JP6554907B2 - 変速制御装置及び変速制御方法 - Google Patents

変速制御装置及び変速制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、変速制御装置及び変速制御方法に関する。
変速制御装置とは、変速機を搭載した車両等において、該変速機の変速比(変速段数、ギア比)の切り替えを制御する装置である。変速比は車両等における燃費に関連することから、変速比の適切な切替制御は、エネルギー消費削減の観点からも重要である一方、変速比を切り替えるタイミングは、周囲の交通環境に影響されるという側面を有している。
また、他方では、変速に関連する操作部位(クラッチペダル、フットレスト、アクセルペダル等)は、車両等の運転において運転者が接触している可能性が高いので、この変速に関連する操作部位を用いて運転者に対する所定の情報の報知等が行われる場合もある。
上記のような、変速機の制御と、変速に関連する操作部位を用いた報知に関連する従来技術として、特許文献1に開示された変速機の制御装置が知られている。特許文献1に開示された変速機の制御装置は、車両のアクセルペダルから運転者に与えられる力が変えられることにより運転者に警報が発せられるに際して、変速機を制御する変速機の制御装置であって、警報の発生に際してアクセルペダルから運転者に与えられる力が変えられたときには、運転者に与えられる力が変えられていないときに比べて、変速機が変速され難くなるように変速機を制御する変速機の制御装置である。特許文献1では、このような変速機の制御装置によれば、運転者が意図していない変速が行われることが抑制されるとしている。
一方、周囲の車両の走行状態を考慮した変速比の変更に関する従来技術として、特許文献2に開示された運転支援装置が知られている。特許文献2に開示された運転支援装置は、変速機を搭載した車両の運転支援装置において、変速比に応じた駆動輪の最大トルクと、走行状態に応じて駆動輪に要求される要求トルクとを演算する演算手段、車両の周囲の他車両の走行状況を検出する検出手段、演算手段で演算された最大トルク及び要求トルクと、検出手段で検出された走行状況とに基づき、変速比の変更の要否を判定する判定手段から構成されている。特許文献2では、このような運転支援装置によれば、走行環境に応じて変速比を変更すべきタイミングを相違させることができるとしている。
特開2006−112462号公報 特開2012−187965号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された変速機の制御装置、特許文献2に開示された運転支援装置のいずれにおいても、燃費については考慮されていない。変速による燃費の低減について考慮する場合には、変速に伴うエネルギー損失についても勘案した総合的なエネルギー消費の観点から考慮する必要があるが、いずれの文献にもそのような視点はない。
また、特許文献2では、走行環境を考慮しているが、自車両の周囲に存在する他車両の走行状態を考慮しているだけで、カーブの存在等の地図情報、走行している道路の信号機情報、リアルタイムで把握される道路の渋滞情報等の総合的な交通環境を考慮しているわけではない。すなわち、交通環境を考慮しつつ消費エネルギーの削減を図った変速機の変速制御という点で改善の余地があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、交通環境条件に応じてエネルギー消費の低減が可能な変速制御装置及び変速制御方法を実現することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の変速制御装置は、交通環境情報を取得する取得手段と、車両における消費エネルギーの、変速に伴う削減量を演算する演算手段と、変速に伴うエネルギー損失と前記削減量とを前記交通環境情報を考慮して比較することにより変速の適否の度合いを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて変速の実行若しくは非実行の処理、又は変速の適否の度合いの報知の処理の少なくとも1つを行う処理手段と、を備え、前記判定手段は、変速を実行する時間的な余裕がある場合に変速が適すると判定し、変速を実行する時間的な余裕がない場合に変速が適さないと判定するものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記判定手段は、前記削減量が前記エネルギー損失よりも大きい場合に変速が適すると判定し、前記削減量が前記エネルギー損失以下の場合に変速が適さないと判定するものである。
また、請求項に記載の発明は、請求項又は請求項に記載の発明において、前記処理手段は、前記判定手段により変速が適すると判定された場合には変速を実行するか、又は変速が推奨される度合いを報知し、前記判定手段により変速が適さないと判定された場合には変速を実行しないか、又は変速が推奨されない度合いを報知するものである。
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記処理手段は、前記変速が推奨される度合い、及び前記変速が推奨されない度合いの少なくとも一方を、前記車両のクラッチペダルの反力によって報知するものである。
また、請求項に記載の発明は、請求項又は請求項に記載の発明において、前記処理手段は、前記変速が推奨される度合いを前記車両のフットレストの反力によって報知するものである。
また、請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の発明において、前記交通環境情報が、信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、地図情報のうちの少なくとも1つであるものである。
一方、上記目的を達成するために、請求項に記載の変速制御方法は、取得手段により、交通環境情報を取得し、演算手段により、車両における消費エネルギーの、変速に伴う削減量を演算し、判定手段により、変速に伴うエネルギー損失と前記削減量とを前記交通環境情報を考慮して比較することにより変速の適否の度合いを判定し、処理手段により、前記判定手段の判定結果に応じて変速の実行若しくは非実行の処理、又は変速の適否の度合いの報知の処理の少なくとも1つを行い、前記判定手段は、変速を実行する時間的な余裕がある場合に変速が適すると判定し、変速を実行する時間的な余裕がない場合に変速が適さないと判定するものである。
本発明によれば、交通環境条件に応じてエネルギー消費の低減が可能な変速制御装置及び変速制御方法を実現することができる、という効果を奏する。
第1の実施の形態に係る変速制御装置を含む車両の構成の一例を示すブロック図である。 第1の実施の形態に係る変速制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。 第1の実施の形態に係る交通情報の各種形態を例示する図である。 第1の実施の形態に係る信号機情報による変速タイミングを説明するための図である。 第1の実施の形態に係る変速によるエンジンの動作点の変化を説明するための図である。 第3の実施の形態に係るクラッチペダル反力及びフットレスト反力を説明するための図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態では、本発明に係る変速制御装置を車両に適用した形態を例示して説明する。
図1は、本実施の形態に係る変速制御装置10を搭載した車両100のブロック図である。本実施の形態に係る車両100は、変速制御装置10、駆動源12、クラッチペダル16、フットレスト18、アクセルペダル20、受信部22、及び表示部24を含んで構成されている。
駆動源12は、車両100の駆動に関連する部位であり、本実施の形態に係る駆動源12は、エンジンのみならず、シャフト、タイヤ、変速機、クラッチ、ブレーキ等も含んだ部位をさしている。本実施の形態では、変速機として、自動変速機(Automatic Transmission:AT)と、手動変速機(Manual Transmission:MT)とを想定している。自動変速機とは、自動車の速度やエンジンの回転数等に応じて、変速比が自動的に切り替えられる変速機であり、手動変速機とは、運転者14が、自己の判断でクラッチペダル16、及び図示しないシフトレバーを操作することにより、変速比を切り替える変速機である。
変速制御装置10は、以下に詳細を説明する本発明に係る変速制御装置であり、駆動源12に含まれる上記変速機を制御する。後述するように、本実施の形態に係る変速制御装置10は、車両100に搭載された変速機が、自動変速機であるか手動変速機であるかによって、変速機の制御方法が異なる。変速制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。CPUは、変速制御装置10の全体を統括、制御し、ROMは、後述する変速制御処理プログラム、あるいは各種パラメータ等を予め記憶する記憶手段であり、RAMは、各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられる記憶手段である。
クラッチペダル16は、エンジンの力を車輪に伝えたり、切りはなしたりする動力伝達装置であるクラッチを、足で踏んで操作するためのペダルである。フットレスト18は、クラッチペダル16を操作していない場合に、足を載せておくための足置き台である。アクセルペダル20は、スロットルの開度を調節するペダルであり、エンジンの回転数を制御する。
表示部24は、一例としてLCD(Liquid Crystal Display)等を用いたディスプレイであり、本実施の形態では、後述する変速制御処理において、変速が実行されたこと等を報知する手段として用いられる部位である。なお、表示部24を、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等により構成し、ユーザがタッチパネルに触れることにより所望の情報や指示が入力されるようにしてもよい。本実施の形態に係る表示部24はそのように構成されている。
本実施の形態に係る変速制御装置10は、さらに受信部22を備え、該受信部22により各種交通環境情報が受信され、変速制御装置10に入力される。図1では、変速制御装置10に入力される交通環境情報の一例として、信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、及び地図情報を例示しており、本実施の形態に係る変速制御装置10では、これらの交通環境情報のうちの少なくとも1つを入手する。各種情報の入手形態としては、交通情報センター等の交通環境の管理センターから無線送信された情報を受信部22で受信して入手する形態、他車両との無線通信を通して入手する形態、自車両に備えられたカメラ等の情報収集手段から入手する形態等が含まれる。したがって、本実施の形態に係る受信部22には、無線受信部の他、情報収集手段との入出力インタフェースも含まれる。また、本実施の形態においては、無線通信の形態として、インターネット等によるネットワーク通信も含まれる。
信号機情報は、信号機の表示色(青、黄、赤)の遷移時刻等に関する情報であり、入手形態としては、無線送信器を備えた信号機から直接送信された情報を受信部22で受信して入手する形態や、交通環境の管理センター(以下、「管理センター」)から無線送信された信号機に関する情報を受信部22で受信して入手する形態等が含まれる。
周辺車両情報は、自車両に対する周辺車両の走行状態に関する情報であり、たとえば、自車両に備えられた自車両の周囲を撮像するカメラ、あるいは自車両に備えられたレーザレーダ(以下、「情報収集機器」)によって捕捉された周辺車両の走行状態に関する情報の形態で入手する。また、管理センターから無線送信された周辺車両に関する情報を受信部22で受信して入手してもよいし、周辺に位置する他車両からの直接の無線通信を受信部22で受信して入手してもよい。
渋滞情報は、自車両の近傍、あるいは目的地付近の道路の混雑状態に関する情報であり、たとえば、管理センターから無線送信された渋滞に関する情報を受信部22で受信して入手する。また、渋滞個所に位置する他車両からの直接の無線通信を受信部22で受信して入手してもよいし、情報収集機器によって自車両の近傍の渋滞に関する情報を捕捉して入手してもよい。
地図情報は、自車両が走行中の道路周辺の地理的情報、あるいは目的地までの道路周辺の地理的情報等、自車両の走行に際して関連する地理的情報であり、たとえば、管理センターから無線送信された地図情報を受信部22で受信して入手する。あるいは、自車両に予め備えられたカーナビ等から地図情報を入手してもよい。
入手した上記各交通環境情報は、図示しないRAM等の記憶手段に一時的に記憶させてもよい。また、記憶手段に記憶された各交通環境情報は、新しい情報を追加記憶させ、不要となった情報は削除し、リアルタイムで更新処理してもよい。
さらに、本実施の形態に係る変速制御装置10には、駆動源12から、以下の車両の駆動に関する情報が入力される。
変速機の変速段数:NGr・・・変速段数を判定するシフト位置センサからの出力情報である。
エンジン回転速度:N・・・クランク角センサから算出された値の情報である。
タイヤ回転速度:N・・・タイヤ回転速度センサの読取値、車両の速度から推定された値の情報である。
エンジンスロットル開度:TH・・・アクセルペダルのストロークの位置センサの読取値、タイヤ回転速度に基づいて算出された情報である。
つぎに、図2を参照して、本実施の形態に係る変速制御処理について説明する。図2は、本実施の形態に係る変速制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。図2に示す処理は、運転者14により、たとえば、表示部24を介して実行開始の指示がなされると、CPUがROM等の記憶手段から本変速制御処理プログラムを読み込み、実行する。
まず、ステップS100では、自車両に関する情報を収集する。自車両に関する情報とは、交通環境情報を考慮した上で変速の適否の度合いを判定する上で必要となる自車両のその時点での情報であり、地図情報上の自車両の位置、自車両の現在の駆動源の変速段数等が含まれる。収集した自車両に関する情報は、RAM等の記憶手段に一時的に記憶させてもよい。
つぎのステップS102では、交通環境情報、すなわち、上述した信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、地図情報を入手する。図3には、自車両60、自車両60の走行に影響する主として自車両が走行する道路R上の他車両62(図3では、煩雑化を避けるため、3台の他車両のみに符号62を付している)とともに、信号機情報40、周辺車両情報42、渋滞情報44、及び地図情報46(図3では、カーブの地理的位置を例示している)を示している。
本実施の形態における各交通環境情報の具体例は以下のようなものが挙げられるが、本実施の形態では、これらの情報の決定方法について、確定的に決定される情報(ほぼ確定的に決定される場合を含む)と確率的に決定される情報とに区分する。そして、各交通環境情報を全体として評価した場合に決定される交通環境条件を、確定的に決定される交通環境条件と、確率的に決定される交通環境条件とに分け、その各々の条件下で変速の適否について判定する。
信号機情報としては、表示色が切り替わる時間等の情報が挙げられる。この情報は、管理センターから入手することを想定しているので確定的に決定される。
周辺車両情報としては、周辺車両の進行方向、速度、加速度等の情報が挙げられる。道路Rの走行車線が複数であり、前方を走行する他車両が多い場合は確率的に決定されるが、走行車線が1つで前方を走行する車両が1台かつ分かれ道が存在しないような場合には、ほぼ確定的に決定される。
渋滞情報としては、渋滞区域に含まれる他車両の数、渋滞区域全体としての移動速度等で表した渋滞の程度に関する情報が挙げられる。上記周辺車両情報と同様の理由から、確率的に決定される場合と、ほぼ確定的に決定される場合がある。
地図情報としては、自車両が向かう先に存在する走行に影響する要素(たとえば、信号機、カーブ等)に関する情報が挙げられる。この情報は固定された静的情報なので確定的である。収集した上記各交通環境情報は、RAM等の記憶手段に一時的に記憶させてもよい。
再び図2を参照し、つぎのステップS104では、ステップS100で収集した自車両に関する情報、及びステップS102で収集した交通環境情報に基づいて、変速の適否の度合いを判定する。
つぎのステップS106では、変速を実行するか、又は、変速の適否の度合いについて運転者14に向け報知する。なお、ステップS104及びS106の具体的内容については後述する。
つぎのステップS108では、本変速制御処理による制御を継続するか否かについて判定し、当該判定が肯定判定となった場合にはステップS100に戻って本変速制御処理による制御を継続し、否定判定となった場合には、本変速制御処理プログラムを終了する。
なお、制御を継続するか否かの判定は、たとえば、運転者14により、表示部24等を介して終了の指示が入力されたか否かによって判定する。
[第1の実施の形態]
図4及び図5を参照して、本実施の形態に係る変速制御装置及び変速制御方法について説明する。本実施の形態は、交通環境情報により交通環境条件が確定的に決定される形態である。以下では、信号機が青から赤に切り替わるタイミングで信号機を通過する場合を例にとり、本実施の形態に係る変速の適否の度合いを判定する方法について説明する。
なお、以下の説明において、信号機が青から赤に切り替わる時間を、渋滞個所に到達するまでの時間で置き換えれば、渋滞に遭遇する場合の変速の適否の度合いの判定に適用することができる。また、カーブに到達するまでの時間で置き換えれば、カーブに進入する場合の変速の適否の度合いの判定に適用することができる。その際、渋滞個所までの到達時間、あるいはカーブまでの到達時間は、本実施の形態に係る変速制御を開始した時点での自車両の速度が維持されるものとして算出してもよい。また、これらの時間的な条件が複数存在する場合には、たとえば最も短い時間的な条件について、以下の説明を適用すればよい。
図4に示すように、自車両60が向かう先に存在する直近の信号機40の表示色が現在青であるとし、赤に切り替わるまでの時間(条件時間)をtとする。この条件時間tは、変速する場合にはこの間に実行する必要があるという意味で、変速操作のために与えられた時間的余裕とも考えられる。なお、この時間tは、先述したように管理センターから配信される情報、あるいはネットワーク通信を介する情報から入手されるので確定的である。
一方、自車両60と信号機40との間にある他車両62がどのような挙動をとるかを示す周辺車両情報42は、上述したように確定的に決定される場合と確率的に決定される場合とがあるが、本実施の形態では、まず確定的に決定される場合を考える。すなわち、本実施の形態では、上記信号機40に関する情報を含めた交通環境条件が確定的に決定される。そして、本実施の形態における変速の適否の度合いは、自車両60におけるエネルギー消費の低減が可能であるか、変速を快適に行うだけの時間的余裕があるか、に基づいて判定され、変速の実行、非実行、又は変速の推奨、非推奨という結果で示される。
まず、以下において、変速に伴いエネルギー消費の低減が可能となる条件を示す。変速前の変速段数をm速とし、変速後の変速段数をn速とし、m速のエンジンの動作点よりもn速のエンジンの動作点の方がエンジンの熱効率が高いものとする。本実施の形態ではm<n、すなわち、シフトアップを仮定しているが、むろんエンジンの駆動状態等を勘案して、シフトダウンに適用することも可能である。
以上の関係を、エンジン回転数−エンジントルク特性を示す図上にプロットしたものが図5である。図5では、等高線で示された熱効率特性上に、等パワー線と最適燃費線、及びm速の動作点、n速の動作点が示されている。図5に示すように、m速からn速に変速すると、等パワー線を移動しつつ、最適燃費線上にプロットされたn速の動作点に遷移する。このことによって、m速からn速への変速により、総エネルギー消費が削減される可能性がある。
ここで、m速からn速に変速する際に、当該変速動作自体で消費されるエネルギーをΔWとすると、変速により全体としてのエネルギー消費の低減が可能となるためには、変速によるエンジンの熱効率の向上で低減される消費エネルギーがΔWを越えるまではn速で走行可能であることが要件となる。つまり、変速後の所定の時間までは変速することで総エネルギー消費は増加し、該所定の時間以降は総エネルギー消費は低減する。
さらに、変速を開始する時間をtとし、m速における瞬間的な(単位時間当たりの)エネルギー消費をL、n速における瞬間的なエネルギー消費をLとすると、変速による総エネルギー消費が均衡する(0となる)時間t(均衡時間)は、以下に示す(式1)を満たしている。

また、変速による総エネルギー消費がLだけ低減される時間tは、以下に示す(式2)を満たしている。ここで、t<tである。


なお、(式1)及び(式2)は、変速機を搭載していれば、車両の主動力がエンジンの場合にも、モーターの場合にも成立する式である。
つぎに、変速に要する時間をtとし、他車両等の影響で自車両が速度制限を受けること等により、時間的余裕である条件時間tから削られる時間をΔtとすると、信号機40を通過するまでに変速が行われ(すなわち、変速を行う時間的な余裕があり)、かつ総エネルギー消費の低減も可能となる条件は、以下に示す(式3)のように記述される。
なお、(式3)において、max(A,B)は、数値A,Bのうち、大きい方の数値を選択することを意味する。
max(t,t)≦t−Δt ・・・ (式3)
すなわち、本実施の形態では、(式3)の右辺であるt−Δtに交通環境情報が集約される。そして、変速に要する時間をtと均衡時間tのいずれか大きい方の時間が、この時間t−Δt以下であることが条件となる。
ここで、本実施の形態に係る変速機が自動変速機であるとすると、変速は自動的に実行されるので、本実施の形態に係る変速制御処理におけるアルゴリズムは、以下に示す(アルゴリズム1)のようになる。なお、(アルゴリズム1)は、図2に示すフローチャートのステップS106に組み込まれている。
(アルゴリズム1)
if max(t,t)≦t−Δtthen 変速実行
else 変速非実行
なお、(アルゴリズム1)による変速制御処理では変速回数が多くなり、車両の搭乗者が不快に感ずるような場合には、tをtに入れ替え、一定程度エネルギー消費の低減が見込める場合に変速を実行するようにして、変速回数を減らすようにしてもよい。また、変速が実行されたことを、たとえば表示部24に表示して運転者に報知するようにしてもよい。
一方、本実施の形態に係る変速機が手動変速機の場合には、(式3)に基づき、運転者に変速を推奨するか、しないか(非推奨)を報知する。すなわち、この場合の変速制御処理のアルゴリズムは、以下に示す(アルゴリズム2)のように記述される。なお、(アルゴリズム2)は、図2に示すフローチャートのステップS106に組み込まれている。
(アルゴリズム2)
if max(t,t)≦t−Δtthen 変速推奨
else 変速非推奨
運転者14に対する変速推奨、変速非推奨の報知の形態としては、クラッチペダル16により変速の推奨、非推奨を報知し、フットレスト18により変速の必要性を報知する(変速へ誘導する)形態が考えられるが、これらの報知の形態の具体的な内容については後述する。なお、報知の形態はこれに限られず、たとえば表示部24等の表示手段に表示して運転者14に報知する形態としてもよい。
以上、詳述したように、本実施の形態に係る変速制御装置及び変速制御方法によれば、交通環境条件に応じてエネルギー消費の低減が可能となる、という効果を奏する。
[第2の実施の形態]
本実施の形態は、交通環境情報により交通環境条件が確率的に決定される形態である。
本実施の形態でも、信号機が青から赤に切り替わるタイミングで信号機を通過する場合を例にとり、本実施の形態に係る変速の適否の度合いを判定する方法について説明する。したがって、本実施の形態に係る変速の適否の度合いも(式3)に基づいて判定される。
まず、本実施の形態に係る変速機が自動変速機の場合には、変速制御処理のアルゴリズムは、以下に示す(アルゴリズム3)のように記述される。なお、(アルゴリズム3)は、図2に示すフローチャートのステップS106に組み込まれている。
(アルゴリズム3)
if P(max(t,t)≦t−Δt)≧C then 変速実行
else 変速非実行
ここで、(アルゴリズム3)におけるP(X)は、条件Xを充足する確率を示し、定数Cは、変速を実行するか実行しないかを判定する閾値である。つまり、(アルゴリズム3)では、(式3)を充足する確率がC以上の場合に変速を実行し、(式3)を充足する確率がC未満の場合に変速を実行しない。閾値Cは、運転者の好み等に応じて予め設定しておき、たとえば、図示しないROM等の記憶手段に記憶させておいてもよい。
一方、本実施の形態に係る変速機が手動変速機の場合には、変速制御処理のアルゴリズムは、以下に示す(アルゴリズム4)のように記述される。なお、(アルゴリズム4)は、図2に示すフローチャートのステップS106に組み込まれている。
(アルゴリズム4)
if P(max(t,t)≦t−Δt)≧C then 変速推奨
else 変速非推奨
運転者14に対する変速推奨、変速非推奨の報知の形態としては、クラッチペダル16により変速の推奨、非推奨を報知し、フットレスト18により変速の必要性を報知する(変速へ誘導する)形態が考えられるが、これらの報知の形態の具体的な内容については後述する。なお、報知の形態はこれに限られず、たとえば表示部24等の表示手段に表示して運転者14に報知する形態としてもよい。
本実施の形態に係る変速制御装置及び変速制御方法によれば、上記実施の形態に係る変速制御装置及び変速制御方法による効果に加え、交通環境条件が確率的にしか定まらない場合にも適用することができる、とういう効果を奏する。
[第3の実施の形態]
本実施の形態は、交通環境情報による交通環境条件が確率的に決定される場合で、かつ変速機が手動変速機の場合の形態である。すなわち、本実施の形態は、手動変速機の場合の第2の実施の形態の変形例である。より具体的には、運転者14が運転中に接触している可能性の高いクラッチペダル16及びフットレスト18を用いて、運転者への変速の推奨、非推奨をその度合いも含めて報知する形態である。
なお、本実施の形態も、信号機が青から赤に切り替わるタイミングで信号機を通過する場合を例にとり、本実施の形態に係る変速の適否の度合いを判定する方法について説明する。したがって、本実施の形態に係る変速の適否の度合いも(式3)に基づいて判定される。
図6を参照して、本実施の形態に係るクラッチペダル16及びフットレスト18について説明する。クラッチペダル16は、クラッチペダル16に取り付けられたモーター等のアクチュエータにより、反力Fcv(踏んだ場合に押し返す力)が発生可能なように構成されている。同様に、フットレスト18は、フットレスト18に取り付けられたモーター等のアクチュエータにより、反力Ffvが発生可能なように構成されている。
まず、クラッチペダル16については、その反力Fcvの大きさを制御して、変速の推奨の度合い、非推奨の度合いを運転者に報知し、運転者による変速の実行、非実行を誘導する。すなわち、変速を推奨する度合いが高い場合には反力Fcvを小さくして変速の実行に誘導し、変速を推奨しない度合いが高い場合には、反力Fcvを大きくして変速の非実行に誘導する。つまり、反力Fcvの大きさは、以下に示す(式4)に基づいて決定される。(式4)において、Pで示される確率は、変速を推奨しない確率を表している。
cv=k・P(max(t,t)>t−Δt) ・・・ (式4)
ここで、kは正の比例定数であり、kの値は運転者の好み等に応じて予め設定しておいてもよい。また、設定した比例定数kの値は、図示しないROM等の記憶手段に記憶させておいてもよい。
つぎに、フットレスト18については、その反力Ffvの大きさを制御して、変速の推奨の度合い(必要度)を運転者に報知し、運転者による変速の実行を誘導する。すなわち、変速することで所定のエネルギーLの削減効果((式2)参照)が得られる確率が大きいほど変速の必要度が高いとし、反力Ffvを大きくして変速の実行を促す。つまり、反力Ffvの大きさは、以下に示す(式5)に基づいて決定される。(式5)において、Pで示される確率は、所定のエネルギーLの削減効果が発生する確率を表している。
fv=k・P(max(t,t)≦t−Δt) ・・・ (式5)
ここで、kは正の比例定数であり、kの値は、エネルギー削減効果のレベルや運転者の好み等に応じて予め設定しておいてもよい。また、設定した比例定数kの値は、図示しないROM等の記憶手段に記憶させておいてもよい。
なお、上記実施の形態では、運転者に対する報知の手段として、クラッチペダル16の反力、あるいはフットレスト18の反力を用いる形態を例示して説明したがこれに限られず、クラッチペダル16、あるいはフットレスト18に振動を与えて報知する形態としてもよい。この場合、推奨等の程度は、たとえば振動の周波数で表してもよい。
本実施の形態に係る変速制御装置及び変速制御方法によれば、クラッチペダル16及びフットレスト18を用いて、運転者への変速の推奨、非推奨をその度合いも含めて報知するので、上記実施の形態に係る変速制御装置及び変速制御方法による効果に加え、ランプ等により報知する形態と比較して、運転者の注意を散漫させることが抑制される、という効果を奏する。
10 変速制御装置
12 駆動源
14 運転者
16 クラッチペダル
18 フットレスト
20 アクセルペダル
22 受信部
24 表示部
40 信号機情報
42 周辺車両情報
44 渋滞情報
46 地図情報
60 自車両
62 他車両
100 車両
R 道路

Claims (7)

  1. 交通環境情報を取得する取得手段と、
    車両における消費エネルギーの、変速に伴う削減量を演算する演算手段と、
    変速に伴うエネルギー損失と前記削減量とを前記交通環境情報を考慮して比較することにより変速の適否の度合いを判定する判定手段と、
    前記判定手段の判定結果に応じて変速の実行若しくは非実行の処理、又は変速の適否の度合いの報知の処理の少なくとも1つを行う処理手段と、を備え
    前記判定手段は、変速を実行する時間的な余裕がある場合に変速が適すると判定し、変速を実行する時間的な余裕がない場合に変速が適さないと判定する
    変速制御装置。
  2. 前記判定手段は、前記削減量が前記エネルギー損失よりも大きい場合に変速が適すると判定し、前記削減量が前記エネルギー損失以下の場合に変速が適さないと判定する
    請求項1に記載の変速制御装置。
  3. 前記処理手段は、前記判定手段により変速が適すると判定された場合には変速を実行するか、又は変速が推奨される度合いを報知し、前記判定手段により変速が適さないと判定された場合には変速を実行しないか、又は変速が推奨されない度合いを報知する
    請求項又は請求項に記載の変速制御装置。
  4. 前記処理手段は、前記変速が推奨される度合い、及び前記変速が推奨されない度合いの少なくとも一方を、前記車両のクラッチペダルの反力によって報知する
    請求項に記載の変速制御装置。
  5. 前記処理手段は、前記変速が推奨される度合いを前記車両のフットレストの反力によって報知する
    請求項又は請求項に記載の変速制御装置。
  6. 前記交通環境情報が、信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、地図情報のうちの少なくとも1つである
    請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の変速制御装置。
  7. 取得手段により、交通環境情報を取得し、
    演算手段により、車両における消費エネルギーの、変速に伴う削減量を演算し、
    判定手段により、変速に伴うエネルギー損失と前記削減量とを前記交通環境情報を考慮して比較することにより変速の適否の度合いを判定し、
    処理手段により、前記判定手段の判定結果に応じて変速の実行若しくは非実行の処理、又は変速の適否の度合いの報知の処理の少なくとも1つを行い、
    前記判定手段は、変速を実行する時間的な余裕がある場合に変速が適すると判定し、変速を実行する時間的な余裕がない場合に変速が適さないと判定する
    変速制御方法。
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