JP6559662B2 - 積層部材の加工方法、積層部材の加工体およびガスバリアフィルム - Google Patents
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Description
(1)第1のシートと、第1のシートの一方の面上に配置される第2のシートとを備える積層部材の加工方法であって、前記第1のシートは、基材と前記基材の少なくとも一方の面に積層されたガスバリア層とを備え、前記ガスバリア層は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が10GPa以上であり、前記第2のシートの前記第1のシートに対向する面と反対側の面は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が0.05GPa以上であり、前記積層部材を、前記第2のシート側の面から機械的切断加工を行って、前記第1のシートの切断体および前記第2のシートの切断体を備える前記積層部材の加工体を得る切断工程を備えることを特徴とする、積層部材の加工方法。
1.積層部材
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る積層部材100は、第1のシート10と第2のシート20とを備え、第2のシート20が備える粘着剤層22側の面が第1のシート10が備えるガスバリア層12の面に貼付されている。
第1のシート10は、基材11と基材11の少なくとも一方の面に積層されたガスバリア層12とを備える。
本実施形態に係る第1のシート10が備える基材11は、積層部材100が第1のシート10のガスバリア層12が後述する硬度に関する規定を満たすことができる限り、具体的な特徴は特に限定されない。
ガスバリア層12は、第1のシート10のガス透過性を低下させることに寄与できる限り、その組成や厚さは限定されない。前述のように、通常、ガスバリア層12は、無機化合物層を備える。
第1のシート10は、上記のように、基材11の少なくとも一方の面に、ガスバリア層12が積層された積層構造を有し、ガスバリア層12のナノインデンターを用いて測定される表面硬度が10GPa以上である。上記の表面硬度が10GPa未満の場合には、従来の加工方法でもガスバリア層12にクラックが発生し難いが、上記の表面硬度が10GPa以上のものでは、従来の加工方法では、ガスバリア層へのクラック発生を抑制することが困難である。しかしながら、本実施形態に係る積層部材100を用いれば、一般的な機械的切断加工が施されても、ガスバリア層12にクラックが生じる可能性を低減させることが可能である。上記のガスバリア層12の表面硬度は、好ましくは、10〜100GPa、より好ましくは、20〜50GPaである。
第1のシート10はガス透過性が低いことが好ましく、具体的に、水蒸気透過率として、40℃、90%RHにおいて、0.5g/(m2・day)以下であることが好ましく、0.1g/(m2・day)以下であることがより好ましく、0.05g/(m2・day)以下であることが特に好ましい。
第1のシート10の積層構造は限定されない。例えば、図1に示されるように、基材11の一方の面にガスバリア層12を備えていてもよく、ガスバリア層12が複数積層した構造を有していてもよい。また、基材11の両面にガスバリア層12を備えていてもよい。
本実施形態に係る第1のシート10の厚さは、第1のシート10の切断体がガスバリアフィルムとなることを考慮して適宜設定される。限定されない例として、本実施形態に係る第1のシート10の厚さは、20μmから300μm程度の範囲内であり、30μm以上250μm以下であることが好ましい場合もあり、40μm以上230μm以下であることが好ましい場合もある。
本実施形態に係る第1のシート10は、JIS K7361−1に準拠して厚さ方向に測定された全光線透過率(以下、「全光線透過率」と略記する。)が85%以上であることが好ましい。この全光線透過率が85%以上であることにより、画像表示デバイスの表示側の保護部材として用いられる透明基板として好ましく使用することが可能となる。上記の保護部材への適用性を高める観点から、全光線透過率は90%以上であることが好ましい。なお、この全光線透過率を測定する際の第1のシート10の厚さは特定されない。
本実施形態に係る第1のシート10の第2のシート20に対向する面と反対側の面は、JIS B0601:2001(ISO 4287:1997)に規定される、算術平均粗さ(Ra)が10nm以上50nm以下、かつ粗さ曲線の最大断面高さ(Rt)が150nm以上1000nm以下となるようにすることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る積層部材100が備える第2のシート20は、積層部材100に対して機械的切断加工を行う際に保護フィルムとして機能するものであって、支持フィルム21と支持フィルム21の一方の面に積層された粘着剤層22とを備え、その一方の面が粘着剤層22の面からなる。本実施形態では、この粘着剤層22の面が第1のシート10の一方の面に接するように、第2のシート20は第1のシート10に積層されている。このとき、第2のシート20の粘着剤層22の面は、第1のシート10のガスバリア層12の面に接していることが好ましい。本発明の一実施形態に係る積層部材が備える第2のシートはこのような積層構造を有していなくてもよい。すなわち、第2のシートは支持フィルムのみから構成されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る積層部材が備える第2のシートにおける第1のシートに対向する面と反対側の面は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が0.05GPa以上である。具体的には、第2のシート20は、支持フィルム21側の面について、表面硬度が0.05GPa以上である。
支持フィルム21の具体的な組成や構造は、上記の表面硬度に関する規定を満たすことができる限り、限定されない。支持フィルム21は、前述の基材11と同様の材料から構成されていてもよい。支持フィルム21がプラスチックフィルムを備える場合において、そのプラスチックフィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)、フッ素樹脂、ポリ乳酸等の合成樹脂フィルムなどを挙げることができる。支持フィルム21は、単層構造であってもよいし、積層構造を有していてもよい。
粘着剤層22を構成する粘着性組成物の組成は特に限定されない。主成分である粘着剤としてゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の粘着剤が例示され、これらの1種類を使用してもよいし、2種類以上を使用してもよい。また、粘着剤層22は積層構造を有していてもよい。
第2のシート20のように、本発明の一実施形態に係る積層部材の第2のシートが粘着剤層を備える場合には、第2のシート20の粘着剤層22の面は第1積層体10のガスバリア層12の面に貼付されることが好ましく、この状態において、第2のシート20の第1のシート10に対する粘着力が1500mN/25mm以下であることが好ましい。なお、本明細書における第2のシートの第1のシートに対する粘着力とは、後述する試験例における測定方法による値で示すものとする。
上記の積層部材100の加工方法は、積層部材100を、第2のシート20側の面から機械的切断加工を行って、第1のシート10の切断体および前記第2のシート20の切断体を備える積層部材100の加工体を得る切断工程を備える。
基材として、厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、商品名:PET25 T−100、Ra:24nm、Rt:750nm)を用いて、基材の一方の面上に、酸化ケイ素(厚さ150nm)を下記条件で成膜し、ガスバリア層を形成し、第1のシートを得た。なお、得られたガスバリア層の面のRaは40nm以下、Rtは900nm以下であった。
・スパッタリングガス:アルゴン、酸素
・ガス流量:アルゴン100sccm、酸素40sccm
・ターゲット材料:シリコン
・電力値:2500W
・真空槽内圧:0.2Pa
下記条件にて酸窒化ケイ素(厚さ150nm)からなるガスバリア層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。なお、第1のシートと第2のシートとの厚さの関係は、第2のシート>第1のシートであった。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。なお、得られたガスバリア層の面のRaは40nm以下、Rtは900nm以下であった。
<反応性スパッタリングの条件>
・スパッタリングガス:アルゴン、窒素、酸素
・ガス流量:アルゴン100sccm、窒素60sccm、酸素40sccm
・ターゲット材料:シリコン
・電力値:2500W
・真空槽内圧:0.2Pa
剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET1031C」)の剥離処理面にアクリル系粘着剤(リンテック社製「LS411E」)を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布、乾燥し、その粘着剤面に、支持フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製「PET100A4300」、厚さ100μm)を貼り合わせ、得られた積層体から剥離フィルムを剥離して第2シートを得たこと以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。なお、第1のシートと第2のシートとの厚さの関係は、第2のシート>第1のシートであった。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET1031C」)の剥離処理面にアクリル系粘着剤(リンテック社製「LS411E」)を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布、乾燥し、その粘着剤面に支持フィルムとしてポリカーボネートフィルム(帝人社製「ピュアエースC110−75」、厚さ75μm)を貼り合わせ、得られた積層体から剥離フィルムを剥離して第2のシートを得たこと以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。なお、第1のシートと第2のシートとの厚さの関係は、第2のシート>第1のシートであった。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET1031C」)の剥離処理面にアクリル系粘着剤(リンテック社製「LS411E」)を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布、乾燥し、その粘着剤面に支持フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子製紙社製「アルファンPP40」、厚さ40μm)を貼り合わせ、得られた積層体から剥離フィルムを剥離して第2のシートを得たこと以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。なお、第1のシートと第2のシートとの厚さの関係は、第2のシート>第1のシートであった。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
支持フィルムと粘着剤層とを備える第2のシートとしてサンエー化研社製「サニテクトPAC−3−70」(厚さ70μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。なお、第1のシートと第2のシートとの厚さの関係は、第2のシート>第1のシートであった。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
支持フィルムと粘着剤層とを備える第2のシートとしてリンテック社製「SRL−0753C(AS)」(厚さ75μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。なお、第1のシートと第2のシートとの厚さの関係は、第2のシート>第1のシートであった。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
第2のシートを第1のシートに貼付せずに裁断加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET1031C」)の剥離処理面にアクリル系粘着剤(リンテック社製「LS411E」)を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布、乾燥し、その粘着剤面に支持フィルムとしてポリエチレンフィルム(住友化学社製「スミカセンL705」からなるフィルム、厚さ110μm)を貼り合わせ、得られた積層体から剥離フィルムを剥離して第2のシートを得たこと以外は、実施例1と同様にして、積層部材の加工体を得た。この積層部材の加工体から第2のシートの切断体を除去して、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。
下記条件にて炭素含有酸化ケイ素(厚さ250nm)からなるガスバリア層を形成したこと以外は、比較例1と同様にして、第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得た。なお、得られたガスバリア層の面のRaは40nm以下、Rtは900nm以下であった。
<反応性スパッタリングの条件>
・スパッタリングガス:へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム
・ガス流量:へキサメチルジシロキサン1sccm、酸素ガス10sccm、ヘリウム10sccm
・電力値:2500W
・真空槽内圧:0.2Pa
実施例および比較例により製造したガスバリアフィルム、およびそれらのガスバリアフィルムを製造する際に使用した第2のシートの、第1のシートに対向する面と反対側の面について、ナノインデンター(MTS社製「Nano Indenter SA2」)を用いて、23℃における表面硬度を測定した。結果を表1に示す。
実施例および比較例により製造したガスバリアフィルムを製造する際に使用した第2のシートを25mm×250mmのサイズに切り出した。実施例および比較例により製造したガスバリアフィルムを製造する際に使用した第1のシートのガスバリア層の面に、上記第2のシートの粘着剤層の面を貼付した。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置したのち、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件での剥離試験を実施した。剥離試験において剥離に要した最大の力を粘着力(mN/25mm)とした。結果を表1に示す。
連続自動切断機(荻野精機製作所社製「PN1−600」)を用いて、実施例および比較例において製造した積層部材(比較例1のみ第1のシート)を直線状に裁断して、積層部材(比較例1のみ第1のシート)の切断体を得た。得られた切断体の裁断した端部における任意に抜き出した200μm×200μmの領域を観察対象とし、コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製「HD100D」、対物レンズ:20倍)を用いて、ガスバリア層の端部や膜面のクラックや傷の有無を観察し、下記の基準に従って加工適正を評価した。
A:1μm以上の異物や傷が見られなく、かつ1μm以下の異物や傷もほぼ見られなかった(1μm以下の異物:2個未満)。
B:1μm以上の異物や傷が見られなかったが、1μm以下の異物や傷がわずかに見られた(1μm以下の異物:2〜10個)。
C:1μm以上の異物や傷が見られなかったが、1μm以下の異物や傷が多数確認された(1μm以下の異物:11個以上)。
D:1μm以上の異物や傷が確認され、かつ1μm以下の異物や傷が多数確認された。
上記基準に従って評価した結果、「A」、「B」および「C」のいずれかであった場合には、適切なガスバリア性を有するガスバリア層であると判断することができる。
10…第1のシート
11…基材
12…ガスバリア層
20…第2のシート
21…支持フィルム
22…粘着剤層
3…切断刃
Claims (11)
- 第1のシートと、第1のシートの一方の面上に配置される第2のシートとを備える積層部材の加工方法であって、
前記第1のシートは、基材と前記基材の少なくとも一方の面に積層されたガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が10GPa以上であり、
前記第2のシートは、前記第1のシートから剥離されるものであり、
前記第2のシートの前記第1のシートに対向する面と反対側の面は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が0.05GPa以上、0.5GPa以下であり、
前記積層部材を、前記第2のシート側の面から機械的切断加工を行って、前記第1のシートの切断体および前記第2のシートの切断体を備える前記積層部材の加工体を得る切断工程を備えること
を特徴とする、積層部材の加工方法。 - 前記機械的切断加工は、裁断加工および抜き加工の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の加工方法。
- 前記積層部材の加工体から前記第2のシートの切断体を除去することを含んで、前記第1のシートの切断体からなるガスバリアフィルムを得る除去工程を備える、請求項1に記載の加工方法。
- 前記第2のシートは、前記第1のシートの前記ガスバリア層側の面上に配置される、請求項1に記載の加工方法。
- 前記第2のシートは、支持フィルムと、前記支持フィルムの一方の面上に積層された粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層側の面が前記第1のシートに対向するように前記第2のシートは配置されている、請求項1に記載の加工方法。 - 前記第1のシートの第2のシートに対向する面と反対側の面は、算術平均粗さ(Ra)が10nm以上、粗さ曲線の最大断面高さ(Rt)が150nm以上である、請求項1に記載の加工方法。
- 前記第2のシートの前記粘着剤層の面は前記第1積層体の前記ガスバリア層の面に貼付され、前記第2のシートの前記第1のシートに対する粘着力が1500mN/25mm以下である、請求項5に記載の加工方法。
- 前記第2のシートの厚さは、第1のシートの厚さよりも厚いことを特徴とする、請求項1に記載の加工方法。
- 前記第1のシートの前記ガスバリア層は、算術平均粗さ(Ra)が10nm以上50nm以下、かつ粗さ曲線の最大断面高さ(Rt)が150nm以上1000nm以下である、請求項1に記載の加工方法。
- 第1のシートと、第1のシートの一方の面上に配置される第2のシートを備える積層部材を、前記第2のシート側の面から機械的切断加工を行って得られた、前記第1のシートの切断体および前記第2のシートの切断体を備える積層部材の加工体であって、
前記第1のシートは、基材と前記基材の少なくとも一方の面に積層されたガスバリア層とを備え、
前記第2のシートは、前記第1のシートから剥離されるものであり、
前記ガスバリア層は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が10GPa以上であり、
前記第2のシートの前記第1のシートに対向する面と反対側の面は、ナノインデンターを用いて測定される表面硬度が0.05GPa以上、0.5GPa以下であること
を特徴とする積層部材の加工体。 - 請求項10に記載される積層部材の加工体が備える第1のシートの切断体を備えるガスバリアフィルム。
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