以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
まず、測定装置の一例である図1に示す測定装置1の構成について説明する。この測定装置1は、測定部2、処理部3、記憶部4および出力部5を備え、一対の入力端子6a,6b間に入力される不図示の測定対象についての被測定量を示す測定電圧Vin(交流または直流電圧)に基づいて、この被測定量を測定する。この測定装置1では、入力端子6bがこの装置における基準電位(グランド)Gに規定されている部位に接続されているため、測定電圧Vinは、この入力端子6bの電位(基準電位G)を基準として入力端子6aに入力される。
この場合、測定装置1は、測定電圧Vinが測定対象に流れる電流を電圧に変換した信号であるときには、この電流を被測定量として測定し、測定電圧Vinが測定対象に生じている電圧を示す信号であるときには、この電圧を被測定量として測定する。また、測定装置1は、測定対象に流れる電流を電圧に変換した信号と、この電流が流れた際に測定対象の両端間に発生する電圧を示す信号とが測定電圧Vinとして時分割で入力されるときには、測定対象に流れる電流と測定対象に発生する電圧とを被測定量として測定すると共に、測定した電流および電圧に基づいて算出される電力についても被測定量として測定する。本例では一例として、測定装置1は、測定対象に生じている電圧の電圧値Vmを被測定量として測定する電圧測定装置であるものとし、一例として、測定電圧Vinは電圧値Vmと同じ電圧値の信号であるものとする。なお、測定電圧Vinは、測定対象に生じている電圧を分圧して得られる信号であったり、測定対象に生じている電圧を昇圧して得られる信号であってもよいのは勿論である。
測定部2は、基準電圧出力部11、第1スイッチ部(スイッチ部)12、レンジアンプ13、プリアンプ14およびA/D変換部15を備え、測定電圧Vinを複数の測定レンジ(本例では一例として後述する3つの測定レンジRa,Rb,Rc(特に区別しないときには測定レンジRともいう))のうちから選択(指定)された1つの測定レンジRで測定して、この測定電圧Vinの瞬時値を示す測定値(測定データ)Dmを予め規定された周期T1(例えば、数百ミリ秒間隔)で処理部3に出力する。
基準電圧出力部11は、一例として、測定レンジRの数よりも少ない数のゲイン補正(ゲイン校正)用の基準電圧Vr(基準電位Gを基準とする電圧値が既知の電圧)と、オフセット補正(オフセット校正)用の1つの第1基準電圧としての基準電圧Vrz(電圧値が基準電位Gと同電位(ゼロボルト)の電圧)とを出力する。本例では、後述するように、測定レンジRの数が一例として、ゲインG1がα(0を超え1を下回る定数。0<α<1)の一例である0.1に規定されている10Vの測定レンジRa、ゲインG1が1に規定されている1Vの測定レンジRb、およびゲインG1が1/α(上記したαの逆数であるため、1を上回る定数)の一例である10に規定されている0.1Vの測定レンジRcの3つであることから、基準電圧出力部11は、測定レンジRの数(3つ)よりも1つ少ない2つの基準電圧Vr、具体的には、10Vの測定レンジRa用の第2基準電圧としての基準電圧Vra(10Vまたは10Vよりも若干低い電圧。例えば9V)、および1Vの測定レンジRb用の第3基準電圧としての基準電圧Vrb(1Vまたは1Vよりも若干低い電圧。例えば0.9V)を出力する。
背景技術で説明した測定装置(本願発明者が開発した測定装置)では、上記の2つの測定レンジRa,Rb用の2つの基準電圧Vra,Vrbに加えて、残りの0.1Vの測定レンジRc用の基準電圧も必須となっているが、この測定レンジRc用の基準電圧は0.1Vまたは0.1Vよりも若干低い電圧(例えば0.09V)に規定する必要があり、このような低い電圧(例えば0.1V未満の電圧)を十分な精度で出力する構成を実現するためには高価な電子部品(分圧用の抵抗など)を使用することになって装置コストが上昇する。一方、この測定装置1では、コスト上昇の要因になるゲインが1を超える測定レンジ用の基準電圧を基準電圧出力部11に出力させない構成のため、高価な電子部品の使用を回避すると共に、基準電圧Vrの数を3つから2つ(基準電圧Vra,Vrb)に低減できて基準電圧出力部11の構成を簡略化できることから、測定装置1全体のコストの上昇を回避可能となっている。
第1スイッチ部12は、処理部3によってオン・オフ制御が行われる複数のスイッチ(本例では4つのスイッチSW1,SW2,SW3,SW4)を備えている。また、第1スイッチ部12は、入力端子6aおよび基準電圧出力部11における不図示の出力端子(基準電圧Vra,Vrb,Vrzの各出力端子)と、レンジアンプ13(の非反転入力端子)との間に配設されて、スイッチSW1のみがオン状態に制御されることで測定電圧Vinを入力電圧としてレンジアンプ13に選択的に出力し、スイッチSW2のみがオン状態に制御されることで基準電圧Vraを入力電圧としてレンジアンプ13に選択的に出力し、スイッチSW3のみがオン状態に制御されることで基準電圧Vrbを入力電圧としてレンジアンプ13に選択的に出力し、スイッチSW4のみがオン状態に制御されることで基準電圧Vrzを入力電圧としてレンジアンプ13に選択的に出力する。
レンジアンプ13は、一例として、オペアンプ(演算増幅器)13a、ゲインG1を設定するための2つの抵抗13b,13c、および処理部3によってオン・オフ制御が行われる複数のスイッチ(本例では4つのスイッチSW6,SW7,SW8,SW9)を有する第2スイッチ部13dを備えている。オペアンプ13aは、その非反転入力端子が第1スイッチ部12の各出力端子に接続されている。各抵抗13b,13cは、抵抗13bの他端と抵抗13cの一端とが接続されることで互いに直列接続されている。また、抵抗13b,13cの直列回路は、抵抗13bの一端がオペアンプ13aの出力端子に接続され、抵抗13cの他端が基準電位Gに規定されることで、オペアンプ13aの出力端子と測定部2における基準電位Gに規定された部位との間に配設されている。
また、第2スイッチ部13dの各スイッチSW6〜SW9は、スイッチSW6がオペアンプ13aの出力端子と反転入力端子との間に接続され、スイッチSW7が抵抗13cの一端とオペアンプ13aの反転入力端子との間に接続され、スイッチSW8がオペアンプ13aの出力端子とプリアンプ14の入力端子との間に接続され、スイッチSW9が抵抗13cの一端とプリアンプ14の入力端子との間に接続されている。
この構成により、レンジアンプ13は、スイッチSW7,SW8のみがオン状態に制御されることでゲインG1がG1c(=1/α。本例では10)倍に設定(つまり、0.1Vの測定レンジRcに指定)され、スイッチSW6,SW8のみがオン状態に制御されることでゲインG1がG1b(=1)倍に設定(つまり、1Vの測定レンジRbに指定)され、スイッチSW6,SW9のみがオン状態に制御されることでゲインG1がG1a(=α。本例では0.1)倍に設定(つまり、10Vの測定レンジRaに指定)されて、第1スイッチ部12において選択されて第1スイッチ部12から出力される選択電圧V1を入力電圧として、設定されたゲインG1で増幅して(指定された測定レンジRで測定して)第1増幅電圧V2としてプリアンプ14に出力する。
プリアンプ14は、レンジアンプ13から出力される第1増幅電圧V2を予め規定されたゲインG2で増幅して第2増幅電圧V3としてA/D変換部15に出力する。このプリアンプ14のゲインG2は、第2増幅電圧V3の電圧値をA/D変換部15の入力定格電圧に適合した電圧値とし得るように規定されている。
A/D変換部15は、プリアンプ14から出力される第2増幅電圧V3を、規定の周期T2(例えば、上記した周期T1の1/2)でサンプリングすることにより、第2増幅電圧V3の瞬時値を示す電圧データD1を生成して処理部3に出力する。本例では後述するように、処理部3が、スイッチSW1のみをオン状態に制御して測定電圧Vinをレンジアンプ13に出力させるという第1スイッチ部12に対する制御(後述する測定処理Pmの実行期間中に行う制御)と、スイッチSW1以外のいずれか1つのスイッチのみをオン状態に制御して1種類の基準電圧Vr(基準電圧Vra,Vrb,Vrzのいずれか1つ)を出力させるという第1スイッチ部12に対する制御(後述する補正値更新処理Pcの実行期間中に行う制御)とを周期T2で繰り返し実行する。
この構成により、測定部2は、測定電圧Vinの瞬時値を示す電圧データD1を測定値Dmとして周期T1で出力し、この測定値Dmの出力タイミングと周期T2だけずれたタイミングで、基準電圧Vrを示す電圧データD1を補正値Dcとして周期T1で出力する。
処理部3は、例えばコンピュータで構成されて、測定部2から出力される測定値Dmを、記憶部4に記憶されている各測定レンジRで使用される個別の補正値Dc(各測定レンジRに対応する補正値)のうちのこの測定値Dmの測定に使用された測定レンジRで使用される補正値Dcで補正して測定電圧Vinの電圧値Vmを測定する測定処理Pm(図2参照)を実行する。
また、処理部3は、測定部2から出力される新たな補正値Dcで、記憶部4に記憶されている各測定レンジRで使用される個別の補正値Dcのうちの測定部2においてこの新たな補正値Dcの測定に使用された測定レンジRで使用される補正値Dcを更新する補正値更新処理Pcを実行する。
この補正値Dcとしては、オフセット補正用の基準電圧Vrzを示す電圧データD1が用いられる補正値Dcと、ゲイン補正用の基準電圧Vra,Vrbのうちのいずれかを示す電圧データD1が用いられる補正値Dcとがあり、この2つを区別するため、前者を補正値Dczとし、後者を補正値Dcrとする。また、測定レンジRaで使用される補正値Dcz,Dcrをそれぞれ第1補正値としての補正値Dcza,第2補正値としての補正値Dcraとし、さらに補正値Dczaを更新する補正値更新処理Pcを第1補正値更新処理としての補正値更新処理Pczaとし、補正値Dcraを更新する補正値更新処理Pcを同じく第1補正値更新処理としての補正値更新処理Pcraとする。同様にして、測定レンジRbで使用される補正値Dcz,Dcrをそれぞれ第3補正値としての補正値Dczb,第4補正値としての補正値Dcrbとし、さらに補正値Dczbを更新する補正値更新処理Pcを第2補正値更新処理としての補正値更新処理Pczbとし、補正値Dcrbを更新する補正値更新処理Pcを同じく第2補正値更新処理としての補正値更新処理Pcrbとする。また測定レンジRcで使用される補正値Dczを第5補正値としての補正値Dczcとし、さらに補正値Dczcを更新する補正値更新処理Pcを第3補正値更新処理としての補正値更新処理Pczcとする。なお、この測定装置1では、上記したように基準電圧出力部11は測定レンジRc用の基準電圧を出力しない構成のため、処理部3は、電圧データD1に基づいて測定レンジRc固有のゲイン補正用の補正値Dcrを取得する処理は実行しない。処理部3は、後述するように、測定レンジRcで測定された測定値Dmについては、補正値Dczcと共に他の測定レンジRa,Rbについての各補正値Dcra,Dcza,Dcrb,Dczbを使用して補正して電圧値Vmを測定する。
また、処理部3は、上記の測定処理Pmおよび上記の各補正値更新処理Pcの開始直後において、第1スイッチ部12の各スイッチSW1〜SW4に対するオン・オフ制御を実行して、測定電圧Vinおよび各基準電圧Vrのうちの各処理Pm,Pcにおいて使用する1つの電圧を選択して選択電圧V1としてレンジアンプ13に出力させる。また、処理部3は、測定処理Pmにおいて、算出した測定電圧Vinの電圧値Vmと各測定レンジRの電圧範囲とに基づいて、次の測定処理Pmにおいて電圧値Vmを算出するのに適した1つの測定レンジR(測定部2に対して測定値Dmを測定させるための1つの測定レンジ。この測定レンジを以下では第1測定レンジRともいう)を選択すると共に、レンジアンプ13の各スイッチSW6〜SW9に対するオン・オフ制御(レンジアンプ13についての測定レンジRの選択)を実行してこの第1測定レンジRに切り替えるレンジ切替処理Pr(図2参照)を実行する。
また、処理部3は、このようにして複数種類の測定レンジR(本例では3つの測定レンジRa,Rb,Rc)のうちの1つの測定レンジRを測定部2に対して測定値Dmを出力させる第1測定レンジRとして選択したときには、この第1測定レンジRでの測定処理Pmにおいてこの測定値Dmに基づいて算出される電圧値Vmがこの第1測定レンジRの電圧範囲内となっている限りは、測定処理Pmの実行時には現在の第1測定レンジRを変更することなく維持して、測定部2にこの第1測定レンジRでの測定値Dmを出力させて電圧値Vmを算出(測定)する。一方、補正値更新処理Pcについては、処理部3は、第1測定レンジRを維持して測定部2にこの第1測定レンジRでの補正値Dcを新たに出力させて、この新たな補正値Dcで、記憶部4に記憶されているこの第1測定レンジRで使用される補正値Dcを更新する補正値更新処理(メイン補正値更新処理ともいう)Pcを主として実行しつつ、測定部2に対して複数種類の測定レンジR(本例では3つの測定レンジRa,Rb,Rc)のうちの第1測定レンジR以外の第2測定レンジRで補正値Dcを出力させて(つまり、測定部2に対して第1測定レンジRを一時的に第2測定レンジRに切り替えさせると共にこの第2測定レンジRに対応した基準電圧Vrに一時的に切り替えさせることで、第2測定レンジRでの補正値Dcを出力させて)、この新たな補正値Dcで、記憶部4に記憶されているこの第2測定レンジRで使用される補正値Dcを更新する補正値更新処理(サブ補正値更新処理ともいう)Pcについても実行する。
すなわち、処理部3は、第1測定レンジRでのメイン補正値更新処理Pcおよび測定処理Pmの実行の合間に、サブ補正値更新処理Pcを実行する。
次に、各補正値更新処理Pcにおいて記憶部4に更新記憶される測定レンジR毎の補正値Dcと、測定値Dmと、電圧値Vmとの関係について説明する。
この測定装置1では、レンジアンプ13を構成するオペアンプ13aには、オフセット電圧Vos1が存在し、プリアンプ14には、オフセット電圧Vos2が存在している。この各オフセット電圧Vos1,Vos2、並びにレンジアンプ13のゲインG1およびプリアンプ14のゲインG2は、測定装置1が配置されている測定環境の変化に応じて変動する。
このため、この測定装置1では、処理部3は、測定処理Pmにおいて、ゲインG1a(α倍。本例では0.1倍)の測定レンジRa(本例では10Vの測定レンジR)を第1測定レンジRとして測定部2に入力電圧を測定させている状態において第1スイッチ部12に対して測定電圧Vinを出力させたときに測定部2から出力される測定値Dmには各補正値Dcza,Dcra(第1補正値および第2補正値)を用いて補正して電圧値Vmを算出する。また、処理部3は、測定処理Pmにおいて、ゲインG1b(1倍)の測定レンジRb(本例では1Vの測定レンジR)を第1測定レンジRとして測定部2に入力電圧を測定させている状態において第1スイッチ部12に対して測定電圧Vinを出力させたときに測定部2から出力される測定値Dmには各補正値Dczb,Dcrb(第3補正値および第4補正値)を用いて補正して電圧値Vmを算出する。また、処理部3は、測定処理Pmにおいて、ゲインG1c(1/α倍。本例では10倍)の測定レンジRc(本例では0.1Vの測定レンジR)を第1測定レンジRとして測定部2に入力電圧を測定させている状態において第1スイッチ部12に対して測定電圧Vinを出力させたときに測定部2から出力される測定値Dmには、補正値Dczc(第5補正値)と共に各補正値Dcza,Dcra,Dczb,Dcrbを用いて補正して電圧値Vmを算出する。これにより、処理部3は、各測定レンジRa〜Rcにおいて、測定環境の変化に応じて変動する各オフセット電圧Vos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けない状態(影響を排除した状態)で測定電圧Vinの電圧値Vmを算出する。
具体的には、測定レンジRa(レンジアンプ13のゲインG1がG1a(=α))のときにおいて、第1スイッチ部12のスイッチSW1のみがオン状態に制御されたときには、プリアンプ14からA/D変換部15に出力される第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3maとする)は、下記式(1)で表される。
V3ma={(Vin+Vos1)×G1a+Vos2}×G2
={(Vin+Vos1)×α+Vos2}×G2 ・・・(1)
また、この測定レンジRaのときにおいて、第1スイッチ部12のスイッチSW4のみがオン状態に制御されたときには、プリアンプ14からA/D変換部15に出力される第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3zaとする)は、下記式(2)で表される。
V3za={(Vrz+Vos1)×G1a+Vos2}×G2
={(Vrz+Vos1)×α+Vos2}×G2 ・・・(2)
また、この測定レンジRaのときにおいて、第1スイッチ部12のスイッチSW2のみがオン状態に制御されたときには、プリアンプ14からA/D変換部15に出力される第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3raとする)は、下記式(3)で表される。
V3ra={(Vra+Vos1)×G1a+Vos2}×G2
={(Vra+Vos1)×α+Vos2}×G2 ・・・(3)
この場合、(V3ma−V3za)/(V3ra−V3za)の式に上記式(1)〜(3)を代入して整理すると、
(V3ma−V3za)/(V3ra−V3za)
=(Vin−Vrz)/(Vra−Vrz)
となり、この式を変形すると、測定レンジRaのときの測定電圧Vinについての下記式(4)が導出される。
Vin=(V3ma−V3za)/(V3ra−V3za)×(Vra−Vrz)+Vrz ・・・(4)
この式(4)は、各基準電圧Vra,Vrzが測定環境の変化の影響を受けないもの(定電圧)であるときには、処理部3が、第1スイッチ部12の各スイッチSW1〜SW4に対するオン・オフ制御を実行して上記の2つの第2増幅電圧V3za,V3raについての電圧データD1を取得すると共にこの2つの電圧データD1をこの測定レンジRaで使用される補正値Dc(補正値Dcz,Dcr、具体的には補正値Dcza,Dcra)として記憶部4に記憶し(つまり、補正値更新処理Pcを実行し)、この各補正値Dcza,Dcraの取得のときから測定環境の変化が無視できるとみなせる短期間内に、第1スイッチ部12の各スイッチSW1〜SW4に対するオン・オフ制御を実行して上記の第2増幅電圧V3maについての電圧データD1を測定値Dmとして取得し(つまり、測定処理Pmを実行し)、かつこの取得した測定値Dmおよび各補正値Dcza,Dcraを上記の式(4)に、対応する第2増幅電圧V3ma,V3za,V3raとして各基準電圧Vra,Vrzと共に代入することにより、各オフセット電圧Vos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けない状態(影響を排除した状態)で、測定レンジRaのときの測定電圧Vin(つまり、測定電圧Vinの電圧値Vm)を算出できることを示している。
また、測定レンジRb(レンジアンプ13のゲインG1がG1b(=1))のときにおいては、第1スイッチ部12のスイッチSW1のみがオン状態に制御されたときの第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3mbとする)は、下記式(5)で表される。
V3mb={(Vin+Vos1)×G1b+Vos2}×G2
={Vin+Vos1+Vos2}×G2 ・・・(5)
また、この測定レンジRbのときにおいて、第1スイッチ部12のスイッチSW4のみがオン状態に制御されたときの第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3zbとする)は、下記式(6)で表される。
V3zb={(Vrz+Vos1)×G1b+Vos2}×G2
V3zb={Vrz+Vos1+Vos2}×G2 ・・・(6)
また、この測定レンジRbのときにおいて、第1スイッチ部12のスイッチSW3のみがオン状態に制御されたときの第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3rbとする)は、下記式(7)で表される。
V3rb={(Vrb+Vos1)×G1b+Vos2}×G2
={Vrb+Vos1+Vos2}×G2 ・・・(7)
この場合、(V3mb−V3zb)/(V3rb−V3zb)の式に上記式(5)〜(7)を代入して整理すると、
(V3mb−V3zb)/(V3rb−V3zb)
=(Vin−Vrz)/(Vrb−Vrz)
となり、この式を変形すると、測定レンジRbのときの測定電圧Vinについての下記式(8)が導出される。
Vin=(V3mb−V3zb)/(V3rb−V3zb)×(Vrb−Vrz)+Vrz ・・・(8)
したがって、測定レンジRbのときにおいても、各基準電圧Vrb,Vrzが測定環境の変化の影響を受けないもの(定電圧)であるときには、上記した測定レンジRaのときと同様にして取得した測定値Dmおよび各補正値Dcz,Dcr(具体的には補正値Dczb,Dcrb)を上記の式(8)に、対応する第2増幅電圧V3mb,V3zb,V3rbとして基準電圧Vrb,Vrzと共に代入することにより、各オフセット電圧Vos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けない状態(影響を排除した状態)で、測定レンジRbのときの測定電圧Vin(つまり、測定電圧Vinの電圧値Vm)を算出できることを示している。
また、測定レンジRc(レンジアンプ13のゲインG1がG1c(=1/α))のときにおいては、第1スイッチ部12のスイッチSW1のみがオン状態に制御されたときの第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3mcとする)は、下記式(9)で表される。
V3mc={(Vin+Vos1)×G1c+Vos2}×G2
={(Vin+Vos1)×(1/α)+Vos2}×G2 ・・・(9)
また、この測定レンジRcのときにおいて、第1スイッチ部12のスイッチSW4のみがオン状態に制御されたときの第2増幅電圧V3(このときの第2増幅電圧V3をV3zcとする)は、下記式(10)で表される。
V3zc={(Vrz+Vos1)×G1c+Vos2}×G2
={(Vrz+Vos1)×(1/α)+Vos2}×G2 ・・・(10)
この場合、(V3mc−V3zc)の式に上記式(9),(10)を代入して整理すると下記式(11)が導出される。
(V3mc−V3zc)=G2/α×(Vin−Vrz) ・・・(11)
また、(V3ra−V3za)の式に上記式(2),(3)を代入して整理すると下記式(12)が導出される。
(V3ra−V3za)=G2×α×(Vra−Vrz) ・・・(12)
また、(V3rb−V3zb)の式に上記式(6),(7)を代入して整理すると下記式(13)が導出される。
(V3rb−V3zb)=G2×(Vrb−Vrz) ・・・(13)
また、上記式(11),(12)の左辺同士、および右辺同士を乗算することにより、下記式(14)に示すようにαを消去し、
(V3mc−V3zc)×(V3ra−V3za)
=G2/α×(Vin−Vrz)×G2×α×(Vra−Vrz)
=G22×(Vin−Vrz)×(Vra−Vrz) ・・・(14)
さらに、上記式(13)の両辺を二乗して得られる式の左辺で上記式(14)の左辺を除算すると共に、上記式(13)の両辺を二乗して得られる式の右辺で上記式(14)の右辺を除算することで、下記(15)に示すようにG2を消去する。
(V3mc−V3zc)×(V3ra−V3za)/(V3rb−V3zb)2
=(Vin−Vrz)×(Vra−Vrz)/(Vrb−Vrz)2 ・・・(15)
この式(15)を変形すると、測定レンジRcのときの測定電圧Vinについての下記式(16)が導出される。
Vin=(V3mc−V3zc)×(V3ra−V3za)/(V3rb−V3zb)2×(Vrb−Vrz)2/(Vra−Vrz)+Vrz ・・・(16)
したがって、測定レンジRcのときにおいても、各基準電圧Vra,Vrb,Vrzが測定環境の変化の影響を受けないもの(定電圧)であるときには、上記した測定レンジRaのときと同様にして取得した測定値Dmおよび各補正値Dcz,Dcr(具体的には補正値Dcza,Dcra,Dczb,Dcrb,Dczc)を上記の式(16)に、対応する第2増幅電圧V3mc,V3za,V3ra,V3zb,V3rb,V3zcとして基準電圧Vra,Vrb,Vrzと共に代入することにより、各オフセット電圧Vos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けない状態(影響を排除した状態)で、測定レンジRcのときの測定電圧Vin(つまり、測定電圧Vinの電圧値Vm)を算出できることを示している。
記憶部4は、例えば、RAMなどの半導体メモリやハードディスク装置で構成されて、上記した各測定レンジRa〜Rcに対応した測定電圧Vinについての各式(4),(8),(16)、および各基準電圧Vra,Vrb,Vrzの既知の電圧値Vra,Vrb,Vrz(対応する電圧と同じ符号を付すものとする)が記憶されている。なお、本例では、電圧値Vrzは、ゼロ点の変動(オフセット電圧の変動)の補正のための電圧であることから、基準電位Gと同電位の電圧(ゼロボルト)に規定される好ましい構成となっているが、ゼロボルト以外の電圧であってもよい。また、記憶部4には、各測定レンジRで使用される補正値Rc(具体的には、上記したような、測定レンジRa,Rcで使用される補正値Dcza,Dcra、測定レンジRb,Rcで使用される補正値Dczb,Dcrb、測定レンジRcで使用される補正値Dczc)が更新記憶される。また、記憶部4には、測定値Dmおよび電圧値Vmが記憶される。
出力部5は、一例として液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されて、処理部3で測定された測定電圧Vinの電圧値Vmを画面上に表示させる。なお、出力部5については、表示装置とする構成に代えて、外部装置とデータ通信するインターフェース回路やリムーバブルメディアを装着し得るインターフェース回路とする構成として、この電圧値Vmを外部装置に送信したり、リムーバブルメディアに記憶させたりすることもできる。
次に、測定装置1の動作について図2を参照して説明する。
処理部3は、上記したように、A/D変換部15のサンプリング周期(周期T2)に同期した周期T1で測定処理Pmを実行して、測定部2に対して測定電圧Vinの瞬時値を示す電圧データD1を測定値Dmとして出力させると共に、既に選択した第1測定レンジRで使用される補正値Dcとこの第1測定レンジRで使用される測定電圧Vin(電圧値Vm)を算出するための式(上記の式(4),(8),(16)のいずれか)とを読み出して、電圧値Vmを算出して記憶部4に記憶させる。
この際に、現在の第1測定レンジRで使用される補正値Dcについては、処理部3が測定処理Pmを実行する周期T1に対して周期T2の期間分の時間だけずれたタイミングでメイン補正値更新処理Pcを周期T1で実行するため、最新の状態に定期的に更新されている。このため、処理部3は、測定レンジRの切り替え直後に実行される測定処理Pmにおいて電圧値Vmを算出する場合を除き、この後の測定処理Pmでは、測定値Dmとこの最新の補正値Dcとに基づいて、測定環境の変化の影響を極めて受け難い状態で、電圧値Vmを正確に算出することが可能となっている。
また、処理部3は、測定処理Pmを実行する周期T2の期間内において、この算出した電圧値Vmを出力部5に出力して表示させると共に、現在の第1測定レンジRの電圧範囲と比較して、必要なときにはレンジ切替処理Prを実行して、第1測定レンジRとして選択している現在の測定レンジR以外の他の測定レンジRを新たな第1測定レンジRとして選択する(測定部2に対する測定レンジRの切替制御を実行する)。
また、処理部3は、上記したように、第1測定レンジRでのメイン補正値更新処理Pcおよび測定処理Pmの実行の合間に、メイン補正値更新処理Pcに代えてサブ補正値更新処理Pc(図2中において破線の枠で囲まれた状態で示されている処理)を実行する。このサブ補正値更新処理Pcでは、処理部3は、測定部2に対して複数種類の測定レンジRのうちの第1測定レンジR以外の第2測定レンジRで補正値Dcを出力させて(つまり、測定部2に対して第1測定レンジRを一時的に第2測定レンジRに切り替えさせると共にこの第2測定レンジRに対応した基準電圧Vrに一時的に切り替えさせることで、第2測定レンジRでの補正値Dcを出力させて)、この新たな補正値Dcで、記憶部4に記憶されているこの第2測定レンジRで使用される補正値Dcを更新する。これにより、第1測定レンジRで測定処理Pmを実行している期間において、この第1測定レンジRで使用される補正値Dcだけでなく、第1測定レンジR以外の第2測定レンジRで使用される補正値Dcについても更新される。
なお、第1測定レンジRとして測定レンジRcが選択されているときには、上記したように、他の測定レンジRaが第1測定レンジとして選択されたときに使用される補正値Dcza,Dcraおよび他の測定レンジRbが第1測定レンジとして選択されたときに使用される補正値Dczb,Dcrbについても使用される。このため、図2の測定レンジRcが第1測定レンジRとして選択されているにおける補正値Dcza,Dcra,Dczb,Dcrbを算出する処理については、破線の枠で囲むことでサブ補正値更新処理Pcとして示しているが、メイン補正値更新処理Pcでもある。
具体的に、図2に示す測定レンジRcを測定処理Pmのための第1測定レンジRとした期間(図2中の最初の期間)では、処理部3は、同図中の最初の測定処理Pm(斜線を付した測定処理Pm)を実行する周期T2の期間では、この測定処理Pmよりも前に実行された各補正値更新処理Pc(メイン補正値更新処理Pcである補正値更新処理Pczc、およびサブ補正値更新処理Pcであると共にメイン補正値更新処理Pcでもある補正値更新処理Pcza,Pcra,Pczb,Pcrb)において記憶部4に更新記憶された最新の補正値Dcとしての補正値Dczc,Dcza,Dcra,Dczb,Dcrbと、この測定処理Pmにおいて測定部2から取得した測定値Dmと、記憶部4に記憶されている各基準電圧Vra,Vrb,Vrzの電圧値Vra,Vrb,Vrzおよび測定電圧Vin(電圧値Vm)の算出式(16)とに基づいて、電圧値Vmを算出して記憶部4に記憶させる。また、処理部3は、この測定処理Pmを実行する周期T2の期間において、算出(測定)した電圧値Vmを出力部5に出力して表示させる。以後、処理部3は、この測定レンジRcを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間において、周期T1でこの測定処理Pmを繰り返し実行する。
また、処理部3は、上記の測定処理Pmを実行する周期T2の期間の間に位置する周期T2の期間(周期T1で到来する周期T2の期間)において、メイン補正値更新処理Pcおよびサブ補正値更新処理Pcのいずれかを実行して、記憶部4に記憶されているすべての測定レンジRa〜Rcで使用する補正値Dcを更新記憶する。この図2に示す例では、処理部3は、上記した最初の測定処理Pm(斜線を付した測定処理Pm)の実行後において、補正値更新処理Pcrb(補正値Dcrbを更新する処理)、補正値更新処理Pczc(補正値Dczcを更新する処理)、補正値更新処理Pcza(補正値Dczaを更新する処理)、補正値更新処理Pcra(補正値Dcraを更新する処理)、補正値更新処理Pczb(補正値Dczbを更新する処理)、補正値更新処理Pcrb(補正値Dcrbを更新する処理)、補正値更新処理Pczc、・・・というように、各補正値更新処理Pczc,Pcza,Pcra,Pczb,Pcrbを順次繰り返し実行して(つまり、この例では、各補正値更新処理Pczc,Pcza,Pcra,Pczb,Pcrbを同じ頻度で繰り返し実行して)、測定レンジRcで使用するすべての補正値Dc(すべての測定レンジRa〜Rcで使用する補正値Dcでもある)を更新記憶する。
このようにして、測定処理Pmと補正値更新処理Pcとを繰り返し実行している状態において、処理部3が、この測定レンジRcを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間における斜線を付した2つ目の測定処理Pmを実行する周期T2の期間内において、算出した電圧値Vmと現在の第1測定レンジRの電圧範囲との比較の結果、第1測定レンジRとして選択している現在の測定レンジRcを他の測定レンジRbに切り替える必要が生じたと判断したときには、レンジ切替処理Prを実行して新たな測定レンジRbに切り替える。これにより、この測定レンジRbを新たに測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間が開始する。
この測定レンジRbを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間でも、処理部3は、この期間の最初の周期T2の期間においてメイン補正値更新処理Pcとしての補正値更新処理Pczb(補正値Dczbを更新する処理)を実行し、次の周期T2の期間において実行する測定処理Pmでは、直前に実行されたメイン補正値更新処理Pc(補正値更新処理Pczb)において記憶部4に更新記憶された最新の補正値Dcとしての補正値Dczbと、直前の測定レンジRcを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間において実行された補正値更新処理Pcrb(直近の補正値更新処理Pcrb)において記憶部4に更新記憶された補正値Dcとしての補正値Dcrbと、この測定処理Pmにおいて測定部2から取得した測定値Dmと、記憶部4に記憶されている測定レンジRbに対応する基準電圧Vrbの電圧値Vrbおよび測定電圧Vin(電圧値Vm)の算出式(8)とに基づいて、電圧値Vmを算出して記憶部4に記憶させる。また、処理部3は、この測定処理Pmを実行する周期T2の期間において、算出(測定)した電圧値Vmを出力部5に出力して表示させる。
以後、処理部3は、この測定レンジRbを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間において、測定処理Pmの実行期間内に、算出した電圧値Vmと現在の第1測定レンジRの電圧範囲とを比較して、第1測定レンジRとして選択している現在の測定レンジRbを他の測定レンジRに切り替える必要が生じているか否かを判断しつつ、測定処理Pmと交互に補正値更新処理Pc(メイン補正値更新処理Pcおよびサブ補正値更新処理Pcのいずれか)を実行して、記憶部4に記憶されているすべての測定レンジRa〜Rcで使用する補正値Dcを更新記憶する。この例では、メイン補正値更新処理Pcrb,サブ補正値更新処理Pcza,メイン補正値更新処理Pczb,メイン補正値更新処理Pcrb,サブ補正値更新処理Pcra,メイン補正値更新処理Pczb,メイン補正値更新処理Pcrb,サブ補正値更新処理Pczc,・・・というように、第1測定レンジRとして選択している現在の測定レンジRbにおいて使用する補正値Dczb,Dcrbの更新頻度が、他の測定レンジRa,Rcにおいて使用される補正値Dcza,Dcra,Dczcよりも高くなる状態(言い換えれば、他の測定レンジRa,Rcにおいて使用される補正値Dcza,Dcra,Dczcの更新頻度が低くなる状態)で各補正値更新処理Pcを実行する。
また、図2に示すように、その後の測定レンジRaを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間においても、測定処理Pmの実行期間内に、算出した電圧値Vmと現在の第1測定レンジRの電圧範囲とを比較して、第1測定レンジRとして選択している現在の測定レンジRaを他の測定レンジRに切り替える必要が生じているか否かを判断しつつ、測定処理Pmと交互に補正値更新処理Pc(メイン補正値更新処理Pcおよびサブ補正値更新処理Pcのいずれか)を実行して、記憶部4に記憶されているすべての測定レンジRa〜Rcで使用する補正値Dcを更新記憶する。この例では、メイン補正値更新処理Pcza,メイン補正値更新処理Pcra,サブ補正値更新処理Pczb,メイン補正値更新処理Pcza,メイン補正値更新処理Pcra,サブ補正値更新処理Pcrb,メイン補正値更新処理Pcza,メイン補正値更新処理Pcra,サブ補正値更新処理Pczc,・・・というように、第1測定レンジRとして選択している現在の測定レンジRaにおいて使用する補正値Dcza,Dcraの更新頻度が、他の測定レンジRb,Rcにおいて使用される補正値Dczb,Dcrb,Dczcよりも高くなる状態(言い換えれば、他の測定レンジRb,Rcにおいて使用される補正値Dczb,Dcrb,Dczcの更新頻度が低くなる状態)で各補正値更新処理Pcを実行する。
このようにして、処理部3は、必要に応じてレンジ切替処理Prを実行することで測定処理Pmのための第1測定レンジRを測定レンジRa〜Rcのうちのいずれかに切り替えつつ、測定レンジRa〜Rcのうちのいずれが測定処理Pmのための第1測定レンジRとなる期間においても、測定処理Pmと共に、メイン補正値更新処理Pcおよびサブ補正値更新処理Pcを実行して、記憶部4に記憶されているすべての測定レンジRa〜Rcで使用する補正値Dcを更新記憶する。
このため、この測定装置1では、測定処理Pmのための第1測定レンジRを新たな測定レンジRに切り替えた直後に実行される測定処理Pmにおいても、処理部3は、測定値Dmの補正のための補正値Dcとして、最新ではないことがあるものの古くとも直前の測定レンジRを測定処理Pmのための第1測定レンジRとしていた期間において更新されていた補正値Dcを使用することが可能となっている。これにより、処理部3は、直前の測定レンジRを測定処理Pmのための第1測定レンジRとしていた期間において他の測定レンジRで使用される補正値Dcについて全く更新しない構成、つまり、測定処理Pmのための第1測定レンジRとして選択されている測定レンジRにおいてはこの測定レンジRで使用される補正値Dcだけしか更新しない構成と比較して、測定レンジRの切り替え直後に実行される測定処理Pmにおいて、より新しい補正値Dcを使用することができる結果、測定環境の変化の影響をより受け難い状態で、より正確な電圧値Vmを算出することが可能となっている。なお、この電圧値Vmの算出に際しては、区間平均(区間単純平均)を実行して電圧値Vmを算出することもできる。
このように、この測定装置1では、測定部2における3つの測定レンジRa,Rb,Rcのゲインをα(0<α<1),1,1/αとし、かつすべての測定レンジRa〜Rcに適合する基準電圧Vrz(第1基準電圧)と、測定レンジRaに適合する基準電圧Vra(第2基準電圧)と、測定レンジRbに適合する基準電圧Vrb(第3基準電圧)とを備えた構成としたことにより、入力される測定電圧Vinの電圧範囲が最も小さい測定レンジRcに適応する基準電圧(高い電圧精度で出力させるためにはコスト上昇を伴う基準電圧)を備えることなく、処理部3は、測定レンジRaを第1測定レンジとして選択したときには、この測定レンジRaにおいて更新される測定レンジRa用の補正値Dcza,Dcraと、既知の基準電圧Vra,Vrzとで、測定処理Pmにおいて測定部2から取得した測定値Dmを補正して(具体的には、記憶部4に記憶されている式(4)を使用して)、各オフセットVos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けることなく測定電圧Vinの電圧値Vmを測定する。また、処理部3は、測定レンジRbを第1測定レンジとして選択したときにも、この測定レンジRbにおいて更新される測定レンジRb用の補正値Dczb,Dcrbと、既知の基準電圧Vrb,Vrzとで、測定処理Pmにおいて測定部2から取得した測定値Dmを補正して(具体的には、記憶部4に記憶されている式(8)を使用して)、各オフセットVos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けることなく測定電圧Vinの電圧値Vmを測定する。また、処理部3は、測定レンジRcを第1測定レンジとして選択したときにも、この測定レンジRcにおいて更新される各測定レンジRa〜Rc用の各補正値Dcza,Dcra,Dczb,Dcrb,Dczcと、既知の基準電圧Vra,Vrb,Vrzとで、測定処理Pmにおいて測定部2から取得した測定値Dmを補正して(具体的には、記憶部4に記憶されている式(16)を使用して)、各オフセットVos1,Vos2および各ゲインG1,G2の影響を受けることなく測定電圧Vinの電圧値Vmを測定する。
したがって、この測定装置1によれば、ゲイン用の補正値Dcを取得するための基準電圧Vrの種類(本例では、基準電圧Vra,Vrbの2つ)を測定レンジRの数(本例では測定レンジRa〜Rcの3つ)よりも少なくしつつ、すべての測定レンジRa〜Rcにおいて測定環境の変化の影響を受け難い状態で最終的な測定値Vmを正確に測定することができる。
なお、この測定装置1では、上記したように、処理部3が、測定レンジRaや測定レンジRbを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間(測定レンジRcを測定処理Pmのための第1測定レンジRとする期間以外の期間)において、メイン補正値更新処理Pcおよび測定処理Pmの実行の合間に、測定部2に対して現在の第1測定レンジとしている測定レンジR以外の第2測定レンジで補正値Dcを出力させると共にこの補正値Dcで記憶部4に記憶されているこの第2測定レンジの補正値Dcを更新するサブ補正値更新処理Pcを実行するという好ましい構成を採用して、いずれの測定レンジRが第1測定レンジとして選択された場合であっても、測定レンジRの切り替え直後に実行される測定処理Pmにおいて、より新しい補正値Dcを常に使用することができ、測定環境の変化の影響をより受け難い状態で、より正確な電圧値Vmを算出することができるようにしているが、この構成に限定されない。
例えば、第1測定レンジとして選択されている測定レンジRを除くすべての測定レンジRを第2測定レンジとして測定部2に対して補正値Dcを出力させることで、第1測定レンジとして選択されている測定レンジRを除くすべての測定レンジRで使用される補正値Dcを更新する上記の好ましい構成に代えて、第1測定レンジとして選択されている測定レンジRの両隣の測定レンジR(測定レンジRbが現在選択されている測定レンジのときには測定レンジRa,Rc、測定レンジRaが現在選択されている測定レンジのときには本例では測定レンジRbしかないことからこの測定レンジRb、測定レンジRcが現在選択されている測定レンジのときにも本例では測定レンジRbしかないことからこの測定レンジRb)だけを第2測定レンジとして測定部2に対して補正値Dcを出力させることで、この両隣の測定レンジRで使用される補正値Dcだけを更新する構成を採用することもできる。この構成においても、第1測定レンジとして選択されている測定レンジRの次に第1測定レンジとして選択される可能性の高い両隣の測定レンジRで使用される補正値Dcを更新することができる結果、第1測定レンジとして選択されている測定レンジRを新たな測定レンジRに切り替えた直後に実行される測定処理Pmにおいて、より新しい補正値Dcを使用できる可能性を高めることができる結果、測定環境の変化の影響をより受け難い状態で、より正確な電圧値Vmを算出し得る可能性を高めることができる。
また、測定レンジRaや測定レンジRbを測定処理Pmのための第1測定レンジとする期間において、サブ補正値更新処理Pcを実行せずに、測定処理Pmと共にメイン補正値更新処理Pcだけを実行して、現在第1測定レンジとしている測定レンジRで使用される補正値Dcだけを更新する構成とすることもできる。
また、測定レンジRの数をゲインがα,1,1/αの3つとした例について説明したが、ゲインがそれぞれβ(β<αで、かつ0<β<1),α,1,1/α,1/βとなる測定レンジRの数が5つの構成や、ゲインがそれぞれγ(γ<βで、かつ0<γ<1),β,α,1,1/α,1/β,1/γとなる測定レンジRの数が7つの構成などのように、より多くの測定レンジRにおいても、ゲインβ,1,1/βの組や、ゲインγ,1,1/γの組に対して、上記したゲインα,1,1/αの組の場合と同様の基準電圧Vr(ゲイン補正用の基準電圧Vra,Vrbであって、測定レンジRの数よりも1つ少ない数の基準電圧)を設けると共に上記した各式(4),(8),(16)と同様のVin(つまりVm)を算出するための式を記憶部4に記憶させることで、ゲイン用の補正値Dcを取得するための基準電圧Vrの種類を測定レンジRの数よりも少なくしつつ(例えば、上記した測定レンジRの数が5つのときには、基準電圧Vrの種類は2つ少ない3つとし、測定レンジRの数が7つのときには、基準電圧Vrの種類は3つ少ない4つとしつつ)、測定環境の変化の影響を受け難い状態で最終的な測定値Vmを正確に測定可能とすることができる。