央壁75bと、弁部中央壁75bを水平方向に貫く排出孔75dと、弾性材料によって形成されており弁部中央壁75bの外周面に当接して排出孔75dを覆う円筒側面形状を有する弁体75aとが配置されている。
図9(a)から分かるように、弁部周壁86は、上端の直径が下端の直径よりもやや大きくなるように構成されている。これによって、弁体75aの下端は弁部中央壁75b及び弁部周壁86の双方に当接する一方、弁体75aの上端は弁部中央壁75bには当接するが弁部周壁86からは僅かに離間している。この構成によって、弾性材料で形成された弁体75aは下端を支点として上端が変位可能となる。外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させると、内層体3の内部に発生した正圧が空気導入孔89a及び排出孔75dを経由して弁体75aにかかる。弾性材料で形成された弁体75aはこの正圧によって上端が外周方向に開くように変位するため(図9(b)に示す)、内層体3の内部の空気は、図9(b)に実線矢印で示すように弁部中央壁75bと弁体75aとの間の間隙から上壁81の上方へと排出される。
胴部4eの押圧を止めると、弁体75aは再び弁部中央壁75bの外周面に当接するため、外部から排出孔75dを経由して内層体3の内部に空気が導入されることがない。このような一方向弁75の機能によって、内層体3内の空気を排出しつつ、外部から空気が内層体3内に流入するのを防止する。これにより、内層体3内の空気が適切に外部に排出されるため、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。そして、内層体3内は、保管に適した密閉状態を維持することが可能となる。
以上述べたように、本実施形態によれば、二重容器本体2に装着可能な二重容器用キャップ7において、蓋体80が内層体3の内部の正圧によって空気を外部に排出可能な一方向弁75と排出孔75dとを有するように構成した。これによって第1実施形態と同様に蓋体80を閉じると内層体3内の空気が容易に排出可能となる一方、外部からの空気の流入を防止することができる。従って、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。
また、本実施形態によれば、一方向弁75を構成する弁体75aが単純な円筒形状を有するように構成したので、部品の成形性等の問題が発生することがなく、一方向弁75の特性を容易に管理することができる。
図10(a)は、本発明の第4実施形態である二重容器用キャップ9が、これに適合する二重容器本体2に装着された状態を示す。
外層体4は、円筒状の口部周壁4aに、復元自在な可撓性を有する図示しない胴部、及び胴部の下端を閉鎖する底部を連結したものである。口部周壁4aの外周面には雄ねじ部4bを設けている。また、口部周壁4aには、内層体3との相互間に空気を取り込むための貫通孔4cを設けていて、更に、貫通孔4cを設けた外周面には、上下方向に雄ねじ部4bを切り欠く溝部4dを設けている。二重容器本体2は、雄ねじ部4bによりキャップ本体90を強固に固定することができる。
なお、図10(a)において、外層体4の胴部を押圧して内層体3を減容変形させた後に外層体4が自らの剛性により元の形状に復元すると、外層体4と内層体3との間の空間が負圧となる。このとき、口部周壁4aに設けた貫通孔4cから、外層体4と内層体3との間の空間に空気が導入される。
次に、二重容器用キャップ9を構成するキャップ本体90について図10(a)を用いて説明する。ここでは、第1実施形態のキャップ本体10との構成上の差異点に絞って説明する。キャップ本体90は、頂壁99の中央に注出筒94が設けられており、内層体3の内部の内容物を外部に吐出するための注出孔94a(図11参照)を構成している。また、注出筒94の内周面には、後述する係合筒104をアンダーカット係合するための係合突部が設けられている。また、外周壁91の下端には、外部の空気を内層体3内に導入するための外気導入孔98が設けられている。外気導入孔98から導入された空気は、溝部4dを経由して貫通孔4cから外層体4と内層体3との間の空間に導かれる。なお、外気導入孔98を通過した空気は、雄ねじ部4bと雌ねじ部92との隙間を経由しても貫通孔4cに導かれるので、溝部4dは必ずしも必須の構成ではない。
次に蓋体100について図10(a)を用いて説明する。蓋体100についても第1実施形態の蓋体30との構成上の差異点に絞って説明する。
本実施形態の蓋体100は、図10(a)に示すように、注出筒94よりも内周寄りの上壁101の下面から係合筒104が垂下している。そして、係合筒104の外周面の先端付近に設けられた係合突部が注出筒94の内周面に設けられた係合部にアンダーカット係合する。
係合筒104で囲まれる空間内には、一方向弁が格納されている。一方向弁は、球形状を有する弁体95と、内層体3の内部に大きな正圧がかかったときに弁体95が上方に移動して着座する第1弁座96aと、第1弁座96aに対向して設けられ、内層体3の内部に正圧が生じていないときに弁体95が着座する第2弁座97aと、第1弁座96aを貫く排出孔96bと、第2弁座97aを貫く通気孔97bとを有する。第1弁座96aは、下方に向かって開く円錐台側面形状を有しており、第1弁座96aの中心には排出孔96bが貫通孔として設けられている。また、図10(b)に示すように、第1弁座96aの円錐台側面形状に沿って複数の弁座溝部96cが通気溝として設けられている。本実施形態において、第1弁座96a及び排出孔96bは上壁101の下面に一体に設けられている。また、第1弁座96aに対向して、上方に開く円錐台側面形状を有する第2弁座97aが設けられ、第2弁座97aの中心には通気孔97bが貫通孔として設けられている。なお、第2弁座97aと通気孔97bは一部品としてモジュール化されて、係合筒104の内周面に嵌合固定されている。
上記のように構成される二重容器用キャップ9から内容物を吐出するためには、折り曲げられたヒンジ108を戻して蓋体100を開いて注出筒94に嵌合している係合筒104を抜き去り(開いた蓋体100を図10(a)に二点鎖線で示す。)、二重容器本体2を図10(a)の起立姿勢から図の左回りに回転させて傾倒姿勢に姿勢変更させる。これによって、粉状又は粒状の内容物は、自重で落下して注出孔94aから吐出される。このとき、外層体4の胴部を押圧し、外層体4と内層体3との間の空気を介して内層体3を減容変形させることにより内層体3内部が正圧となり、内容物を更に勢いよく注出孔94aから吐出することができる。
内容物の吐出が終了すると、利用者は二重容器本体2を傾倒姿勢から起立姿勢へと戻す。そして、蓋体100を閉めることにより、図10(a)の状態へと戻る。次に利用者は、外層体4の胴部を押圧して内層体3を減容変形させる。これにより、内層体3の内部は正圧となり、内層体3内の空気は、図10(a)の通気孔97bから弁体95と第2弁座97aとの間の空間に導入される。この正圧によって弁体95は上方に持ち上げられ、第1弁座96aへと向かう。弁体95が第1弁座96aと第2弁座97aとの間に位置する間、通気孔97bを通過した空気は、弁体95の周囲に設けられているリブの間の空間を通って排出孔96bから外部に排出される。また、胴部4eを強く押圧した場合などは、一方向弁にかかる正圧が大きくなるため、弁体95が第1弁座96aに到達することがある。しかし、弁体95が第1弁座96aに着座しても、内層体3内の空気は弁座溝部96cから外部に排出されるため、排出孔96bが完全に閉塞されることはない。
そして胴部の押圧を止めると、弁体95は再び第2弁座97aに着座するため、通気孔97bは閉塞されて外部から空気が流入することがない。このように一方向弁により内層体3内の空気を排出しつつ、外部から空気が内層体3内に流入するのを防止することができる。これにより、内層体3内の空気が適切に外部に排出されるため、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。
以上述べたように、本実施形態によれば、二重容器本体2に装着可能な二重容器用キャップ9において、蓋体100が内層体3の内部に大きな正圧がかったときに弁体95が着座する第1弁座96aと、第1弁座96aに対向して正圧がかからないときに弁体95が着座する第2弁座97aと、排出孔96b及び通気孔97bとを有するように構成した。これにより、内層体3内部に正圧が発生すると、弁体95が第2弁座97aから離れて上方に移動するため、弁体95が第1弁座96aと第2弁座97aとの間にあるときは、排出孔96b及び通気孔97bは開放されて内層体3内部の空気を排出孔96b及び通気孔97bから外部に排出可能となる。そして、内層体3の内部に大きな正圧がかっって弁体95が第1弁座96aに着座しても、内層体3内の空気は弁座溝部96cから外部に排出されるため排出孔96bが閉塞されることがない。また、内層体3内部に正圧がかからなくなると、弁体95は速やかに第2弁座97aに着座するため、通気孔97bが閉塞される。従って、外部から空気が内層体3内に流入するのを防止することができる。これにより、内層体3内の空気が適切に外部に排出されるため、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。
図12は、本発明の第5実施形態である二重容器用キャップ13が、これに適合する二重容器本体2に装着された状態を示す。
外層体4は、円筒状の口部周壁4aに、復元自在な可撓性を有する胴部4e、及び胴部4eの下端を閉鎖する底部4fを連結したものである。図13に示すように、外層体4の外周面には、後述するキャップ本体110の外周壁111に設けた雌ねじ部112にねじ係合させるための雄ねじ部4bを設けている。このように、二重容器本体2は、雄ねじ部4bによりキャップ本体110を強固に固定することができる。また、雄ねじ部4bの下方には、ネックリング4gが設けられている。
なお、図12において、外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させた後に外層体4が自らの剛性により元の形状に復元すると、外層体4と内層体3との間の空間が負圧となる。このとき、ブロー成形によって形成された底部4fのピンチオフ部に形成されるスリットから、外層体4と内層体3との間の空間に空気が導入される。
次に、二重容器用キャップ13を構成するキャップ本体110について図13を用いて説明する。ここでは、第1実施形態のキャップ本体10との構成上の差異点に絞って説明する。
キャップ本体110は、頂壁119の中央に注出筒114が設けられており、内層体3の内部の内容物を外部に吐出するための注出孔114aを構成している。注出筒114の外周面には係合突部が設けられており、後述する蓋体120の上壁121から垂下する係合筒124がアンダーカット係合する。キャップ本体110の外周壁111の上端には、外周方向に向けてヒンジ128が設けられており、キャップ本体110に対して後述する蓋体120を開閉可能に結合している。
次に蓋体120について図12,13を用いて説明する。蓋体120についても第1実施形態の蓋体30との構成上の差異点に絞って説明する。
本実施形態の蓋体120は、図13に示すように、上壁121の下面における注出筒114の外側には係合筒124が垂下し、蓋体120が閉じるとき、係合筒124の内周面の下端近傍に設けられた係合突部が注出筒114の外周面に設けられた係合部にアンダーカット係合する。また、係合筒124の内周側には、弁固定筒126が上壁121の下面から垂下している。そして、上壁121の下面中央には、下方が凸となる球弧面形状を有する薄肉部材で形成された弁体115aが弁固定筒126を覆うように設けられている。弁体115aの上方には、弁体115aと一体成形された弁軸115b及び弁固定端115cが設けられており、弁固定端115cの拡径された先端が弁固定筒126の下端に設けられた係合部に係合している。これにより、弁体115aは上壁121の下面に固定されている。内層体3に正圧がかかっていない状態において、弁体115aの先端は係合筒124の内周面に当接しているため、内層体3の内部の空気が一方向弁115を通過して外部に排出されることがない。係合筒124と弁固定筒126との間の半径位置において上壁121に排出孔129aが貫通孔として設けられている。排出孔129aは一つのみ設けてもよいし、弁体115aによって下方から覆うことが可能であれば複数個設けてもよい。排出孔129aは、蓋体120の下面において、弁体115aによって完全に覆われている。上壁121の外周端には、上方へと延びる上蓋固定筒122が設けられている。
上記のように構成される二重容器用キャップ13から内容物を吐出した後、利用者は二重容器本体2を傾倒姿勢から図14の起立姿勢へと戻し、蓋体120を閉める。次に利用者は、外層体4の胴部4eを押圧して内層体3を減容変形させる。これにより、内層体3の内部は正圧となり、一方向弁115の弁体115aの外周端は上方に変位するため、弁体115aの外周端と係合筒124との間に間隙を生じる。そして、内層体3内の空気は、図14に実線矢印で示すように、注出孔114aから上方に抜けた後、弁体115aの周囲の間隙を通過して、更に排出孔129aを経由して外部へと排出される。
胴部4eの押圧を止めると、弁体115aは再び係合筒124の内周面に当接するため、外部からの空気が弁体115aを通過して内層体3内部に入り込むことがない。このように一方向弁115の機能によって、内層体3内の空気を排出しつつ、外部から空気が内層体3内に流入するのを防止する。これにより、内層体3内の空気が適切に外部に排出されるため、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。そして、内層体3内は、保管に適した密閉状態を維持することが可能となる。
なお、利用者が流通時及び保管時により完全な密閉状態を要求する場合には、蓋体120に図12に示すような計量カップの機能を有する上蓋130を更に設けることができる。上蓋130の内側面に設けられた係合突部が、上蓋固定筒122の外周面に設けられた係合部に係合することによって、上蓋130を上壁121に対して固定することができる。利用者は、蓋体120全体を開いて内容物を吐出した後に、上蓋130を装着しない状態で蓋体120を閉じて胴部4eを押下することにより、内層体3内部の空気を排出することができる。空気の排出後は上蓋130で排出孔129aを覆うことにより二重容器本体2を密閉状態に保つことができる。
以上述べたように、本実施形態によれば、二重容器本体2に装着可能な二重容器用キャップ13において、蓋体120が内層体3の内部の正圧によって空気を外部に排出可能な一方向弁115と排出孔129aとを有するように構成した。これによって蓋体120を閉じると内層体3内の空気が容易に排出可能となる一方、外部からの空気の流入を防止することができる。従って、内容物の粉体等が吸湿して固化することがない。
また、本実施形態によれば、一方向弁115は、下方が凸となる球弧面形状を有する薄肉部材で形成されるようにした。これによって安価な成型部品を用いて内層体3内の空気が容易に排出可能となる一方、外部からの空気の流入を防止することができる。
また、本実施形態によれば、計量カップの機能を兼ねた更なる上蓋130により排出孔129aを覆うように構成したので、より保管に適した密閉性の高い状態にすることができる。
なお、上述したところは、本発明の実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。そして、そのような構成は本発明の範囲内であると理解すべきである。