JP6560612B2 - 低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、自動車外板部品用のポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた自動車外板部品に関し、低線膨張性とウェルド外観に優れるとともに、良好な機械特性を備えた自動車外板部品用のポリプロピレン系樹脂組成物及び自動車外板部品に関するものである。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、工業部品分野における各種成形体、例えば、ドアトリム、インストルメントパネル、バンパー、サイドモール、バックドア、フェンダー等の自動車部品、テレビ等の家電機器製品の部品等として、その優れた成形性、機械的強度、環境適応性や経済性の特徴を活かし、多く実用に供されてきている。その一方でポリプロピレンは高い結晶性を有することから、温度に対する寸法変化(線膨張性)が大きいことが知られており、この性質によりポリプロピレン系樹脂組成物を用いた自動車部品等においては部品の合わせ目に隙間が生じたり、部品組みつけ時の建てつけ性が悪化するなど問題があった。また、本発明の使用用途である自動車の外板部品に至っては、温度変化による部材の膨張により部材が歪み外観品質を悪化させる課題もあった。
特に、自動車外板部品等の成形体は、大型化、デザインの複雑化が益々進みつつあり、それに伴いポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体には、高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)の発現に加え、製品価値を一層高める為の外観品質の向上を同時に満たすことが求められている。
ポリプロピレン系樹脂組成物の寸法安定性(低線膨張係数)と良好な機械物性に加えて、塗装外観の品質向上(鮮鋭性)を目的として、特定のポリプロピレンにアスペクト比の大きいタルクを添加する技術提案が成されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、射出成形において生じるウェルド部位(金型内の流動樹脂が合流する部位)の凸状の盛り上がり(以後、ウェルド隆起という)の性能が不十分であり、塗装後のウェルド隆起の見栄えに課題があった。
また、ウェルド部位の外観向上として、特性の異なる2種のポリプロピレンを併用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、当該特許文献の実施例は樹脂流動を妨げる堰を通過する際に生じる流れウェルド(通称:フローウェルド)の評価事例となっており、実際に製品で生じる複数の流動が対向状態で合流する突き合わせウェルド部位での外観性能(ウェルド隆起)を満足するには十分とは言えなかった。
こうした状況の下、従来のポリプロピレン系樹脂組成物の問題点を解消し、バックドア、フェンダー等の自動車外板部品を得る際に必要な性能である高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)の発現に加え、製品価値を一層高める為に前記のウェルド隆起を低減させて塗装後の外観品質を一層向上させた材料の提案が求められている。
特開2013−159709号公報 特開2014−58614号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)を満足しつつ、樹脂の対抗合流で生じる突き合せウェルドの隆起を低減した、塗装外観品質の高い自動車外板部品に好適な低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ウェルド隆起を悪化させるタルクの形状と添加量を最適化し、ウェルド隆起性とは相反する性能の線膨張性を満足させるために、エラストマーの追求を行った結果、特定のプロピレン系重合体(成分(A))、特定の2種のエチレン‐ブテン共重合体(成分(B))、及び特定形状のタルク(成分(C))を、それぞれ特定量含有する低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物により、寸法安定性(低線膨張性)と機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)を満足しつつ、樹脂の対抗合流で生じる突き合せウェルドの隆起を低減するとともに、良好な塗装外観品質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一態様において、
<1>下記の成分(A)41〜59重量% と、下記の成分(B)20〜30重量%と、下記の成分( C )21〜29重量%とを含有することを特徴とする低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物(但し、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)との合計を100重量%とする)。
成分(A):以下の条件(A−1)を満足するプロピレン系重合体。
条件(A−1) : 成分(A)全体のメルトフローレート(230 ℃ 、2.16kg荷重) が50〜120g/10分である。
成分(B):以下の条件(B−1)〜(B−4)を満足するエチレン‐ブテン共重合体。
条件(B−1):成分(B)は、以下の条件(B−2)を満足するエチレン−ブテン共重合体(B1)55〜85重量%と、以下の条件(B−3)を満足するエチレン−ブテン共重合体(B2)15〜45重量%とからなる(但し、成分(B)における、エチレン−ブテン共重合体(B1)と、エチレン−ブテン共重合体(B2)との合計を100重量%とする)。
条件(B−2):エチレン−ブテン共重合体(B1)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2〜10g/10分である。
条件(B−3):エチレン−ブテン共重合体(B2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重) が30〜70g/10分である。
条件(B−4):成分(B1)及び成分(B2)の密度が、各々0.860〜0.875g/cmである。
成分(C): 以下の条件(C−1)〜(C−2) を満足するタルク。
条件(C−1):レーザー回折法により測定した平均粒径が6〜8μmである。
条件(C−2):アスペクト比が12〜14である。
を提供するものである。
好ましい態様において、本発明は、
<2>成分(A)がプロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分とからなるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体であり、更に以下の条件(A−2)〜(A−3)を満足する上記<1>に記載の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A−2):成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分のプロピレン含量が55〜65重量% である(但し、成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分における、プロピレン含量とα−オレフィン含量との合計を100重量%とする)。
条件(A−3):成分(A)全体に対するプロピレン−α−オレフィン共重合体部分の割合が5〜12重量% である(但し、成分(A)における、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分との合計を100重量%とする);及び
<3>成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分が、プロピレン−エチレン共重合体である上記<2>に記載の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物
を提供するものである。
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物によれば、高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)を満足しつつ、樹脂の対抗合流で生じる突き合せウェルドの隆起を低減した、塗装外観品質の高い自動車外板部品を得ることができる。
本発明は、成分(A):特定のプロピレン系重合体を41〜59重量%、成分(B):特定の2種のエチレン‐ブテン共重合体を20〜30重量%、及び成分(C):特定形状のタルクを21〜29重量%、それぞれ含有する低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物(但し、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)との合計を100重量%とする)に関するものである。以下、本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分、該樹脂組成物、その製造や成形、部材等の各項目について詳細に説明する。
[I]低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分
1 . 成分(A):プロピレン系重合体
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物(以下、「ポリプロピレン系樹脂組成物」ともいう。)に用いられる成分(A)のプロピレン系重合体は、以下の条件(A−1)を満足するものである。
条件(A−1) : 成分(A)全体のメルトフローレート( 230 ℃ 、2.16 k g 荷重) が50〜120g/10分である。
成分(A)のプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン重合体が挙げられ、高度な機械物性バランスを得る為には、結晶性プロピレン重合体部分と、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分からなるプロピレン―α―オレフィンブロック共重合体が好ましい。より好ましくは、かかるプロピレン−α−オレフィン共重合体部がプロピレン−エチレン共重合体であり、その場合、成分(A)のプロピレン系重合体は、プロピレン−エチレンブロック共重合体
となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、成分(A)の含有割合は、41〜59重量%、好ましくは45〜55重量%である(但し、成分(A)、(B)、(C)の合計を100重量%とする)。成分(A)の含有量が41重量%未満ではポリプロピレン系樹脂組成物のウエルド外観等が不足となるおそれがあり、一方、59重量%を超えると、線膨張係数が大きくなり、衝撃強度と剛性のバランスが悪くなるおそれがある。
条件(A−1):成分(A)全体のメルトフローレート
成分(A)のプロピレン系重合体全体のメルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は、50〜120g/10分、好ましくは60〜110g/10分である。MFRが50g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工性(流動性)が低下し、一方、120g/10分を超えると衝撃性が低下する。ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値であり、以下、本明細書中MFRは、特別に断りが無い限りいずれも同様の方法で測定される値とする。
成分(A)が、上述のように、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分とからなるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体である場合、好ましくは、更に以下の条件(A−2)〜(A−3)を満足する。
条件(A−2):プロピレン−α−オレフィン共重合体部分のプロピレン含量
成分(A)の上記プロピレン−α−オレフィン共重合体部分のプロピレン含量は、好ましくは55〜65重量%である(但し、成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分における、プロピレン含量とα−オレフィン含量との合計を100重量%とする)。プロピレン含量が55重量%未満であると、衝撃強度が低下するおそれがある。一方、プロピレン含量が65重量%を超えると、同じく衝撃強度が低下するおそれがある。なお、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分のプロピレン含量は、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分の重合時のα−オレフィンとプロピレンの組成比の制御により、調整することができる。
条件(A−3):成分(A)全体に対するプロピレン−α−オレフィン共重合体部分の割合
成分(A)全体に対するプロピレン−α−オレフィン共重合体部分の割合は、好ましくは5〜12重量%である(但し、成分(A)における、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分との合計を100重量%とする)。これらの範囲を外れると機械物性のバランスが低下する。
なお、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分の割合や、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分のプロピレン含量は、クロス分別装置やFT−IR等を用いて測定される値であり、その測定条件等は、例えば、特開2008−189893号公報に記載されている。
成分(A)の製造方法に関して、成分(A)がプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を例として説明する。プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分との反応混合物であり、プロピレン単独重合体部分の重合(前段重合)後、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合部分の重合(後段重合)を行うことにより製造することができる。
上記重合に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報参照。)が使用できる。チーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば、特開昭47−34478号公報、特開昭58−23806号公報、特開昭63−146906号公報参照。)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−5310号公報、特開昭61−218606号公報参照。)等が含まれる。
また、助触媒として使用される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、いずれの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。例えば、プロピレン単独重合体部分をバルク重合で行い、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分を気相重合で行う方法や、プロピレン単独重合体部をバルク重合、続いて気相重合で行い、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分は、気相重合で行う方法などが挙げられる。また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよい。
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
気相重合において、プロピレン単独重合体部の重合工程は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、温度0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレンの分圧0.6〜4.2MPa、好ましくは1.0〜3.5MPa、特に好ましくは1.5〜3.0MPa、滞留時間は0.5〜10時間で行う。プロピレン単独重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα−オレフィン、例えばα−オレフィンがエチレンの場合は7重量%以下のエチレンが共重合されていても構わない。
本発明に使用するプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分は、成分(A)全体のMFRを満たす範囲で、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素は、水素/プロピレン比で5×10−3〜0.2で行う。
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体部の存在下、後段重合工程で、プロピレン、α−オレフィンとして例えばエチレンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部の製造に使用した当該触媒)の存在下に0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.1〜2.0MPa、好ましくは0.5〜2.0MPa、滞留時間は0.5〜10時間の条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分を製造し、最終的な生成物として、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(成分(A))を得る。プロピレン−α−オレフィン共重合体部分には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレン、エチレン以外のα−オレフィンが共重合されていても構わない。
なお、成分(A)としてプロピレン単独重合体を用いる場合、その製造方法は、前述のプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を製造する方法におけるプロピレン単独重合体部分の重合方法に準じて行えばよい。
また、成分(A)としてプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を用いる場合は、その製造方法は、前述のプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を製造する方法におけるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体部分の重合方法に準じて行えばよい。
なお、成分(A)として使用することができる種々のプロピレン系重合体としては、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
2.成分(B):エチレン−ブテン共重合体
本発明に用いられる成分(B)のエチレン−ブテン共重合体は、エチレンとブテンとのランダム共重合体であり、ゴム的な性質を有する重合体(エラストマー)であり、以下の条件(B−1)〜(B−4)を満たすように性質の異なる2種類のエラストマーを併用することを特徴とする
条件(B−1):2種のエラストマーの割合
成分(B)は、以下に示す条件(B−2)を満足するエチレン−ブテン共重合体(B1)55〜85重量%と、以下に示す条件(B−3)を満足するエチレン−ブテン共重合体(B2)15〜45重量%とからなる(但し、成分(B)における、エチレン−ブテン共重合体(B1)と、エチレン−ブテン共重合体(B2)との合計を100重量%とする)。好ましくは、B1とB1の含有量は、B1が60〜85重量%、B2が15〜40重量%の範囲内である。
条件(B−1)及び条件(B−2):エチレン−ブテン共重合体のメルトフローレート
エチレン−ブテン共重合体(B1)のメルトフローレート(230℃ 、2.16kg荷重)は、2〜10g /10分である。一方、エチレン−ブテン共重合体(B2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重) が30〜70g /10分であり、好ましくは40〜70g/10分である。
条件(B−4):密度
成分(B)のエチレン−ブテン共重合体は、成分(B1)及び成分(B2)の密度が各々0.860〜0.875g/cmである。密度が0.860g/cm未満であると、剛性が低下するおそれがある。一方、密度が0.875g/cmを超えると、寸法安定性および機械物性バランスが悪化するおそれがある。成分(B1)及び成分B2の密度を共にこのような範囲とすることにより、上記の懸念が払拭される。
本発明においては、成分(B)は、性質の異なる2種類のエチレン・ブテン共重合体であって、かかる2種類のエラストマーを併用することによって、低線膨張係数と高衝撃性に寄与し、また、他の成分(C)などとの相乗効果により、低線膨張性とウェルド隆起の低減を高度にバランスするものであり、上記条件を外れると自動車用外板部品としての高品質性能を満足する事が困難となる。
(1)製造法
本発明に用いられる成分(B)の製造法は、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法により重合することができ、例えば、メタロセン系触媒、バナジウム系触媒やチーグラー系触媒などを用いて重合することができる。
重合法としては、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等の製造プロセスを適用して重合することができる。好ましい製造法としては、高圧バルク重合法や溶液法が挙げられる。
成分(B)の具体例としては、一般的に、エチレン・ブテンエラストマー(EBR)と呼ばれているものであり、エチレン系ゴム、エラストマー、プラストマーなどと称されることもある。形状としては、ペレット状、クラム状、顆粒状等が挙げられるが、特に限定されず、用いることができる。これらの成分(B)として使用できるエチレン−ブテン共重合体も多くの企業から種々の製品が市販されており、所望の物性を有するものを購入しして用いることができる。
(2)配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における成分(B)の含有量は、20〜30重量%である(但し、成分(A)、(B)、(C)の合計を100重量%とする)。成分(B)の含有量が、20重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下するおそれがあり、一方、30重量部を超えると、剛性が低下するおそれがある。
3.成分(C):タルク
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる成分(C)は、以下の条件(C−1)〜(C−2)を満足するタルクである。
(C−1):レーザー回折法により測定した平均粒径が6〜8μmである。
(C−2):アスペクト比が12〜14である。
本発明に用いられる成分(C)のタルクは、レーザー回折法により測定した平均粒径が6〜8μmで、かつアスペクト比が12〜14であることが必要である。成分(C)は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の低線膨張性と剛性を中心とした物性バランスの向上および環境適応性の向上などの目的で用いられるが、本発明においては、タルクが上記各種特性の上限を超えるとウェルド隆起が悪化し、下限を下回ると線膨張性の悪化(膨張係数が大きくなる)や剛性低が発生し、自動車用外板部品としての高品質性能を満足する事が困難となる。
(1)形状等
成分(C)のタルク形状については、レーザー回折法により測定した平均粒径が6〜8μm、かつアスペクト比が12〜14であれば、他に特に制限はなく、粒状、板状、棒状、繊維状、ウィスカー状など、いずれの形状のものも使用することができる。特に、ポリマー用フィラーとして市販されているものが好ましく使用できる。
上述のように、成分(C)のタルクは、レーザー回折法により測定した平均粒径が6〜8μmである。また、成分(C)のタルクは、アスペクト比が12〜14である。
なお、本明細書において、タルクのアスペクト比は、タルクの長辺と短辺の比率を表した値であって、顕微鏡等によりアスペクト比の大きいタルクを10個選択し、測定された値より求められるものである。また、本明細書において、タルクの平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計等によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味し、測定装置としては、例えば、堀場製作所LA−920型が挙げられる。成分(C)のタルクは、上記特性を満たすものであれば、二種以上のタルクの混合物であってもよい。
成分(C)の製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法等にて製造される。タルクの場合、その原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、更にジェットミルなどで粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレータ等で分級調整する等の方法で製造する。具体的には、成分(C)のタルクのアスペクト比、及び平均粒径は、粉砕時間により調整することができる。これらは、一般的な粉末状やロービング状の他に、取り扱いの利便性等を高めた、チョップドストランド状、圧縮魂状、ペレット(造粒)状、顆粒状等の形態で製造されることが多いが、いずれも使用することができる。なかでも粉末状、圧縮魂状、顆粒状が好ましい。
成分(C)は、有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよく、また、二種以上併用して表面処理してもよい。
(2)配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における成分(C)の含有量は、樹脂組成物全体を基準として、21〜29重量%である(但し、成分(A)、(B)、(C)の合計を100重量%とする)。なお、成分(C)は、二種以上のタルクを併用してもよい。
4.任意添加成分
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物においては、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)以外に、さらに必要に応じ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、たとえば所期の効果をさらに向上させたり、他の性能・効果を付与するため、任意添加成分を配合することができる。任意添加成分の添加量としては、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100重量部として、0.2〜2.0重量部である。
任意添加成分として具体的には、非イオン系などの帯電防止剤、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、物理発泡剤などの発泡剤、有機金属塩系などの分散剤、顔料などの着色剤、フェノール系などの酸化防止剤、無機化合物などの中和剤、脂肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、蛍光増白剤、気泡防止(消泡)剤、架橋剤、過酸化物、プロセスオイル(配合油)、ブロッキング防止剤、可塑剤、上記成分(A)以外のポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂、フィラー、エラストマー(ゴム様重合体)、その他添加剤などを挙げることができる。これらの成分は、二種以上併用してもよく、組成物に添加してもよいし、各成分に添加されていてもよく、それぞれの成分においても二種以上併用してもよい。
帯電防止剤、中でも非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の帯電防止性の付与、向上に有効であり、その具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンアルキルアミド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ステアリン酸モノグリセリド;アルキルジエタノールアミン;アルキルジエタノールアミド;アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル;テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
光安定剤や紫外線吸収剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の化合物などが挙げられ、これらはポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の耐候性や耐久性などの付与、向上に有効である。これらの具体例として、ヒンダードアミン系には、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが、ベンゾトリアゾール系には、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが、ベンゾフェノン系には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが、サリシレート系には、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどがそれぞれ挙げられる。
発泡剤としては、例えば、物理発泡剤や化学発泡剤などが挙げられ、これらは、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の軽量化、剛性や寸法特性などの付与、向上などに有効である。これらの具体例としては、物理発泡剤には、炭酸ガス;窒素ガス;空気;プロパン;ブタン;ジクロロジフルオロメタンなどが、化学発泡剤には、クエン酸;重曹;アゾジカルボンアミド;ベンゼンスルホニルヒドラジド;トルエンスルホニルヒドラジド;N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド;P−トルエンスルホニルセミカルバジドなどがそれぞれ挙げられる。
分散剤としては、例えば、有機金属塩などが挙げられ、無機フィラーや着色顔料などの分散性を高め、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の剛性、耐熱性、ウエルド外観、フローマーク外観、風合いなどの付与、向上などに有効である。その具体例としては、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;ベヘン酸カルシウム;ベヘン酸マグネシウム;ベヘン酸亜鉛;モンタン酸亜鉛;モンタン酸カルシウム;モンタン酸マグネシウムなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、無機系や有機系の顔料などが挙げられ、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の着色外観、見映え、風合い、商品価値、耐候性や耐久性などの付与、向上などに有効である。その具体例としては、無機系顔料には、酸化チタン;酸化鉄(ベンガラ等);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物およびカーボンブラックなどが、有機系顔料には、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などがそれぞれ挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
[II]低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物の特性等
1.特性
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、さらに必要に応じ、上記任意添加成分を上記配合割合で配合したものであって、下記の特性または条件(1)〜(5)を満たすことが好ましい。
(1):メルトフローレート(MFR)
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重、MFRともいう。)が50〜120g/10分であることが好ましい。MFRが50g/10minを下回ると成形性能が低下し、120g/10分を超えると衝撃性が低下する。また、本明細書において、MFRは、上記のとおり、JIS−K7210準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した値である。
(2):線膨張係数
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物は、線膨張係数が3.0×10−5〜5.0×10−5/℃ 以下であることが好ましい。該線膨張係数が5×10−5/℃より大きいと、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の寸法安定性が十分であるとは言えない。また、本明細書において、線膨張係数は、JIS−K7197に準拠して、23〜80℃ の温度範囲にて測定した値である。
(3): 曲げ弾性率
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物は、曲げ弾性率(23℃)が 1500Mpa以上であることが好ましい。該曲げ弾性率が1500MPa未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の剛性が十分であるとは言えない。また、本明細書において、曲げ弾性率はJIS−K7171に準拠して、23℃にて測定した値である。
(4):シャルピー衝撃強度
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度(23℃)が20kJ/m 以上であることが好ましい。上限について特に制限はないが、通常100kJ/mである。該シャルピー衝撃強度が20kJ/m2未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の機械的物性が十分であるとは言えない。また、本明細書において、シャルピー衝撃強度はJIS−K7111に準拠して、ノッチ加工(ノッチ半径0.25mm)後に、23 ℃ にて測定した値である。
(5):ウェルド外観(ウェルド隆起)
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物は、ウェルド隆起特性に優れる事を特徴とし、実施例に記載の具体的方法にて判定した。
[III].製造、成形
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A) 、成分(B) 、成分(C) 、
さらに必要に応じ、任意成分を前記配合割合で配合して、単軸押出機、二軸押出機、バン
バリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダ−プラストグラフ、ニーダー等通常の混練
機を用いて混練・造粒することによって製造される。
この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練・造粒方法を選択することが望
ましく、通常は二軸押出機が用いられる。この混練・造粒の際には、上記各成分の配合物
を同時に混練してもよいし、また性能向上を図るべく各成分を分割、例えば先ず成分(A) と成分(C)の一部または全部を混練し、その後に残りの成分を混練・造粒することも
できる。また、成分(C)の折損等を避ける等のため、押出機シリンダーの中間部等に設けたフィード口(サイドフィード口)等から、それを溶融樹脂部分にフィードして、混練・造粒することもできる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の成形は、射出成形(ガス射出成形も含む)または射出圧縮成形(プレスインジェクション、ホットフロースタンピング成形、ガス射出圧縮成形も含む)により行われるのが好ましく、その場合、射出成形や射出圧縮成形の技術と、いわゆる発泡成形技術や膨張成形技術とを組み合わせて所望の成形体を得ることもできる。ポリプロピレン系樹脂組成物の成形には、また、必要に応じて、中空成形、押出成形、圧縮(プレス)成形、発泡(膨張)成形、シート成形、熱成形、スタンピング成形、粉末成形などの種々の成形法を適用することもでき、それにより所望の成形体を得ることもできる。
[IV] 自動車外板部品
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物を用いた成形体又は部品は、高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)を満足しつつ、樹脂の対抗合流で生じる突き合せウェルドの隆起を低減しており、塗装外観品質が高いので、その用途としては、自動車外板部品が最も好ましい。例えば、本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、バックドア、フェンダー、ボンネット、バンパー、サイドモール等の自動車外板部品への適用が可能である。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例で用いた物性測定、評価、分析の各法および材料等は以下の通りである。
1.物性測定、評価方法、分析方法
<多目的試験片作製条件>
射出成形機:東芝EC75SX
金型:AXXICON社ISO AIM型(多目的試験片成形用)
成形温度:200℃、
金型温度:40℃
射出圧力:40MPa。
(1)MFR:
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した(単位はg/10分)。
(2)線膨張係数:
JIS−K7197に準拠して、23〜80℃ の温度範囲にて測定。
試験片は、前記多目的試験片(t4mm)の中央部からH10mm×W10mmの角柱状に切削加工したものを用いた。ここで、線膨張係数が小さいほど、寸法安定性が優れているといえる。
(3)曲げ弾性率:
JIS−K7171に準拠して、23℃雰囲気下で測定。
試験片は、前記多目的試験片(t4mm)の中央部からL80mm×W10mmの短冊状に切削加工したものを用いた。
(4)シャルピー衝撃強度:
JIS−K7111に準拠して、23℃雰囲気下で測定。
試験片は、前記多目的試験片(t4mm)の中央部からL80mm×W10mmの短冊状に切削加工し、更に短冊試験片の中央部に。ノッチ加工(ノッチ半径0.25mm)したものを用いた。
(5)ウェルド外観(ウェルド隆起):
成形機:住友SE220ton射出成形機
金 型:長尺平板(L350mm×W100mm×t3mm)
ゲート:短側面の両側に設置。
ウェルド作製:下記成形条件で試験片の中央に突き当てのウェルドを作製した。
成形温度:220℃
金型温度:40℃
射出圧力:80MPa
保圧力 :60Mpa
射出速度:30mm/sec
ウェルド隆起判定:上記で作製した試験片の表面に塗装処理を施し、ウェルド部の隆起を目視判定した。
○:ウェルド隆起は小さく、目立ちも良好であり、実用可能レベル。
△:ウェルド隆起が目立ち、実用困難レベル。
×:ウェルド隆起が大きく目立ち、実用不可レベル。
2 . 材料
実施例、比較例において原材料として以下のものを使用した。
(1)成分(A):ポリプロピレン系樹脂
(A)−1:プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体
MFR 85g/10分
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体部分の割合:10重量%
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体部分のプロピレン含量:40重量%
(2)成分(B):エチレン・ブテン共重合体( エラストマー)
(B1)−1:三井化学社製、エチレン・ブテン共重合体
商品名:A4050S
MFR:6.7g/10分(230℃、2.16kg荷重)
密 度:0.864g/cm

(B2)−1:三井化学社製、エチレン・ブテン共重合体
商品名:A35070S
MFR:60g/10分(230℃、2.16kg荷重)
密 度:0.870g/cm
(3)成分(C):タルク
(C)−1:顕微鏡等により拡大した画像から、アスペクト比の大きいタルクを10個選択し、平均したアスペクト比が13であり、平均粒径が7μmであるタルク

(C)−2:顕微鏡等により拡大した画像から、アスペクト比の大きいタルクを10個選択し、平均したアスペクト比が18であり、平均粒径が9μmであるタルク

なお、平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計等によって求めた粒度分布におけ
る積算値50%での粒径であり、測定装置として、堀場製作所LA−920型を使用した。
3.実施例及び比較例
上記成分(A)〜成分(C)を表に示す割合で配合し、スーパーミキサーを用いドライブレンドした後、ホッパーより原料を供給し、神戸製鋼所製のKCM2軸押出機を用い溶融混練し得られたペレットを前述の射出成形機で各種試験片を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
Figure 0006560612
4 . 評価
表1に示されるように、本発明の必須構成要件における各規定を満たす、実施例1に示す組成を持ったポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを射出成形して得られた部品は、高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)を満足しつつ、樹脂の対抗合流で生じる突き合せウェルドの隆起を低減しており、塗装外観品質が高いので、バックドア、フェンダー、ボンネット、バンパー、サイドモール等の自動車外板部品への適する性能を有していることが確認された。
一方、比較例1は、成分(B)としてエラストマー成分(B1)のみを含み、本発明に必須なエラストマー成分(B2)の配合が成されていないものであるが、線膨張係数が大きくなり、外板部材として適用不可である。比較例2は、エラストマー成分(B1)の比率が少ないため、衝撃性能が低下し、外板部材としての適用が困難である。比較例3は、タルクのアスペクト比が大きすぎるため、ウェルドの隆起が悪化し、製品の外観性能が不足する。
また、比較例4、5は、エラストマーの添加総量(B1+B2)を変動させた例であるが、エラストマー総量(B1+B2)が少ないと線膨張係数が大きくなり、また衝撃性能も低下し、エラストマー総量(B1+B2)が多いと剛性が低下し、外板部材としての適用が困難になる。比較例6、7は、タルクの添加量を変動させた例であるが、タルク量が少ないと線膨張係数が大きくなり、また剛性も低下し、タルク量が多いとウェルドの隆起が悪化し、外板部材としての適用が困難になる。
以上における、実施例と各比較例の結果からして、本発明の構成と各要件の合理性と
有意性が実証され、さらに本発明の従来技術に対する優位性も明らかである。
本発明の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物を用いた成形体又は部品は、高度な寸法安定性(低線膨張性)と高い機械物性バランス(高剛性、衝撃強度)を満足しつつ、樹脂の対抗合流で生じる突き合せウェルドの隆起を低減しており、塗装外観品質が高いので、バックドア、フェンダー、ボンネット、バンパー、サイドモール等の自動車外板部品への適する性能を有している。

Claims (3)

  1. 下記の成分(A)41〜59重量% と、下記の成分(B)20〜30重量%と、下記の成分( C )21〜29重量%とを含有することを特徴とする低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物(但し、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)との合計を100重量%とする)。
    成分(A):以下の条件(A−1)を満足するプロピレン系重合体。
    条件(A−1) : 成分(A)全体のメルトフローレート(230℃ 、2.16kg荷重)が50〜120g/10分である。
    成分(B):以下の条件(B−1)〜(B−4)を満足するエチレン‐ブテン共重合体。
    条件(B−1):成分(B)は、以下の条件(B−2)を満足するエチレン−ブテン共重合体(B1)55〜85重量%と、以下の条件(B−3)を満足するエチレン−ブテン共重合体(B2)15〜45重量%とからなる(但し、成分(B)における、エチレン−ブテン共重合体(B1)と、エチレン−ブテン共重合体(B2)との合計を100重量%とする)。
    条件(B−2):エチレン−ブテン共重合体(B1)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2〜10g/10分である。
    条件(B−3):エチレン−ブテン共重合体(B2)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が30〜70g/10分である。
    条件(B−4):成分(B1)及び成分(B2)の密度が、各々0.860〜0.875g/cmである。
    成分(C): 以下の条件(C−1)〜(C−2) を満足するタルク。
    条件(C−1):レーザー回折法により測定した平均粒径が6〜8μmである。
    条件(C−2):アスペクト比が12〜14である。
  2. 成分(A)がプロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分とからなるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体であり、更に以下の条件(A−2)〜(A−3)を満足する請求項1に記載の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物。
    条件(A−2):成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分のプロピレン含量が55〜65重量% である(但し、成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分における、プロピレン含量とα−オレフィン含量との合計を100重量%とする)。
    条件(A−3):成分(A)全体に対するプロピレン−α−オレフィン共重合体部分の割合が5〜12重量% である(但し、成分(A)における、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−α−オレフィン共重合体部分との合計を100重量%とする)。
  3. 成分(A)のプロピレン−α−オレフィン共重合体部分が、プロピレン−エチレン共重合体である請求項2に記載の低線膨張性ポリプロピレン系樹脂組成物。
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