以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
1.内視鏡用クリップ装置
本発明において、内視鏡用クリップとは内視鏡下での処置の際、対象物(臓器の病変部)を封止したり、把持して反対牽引(カウンタートラクション)、止血、縫合、マーキングのために対象物を摘まむ器具である。本明細書では単に「クリップ」と記載することもある。本発明の内視鏡用クリップ装置におけるクリップは、主に病変部を把持するために用いられる。なお、クリップで病変部を把持した後、線状物を近位側に引いて病変部を牽引することも可能である。
本発明において、内視鏡用クリップ装置とは、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入され、クリップの開閉を制御して対象物を把持する装置である。本明細書では内視鏡用クリップ装置を単に「装置」または「クリップ装置」と記載することもある。
本発明において、軸方向とは外筒体や内筒体の長軸方向を指し、軸方向において近位側とは装置使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向を指す。また、本発明において径方向とは外筒体や内筒体の径方向を指し、径方向において内方とは外筒体や内筒体の中心側に向かう方向を指し、外方とは外筒体や内筒体の放射方向を指す。
図1は、本発明の内視鏡用クリップ装置1の斜視図を表す。本発明の内視鏡用クリップ装置1は、内筒体20と、ハンドル50と、線状物40と、クリップ30と、牽引部材60と、を有する。
内筒体20は、内腔に線状物40が配置され、遠位側にクリップ30が配置されるものである。内筒体20をクリップ30に対して軸方向に移動させることにより、クリップ30の開閉度を調整することができる。内筒体20は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。
内筒体20としては、例えば、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体や、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体が用いられる。
内筒体20の肉厚は特に制限されないが、内筒体20の可撓性と強度を両立するために、例えば、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、また、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。
本発明のクリップ装置1は、さらに外筒体10を有していてもよい。内筒体20は外筒体10内に配置される。外筒体10はいずれも内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通ってクリップ30を対象物の近くに搬送するまでの間に、クリップ30が内視鏡内の鉗子口、鉗子チャンネル内、病変部以外の体内組織等を傷付けることを防止する。
外筒体10は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。このため、外筒体10は、例えば、合成樹脂から形成された筒体、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体や、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体が用いられるが、中でも合成樹脂から形成された筒体が好ましく用いられる。また、外筒体10と内筒体20との位置関係を術者が目視で確認できるように、外筒体10は透明または半透明な材料から形成されていることが好ましい。
外筒体10の肉厚は特に制限されないが、外筒体10の可撓性と剛性を両立するために、例えば、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、また、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。
外筒体10や内筒体20を形成する合成樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂等の合成樹脂を用いることができる。滑り性の観点から、外筒体10や内筒体20を形成する合成樹脂は互いに異なる材料であることが好ましい。
ハンドル50は、装置を作動させる際に使用者が把持する部材であり、内筒体20の近位側に接続されている。図2は、本発明に係るハンドル50の斜視図を表し、図3は、図2のハンドル50をA方向から見た側面図を表し、図4は、図2のハンドル50をB方向から見た側面図を表す。
ハンドル50の大きさは、使用者が片手で把持するのに適していれば特に制限されず、例えば、長さは5cm以上10cm以下、最外径は0.5cm以上3cm以下にすることができる。
外筒体10は、内筒体20とともに遠位側から内視鏡の鉗子チャンネルを経て体内に挿入されるため、ハンドル50の外径は、内視鏡の鉗子チャンネルの内径よりも大きいことが好ましい。
ハンドル50の形状は、特に制限されるものではないが、遠位側に向かって外径が小さくなる錐形状であることが好ましい。後述するように、ハンドル50は直接的または間接的に内筒体20の近位側に接続されるため、内筒体20と接続されるハンドル50の遠位側の形状を遠位側に向かって外径を徐々に小さくすることにより、内筒体20とハンドル50を接続している箇所への応力集中を緩和し、内筒体20やハンドル50の変形や破損が抑止される。
ハンドル50の材料としては、例えば、ABSやポリカーボネート等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
図5は、本発明のハンドルと内筒体の接続状態を示す側面図を表す。図5に示すように、ハンドル50は、内筒体20と直接的に接続されてもよく、別の部材を介して間接的に接続されてもよい。ハンドル50は、内筒体20を配置するための筒状部51を有していることが好ましい。ハンドル50の筒状部51に内筒体20を挿入することにより、内筒体20とハンドル50を直接的に接続することができる。筒状部51の形状は、内筒体を挿入可能な筒形状を有していれば特に制限されず、例えば、円筒形状、角筒形状、半円筒形状、半角筒形状(コの字形の筒形状)に好ましく形成される。
ハンドル50と内筒体20との接続は、嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系等の接着剤を用いた接着、溶着等を用いることができる。また、ハンドル50の外側に軸方向に沿って内筒体20の外径よりも幅狭の溝が形成されている場合には、当該溝に内筒体20を押し込んで固定することによりハンドル50と内筒体20を接続してもよい。
図5に示すように、ハンドル50の遠位側に勾配部55が設けられていることが好ましい。より具体的には、勾配部55は、ハンドル50の遠位端を覆う中空の保護キャップであることが好ましい。ハンドル50の遠位側に勾配部55が設けられることにより、内筒体20が屈曲する際に、内筒体20とハンドル50の形状が急激に変化して、内筒体20やハンドル50が折れやすくなることを防止する。勾配部55は、遠位側に向かって外径が小さくなるよう勾配が設けられていることが好ましく、特に錐形状であることがより好ましい。
勾配部55は、弾性材料で形成されることが好ましい。勾配部55が弾性材料で形成されることにより、内筒体20が屈曲する際に、内筒体20材料とハンドル50材料の弾性が急激に変化して、内筒体20やハンドル50が折れることを防止する。弾性材料としては、例えばシリコーンゴム、ポリアミドエラストマーを用いることができる。
中空を有する勾配部55をハンドル50に接続しやすくするために、ハンドル50の遠位側には勾配部55の内腔に挿入される接続部52が設けられていてもよい。接続部52は、例えば円筒形状や半円筒形状に形成される。勾配部55との嵌合性を高めるために、接続部52の側部には環状の凸部が形成されてもよい。
ハンドル50には、線状物40を折り返す際に線状物を掛ける引掛部53が設けられていてもよい。図2および図4では、引掛部53は、ハンドル50の側部の遠位端部に形成されている。引掛部53は、線状物40を掛けるための溝である。溝は、切り欠き状の形状を含む窪んだ構造一般を指すものであり、窪みの深さや幅、個数に制限はない。また、溝の形成範囲は、ハンドル50の全周であっても一部であってもよいものとする。引掛部53に線状物40を掛けることにより、線状物40が弛み難くなるため、線状物40が引き出されて意図せずにクリップ30が閉じるリスクが低減される。
図1に示すように外筒体10の外側に、外筒体10の移動操作をしやすくする補助ハンドル70が設けられてもよい。補助ハンドル70は、最も簡便には、外径が内視鏡の鉗子チャンネルの内径よりも大きい筒形状に形成される。
補助ハンドル70の材料としては、例えば、シリコーン、ポリプロピレン等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
補助ハンドル70と外筒体10との接続は、嵌合、ねじ、カシメ等による機械的な固定、ポリウレタン系、エポキシ系、シアノ系、シリコーン系等の接着剤を用いた接着、溶着等を用いることができる。また、補助ハンドル70の外側に軸方向に沿って溝が形成されている場合には、補助ハンドル70の溝内、または溝を介して補助ハンドル70の内腔内に外筒体10を収容することにより、補助ハンドル70と外筒体10を接続してもよい。補助ハンドル70と外筒体10は、取り外し可能であってもよい。
外筒体10は、内筒体20とともに遠位側から内視鏡の鉗子チャンネルを経て体内に挿入される。したがって、内筒体20の近位側に接続され、外筒体10の近位側に位置するハンドル50の外径は、ハンドル50が鉗子チャンネル内に入ることを防ぐために、内視鏡の鉗子チャンネルの内径よりも大きいことが好ましい。同様に、補助ハンドル70の外径も内視鏡の鉗子チャンネルの内径よりも大きいことが好ましい。
内視鏡の鉗子チャンネルにクリップ装置1を挿入する際に、外筒体10の外面と鉗子チャンネルの内壁が接触することにより、外筒体10の位置が軸方向にずれて、鉗子チャンネル内で外筒体10からクリップ30が露出することがある。また、クリップ輸送時に、振動などにより、外筒体10の位置が軸方向にずれて、パッケージ内で外筒体10からクリップ30が露出することがある。このため、クリップ装置1には、内筒体20の外側で、外筒体10よりも近位側かつハンドル50よりも遠位側にスペーサーが設けられることが好ましい。スペーサーの近位端とハンドル50の遠位端、スペーサーの遠位端と外筒体10の近位端が当接するため、使用時や輸送時などに軸方向における外筒体10の位置がずれて、外筒体10からクリップ30が露出することを抑制できる。特に勾配部55を設けた場合には、勾配部55の遠位側が外筒体10の内径より細いと、勾配部55の遠位側が外筒体10内に入り込み、外筒体10の位置が軸方向にずれて、パッケージ内で外筒体10からクリップ30が露出することがあるため、スペーサーを設けることが有効である。
スペーサーとしては、例えば、内腔を有している円筒形状や角筒形状の筒状部材等を用いることができる。
スペーサーが外筒体10内に収められることを抑制するために、スペーサーの遠位端の外径は外筒体10の近位端の内径よりも大きいことが好ましい。なお、スペーサーの遠位端と外筒体10の近位端が当接するため、スペーサーの遠位端の内径は外筒体10の近位端の外径より小さい。また、スペーサーの内側にハンドル50が収納されて、外筒体10の軸方向の位置がずれることを抑制するために、スペーサーの近位端の内径は、ハンドル50の遠位端の外径よりも小さい。
また、スペーサーの内筒体20の外側への取り付けおよび取り外しが容易に行なえるように、スペーサーは、例えば軸方向に沿って内腔に連通している開口、スリットや、面ファスナー、スナップファスナー等の係合部材が設けられていてもよい。スペーサーの材料としては、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
クリップ30は、対象物を把持するものであり、内筒体20の遠位側に配置されている。図6は本発明に係るクリップ30の斜視図を表し、図7は本発明に係るクリップ30の側面図を表す。図6〜図7に示すように、クリップ30は、一の把持基材32と、一の把持基材32と対向する他の把持基材33を含むクリップ本体31と、軸方向に移動可能な筒状の締結具35と、を有している。
クリップ30の閉操作は次のように行われる。まず、締結具35を、開状態のV字状のクリップ本体31の近位側の外側を囲むように配置する。次いで、把持基材32、33の遠位側に締結具35を移動させる。そうすると、締結具35が遠位側に移動するのに伴い、把持基材32、33に締結具35によって径方向の内方に向かう押力が負荷されて、把持基材32、33同士が接近するため、クリップ30が閉じられる。
把持基材32、33を含むクリップ本体31や締結具35は、高弾性と生体適合性を有する材料から形成されることが好ましく、例えば、SUS304、SUS631等のステンレス鋼やNi−Ti合金等から好ましく形成される。
個別に製造された一の把持基材32と他の把持基材33を、ねじ、カシメ等による機械的固定、溶接、接着等の方法によって接合することにより、クリップ本体31を形成することができる。
他方、図6〜図7に示すように1枚の金属板をV字状やU字状に折り曲げることによって、一の把持基材32と、対向する他の把持基材33を有するクリップ本体31が形成されてもよい。
図6〜図7に示すように、2つの把持基材32、33は内筒体20の軸方向に対称な形状にすることができる。これにより、2つの把持基材32、33が径方向に拡縮するタイミングが合いやすくなるため、対象物を把持しやすくなる。
把持基材32、33の遠位側にはクリップ30の把持基材32、33を変形させやすくするために、開口部(図示していない)が形成されていてもよい。把持基材32、33を補強するために、把持基材32、33に凸条や凹条(いずれも図示していない)が形成されていてもよい。凸条や凹条は、把持基材32、33に一体的に形成されてもよく、別部材を付加してもよい。一体的に形成された場合には、把持基材32、33の一方の表面から見た凸条が、裏面から見た場合には凹条となるように形成されてもよい。凸条や凹条は、把持基材32、33の軸方向に沿って設けられることが望ましい。
図6に示すように、クリップ本体31の把持基材32、33の遠位側の幅が、近位側の幅よりも広く形成されていることが好ましい。クリップ30の開状態では把持基材32、33の近位側に締結具35を配置し、クリップ30の閉状態では把持基材32、33の遠位側に締結具35を好適に配置することができる。
図示していないが、クリップ本体31の一の把持基材32の長さが、他の把持基材33の長さよりも大きく形成されていてもよい。クリップ30によって対象物を確実に把持することができるからである。
図7に示すように、把持基材32、33の少なくとも一部が、径方向内側に凸となるように湾曲する湾曲部34を有していてもよい。把持基材32、33が撓みやすくなるのに加えて、クリップ本体31の遠位側が径方向の外方に拡がりやすくなるため、対象物に対してクリップ30の把持位置を合わせやすくなる。
図7に示すように、一の把持基材32の一部が他の把持基材33と接していてもよい。把持基材32、33は、一対の把持基材32、33が略並行に配置されている近位側の基端部と、病変部を把持する把持部と、基端部と把持部の間の中央部に分けることができる。一の把持基材32の一部と他の把持基材33が接する箇所は特に制限されないが、中央部に設けられることが好ましく、基端部の遠位端部に設けられることがより好ましい。ここで、把持基材32,33の基端部、把持部、中央部は、それぞれ把持基材32、33を軸方向に三等分割することによって分けられた部分でもよい。また、図6〜図7のように把持基材32,33に湾曲部34が設けられる場合には、湾曲部34の近位端において一の把持基材32と他の把持基材33が接することが好ましい。一の把持基材32の一部が他の把持基材33と接する箇所を設けることで、クリップ30の設計に当たり、クリップ30の遠位端の把持基材32、33間の開き角度を調整でき、使用時においてもその開き角度を維持することができる。また、接する箇所を設けることで、接しない場合と比較して前記開き角度を大きくすることができるので、クリップ30によって病変部を確実に把持することができる。
図6に示すように、クリップ30の遠位端に凹凸の爪部が設けられてもよい。クリップ30によって対象物を把持する際に、クリップ30の遠位端の爪部が対象物に食い込むため、クリップ30から対象物が脱落することが抑止される。
締結具35は、例えば円筒体、角筒体に形成される。締結具35の外径は、内筒体20の内径よりも大きいことが好ましい。これにより、線状物40を近位側に引いた際に、締結具35の近位端と内筒体20の遠位端が当接して、クリップ本体31のみが内筒体20内に引き込まれる結果、締結具35がクリップ本体31の遠位側に移動し、クリップ30を閉状態にすることができる。
牽引部材60は、線状物40を近位側に牽引するときに術者が把持する器具であり、内筒体20の近位側に配置されており、線状物40に接続されている。図8は、本発明に係る牽引部材60の斜視図を表し、図9は、本発明に係る牽引部材60の側面図を表し、図10は、本発明に係る牽引部材60の背面図を表す。
牽引部材60の大きさは、使用者が片手で把持するのに適していれば特に制限されず、例えば、長さは5cm以上15cm以下、最外径は0.5cm以上3.5cm以下とすることが好ましい。
牽引部材60の形状は、特に制限されるものではないが、遠位側に向かって外径が小さくなる錐形状であることが好ましい。内筒体20と接続されるハンドル50の遠位側の外径を徐々に小さくすることにより、内筒体20とハンドル50の接続部分への応力集中を緩和し、内筒体20やハンドル50の変形や破損を抑止する。
本発明では、ハンドル50は、着脱可能に牽引部材60に係合されている。このため、本発明のクリップ装置1は、線状物40の牽引時以外にハンドル50が牽引部材60から脱落しにくいものである。図11は、本発明に係るハンドル50と牽引部材60の係合状態を示す平面図を表す。図11に示すように、牽引部材60は、少なくとも一部に内腔62を有しており、ハンドル50の少なくとも一部は、内腔62に収容されていることが好ましい。ハンドル50の少なくとも一部が内腔62に収容されていることから、ハンドル50と牽引部材60の係合が良好となり、ハンドル50と牽引部材60の係合状態においても嵩張りにくく、クリップ装置を内視鏡に挿入するまでの作業や手技の邪魔になりにくい。
牽引部材60の内腔62は、内筒体20の軸方向に沿って設けられていることが好ましい。ハンドルも軸方向に沿って収容されるため、ハンドル50と牽引部材60が係合している部分の面積を大きくすることができ、ハンドル50と牽引部材60の係合が解けにくくなる。
牽引部材60の内腔62の形状は、例えば、多角形、球形、楕円球形、またはこれらの組み合わせが用いられるが、ハンドル50の形状に沿って形成されていることがより好ましい。ハンドル50と牽引部材60を確実に係合させて、牽引部材60が輸送中等に意図せずにハンドル50から離脱しにくくするためである。
牽引部材60の内腔62の形状は、遠位側に向かって内径が小さくなる錐形状であることが好ましい。内筒体20とハンドル50の接続部分への応力集中を緩和する目的で、ハンドル50は遠位側に向かって外径が小さくなる錐形状に好ましく形成されるからである。
図10に示すように、牽引部材60の内腔62は、牽引部材60の側部61に形成されている開口部に連通していることが好ましい。側部61に形成されている開口部を介して、内腔62にハンドル50をスライドさせながら挿入したり、内腔62の上からハンドル50を押しあて、嵌合させることによって、内腔62にハンドル50を容易に収容することができる。また、内腔62からのハンドル50の取り外しも容易に行える。
図示していないが、牽引部材60の内腔62は、牽引部材60の近位側に形成されている開口部に連通していてもよい。近位側から牽引部材60の開口部にハンドル50の遠位側を挿入することによって、内腔62にハンドル50を収容することができる。また、内腔62からのハンドル50の取り外しも容易に行える。
ハンドル50と牽引部材60は、それぞれ互いに係合する手段を有していることが好ましい。具体的には、図2に示すようにハンドル50が凹部54を有しており、図10に示すように牽引部材60が凸部65を有しており、ハンドル50の凹部54と牽引部材60の凸部65が係合することが好ましい。また、図示していないが、ハンドル50が凸部を有しており、牽引部材60が凹部を有しており、ハンドル50の凸部と牽引部材60の凹部が係合してもよい。これにより、牽引部材60が輸送中等に意図せずにハンドル50から離脱しにくくすることができる。ハンドル50と牽引部材60を係合する方法は、嵌合や摩擦による固定、ねじによる固定などが好適に用いられる。ハンドル50と牽引部材60の係合は、クリップ装置1の製造から使用までの間に実現されていればよく、使用時に係合が解除できればよい。
ハンドル50と牽引部材60の係合にあたっては、内筒体20の近位側の一部、補助ハンドル70、またはスペーサーと牽引部材60とが係合することにより、ハンドル50が牽引部材60の内腔62に収容されてもよい。
ハンドル50と牽引部材60の係合を確実にするために、例えば輪ゴムなどの固定手段によりハンドル50と牽引部材60とを固定してもよい。
図11は、本発明に係るハンドル50と牽引部材60の係合状態を示す平面図を表す。図11に示すように、外筒体10の近位側の一部が、牽引部材60の内腔62に係合されていることが好ましい。これにより、装置の輸送中等であっても外筒体10が軸方向に移動し難くなるため、外筒体10の遠位側では外筒体10からクリップ30が露出し難くなる。
例えば、牽引部材60の内腔62の大きさを、係合するハンドルの係止部、外筒体10、補助ハンドル70、スペーサーの外形に合わせて調整し、内腔62の壁面と係合対象との接触により牽引部材60とハンドル50を係合してもよい。
具体的には、内筒体20は、外筒体10内に配置されており、牽引部材60は、外筒体10の近位側の一部を内腔62に固定する押さえ部66を有していることが好ましい。これにより、牽引部材60の押さえ部66が外筒体10の外周面に圧接して固定されやすくなる。押さえ部66は、例えば、牽引部材60に設けられた凹部や外筒体10をはさむ突起などにより構成される。外筒体10が固定されていることにより、輸送中における外筒体10や内筒体20の座屈、キンクや、意図せぬクリップ30の突出を防ぐことができる。
図10〜図11に示すように、押さえ部66は、例えば、牽引部材60に形成される突条である。外筒体10を牽引部材60に確実に固定するために、押さえ部66は、外筒体10の軸方向に並んで形成されている複数の突条であることが好ましい。
押さえ部66が形成されている部分での内腔62の幅は、外筒体10の外径よりも小さいことが好ましい。内腔62の幅が外筒体10の外径よりも小さければ、外筒体10は押さえ部66によって押圧されるため、外筒体10を牽引部材60に確実に固定することができる。
外筒体10を内腔62に固定する押さえ部66が、牽引部材60の遠位側に形成されていることが好ましい。これにより、ハンドル50と牽引部材60が係合している状態で、牽引部材60の遠位側に固定された外筒体10の取り外しが可能になる。これにより、牽引部材60が輸送中等に意図せずにハンドル50から離脱するリスクを低減しつつ、内筒体20に対して外筒体10を軸方向に移動させることが可能となる。牽引部材60の遠位側に形成された押さえ部は、内腔62と離れた位置に独立して設けられてもよい。また、押さえ部は複数設けることができる。
外筒体10の遠位側に補助ハンドル70が設けられる場合には、押さえ部66によって補助ハンドル70を固定してもよい。これにより、牽引部材60の押さえ部66が補助ハンドル70の外周面に圧接して、外筒体10が固定されやすくなる。
外筒体10の近位端からハンドル50の遠位端までの距離が、クリップ30の閉状態での軸方向長さよりも大きいことが好ましい。すなわち、ハンドル50と牽引部材60が係合している状態で、外筒体10の近位側から内筒体20が露出していることが好ましい。これにより、ハンドル50と牽引部材60が係合している状態で、外筒体10を近位側に移動させて、外筒体10の遠位側においてクリップ30を外筒体10から露出させることができる。
なお、ハンドル50の遠位側に勾配部55が設けられる場合には、外筒体10の近位端から勾配部55の遠位端までの距離が、クリップ30の閉状態での軸方向長さよりも大きいことが好ましい。
使用者が牽引部材60を把持しやすくするために、牽引部材60には掴み部が設けられてもよい。掴み部は、指を掛けるための開口64や突起(図示していない)であってもよい。図8および図10では、開口64が牽引部材60の近位側に設けられているため、使用者は開口64に指を引っ掛けることにより、牽引部材60を近位側に移動させやすくなる。開口の形状は特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせにすることができる。
さらに、図8〜図10に示すように、牽引部材60には線状物40が接続される貫通孔63が設けられることが好ましい。貫通孔63は、線状物40が通るのに十分な大きさを有していればその形状は特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせにすることができる。
本発明のクリップ装置1は線状物40に接続されている牽引部材60が、内筒体20に接続されているハンドル50に係合されている。このため、本発明のクリップ装置1は、牽引部材60が輸送中等に意図せずにハンドル50から離脱しにくいものであり、牽引部材60に接続されている線状物40が意図せずにハンドル50に接続されている内筒体20に対して近位側に移動し、クリップ30と内筒体20の遠位端が当接してクリップ30が閉じてしまうことを防げる。
線状物40は、対象物を把持するクリップ30を牽引する部材である。線状物40は、内筒体20内に配置されている。
線状物40は、クリップ30の近位側に接続されていればよく、クリップ30と接続される線状物40の軸方向位置は特に制限されない。
線状物40とクリップ30の接続には、ねじ、カシメ等の接続部材による機械的な固定の他、溶接や接着を用いることができる。また、線状物40をV字状やU字状に形成されたクリップ30の近位側に結び付けることにより、線状物40とクリップ30を接続することもできる。この際の結び方は特に限定されず、例えば、8の字結びにすることができる。
また、線状物を、一方端部と、他方端部と、一方端部と他方端部の間の中途部に区分した場合、線状物40の中途部がクリップ30の近位側に掛けられることによって、線状物40とクリップ30が接続されていてもよい。ここで、線状物40の一方端部は、線状物40全体の長さの30%の範囲を指し、線状物40の他方端部は、線状物40全体の長さの30%の範囲を指し、中途部は、線状物40の一方端部および他方端部以外の残りの40%の長さの範囲を指すものとする。
線状物40と牽引部材60との接続方法は、線状物40を牽引部材60に結び付けることが好ましいが、結び方は特に限定されず、例えば、二重8の字結びにすることができる。また、二重8の字結びによって形成された輪45を牽引部材60の貫通孔63に通し、貫通孔63に通された輪45に牽引部材60を通すことによって、線状物40を牽引部材60により強固に結びつけることができる。また、線状物40と牽引部材60の接続には、ねじ、カシメ等の接続部材による機械的な固定の他、溶接や接着を用いることもできる。
線状物40は、生体適合性、および強度を有する材料から形成されていることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材や、ナイロン等のポリアミド樹脂、PP、PE等のポリオレフィン樹脂、PET等のポリエステル樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、PTFE、PFA等のフッ素樹脂等の合成樹脂繊維を用いることができる。
線状物40の摺動性を向上させて線状物40とクリップ30の間の摩擦力を低減するために、線状物40はフッ素樹脂から形成されていることが好ましい。また、フッ素樹脂から形成されていない線状物40を用いる場合には、線状物40の外表面にフッ素樹脂が被覆されていることが好ましい。線状物40の表面に被覆するフッ素樹脂としては、例えば、PTFE、PFA、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)等を用いることができる。
線状物40へのフッ素樹脂の被覆は公知の方法を採用すればよく、例えば、浸漬法、スプレー法、流動床法、ニーダーコーター法等を用いることができる。
線状物40は、クリップ装置1の用途に応じて、適宜剛性の高い線材や、柔軟性の高い糸状材を選択することができる。
線状物40の移動操作を円滑に行うために、線状物40の長さは、例えば、内筒体20の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。
また、線状物40の長さの上限については特に制限はないが、線状物40の操作を妨げないように、例えば、内筒体20の長さの3.4倍以下であることが好ましく、3.2倍以下であることがより好ましく、3.0倍以下であることがさらに好ましい。
線状物40と接するクリップ30の内縁が面取加工されていることも好ましい。クリップ30の内縁は、線状物40を引き抜く際に線状物40と最もよく擦れる部分であるため、クリップ30の内縁の面取加工を行うことにより、線状物40の損傷を抑止することができる。中でも、クリップ30の近位側の内縁が面取加工されていることが好ましい。クリップ30の近位側の内縁とは、例えば、クリップ30を上から見たときに、クリップ30の長手方向を三分割して最も近位側に位置する区間の内縁とすることができる。なお、クリップ30の内縁の面取加工の方法としては、例えば、面取加工機等によってR面加工を施す等の公知の方法を用いることができる。
線状物40は内筒体20内に配置されているが、ハンドル50内にも配置されていてもよい。この場合、ハンドル50の近位側から露出している線状物40の一部が延在している部分において、線状物40は牽引部材60と接続されている。
ハンドル50内に線状物40が配置されており、ハンドル50と牽引部材60が係合されており、ハンドル50の近位側に存在する線状物40が遠位側に折り返されて牽引部材60の遠位端部と接続されていることが好ましい。ハンドル50の近位側に存在する線状物40を遠位側に折り返すことにより、線状物40が弛みにくくなるため、線状物40の弛んだ箇所が牽引されて意図せずにクリップ30が閉じるリスクが低減される。
2.内視鏡用クリップ装置の製造方法
本発明の内視鏡用クリップ装置1の製造方法について、図12〜図21を用いて詳細に説明する。なお、内視鏡用クリップ装置1を構成する各部材については、本明細書の「1.内視鏡用クリップ装置」に記載したとおりである。図12、図13、図21は本発明の内視鏡用クリップ装置の製造方法を示す側面図を表し、図14〜図16は、本発明に係る線状物の結び方を示す斜視図を表し、図17〜図19は、本発明に係る牽引部材と線状物の接続方法を示す斜視図を表す。
本発明の内視鏡用クリップ装置1の製造方法は、内筒体20と、内筒体20の近位側に接続されているハンドル50と、内筒体20内およびハンドル50内に配置されている線状物40と、内筒体20の遠位側に配置されており、線状物40に接続されているクリップ30と、を有する内視鏡用クリップ装置1の製造方法であって、ハンドル50の近位側において、線状物40に牽引部材60を接続するステップと、ハンドル50の近位側から牽引部材60の遠位側の間に存在する線状物40の一部を、折り返すステップと、ハンドル50と牽引部材60を係合するステップと、を含むことを特徴とする。
まず、クリップ装置10の製造に必要な内筒体20、クリップ30、線状物40、ハンドル50、牽引部材60を準備する(ステップS11)。クリップ30の把持基材32、33の外側には、内筒体20の内径よりも外径が大きく、軸方向に移動可能な締結具35が設けられてもよい。
クリップ30と内視鏡の鉗子チャンネルの内壁との接触防止の観点から外筒体10を用いる場合には、内筒体20を外筒体10内に挿入して、外筒体10の内側に内筒体20を配置する(ステップS12)。
図12に示すように、クリップ30に線状物40を接続する(ステップS13)。クリップ30の2つの把持基材32、33によって形成される開口や、クリップ30の近位側に設けられる貫通孔(図示せず)に線状物40を通し、線状物40の一方端部をクリップ30の近位側に移動させて、このように線状物40をクリップ30に掛けることにより、クリップ30に線状物40が接続されてもよい。図12に示すように、クリップ30に掛けられた線状物40の一部を結んでもよい。線状物40の結び方は特に限定されないが、負荷が加えられても解けにくい二重8の字結びを採用することが好ましい。二重8の字結びの方法については後述する。
内筒体20の近位側にハンドル50を接続する(ステップS14)。図5では内筒体20の近位側がハンドル50内に挿入されている。また、図5では、後のステップで内筒体20内に配置される線状物40をハンドル50の遠位側から露出させるために、内筒体20はハンドル50の軸方向全体に亘って配置されている。ハンドル50の遠位側に設けられている接続部52を、勾配部55の近位側の内腔に差し込むことにより、勾配部55を介して内筒体20とハンドル50が接続される。
線状物40のクリップ30が接続されていない側を、内筒体20の遠位側から内筒体20内に挿入する(ステップS15)。
図13に示すように、内筒体20の近位側において、線状物40のクリップ30が接続されていない側をハンドル50内に位置する内筒体20内から内筒体20外へ引き出す(ステップS16)。
ハンドル50よりも近位側に存在している線状物40を、牽引部材60に接続する(ステップS17)。ここでは牽引部材60に線状物40を通す貫通孔63が形成されている例を挙げて説明する。
まず、牽引部材60と線状物40を接続するために、図14〜図16に示すように、線状物40の近位側に二重8の字結びによって輪を形成する(ステップS17−1)。詳細には、線状物40の一方端部を遠位側に折り返して二重にし(図14)、二重の部分をさらに折り返して交差させた結果、形成される輪44(第1の輪)の中に二重の線状物40を通して二重8の字結びをすることによって(図15)、線状物40の近位端部に輪45(第2の輪)が形成される(図16)。
次いで、二重8の字結びによって形成された輪45(第2の輪)を牽引部材60の貫通孔に通し(図17)、貫通孔に通された輪45に牽引部材60を通して、いわゆるひばり結びをすることによって(図18)、線状物40と牽引部材60を接続する(図19)(ステップS17−2)。これにより、ハンドル50と、線状物40と、牽引部材60を接続することができる(図20)。牽引部材60に通す輪45(第2の輪)の形成に二重8の字結びを用いているため、線状物40に負荷が掛かっても解けにくい。また、ひばり結びによって容易に牽引部材60と線状物40を接続することができる。
ハンドル50の近位側から牽引部材60の遠位側の間に存在する線状物40の一部を折り返す(ステップS18)。図2に示すように、ハンドル50の遠位側に線状物40を掛ける溝が引掛部53として形成されている場合には、線状物40の一部を折り返す際に、ハンドル50の引掛部53に掛けることができる。図21に示すように、線状物40の一部を引掛部53に掛けることによって、ハンドル50の近位側から牽引部材60の遠位側の間に存在する線状物40は、線状物40の一部に掛けられるため、弛み難くなる。このため、意図せずに線状物40が近位側に移動して、クリップ30が自然に閉じることがない。
ハンドル50と牽引部材60とを係合する(ステップS19)。これにより、ハンドル50の近位側から牽引部材60の遠位側の間に存在する線状物40は、所定の距離を保った状態で固定され、弛み難くなる。
ハンドル50と牽引部材60とを係合するとは、具体的には、牽引部材60の内腔62にハンドル50の少なくとも一部を収容することである。例えば、図10に示す牽引部材60において、内腔62は牽引部材60の側部61に形成されている開口部に連通しているため、牽引部材60の側部61から内腔62にハンドル50を嵌め合わせることにより、牽引部材60とハンドル50を係合することができる。
また、図10に示す牽引部材60のように、ハンドル50の凹部54と係合する凸部65が形成されていれば、内腔62にハンドル50を収容するときに凹部54と凸部65が係合するため、牽引部材60とハンドル50の嵌合性をより一層高められる。
外筒体10が用いられる場合には、図11に示すように外筒体10の近位端部を牽引部材60に固定する(ステップS20)。具体的には、牽引部材60に設けられている押さえ部66によって、外筒体10を牽引部材60の内腔62に固定する。これにより、外筒体10が軸方向に移動しにくくなるため、装置の輸送中等に意図せずに外筒体10からクリップ30が露出して、内視鏡の鉗子チャンネル内や、挟持対象外の組織を誤って傷つけるリスクを低減できる。
3.内視鏡用クリップ装置の作動方法
本発明の内視鏡用クリップ装置の作動方法について、図22〜図27を用いて詳細に説明する。図22、図24〜図26は、本発明の内視鏡用クリップ装置の作動方法を示す側面図(一部断面図)を表し、図23は、本発明の内視鏡用クリップ装置の作動方法を示す平面図を表し、図27は、本発明の内視鏡用クリップ装置の作動方法を示す側面図を表す。
本発明の内視鏡用クリップ装置1の作動方法は、内筒体20と、内筒体20の近位側に接続されているハンドル50と、内筒体20内およびハンドル50内に配置されている線状物40と、内筒体20の遠位側に配置されており、線状物40に接続されているクリップ30と、内筒体20の近位側に配置されており、線状物40に接続されている牽引部材60と、を有し、牽引部材60にハンドル50が取り付けられている内視鏡用クリップ装置1において、牽引部材60とハンドル50とを外すステップと、牽引部材60を近位側に移動させるステップと、を含むことを特徴とする。
なお、内視鏡用クリップ装置1を構成する各部材については、本明細書の「1.内視鏡用クリップ装置」に記載したとおりである。
病変部の位置を特定しやすくするために、病変部に色素を散布したり、病変部の周辺にマーキングを施す。マーキングは、例えば、高周波器具を用いて病変部の周辺を焼灼することにより行われる。
また、病変部を切除しやすくするために、病変部の筋層と粘膜下層との間に生理食塩水またはヒアルロン酸を注入して、病変部を隆起させる。
図1に示すように、牽引部材60にハンドル50が取り付けられている内視鏡用クリップ装置1を準備する(ステップS21)。また、牽引部材60に設けられている凸部65が、ハンドル50に設けられた凹部54に嵌合することにより、牽引部材60とハンドル50が係合されている。
図11に示すように、外筒体10の近位端部の外側が、牽引部材60の押さえ部66である突条によって接触固定されている。外筒体10が牽引部材60の内腔62に収容されている状態では、図22に示すように、外筒体10の遠位側では、外筒体10内に内筒体20およびクリップ30が収納されて、内筒体20の遠位端とクリップ30が外筒体10の遠位端よりも近位側に配置されていることが好ましい。これにより、内視鏡の鉗子チャンネル内にクリップ装置1を挿入する際に、鉗子チャンネルや挟持対象以外の組織等を傷つけるリスクを低減できる。
クリップ装置1の遠位側を内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内に挿入し、クリップ装置1の遠位側を対象物である患者の病変部まで到達させる(ステップS22)。術者は内視鏡から取得した映像を用いて、病変部の位置や病変部の状況等を観察しながらクリップ装置1の移動を行う。
図23に示すように、牽引部材60の押さえ部66によって接触固定されている外筒体10の近位端部を牽引部材60から外す(ステップS23)。このとき、牽引部材60とハンドル50は係合した状態を維持する。
内筒体20に対して外筒体10を近位側に移動させる(ステップS24)。牽引部材60にハンドル50を係合した状態で、外筒体10に接続された補助ハンドル70を、内筒体20およびハンドル50に対して近位側に少しずつ動かし、図24に示すように外筒体10からクリップ30を露出させる。外筒体10の内腔形状によって拘束されていたクリップ30の把持基材32、33が外筒体10から露出されるのに伴い、クリップ30の開度は次第に大きくなる。
外筒体10の遠位側から露出したクリップ30と病変部との位置合わせを行う(ステップS25)。
図21に示すように、牽引部材60とハンドル50とを外す(ステップS26)。これにより、後の工程で、牽引部材60をハンドル50に対して近位側に移動することにより、線状物40を近位側に移動させてクリップ30を閉じることができる。
牽引部材60を近位側に移動させる(ステップS27)。詳細には、牽引部材60を把持して、牽引部材60に伴い線状物40を近位側に移動させてクリップ30を閉じる。牽引部材60を内筒体20に対して近位側に移動させていくと、クリップ30は近位側から内筒体20内に収納されることによって、クリップ30の開度は徐々に小さくなり、やがてクリップ30は閉状態になる。クリップ30に設けられた締結具35の外径は内筒体20の内径よりも大きいため、締結具35は内筒体20内に引き込まれない。その結果、図25に示すように病変部100がクリップ30の把持基材32、33によって把持される。
牽引部材60を近位側に移動させることにより、クリップ30によって病変部100を把持した状態で、病変部100と粘膜下層101との間に電気メス等を入れて病変部100を切除する(ステップS28)。この際、クリップ30により病変部100を引っ張ると病変部100を切除しやすい。病変部100の切除にあたっては、病変部100の筋層と粘膜下層101との間に生理食塩水またはヒアルロン酸を注入して、病変部100を隆起させてもよい。
牽引部材60から線状物40を取り外す(ステップS29)。牽引部材60から線状物40を取り外すには、ハンドル50よりも近位側で牽引部材60よりも遠位側に存在する線状物40をはさみ等で切断したり、「2.内視鏡用クリップ装置の製造方法」で記載した牽引部材60に線状物40を取り付ける手順(図18〜図20)とは逆の手順を行えばよい。
図26に示すように病変部100を切除できたら、ハンドル50および補助ハンドル70を近位側に移動させて、内筒体20および外筒体10を体外に引き抜く(ステップS30)。
図27に示すように、線状物40の近位側を把持して、線状物40を近位側に移動させる(ステップS31)。これにより、線状物40とともに病変部100を掴んだクリップ30を体外に取り出す操作を容易に行うことができる。線状物40が術者の手から滑落することを抑制するために、牽引部材60に線状物40を再度接続した上で、牽引部材60を把持して、線状物40を近位側に移動させることも勿論可能である。