以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
≪第1の実施の形態≫
図1〜図13は、第1の実施の形態を説明するための図である。このうち図1及び図2は、太陽電池複合型表示体10の構成を示す斜視図または縦断面図であり、図3〜図7は、単位レンズ30の光学特性を説明するための図であり、図8〜図10は、太陽電池複合型表示体10の作用を説明するため図であり、図11及び図12は、太陽電池複合型表示体の製造方法の一例を説明するための図である。
ここで説明する太陽電池複合型表示体10は、所定の表示機能及び外光を利用した発電機能の両方を発揮する。図1及び図2に示す太陽電池複合型表示体10は、第1軸方向d1に配列された複数の単位レンズ30を有し、各単位レンズ30のレンズ面31の一部に表示面12が配置されている。或る角度範囲AR1内の方向D21から太陽電池複合型表示体10を観察すると、主として単位レンズ30のレンズ面31の一部に配置された表示面12が観察される。したがって、表示面12は、或る角度範囲AR1から太陽電池複合型表示体10を観察する観察者に対して主として表示機能を発揮する。一方、別の或る角度範囲AR2内の方向から入射した光L23は、主として単位レンズ30のレンズ面31を透過して、太陽電池パネル50に導かれる。したがって、太陽電池パネル50は、別の或る角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10へ入射する光に対して主として発電機能を発揮する。しかして、太陽電池複合型表示体10によれば、観察者からの観察方向と外光の入射方向との相違を利用して、観察者が表示面12を観察する際に太陽電池パネル50が視認されることを抑制し、周囲との調和を図ることを可能にしている。
以下、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10の構成および作用効果について詳述していく。図1および図2によく示されているように、太陽電池複合型表示体10は、光制御シート20と、光制御シート20の背面に配置された太陽電池パネル50と、を有している。光制御シート20は、太陽電池複合型表示体10の表面10aを形成している。表面10aは、太陽電池複合型表示体10へ入射する太陽光等の外光等が入射する入射面をなし、また、表示対象13(図8参照)を可視化する表示面12からの光が太陽電池複合型表示体10から出射する出射面もなす。
光制御シート20は、シート状の本体部40と、本体部40に積層された賦形部25と、を有している。このうち、本体部40は、互いに対向する一対の主面として、第1面40a及び第2面40bを有している。第1面40aは、太陽電池複合型表示体10の表面10aを形成し、第2面40bは、賦形部25と隣接する面を形成している。本体部40は、太陽電池複合型表示体10に入射する光を効率よく透過させるよう、光透過性に優れた材料にて構成される。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。一具体例として、「光制御シート」には、「光制御フィルム」や「光制御板」等と呼ばれる部材も含まれる。
また、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。以下に説明する実施の形態においては、太陽電池複合型表示体10のパネル面、光制御シート20のシート面、本体部40のシート面、並びに、太陽電池パネル50のパネル面は、互いに並行となっている。さらに、本明細書において、シート状(フィルム状、板状、パネル状)の部材に対して用いる「法線方向」とは、当該部材のシート面への法線方向のことを指す。
本体部40の第2面40bに配置された賦形部25は、第1軸方向d1に配列された多数の単位レンズ30を含んでいる。本実施の形態では、第1軸方向d1は、本体部40のシート面に沿っており、本体部40の法線方向ndに直交している。図示する例では、第1軸方向d1は鉛直方向と平行になっている。
また、多数の単位レンズ30は、その光軸odが互いに平行となるようにして並べられている。本実施の形態において、各単位レンズ30の光軸odは、本体部40の法線方向ndと平行になっている。
とりわけ、多数の単位レンズ30は、図1に示すように、いわゆるレンチキュラーレンズ乃至シリンドリカルレンズを構成している。すなわち、各単位レンズ30は、その配列方向である第1軸方向d1に対して交差する方向に線状に延びている。とりわけ図示された例において、単位レンズ30は、第1軸方向d1及び法線方向ndの両方と直交する第2軸方向d2に、直線状に延びている。また、多数の単位レンズ30は、互いに同一に構成されている。
各単位レンズ30は、シート状の本体部40から、本体部40の法線方向ndに向かって突出し、その表面に凸レンズ状に形成されたレンズ面31を規定している。第1軸方向d1、及び、太陽電池パネル50の法線方向すなわち本体部40の法線方向ndの両方に平行な図2の断面(以下においては、「主切断面」とも呼ぶ)において、レンズ面31は、光軸odを中心として対称となっている。図2に示すように、各単位レンズ30は、そのレンズ面31に入射する平行光束を集光領域に集める。図2に示す単位レンズ30は、単位レンズ30の光軸odに沿って入射する平行光束L22を焦点fpに集める例が示されており、この場合、焦点fpは、単位レンズ30の光軸od上に位置する。
図3は、単位レンズ30に光軸odに沿って平行光束L31が入射するようすを拡大して示す図である。図3に示すように、単位レンズ30は、光軸odに沿ってすなわち本体部40の法線方向ndに沿ってレンズ面31に入射する平行光束L31の一部を全反射させる。すなわち、本実施の形態による単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに沿ってレンズ面31に入射する光を高い透過率で透過させることは意図されていない。なお、ここでいう透過率とは、レンズ面31に入射する平行光束の光量に対する、レンズ面31を透過した光の光量の割合をいう。
図4は、単位レンズ30に光軸odに対して傾斜した方向から光束L41が入射するようすを示す図である。なお、図4において、光束は、光軸odに対して60°傾いている。図4に示すように、単位レンズ30は、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する平行光束L41を高い透過率で透過させる。より詳細には、単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに沿ってレンズ面31に入射する光束L31よりも、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する光束L41を高い透過率で透過させる。後述するように、日中の太陽高度は30°〜60°の範囲内にあることが多いことから、本体部40の法線方向ndが正面方向を向く場合、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する光L41を相対的に高い透過率で透過させた方が、全体として太陽電池パネル50に多くの光を導くことができる。
これに対し、図5は、光軸odに沿った方向から平行光束L51を入射させたときに全反射が起こらない単位レンズ300の一例を示す図である。図5に示す単位レンズ300は、光軸odに沿ってレンズ面310に入射する平行光束L51を全て透過させて、一部ですら全反射させない。すなわち、図5に示す単位レンズ300は、光軸odに沿ってレンズ面310に入射する平行光束L51は、レンズ面310上の任意の地点において全反射臨界角未満となっている。
図6は、図5に示す単位レンズ300に光軸odに対して傾斜した方向から光束L61が入射するようすを示す図である。図6に示すように、図5に示す単位レンズ300は、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面310に入射する平行光束L61の一部を全反射させてしまい、高い透過率で透過させることができない。すなわち、光軸odに沿ってレンズ面310に入射する平行光束L101を全て透過させる単位レンズ300は、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面310に入射する平行光束L61を高い透過率で透過させることができない。日中の太陽高度は30°〜60°の範囲内にあることが多いことから、本体部40の法線方向ndが正面方向を向く場合、図5に示す単位レンズ300は、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する光L61を高い透過率で透過させることができず、全体として太陽電池パネル50に多くの光を導くことができない。
図7は、アスペクト比の異なる複数の単位レンズを対象として、平行光束の入射角度と光の透過率との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は平行光束のレンズ面への入射角を示し、縦軸は各入射角における平行光束の透過率を示している。また、調査した単位レンズのアスペクト比は、下記の表1の通りである。
図7のグラフから理解されるように、アスペクト比が0.1以下のサンプル1、2では、平行光束の入射角が増大するほど、光の透過率が低下していく傾向がみられた。一方、アスペクト比が0.2〜0.3程度のサンプル3〜7では、平行光束の入射角が変化しても、光の透過率はあまり変化しない傾向がみられた。また、アスペクト比が0.4〜0.5程度のサンプル8、9では、平行光束の入射角が増大するほど、光の透過率が増大していく傾向がみられた。
とりわけ、サンプル1、2に係る単位レンズは、入射角度0°の平行光束の透過率が100%となっている。すなわち、サンプル1、2に係る単位レンズは、図5及び図6に示すような、光軸odに沿ってレンズ面310に入射する平行光束を全て透過させるレンズに対応している。図7のグラフの結果からも、光軸odに沿ってレンズ面310に入射する平行光束を全て透過させるレンズは、光軸odに対して傾斜した方向からレンズ面310に入射する平行光束を高い透過率で透過させることができないことがわかる。
さて、図2に戻って、単位レンズ30は、互いに隙間をあけて第1軸方向d1に配列されている。すなわち、第1軸方向d1に隣り合う二つの単位レンズ30のレンズ面31の間には、当該二つのレンズ面31間を接続する接続面38が設けられている。図示された例において、接続面38は、本体部40のシート面に沿って延びている。複数のレンズ面31と複数の接続面38とによって、光制御シート20の太陽電池パネル50側を向く面が構成されている。光制御シート20は、一例として、金型を用いた樹脂成型によって作製され得る。接続面38を設けて、隣り合う単位レンズ30の間に隙間を設けることによって、法線方向ndに対して大きく傾斜した角度範囲からの光が単位レンズ30のレンズ面31から出射した後にその隣の単位レンズ30で遮られてしまう問題、いわゆる「ケラレ」を減らすことができる。
図2に戻って、各単位レンズ30のレンズ面31の一部に沿って、表示要素11が配置されている。ゆえに、複数の表示要素11は、単位レンズ30に対応して、単位レンズ30の配列方向である第1軸方向d1に配列されている。また、各表示要素11は、単位レンズ30と同様に、配列方向である第1軸方向d1と交差する方向、より厳密には、第1軸方向d1と直交する第2軸方向d2に直線状に延びている。
ここで、図2に示す主切断面において、レンズ面31の両端部のうち、第1軸方向d1において一側(図示する例では、図2における上側であって、鉛直方向における上側)に位置する端部を一端部31aと呼び、第1軸方向d1において他側(図示する例では、図2における下側であって、鉛直方向における下側)に位置する端部を他端部31bと呼び、一端部31a及び他端部31bから本体部40の法線方向ndに沿って最も離れた地点を頂部31cと呼ぶこととする。本実施の形態の頂部31cは、レンズ面31のうちの太陽電池パネル50に最も接近した地点となる。そして、この頂部31cを単位レンズ30の光軸odが通過している。
さらに、図2に示す主切断面において、各レンズ面31のうち、頂部31cから第1軸方向d1において一側に位置する一端部31aまでの領域を一側領域32aと呼び、頂部31cから第1軸方向d1おいて他側に位置する他端部31bまでの領域を他側領域32bと呼ぶこととする。
図2から理解されるように、一側領域32aは、第1軸方向d1に沿って頂部31c側から一端部31a側に向かうにつれて、本体部40の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50から離間していく。一方、他側領域32aは、第1軸方向d1に沿って頂部31c側から他端部31b側に向かうにつれて、本体部40の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50から離間していく。
各表示要素11は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の一側領域32aの少なくとも一部を覆っている。図2に示す例では、各表示要素11は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の一側領域32aの全域を隙間なく覆っている。
その一方で、各表示要素11は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の他側領域32bからずれて配置されている。すなわち、各表示要素11は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の他側領域32bを覆っていない。ただし、各表示要素11は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の他側領域32bの一部を覆っていてもよい。
また、図2及び図3に示すように、一側領域32aは、光軸odに沿った方向から入射する光L21が全反射する領域rsを含んでいる。すなわち、表示要素11が配置された一側領域32aは、本体部40の法線方向ndに沿った方向から入射する光L21の入射角が全反射臨界角以上となる領域を含んでいる。
上述のように、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10は、表面10a側から観察されることが意図されており、各表示要素11は、表面10a側を向く面に、表示を行うための表示面12を有している。表示要素11がレンズ面31の一側領域32aに沿って配置されていることから、表示面12もこれに対応して、レンズ面31の一側領域32aに沿って湾曲する。より詳細には、各表示面12は、レンズ面31の一側領域32aの形状に対応して、第1軸方向d1において一側に位置する一端部12aが、第1軸方向d1において他側に位置する他端部12bよりも、本体部40の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50から離間するように、湾曲している。図2から理解されるように、このような表示面12は、法線方向ndに対して他側(下側)に傾斜した方向D21から観察したときに、視認され易くなる。したがって、表示面12からの表示機能は、法線方向ndに対して他側に傾斜した方向D21から観察されたときに、効果的に発揮されるようになる。
本実施の形態では、複数の表示面12の組み合わせによって表示対象13を表示する。表示対象13としては、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクターなどの絵柄(イメージ)や、文字、マーク、数字などの情報を例示することができる。表示対象13は、静止していても動いていてもよい。とりわけ、表示面12に動く表示対象13を表示する場合、太陽電池パネル50から発電された電気を駆動に用いることが簡便である。
図8に、表示面12に付与される表示対象13の一例が示されている。複数の表示面12は、複数の単位レンズ30に対応して、第1軸方向d1に配列されるとともに、各表示面12は、第1軸方向d1に直交する第2軸方向d2に直線状に延びている。したがって、第1軸方向d1における各位置に位置する表示面12が、当該表示面12の第1軸方向d1における位置に応じた表示対象成分13aを付与されることによって、第2軸方向d2に細長く延びる各表示面12に形成された表示対象成分13aの組み合わせとして二次元的な表示対象13を表示することが可能となる。図8に示された例では、アルファベットの大文字の「N」が表示対象13として表示されている。このように、複数の表示対象成分13aの組み合わせとして表示対象13を表示することで、各表示面12および各単位レンズ30のサイズを小さくできるため、太陽電池複合型表示体10のコンパクト化の点で有利である。
なお、図8において、表示対象13としての「N」の文字が途切れた態様で表示され連続して繋がった画素の組み合わせとして表示されていない。しかしながら、各表示対象成分13a並びに隣り合う各表示対象成分13aの間の間隔は、十分に小さく設定されており、肉眼においては、表示対象13としての「N」の文字が連続して繋がった画素として視認され得る点に留意されたい。
さて、図2に戻って、レンズ面31の他側領域32bは、表示要素11によって覆われていない。このため、他側領域32bに入射した光L23は、当該他側領域32bを屈折しながら透過して、太陽電池パネル50に向かっていく。すなわち、レンズ面31のうちの表示要素11に覆われていない領域32bは、入射する光L23を太陽電池パネル50の入光面50aに導く光透過領域として機能する。
太陽電池パネル50の入光面50aで受光された光L23は、太陽電池パネル50に含まれる太陽電池素子にて発電に利用される。この太陽電池パネル50は、単位レンズ30に対向し、且つ、当該単位レンズ30から離間して配置されている。
図2に示すように、太陽電池パネル50は、第1軸方向d1に配列された複数の単位レンズ30に対向して、平面状に延び広がっている。図示された例において、太陽電池パネル50は、本体部40のシート面、言い換えると、太陽電池複合型表示体10のパネル面と平行に延びている。したがって図示された例では、太陽電池パネル50は、単位レンズ30の配列方向である第1軸方向d1と平行に延び広がり、且つ、単位レンズ30の長手方向である第2軸方向d2とも平行に延び広がっている。なお、太陽電池パネル50として、種々の既知な部材を用いることができ、特に限定されない。
とりわけ、図2に示す主切断面において、太陽電池パネル50は、単位レンズ30の光軸odに沿って入射する平行光束L22が収束する焦点fpよりも、単位レンズ30から離間した位置に配置されている。このような配置によれば、太陽電池複合型表示体10に入射して太陽電池パネル50に向かう平行光束L22が、集光領域に集光した後に拡がった状態で太陽電池パネル50に到達する。このため、太陽電池複合体10に入射する平行光束L22を、太陽電池パネル50の広い領域に到達させることに寄与する。
なお、図2に示す例では、太陽電池パネル50は、空気層を介して光制御シート20から離間して配置された例を示しているが、このような例に限定されない。例えば、太陽電池パネル50は、単位レンズ30をなす樹脂材料よりも低い屈折率をもつ低屈折率層を介して光制御シート20に接合されていてもよい。
次に、上述してきた太陽電池複合型表示体10の製造方法の一例について、主として図11及び図12を参照しながら説明する。
まず、図11に示すように、透明樹脂を成型することにより、本体部40及び単位レンズ30を作製する。成型は、熱溶融押出加工や射出成型等を採用することができる。次に、図12に示すように、単位レンズ30のレンズ面31に表示要素11を配置する。一例として、インクジェット印刷によって、レンズ面31に表示要素11を配置することができる。その後、単位レンズ30に向き合うように太陽電池パネル50を設置する。これにより、太陽電池複合型表示体10が得られる。
このようにして得られる太陽電池複合型表示体10は、様々な用途で利用可能であり、例えば、屋外看板、道路情報掲示板、建築物の外壁面などで用いられる数m〜数十mサイズの大型パネル用途や、ポスター、標識、建築物の内壁面などで用いられる数十cm〜数mサイズの中型パネル用途や、卓上スタンド、携帯端末などで用いられる数cm〜数十cmの小型パネル用途などを例示することができる。
次に、主として、図9及び図10を参照しながら、太陽電池複合型表示体10の作用について説明する。太陽電池複合型表示体10は、例えば、単位レンズ30の配列方向である第1軸方向d1が鉛直方向に沿うようにして、配置される。具体的には、第1軸方向d1における一側が、鉛直方向における上側に沿い、第1軸方向d1における他側が、鉛直方向における下側に沿うように、太陽電池複合型表示体10が配置される。
図9によく示されているように、レンズ面31の一側領域32aに配置された表示要素11の表示面12は、当該表示面12の正面方向から視認され易い。図9に示す例では、表示面12がその一端部12aが他端部12bよりも太陽電池パネル50から離間するように湾曲しているため、法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側に傾斜した第1角度範囲AR1内の方向D91、D92、D93から太陽電池複合型表示体10を観察したときに表示面12を視認し易くなる。したがって、観察者は、法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側に傾斜した方向D91、D92、D93から太陽電池複合型表示体10を観察したときに、優れた視認性で表示対象13を観察することができる。
一方、表示面12を視認し易い方向D91、D92、D93とは異なる方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L101、L102、L103すなわち、法線方向ndに対して第1軸方向d1における一側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L101、L102、L103は、表示面12に入射し難い。これら表示面12に入射しなかった光L101、L102、L103は、主として表示要素11に覆われていない他側領域32bに入射し、レンズ作用により屈折されながら他側領域32bを透過し、太陽電池パネル50に向かっていく。このように、表示面12を視認し易い方向D91、D92、D93とは異なる方向となる第2角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10に入射する光L101、L102、L103を、主として太陽電池パネル50に向けて透過させることで、表示機能と発電機能の両立を図ることが可能となる。
とりわけ、太陽の高度は季節や時間帯に応じて変化するが、日中の太陽の高度は例えば30°〜60°の範囲内にあることが多い。このため、太陽電池複合型表示体10に降り注ぐ太陽光L101、L102、L103は、水平面に対して上方に傾斜した方向、すなわち、本体部40の法線方向ndに対して上方に傾斜した方向から主としてレンズ面31に入射する。この点、本実施の形態による単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに沿ってレンズ面31に入射する光束L104よりも、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する光束L101、L102、L103を高い透過率で透過させるようになっている。このため、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する日中の太陽光L101、L102、L103を相対的に高い透過率で透過させることができ、全体として太陽電池パネル50に多くの光を導くことができる。
ただし、早朝や日没の時間帯の太陽光L104は、あまり長い時間は占めないものの、概ね水平方向から太陽電池複合型表示体10に入射する。このような太陽光L104の一部は、レンズ面31にて全反射してしまう。このため、概ね水平方向から太陽電池複合型表示体10に入射する太陽光L104を、有効に活用できないようにも思える。しかしながら、本実施の形態では、レンズ面31の一部に沿って表示面12が配置されているため、仮にレンズ面31が全ての光を透過させたとしても、レンズ面31を透過すべき一部の光は表示面12に遮られてしまう。この点、本実施の形態では、このレンズ面31を透過すべき光を遮ってしまう表示面12が配置される領域を、水平方向からレンズ面31に入射する光L104を全反射させてしまう領域rsに対応させている。このため、水平方向からレンズ面31に入射する光L104を遮ってしまう領域を最小限に抑えることができ、全体として太陽光L101〜L104の有効利用を図ることが可能となる。
以上のように、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10によれば、第1面40a及び第1面40aに対向する第2面40bを有するシート状の本体部40と、一軸方向d1に沿って本体部40の第2面40bに配列され、本体部40とは反対側を向く面にレンズ面31を形成する複数の単位レンズ30と、複数の単位レンズ30が配列された本体部40の第2面40bに対向して配置された太陽電池パネル50と、本体部40または単位レンズ30のレンズ面31に一軸方向d1に沿って配列された複数の表示面12と、を備え、表示面12は、一軸方向d1及び本体部40の法線方向ndの両方に平行な主切断面において、太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜し、第1角度範囲AR1から太陽電池複合型表示体10に入射する光が表示面12に到達し、第1角度範囲AR1とは異なる第2角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10に入射した光が、単位レンズ30及び隣り合う2つの表示面12の間を通過して太陽電池パネル50に到達する。このような形態によれば、表示面12が太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜しているため、傾斜した表示面12がその正面方向となる方向D21、D91〜D93から観察され易くなる。一方、表示面12を視認し易い方向D21、D91〜D93とは異なる別の方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光束L23、L101〜L103は、隣り合う2つの表示面12の間を透過して太陽電池パネル50に導かれる。このように、観察者からの観察方向D21、D91〜D93と外光L23、L101〜L103の入射方向との相違を利用して、周囲の環境との調和を図ると共に、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立が効果的に可能となる。その上、太陽電池パネル50が本体部40の第2面40bに対向して配置されているため、太陽電池パネル50の受光面50aが外部に露出していない。このため、太陽電池パネル50をさらに目立たなくさせることができる。
その上、単位レンズ30は、第2角度範囲AR2内から太陽電池複合型表示体10に入射する平行光束L23であって、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した或る方向からレンズ面31に入射する平行光束L23を、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する平行光束L22よりも高い透過率で、透過させる。太陽光L22、L23が全体としてみたときに本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する割合が多いように、太陽電池複合型表示体10が設置される場合、レンズ面31に入射する太陽光L23を相対的に高い透過率で太陽電池パネル50に導くことができ、全体として太陽電池パネル50の発電量を高めることができる。
また、単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する平行光束L22の一部を、全反射させる。このようなレンズ面31の設計とすることで、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する太陽光L23を高い透過率で透過させるようにレンズ面31を最適化することができる。この結果、全体としてみたときに、レンズ面31に入射する太陽光L23を相対的に高い透過率で太陽電池パネル50に導くことができ、太陽電池パネル50の発電量を高めることができる。
あるいは、本実施の形態によれば、第1面40a及び第1面40aに対向する第2面40bを有するシート状の本体部40と、一軸方向d1に沿って本体部40の第2面40bに配列され、本体部40とは反対側を向く面にレンズ面31を形成する複数の単位レンズ30と、複数の単位レンズ30が配列された本体部40の第2面40bに対向して配置された太陽電池パネル50と、各々に対応する単位レンズ30のレンズ面31の一部に沿って配置された複数の表示面12と、を備える。このような形態によれば、太陽電池パネル50の前面に複数の表示面12が配置されているため、太陽電池パネル50を目立たなくさせることができる。その一方で、各表示面12は対応するレンズ面31の一部に沿って配置されているため、表示面12に遮られなかった外光L22、L23は、レンズ面31にて進行方向を調整されながら太陽電池パネル50に向かっていく。これにより、表示面12に遮られなかった外光L22、L23をレンズ効果を利用しながら太陽電池パネル50による発電に有効に活用することができる。このようにして、本実施の形態によれば、太陽電池パネル50を目立たなくすることで周囲の環境との調和を図ると共に、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立を図ることが可能となる。その上、各単位レンズ30のレンズ面31の一部に表示面12を配置することで実現することができるため、太陽電池複合型表示体10の製造が容易である。
その上、本実施の形態によれば、レンズ面31のうちの表示面12が配置された領域は、本体部40の法線方向ndに沿った方向から入射する光L21の入射角が全反射臨界角以上となる領域rsを含んでいる。このような形態によれば、レンズ面31を透過すべき光を遮ってしまう表示面12が配置される領域を、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する光L104を全反射させてしまう領域rsに対応させることができる。このため、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する光L104を遮ってしまう領域を最小限に抑えることができ、全体として太陽光L101〜L104の有効利用を図ることが可能となる。
また、本実施の形態によれば、一軸方向d1及び本体部40の法線方向ndの両方に平行な断面において、レンズ面31のうち、当該レンズ面31の頂部31cから一軸方向d1において一側に位置する一端部31aまでの領域を一側領域32aとし、頂部31cから一軸方向d1おいて他側に位置する他端部31bまでの領域を他側領域32bとすると、各表示面12は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の一側領域32aの少なくとも一部を覆っている。この場合、一側領域32aは、本体部40の法線方向ndに対して一軸方向d1において他側に傾斜した方向D21、D91〜D93から太陽電池複合型表示体10を観察したときに観察し易い。したがって、一軸方向d1において他側に傾斜した方向D21、D91〜D93から太陽電池複合型表示体10を観察したときに、一側領域32aに配置された表示面12を視認し易くすることができる。
とりわけ、本実施の形態によれば、各表示面12は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の他側領域32bからずれて配置されている。この場合、他側領域32bには、本体部40の法線方向ndに対して一軸方向d1において一側に傾斜した方向からの光L23が入射し易い。したがって、他側領域32bに表示面12を配置しないことにより、一軸方向d1において一側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L23を太陽電池パネル50に導き易くなる。このように、観察者からの観察方向D21と外光L23の入射方向との相違を利用することで、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立を一層図ることが可能となる。
とりわけ、本実施の形態による太陽電池複合体10では、単位レンズ30の配列方向である一軸方向d1が鉛直方向に沿い、一軸方向d1における一側が上側に対応し、一軸方向d1における他側が下側に対応している。このような設置の仕方は、典型的な利用として想定される表示板としての用途において太陽電池複合体10を目線よりも高い位置に設置する場合に好適である。観察者は、鉛直方向における上側に見上げながら太陽電池複合体10を観察することから、一側領域32aに配置された表示面12を視認し易い。一方、太陽光は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化するが、鉛直方向における下側に傾斜した方向に進みながら太陽電池複合型表示体10に入射する。このため、太陽光は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化しても、鉛直方向における下側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射し主としてレンズ面31を透過して太陽電池パネル50に向かうことができる。したがって、このような形態によれば、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電を効果的に両立させることができる。
ところで、下記の表2は、世界の幾つかの国の主要な都市における季節ごとの南中高度(°)を示している。使用が想定される国の主要な都市における春分秋分の南中高度が第2角度範囲AR2に含まれることが好ましい。その国で有効に使用できる可能性が高いからである。例えば、使用されることが想定される国が日本の場合は54°から56°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすればよい。さらに、49°から61°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすれば、世界の多くの国で有効に使用できる可能性が高いため、好ましい。また、使用が想定される国の主要な都市における夏至の南中高度から冬至の南中高度までが第2角度範囲AR2に含まれることがさらに好ましい。その国で一年を通して有効に使用できる可能性が高いからである。例えば、使用されることが想定される国が日本の場合は31°から79°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすればよい。さらに、25°から84°までの高度が第2角度範囲AR2に含まれるようにすれば、世界の多くの国で有効に使用できる可能性が高いため、好ましい。なお、所望の高度が第2角度範囲AR2に含まれることを容易にするために、第2角度範囲AR2の角度範囲が45°程度以上連続していることが好ましい。もっとも、太陽電池複合型表示体10を傾けて配置することによって、所望の高度を第2角度範囲AR2に含まれるようにすることも可能である。一方、第2角度範囲AR2の角度範囲の上限については、第1角度範囲AR1とのバランスで適宜設定すればよいが、135°程度未満とすることによって、本実施の形態の太陽電池複合型表示体10の特長をより発揮させることができる。
なお、上述した実施の形態では、図2に示すように、各単位レンズ30が本体部40の法線方向ndに向かって突出した凸レンズからなる例を示したが、単位レンズ30の形態は、このような例に限定されない。各単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに向かって凹んだ凹レンズであってもよい。
また、上述した太陽電池複合型表示体10は、本体部40の周りに配置された反射層70をさらに有していてもよい。図13に、太陽電池複合型表示体10が反射層70をさらに有する例を示す。図13に示すように、本体部40は、第1面40aと第2面40bとの間を延びる側面40cを有し、この側面40cの少なくとも一部に、反射層70が設けられている。
側面40cは、第1軸方向d1に対向する一対の上側面40d及び下側面40eと、第2軸方向d2に対向する一対の横側面40fと、を含んでいる(図1も参照)。そして、反射層70は、側面40cを構成する4つの面40d〜40fの全域を覆っている。このような反射層70は、一例として、高い反射率を有した材料からなる薄膜によって形成され得る。
反射層70によれば、太陽電池複合型表示体10に入射した太陽光が本体部40の側面40cから漏れ出すことを妨げ本体部40内を進行するように戻すことができるため、太陽光の利用効率を高めることができる。
≪第2の実施の形態≫
次に、図14を参照して、第2の実施の形態について説明する。図14は、第2の実施の形態における太陽電池複合型表示体10を示す断面図である。図14を参照して説明する第2の実施の形態は、単位レンズ30の配置が異なるが、その他の構成は、第1の実施形態及びその変形例と同様に構成することができる。第2の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態及びその変形例と同様に構成され得る部分について、上述の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図14に示す第2の実施の形態において、複数の単位レンズ30は、本体部40の第1面40aに配列され、本体部40の第2面40bが太陽電池パネル50と向き合っている。ただし、第2の実施の形態において、単位レンズ30の配列方向である一軸方向d1が鉛直方向に沿っているが、第1の実施の形態とは異なり一軸方向d1における一側が下側に対応し、一軸方向d1における他側が上側に対応している。
各単位レンズ30のレンズ面31の一部に沿って、表示要素11が配置されている。図8に示す例では、表示要素11は、レンズ面31の一側領域32aを覆うように配置されており、他側領域32bを覆っていない。なお、図8から理解されるように、一側領域32aは、第1軸方向d1に沿って頂部31c側から一端部31a側に向かうにつれて、本体部40の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50に接近していく。一方、他側領域32bは、第1軸方向d1に沿って頂部31c側から他端部31b側に向かうにつれて、本体部40の法線方向ndに沿って太陽電池パネル50に接近していく。
各表示要素11は、表面10a側を向く面に、表示を行うための表示面12を有している。表示要素11がレンズ面31の一側領域32aに沿って配置されていることから、表示面12もこれに対応して、レンズ面31の一側領域32aに沿って湾曲する。より詳細には、各表示面12は、レンズ面31の一側領域32aの形状に対応して、第1軸方向d1において一側に位置する一端部12aが、第1軸方向d1において他側に位置する他端部12bよりも、本体部40の法線方向ndにおいて太陽電池パネル50に接近するように、湾曲している。図14から理解されるように、このような表示面12は、法線方向ndに対して一側(下側)に傾斜した方向D141から観察したときに、視認され易くなる。
一方、表示面12を視認し易い方向D141とは異なる方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L143、すなわち、法線方向ndに対して第1軸方向d1における他側(上側)に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L143は、表示面12に入射し難い。これら表示面12に入射し難い光L143は、主として表示要素11に覆われていない他側領域32bに入射し、レンズ作用により屈折されながら他側領域32bを透過し、太陽電池パネル50に向かっていく。このように、表示面12を視認し易い方向D141とは異なる方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L143を、太陽電池パネル50に向けて透過させることで、表示機能と発電機能の両立を図ることが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、第1面40a及び第1面40aに対向する第2面40bを有するシート状の本体部40と、一軸方向d1に沿って本体部40の第1面40aに配列され、本体部40とは反対側を向く面にレンズ面31を形成する複数の単位レンズ30と、本体部40の第2面40bに対向して配置された太陽電池パネル50と、本体部40または単位レンズ30のレンズ面31に一軸方向d1に沿って配列された複数の表示面12と、を備え、表示面12は、一軸方向d1及び本体部40の法線方向ndの両方に平行な主切断面において、太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜し、第1角度範囲AR1から太陽電池複合型表示体10に入射する光が表示面12に到達し、第1角度範囲AR1とは異なる第2角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10に入射した光が、単位レンズ30及び隣り合う2つの表示面12の間を通過して太陽電池パネル50に到達する。このような形態によれば、表示面12が太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜しているため、傾斜した表示面12がその正面方向となる方向D141から観察され易くなる。一方、表示面12を視認し易い方向D141とは異なる別の方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光束L143は、隣り合う2つの表示面12の間を透過して太陽電池パネル50に導かれる。このように、観察者からの観察方向D141と外光L143の入射方向との相違を利用して、周囲の環境との調和を図ると共に、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立が効果的に可能となる。その上、太陽電池パネル50が本体部40の第2面40bに対向して配置されているため、太陽電池パネル50の受光面50aが外部に露出していない。このため、太陽電池パネル50をさらに目立たなくさせることができる。
その上、単位レンズ30は、第2角度範囲AR2内から太陽電池複合型表示体10に入射する平行光束L143であって、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した或る方向からレンズ面31に入射する平行光束L143を、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する平行光束L142よりも高い透過率で、透過させる。太陽光L142、L143が全体としてみたときに本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する割合が多くなるように、太陽電池複合型表示体10が設置される場合、全体としてみたときに、レンズ面31に入射する太陽光L143を相対的に高い透過率で太陽電池パネル50に導くことができ、太陽電池パネル50の発電量を高めることができる。
また、単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する平行光束L142の一部を、全反射させる。このようなレンズ面31の設計とすることで、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する太陽光L143を高い透過率で透過させるようにレンズ面31を最適化することができる。この結果、全体としてみたときに、レンズ面31に入射する太陽光L143を相対的に高い透過率で太陽電池パネル50に導くことができ、太陽電池パネル50の発電量を高めることができる。
あるいは、本実施の形態によれば、第1面40a及び第1面40aに対向する第2面40bを有するシート状の本体部40と、一軸方向d1に沿って本体部40の第1面40aに配列され、本体部40とは反対側を向く面にレンズ面31を形成する複数の単位レンズ30と、本体部40の第2面40bに対向して配置された太陽電池パネル50と、各々に対応する単位レンズ30のレンズ面31の一部に沿って配置された複数の表示面12と、を備える、太陽電池複合型表示体10が提供される。このような形態によれば、太陽電池パネル50の前面に複数の表示面12が配置されているため、太陽電池パネル50を目立たなくさせることができる。その一方で、各表示面12は対応するレンズ面31の一部に沿って配置されているため、表示面12に遮られなかった外光L142、L143は、レンズ面31にて進行方向を調整されながら太陽電池パネル50に向かっていく。これにより、表示面12に遮られなかった外光L142、L143をレンズ効果を利用しながら太陽電池パネル50による発電に有効に活用することができる。このようにして、本実施の形態によれば、太陽電池パネル50を目立たなくすることで周囲の環境との調和を図ると共に、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立を図ることが可能となる。その上、各単位レンズ30のレンズ面31の一部に表示面12を配置することで実現することができるため、太陽電池複合型表示体10の製造が容易である。
その上、本実施の形態によれば、レンズ面31のうちの表示面12が配置された領域は、本体部40の法線方向ndに沿った方向から入射する光L142の入射角が全反射臨界角以上となる領域rsを含んでいる。このような形態によれば、レンズ面31を透過すべき光を遮ってしまう表示面12が配置される領域を、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する光L142を全反射させてしまう領域rsに対応させることができる。このため、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する光L142を遮ってしまう領域を最小限に抑えることができ、全体として太陽光L142、L143の有効利用を図ることが可能となる。
また、本実施の形態によれば、各表示面12は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の一側領域32aの少なくとも一部を覆っている。この場合、一側領域32aは、本体部40の法線方向ndに対して一軸方向d1において一側に傾斜した方向D141から太陽電池複合型表示体10を観察したときに観察し易い。したがって、一軸方向d1において一側に傾斜した方向D141から太陽電池複合型表示体10を観察したときに、一側領域32aに配置された表示面12を視認し易くすることができる。
とりわけ、本実施の形態によれば、各表示面12は、対応する単位レンズ30のレンズ面31の他側領域32bからずれて配置されている。この場合、他側領域32bには、本体部40の法線方向ndに対して一軸方向d1において他側に傾斜した方向からの光L133が入射し易い。したがって、他側領域32bに表示面12を配置しないことにより、一軸方向d1において他側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光L133を太陽電池パネル50に導き易くなる。このように、観察者からの観察方向D131と外光L133の入射方向との相違を利用することで、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立を一層図ることが可能となる。
とりわけ、本実施の形態による太陽電池複合体10では、単位レンズ30の配列方向である一軸方向d1が鉛直方向に沿い、一軸方向d1における一側が下側に対応し、一軸方向d1における他側が上側に対応している。このような設置の仕方は、典型的な利用として想定される表示板としての用途において太陽電池複合体10を目線よりも高い位置に設置する場合に好適である。観察者は、鉛直方向における上側に見上げながら太陽電池複合体10を観察することから、一側領域32aに配置された表示面12を視認し易い。一方、太陽光L143は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化するが、鉛直方向における下側に傾斜した方向に進みながら太陽電池複合型表示体10に入射する。このため、太陽光L143は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化しても、鉛直方向における下側に傾斜した方向から太陽電池複合型表示体10に入射し主としてレンズ面31を透過して太陽電池パネル50に向かうことができる。したがって、このような形態によれば、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電を効果的に両立させることができる。
また、本実施の形態によれば、本体部40の法線方向ndおよび一軸方向d1の両方に平行な断面において、太陽電池パネル50は、単位レンズ30の光軸odに沿って入射する平行光束L142が収束する焦点fpよりも、単位レンズ30から離間した位置に配置されている。このような配置によれば、太陽電池複合型表示体10に入射して太陽電池パネル50に向かう平行光束L142、L143が、集光領域に集光した後に拡がった状態で太陽電池パネル50に到達する。このため、太陽電池複合体10に入射する平行光束L142、L143を、太陽電池パネル50の広い領域に到達させることに寄与する。
≪第3の実施の形態≫
次に、図15及び図16を参照して、第3の実施の形態について説明する。図15及び図16は、それぞれ、第3の実施の形態における太陽電池複合型表示体10を示す斜視図及び断面図である。図15及び図16を参照して説明する第3の実施の形態は、表示面12の配置が異なるが、その他の構成は、第1の実施形態及びその変形例と同様に構成することができる。第3の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態及びその変形例と同様に構成され得る部分について、上述の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図15および図16に示すように、太陽電池複合型表示体10は、シート状の本体部40と、本体部40の第2面40bに対向して配置された太陽電池パネル50と、を有する。
本体部40の第1面40aには、複数の単位レンズ30が第1軸方向d1に配列されている。複数の単位レンズ30は、その光軸odが互いに平行となるようにして、並べられている。とりわけ図示された例において、単位レンズ30は、その光軸odが、太陽電池複合型表示体10の法線方向ndと平行となるよう配置されている。また、第1軸方向d1は、太陽電池複合型表示体10のパネル面に沿っており、太陽電池複合型表示体10の法線方向ndに直交している。
単位レンズ30は、いわゆるレンチキュラーレンズまたはシリンドリカルレンズを構成している。すなわち、各単位レンズ30は、その配列方向である第1軸方向d1に対して交差する方向、より詳細には第1軸方向d1に直交する第2方向d2に、直線状に延びている。また、単位レンズ30は、本体部40とは反対側を向く表面に凸レンズ状のレンズ面31を形成している。
複数の表示面12が、単位レンズ30に対応して、本体部40内で第1軸方向d1に沿って配列されている。図16に示すように、各表示面12は、対応する単位レンズ30と法線方向ndに沿って少なくとも部分的に対面するようにして、配置されている。本実施の形態では、表示面12は、単位レンズ30と同様に、配列方向である第1軸方向d1と交差する方向、より厳密には、第1軸方向d1と直交する第2方向d2に直線状に延びている。また、各表示面12は、太陽電池パネル50のパネル面及び本体部40の法線方向ndに対して傾斜している。
次に、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10の作用について説明する。太陽電池複合型表示体10は、例えば、単位レンズ30の配列方向である第1軸方向d1が鉛直方向に沿うようにして、配置される。また、表示面12の第1軸方向d1における一側に位置する一端部12aが、鉛直方向における上側に位置し、表示面12の第1軸方向d1における他側に位置する他端部12bが、鉛直方向における下側に位置するように、太陽電池複合型表示体10が配置される。
図16によく示されているように、傾斜した表示面12は、当該表示面12の正面方向から視認され易い。本実施の形態では、表示面12が単位レンズ30の光軸odに対して第1軸方向d1における一側に傾斜しているため、当該光軸odに対して第1軸方向d1における他側に傾斜した方向D161、D162から太陽電池複合型表示体10を観察したときに表示面12を視認し易くなる。とりわけ、光軸odに対して第1軸方向d1における他側に大きく傾斜した方向D162から太陽電池複合型表示体10を観察した場合であっても、レンズ面31の集光作用によって、入射した単位レンズ30に対向する表示面12を観察することができるようになる。仮に、複数の表示面12が本体部40の第2面40b上に、当該第2面40bに沿って並べられていた場合、図16に点線で示すように、観察する単位レンズ30と隣り合う単位レンズ30に対向する表示面12を観察してしまい、意図された表示機能が発現されなくおそれがある。すなわち、表示面12を太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜させることにより、表示面12が観察される視野角となる第1角度範囲AR1を、言い換えると、表示面12からの光の出射方向の角度範囲である第1角度範囲AR1を、高い自由度で調整することができる。
一方、表示面12に対してなす角度がより小さい方向から本体部40内を進行する光束L164ほど、表示面12に受光され難い。このことから、傾斜した表示面12に遮られずに太陽電池パネル50に向かう光束L164は、図16に示すように、表示面12を有効に観察し得る方向D161、D162とは逆側に傾斜した光束L164となる。つまり、第1軸方向d1において他側に進みながら単位レンズ30へ入射する光、図示する例では、鉛直方向における下方に進みながら単位レンズ30へ入射する光束L164が、2つの表示面12の間となる領域60を通過して太陽電池パネル50に導かれ易くなる。
以上のように、本実施の形態によれば、第1面40a及び第1面40aに対向する第2面40bを有するシート状の本体部40と、一軸方向d1に沿って本体部40の第1面40aに配列され、本体部40とは反対側を向く面にレンズ面31を形成する複数の単位レンズ30と、本体部40の第2面40bに対向して配置された太陽電池パネル50と、本体部40または単位レンズ30のレンズ面31に一軸方向d1に沿って配列された複数の表示面12と、を備え、表示面12は、一軸方向d1及び本体部40の法線方向ndの両方に平行な主切断面において、太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜し、第1角度範囲AR1から太陽電池複合型表示体10に入射する光が表示面12に到達し、第1角度範囲AR1とは異なる第2角度範囲AR2から太陽電池複合型表示体10に入射した光が、単位レンズ30及び隣り合う2つの表示面12の間を通過して太陽電池パネル50に到達する。このような形態によれば、表示面12が太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜しているため、傾斜した表示面12がその正面方向となる方向D161、D162から観察され易くなる。一方、表示面12を視認し易い方向D161、D162とは異なる別の方向から太陽電池複合型表示体10に入射する光束L164は、隣り合う2つの表示面12の間を透過して太陽電池パネル50に導かれる。このように、観察者からの観察方向D161、D162と外光L164の入射方向との相違を利用して、周囲の環境との調和を図ると共に、表示面12による表示及び太陽電池パネル50による発電の両立が効果的に可能となる。その上、太陽電池パネル50が本体部40の第2面40bに対向して配置されているため、太陽電池パネル50の受光面50aが外部に露出していない。このため、太陽電池パネル50をさらに目立たなくさせることができる。
その上、単位レンズ30は、第2角度範囲AR2内から太陽電池複合型表示体10に入射する平行光束L164であって、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した或る方向からレンズ面31に入射する平行光束L164を、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する平行光束L163よりも高い透過率で、透過させる。太陽光L163、L164が全体としてみたときに本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する割合が多くなるように、太陽電池複合型表示体10が設置される場合、全体としてみたときに、レンズ面31に入射する太陽光L164を相対的に高い透過率で太陽電池パネル50に導くことができ、太陽電池パネル50の発電量を高めることができる。
また、単位レンズ30は、本体部40の法線方向ndに沿った方向からレンズ面31に入射する平行光束L163の一部を、全反射させる。このようなレンズ面31の設計とすることで、本体部40の法線方向ndに対して傾斜した方向からレンズ面31に入射する太陽光L164を高い透過率で透過させるようにレンズ面31を最適化することができる。この結果、全体としてみたときに、レンズ面31に入射する太陽光L164を相対的に高い透過率で太陽電池パネル50に導くことができ、太陽電池パネル50の発電量を高めることができる。
また、本実施の形態では、図16に示すように、各表示面12は、第1軸方向d1において一側に位置する一端部12aが、第1軸方向d1において他側に位置する他端部12bよりも、本体部40の法線方向ndにおいて単位レンズ30に近接するように、当該太陽電池パネル50のパネル面に対して傾斜している。表示面12は、当該表示面12の正面方向から観察され易いことから、太陽電池パネル50の法線方向に対して第1軸方向d1における他側に傾斜した方向D161、D162から視認され易い。一方、太陽電池パネル50の法線方向に対して第1軸方向d1における一側に傾斜した方向からの光束L164は、表示面12となす角度が小さい方向から本体部40内を進行するため、表示面12に遮られ難い。この表示面12に遮られ難い、太陽電池パネル50の法線方向に対して第1軸方向d1における一側に傾斜した方向からの光、言い換えると第1軸方向d1において他側に進みながら太陽電池複合型表示体10へ入射する光束L164は、光透過領域60を透過して太陽電池パネル50にて受光され易くなる。
つまり、上記の形態によれば、表示面12からの表示機能が発現されるようになる方向の角度範囲である第1角度範囲AR1と、太陽電池パネル50の発電機能が発揮されるようになる方向の角度範囲である第2角度範囲AR2とが、本体部40の法線方向ndを基準として区分けされやすくなる。言い換えると、第1角度範囲AR1と第2角度範囲AR2とが、重なり合いにくくなる。これにより、第1角度範囲AR1及び第2角度範囲AR2をそれぞれ有効に広角化させることができる。
このように第1角度範囲AR1と第2角度範囲AR2との重なり合いが少なくなれば、さらには第1角度範囲AR1と第2角度範囲AR2とを切り分けることが可能となれば、表示面12からの表示機能および太陽電池パネル50の発電機能が、互いに悪影響を及ぼすことなく、より有効に発揮されるようになる。本実施の形態においては、表示面12に付与された表示対象13を観察している際に、太陽電池パネル50が表示対象13とともに観察されることを抑制することが可能となる。この場合、表示対象13の視認性や表示対象13の意匠性を改善することができる。
とりわけ、本実施の形態による太陽電池複合型表示体10では、太陽電池パネル50に導かれるようになる太陽電池複合型表示体10への入射方向の角度範囲である第2角度範囲AR2を鉛直方向における上側に傾斜した方向、及び、水平方向に設定し、表示面12からの表示機能が発現されるようになる第1角度範囲AR1を鉛直方向における下側に傾斜した方向に設定している。この場合、典型的な利用として想定される表示板としての用途において太陽電池複合型表示体10を目線よりも高い位置に設置する場合に好適である。観察者は、鉛直方向における上側に見上げながら太陽電池複合型表示体10を観察するため、上側を見上げる方向となる第1角度範囲AR1から表示面12に付与された表示対象13を観察することができる。一方、太陽光は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化するが、鉛直方向における下側に傾斜した方向、あるいは、略水平方向に進みながら単位形状要素30に入射する。このため、太陽光は、時間帯や季節に応じて入射方向が変化しても、下側に傾斜した方向となる第2角度範囲AR2からレンズ面31に入射して太陽電池パネル50に向かうことができる。したがって、このような形態によれば、太陽光での発電および表示対象13の表示を効果的に両立させることができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。