JP6563028B2 - 光重合開始剤及びその製造方法、重合性組成物、インクジェット記録方法、並びに、アシルホスフィンオキシド化合物 - Google Patents

光重合開始剤及びその製造方法、重合性組成物、インクジェット記録方法、並びに、アシルホスフィンオキシド化合物 Download PDF

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Description

本開示は、光重合開始剤及びその製造方法、重合性組成物、インクジェット記録方法、並びに、アシルホスフィンオキシド化合物に関する。
重合性組成物は、通常、重合性化合物、及び、重合開始剤が用いられる。重合開始剤、特に紫外線などの活性放射線の照射により重合開始種を発生させる光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド化合物が知られている。
従来のアシルホスフィンオキシド化合物としては、特許文献1に記載された化合物が挙げられる。
また、従来の高分子開始剤としては、特許文献2に記載された化合物が挙げられる。
特開2014−185319号公報 特表2012−513998号公報
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、分解性及び感度に優れた光重合開始剤及びその製造方法、並びに、上記光重合開始剤を使用した重合性組成物及びインクジェット記録方法を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、新規なアシルホスフィンオキシド化合物を提供することである。
上記課題は、下記の<1>、<3>、<14>〜<16>又は<17>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>、<4>〜<13>及び<18>〜<20>と共に以下に記載する。
<1>アシルホスフィンオキシド構造におけるリン原子に結合する芳香族アシル基の芳香環に更に、炭素原子に連結するカルボニル基が1つ以上直接結合した構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物である光重合開始剤、
<2>上記カルボニル基に連結する上記炭素原子が、脂肪族炭素原子である、<1>に記載の光重合開始剤、
<3>下記式1又は式2で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物である光重合開始剤、
式1及び式2中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
<4>下記式1−00又は式2−00で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物である、<3>に記載の光重合開始剤、
式1−00及び式2−00中、Calは脂肪族炭素原子を表し、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
<5>下記式1−0又は式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、<3>又は<4>に記載の光重合開始剤、
式1−0及び式2−0中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
<6>下記式1−1又は式2−1で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、<5>に記載の光重合開始剤、
式1−1及び式2−1中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−1若しくは式2−1で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0又は1を表す。
<7>下記式1−2又は式2−2で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、<5>又は<6>に記載の光重合開始剤、
式1−2及び式2−2中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−2若しくは式2−2で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R11〜R13はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表す。
<8>下記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位を有する、<3>〜<7>のいずれか1つに記載の光重合開始剤、
式1A、式2A及び式2B中、Lはそれぞれ独立に、単結合、又は、オリゴマー若しくはポリマー主鎖に連結する2価の連結基を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表し、R1Aはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、R1Bは炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
<9>上記式1Aが下記式1Cであり、上記式2Aが下記式2Cである、<8>に記載の光重合開始剤、
式1C及び式2C中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表し、R1Aはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
<10>下記式3又は式4で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、<3>に記載の光重合開始剤、
式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
<11>分子内にアシルホスフィンオキシド構造を2つ以上有する、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の光重合開始剤、
<12>2つ以上の上記アシルホスフィンオキシド構造を連結する連結基が、アミノ結合、チオエーテル結合、及び、ハロゲン原子のいずれも有しない、<11>に記載の光重合開始剤、
<13>分子量が300以上10,000以下である、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の光重合開始剤、
<14><1>〜<13>のいずれか1つに記載の光重合開始剤、及び、重合性化合物を含む重合性組成物、
<15>記録媒体上に、<14>に記載の重合性組成物をインクジェット法により吐出する工程、及び、吐出された重合性組成物に活性放射線を照射して、上記重合性組成物を硬化する工程を含むインクジェット記録方法、
<16>ルイス酸の存在下、リン原子に結合する芳香族アシル基を1つ以上有するアシルホスフィンオキシド化合物と、酸ハライド又は酸無水物とを反応させる工程を含む、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の光重合開始剤の製造方法、
<17>下記式1又は式2で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物、
式1及び式2中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
<18>下記式1−00又は式2−00で表される部分構造を有する、<17>に記載のアシルホスフィンオキシド化合物、
式1−00及び式2−00中、Calは脂肪族炭素原子を表し、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
<19>下記式1−0又は式2−0で表される、<17>又は<18>に記載のアシルホスフィンオキシド化合物、
式1−0及び式2−0中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
<20>下記式3又は式4で表される、<17>又は<18>に記載のアシルホスフィンオキシド化合物、
式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
本発明の実施形態によれば、分解性及び感度に優れた光重合開始剤及びその製造方法、並びに、上記光重合開始剤を使用した重合性組成物及びインクジェット記録方法を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、新規なアシルホスフィンオキシド化合物を提供することができる。
以下、本開示について詳細に説明する。
なお、本明細書中、「xx〜yy」の記載は、xx及びyyを含む数値範囲を表す。
「(メタ)アクリレート」等は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等と同義であり、以下同様とする。
本開示におけるアルキル基、アリール基、アルキレン基及びアリーレン基等の炭化水素基は、特に断りのない限り、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
以下、本開示を詳細に説明する。
(光重合開始剤)
本開示の光重合開始剤は、アシルホスフィンオキシド構造におけるリン原子に結合する芳香族アシル基の芳香環に更に、炭素原子に連結した1つ以上のカルボニル基が直接結合した構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物(以下、「特定アシルホスフィンオキシド化合物」ともいう。)である。
アシルホスフィンオキシド化合物は、活性放射線によって分解し、ラジカル等の重合開始種を生成する。
本発明者らが詳細な検討を行った結果、アシルホスフィンオキシド構造においてリン原子に結合する芳香族アシル基の芳香環に更に、炭素原子に連結するカルボニル基が1つ以上直接結合した構造を有することにより、分解性及び感度に優れた光重合開始剤が得られることを見出した。詳細な機構は不明であるが、アシル基を置換することによる立体及び電子的な影響によりアシルホスフィン構造における結合エネルギーが小さくなり分解率や感度が向上するのでないかと推定される。
また、上記アシルホスフィンオキシド構造においてリン原子に結合する芳香族アシル基の芳香環に更に、炭素原子に連結するカルボニル基が1つ以上直接結合した構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物は、新規化合物である。
なお、炭素原子が連結するカルボニル基とは、カルボニル基中の炭素原子に連結する原子が炭素原子である基、すなわち、アシル基である。
更に、上記カルボニル基に連結する上記炭素原子が、脂肪族炭素原子であると、共役鎖が長くならず、分子の剛直性が抑制され、インクジェット吐出性に優れる。
以下、本開示について、詳細に説明する。
特定アシルホスフィンオキシド化合物としては、上記式1又は式2で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物であるか、上記式3又は式4で表されるアシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。なお、上記式3又は式4で表されるアシルホスフィンオキシド化合物には一部、上記式1又は式2で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物に該当する化合物も含まれることは言うまでもない。
また、特定アシルホスフィンオキシド化合物は、1又は2つ以上有する上記芳香族アシル基の芳香環のいずれにおいても更に、炭素原子に連結するカルボニル基(アシル基)が1つ直接結合した構造を有する化合物であることが好ましい。
特定アシルホスフィンオキシド化合物は、インクジェット吐出性の観点から、上記カルボニル基に連結する上記炭素原子が、脂肪族炭素原子であることが好ましい。
また、特定アシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1又は式2で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。
更に、式1又は式2で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物は、式1又は式2で表される部分構造を1つのみ有する化合物であっても、2以上有する化合物であってもよい。
式1及び式2中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
式1及び式2におけるRはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、メチル基であることが最も好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
式1及び式2におけるm1は、0〜3の整数であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
式2におけるm2は0〜3の整数であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
式1及び式2におけるnは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れる。
また、式1及び式2における波線部分−CO−のベンゼン環上の結合位置は、特に制限はないが、リン原子に結合したカルボニル基の結合位置に対し、メタ位であることが好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
式2におけるpは、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れる。
また、式1及び式2において、波線部で他の構造と結合する炭素原子は任意のsp混成軌道を有してよい。すなわち、波線部分で他の構造と結合する炭素原子は芳香族炭化水素基を構成する炭素原子(sp2混成軌道)であってもよく、エチニル基などのアルキニル基を構成する炭素原子(sp混成軌道)であってもよく、ビニル基などのアルケニル基を構成する炭素原子(sp2混成軌道)であってもよく、アルキル基を構成する炭素原子(sp3混成軌道)であってもよいが、ビニル基などのアルケニル基を構成する炭素原子(sp2混成軌道)又はアルキル基を構成する炭素原子(sp3混成軌道)であることが好ましく、アルキル基を構成する炭素原子(sp3混成軌道)であることが更に好ましい。上記態様であると分解性、重合性組成物に用いた場合におけるインクジェット吐出性に優れ、更に合成時における簡便性や収率に優れる。
特定アシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1−00又は式2−00で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物であることがより好ましい。
式1−00及び式2−00中、Calは脂肪族炭素原子を表し、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
また、式1−00及び式2−00において、波線部で他の構造と結合するCalは任意のsp混成軌道を有してよい。すなわち、エチニル基などのアルキニル基を構成する炭素原子(sp混成軌道)であってもよく、ビニル基などのアルケニル基を構成する炭素原子(sp2混成軌道)であってもよく、アルキル基を構成する炭素原子(sp3混成軌道)であってもよいが、ビニル基などのアルケニル基を構成する炭素原子(sp2混成軌道)又はアルキル基を構成する炭素原子(sp3混成軌道)であることが好ましく、アルキル基を構成する炭素原子(sp3混成軌道)であることが更に好ましい。上記態様であると分解性、重合性組成物に用いた場合におけるインクジェット吐出性に優れ、更に合成時における簡便性や収率に優れる。
上記式1−00及び式2−00におけるR、m1、m2、n、及び、pは、上記式1及び式2におけるR、m1、m2、n、及び、pと同義であり、好ましい態様も同様である。
また、本開示の光重合開始剤は、下記式1−0、式2−0、式3及び式4のいずれかで表されるアシルホスフィンオキシド化合物であることが更に好ましい。
式1−0及び式2−0中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
まず、本開示の光重合開始剤の好ましい態様の1つである、上記式1−0又は式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物について説明する。
式1−0及び式2−0におけるRについては、後に詳述する。
式1−0及び式2−0におけるRはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、メチル基であることが最も好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、化合物の安定性に優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
式1−0及び式2−0におけるR及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数6〜20のアリール基であることが更に好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることが特に好ましく、フェニル基であることが最も好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、更に、原料を容易に入手できる。
式1−0及び式2−0におけるm1、m2、n及びpは、式1及び式2におけるm1、m2、n及びpと同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式1−0及び式2−0におけるR−CO−のベンゼン環上の結合位置は、特に制限はないが、リン原子に結合したカルボニル基の結合位置に対し、メタ位であることが好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
式1−0及び式2−0におけるRはそれぞれ独立に、低分子型の態様である、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、又は、オリゴマー若しくはポリマー型の態様である、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、若しくは、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表す。
また、上記NRにおけるRは、アルキル基、又は、アリール基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることが更に好ましい。
更に、式1−0及び式2−0におけるRは、式1−0又は式2−0に記載のカルボニル基と、炭素原子との間で結合する基であることが好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
上記炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基における1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であってもよく、1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基を組み合わせた基であってもよい。また、上記脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
また、上記1価の炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アシルオキシ基が挙げられる。
上記炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基としては、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、酸素原子及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基であることが好ましく、1価の飽和又は不飽和炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基、又は、アルケニル基であることが更に好ましく、ハロゲン原子を有するアルキル基、エチレニル基、又は、2−プロペニル基であることが特に好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、また、オリゴマー若しくはポリマー型、又は、式3若しくは式4で表されるアシルホスフィンオキシド化合物の本開示の光重合開始剤の原料として好適に用いることができる。
また、Rにおけるカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子による置換は、上記炭化水素基の末端の炭化水素基であってもよい。
式1−0及び式2−0において、Rが、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基である場合、本開示の光重合開始剤における高分子構造としては、特に制限はなく、例えば、アシルホスフィンオキシド構造を有する、ビニル樹脂、ポリケトン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、又は、スチレン樹脂等の高分子構造が例示できる。中でも、後述する式1A又は式2Aで表される構成単位を有するビニル樹脂、後述する式1A又は式2Aで表される構成単位を有する(メタ)アクリル樹脂、又は、後述する式2Bで表される構成単位を有するポリケトン樹脂であることが好ましい。また、上記ビニル樹脂は、α,β−不飽和カルボニル化合物を重合した樹脂であることが好ましい。
なお、本開示において、「オリゴマー」とは、分子量又は重量平均分子量が500以上5,000未満のものとし、「ポリマー」とは、重量平均分子量が5,000以上のものとする。
また、本開示において、分子量分布を有する化合物は、重量平均分子量を上述した方法により測定するものとし、分子量分布のない化合物は、その元素組成(組成式)より分子量を求めるものとする。
式1−0及び式2−0のRにおける別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基は、炭素数1〜20の炭化水素基、又は、炭素数1〜20の炭化水素基、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた構造を2以上結合した2〜10価の連結基であることが好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた構造を2以上結合した2〜10価の連結基であることがより好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基、エステル結合、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた構造を2以上結合した2〜10価の連結基であることが更に好ましい。
上記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であってもよく、1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基を組み合わせた基であってもよい。また、上記脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
また、上記炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アシルオキシ基が挙げられる。
式1−0及び式2−0において、Rが、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基である場合、本開示の光重合開始剤は、下記式1A又は式2Aで表される構成単位を有する化合物であることが好ましく、また、Rが、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基である場合、下記式2Bで表される構成単位を有する化合物であることが好ましい。
式1A、式2A及び式2B中、Lはそれぞれ独立に、単結合、又は、オリゴマー若しくはポリマー主鎖に連結する2価の連結基を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表し、R1Aはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、R1Bは炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
式1A、式2A及び式2BにおけるR〜R、m1、m2及びRは、上記式1−0及び式2−0におけるR〜R、m1、m2及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
式1A及び式2AにおけるLはそれぞれ独立に、単結合、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、単結合、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合及び/若しくは酸素原子により置換されていてもよい2価の炭化水素基であることがより好ましく、単結合であることが特に好ましい。
式1A及び式2AにおけるRは、オリゴマー又はポリマー合成時の重合性の観点から、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基が更に好ましい。
式2Aにおけるpは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
式2AのR1Aにおける炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基は、上記式1−0及び式2−0のRにおける炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式2BのR1Bは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。また、R1Bの炭素数は、1〜20であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜8であることが特に好ましい。
また、R1Bにおけるアルキレン基及びアリーレン基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アシルオキシ基が挙げられる。
上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位を有する化合物は、上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。
他の構成単位としては、特に制限はなく、光重合開始能に問題ない範囲で、所望に応じ、任意の構造のものを有することができる。
他の構成単位としては、特に限定はないが、エチレン性不飽和結合を有する化合物が用いられ、エチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能又は多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能又は多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能又は多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との付加反応物、更に、ハロゲン原子やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能又は多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
また、後述する重合性化合物も用いることができ、中でも、後述する単官能(メタ)アクリレートが好適に挙げられる。
また、本開示の光重合開始剤は、上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位を50質量%以上有する化合物であることが好ましく、上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位を90質量%以上有する化合物であることがより好ましく、上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位を95質量%以上有する化合物であることが更に好ましく、上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位からなる化合物であることが特に好ましい。
上記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位からなる化合物である場合、オリゴマー又はポリマーの末端基は、特に制限はなく、使用する熱重合開始剤や、クエンチ等の条件に依存するが、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、及び/又は、ヒドロキシ基等が挙げられる。
上記式1Aで表される構成単位としては、下記式1Cで表される構成単位であることが好ましく、また、上記式2Aで表される構成単位としては、下記式2Cで表される構成単位であることが好ましい。
式1C及び式2C中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表し、R1Aはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
式1C及び式2CにおけるR〜R、m1、m2及びRは、上記式1−0及び式2−0におけるR〜R、m1、m2及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式1C及び式2CにおけるR、R1A及びpは、上記式1A及び式2AにおけるR、R1A及びpと同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示において、特定アシルホスフィンオキシド化合物の分子量(又は重量平均分子量)は、300以上であることが好ましく、500〜100,000であることがより好ましく、500〜10,000であることが更に好ましいく、700〜3,000が更に好ましく、850〜2,500が最も好ましい。上記範囲であると、分解性及び感度により優れ、また、重合性組成物に用いた場合におけるインクジェット吐出性及び重合性化合物への相溶性に優れ、更に溶出(マイグレーション)量が抑制される。
また、特定アシルホスフィンオキシド化合物は、分子内にアシルホスフィンオキシド構造を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することがより好ましく、3〜300であることが更に好ましく、3〜50が特に好ましい。上記範囲であると、分解性及び感度により優れる。
なお、本開示における「アシルホスフィンオキシド構造」とは、1つのオキソ基と少なくとも1つのアシル基とが5価のリン原子に直接結合した構造であり、上記式1又は式2中におけるアシルホスフィンオキシド構造であることが好ましい。
また、特定アシルホスフィンオキシド化合物において、2つ以上のアシルホスフィンオキシド構造を連結する連結基は、アミノ結合(2価又は3価の窒素原子)、チオエーテル結合、及び、ハロゲン原子のいずれも有しないことが好ましく、特定アシルホスフィンオキシド化合物は、アミノ結合、チオエーテル結合、及び、ハロゲン原子のいずれも有しないことがより好ましい。上記態様であると、露光時における上記これら部分での化学結合の切断が抑制され、特定アシルホスフィンオキシド化合物により重合した重合物からの特定アシルホスフィンオキシド化合物由来の化合物の溶出(マイグレーション)量が抑制される。
更に、上記式1A若しくは式1BにおけるL、上記式2BにおけるR1B、又は、後述する式3若しくは式4におけるR22は、マイグレーションの観点から、アミノ結合、チオエーテル結合、及び、ハロゲン原子のいずれも有しないことが好ましい。
なお、本開示における「アミノ結合」には、アミド結合及びイミド結合が含まれないことは言うまでもない。本開示における「アミノ結合」は、アミノ結合の窒素原子に直接カルボニル基が結合していないものである。
更にまた、上記式1A若しくは式1BにおけるL、上記式2BにおけるR1B、又は、後述する式3若しくは式4におけるR22は、マイグレーションの観点から、炭素原子、水素原子、及び、必要に応じて、酸素原子から形成される基であることが好ましく、2価以上の炭化水素基、又は、1価以上の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、ヒドロキシ基及びカルボニル基よりなる群から選ばれた2以上の構造を結合した基であることがより好ましい。
式1−0又は式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1−1又は式2−1で表されるアシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。
式1−1及び式2−1中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−1若しくは式2−1で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0又は1を表す。
式1−1及び式2−1におけるRは、上記式1−0及び式2−0のRにおける別の式1−0又は式2−0を別の式1−1又は式2−1と変更する以外はそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
式1−1及び式2−1におけるR〜R、m1、m2、p及びRは、上記式1−0及び式2−0におけるR〜R、m1、m2、p及びRとそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
また、式1−0又は式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1−2又は式2−2で表されるアシルホスフィンオキシド化合物であることがより好ましい。
式1−2及び式2−2中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−2若しくは式2−2で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R11〜R13はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表す。
式1−2及び式2−2におけるRは、上記式1−0及び式2−0のRにおける別の式1−0又は式2−0を別の式1−2又は式2−2と変更する以外はそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
式1−2及び式2−2におけるR、R及びRは、上記式1−0及び式2−0におけるR、R及びRとそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
式1−2及び式2−2におけるR11〜R13はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。上記態様であると、分解性及び感度により優れ、更に、合成時における簡便性や収率に優れる。
また、式1−2及び式2−2におけるR11〜R13は、同じ基であることが好ましい。
また、本開示の光重合開始剤は、下記式3又は式4で表されるアシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。
式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
式3及び式4におけるR21、q1及びq2は、上記式1−0及び式2−0におけるR、m1及びm2とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
式3及び式4におけるR22は、2〜10価の炭化水素基、又は、1〜10価の炭化水素基、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、イミド結合、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれた構造を2以上結合した2〜10価の連結基であることが好ましく、2〜10価の炭化水素基、又は、1〜10価の炭化水素基、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、イミド結合、酸素原子よりなる群から選ばれた構造を2以上結合した2〜10価の連結基であることがより好ましい。
上記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であってもよく、1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基を組み合わせた基であってもよい。また、上記脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
また、上記炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アシルオキシ基が挙げられる。
なお、式3及び式4におけるR23及びR24は上記式1−0及び式2−0におけるRと同義であり、好ましい態様も同様である。
22の好ましい例としては、公知の多官能カルボン酸、多官能アミン、多官能フェノール、多官能チオールあるいは多官能基カルボン酸クロリドを原料に用いて得られる下記のような具体的構造が挙げられる。なお、波線部分は、式3又は式4におけるアシル基のα位(α炭素)との結合位置を表す。
多官能カルボン酸を用いた場合の例としては、下記に示す具体的構造が挙げられる。なお、pは0又は1を表し、qは0〜50の整数を表す。
多官能アミンを用いた場合の例としては、下記に示す具体的構造が挙げられる。
多官能チオールを用いた場合の例としては、下記に示す具体的構造が挙げられる。
多官能フェノールを用いた場合の例としては、下記に示す具体的構造が挙げられる。
多官能カルボン酸クロリドを用いた場合の例としては、下記に示す具体的構造が挙げられる。
特定アシルホスフィンオキシド化合物の好ましい具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。なお、化合物B1−(10)〜(12)における括弧の右下のnは、2以上の整数を表し、化合物A2−(10)、化合物B2−(10)及び化合物B2−(11)における括弧の右下のmは、1以上の整数を表し、また、化合物B2−(12)及び化合物B2−(13)における括弧の右下の数値は、モル比を表す。
<光重合開始剤の製造方法>
本開示の光重合開始剤の製造方法としては、特に制限はないが、ルイス酸の存在下、リン原子に結合する芳香族アシル基を1つ以上有するアシルホスフィンオキシド化合物と、酸ハライド又は酸無水物とを反応させる工程を含む方法が好ましく挙げられる。
上記アシルホスフィンオキシド化合物に対し、酸ハライド又は酸無水物を用い、ルイス酸の存在下、Friedel−Craftsアシル化反応を行うことにより、容易、かつ収率よく本開示の光重合開始剤を得ることができる。
リン原子に結合する芳香族アシル基を1つ以上有するアシルホスフィンオキシド化合物としては、所望の光重合開始剤に応じて、適宜選択すればよいが、モノ芳香族アシルジアリールホスフィンオキシド化合物、又は、ビス芳香族アシルモノアリールホスフィンオキシド化合物が好ましく挙げられる。
酸ハライド又は酸無水物としては、反応性の観点から、酸クロリドであることが好ましい。また、酸ハライド又は酸無水物としては、カルボン酸ハライド又はカルボン酸無水物であることが好ましく、カルボン酸クロリドであることがより好ましい。
ルイス酸としては、Friedel−Craftsアシル化反応に用いるルイス酸を好適に用いることができる。
用いるルイス酸としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム等のアルミニウム化合物、塩化鉄、臭化鉄などの鉄化合物、塩化ビスマス(III)などのビスマス化合物、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等のホウ素化合物、四塩化チタン等のチタン化合物、塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物、四塩化スズ、三塩化スズ等のスズ化合物、塩化インジウムなどのインジウム化合物、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム(III)等、水中で安定なトリフルオロメタンスルホン酸化合物又はこれらの水和物が好ましく、アルミニウム化合物、鉄化合物、スズ化合物、又は、亜鉛化合物が更に好ましく、アルミニウム化合物、鉄化合物、又は、亜鉛化合物が特に好ましい。上記態様の場合、反応性及び化合物安定性に優れ、更に原料を容易に入手できる。
上記工程における反応温度及び反応時間は、特に制限はなく、反応の進行状況に応じ適宜設定すればよいが、反応温度は、0℃〜40℃であることが好ましい。
上記工程においては、溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、特に制限はないが、ハロゲン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、又は、ニトロベンゼンが挙げられる。中でも、ハロゲン系溶媒が好ましく、ジクロロメタンが特に好ましい。
また、上記工程後、カラムクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ(TLC)、再結晶、再沈澱等の公知の方法により、精製を行うことが好ましい。
(重合性組成物)
本開示の重合性組成物は、本開示の光重合開始剤、及び、重合性化合物を含む。
本開示の重合性組成物は、活性放射線により硬化可能なインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射により重合性組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
また、本開示の重合性組成物は、活性放射線硬化型の重合性組成物であり、油性重合性組成物であることが好ましい。本開示の重合性組成物は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、重合性組成物の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
また、本開示の重合性組成物は、インク組成物、レジスト、平版印刷版の画像記録層、コート剤、塗料、接着剤、粘着剤、コーティング、機能性膜、フィルム、光学材料、印刷版材料、半導体材料、記録材料、紙類添加剤、医療用材料、プラスチック、機能性ゲル、化粧品材料等、種々の用途に用いることができる。中でも、インク組成物として好適に用いることができ、インクジェット記録用インク組成物(「インクジェットインク組成物」ともいう。)としてより好適に用いることができる。
本開示の重合性組成物は、本開示の光重合開始剤を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本開示の重合性組成物における本開示の光重合開始剤の含有量については、特に制限はないが、重合性組成物の全質量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることが更に好ましく、4〜8質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れる。
<重合性化合物>
本開示の重合性組成物は、重合性化合物を含む。
重合性化合物としては、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
また、重合性化合物は、エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
重合性化合物は、反応速度、硬化膜物性、組成物の物性等を調整する目的で、1種又は複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。単官能重合性化合物の割合が大きいと硬化物は柔軟なものになりやすく、多官能重合性化合物の割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。したがって、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との割合は用途に応じて任意に決定されるものである。
重合性化合物としては、光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性化合物を好ましく使用することができる。
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方、あるいは、いずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方、あるいは、いずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
ラジカル重合性化合物として用いられる(メタ)アクリレート類としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、二官能の(メタ)アクリレート、三官能の(メタ)アクリレート、四官能の(メタ)アクリレート、五官能の(メタ)アクリレート、六官能の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキシド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ラジカル重合性化合物として用いられる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
ラジカル重合性化合物として用いられる芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
更に、本開示に用いられるラジカル重合性化合物としては、例えば、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなど)、シアン化ビニル類((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、N−ビニルラクタム類(N−ビニルカプロラクタムなど)などが挙げられる。
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合には(メタ)アクリレート類及びビニルエーテル類の組み合わせが硬化性の観点から好ましい。また、本開示における重合性化合物は、(メタ)アクレートの全質量に対して、ビニルエーテルを1〜40質量%含有することが好ましく、2〜30質量%含有することがより好ましく、8〜25質量%含有することが特に好ましい。
本開示の重合性組成物における重合性化合物の含有量は、その用途にも関連するが、硬化性の観点から、重合性組成物の全質量に対し、10〜95質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。
また、本開示の重合性組成物における本開示の光重合開始剤と重合性化合物との含有量比(質量比)は、光重合開始剤:重合性化合物=1:5〜1:1,000であることが好ましく、1:7〜1:200であることがより好ましく、1:10〜1:100であることが更に好ましい。
<着色剤>
本開示の重合性組成物は、インク組成物等の用途に用いる場合、着色剤を含んでいてもよい。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等)も挙げられる。なお、上記顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載のものなどもが挙げられる。
上記有機顔料及び無機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、青、シアン顔料、緑色顔料、オレンジ顔料、茶色顔料、バイオレット顔料、黒色顔料、白色顔料、などが挙げられる。
上記イエロー顔料は、イエロー色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアゾイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー219等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)等のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー166等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー24(フラバントロンイエロー等)等のアントラキノン顔料、C.I.ピグメントイエロー110(キノフタロンイエロー等)等のキノフタロン顔料、C.I.ピグメントイエロー139(イソインドリンイエロー等)等のイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー60(ピラゾロンイエロー等)等のピラゾロン顔料、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー194等のアセトロン顔料、C.I.ピグメントイエロー150等の金属錯塩顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)等のニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)等の金属錯塩アゾメチン顔料などが挙げられる。
上記マゼンタ顔料は、赤あるいはマゼンタ色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)等のモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド6等のB−ナフトール顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B等)、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド48(B−オキシナフト酸レーキ等)のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242(縮合アゾレッド等)等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)、C.I.ピグメントレッド172(エリスロシンレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)等のチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)等のペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)等のアリザリンレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド208等のナフトロン顔料、C.I.ピグメントレッド247等のナフトールAS系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272等のジケトピロロピロール顔料などが挙げられる。
上記シアン顔料は、青あるいはシアン色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16(フタロシアニンブルー等)等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)等のアルカリブルー顔料などが挙げられる。
上記緑色顔料は、緑色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10等のアゾ金属錯体顔料などが挙げられる。
上記オレンジ顔料は、オレンジ色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ5等のΒ−ナフトール顔料、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ74等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントオレンジ61等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72等のアセトロン顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34等のピラゾロン顔料などが挙げられる。
上記茶色顔料は、茶色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32等のナフトロン顔料などが挙げられる。
上記バイオレット顔料は、紫色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントバイオレット32等のナフトロン顔料、C.I.ピグメントバイオレット29等のペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット17、C.I.ピグメントバイオレット50等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37等のジオキサジン顔料などが挙げられる。
上記黒色顔料は、黒色を呈する顔料であり、例えば、MOGUL Eなどのカーボンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)等のインダジン顔料、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32などのペリレン顔料などが挙げられる。
上記白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)、などが挙げられる。白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
中でも、上記酸化チタンは、他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れていることから、好適に使用される。なお、上記酸化チタンに加えて他の白色顔料(上述した白色顔料以外のものであってもよい。)を併用してもよい。
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、などの分散装置を好適に使用することができる。
本開示においては、上記顔料の分散を行う際に、後述する分散剤を添加することが特に好ましい。
また、上記顔料の分散の際に、必要に応じて、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを添加してもよい。上記分散助剤の上記重合性組成物における含有量としては、上記顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。
上記顔料を上記重合性組成物に分散させる際に使用する分散媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、低分子量である上記重合性化合物を該分散媒としてもよいし、溶媒を分散媒としてもよい。ただし、本開示の重合性組成物は、放射線硬化型の重合性組成物であり、例えば、重合性組成物を記録媒体上に適用後、硬化させるため、上記溶媒を含まず無溶剤であることが好ましい。これは、硬化された硬化物中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このため、上記分散媒として、上記重合性化合物を用い、その中でも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが、分散適性や重合性組成物のハンドリング性向上の点で好ましい。
上記顔料の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μm程度が好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、上記顔料の最大粒径としては、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。上記顔料の粒径は、上記顔料、分散剤、分散媒体の選択、分散条件、濾過条件の設定などにより調整することができ、上記顔料の粒径を制御することにより、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
なお、上記顔料の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
着色剤は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
重合性組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、重合性組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
<他の重合開始剤>
本開示の重合性組成物は、必要に応じて、本開示の光重合開始剤以外のその他の重合開始剤を含有することができるが、含有しないことが好ましい。
上記その他の重合開始剤としては、本開示の光重合開始剤以外の光重合開始剤、及び、熱重合開始剤が挙げられ、ラジカル重合又はカチオン重合の重合開始剤であることが好ましく、ラジカル重合開始剤が特に好ましい。例えば、特開2009−138172号公報に記載の重合開始剤を用いることができる。
他の重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
他の重合開始剤の総含有量は、重合性組成物全体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、含まないことが特に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れる。
また、他の重合開始剤の総含有量は、本開示の光重合開始剤の含有量よりも少ないことが好ましい。
<分散剤>
本開示の重合性組成物は、分散剤を含有していてもよい。特に顔料を使用する場合において、顔料を重合性組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本開示における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580、EFKA7701(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
重合性組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、重合性組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
<界面活性剤>
本開示の重合性組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、上記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。上記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。上記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。上記ポリシロキサン化合物としては、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いられてもかまわない。また、中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物がインクジェットにおける吐出安定性改良の観点で好ましい。ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、シリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
本開示の重合性組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、重合性組成物全体の質量に対し、0.0001〜1質量%であることが好ましい。
<溶剤>
本開示の重合性組成物は、溶剤を含有していてもよい。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、トリプロリレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ−ブチロラクトンのような環状エステル系溶剤、2−メチルピロリドン、2−ピロリドンのようなアミド系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、溶剤の量は重合性組成物の全質量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
重合性組成物において顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶剤で、重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、無溶剤であることが好ましい。
<増感剤>
本開示の重合性組成物は、増感剤を含有していてもよい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン等)等が挙げられる。中でも増感剤としては、チオキサントン類が好ましい。チオキサントン類としては、ジエチルチオキサントン(DETX)、イソプロピルチオキサントン(ITX)、SP7010(LAMBSON社製)等が例示できる。その他、国際公開第2013/146062号に記載の増感剤も使用することができる。
<他の添加剤>
本開示の重合性組成物には、各種用途に応じて、他の添加剤を含有していてもよい。
他の添加剤としては、種々の公知の添加剤を用いることができる。
他の添加剤としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、共増感剤、紫外線吸収剤、塩基性化合物、レベリング添加剤、マット剤、ワックス、重合禁止剤、酸化防止剤、及び、粘着付与剤などを含有させることができる。
本開示の重合性組成物をインクジェットインク組成物として用いる場合、重合性組成物は、インクジェットノズルからの吐出性を考慮し、吐出時の温度での重合性組成物の粘度が0.5〜30mPa・sであることが好ましく、0.5〜20mPa・sであることがより好ましく、1〜15mPa・sであることが最も好ましい。この範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
なお、25℃(室温)での重合性組成物の粘度は、1mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましく、2.5mPa・s以上30mPa・s以下であることが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中への重合性組成物の浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減が可能となり、更に液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。また、25℃での重合性組成物の粘度が200mPa・s以下であると、重合性組成物の装置内におけるインクジェットヘッド等へのデリバリーが容易である。
なお、本開示における組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(東機産業(株)製)により上記温度条件下で測定した値を用いるものとする。
本開示の重合性組成物をインクジェットインク組成物として用いる場合、重合性組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、23〜35mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点から、40mN/m以下が好ましい。
なお、本開示における組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、液温25℃の条件下で測定された値を用いるものとする。
(インクジェット記録方法)
本開示の重合性組成物は、インクジェットインク組成物として好適に用いることができる。
本開示のインクジェット記録方法は、特に制限はないが、記録媒体(支持体、記録材料等)上に、本開示の重合性組成物をインクジェット法により吐出する工程、及び、吐出された重合性組成物に活性放射線を照射して、上記重合性組成物を硬化する工程を含むことが好ましい。本開示のインクジェット記録方法は、上記2つの工程を含むことにより、記録媒体上において硬化した重合性組成物により画像が形成される。
また、本開示の印刷物は、本開示の重合性組成物により記録された印刷物であり、本開示のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることが好ましい。
本開示のインクジェット記録方法には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
<インクジェット記録装置>
本開示のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本開示のインクジェット記録方法における記録媒体への重合性組成物の吐出を実施することができる。
本開示で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本開示の重合性組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本開示でいうdpi(dot per inch)とは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上述したように、本開示の重合性組成物は、吐出される重合性組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、重合性組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、重合性組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
また、吐出時の重合性組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。吐出時の重合性組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
次に、活性放射線の照射について説明する。
記録媒体上に吐出された重合性組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本開示の重合性組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、重合性組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
また、本開示の重合性組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
活性放射線源としては、水銀ランプやガスレーザー、固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットインク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本開示で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
本開示の重合性組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、重合性組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、重合性組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このように重合性組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾した重合性組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部まで重合性組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本開示のインクジェット記録方法に適用することができる。
本開示の重合性組成物は、複数のインクジェットインク組成物からなるインクセットとして使用することが好ましい。
本開示のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物(重合性組成物)の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物(重合性組成物)から記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本開示はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物(重合性組成物)との計7色が少なくとも含まれる本開示のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト、ライトシアン、ライトマゼンタ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。
<記録媒体>
本開示の重合性組成物を適用し得る記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができる。
各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPS(二軸延伸ポリスチレン)フィルム、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(二軸延伸ナイロン)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(セルローストリアセテート)フィルム等が挙げられる。
その他、記録媒体材料として使用し得るプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリアセタール、PVA(ポリビニルアルコール)、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も記録媒体として使用可能である。
本開示の重合性組成物は、本開示の重合開始剤を含有するため、活性放射線の照射により硬化し得る硬化性のインクジェットインク組成物として好適に用いることができる。また、本開示の重合性組成物は、非吸収性の記録媒体上にも、高品質の画像をデジタルデータに基づき直接形成し得ることから、大面積の印刷物の作製にも好適に使用される。
本開示の重合性組成物は、本開示の重合開始剤を含有することにより低露光量でも硬化し得る。このため、低露光強度の安価な光源を用いることによるシステムやランニングコストの削減、露光時間を短縮することによる印刷速度の向上に寄与するものと思われる。更に、露光後の硬化速度が速いことにより画像のにじみを抑制ができ、鮮明な画像を形成することができる。
(アシルホスフィンオキシド化合物)
本開示のアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1又は式2で表される部分構造を有する。
式1及び式2中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
また、本開示のアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1−00又は式2−00で表される部分構造を有することが好ましい。
式1−00及び式2−00中、Calは脂肪族炭素原子を表し、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
更に、本開示のアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式1−0、式2−0、式3及び式4のいずれかで表されることがより好ましい。
式1−0及び式2−0中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
本開示のアシルホスフィンオキシド化合物の好ましい態様は、本開示の光重合開始剤として上述した好ましい態様とそれぞれ同様である。
本開示のアシルホスフィンオキシド化合物は、光重合開始剤として好適に用いることができる。
また、本開示のアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式A又は式Bで表されることがより好ましい。
式A及び式B中、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
上記式A及び式BにおけるR〜R、m1、m2、n及びpは、上記式1−0及び式2−0におけるR〜R、m1、m2、n及びpとそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
は、水素原子であることが好ましい。
上記式A又は式Bで表されるアシルホスフィンオキシド化合物は、光重合開始剤、及び、上記光重合開始剤の原料として好適に用いることができる。
本開示のアシルホスフィンオキシド化合物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法により製造すればよいが、上述した光重合開始剤の製造方法が好適に挙げられる。
また、上記式A又は式Bで表されるアシルホスフィンオキシド化合物におけるアクリル基の形成方法は、例えば、脱離基Xを用い、X−CH−CH(R)−CO−で表される構造より脱離反応を行い、アクリル基を形成する方法が好適に挙げられる。脱離基としては、塩素原子及び臭素原子が好適に挙げられる。
以下、本発明の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本発明の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
実施例で使用した化合物A1−(1)〜(7)、A2−(1)〜(10)、B1−(1)〜(10)、B2−(1)〜(13)、及び、A3−(1)〜(10)は、上述した実施化合物A1−(1)〜(7)、A2−(1)〜(10)、B1−(1)〜(10)、B2−(1)〜(13)、及び、A3−(1)〜(10)とそれぞれ同じ化合物である。
(実施例1)
TPO(30.0g,86.1mmol、チバ・ジャパン(株)製LUCIRIN(登録商標) TPO)に対してジクロロメタン(CHCl)570mlを加えて溶解させた後、無水塩化アルミニウム(III)(AlCl,45.9g,344.5mmol)を分割添加し、撹拌して溶解させた。その後、3−クロロプロピオン酸クロリド(49.7ml,516.7mmol)滴下して室温(rt、10℃〜35℃、以下同様)で7時間撹拌した。反応液を氷水中に徐々に滴下して反応を停止した後、ジクロロメタンで抽出、水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ別し、ろ液を濃縮したのちにシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=50/50(体積比))で精製した後にヘキサンで分散させて得た固体をろ過、ヘキサンで洗浄して白色の目的化合物A1−(1)(28.2g,75%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.89 (3H, s), 2.05 (3H, s), 2.20 (3H, s), 3.13 (2H, t, d = 8.0 Hz), 3.84 (2H, t, d = 8.0 Hz), 6.88 (1H, s), 7.50-7.61 (6H, m), 7.97-8.05 (4H, m).
(実施例2)
3−クロロプロピオン酸クロリドをクロロ酢酸クロリドに変更した以外は化合物A1−(1)と同様にして化合物A1−(2)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.88 (3H, s), 2.05 (3H, s), 2.20 (3H, s), 4.37 (2H, s), 6.90 (1H, s), 7.50-7.62 (6H, m), 7.97-8.02 (4H, m).
(実施例3及び4)
<化合物A1−(3)の合成>
化合物A1−(1)(50mg,0.114mmol)をテトラヒドロフラン1.2mlに溶解させた後にトリエチルアミン0.05mlを加えて70℃2時間撹拌させた。反応後、析出した塩をろ別した後にろ液を濃縮してシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=40/60(体積比))で精製して黄色の目的油状化合物A1−(3)を定量的に得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.82 (3H, s), 2.05 (3H, s), 2.14 (3H, s), 5.96 (1H, d, d = 16 Hz), 6.12 (1H, d, d = 8.0 Hz), 6.51 (1H, q, d = 8.0 Hz), 6.89 (1H, s), 7.50-7.60 (6H, m), 7.96-8.01 (4H, m).
<化合物A2−(1)の合成>
化合物A1−(1)(9.66g,22.0mmol)をテトラヒドロフラン65mlに溶解させた後にトリエチルアミン13mlを加え、さらにトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(2.50g,6.27mmol)を加えて70℃2時間撹拌させた。反応後、析出した塩をろ別した後にろ液を濃縮してシリカゲルカラム(酢酸エチル)で精製して黄色の目的化合物A2−(1)(7.96g,79%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 0.88 (3H, t, d = 8.0 Hz), 1.49 (2H, q, d = 8.0 Hz), 1.89 (9H, s), 2.01 (9H, s), 2.18 (9H, s), 2.64 (6H, t, d = 8.0 Hz), 2.74-2.95 (18H, m), 4.05(6H, s), 6.86 (3H, s), 7.49-7.60 (18H, m), 7.96-8.01 (12H, m).
(実施例5)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)をペンタエリトリトール(3−メルカプトプロピオネート)に変更し、化合物A1−(1)の当量を多官能チオールに対して3.5当量から4.5当量に変更した以外は化合物A2−(1)と同様にして化合物A2−(2)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.86 (12H, s), 2.01 (12H, s), 2.17 (12H, s), 2.64 (8H, t, d = 8.0 Hz), 2.71-2.95 (24H, m), 4.16 (8H, s), 6.85 (4H, s), 7.49-7.60 (24H, m), 7.96-8.01 (16H, m).
(実施例6)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)をジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)に変更し、化合物A1−(1)の当量を多官能チオールに対して3.5当量から6.6当量に変更する以外は化合物A2−(1)と同様にして化合物A2−(3)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.86 (18H, s), 2.01 (18H, s), 2.16 (18H, s), 2.63 (12H, t, d = 8.0 Hz), 2.76-2.94 (36H, m), 3.42 (4H, s), 4.10-4.15 (12H, m), 6.85 (6H, s), 7.49-7.60 (36H, m), 7.96-8.01 (24H, m).
(実施例7)
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)をビス(ヘキサメチレン)トリアミンに変更し、化合物A1−(3)の当量を3.5当量から5.75当量に変更する以外は化合物A2−(1)と同様にして化合物A2−(4)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.22-1.27 (8H, m), 1.36-1.46 (8H, m), 1.86 (15H, s), 2.02 (15H, s), 2.17 (18H, s), 2.30-2.38 (8H, m), 2.76-2.84 (20H, m), 6.84 (5H, s), 7.49-7.59 (30H, m), 7.96-8.01 (20H, m).
(実施例8)
原料を変更した以外は、実施例1〜7のいずれかと同様にして、化合物A1−(2)、A1−(4)〜(7)、A2−(2)、A2−(4)〜(9)、B1−(1)〜(9)、及び、B2−(1)〜(9)をそれぞれ合成した。
(実施例9)
原料として2官能の酸クロリドを用いた以外は、実施例1と同様にして、化合物B1−(10)〜(12)をそれぞれ合成した。
化合物B1−(10):Mw=1,600
化合物B1−(11):Mw=1,500
化合物B1−(12):Mw=1,700
(実施例10)
<化合物A2−(10)の合成>
メチルエチルケトン20mlを窒素雰囲気下外温70℃で撹拌した。そこにメチルエチルケトン80mlに溶解させた原料化合物A1−(3) 5.00g(12.4mmol)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)571mg(2.48mmol)を2時間かけて滴下し、その後8時間撹拌した。室温まで放冷した後、メチルエチルケトン約90ml濃縮した後にヘキサンで晶析し、ろ別及び乾燥して化合物A2−(10)を3.1g得た。得られたポリマーはH NMRによって組成を確認し、GPCによって分子量測定を行った(Mw=3,200)。
(実施例11)
原料を変更した以外は、実施例10と同様にして、化合物B2−(10)〜(13)をそれぞれ合成した。
化合物B2−(10):Mw=2,200
化合物B2−(11):Mw=1,500
化合物B2−(12):Mw=3,200
化合物B2−(13):Mw=5,300
(実施例12〜54、及び、比較例1〜5)
<分解収率の算出方法>
・試料調整
溶媒には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)を用いて溶液を作製した。表1〜表4に記載の化合物の濃度は1cmセルで波長365nm付近の吸光度(Abs)が1前後になるように0.5〜1mM程度に調整した。なお、1M=1mol/Lである。
・紫外線(UV)露光
ウシオ電機(株)製高圧水銀ランプを用いて光露光を行った。波長365nmの光を単色で取り出すため370nmのバンドパスフィルターを使用した。また、露光強度36mW/cm、露光面積0.64cm、容量4.3ml、時間90sとした。
・吸収測定
Agilent Technologies社製のHP8453を用いて吸収測定を行った。
・分解収率計算
分解収率は、以下の式により計算した。
分解収率=(分解分子数)/((照射フォトン数)×(吸収率))×(分子内のアシルホスフィンオキシド構造の官能基数)
なお、各値は以下の通りである。
分解分子数=反応モル数(mol)×アボガドロ数(mol−1
反応モル数(mol)=初期濃度(mol/L)×反応率×容量(L)
反応率=1−(露光後の吸光度)/(露光前の吸光度)
(ここでの吸光度は365nmにおける露光前後のそれぞれの値を示す)
照射フォトン数=照射エネルギー/1フォトンのエネルギー(eV)
照射エネルギー=露光強度(W)×露光面積S×時間(t)
吸収率=1−10−吸光度:(ただし、ここでの吸光度は365nmにおける吸光度の露光前後での平均値とした。)
<硬化感度の評価>
−インク組成物(重合性組成物)の作製方法−
重合性化合物として3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート(SR341、Sartomer社製)を約870質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート、(SR344、Sartomer社製)を約10質量部、光重合開始剤として表1〜表4に記載の化合物を約8質量部、シアンミルベースAを10質量部、界面活性剤(BYK307、シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)を0.1質量部加えて混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。
また、シアンミルベースAは下記のようにして調製した。
−シアンミルベースAの調製−
Heliogen Blue D 7110 F(シアン顔料、BASF社製)を300質量部と、SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)を620質量部と、SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
−インクジェット画像記録−
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置及び上記で得られたインク組成物を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッド(ノズルの開口部の直径25μm)からなり、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に40℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜10pl(ピコリットル)のマルチサイズドットを4,800×4,800dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度700mW/cmに集光し、被記録媒体上にインク組成物が着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。紫外線ランプには、HAN250NLハイキュア水銀ランプ((株)ジーエス・ユアサ コーポレーション製)を使用した。なお、本開示でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。被記録媒体として、エステルフィルムE5000(膜厚125μm、東洋紡績(株)製)を用いた。
−硬化感度の評価−
上記インクジェット画像記録に従い、平均膜厚が12μmのベタ画像の描画を行い、紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
また、硬化感度は以下の基準で評価した。
A:3,500mJ/cm未満
B:3,500mJ/cm以上4,000mJ/cm未満
C:4,000mJ/cm以上4,500mJ/cm未満
D:4,500mJ/cm以上5,000mJ/cm未満
E:5,000mJ/cm以上
なお、実施例13では、増感剤としてイソプロピルチオキサントン(ITX、東京化成工業(株)製)を2%更に添加した以外は、実施例12と同様にしてインク組成物(重合性組成物)を調製した。
各比較例で使用した表1〜表4に記載の化合物C1−(1)〜(3)、並びに、C2−(1)及び(2)を以下に記載する。なお、下記化合物中、Buはn−ブチル基を表す。
<A3−(1)の合成方法>
TPO(500g,144mmol、チバ・ジャパン(株)製LUCIRIN(登録商標) TPO)に対してジクロロメタン(CHCl)500mlを加えて溶解させた後、無水塩化アルミニウム(III)(AlCl,576g,432mmol)を分割添加し、撹拌して溶解させた。その後、3−ブロモプロピオン酸クロリド(145ml,173mmol)滴下して室温で7時間撹拌した。反応液を氷水中に徐々に滴下して反応を停止した後、ジクロロメタンで抽出、水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ別し、ろ液を濃縮した後にシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=40/60(体積比))で精製した後にヘキサンで分散させて得た固体をろ過し、ヘキサンで洗浄して白色の目的化合物A3−(1)(365g,54%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.89 (3H, s), 2.05 (3H, s), 2.20 (3H, s), 4.24 (2H, s), 6.90 (1H, s), 7.50-7.61 (6H, m), 7.97-8.01 (4H, m).
<A3−(2)の合成方法>
クエン酸(2.88g,15.0mmol)、化合物A3−(1)(23.22g,49.5mmol)、トリエチルアミン(15.2g,150mmol)、に対してアセトニトリル60mlを加えて65℃で7時間撹拌した。反応液を濃縮し、酢酸エチル100mlを加えて分散させて、ろ過した後、ろ液をシリカゲルカラム(酢酸エチル)で精製して白色の目的化合物A3−(2)(10.3g)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.89 (6H, s), 1.95(3H, s), 1.98(3H, s), 2.02(6H, s),2.20 (6H, s), 2.21(3H, s), 3.06 (4H, s), 4.86 (4H, s), 4.96 (2H, s), 6.89 (3H, m), 7.49-7.60 (18H, m), 7.97-8.02 (12H, m).
<A3−(3)〜A3−(5)、A3−(8)及びA3−(9)の合成方法>
カルボン酸としてクエン酸の代わりにテトラアシッド(Frontier Scientific社製)を用いた以外はA3−(2)と同様にして、A3−(3)を、リンゴ酸を用いてA3−(4)を、グリコール酸を用いてA3−(5)、トリメシン酸を用いてA3−(8)、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)を用いてA3−(9)をそれぞれ合成した。
<A3−(6)、及び、A3−(7)の合成方法>
酸クロリドとして、ドデカン二酸ジクロリドを用いてTPOとドデカン二酸ジクロリドとのモル比を2.5:1に変更した以外は化合物A3−(1)と同様にして、化合物をA3−(6)を合成した。
また、酸クロリドとしてラウロイルクロリドを用いた以外は化合物A3−(1)と同様にして化合物A3−(7)を合成した。
<A3―(10)の合成方法>
イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル(10.36g,30mmol)に対して、塩化チオニル30ml、N,N−ジメチルホルムアミド0.1ml加えて100℃で3時間撹拌した。その後反応液を減圧下で濃縮乾固した後、TPO(36.6g,105mmol)、ジクロロメタン(CHCl)100mlを加えた。その後無水塩化アルミニウム(III)(AlCl,48g,360mmol)を分割添加し、添加後に還流しながら8時間撹拌した。反応液を氷水中に徐々に滴下して反応を停止した後、酢酸エチルで抽出、水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ別し、ろ液を濃縮した後にシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=10/90(体積比))で精製した後にヘキサンで分散させて得た固体をろ過し、ヘキサンで洗浄して白色の目的化合物A3−(10)(27.5g,69%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 1.88 (9H, s), 2.01 (9H, s), 2.19 (9H, s), 3.02 (6H, t, d = 8.0 Hz), 4.24 (6H, t, d = 8.0 Hz), 6.86 (3H, s), 7.49-7.60 (18H, m), 7.94-8.01 (12H, m).
<B2−(14)の合成方法>
原料を変更した以外は、実施例10と同様にして、化合物B2−(14)を合成した。
化合物B2−(14):Mw=15,000、Mw以外は、化合物B2−(13)と同じ構造の化合物である。
(実施例55〜64)
実施例12と同様にして、下記表5にそれぞれ記載したA3−(1)〜(10)を使用した場合における分解率及び硬化感度を評価した。評価結果を表5に示す。
(実施例65〜82)
実施例12と同様にして、下記表6にそれぞれ記載した化合物を含有するインク組成物をそれぞれ作製した。表6に記載の化合物、又は、作製したインク組成物を用い、以下の評価を行った。評価結果をまとめて表6に示す。
<アシルホスフィンオキシド化合物における連結基の光安定性評価>
表6に記載した化合物をトルエンに溶解させ1%溶液を調製し、24μm厚バーでポリエチレンテレフタレート(PET)(8×16cm)上に塗布して窒素パージ式小型コンベアUV照射装置(CSN2−40A、(株)GSユアサ製)で5分間N置換した後、搬送速度50m/min、露光強度4mW、波長365nm、10回露光した後、PET膜をTHF4mlにて抽出した。得られた溶液をLC−MS(液体クロマトグラフ質量分析計)にて分析して、アシルホスフィンオキシド化合物のピーク及びアシルホスフィンオキシド構造の分解に起因する分解物ピークを特定し、これらピーク以外の分解物ピークの合計の面積%を算出して、その値に基づき下記のように評価した。C以上を実用性上問題のないレベルと評価する。
A:0%以上2%未満
B:2%以上4%未満
C:4%以上7%未満
D:7%以上10%未満
E:10%以上
<インクジェット吐出性(吐出性)>
得られたインク組成物、及び、ピエゾ型インクジェットヘッドQS−256/30(FUJIFILM DIMATIX社製)でノズル256本、各吐出液滴量30pL、周波数33kHz、25℃で10分間吐出を行い、吐出後のノズル詰まり評価を行った。下記5段階により評価した。
A:詰まり無し
B:詰まり本数が1〜2本
C:詰まり本数が3〜5本
D:詰まり本数が6〜20本
E:詰まり本数が21本以上
<溶出(マイグレーション)量評価>
得られたインク組成物を使用し、実施例12と同様の上記インクジェット画像記録方法によって得られた印刷物を1平方デシメートルの大きさに切り取り、印刷表面に水:エタノール=20:80(質量比)混合液10mlを滴下し、混合液が揮発しないように印刷物をガラス密閉容器に入れて、40℃で10日間放置した。その後、混合液中に含まれる印刷物からの光重合開始剤(アシルホスフィン化合物)及び光重合開始剤の分解物の溶出量の合計を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)にて定量し、下記5段階により評価した。C以上を実用上問題のないレベルと評価する。
A:10ppb未満
B:10ppb以上30ppb未満
C:30ppb以上100ppb未満
D:100ppb以上300ppb未満
E:300ppb以上
アミノ結合やチオエーテル結合を連結基に有する化合物に関して、光安定性が低い理由としては、発生したラジカルがヘテロ原子上に連鎖移動するなど複雑な反応に関与し、2量化や結合解裂などの副反応が起こっているためと考えられる。また、化合物A1−(1)や化合物A3−(1)は、ハロゲン原子が酸性度の高い隣接プロトンと塩酸あるいは臭化水素酸などとして脱離しやすいために安定性が低くなると考えられる。
実施例67及び実施例68を比較すると、アシルホスフィンオキシド構造におけるリン原子に結合する芳香族アシル基の芳香環に更に連結するカルボニル基に連結する炭素原子が脂肪族炭素原子である化合物A3−(8)を用いた実施例67のほうが、上記炭素原子が芳香族炭素原子である化合物A1−(7)を用いた実施例68と比べ、吐出性により優れる。
実施例69及び実施例70を比較すると、上記式2Bにおける上記Lがアルキレン基である化合物B1−(10)を用いた実施例69のほうが、上記Lがアリーレン基である化合物B1−(12)を用いた実施例70と比べ、吐出性により優れる。
実施例71及び実施例72を比較すると、分子量又は重量平均分子量が300以上10,000以下である化合物B2−(13)を用いた実施例71のほうが、重量平均分子量が10,000を超える化合物B2−(14)を用いた実施例72と比べ、吐出性により優れる。
実施例73〜実施例76と実施例75〜77とを比較すると、連結基がアミノ結合、チオエーテル結合、及び、ハロゲン原子のいずれも有しない化合物を用いたほうが、光安定性により優れ、溶出量もより抑えることができる。
また、実施例77〜実施例80に示すように、分子内にアシルホスフィンオキシド構造を2つ以上有する化合物A3−(2)、A3−(3)又はA3−(6)を用いた実施例77〜実施例79のほうが、分子内にアシルホスフィンオキシド構造を1つのみ有する化合物A3−(7)を用いた実施例80と比べ、マイグレーション量がより少ない。
2015年11月20日に出願された日本国特許出願第2015−227695号、及び、2016年8月31日に出願された日本国特許出願第2016−169969号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (17)

  1. アシルホスフィンオキシド構造におけるリン原子に結合する芳香族アシル基の芳香環に更に、炭素原子に連結するカルボニル基が1つ以上直接結合した構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物であり、
    前記カルボニル基に連結する前記炭素原子が、脂肪族炭素原子である
    光重合開始剤。
  2. 下記式1−00又は式2−00で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物である光重合開始剤。

    式1−00及び式2−00中、Calは脂肪族炭素原子を表し、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
  3. 下記式1−0又は式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、請求項に記載の光重合開始剤。

    式1−0及び式2−0中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、かつ、R は、式1−0又は式2−0におけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
  4. 下記式1−1又は式2−1で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、請求項に記載の光重合開始剤。

    式1−1及び式2−1中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−1若しくは式2−1で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、かつ、R は、式1−1又は式2−1におけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0又は1を表す。
  5. 下記式1−2又は式2−2で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、請求項に記載の光重合開始剤。

    式1−2及び式2−2中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−2若しくは式2−2で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、かつ、R は、式1−2又は式2−2におけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R11〜R13はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表す。
  6. 下記式1A、式2A又は式2Bで表される構成単位を有する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の光重合開始剤。

    式1A、式2A及び式2B中、Lはそれぞれ独立に、単結合、又は、オリゴマー若しくはポリマー主鎖に連結する2価の連結基を表し、かつ、Lにおける前記2価の連結基は、式1Aにおけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、はそれぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表し、R1Aはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、かつ、R 1A は、式2Aにおけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、1Bは炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい2価の炭化水素基を表し、かつ、R 1B は、式2Bにおけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
  7. 前記式1Aが下記式1Cであり、前記式2Aが下記式2Cである、請求項に記載の光重合開始剤。

    式1C及び式2C中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、メチル基を表し、R1Aはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/又は硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
  8. 下記式3又は式4で表されるアシルホスフィンオキシド化合物である、請求項に記載の光重合開始剤。

    式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
  9. 分子内にアシルホスフィンオキシド構造を2つ以上有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の光重合開始剤。
  10. 2つ以上の前記アシルホスフィンオキシド構造を連結する連結基が、アミノ結合、チオエーテル結合、及び、ハロゲン原子のいずれも有しない、請求項に記載の光重合開始剤。
  11. 分子量又は重量平均分子量が300以上10,000以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光重合開始剤。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の光重合開始剤、及び、
    重合性化合物を含む
    重合性組成物。
  13. 記録媒体上に、請求項12に記載の重合性組成物をインクジェット法により吐出する工程、及び、
    吐出された重合性組成物に活性放射線を照射して、前記重合性組成物を硬化する工程を含む
    インクジェット記録方法。
  14. ルイス酸の存在下、リン原子に結合する芳香族アシル基を1つ以上有するアシルホスフィンオキシド化合物と、酸ハライド又は酸無水物とを反応させる工程を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光重合開始剤の製造方法。
  15. 下記式1−00又は式2−00で表される部分構造を有するアシルホスフィンオキシド化合物。

    式1−00及び式2−00中、Calは脂肪族炭素原子を表し、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
  16. 下記式1−0又は式2−0で表される、請求項15に記載のアシルホスフィンオキシド化合物。

    式1−0及び式2−0中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基、オリゴマー若しくはポリマーの主鎖と連結する連結基、又は、別の式1−0若しくは式2−0で表されるアシルホスフィンオキシド化合物のRに連結しオリゴマー若しくはポリマーを形成する連結基を表し、かつ、R は、式1−0又は式2−0におけるカルボニル基と脂肪族炭素原子により連結する基であり、Rは水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、m1は0〜4の整数を表し、m2は0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、pは0〜3の整数を表す。
  17. 下記式3又は式4で表される、請求項15に記載のアシルホスフィンオキシド化合物。

    式3及び式4中、R21はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又は、アルコキシ基を表し、R22はz価の有機基を表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素鎖の一部がカルボニル基、エステル結合、アミド結合、酸素原子、NR及び/若しくは硫黄原子により置換されていてもよい1価の炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、q1は0〜4の整数を表し、q2は0〜5の整数を表し、zは2〜10の整数を表す。
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