本発明に係るアンモニア発生装置を含む排気ガス浄化システムを備える車両の一態様として、ディーゼルエンジン(内燃機関)を備える車両を例にとって以下説明する。図1は第1の実施形態において用いられるアンモニア発生装置を備える車両を概略的に示す説明図である。
第1の実施形態:
車両500は、ディーゼルエンジン(以下、「エンジン」と呼ぶ。)510、4つの車輪520および排気ガス浄化システム10を備えている。本実施例に係るアンモニア発生装置20は、排気ガス浄化システム10に備えられている。エンジン510は、軽油を燃料とし、燃料の爆発燃焼によって駆動力を出力し、また、爆発燃焼に伴いNOx(窒素酸化物)およびPM(粒子状物質)を含む排気ガスを排気系統に備えられた排気ガス浄化システム10を介して大気に排出する。エンジン510には、エンジン510を冷却する冷却液の温度を検出する第1の温度センサ191が備えられている。なお、第1の実施形態において用いられる図1に示す車両構成は、他の実施形態においても同様に用いられ得る。
排気ガス浄化システム10は、排気管11(排気管路)上に種々の排気ガス浄化装置を備えている。排気管11は、エンジン510側(排気ガス流れの上流側)においてマニフォールド11aを介してエンジン510と接続され、排気ガス流れの最下流側にはマフラエンドパイプ11bを備えている。浄化システムは、排気ガス流れの上流側から、ディーゼル酸化触媒(DOC)12、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)13、アンモニア発生装置20、選択還元触媒(SCR)装置14およびアンモニアスリップ・ディーゼル酸化触媒(NH3DOC)15を排気管11上に備えている。排気管11上におけるDOC12の前段には燃料噴射装置17が配置されても良い。アンモニア発生装置20の前段には尿素水噴射装置18が配置されている。排気ガス浄化システム10のDPF13の排出側には、温度センサ192が配置されている。温度センサ192は、この他にも、たとえば、アンモニア発生装置20、SCR装置14に配置されていても良い。なお、本実施例における排気管上という用語は、排気管の内側、および排気管の途中(排気管の一部を構成)のいずれをも意味する。
ディーゼル酸化触媒12は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属を触媒として担持し、排気ガス中に含まれる未燃焼ガス成分である一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)を酸化して、二酸化炭素(CO2)および水(H2O)へと変換すると共に、排気ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)を酸化して、二酸化窒素(NO2)に変換する。
ディーゼル微粒子フィルタ13は、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を多孔質セラミックスまたは金属の微細な間隙で捕集するフィルタであり、広義には排気ガス浄化装置の一態様ではあるが、本明細書においては、PMの捕集に注目し、第1の微粒子捕集フィルタとして扱う。多孔質の表面には白金等の金属触媒が塗布されており、ディーゼル微粒子フィルタ13は、ディーゼル酸化触媒12により生成されるNOxの存在下において、粒子状物質が、250〜300℃の雰囲気中で触媒と化学反応を起こし、二酸化炭素(CO2)および水(H2O)に変換されることによって自然再生される。ディーゼル微粒子フィルタ13は、ディーゼル酸化触媒12に対して燃料噴射装置17を介して直接または排気行程を経てエンジン510から間接的に燃料を供給し、燃料由来の炭化水素を触媒燃焼させて排気温度を450℃以上として捕集された粒子状物質を酸化させる強制再生によっても再生され得る。
なお、DPF13としては、粒子状物質を物理的に捕集して炭化水素の触媒燃焼により粒子状物質を酸化させるタイプの他、プラズマ生成装置において低温プラズマを発生させてO3を中心とする活性種を生成し、生成された活性種をDPFに供給し、HC、Cといった粒子状物質成分を、H2O、CO2に変換(酸化)するプラズマDPFが用いられても良い。プラズマDPFにおいては、燃料を用いることなく粒子状物質を酸化することができる一方で、物理的形状にて粒子状物質を捕集しないため、予め処理すべき粒子状物質量に応じた活性種量を生成できるようプラズマ生成装置を設計することが求められている。
選択還元触媒(SCR)装置14は、ゼオライト系触媒またはバナジウム系触媒を担持し、NOxを選択的に還元するNOx還元触媒を備える装置である。SCR装置は、一般的に、SCR装置の前段において供給される尿素水の熱分解、加水分解反応を経て生成されたアンモニア(NH3)と、NOx還元触媒とによって、排気ガス中のNOx成分を窒素(N2)および水(H2O)に変換する。したがって、尿素水の供給を受けるSCR装置は、尿素水からアンモニアを得るために、適切な温度、たとえば、200℃以上の温度でなければ所望のNOx還元機能を得ることができない。
アンモニア発生装置20は、尿素水噴射装置18の後段(排気ガスの流れの下流側)に配置され、加熱器30を内部に備えている。アンモニア発生装置20は、加熱器30によって尿素水噴射装置18から噴射された尿素水を加熱し、加水分解することによってアンモニアを発生させる(アンモニアを生成する)。生成されたアンモニアは、SCR装置14に供給され、NOxを還元するための還元剤として用いられる。
アンモニアスリップ・ディーゼル酸化触媒15は、ディーゼル酸化触媒12と同様の触媒を担持し、SCR装置14において反応に供しなかったアンモニアを酸化分解して、窒素またはNOxを生成する。
排気ガス浄化システム10に用いられる第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20について以下に詳述する。図2は第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の概略構成を示す外観斜視図である。図3は図2に示す3−3線にて切断した、第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の模式的な横断面図である。
アンモニア発生装置20は、ケース201(本体)、第1の流路管21、第2の流路管22、断熱材23、第1の流路切替弁25、第2の流路切替弁26および加熱器30を備えている。ケース201は、ステンレス鋼、酸化防止処理が施された鋼板から形成されている。第1の流路管21は排気ガスが流れる第1の流路部21aを規定し、第2の流路管22は排気ガスが流れる第2の流路部22aを規定し、第1の流路管21と第2の流路管22とは平行に配置されている。ケース201は、排気ガスを内部に導入するための導入部20aと排気ガスを外部に排出するための排出部20bとを備えている。導入部20aと第1の流路管21および第2の流路管22、排出部20bと第1の流路管21および第2の流路管22とは連通されている。なお、第1の流路管21および第2の流路管22は、中空矩形形状を有しているが、円筒形状並びに他の形状を有していても良い。
導入部20aの前段には、アンモニア発生装置20の内部に尿素水を噴射する尿素水噴射装置18が配置されている。尿素水噴射装置18は、図示しない尿素水タンクに貯留されている尿素水を導入部20a(アンモニア発生装置20)に対して供給するための装置である。尿素水噴射装置18は、アンモニアへの変換を考慮すると尿素水を霧化状態にて供給することが望ましく、電磁式またはピエゾ式のアクチュエータによって、噴射孔を開閉することによって、高圧で供給された尿素水の噴射または噴射停止を実現する。なお、尿素水噴射装置18は、第1の流路管21および第2の流路管に対して尿素水を供給可能な位置に配置されていれば良く、たとえば、導入部20aに配置されていても良い。図1の例では、導入部20aよりも上流側である、アンモニア発生装置20とDPF13とを連結する連結部に配置されている。第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20は、尿素水の供給を受けてアンモニアを発生させる装置であるから、尿素水の供給を受けなければならないものの、尿素水噴射装置を構成として備えることなく、別体の尿素水噴射装置から供給された尿素水をアンモニアに変換しても良い。
第1の流路切替弁25は、ケース201の導入部20a側に、排気ガスが流れる流路管(流動経路)を第1の流路管21と第2の流路管22との間で切り替えるために備えられている。すなわち、第1の流路切替弁25は、第1の流路管21(第1の流路部21a)に排気ガスを流す場合(第1の流路管21(第1の流路部21a)を開く場合)には、第2の流路管22(第2の流路部22a)を塞ぎ、第2の流路管22(第2の流路部22a)に排気ガスを流す場合(第2の流路管22(第1の流路部22a)を開く場合)には、第1の流路管21(第1の流路部21a)を塞ぐ。
第2の流路切替弁26は、ケース201の排出部20b側に、排気ガスが流れない流路管(流動経路)を塞ぎ、流路管に閉鎖空間21b(図4参照)を形成するために備えられている。この閉鎖空間は、後述するように、生成されたアンモニアを一時的に貯めておく空間として機能し得る。第2の流路切替弁26は、第1の流路管21(第1の流路部21a)に排気ガスを流れる場合には、第2の流路管22(第2の流路部22a)を塞ぎ、第2の流路管22(第2の流路部22a)に排気ガスが流れる場合には、第1の流路管21(第1の流路部21a)を塞ぐ。
第1および第2の流路切替弁25、26としては、図示するように一端に備えられている軸を中心にして板状の弁体が揺動することによって流路を選択的に切り替える切替弁、内部に連通路を有する回転弁体が1軸を中心に回動することによって流路を選択的に切り替える切替弁、板状の弁体が直線移動することによって流路を選択的に切り替える切替弁等を用いることができる。弁体を駆動するアクチュエータとしては、ステッピングモータ等のモータ、電磁式のアクチュエータ、空気、オイルといった流体式のアクチュエータが用いられ得る。なお、後述するように、流路は、選択的、すなわち、排他的に切り替えられなくても良い場合があり、第1の流路切替弁25としては、第1および第2の流路管21、22の双方に対して導入部20aから導入された排気ガスを導くことが、第2の流路切替弁26としては、第1および第2の流路管21、22の双方に対して排出部20bへ排気ガスを導くことが求められる。第1および第2の流路切替弁25、26は、各流路管21、22に対してそれぞれ備えられていても良い。この場合には、一方の流路管を塞いだ上で、他の流路管に流れる排気ガス流量を調整することができる。すなわち、各流路管における外気ガス流量をそれぞれ独立して制御することができる。
加熱器30は、図2および図3の例では、第1の流路管21が矩形形状を有しており、これに合わせて、矩形渦巻き形状の断面を有する形状を備えているが、他の断面形状、たとえば、円形渦巻き形状の断面を有する形状を備えていても良い。加熱器30は、第1の流路管21内に配置されている加熱器であっても良く、あるいは、第1の流路管21の内壁面に一体に形成されていても良い。加熱器30は、複数の金属製の平板または波板、あるいは金属製の平板および波板が離間して積層されることにより形成され、板材自身が通電により発熱しても良い。この場合、金属製の板材の少なくとも一部には、発熱表面積を増大させるために、また、尿素水噴射装置18によって供給された尿素水を保持する尿素水保持部30aを実現するために穿孔処理あるいは凹凸処理といった処理が施されていることが望ましい。なお、図3では図示を簡略化するために、加熱器30の一部の表面にのみ尿素水保持部30aを図示している。近接して積層された板状部材の間の離間空間もまた、尿素水噴射装置18によって供給された尿素水を保持する尿素水保持部として機能することができる。尿素水保持部30aは、微細な穿孔、表面凹凸部における表面張力により尿素水を保持する。
加熱器30としては、棒状形状を有し排気ガスの流動方向に沿って第1の流路管21内に配置されている複数の加熱器が用いられても良い。棒状形状を有する場合にも、加熱器の表面(外表面)に凹凸加工が施されていることにより、尿素水保持部を実現することができる。なお、本実施形態における、加熱器30は、周囲を絶縁材で覆われておらず、部材通電により部材自身が発熱する抵抗発熱体(発熱部材)であって、ニクロム線、銅線、タングステン線といった線状の、またはステンレス材、銅材、アルミニウム材といった板状の裸の金属材であっても良く、ケース内においてマグネシア等の粉末無機絶縁物に覆われて配置されている抵抗発熱体を備える加熱器、すなわち、一般的にヒーターと呼ばれる態様の加熱器であっても良い。用途に応じて、熱容量の小さい炭化ケイ素、カーボン等の非金属材が加熱器30として用いられても良い。
本実施形態に係る加熱器30は、蓄熱体としても機能し得る。たとえば、加熱器30が、板材が積層されることによって渦巻き形状の断面を有する態様を備える場合、板材が積層されることによって矩形の立体形状を有する場合には、各金属製の板材は顕熱蓄熱部材として機能し得るため、所定の熱容量を有する蓄熱体として機能する。
さらに、加熱器30とは別に、蓄熱体が備えられていても良い。蓄熱体が第1の流路管21の横断面(排気ガスの流動方向と直交する断面)にわたって配置される一体形状の蓄熱体である婆には、内部に排気ガスの流動を許容する内部流路を備えていることが求められる。加熱器30は、蓄熱体に内包されていても良く、あるいは、蓄熱体に対して直列または並列に配置されていても良い。蓄熱体は、第1の流路管21の形状に合わせた形状を有していても良く、あるいは、他の形状を有していても良い。蓄熱体には、内部流路を備えるセラミック材、金属粉末の焼結体、メタルハニカム、エキスパンドメタル等を用いることができる。なお、内部流路は、意図的に形成された流路、たとえば直線流路であっても良く、材料の性質上形成される空隙により形成される流路、たとえば惰行流路であっても良い。また、内部流路は、尿素水保持部としても機能し得る。
第1の流路管21および第2の流路管22と、ケース201との間には断熱材23が配置または充填されている。断熱材23としては、たとえば、セラミック製のシート材、円筒状の硬質セラミック材、発泡性のセラミック材等が用いられる。断熱材23を備えることによって、金属製のケース201への熱伝導量を抑制し、微粒子捕集装置20の保温効率が所望のレベルに維持され得る。なお、ケース201は更なる断熱性向上のために、空気層を挟む2重壁構造を備えていても良い。
内燃機関の運転状態に応じた第1および第2の流路切替弁25、26の切り替えの態様および加熱器30による尿素水の加水分解の態様、すなわち、第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20の動作態様について図4〜図8を参照して説明する。図4は冷間始動時における第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。図5は暖機時における第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。図6は暖機時における第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。図7は暖機時における第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。図8は通常時における第1の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。
本実施形態においては、内燃機関(エンジン)の運転状態として、冷間始動時状態、暖機時状態、および通常時状態が考慮される。冷間始動時状態とは、エンジンの冷却液温度およびオイル温度が暖機完了温度よりも低い状態でのエンジンの始動開始時の状態を意味する。暖機時状態とは、冷間始動後、エンジンの冷却液温度およびオイル温度が暖機完了温度に到達するまでのエンジンの運転状態を意味する。通常時状態とは、エンジンの冷却液温度およびオイル温度が暖機完了温度に到達した後のエンジンの運転状態であり、排気ガス温度が冷間始動時および暖機時における温度よりも高い(所定温度よりも高い)運転状態を意味する。なお、エンジンの冷却液温度およびオイル温度の暖機完了温度は、エンジンごとに適宜決定されれば良く、本実施形態の観点からは、SCR装置14を始めとするとする、排気ガス浄化装置が浄化作用を示し得る温度の排気ガスが排出される際のエンジンの冷却液温度およびオイル温度を暖機完了温度としても良い。
エンジンの運転状態が冷間始動時状態にある場合には、図4に示すように、第1の流路切替弁25は、第1の流路管21を塞ぎ、エンジン510からの排気ガスを第2の流路管22、すなわち、第2の流路部22aへと導くように切り替えられる。第2の流路切替弁26は、第1の流路管21を塞ぎ、第1の流路管21を閉鎖空間21bとするように切り替えられる。冷間始動時における排気ガス温度は低く、排気ガスが加熱器30と接することによって、加熱器30の温度が低下するおそれがある。そこで、冷間始動時には、第1の流路管21(第1の流路部21a)を閉鎖空間21bとし、加熱器30と排気ガスとを接触させない。
エンジンの運転状態が暖機時状態にある場合には、図5〜図7に示すように、第1および第2の流路切替弁25、26の作動状態、加熱器30の作動状態、および尿素水噴射装置18の作動状態が変移する。なお、エンジンの運転状態が第1の運転状態にあるとは、加熱器30を作動(発熱)させる状態、尿素水を加水分解(尿素水をアンモニアに変換)する状態、排気ガス温度が所定温度よりも高い状態、の少なくともいずれか一つの状態にある場合を意味する。加熱器30を作動させる状態および尿素水を加水分解する状態は、エンジンの暖機時に出現し、排気ガス温度が所定温度よりも高い状態は、エンジン暖機後の通常運転時に出現する。
冷間始動後、エンジンの運転状態は暖機時状態となる。エンジンの運転状態が暖機時状態になると、先ず、図5に示すように、第1の流路切替弁25は、第2の流路管22を塞ぎ、エンジン510から導入部20aを経て導入された排気ガスを第1の流路管21、すなわち、第1の流路部21aへと導くように切り替えられる。第2の流路切替弁26は、第2の流路管22を塞ぎ、第1の流路管21、すなわち、第1の流路部21aへと導かれる排気ガスを排出部20bに導くように切り替えられる。この状態において、尿素水噴射装置18は、予め定められた量の尿素水を噴射する。この結果、噴射された尿素水は、排気ガスと共に加熱器30に導かれ、ドットパターンで示すように、少なくともその一部が加熱器30の表面に付着する(加熱器30が備える尿素水保持部30aに保持される)。なお、尿素水の噴射量は、たとえば、排気ガス温度、エンジン負荷によって適宜決定されれば良く、排気ガス温度が高くなるにつれて、エンジン負荷が高くなるにつれて、噴射量が増大される。
尿素水噴射装置18による尿素水の供給が完了すると、図6に示すように、第1の流路切替弁25は、第1の流路管21を塞ぎ、エンジン510からの排気ガスを第2の流路管22へと導くように切り替えられる。図6に示すエンジンの運転状態は、第1の運転状態、尿素水を加水分解(尿素水をアンモニアに変換)する状態にある。なお、加熱器30を作動させているので、加熱器30を作動(発熱)させる状態にあると言っても良い。第2の流路切替弁26は、第1の流路管21を塞ぎ、加熱器30を閉鎖空間21b内に閉じ込めるように切り替えられる。この状態において、加熱器30はオンされ、加熱状態となり、加熱器30に付着(保持)された尿素水はアンモニアへと変換され、アンモニアが生成される。加熱器30により実現される温度は、尿素水を加水分解するための求められる温度、たとえば、200度以上である。本実施形態におけるアンモニア発生装置20は、第1の流路管21の下流側を塞ぐ第2の流路切替弁26を備えているので、生成されたアンモニアは閉鎖空間21b内に保持される。
加熱器30による尿素水からアンモニアへの変換(アンモニアの生成)が終了すると、図7に示すように、第1の流路切替弁25は、第2の流路管22を塞ぎ、エンジン510から導入部20aを経て導入された排気ガスを第1の流路管21へと導くように切り替えられる。第2の流路切替弁26は、第2の流路管22を塞ぎ、第1の流路管21へと導かれる排気ガスを排出部20bに導くように切り替えられる。この結果、第1の流路管21に形成された閉鎖空間21b内に保持されていたアンモニアが、排気ガスと共にSCR装置14に供給される。SCR装置14に供給される排気ガスは、加熱器30によって加熱されるため、SCR装置14におけるNOx還元反応を促進させることができる。なお、尿素水からアンモニアへの変換の終了は、たとえば、予め定められた、供給された尿素水をアンモニアに変換するために必要な期間が経過したが否かによって判断され得る。この必要な期間は、常に一定であっても良く、あるいは、冷却液温度、排気ガス温度、外気温等によって変更される期間であっても良い。一般的に、冷却液温度、排気ガス温度、外気温等が高くなるにつれて、必要な期間を短くすることができる。なお、図7では加熱器30に対して通電しているが、十分な量のアンモニアを供給できていれば加熱器30に対する通電を停止しても良い。
本実施形態においては、SCR装置14の前段にアンモニア発生装置20が備えられており、アンモニア発生装置20によって生成されたアンモニアがSCR装置14に供給されるので、SCR装置14には200℃よりも低い温度域からNOx還元機能を発揮することができる。
エンジンの運転状態が暖機時運転状態を経て通常時状態になると、図8に示すように、第1の流路切替弁25は、第1の流路管21を塞ぎ、エンジン510からの排気ガスを第2の流路管22へと導くように切り替えられる。図8に示すエンジンの運転状態は、第1の運転状態、すなわち、排気ガス温度が所定温度よりも高い状態にある。第2の流路切替弁26は、第1の流路管21を塞ぐように切り替えられる。加熱器30に対する通電は停止され、加熱器30による加熱は終了する。尿素水噴射装置18は、必要に応じて尿素水を噴射する。この結果、噴射された尿素水は、冷間始動後および暖機時よりも温度の高い排気ガスと共にSCR装置14に導かれ、また、加水分解によってアンモニアへと変換される。
図9は第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20を備える車両における電装部品間における電気的な接続を概略的に示すブロック図である。車両500は、エンジン510の駆動力によって駆動されるオルタネータ(発電機)40を備えている。エンジン510は、クランクシャフト(図示しない)から取り出される駆動力(出力)をオルタネータ40に提供するためのエンジン側プーリー511を備えている。オルタネータ40は、エンジン510から提供される駆動力が入力されるオルタネータ側プーリー401を備えている。エンジン側プーリー511とオルタネータ側プーリー401とは、ベルト512によって機械的に接続されており、ベルト512を介して、エンジン510の駆動力がオルタネータ40に伝達される。
車両500は、尿素水噴射装置18、第1の流路切替弁25、第2の流路切替弁26、車両補機41、バッテリ42、制御ユニット60、第1のリレー61、第2のリレー62、第1の温度センサ191および第2の温度センサ192を備えている。第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26は、上述の構成を備えており、制御ユニット60とは制御信号線によって接続され、制御ユニット60からの制御信号によって、アクチュエータが弁体を駆動することによって、排気ガスの流路を第1の流路管21、第2の流路管22、または第1および第2の流路管21、22に切り替える。なお、本明細書においては、制御ユニット60および各種センサ、並びにアンモニア発生装置20を包含する構成をアンモニア発生制御装置20aと呼ぶ。
制御ユニット60は、アンモニア発生装置20においてアンモニアを発生させるための制御部として機能する。制御ユニット60は、第1および第2の流路切替弁25、26の開閉制御(流路管の解放・閉塞制御)のみならず、尿素水噴射装置18による尿素水の噴射制御(噴射オン・オフ制御)、並びに加熱器30に対する通電制御(加熱器30の作動・非作動制御)を実行することによって、アンモニア発生装置20を制御する。
車両補機41は、オルタネータ40により出力される電力またはバッテリ42に蓄電されている電力によって、駆動される(電力を消費する)車両走行と共に用いられる補機であり、たとえば、ヘッドライト、オーディオ、ナビゲーションシステム、電気式ヒーターが該当する。
オルタネータ40の出力端子は、第1のリレー61を介して加熱器30に電気的に接続されていると共に、第2のリレー62を介して、車両補機41に電気的に接続され、さらに電流計64を介してバッテリ42のプラス端子(+)に電気的に接続されている。なお、オルタネータ40から車両補機41およびバッテリ42に至る配線経路には電圧を昇圧または降圧するためのDC/DCコンバータが配置されていても良い。オルタネータ40、車両補機41、加熱器30の接地側端子は、ボディーアースを介してバッテリ42のマイナス端子(−)と電気的に接続されている。
第1のリレー61は、加熱器30をオンまたはオフ、すなわち、加熱器30に対する電力の供給または遮断の切り替えを行うスイッチである。第2のリレー62は、両補機41およびバッテリ42に対するオルタネータ40により発電された電力の供給または遮断の切り替えを行うスイッチである。第1および第2のリレー61、62は、制御ユニット60と制御信号線を介して接続されており、制御ユニット60からの制御信号によってオン(閉)またはオフ(開)される。電流計64は、信号線を介して制御ユニット60に対して、検出されたバッテリ42の出力電流を提供する。第1の温度センサ191はエンジン510を冷却する冷却液温度の温度を検出するために用いられ、第2の温度センサ192は排気ガス浄化装置10に導入される排気ガスの温度を検出するために用いられ、共に、制御ユニット60に対して信号線で接続されている。
第1の実施形態における、アンモニア発生装置20の作動制御について図10を参照して説明する。図10は第1の実施形態におけるアンモニア発生装置の動作を制御するための処理ルーチンを示すフローチャートである。本処理ルーチンは、所定のタイミング、時間間隔で繰り返して制御ユニット60によって実行される。なお、制御ユニット60には、少なくとも、図示しない、中央演算装置(CPU)、メモリおよび外部機器と制御信号、検出信号のやりとりを行うために入出力インタフェースが備えられている。
制御ユニット60は、車両の始動と共に本処理ルーチンを開始し、車両に備えられている種々のセンサによってエンジンの運転状態を検知する。なお、車両の始動とは、イグニションキーポジションがオン位置に切り替えられることを意味し、イグニションキーポジションがスタート位置に切り替えられる、すなわち、エンジン510が始動される前の状態を意味する。たとえば、制御ユニット60は、冷却液温度を検出する第1の温度センサ191、排気ガス温度を検出する第2の温度センサ、外気温センサ、オイル温度センサから入力される入力信号に基づいて車両の運転状態が冷間始動時状態、暖機時状態、通常時状態にあるか否かを判断することができる。冷間始動時状態とは、一般的に、エンジン510の温度(冷却液温度)が外気温以下の状態を意味し、通常は、一日における最初のエンジン始動時に冷間始動時状態となる。暖機時状態とは、冷却液温度およびオイル温度が、所定の温度に達するまでの運転状態を意味し、たとえば、ピストンとシリンダとのクリアランスが所期の寸法となる温度、オイルが所期の潤滑性能(粘度)を発揮する温度が所定の温度として用いられる。
制御ユニット60は、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にあるか否かを判定する(ステップS100)。制御ユニット60は、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にあると判定した場合には(ステップS100:Yes)、第1のリレー61をオフする(ステップS102)。すなわち、加熱器30は、オルタネータ40およびバッテリ42から電気的に切り離され、発熱(作動)しない。制御ユニット60は、第1の流路管21(第1の流路部21a)を閉鎖して(ステップS104)、運転状態の検知へリターンする。第1の流路管21の閉鎖に際して、制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図4に示すように、第1の流路管21を塞ぐように、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、導入部20aと第2の流路管22(第2の流路部22a)とが連通され、導入された排気ガスは第2の流路部22aを流れて排出部20bに導かれる。すなわち、排気ガスの流れに加熱器30が曝されないようにして、以下に示す加熱器30による尿素水の加水分解を効率的な実行を可能にする。なお、制御ユニット60による、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にあるか否かを判定は、イグニションキーポジションがオン位置に切り替えられた後の、エンジン始動前後のいずれのタイミングで実行されても良い。
制御ユニット60は、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にないと判定した場合には(ステップS100:No)、エンジンの運転状態が暖機時状態にあるか否かを判定する(ステップS106)。制御ユニット60は、エンジンの運転状態が暖機時状態にあると判定した場合には(ステップS106:Yes)、第1のリレー61をオフし(ステップS108)、加熱器30と、オルタネータ40およびバッテリ42との電気的な接続を遮断し、加熱器30を非作動状態にする。制御ユニット60は、第2の流路部22aを閉鎖して(ステップS110)、尿素水噴射装置18によって尿素水を噴射させる(ステップS112)。具体的には、制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図5に示すように、第2の流路管22(第2の流路部22a)を塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、導入部20aと第1の流路管21(第1の流路部21a)とが連通され、導入された排気ガスは第1の流路部21aを流れて排出部20bに導かれる。尿素水噴射装置18によって導入部20aに供給された尿素水は、排気ガスによって第1の流路部21aに導かれ、少なくとも一部が加熱器30に付着し、保持される。既述のように、加熱器30には尿素水保持部30aが形成されていることが望ましく、加熱器30に導かれた尿素水は、表面張力によって尿素水保持部30aに保持される。
制御ユニット60は、所定量の尿素水の噴射が完了すると、第1の流路部21aを閉鎖して(ステップS114)、第1のリレー61をオンする(ステップS116)。制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図6に示すように、第1の流路部21aを塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、第1の流路管21(第1の流路部21a)には、第1および第2の流路切替弁25、26によって塞がれた(規定される)閉鎖空間21bが形成される。この状態にて第1のリレー61がオンされることによって、オルタネータ40と加熱器30とが電気的に接続され、オルタネータ40により発電された電力は加熱器30に供給される。電力の供給を受けた加熱器30は発熱し、保持している尿素水を加熱して、加水分解によってアンモニアを発生させる。加熱器30は、第1および第2の流路切替弁25、26によって規定される閉鎖空間21b内に存在するので、発生した(生成された)アンモニアは閉鎖空間21b内に保持される。
制御ユニット60は、加熱器30に保持された尿素水の全量または所定量以上がアンモニアに変換される時間が経過した後、第2の流路部22aを閉鎖して(ステップS118)、運転状態の検知へリターンする。制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図7に示すように、第2の流路部22aを塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、導入部20aと第1の流路部21aとが連通され、導入された排気ガスは第1の流路部21aを流れて排出部20bに導かれる。第1の流路部21aを流れる排気ガスは、第1の流路部21a(閉鎖空間21b)に保持されていたアンモニアの流動を促し、保持されていたアンモニアは排出部20bを介して、SCR装置14に供給される。SCR装置14に対しては、尿素水ではなく、アンモニアが供給されるので、SCR装置14は、より低い排気ガス温度域にてNOx還元を実現することができる。なお、加熱器30に保持された尿素水の全量または所定量以上がアンモニアに変換される時間は、閉鎖空間21bの容積、加熱器30の発熱性能、加熱器30が保持可能な尿素水の量等によって実験的に定められれば良い。
制御ユニット60は、エンジンの運転状態が暖機時状態にないと判定した場合には(ステップS106:No)エンジンの運転状態は通常時状態にあると判定し、第1のリレー61をオフする(ステップS120)。第1のリレー61がオフされることにより、加熱器30と、オルタネータ40およびバッテリ42との電気的な接続が遮断され、加熱器30は非作動状態とされる。制御ユニット60は、第1の流路部21aを閉鎖して(ステップS122)、尿素水噴射装置18によって尿素水を噴射させて(ステップS124)、運転状態の検知へリターンする。制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図8に示すように、第1の流路部21aを塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、導入部20aと第1の流路管21(第1の流路部21a)とが連通され、導入された排気ガスは第1の流路部21aを流れて排出部20bに導かれる。尿素水噴射装置18によって導入部20aに供給された尿素水は、排気ガスによって第2の流路部22aに導かれ、排出部20bを介して排気ガスと共にSCR装置14に供給される。通常時状態における排気ガスの温度は、所定温度以上であり、排気ガスの熱量によって尿素水はアンモニアに変換され得る。
以上説明した第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20によれば、加熱器30に尿素水が保持され、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26によって第1の流路部21aが閉鎖されることにより、加熱器30を内包する閉鎖空間21bが形成され、加熱器30が発熱される。したがって、排気ガスの温度、および流動の影響を受けることなく、効率良く、尿素水からアンモニアを発生させることができる。すなわち、加熱器30の発熱に要する電力量を低減しつつ、尿素水の全量をアンモニアに変換させることが可能となり、SCR装置14に対するアンモニア供給量を安定させることができる。また、アンモニアを閉鎖空間21b内に保持することができるので、要しないアンモニアの漏れ出しを防止または抑制することができると共に、SCR装置14に供給するアンモニア量を調整することができる。さらに、アンモニア発生装置20の後段には、アンモニアスリップ・ディーゼル酸化触媒15が備えられているので、閉鎖空間21bからアンモニアが漏れ出したとしても、車外に放出されることはない。
第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20によれば、尿素水に代えてアンモニアをSCR装置14に供給するので、従来、SCR装置14の作動に要するとされてきた作動温度よりも低い温度域で、NOx還元を実現することができる。すなわち、尿素水をSCR装置に供給する従来の手法においては、SCR装置自体の温度、SCR装置に供給される排気ガス温度が尿素水を加水分解してアンモニアを生成させる温度、たとえば、200度、であることが要求されていた。一方、SCR装置が備えるNOx還元触媒は、還元に要するアンモニア量は多くなり、また、NOx還元率(削減率)は低下するものの、より低い温度、たとえば、120度程度からNOxを還元する性能を有している。したがって、第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20を用いて、尿素水に代えて、アンモニアを直接SCR装置14に供給することによって、低温還元に必要なアンモニア量を供給することが可能となり、より低い作動温度域にてNOx還元を実現することができる。
燃焼効率の向上および省燃費化に伴い、エンジン510から排出される排気ガスの温度は、市街地走行時、すなわち、低中負荷運転領域においては、200度よりも低い傾向にあることが知られている。第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20を用いれば、低中負荷運転領域においても、NOx還元が可能となり、従来と比較してより広い運転領域において、排気ガス浄化を実現することができる。
一般的に、SCR装置(NOx還元触媒)が吸着できるアンモニア量は、SCR装置温度が低いほど多くなる傾向にあり、低温のSCR装置14に対してアンモニアを供給した場合、供給されたアンモニアはSCR装置14によって吸着される。したがって、排気ガス温度が低い場合であっても、NOx還元に要するアンモニア量を提供することができる。
第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20によれば、SCR装置14に対してアンモニアが供給される際には、第1の流路管21を介した加熱器30によって加熱された排気ガスがSCR装置14に対して供給される。したがって、低中負荷運転領域においても、加熱器30を経由しない低温排気ガスの影響を受けることなく、より高い温度の排気ガスをSCR装置14に供給することが可能となり、SCR装置14におけるNOx還元効率を向上させることができる。
第2の実施形態:
図11〜図13を参照して、第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20について説明する。図11は暖機時における第2の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。図12は暖機時における第2の実施形態に係るアンモニア発生装置の動作状態を示す説明図である。図13は第2の実施形態におけるアンモニア発生装置の動作を制御するための処理ルーチンを示すフローチャートである。本処理ルーチンは、所定のタイミング、時間間隔で繰り返して制御ユニット60によって実行される。なお、第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20は、アンモニアを発生させる手順が第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20における手順と異なるものの、各構成要素については、第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20と同様であるから同一の符号を付して、各構成要素の説明は省略する。
第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20の動作状態のうち、一部は第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20の動作状態と同様であるから、詳細な説明は省略する。エンジンの運転状態が冷間始動時状態にある場合には、図4に示すように、第1の流路切替弁25は、第1の流路管21を塞ぎ、エンジン510からの排気ガスを第2の流路管22へと導くように切り替えられる。第2の流路切替弁26は、第1の流路管21を塞ぎ、第1の流路管21を閉鎖空間21bとするように切り替えられる。
エンジンの運転状態が暖機時状態にある場合には、図11および図12に示すように、第1および第2の流路切替弁25、26の作動状態、加熱器30の作動状態、および尿素水噴射装置18の作動状態が変移する。なお、第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20においては、加熱器30を発熱させた後、尿素水が供給される点において、尿素水が供給された後、加熱器30を発熱させる第1のアンモニア発生装置20とは異なる。なお、第1の実施形態と同様にして、加熱器30には尿素水保持部30aが備えられていても良い。
第2の実施形態においても、エンジンの運転状態が第1の運転状態にあるとは、加熱器30を作動(発熱)させる状態、尿素水を加水分解(尿素水をアンモニアに変換)する状態、排気ガス温度が所定温度よりも高い状態、の少なくともいずれか一つの状態にある場合を意味する。加熱器30を作動させる状態および尿素水を加水分解する状態は、エンジンの暖機時に出現し、排気ガス温度が所定温度よりも高い状態は、エンジン暖機後の通常運転時に出現する。
エンジンの運転状態が暖機時状態になった後、第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20の第1および第2の流路切替弁25、26、加熱器30、および尿素水噴射装置18は、図11に示す作動状態を採る。すなわち、第1の流路切替弁25は、第1の流路管21を塞ぎ、エンジン510からの排気ガスを第2の流路管22へと導くように切り替えられる。第2の流路切替弁26は、第1の流路管21を塞ぎ、加熱器30を閉鎖空間21b内に閉じ込めるように切り替えられる。この状態において、加熱器30はオンされ、加熱状態となる。図11に示すエンジンの運転状態は、第1の運転状態、すなわち、加熱器30を作動(発熱)させる状態にある。なお、第2の実施形態においては、加熱器30には尿素水は保持されておらず(ドットパターンは付されていない)、加熱器30への通電は予備加熱のための通電である。予備加熱は、加熱器30の温度、あるいは、閉鎖空間21b内の温度が、尿素水を加水分解するための求められる温度、たとえば、200度以上になるまで所定時間実行される。なお、この所定時間は、加熱器30の性能、閉鎖空間21bの容積等に基づいて予め定められても良く、外気温等を考慮して補正されても良い。
加熱器30に通電開始後、上記の所定時間が経過すると、図12に示すように、第1の流路切替弁25は、第2の流路管22を塞ぎ、エンジン510から導入部20aを経て導入された排気ガスを第1の流路管21、すなわち、第1の流路部21aへと導くように切り替えられる。第2の流路切替弁26は、第2の流路管22を塞ぎ、第1の流路管21、すなわち、第1の流路部21aへと導かれる排気ガスを排出部20bに導くように切り替えられる。この状態において、尿素水噴射装置18は、予め定められた量の尿素水を噴射する。この結果、噴射された尿素水は、排気ガスと共に加熱器30に導かれ、少なくともその一部が加熱器30によって加熱され、加水分解によってアンモニアに変換される。尿素水からの変換により発生したアンモニアは排気ガスと共にSCR装置14に供給される。SCR装置14に供給される排気ガスは、加熱器30によって加熱されるため、SCR装置14におけるNOx還元反応を促進させることができる。なお、尿素水の噴射量は、たとえば、排気ガス温度、エンジン負荷によって適宜決定されれば良く、排気ガス温度が高くなるにつれて、エンジン負荷が高くなるにつれて、噴射量が増大される。
本実施形態においては、SCR装置14の前段にアンモニア発生装置20が備えられており、アンモニア発生装置20によって生成されたアンモニアがSCR装置14に供給されるので、SCR装置14には200℃よりも低い温度域からNOx還元機能を発揮することができる。
エンジンの運転状態が暖機時運転状態を経て通常時状態になると、第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20の第1および第2の流路切替弁25、26、加熱器30、および尿素水噴射装置18は、図8に示す作動状態を採る。図8に示すエンジンの運転状態は、第1の運転状態、すなわち、排気ガス温度が所定温度よりも高い状態にある。
第2の実施形態における、アンモニア発生装置20の動作制御について図13を参照して説明する。本処理ルーチンは、所定のタイミング、時間間隔で繰り返して制御ユニット60によって実行される。
制御ユニット60は、車両の始動と共に本処理ルーチンを開始し、車両に備えられている種々のセンサによってエンジンの運転状態を検知する。エンジンの運転状態の検知は第1の実施形態において説明済みである。
制御ユニット60は、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にあるか否かを判定する(ステップS200)。制御ユニット60は、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にあると判定した場合には(ステップS200:Yes)、第1のリレー61をオフする(ステップS202)。すなわち、加熱器30は、オルタネータ40およびバッテリ42から電気的に切り離され、発熱(作動)しない。制御ユニット60は、第1の流路部21aを閉鎖して(ステップS204)、運転状態の検知へリターンする。第1の流路部21aの閉鎖に際して、制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図4に示すように、第1の流路管21を塞ぐように、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、導入部20aと第2の流路部22aとが連通され、導入された排気ガスは第2の流路部22aを流れて排出部20bに導かれる。
制御ユニット60は、エンジンの運転状態が冷間始動時状態にないと判定した場合には(ステップS200:No)、エンジンの運転状態が暖機時状態にあるか否かを判定する(ステップS206)。制御ユニット60は、エンジンの運転状態が暖機時状態にあると判定した場合には(ステップS206:Yes)、第1の流路部21aを閉鎖して(ステップS208)、第1のリレー61をオンする(ステップS210)。具体的には、制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図6に示すように、第1の流路部21aを塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、第1の流路部21aには、第1および第2の流路切替弁25、26によって塞がれた(規定される)閉鎖空間21bが形成される。この状態にて第1のリレー61がオンされることによって、オルタネータ40と加熱器30とが電気的に接続され、オルタネータ40により発電された電力は加熱器30に供給される。電力の供給を受けた加熱器30は発熱し、予備加熱が実行される。
加熱器30に対する通電時間が所定時間経過すると、制御ユニット60は、第2の流路部22aを閉鎖する(ステップS212)。制御ユニット60は、尿素水噴射装置18によって尿素水を噴射させ(ステップS214)、運転状態の検知へリターンする。具体的には、制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26、並びに尿素水噴射装置18に制御信号を送信し、また、図10に示すように、第2の流路部22aを塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替え、尿素水噴射装置18から尿素水を噴射させる。この結果、導入部20aと第1の流路部21aとが連通され、導入された排気ガスは第1の流路部21aを流れて排出部20bに導かれる。尿素水噴射装置18によって導入部20aに供給された尿素水は、排気ガスによって第1の流路部21aに導かれ、少なくとも一部が予備加熱によって発熱している加熱器30によって加水分解され、アンモニアが発生する。発生したアンモニアは、排気ガスによって排出部20bに導かれ、SCR装置14に供給される。本実施形態においても、SCR装置14に対しては、尿素水ではなく、アンモニアが供給されるので、SCR装置14は、より低い排気ガス温度域にてNOx還元を実現することができる。
制御ユニット60は、エンジンの運転状態が暖機時状態にないと判定した場合には(ステップS206:No)エンジンの運転状態は通常時状態にあると判定し、第1のリレー61をオフする(ステップS216)。第1のリレー61がオフされることにより、加熱器30と、オルタネータ40およびバッテリ42との電気的な接続が遮断され、加熱器30は非作動状態とされる。制御ユニット60は、第1の流路部21aを閉鎖して(ステップS218)、尿素水噴射装置18によって尿素水を噴射させて(ステップS220)、運転状態の検知へリターンする。制御ユニット60は、第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26に制御信号を送信して、図8に示すように、第1の流路部21aを塞ぐように第1の流路切替弁25および第2の流路切替弁26の弁位置を切り替える。この結果、導入部20aと第1の流路部21aとが連通され、導入された排気ガスは第1の流路部21aを流れて排出部20bに導かれる。尿素水噴射装置18によって導入部20aに供給された尿素水は、排気ガスによって第2の流路部22aに導かれ、排出部20bを介して排気ガスと共にSCR装置14に供給される。通常時状態における排気ガスの温度は、所定温度以上であり、排気ガスの熱量によって尿素水はアンモニアに変換され得る。
以上説明した第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20によれば、第1の実施形態に係るアンモニア発生装置20を用いた場合と同様にして、従来よりも低い温度域にて、SCR装置14におけるNOx還元を実現することができる。
第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20では、加熱器30に対する尿素水の供給工程を要しないので、第1および第2の流路切替弁25、26の切り替え回数を低減することができる。
第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20によれば、閉鎖空間21b内において加熱器30の予備加熱が実行されるので、排気ガス温度および排気ガス流の影響を受けることなく、効率良く、加熱器30を発熱させることができる。また、SCR装置14に対してアンモニアが供給される際には、第1の流路管21を経由した排気ガスがSCR装置14に供給されるので、加熱器30を経由しない低温排気ガスの影響を受けることなく、より高い温度の排気ガスをSCR装置14に供給することが可能となり、SCR装置14におけるNOx還元効率を向上させることができる。
第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20によれば、SCR装置14に対してアンモニアを供給するタイミングにおいて、尿素水からアンモニアへの変換を実行するので、エンジン510の運転状態に応じて、NOx還元に要するアンモニア量を動的に提供することができる。
変形例:
(1)図2および図3に示す第1および第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20は、水平方向に平行に並ぶ第1の流路管21および第2の流路管22を備えているが、図14に示すように、鉛直方向に並ぶ第1の流路管21および第2の流路管22を備えていても良い。図14は第1および第2の実施形態に係るアンモニア発生装置の変形例を示す説明図である。たとえば、水平方向に搭載スペースがない場合には、鉛直(垂直)方向に搭載スペースを見出すことによって、第1および第2の実施形態に係るアンモニア発生装置20を車両に搭載することができる。また、図14には、加熱器30に加えて、備えられ得る既述の蓄熱体31を備えるアンモニア発生装置20が示されている。
(2)上記各実施形態において、第1のリレー61と第2のリレー62との間にDC/DCコンバータを配置することによって、オルタネータ40により発電された電力を降圧させることなく加熱器30に供給することができる。この結果、加熱器30の加熱性能を向上させること、より短時間に必要な熱量を提供させること、ができる。
(3)上記各実施形態において、第2の流路切替弁26は備えられなくても良い。すなわち、第1の流路切替弁25によって排気ガス流と加熱器30との接触は阻止されるので、加熱器30が排気ガスと接触することに伴う熱損失の問題は回避することができる。
(4)上記各実施形態において、尿素水噴射装置18に加えて、図15に示すように、閉鎖空間21b内に尿素水を直接噴射する第2の尿素水噴射装置18aが備えられても良い。図15はアンモニア発生装置の変形例を示す説明図である。この場合、第1の実施形態においては、図5に示す尿素水を加熱器30に供給するための工程を省略して、図4に示す冷間始動時状態から図6に示す状態に直接移行することが可能となり、第1および第2の流路切替弁25、26の作動回数を低減させることができる。また、第1および第2の実施形態において、第1の流路管21に付着する尿素水量を低減することが可能になると共に、温度の低い排気ガスによる尿素水の温度低下を防止または抑制することができる。さらに、第1および第2の流路切替弁25、26の作動状態とは独立して第1の流路管21に尿素水を供給することができる。なお、図15には、既に言及した、尿素水噴射装置18が導入部20aに配置されている態様が図示されている。
(5)上記各実施形態においては、アンモニア発生装置20は矩形箱型形状を有しているが、導入部20aから排出部20bに至るまで複数回折り返された冗長な形状を備えていても良く、円筒形状を有していても良い。また、上記各実施形態においては、直線状に延びるアンモニア発生装置20を例にとって説明しているが、アンモニア発生装置20は、一部の構成または配管が他の構成または配管と交差する方向に配置され、折り返し状に形成された浄化システムに適用されても良い。たとえば、車載時に地面に対して平行に配置される平行部と、平行部と交差する交差部とを有する折り返し形状を備え、排気ガスの流動方向への長さを短くした浄化システムに適用されても良い。なお、交差部は、地面に対して垂直な垂直部であり、垂直方向に嵩を有する浄化システムであっても良い。この場合、アンモニア発生装置20は平行部または交差部のいずれに配置されても良い。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。たとえば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。