JP6550595B2 - 電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性高分子層(固体電解質層)を有する電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
電子機器のデジタル化に伴い、それに使用されるコンデンサにも、小型かつ大容量で、高周波領域における等価直列抵抗(ESR)の小さいものが求められるようになってきている。
小型かつ大容量で、低ESRのコンデンサとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性高分子を陰極材として用いた電解コンデンサが有望である。例えば、誘電体層を形成した陽極箔(陽極体)に、陰極材料として導電性高分子層(固体電解質層)を設けた電解コンデンサが提案されている。
特許文献1には、ESRを低減する観点から、固体電解質層の形成に、導電性高分子とカチオン系界面活性剤とを含む懸濁液を用い、陽極体への浸透性を向上させることが提案されている。
特許文献2には、耐電圧を高める観点から、導電性高分子を含む溶液または分散体に、リン酸またはリン酸エステルを添加することが提案されている。
特開2011−225690号公報 特開2001−155964号公報
界面活性剤やリン酸エステルは、導電性高分子を含む分散体に添加すると、陽極体に吸着し、疎水性基が固体電解質層側に偏在する傾向があるため、分散体の陽極体への浸透性の向上には限界がある。一方、分散体にリン酸を添加すると、導電性高分子が凝集し易くなり、これによっても、分散体の陽極体への浸透性が低下する。その結果、導電性高分子の被膜形成性が低下し、ESRを低減できない。
本発明の一局面は、誘電体層を有する陽極体と、導電性高分子を含む固体電解質層とを備え、
前記固体電解質層は、前記導電性高分子と、アニオンと、カチオンとを含み、
前記アニオンは、リン含有オキソ酸、硫酸、およびカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種の酸に対応するアニオンであり、
前記カチオンは、窒素含有カチオンである、電解コンデンサに関する。
本発明の他の一局面は、誘電体層を有する陽極体に、導電性高分子と、溶媒と、アニオンと、カチオンとを含む分散体を含浸させる工程を含み、
前記アニオンは、リン含有オキソ酸、硫酸、およびカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種の酸に対応するアニオンであり、
前記カチオンは、窒素含有カチオンである、電解コンデンサの製造方法に関する。
本発明のさらに他の一局面は、誘電体層を有する陽極体に、導電性高分子と溶媒とを含む分散体を含浸させる工程と、
前記分散体を含浸させた陽極体に、アニオンおよびカチオンを含む処理液に含浸させる工程と、を含み、
前記アニオンは、リン含有オキソ酸、硫酸、およびカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種の酸に対応するアニオンであり、
前記カチオンは、窒素含有カチオンである、電解コンデンサの製造方法に関する。
本発明の上記局面によれば、導電性高分子の被膜形成性が高く、ESRが低減された電解コンデンサが得られる。
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。 図1の電解コンデンサにおけるコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
以下に、図面を適宜参照しながら、本発明の電解コンデンサおよびその製造方法の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
≪電解コンデンサ≫
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる電解コンデンサの断面模式図である。図2は、同電解コンデンサが含むコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
図1において、電解コンデンサは、誘電体層が形成された陽極体21を備えるコンデンサ素子10と、誘電体層の少なくとも一部の表面を覆う(または少なくとも一部の表面に付着した)導電性高分子(図示せず)とを含む。そして、コンデンサ素子10は、誘電体層の少なくとも一部の表面が導電性高分子に覆われた状態で、外装ケースに収容されている。外装ケースは、内部にコンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ絶縁性の封止部材12と、封止部材12を覆う座板13とを備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12に加締めるようにカール加工されている。
例えば、図2に示すようなコンデンサ素子10は、巻回体と呼ばれる。このコンデンサ素子10は、リードタブ15Aに接続された陽極体21と、リードタブ15Bに接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。コンデンサ素子10の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、コンデンサ素子10の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
陽極体21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。
電解コンデンサにおいて、導電性高分子は、陽極体21に形成された誘電体層の表面の少なくとも一部を覆うように付着しているが、この場合に限らず、陽極体21と陰極体22との間のどの位置に付着していてもよい。例えば、導電性高分子は、陽極体21上に形成された誘電体層の表面の少なくとも一部を被覆し、さらに、陰極体22の表面の少なくとも一部および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。なお、電解コンデンサにおいては、一般に、陽極体、陰極体およびセパレータなどの表面の少なくとも一部を覆う導電性高分子(具体的には、導電性高分子を含む被膜)を、固体電解質層(または導電性高分子層)と称することがある。
電解コンデンサは、さらに電解液を含んでもよい。この場合、電解液は、誘電体層の表面の少なくとも一部が導電性高分子で覆われたコンデンサ素子10とともに、外装ケース(具体的には、有底ケース11)内に収容される。
以下に、本発明の実施形態に係る電解コンデンサの構成について、より詳細に説明する。
コンデンサ素子は、誘電体層が形成された陽極体を備えている。誘電体層の表面に付着した導電性高分子は、事実上の陰極材料として機能する。コンデンサ素子は、必要に応じて、さらに陰極体および/またはセパレータを含んでもよい。
(コンデンサ素子)
(陽極体)
陽極体としては、例えば、表面が粗面化された金属箔が挙げられる。金属箔を構成する金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属、または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
金属箔表面の粗面化は、公知の方法により行うことができる。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、例えば、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば、直流電解法または交流電解法などにより行ってもよい。
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体の表面(具体的には、粗面化された金属箔の表面)に形成される。
誘電体層の形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理は、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬することにより行ってもよい。化成処理では、必要に応じて、金属箔を化成液に浸漬した状態で、電圧を印加してもよい。
通常は、量産性の観点から、大判の弁作用金属などで形成された金属箔に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極体21が準備される。
(陰極体)
陰極体22にも、陽極体と同様、金属箔を用いてもよい。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、金属箔の表面を粗面化してもよい。
また、陰極体22の表面には、化成皮膜が設けられていてもよく、陰極体を構成する金属とは異なる金属(異種金属)や非金属の被膜が設けられていてもよい。異種金属や非金属としては、例えば、チタンのような金属やカーボンのような非金属などを挙げることができる。
(セパレータ)
セパレータ23としては、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド)の繊維を含む不織布などを用いてもよい。
コンデンサ素子10は、公知の方法により作製することができる。例えば、コンデンサ素子10は、陽極体21と陰極体22とを、セパレータ23を介して重ね合わせることにより作製してもよい。陽極体21と陰極体22とを、セパレータ23を介して巻回することにより、図2に示されるような巻回体を形成してもよい。このとき、リードタブ15A,15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A,15Bを巻回体から植立させてもよい。
リードタブ15A,15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A、15Bは、その表面が化成処理されていてもよい。また、リードタブ15A、15Bの封止部材12と接触する部分や、リード線14A、14Bとの接続部分が、樹脂材料で覆われていてもよい。
リードタブ15A,15Bの各々に接続されるリード線14A,14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料などを用いてもよい。
陽極体21、陰極体22およびセパレータ23のうち、巻回体の最外層に位置するもの(図2では、陰極体22)の外側表面の端部は、巻止めテープ24で固定される。なお、陽極体21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極体21の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体などの状態のコンデンサ素子に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
(固体電解質層)
固体電解質層は、導電性高分子と、アニオンと、カチオンとを含む。ここで、アニオンは、リン含有オキソ酸、硫酸、およびカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種の酸に対応するアニオンであり、カチオンは、窒素含有カチオンである。
固体電解質層は、陽極体21において、誘電体層の少なくとも一部の表面に、誘電体層を覆うように形成すればよいが、できるだけ多くの領域を覆うように形成することが望ましい。コンデンサ素子が、陰極体および/またはセパレータを含む場合、固体電解質層は、誘電体層の表面だけでなく、陰極体および/またはセパレータの表面に形成されていてもよい。すなわち、固体電解質層は、セパレータおよび/または陰極体に接触していてもよい。
本発明の実施形態によれば、固体電解質層を形成する際に、上記のようなアニオンおよびカチオンを用いる。これにより、導電性高分子の凝集が抑制され、誘電体層に対する導電性高分子の浸透性が高まり、陽極体の表面の孔や窪み(ピット)の内壁面に沿って形成された誘電体層にまで導電性高分子を浸透させることができる。よって、導電性高分子の被膜形成性を高めることができるため、固体電解質層の導電性を高めることができる。その結果、ESRを低減することができる。また、詳細は定かではないが、固体電解質層が上記のアニオンおよびカチオンを含むことで、固体電解質層と接するセパレータ側の抵抗を抑制する効果も得られ、この効果によってもESRが低減すると考えられる。
(導電性高分子)
導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
導電性高分子は、ドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしては、ポリアニオンを用いることができる。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのポリアニオンが挙げられる。なかでも、ポリスチレンスルホン酸由来のポリアニオンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独モノマーの重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
ポリアニオンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1,000〜1,000,000である。このようなポリアニオンを含む導電性高分子は、溶媒中に均質に分散し易く、誘電体層の表面に均一に付着しやすい。
導電性高分子がドーパントを含む場合、カチオンだけを添加すると、ドーパントの引き抜きが起こり、導電性が低下する場合がある。本実施形態では、カチオンおよびアニオンを固体電解質層に添加することで、ドーパントの引き抜きを抑制することができる。
(アニオン)
アニオンに対応するリン含有オキソ酸としては、例えば、リン酸(オルトリン酸H3PO4)、亜リン酸(H3PO3)、ホスホン酸(H2PHO3)、次亜リン酸(H2PHO2)、およびホスフィン酸(HPH22)からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
アニオンに対応するカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸(C1-6脂肪族モノカルボン酸など);シュウ酸、マロン酸などのポリカルボン酸(C2-6脂肪族ポリカルボン酸など);クエン酸などの脂肪族ヒドロキシ酸などが挙げられる。誘電体層に吸着し難い観点から、カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸(特に、C1-4脂肪族モノカルボン酸、およびC2-4脂肪族ジカルボン酸など)および/または脂肪族ヒドロキシ酸(C1-4脂肪族ヒドロキシ酸など)が好ましい。
上記の酸のうち、リン含有オキソ酸が好ましく、リン酸を含むリン含有オキソ酸がさらに好ましい。
アニオンに対応する酸は、1価の遊離のカチオン性基を生成可能な塩形成部位を1つ以上有していれば、部分エステルであってもよい。このような部分エステルもアニオンに対応する酸に含まれる。
ただし、酸は、遊離の塩形成部位が多い方が好ましく、塩形成部位の全てが遊離であることがより好ましい。このように、遊離の塩形成部位を多く含む酸に対応するアニオンを固体電解質層が含む場合、詳細は定かではないが、導電性高分子が膨潤し易くなり、配列し易くなる作用が得られると考えられる。よって、固体電解質層の体積抵抗が低下して、ESRを低下させる効果がさらに得られ易くなる。また、酸が遊離の塩形成部位を多く含む場合(つまり、エステル基などが導入されていない場合)、誘電体層に対するアニオンの吸着性が弱まり、導電性高分子の被膜形成性の低下が抑制される。これらと同様の観点から、酸(ひいてはアニオン)は、疎水性基(長鎖アルキル基、および/または芳香族炭化水素基など)を有さないことが望ましい。
固体電解質層中のアニオンの含有量は、遊離の酸換算で、導電性高分子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であり、好ましくは1質量部以上である。アニオンの上記含有量は、100質量部以下であることが好ましく、30質量部以下または10質量部以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。アニオンの上記含有量は、0.1〜100質量部、0.1〜30質量部、または1〜10質量部であってもよい。アニオンの含有量がこのような範囲である場合、固体電解質層を形成する際に、導電性高分子の凝集がより抑制し易くなり、誘電体層に対する導電性高分子の浸透性をさらに向上できる。よって、固体電解質層の導電性を高める効果が得られ易く、ESRをさらに低減することができる。また、誘電体層と導電性高分子との界面抵抗が大きくなるのを抑制することもできる。なお、固体電解質層を形成する際に、誘電体層に付与される導電性高分子100質量部に対するアニオンの量も、上記のアニオンの含有量と同様の範囲とすることができる。
(カチオン)
カチオンは、窒素含有塩基から誘導される窒素含有カチオンである。窒素含有塩基としては、アンモニア、およびアミンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
窒素含有カチオンに対応するアミンとしては、脂肪族アミン、脂環族アミン(シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミンなど)、芳香族アミン(アニリン、ジアミノベンゼンなど)、環状アミンなどが挙げられる。アミンは、第1級アミン、第2級アミン、および第3級アミンのいずれであってもよい。アミンは、モノアミンに限らず、ジアミンなどのポリアミンであってもよい。
誘電体層への吸着を抑制する観点からは、脂肪族アミン、および環状アミンが好ましい。脂肪族アミンとしては、例えば、アルキルアミン(メチルアミン、エチルアミンなどのモノC1-6アルキルアミン;ジエチルアミンなどのジC1-6アルキルアミン;トリエチルアミンなどのトリC1-6アルキルアミンなど)、ジアミノアルカン(エチレンジアミンなど)などが挙げられる。環状アミンとしては、例えば、イミダゾール、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジンなどの5〜8員の環状アミンが挙げられる。
これらのアミンは、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基(メトキシ、エトキシなどのC1-6アルコキシ基またはC1-4アルコキシ基など)などの置換基を有してもよい。また、環状アミンは、アルキル基(メチル、エチルなどのC1-4アルキル基など)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシなどのC1-4アルコキシ基など)、および/またはアミノ基などの置換基を有してもよい。
固体電解質層におけるカチオンおよびアニオンの含有形態は特に制限されず、それぞれ、固体電解質層に遊離の塩基または遊離のとして含まれていてもよく、カチオンとアニオンとが塩を形成した状態で含まれていてもよい。カチオン(好ましくは一部のカチオン)は、導電性高分子に含まれるドーパントと塩を形成した状態で含まれていてもよい。固体電解質層においてカチオンが塩を形成する場合、カチオンは、アミン塩および/またはアンモニウム塩の形態で固体電解質層に含まれていてもよい。
カチオンのうち、低コストで、高容量が得られ、ESRを低減する効果がより高い観点からは、固体電解質層が、アンモニアから誘導されるカチオン(アンモニウムカチオン)を含むことが好ましい。中でも、固体電解質層では、リン酸アニオンとアンモニウムカチオンとが塩を形成していることが好ましい。このような塩としては、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムおよびリン酸二水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
固体電解質層は、カチオン1当量に対して、アニオンが、例えば、1当量以上、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは2〜4当量または2.5〜3.5当量となるような割合で、カチオンおよびアニオンを含むことが好ましい。アニオンとカチオンとの当量比がこのような範囲である場合、導電性高分子の凝集をさらに抑制し易く、誘電体層への導電性高分子をよりスムーズに浸透させることができる。
(電解液)
電解コンデンサは、電解液を必ずしも含む必要はないが、電解液を含む場合には、誘電体層の修復機能をさらに向上させることができる。
電解液としては、非水溶媒を用いてもよく、非水溶媒と非水溶媒に溶解したイオン性物質(溶質)とを含む溶液を用いてもよい。なお、非水溶媒とは、水および水を含む液体を除く液体の総称であり、有機溶媒やイオン性液体が含まれる。
非水溶媒としては、高沸点溶媒が好ましい。例えば、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール;ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;グリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン類など)、スルホランなどの環状スルホン類、γ−ブチロラクトン(γBL)などのラクトン類、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、ホルムアルデヒドなどを用いることができる。非水溶媒は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶質としては、アニオンおよびカチオンの塩が使用され、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物である有機塩が好ましい。有機塩としては、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムなどが例示できる。溶質は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
≪電解コンデンサの製造方法≫
以下に、本発明の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
電解コンデンサは、誘電体層を有する陽極体(またはコンデンサ素子10)に、導電性高分子と、溶媒(第1溶媒)と、アニオンと、カチオンとを含む分散体(第1分散体)を含浸させる工程(第1工程)を含む第1の方法で製造することができる。また、電解コンデンサは、誘電体層を有する陽極体(またはコンデンサ素子10)に、導電性高分子と溶媒とを含む分散体(第2分散体)を含浸させる工程(第2工程)と、分散体を含浸させた陽極体(またはコンデンサ素子10)に、アニオンおよびカチオンを含む処理液を含浸させる工程(第3工程)とを含む第2の方法で製造してもよい。
第1工程、または第2工程および第3工程を経ることにより、導電性高分子と、上記のアニオンと、上記のカチオンとを含む固体電解質層を形成することができる。第1工程の後、第2工程と第3工程との間、第3工程の後などの適当な段階で、溶媒成分を除去してもよい。このように、本実施形態において、固体電解質層は、電解重合や化学重合で形成されるものではなく、導電性高分子および溶媒を少なくとも含む分散体を用いて形成されたものである。
(i)第1の方法
(i-1)コンデンサ素子(巻回体)10に第1分散体を含浸させる工程(第1工程)
コンデンサ素子10への第1分散体の含浸は、少なくとも陽極体(特に、少なくとも誘電体層)に第1分散体を付与できる限り特に制限されず、例えば、第1分散体にコンデンサ素子を浸漬させてもよく、コンデンサ素子に第1分散体を注液してもよい。含浸は、大気圧下で行ってもよいが、減圧下、例えば、10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気下で行ってもよい。含浸は、必要に応じて、超音波振動下で行ってもよい。含浸時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒〜5時間、好ましくは1分〜30分である。この工程により、コンデンサ素子10に第1分散体が付与される。
第1分散体では、導電性高分子は、粒子の状態で溶媒(第1溶媒)中に分散している。分散体は、例えば、第1溶媒中で、ドーパントの存在下、導電性高分子の原料(例えば、導電性高分子のモノマーおよび/またはオリゴマーなどの前駆体)を重合させ、ドーパントを含む導電性高分子の粒子を生成させ、アニオンおよびカチオンを添加することにより得ることができる。
第1分散体中に、アニオンおよびカチオンの双方を存在させることで、アニオンまたはカチオンのみを存在させる場合とは異なり、表面張力が低下し、誘電体層に対する濡れ性が向上する。また、導電性高分子の凝集が抑制され、分散体のポットライフを長くすることができる。導電性高分子の凝集を抑制する観点からは、アニオンおよびカチオンは、できるだけ同時に添加することが好ましく、アニオンおよびカチオンの混合物を添加してもよく、アニオンとカチオンとの塩を添加してもよい。アニオンおよび/またはカチオンは、分散体を構成する溶媒に溶解させた溶液の形態で添加することが好ましい。アニオンおよびカチオンは、それぞれ、対応する酸および塩基(もしくはこれらの塩)を添加することで第1分散体中に存在させてもよい。
第1溶媒は、特に限定されず、水でもよく、非水溶媒(有機溶媒、イオン性液体など)でもよい。なかでも、第1溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。極性溶媒は、プロトン性溶媒であっても、非プロトン性溶媒であってもよい。
プロトン性溶媒としては、例えば、一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール;ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;グリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン類など)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノエーテル、ホルムアルデヒドおよび水などが挙げられる。
非プロトン性溶媒としては、例えば、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトンなどのケトン類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類(環状エーテルなど)、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホン類、炭酸プロピレンなどのカーボネート化合物(環状カーボネートなど)などが挙げられる。
なかでも、第1溶媒は、プロトン性溶媒であることが好ましい。特に、第1溶媒が、水を含むことが好ましい。この場合、第1分散体の取扱い性、導電性高分子の分散性が向上する。第1溶媒が多価アルコールを含む場合、導電性高分子が膨潤して配向し易くなり、固体電解質層の導電性をさらに高め易い(つまり、ESRをさらに低下し易い)。よって、第1溶媒が多価アルコールを含む場合も好ましく、少なくとも水および多価アルコールを含む第1溶媒を用いる場合も好ましい。
分散体中に分散している導電性高分子の粒子は、動的光散乱法による粒径測定装置により測定される体積粒度分布におけるメディアン径(以下、単に、動的光散乱法によるメディアン径と称す)が、0.01〜0.5μmであることが好ましい。導電性高分子の粒子径は、重合条件や分散条件などにより調整することができる。
第1分散体における導電性高分子(ドーパントもしくはポリアニオンを含む)の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。このような濃度の第1分散体は、適度な量の導電性高分子を付着させるのに適するとともに、コンデンサ素子10に対して含浸されやすいため、生産性を向上させる上でも有利である。
(i-2)溶媒の少なくとも一部を除去する工程(第1乾燥工程)
第1工程と第1乾燥工程とを経ることにより固体電解質層を形成してもよい。
第1乾燥工程では、第1分散体に含浸させたコンデンサ素子(または陽極体)から、溶媒(第1溶媒)を除去することができる。溶媒は少なくとも一部を除去すればよく、完全に除去してもよい。
溶媒は、加熱下で蒸発させることにより除去してもよく、必要に応じて、減圧下で除去してもよい。
(ii)第2の方法
(ii-1)コンデンサ素子(巻回体)10に第2分散体を含浸させる工程(第2工程)
第2分散体は、導電性高分子と、溶媒(第2溶媒)とを含む。第2分散体は、第2溶媒中、ドーパントの存在下、導電性高分子の原料(例えば、導電性高分子のモノマーおよび/またはオリゴマーなどの前駆体)を重合させ、ドーパントを含む導電性高分子の粒子を生成させることにより得ることができる。
第2溶媒としては、第1分散体について例示した第1溶媒から適宜選択できる。分散体中に分散している導電性高分子のメディアン径、および分散体における導電性高分子の濃度は、第1分散体について記載した範囲から選択できる。コンデンサ素子10への第2分散体の含浸の手順および条件も、第1分散体についての説明を参照できる。
コンデンサ素子10に第2分散体を含浸させた後、そのまま第3工程に供してもよく、溶媒の少なくとも一部を除去し(第2乾燥工程)、次いで第3工程に供してもよい。
(ii-2)第2乾燥工程
第2乾燥工程において、第2溶媒の除去は、上記第1乾燥工程と同様の手順で行うことができる。第2溶媒の除去により、固体電解質層を形成してもよい。導電性高分子の誘電体層への浸透性を高める観点からは、固体電解質層が形成される前に(例えば、第2溶媒を完全に除去せずに)、コンデンサ素子10を第3工程に供することが好ましい。
(ii-3)コンデンサ素子10にアニオンおよびカチオンを含む処理液を含浸させる工程(第3工程)
第3工程では、第2分散体を含浸させたコンデンサ素子10(または第2分散体を含浸させた後、溶媒の少なくとも一部を除去したコンデンサ素子10)に処理液を含浸させる。第2乾燥工程により、固体電解質層が形成されている場合、第3工程では、固体電解質層に処理液を含浸させることになる。
処理液は、アニオンおよびカチオンに加え、溶媒(第3溶媒)を含むことができる。第3溶媒としては、非極性溶媒(例えば、炭化水素、酢酸エチル、ジエチルエーテルなど)などであってもよいが、極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、例えば、第1溶媒について例示したプロトン性溶媒およびプロトン性溶媒が挙げられる。処理液は、第3溶媒を一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。処理液は、第3溶媒として、多価アルコールを含むことが好ましく、多価アルコールと多価アルコール以外の溶媒(プロトン性溶媒など)とを含んでもよい。処理液が多価アルコールを含む場合、導電性高分子が膨潤して配列し易くなるため、また、ESRを低減する上でさらに有利になる。
処理液は、第3溶媒に、アニオンおよびカチオンを添加することにより調製できる。アニオンおよびカチオンとしては、それぞれ対応する酸および塩基(もしくはこれらの塩)を用いてもよい。
処理液中のアニオンおよびカチオンのそれぞれの濃度は、導電性高分子100質量部に対するアニオンの量、およびカチオン1当量に対するアニオンの当量比が、上述の範囲となるように、適宜決定できる。
(ii-4)第3乾燥工程
コンデンサ素子10に処理液を含浸させた後は、コンデンサ素子10に含まれる溶媒成分(第2溶媒および第3溶媒)の少なくとも一部を除去することが好ましい(第3乾燥工程)。溶媒成分の除去は、上記第1乾燥工程と同様の手順で行うことができる。溶媒成分の除去により、この段階で、固体電解質層を形成してもよい。
第1の方法において、第1工程および第1乾燥工程(任意工程)は、必要に応じて2回以上繰り返してもよい。第2の方法において、第2工程、第2乾燥工程(任意工程)、第3工程、および第3乾燥工程(任意工程)からなる群より選択される少なくとも1つの工程を、必要に応じて、2回以上繰り返してもよい。これらの工程から選択される工程を一連の工程として、2回以上繰り返してもよい。
(iii)コンデンサ素子(巻回体)10に電解液を含浸させる工程(第4工程)
第1工程(さらには第1乾燥工程)、または第3工程(さらには第3乾燥工程)の後に、さらにコンデンサ素子10(具体的には、誘電体層を有する陽極体)に電解液を含浸させることができる。第4工程は、必ずしも必要ではないが、電解液を含浸させることで、誘電体層の修復機能をさらに向上させることができる。
コンデンサ素子10への電解液の含浸は、特に制限されず公知の方法で行うことができる。例えば、電解液にコンデンサ素子10を浸漬させてもよく、コンデンサ素子10を収容した容器内に電解液を注液してもよい。コンデンサ素子への電解液の含浸は、必要に応じて、減圧下(例えば、10〜100kPa)で行ってもよい。
(その他)
コンデンサ素子10は、封止してもよい。より具体的には、まず、リード線14A,14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
次に、リード線14A,14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。封止部材12は、絶縁性物質であればよい。絶縁性物質としては弾性体が好ましく、中でも耐熱性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロンゴムなど)、ブチルゴム、イソプレンゴムなどが好ましい。
次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
下記の手順で、図1に示すような、定格電圧25V、定格静電容量330μFの巻回型の電解コンデンサ(直径10mm、長さ10mm)を作製し、評価を行った。
(1)電解コンデンサの製造
(誘電体層を有する陽極体の準備)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、アジピン酸アンモニウム水溶液を用いる化成処理により、誘電体層を形成し、誘電体層を有する陽極体を準備した。
(陰極体の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化し、陰極体を準備した。
(コンデンサ素子(巻回体)の作製)
陽極体および陰極体に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極体と陰極体とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回し、コンデンサ素子を得た。コンデンサ素子から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、作製されたコンデンサ素子に対して、再度化成処理を行い、陽極体の切断された端部に誘電体層を形成した。次に、コンデンサ素子の外側表面の端部を巻止めテープで固定した。
(第1分散体の含浸)
3,4−エチレンジオキシチオフェンと、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸とを、イオン交換水(第1溶媒)に溶かした混合溶液を調製した。得られた混合溶液を撹拌しながら、イオン交換水に溶解させた硫酸第二鉄および過硫酸ナトリウム(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。反応後、得られた反応液を透析して、未反応モノマーおよび過剰な酸化剤を除去し、約5質量%のポリスチレンスルホン酸がドープされたポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)(導電性高分子)を含む分散液を得た。
得られた分散液に、リン酸二水素アンモニウムおよびエチレングリコールを添加して混合することにより、第1分散体を調製した。このとき、導電性高分子100質量部に対するリン酸二水素アンモニウムの質量が3質量部(遊離のリン酸換算で約2.56質量部)となるように混合した。
次いで、得られた第1分散体を、前記コンデンサ素子に5分間含浸させた。コンデンサ素子を150℃で20分間加熱することにより、溶媒成分を除去した。このようにして、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を作製した。
(電解液の含浸)
次いで、コンデンサ素子に、減圧下で電解液を含浸させた。電解液としては、γBL:フタル酸モノ(エチルジメチルアミン)(溶質)=75:25(質量比)で含む溶液を用いた。
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を、図1に示すような外装ケースに収容し、封止して、電解コンデンサを作製した。同様にして、合計300個の電解コンデンサを作製した。
(2)性能評価
(a)静電容量およびESR値
電解コンデンサの初期特性として、静電容量(μF)を測定した。具体的には、電解コンデンサについて4端子測定用のLCRメータを用いて、周波数120Hzにおける初期静電容量(μF)を測定した。
また、電解コンデンサの初期特性として、ESR値(mΩ)を測定した。具体的には、電解コンデンサについて、4端子測定用のLCRメータを用いて、周波数100kHzにおけるESR値(mΩ)を測定した。
初期静電容量およびESR値は、それぞれ、ランダムに選択した120個の電解コンデンサについて測定し、平均値を算出した。
《実施例2》
第1分散体として、導電性高分子100質量部に対するリン酸二水素アンモニウムの量が10質量部である分散体を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサを作製し、性能評価を行った。
《実施例3》
第1分散体として、導電性高分子100質量部に対するリン酸二水素アンモニウムの量が30質量部である分散体を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサを作製し、性能評価を行った。
《実施例4》
第1分散体の調製において、エチレングリコールに代えてグリセリンを用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサを作製し、性能評価を行った。
《実施例5》
(第2分散体の含浸)
実施例1と同様の手順で得られた約5質量%のポリスチレンスルホン酸がドープされたPEDOTを含む分散液を第2分散体として用いた。次いで、第2分散体を、実施例1と同様にして作製したコンデンサ素子に5分間含浸させた。
(処理液の含浸)
第2溶媒としてのエチレングリコールに、リン酸二水素アンモニウム水溶液を添加することで、処理液を調製した。得られた処理液を、第2分散体を含浸させたコンデンサ素子に含浸させた。処理液は、コンデンサ素子に付与された導電性高分子100質量部に対して、リン酸二水素アンモニウムが10質量部となるように付与した。
次いで、処理液を含浸させたコンデンサ素子を150℃30分で乾燥して、コンデンサ素子に固体電解質層を形成した。
固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様に電解液を含浸させ、封止することにより、電解コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様に性能評価を行った。
《実施例6》
リン酸二水素アンモニウム水溶液に代えて、リン酸およびアンモニアを、ポリスチレンスルホン酸がドープされたPEDOT(導電性高分子)を含む分散液に添加した以外は、実施例1と同様にして調製した分散体を第1分散体として用いた。このとき、リン酸およびアンモニアは、コンデンサ素子に付与される導電性高分子100質量部に対して、リン酸およびアンモニアの量が10質量部、リン酸1モルに対してアンモニアが1モルとなるような割合で使用した。
このようにして得られた第1分散体を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサを作製し、性能評価を行った。
《比較例1》
実施例1と同様の手順で、約5質量%のポリスチレンスルホン酸がドープされたPEDOTを含む分散液(分散体)を調製した。次いで、分散体を、実施例1と同様にして作製したコンデンサ素子に5分間含浸させた。コンデンサ素子を150℃30分で乾燥して、コンデンサ素子に固体電解質層を形成した。
固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を用いて、実施例1と同様に電解液を含浸させ、封止することにより、電解コンデンサを作製した。そして、実施例1と同様に性能評価を行った。
《比較例2》
リン酸二水素アンモニウム水溶液に代えて、リン酸を、ポリスチレンスルホン酸がドープされたPEDOTを含む分散液に添加した以外は、実施例1と同様にして調製した分散体を、第1分散体として用いた。このとき、リン酸は、実施例2におけるリン酸二水素アンモニウムと同量のモル量となるような割合で使用した。
このようにして得られた第1分散体を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサを作製し、性能評価を行った。
《比較例3》
リン酸二水素アンモニウム水溶液に代えて、アンモニア水を、ポリスチレンスルホン酸がドープされたポリPEDOTを含む分散液に添加した以外は、実施例1と同様にして調製した分散体を、第1分散体として用いた。このとき、アンモニアは、実施例2におけるリン酸二水素アンモニウムと同量のモル量となるような割合で使用した。
このようにして得られた第1分散体を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサを作製し、性能評価を行った。
実施例および比較例の結果を表1に示す。
Figure 0006550595
表1に示されるように、実施例では、比較例に比べて、静電容量が大きく、ESR値が低くなった。これは、実施例では、導電性高分子の誘電体層への浸透性が高まることで、固体電解質層の導電性が向上したことによるものと考えられる。
本発明は、陰極材料として導電性高分子を用いる電解コンデンサに利用することができる。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ

Claims (19)

  1. 誘電体層を有する陽極体と、固体電解質層とを備え、
    前記固体電解質層は、ポリアニオンを含む導電性高分子と、アニオンと、カチオンとを含み、
    前記アニオンは、リン含有オキソ酸に対応するアニオンであり、
    前記カチオンは、窒素含有カチオンである、電解コンデンサ。
  2. 前記リン含有オキソ酸はリン酸を含む、請求項1に記載の電解コンデンサ。
  3. 前記窒素含有カチオンは、アンモニア、およびアミンからなる群より選択される少なくとも一種の窒素含有塩基から誘導されるカチオンである、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
  4. 前記アニオンと前記カチオンとが塩を形成している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  5. 前記塩は、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムおよびリン酸二水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の電解コンデンサ。
  6. 前記固体電解質層中の前記アニオンの含有量は、遊離の前記酸換算で、前記導電性高分子100質量部に対して、0.1〜100質量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  7. 前記固体電解質層は、前記カチオン1当量に対して、前記アニオンが1当量以上となるような割合で、前記カチオンおよび前記アニオンを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  8. さらに電解液を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  9. 誘電体層を有する陽極体に、導電性高分子と、溶媒と、アニオンと、カチオンとを含む分散体を含浸させる工程を含み、
    前記アニオンは、リン含有オキソ酸に対応するアニオンであり、
    前記カチオンは、窒素含有カチオンである、電解コンデンサの製造方法。
  10. 誘電体層を有する陽極体に、導電性高分子と溶媒とを含む分散体を含浸させる工程と、
    前記分散体を含浸させた陽極体に、アニオンおよびカチオンを含む処理液を含浸させる工程と、を含み、
    前記アニオンは、リン含有オキソ酸に対応するアニオンであり、
    前記カチオンは、窒素含有カチオンである、電解コンデンサの製造方法。
  11. 前記リン含有オキソ酸はリン酸を含む、請求項9または10に記載の電解コンデンサの製造方法。
  12. 前記窒素含有カチオンは、アンモニア、およびアミンからなる群より選択される少なくとも一種の窒素含有塩基から誘導されるカチオンである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  13. 前記アニオンと前記カチオンとが塩を形成している、請求項9〜12のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  14. 前記塩は、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムおよびリン酸二水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項13に記載の電解コンデンサの製造方法。
  15. 前記アニオンの量は、前記導電性高分子100質量部に対して、遊離の前記酸換算で0.1〜100質量部である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  16. 前記溶媒は、多価アルコールを含む、請求項9〜15のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  17. 前記処理液は、さらに多価アルコールを含む、請求項10に記載の電解コンデンサの製造方法。
  18. 前記分散体を含浸させる工程の後、さらに前記陽極体に電解液を含浸させる工程を含む、請求項9に記載の電解コンデンサの製造方法。
  19. 前記処理液を含浸させる工程の後、さらに前記陽極体に電解液を含浸させる工程を含む、請求項10に記載の電解コンデンサの製造方法。
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