(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による燃料供給装置が搭載された鞍乗型の燃料電池車両を示している。図2は、本発明の第1の実施形態による燃料供給装置の構成を示している。図1において、燃料電池車両1は例えば自動二輪車である。燃料電池車両1は、水素と酸素との反応により発電する燃料電池2と、燃料電池2から得られる電力により駆動するモータ3と、モータ3の駆動により回転する駆動輪としての後輪4とを備えている。
また、燃料電池車両1は、燃料電池2へ燃料としての水素を供給する燃料供給装置5を備えている。図2に示すように、燃料供給装置5は燃料タンク11および燃料供給経路12を備えている。燃料タンク11は、気体の水素を圧縮した状態で蓄えることができる高圧タンクである。燃料供給経路12は、燃料タンク11と燃料電池2との間を接続する経路であり、配管等により形成されている。
また、燃料供給経路12には、過流防止弁13、燃料供給弁14および減圧弁15が設けられている。過流防止弁13は、燃料供給経路12において上流側、すなわち燃料タンク11に近い側に配置されている。過流防止弁13は、例えば燃料供給経路12を形成する配管の損傷や減圧弁15の故障等により、燃料タンク11から流出する燃料の流量が過大となり、所定の流出量上限値を超えたときに、燃料供給経路12を遮断する弁である。燃料供給弁14は、燃料供給経路12において過流防止弁13の下流側に配置されている。燃料供給弁14は、燃料供給経路12を介する燃料の燃料電池2への供給を制御する弁であり、燃料タンク11から燃料電池2への燃料の供給、停止を切り換える弁である。減圧弁15は、燃料供給経路12において燃料供給弁14の下流側に配置されている。減圧弁15は、燃料電池2へ流れる燃料の圧力を所定の圧力に保持する弁である。
図1に示すように、燃料タンク11は、燃料電池車両1の前後方向中間部の下部に配置され、燃料電池車両1の車体フレームに取り付けられている。また、過流防止弁13、燃料供給弁14および減圧弁15は、燃料タンク11の後ろ側に設けられたバルブユニット7に組み込まれている。
また、燃料供給装置5は、図2に示すように、充填器具接続部としてのノズル接続部16および燃料充填経路17を備えている。ノズル接続部16は、燃料補給施設に設けられた燃料充填用のノズル(燃料充填器具)を接続する部分であり、燃料充填経路17の入口となる充填口18を有している。燃料充填経路17は、ノズル接続部16と燃料タンク11との間を接続する経路であり、配管等により形成されている。
また、燃料充填経路17には、上流側逆止弁19、充填遮断弁20および下流側逆止弁21が設けられている。上流側逆止弁19は、燃料充填経路17において上流側、すなわちノズル接続部16に近い側に配置されている。上流側逆止弁19は、燃料が燃料充填経路17を燃料タンク11からノズル接続部16に向けて逆流するのを阻止する弁である。下流側逆止弁21は、燃料充填経路17の下流側に配置され、燃料が燃料タンク11から燃料充填経路17へ逆方向に流れるのを阻止する弁である。
充填遮断弁20は、燃料充填経路17において上流側逆止弁19と下流側逆止弁21との間に設けられている。充填遮断弁20は、燃料充填時に燃料の燃料タンク11への流入量が過大となることを阻止する弁である。また、充填遮断弁20として、ノーマルクローズタイプの直動式の電磁弁が用いられている。充填遮断弁20は、後述するコントロールユニット25により制御される。具体的には、充填遮断弁20は、コントロールユニット25から充填遮断弁20に電気信号が出力されている間に開弁し、燃料充填経路17を接続する。また、充填遮断弁20は、コントロールユニット25から充填遮断弁20へ電気信号が出力されていない間には閉弁し、燃料充填経路17を遮断する。
また、燃料充填経路17には、充填遮断弁20を迂回して充填遮断弁20の上流側と下流側とを接続するバイパス経路が形成され、このバイパス経路には手動の補助弁22が設けられている。この補助弁22は、例えば燃料電池車両1の電装系の故障や修理時等において、充填遮断弁20を電気制御により開弁することができないときに、充填遮断弁20の上流側と下流側とを手動で接続するための弁である。
また、燃料供給装置5は、燃料タンク11内の圧力を測定する圧力センサ23を備えている。圧力センサ23は、燃料タンク11内の燃料残量、燃料充填時における燃料タンク11への燃料充填量、および燃料充填時における燃料の燃料タンク11への流入量等の測定に用いられる。
図1に示すように、ノズル接続部16、充填口18および上流側逆止弁19は、燃料電池車両1においてハンドル8とシート9との間であって燃料タンク11の上側に配置されている。また、充填遮断弁20、下流側逆止弁21および圧力センサ23は、燃料タンク11の後ろ側に配置されたバルブユニット7に組み込まれている。また、燃料充填経路17を形成する配管の一部は、バルブユニット7から、燃料タンク11の左側を通過し、燃料タンク11の上側に配置された上流側逆止弁19へ伸長している。
また、燃料供給装置5はコントロールユニット25を備えている。コントロールユニット25は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ(記憶装置)等を備え、燃料電池車両1の走行制御、燃料電池2および二次電池10の制御、燃料供給装置5の制御、電装系の制御等、各種制御を行う。コントロールユニット25は燃料電池車両1において例えばシート9の下側、またはハンドル8の前側に設けられた計器類の近傍等に設けられている。
本実施形態において、コントロールユニット25は充填遮断弁20の開閉制御を行う。具体的には、コントロールユニット25は、燃料充填時に燃料の充填を行うために充填遮断弁20を開弁させ、燃料充填終了時に充填遮断弁20を閉弁させる制御を行う。また、コントロールユニット25は、燃料充填時に燃料の燃料タンク11への流入量が過大となることを阻止するために、燃料充填時に燃料の燃料タンク11への流入量が所定の流入量上限値を超えたときに充填遮断弁20を閉弁させる制御を行う。また、コントロールユニット25は、後述するように、燃料充填時でない間において充填遮断弁20を一時的に開弁させる制御を行う。
図3は、燃料供給装置5において充填遮断弁20の開閉動作、および充填遮断弁20の上流側および下流側の圧力を示している。すなわち、図3中の下部に示すグラフが充填遮断弁20の開閉動作を示し、図3中の上部に示すグラフ中の実線の特性線が燃料充填経路17における充填遮断弁20の上流側の圧力を示し、図3中の上部に示すグラフ中の二点鎖線の特性線が燃料充填経路17における充填遮断弁20の下流側の圧力を示している。
図3中の時点t1において、燃料補給施設に設けられた燃料充填用のノズルをノズル接続部16に接続し、充填遮断弁20を開弁させ、ノズルから燃料を噴射し、燃料の燃料タンク11への充填を開始する。これにより、燃料タンク11内の圧力が上昇し、これと等しく、燃料充填経路17の圧力(すなわち燃料充填経路17を形成する配管等の内部の圧力)が上昇する。
図3中の時点t2において、例えば燃料タンク11内の圧力が所定の満充填圧力値に達したとき、ノズルの燃料噴射を停止し、充填遮断弁20を閉弁させ、燃料充填を終了する。充填遮断弁20を閉弁することにより、燃料充填経路17が充填遮断弁20の上流側、すなわち上流側逆止弁19から充填遮断弁20までの領域と、充填遮断弁20の下流側、すなわち充填遮断弁20から燃料タンク11までの領域に分断される。燃料充填終了直後においては、燃料充填経路17において、充填遮断弁20の上流側の圧力と下流側の圧力とは互いに等しい。
続いて、図3中の時点t3から時点t4までの間、燃料電池車両1が走行を行ったとする。燃料充填終了後の時点t3から燃料電池車両1が走行を開始し、燃料電池2により発電が行われると、燃料タンク11に蓄えられた燃料が燃料電池2の発電のために消費されるので、燃料タンク11に蓄えられた燃料が徐々に減り、燃料タンク11内の圧力が徐々に低下する。これに伴い、燃料充填経路17において充填遮断弁20の下流側の圧力も徐々に低下する。一方、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側の圧力はほぼ変化せず、燃料充填終了直後の圧力が維持される。この結果、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が増加していく。
燃料供給装置5は、燃料充填時でない間、すなわち、燃料充填を行っていない間、例えば、図3において燃料の充填が終了した時点t2から、次の燃料充填が開始される時点t5の直前までの間、充填遮断弁20を一時的に開弁させる。具体的には、燃料供給装置5は、燃料充填時でない間、充填遮断弁20の閉弁状態が所定の閉弁設定時間Tc経過した後に充填遮断弁20を開弁させ、その後、充填遮断弁20の開弁状態が所定の開弁設定時間To経過した後に充填遮断弁20を閉弁させる。すなわち、燃料供給装置5は、充填遮断弁20を閉弁させてから充填遮断弁20が開弁することなく閉弁設定時間Tcを経過したとき充填遮断弁20を開弁させ、そして、充填遮断弁20を開弁させてから充填遮断弁20が閉弁することなく開弁設定時間Toを経過したとき充填遮断弁20を閉弁させる。そして、本実施形態における燃料供給装置5は、充填遮断弁20の閉弁状態が閉弁設定時間Tc経過した後に充填遮断弁20を開弁させ、その後、充填遮断弁20の開弁状態が開弁設定時間To経過した後に充填遮断弁20を閉弁させる動作を繰り返し行う。以上の動作は、燃料電池車両1の稼働スイッチ(パワースイッチ)がオンにされ、燃料電池車両1が稼働している間、継続する。
燃料充填時でない間に充填遮断弁20が開弁することにより、燃料充填経路17における充填遮断弁20の上流側の圧力が下流側の圧力と一致し、両者の圧力差がなくなる。図3を見るとわかる通り、充填遮断弁20が開弁する度に、充填遮断弁20の上流側の圧力が瞬時に下流側の圧力まで下がっている。このため、充填遮断弁として開口部の大きな弁を採用した場合でも、充填遮断弁を開弁させるために高価または大型な電磁弁を用いる必要が無くなり、充填遮断弁の消費電力を低減することができる。
閉弁設定時間Tcは、充填遮断弁20の消費電力が少なくなるように設定する。例えば、閉弁設定時間Tcがあまりに短い場合には、充填遮断弁20を開弁させる頻度が高まるため、消費電力が増加する。一方、閉弁設定時間Tcがあまりに長い場合には、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなり、充填遮断弁20の弁体を作動させるのに要する電力が増加する。このような点を考慮し、充填遮断弁20の消費電力が少なくなるように閉弁設定時間Tcを設定することが望ましい。例えば、閉弁設定時間Tcは3分ないし20分程度がよいが、これに限定されない。また、それぞれの閉弁設定時間Tcは等しく、一定の時間でよい。一方、開弁設定時間Toは、充填遮断弁20を開弁し、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側の燃料を充填遮断弁20の下流側に移動させ、充填遮断弁20の上流側と下流側との圧力差を0にすることができる時間であることが望ましい。それゆえ、開弁設定時間Toは極めて短い時間でよく、例えば0.5秒ないし1秒程度でよい。開弁設定時間Toが短い方が、充填遮断弁20の消費電力が少なくなる。
図4は、燃料供給装置5のコントロールユニット25による充填遮断弁20の開閉制御処理の具体的な流れを示している。図4において、ステップS3ないしS8が燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理であり、ステップS9ないしS11が燃料充填時でない間における充填遮断弁20の開閉制御処理である。
図4において、燃料電池車両1の稼働スイッチ(パワースイッチ)がオンにされ、燃料電池車両1が稼働を開始したとき、コントロールユニット25は初期化処理を行う(ステップS1)。具体的には、コントロールユニット25はタイマ機能を有し、初期化処理において、充填遮断弁20の閉弁状態の継続時間を計測するためのタイマの値aを0にする。なお、このとき、充填遮断弁20は閉弁している。続いて、コントロールユニット25は、タイマによる時間の計測を開始する(ステップS2)。
続いて、コントロールユニット25は、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断する(ステップS3)。例えば、燃料電池車両1は、燃料補給施設のノズルがノズル接続部16に接続されたことを検出する機能を有し、コントロールユニット25は、この検出結果に基づいて、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断する。なお、ノズル接続部16や充填口18を収納する収納部に、収納部の開口を塞ぎノズル接続部16や充填口18を覆い隠すリッドを設け、コントロールユニット25は、リッドの開閉状態の検出結果に基づいて、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断してもよい。
燃料の燃料タンク11への充填を開始する場合には(ステップS3:YES)、コントロールユニット25は充填遮断弁20を開弁させる(ステップS4)。その後、ノズルから燃料が噴射され、燃料が燃料充填経路17を介して燃料タンク11へ充填される。
続いて、コントロールユニット25は、ノズルから噴射され、燃料充填経路を通って燃料タンク11内へ流入する燃料の流入量が流入量上限値を超えたか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、コントロールユニット25は、圧力センサ23から得られる燃料タンク11内の圧力値を用いて演算を行い、燃料タンク11内の所定時間当たりの圧力変化に基づいて燃料の燃料タンク11内への流入量を算出し、この算出した流入量と流入量上限値とを比較することにより、燃料の燃料タンク11内への流入量が流入量上限値を超えたか否かを判断する。また、流入量上限値は、燃料の燃料タンク11への流入量が過大となることを阻止するための適切な値に設定されている。
燃料の燃料タンク11内への流入量が流入量上限値を超えた場合には(ステップS5:YES)、コントロールユニット25は充填遮断弁20を閉弁させ、燃料充填経路17を遮断する(ステップS7)。これにより、燃料の燃料タンク11内への流入量が過大となることが阻止させる。
一方、燃料の燃料タンク11内への流入量が流入量上限値を超えていない場合には(ステップS5:NO)、続いて、コントロールユニット25は、燃料の燃料タンク11への充填が終わったか否かを判断する(ステップS6)。燃料の充填が終わる場合としては、燃料タンク11内の圧力が満充填圧力値に達した場合、ノズルからの燃料の噴射が停止した場合等がある。
燃料の燃料タンク11への充填が終わっていない場合には(ステップS6:NO)、コントロールユニット25は、処理をステップS5に戻し、そして、燃料の燃料タンク11内への流入量が流入量上限値を超えない限り、燃料の燃料タンク11への充填が終わるまで、ステップS5およびS6の処理を繰り返す。
一方、燃料の燃料タンク11への充填が終わった場合には(ステップS6:YES)、ノズルからの燃料の噴射が停止した後、コントロールユニット25は充填遮断弁20を閉弁させ、燃料充填経路17を遮断する(ステップS7)。
また、コントロールユニット25は、上述した燃料の流入量超過または燃料の充填終了に基づいて充填遮断弁20を閉弁させた直後、タイマの値aを0にする(ステップS8)。この瞬間、タイマによる時間の計測が0から再開される。そして、コントロールユニット25は処理をステップS9へ移行させる。
一方、ステップS3において、コントロールユニット25が、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断した結果、燃料の燃料タンク11への充填を開始しない場合には(ステップS3:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS3からステップS9へ移行させる。
続いて、ステップS9において、コントロールユニット25は、充填遮断弁20の閉弁状態が閉弁設定時間Tc経過したか否かを判断する。具体的には、コントロールユニット25は、タイマの値aが、閉弁設定時間Tcを示す値を超えたか否かを判断する。
充填遮断弁20の閉弁状態が閉弁設定時間Tc経過していない場合には(ステップS9:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS3に戻す。そして、コントロールユニット25は、燃料の充填が行われることがない限り、閉弁設定時間Tcが経過するまで、充填遮断弁20の閉弁状態を維持する(ステップS3:NO、ステップS9:NO)。
一方、充填遮断弁20の閉弁状態が閉弁設定時間Tc経過した場合には(ステップS9:YES)、コントロールユニット25は充填遮断弁20を開弁させ、その時点から開弁設定時間To(例えば0.5秒ないし1秒程度の極めて短い時間)経過した後、充填遮断弁20を閉弁させる(ステップS10)。これにより、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
続いて、コントロールユニット25は、タイマの値aを0にする(ステップS11)。この瞬間、タイマによる時間の計測が0から再開される。そして、コントロールユニット25は処理をステップS3へ移行させる。
コントロールユニット25は、ステップS3ないしS11の処理を、例えば燃料電池車両1の稼働スイッチがオフにされるまで繰り返し実行する。この結果、燃料電池車両1の稼働スイッチがオンであり、かつ燃料充填時でない間は、閉弁設定時間Tc経過するごとに充填遮断弁20が開弁設定時間To開弁し、充填遮断弁20が開弁する度に、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態による燃料供給装置5によれば、燃料充填時でない間に充填遮断弁20を一時的に開弁することにより、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなることを防止することができる。これにより、燃料充填時に充填遮断弁20を開弁するとき、充填遮断弁20の弁体を動作させるのに要する力を小さくすることができ、それゆえ、充填遮断弁20を作動させるのに用いる電力を小さくすることができる。したがって、充填遮断弁20として安価で小型な直動式の電磁弁を採用することが可能になり、かつ充填遮断弁20の消費電力を低減することができる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態による燃料供給装置5における充填遮断弁20の開閉制御処理の具体的な流れを示している。上述した図1および図2に示す燃料電池車両1およびそれに搭載された燃料供給装置5において、図4に示す本発明の第1の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理に代え、図5に示す本発明の第2の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理を採用することができる。
図5に示す本発明の第2の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理において、コントロールユニット25は、燃料充填時でない間において、燃料電池2により発電された電力の消費量が所定の電力消費基準量を超えたときに、充填遮断弁20を一時的に開弁させる。すなわち、燃料充填時でない間においては、燃料タンク11に蓄えられた燃料が燃料電池2における発電のために消費され、そして、燃料電池2により発電された電力がモータ3等により消費される。一方、燃料タンク11に蓄えられた燃料の消費に伴い、燃料タンク11内の圧力が低下し、その結果、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が増加していく。すなわち、燃料充填時でない間においては、燃料電池2により発電された電力の消費量の増加に伴い、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が増加していく。本発明の第2の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御では、燃料充填時でない間において、燃料電池2により発電された電力の消費量が電力消費基準量を超えたときに、充填遮断弁20を一時的に開弁させる。これにより、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなることを防止することができる。
また、電力消費基準量は、例えば、満充填時において燃料タンク11に蓄えられた燃料の量の5%ないし25%程度の量の燃料を用いて燃料電池2が発電することができる電力量に設定されている。なお、電力消費基準量の設定値はこれに限定されない。
また、コントロールユニット25は、燃料電池2の電流積算値または電力積算値に基づいて燃料電池2により発電された電力の消費量を演算する機能を備えている。なお、燃料電池2の発電量の指標である電流積算値または電力積算値から燃料の消費量を推定して、制御に用いることもできる。
本発明の第2の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理の具体的な流れは次の通りである。すなわち、図5において、燃料電池車両1の稼働スイッチがオンにされ、燃料電池車両1が稼働を開始したとき、コントロールユニット25は初期化処理を行う(ステップS21)。初期化処理において、コントロールユニット25は、燃料電池2により発電された電力の現在の消費量を示す電力消費量現在値b(ステップS21の実行時点における電力消費量現在値b)を、電力消費量前回値cとしてコントロールユニット25のメモリに記憶する。
続いて、コントロールユニット25は、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断し、燃料の燃料タンク11への充填を開始する場合には(ステップS22:YES)、燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理を行う(ステップS23ないしステップS26)。本発明の第2の実施形態において、燃料の充填を開始するか否かの判断方法(ステップS22)、および燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理(ステップS23ないしS26)は、本発明の第1の実施形態における、燃料の充填を開始するか否かの判断方法(図4中のステップS3)、および燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理(ステップS4ないしS7)と同じである。
また、コントロールユニット25は、ステップS26で充填遮断弁20を閉弁させた直後、電力消費量前回値cを更新する(ステップS27)。具体的には、コントロールユニット25は、ステップS27の実行時点における電力消費量現在値bを電力消費量前回値cとしてコントロールユニット25のメモリに記憶(上書き)する。その後、コントロールユニット25は処理をステップS28へ移行させる。
一方、ステップS22において、コントロールユニット25が、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断した結果、燃料の燃料タンク11への充填を開始しない場合には(ステップS22:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS22からステップS28へ移行させる。
続いて、ステップS28において、コントロールユニット25は、ステップS28の実行時点における電力消費量現在値bから、ステップS28の実行時点においてメモリに記憶されている電力消費量前回値cを引算し、それにより得られた値が電力消費基準量Dを超えたか否かを判断する。
電力消費量現在値bから電力消費量前回値cを引算して得られた値が電力消費基準量Dを超えていない場合には(ステップS28:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS22に戻す。そして、コントロールユニット25は、燃料の充填が行われず、かつ、電力消費量現在値bから電力消費量前回値cを引算して得られた値が電力消費基準量Dを超えない限り、充填遮断弁20の閉弁状態を維持する(ステップS22:NO、ステップS28:NO)。
一方、電力消費量現在値bから電力消費量前回値cを引算して得られた値が電力消費基準量Dを超えた場合には(ステップS28:YES)、コントロールユニット25は充填遮断弁20を一時的に開弁させる(ステップS29)。具体的には、コントロールユニット25は、充填遮断弁20を開弁させ、その時点から開弁設定時間(例えば0.5秒ないし1秒程度の極めて短い時間)経過した後、充填遮断弁20を閉弁させる。これにより、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
続いて、コントロールユニット25は電力消費量前回値cを更新する(ステップS30)。具体的には、コントロールユニット25は、ステップS30の実行時点における電力消費量現在値bを電力消費量前回値cとしてコントロールユニット25のメモリに記憶(上書き)する。そして、コントロールユニット25は処理をステップS22へ移行させる。
コントロールユニット25は、ステップS22ないしS30の処理を、例えば燃料電池車両1の稼働スイッチがオフにされるまで繰り返し実行する。この結果、燃料電池車両1の稼働スイッチがオンであり、かつ燃料充填時でない間は、燃料電池2により発電された電力の消費量が電力消費基準量Dを超える度に、充填遮断弁20が一時的に開弁し、充填遮断弁20が開弁する度に、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
このような本発明の第2の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理によっても、本発明の第1の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理と同様に、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなることを防止することができる。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態による燃料供給装置5における充填遮断弁20の開閉制御処理の具体的な流れを示している。上述した図1および図2に示す燃料電池車両1およびそれに搭載された燃料供給装置5において、図4に示す本発明の第1の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理に代え、図6に示す本発明の第3の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理を採用することができる。
図6に示す本発明の第3の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理において、コントロールユニット25は、燃料充填時でない間において、燃料タンク11に蓄えられた燃料の消費量が所定の燃料消費基準量を超えたときに、充填遮断弁20を一時的に開弁させる。すなわち、燃料充填時でない間においては、燃料タンク11に蓄えられた燃料が燃料電池2における発電のために消費され、これに伴い、燃料タンク11内の圧力が低下し、この結果、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が増加していく。本発明の第3の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理では、燃料充填時でない間において、燃料タンク11に蓄えられた燃料の消費量が燃料消費基準量を超えたときに、充填遮断弁20を一時的に開弁させる。これにより、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなることを防止することができる。
また、燃料消費基準量は、例えば、満充填時において燃料タンク11内に蓄えられた燃料の量の5%ないし25%程度の量に設定されている。なお、燃料消費基準量の設定値はこれに限定されない。
また、コントロールユニット25は、燃料タンク11に設けられた圧力センサ23から得られる測定値、すなわち、燃料タンク11内の圧力値に基づいて、燃料タンク11に蓄えられた燃料の消費量を算出する機能を備えている。
本発明の第3の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理の具体的な流れは次の通りである。すなわち、図6において、燃料電池車両1の稼働スイッチがオンにされ、燃料電池車両1が稼働を開始したとき、コントロールユニット25は初期化処理を行う(ステップS41)。初期化処理において、コントロールユニット25は、燃料タンク11に蓄えられた燃料の現在の消費量を示す燃料消費量現在値e(ステップS41の実行時点における燃料消費量現在値e)を、燃料消費量前回値fとしてコントロールユニット25のメモリに記憶する。
続いて、コントロールユニット25は、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断し、燃料の燃料タンク11への充填を開始する場合には(ステップS42:YES)、燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理を行う(ステップS43ないしステップS46)。本発明の第3の実施形態において、燃料の充填を開始するか否かの判断方法(ステップS42)、および燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理(ステップS43ないしS46)は、本発明の第1の実施形態における、燃料の充填を開始するか否かの判断方法(図4中のステップS3)、および燃料充填時における充填遮断弁20の開閉制御処理(ステップS4ないしS7)と同じである。
また、コントロールユニット25は、ステップS46で充填遮断弁20を閉弁させた直後、燃料消費量前回値fを更新する(ステップS47)。具体的には、コントロールユニット25は、ステップS47の実行時点における燃料消費量現在値eを燃料消費量前回値fとしてコントロールユニット25のメモリに記憶(上書き)する。その後、コントロールユニット25は処理をステップS48へ移行させる。
一方、ステップS42において、コントロールユニット25が、燃料の燃料タンク11への充填を開始するか否かを判断した結果、燃料の燃料タンク11への充填を開始しない場合には(ステップS42:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS42からステップS48へ移行させる。
続いて、ステップS48において、コントロールユニット25は、ステップS48の実行時点における燃料消費量現在値eから、ステップS48の実行時点においてメモリに記憶されている燃料消費量前回値fを引算し、それにより得られた値が燃料消費基準量Gを超えたか否かを判断する。
燃料消費量現在値eから燃料消費量前回値fを引算して得られた値が燃料消費基準量Gを超えていない場合には(ステップS48:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS42に戻す。そして、コントロールユニット25は、燃料の充填が行われず、かつ、燃料消費量現在値eから燃料消費量前回値fを引算して得られた値が燃料消費基準量Gを超えない限り、充填遮断弁20の閉弁状態を維持する(ステップS42:NO、ステップS48:NO)。
一方、燃料消費量現在値eから燃料消費量前回値fを引算して得られた値が燃料消費基準量Gを超えた場合には(ステップS48:YES)、コントロールユニット25は充填遮断弁20を一時的に開弁させる(ステップS49)。具体的には、コントロールユニット25は、充填遮断弁20を開弁させ、その時点から開弁設定時間(例えば0.5秒ないし1秒程度の極めて短い時間)経過した後、充填遮断弁20を閉弁させる。これにより、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
続いて、コントロールユニット25は燃料消費量前回値fを更新する(ステップS50)。具体的には、コントロールユニット25は、ステップS50の実行時点における燃料消費量現在値eを燃料消費量前回値fとしてコントロールユニット25のメモリに記憶(上書き)する。そして、コントロールユニット25は処理をステップS42へ移行させる。
コントロールユニット25は、ステップS42ないしS50の処理を、例えば燃料電池車両1の稼働スイッチがオフにされるまで繰り返し実行する。この結果、燃料電池車両1の稼働スイッチがオンであり、かつ燃料充填時でない間は、燃料タンク11に蓄えられた燃料の消費量が燃料消費基準量Gを超える度に、充填遮断弁20が一時的に開弁し、充填遮断弁20が開弁する度に、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
このような本発明の第3の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理によっても、本発明の第1の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理と同様に、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなることを防止することができる。
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態による燃料供給装置5における充填遮断弁20の開閉制御処理の具体的な流れを示している。本発明の第4の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理では、燃料充填時でない間において、燃料電池車両1の稼働スイッチをオフにする操作がされ、これに応じ、燃料電池2が発電を停止し、燃料電池車両1が稼働を停止するときに、充填遮断弁20を一時的に開弁させる。
図7に示す本発明の第4の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理において、ステップS71ないしS81は、図4に示す本発明の第1の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理のステップS1ないしS11と同じである。
図7中のステップS82において、コントロールユニット25は、燃料電池車両1の稼働スイッチをオフにする操作がされたか否かを判断する。
燃料電池車両1の稼働スイッチをオフにする操作がされていないときには(ステップS82:NO)、コントロールユニット25は処理をステップS73に戻す。
一方、燃料電池車両1の稼働スイッチをオフにする操作がされたときには(ステップS82:YES)、コントロールユニット25は充填遮断弁20を一時的に開弁させる。具体的には、コントロールユニット25は、充填遮断弁20を開弁させ、その時点から開弁設定時間To(例えば0.5秒ないし1秒程度の極めて短い時間)経過した後、充填遮断弁20を閉弁させる(ステップS83)。これにより、燃料充填経路17において充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0になる。
このように、燃料電池車両1の稼働スイッチをオフにする操作がされ、これに応じ、燃料電池2が発電を停止し、燃料電池車両1が稼働を停止するときに、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差をなくすことにより、次回、燃料電池車両1を稼働するときに、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0の状態で、充填遮断弁20の開閉制御処理を再開することができる。これにより、充填遮断弁20の開閉制御処理を正常に行うことができ、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が大きくなることを確実に防止することができる。すなわち、図7に示す充填遮断弁20の開閉制御処理では、燃料電池車両1の稼働スイッチがオンにされて燃料電池車両1が稼働したときに、タイマの値aを0にして計時を開始するが(ステップS71およびS72)、この処理は、燃料電池車両1が稼働したときに、充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差が0であることを前提としている。したがって、前回の燃料電池車両1の稼働停止時に充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差を0にし、これにより、燃料電池車両1の稼働再開時に充填遮断弁20の上流側と下流側との間の圧力差を0にすることで、充填遮断弁20の開閉制御処理を正常に開始することができる。
なお、上述した本発明の第4の実施形態として、本発明の第1の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理に、燃料電池車両1が稼働を停止したとき充填遮断弁20を一時的に開弁させる制御処理を追加する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明の第2または第3の実施形態における充填遮断弁20の開閉制御処理に、燃料電池車両1が稼働を停止したとき充填遮断弁20を一時的に開弁させる制御処理を追加してもよい。
また、上述した本発明の第4の実施形態では、燃料電池車両1が稼働を停止したときに充填遮断弁20を一時的に開弁させる場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。燃料電池車両1の稼働中に燃料電池が発電を停止したときに充填遮断弁20を一時的に開弁させてもよい。例えば、燃料電池車両1の稼働中に、燃料電池2において加湿処理を行う場合には、燃料電池2が発電を停止し、燃料供給装置5による燃料の燃料電池2への供給が停止される。このように燃料電池車両1の稼働中に燃料電池2が停止したときに、充填遮断弁20を一時的に開弁させてもよい。
また、上述した各実施形態における燃料供給装置5において、燃料タンク11から燃料電池2への燃料の供給を制御する具体的な構成は一例にすぎず、他の種々の構成を採用することができる。また、燃料充填経路17に下流側逆止弁21を設けることは必須ではない。また、燃料電池車両1において、燃料タンク11、ノズル接続部16、上流側逆止弁19、または充填遮断弁20等を設ける位置は、一例にすぎない。
また、本発明の燃料供給装置5は、鞍乗型の燃料電池車両に限らず、燃料電池を利用した他の装置にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う燃料電池の燃料供給装置もまた本発明の技術思想に含まれる。