JP6550510B1 - ロール状ラッピングネット、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生地材料が家畜や環境に優しいだけでなく、コンパクトで既存のロールベーラ−機への搭載を問題なく行え、しかも、生地の引き出し時や生地の切断時、回転する生地ロールへのブレーキ時にトラブルが生じないロール状ラッピングネットを提供すること。【解決手段】 経編地のヨコ方向に一定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されたロール状ラッピングネットの製造方法において、前記ネット生地の編立て工程において、経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸を使用すると共に、ネット生地の巻取り工程において、ネット生地の鎖編組織の間隔を編立て工程直後の状態に保ちつつ、ネット生地を鎖編組織の間隔の範囲内で幅方向に一定の大きさで振りながらロール芯に巻き取る方法を採用した。【選択図】 図1

Description

本発明は、ロール状ラッピングネットの改良、詳しくは、家畜や環境に優しい生地材料から成り、既存のロールベーラ−機にも問題なく使用できるロール状ラッピングネットに関するものである。
近年、酪農・畜産業界では、少人数で多くの家畜を飼育している業者が多く、作業者の高齢化も進み省力化が求められていることから、飼料ロール(飼料をラッピングネットで包んでロール化したもの)の作製をロールベーラ−機によって行うことが一般的になっている。そのため、飼料ロール用ラッピングネットは、ロールベーラ−機に装着して使用してもトラブルが生じない品質・機能が求められている。
一方、従来においては、上記飼料ロール用のラッピングネットとして、安価で伸縮性や耐水性があり、かつ、強度も高いポリエチレン製またはポリプロピレン製フィルムヤーンを用いた経編地が知られているが(特許文献1参照)、PE/PP製ベールネットは自然分解されず家畜が食べても消化されないため、環境や家畜の健康上のリスクが懸念されている。特に最近では、家畜の価格が高騰しているため、家畜の安全性への意識は高い。
そこで、本件出願人は、以前に綿糸製のラッピングネットを開発したが、フィルムヤーンと綿糸では物性が異なるため、新たな課題が見付かった。ちなみに、綿糸を選択した理由は、綿が軟質繊維で家畜の胃にいるバクテリアが出す酵素で消化できるためである。また他のセルロース繊維である再生繊維(レーヨン等)は化学処理等を行うため安全性に問題があり、また麻等の天然繊維は硬質繊維であるため消化性が悪い。
また上記新たに見付かった課題としては、生地の切断時の問題があり、具体的には、従来のPE/PP製ラッピングネットは、飼料ロール幅よりも生地幅が広いものを使用して、飼料ロールの両端に生地をオーバーハングさせる(被せて引っ掛ける)ことにより伸び止めを行い生地の切断を行っていたが、綿糸はフィルムヤーンと異なり伸度が小さいため、生地をオーバーハングさせるとはみ出した部分が切れてトラブルの原因となった。
そのため、綿糸製ラッピングネットでは、飼料ロールにオーバーハングさせない状態で生地を巻いて、巻いた生地全体に均一な張力を掛けて切断する方法を採用したが、従来の単純に生地を左右に振って紙管に巻いた生地ロール(例えば、特許文献2参照)は、巻き取り時に各経糸(鎖編組織)の間隔が不均等になって各経糸のループの締まりにバラツキが生じていたため、各経糸に均等な張力を掛けて生地を引き出すことができなかった。
また上記従来の生地ロールはスムーズな切断が難しいだけでなく、据え置き型(詳しくは後述する)のロールベーラ−機に装着して使用した際に、バケット内で生地ロールが暴れてブレーキが効き難くなる問題や引き出した生地が幅方向に縮む問題もあった。更に据え置き型のロールベーラ−機では、表面形状が不均一な生地ロールがバケット底面に載置されることで生地ロールが傾き、引き出し時に生地端が絡むトラブルも起き易かった。
一方、上記ロールベーラ−機に搭載するラッピングネットに関しては、作業効率の観点から最低でも2000m以上の生地が必要となるものの、従来の生地ロールは、厚みが大きい部分が形成されることで長尺の生地をコンパクトにロール化することができなかったため、必要な長さの生地をロール化するとロール径が大きくなり過ぎて既存のロールベーラ−機のバケット等に装着することができないという問題もあった。
特開2014−133965号公報 特許第5892637号公報
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、生地材料が家畜や環境に優しいだけでなく、コンパクトで既存のロールベーラ−機への搭載を問題なく行え、しかも、生地の引き出し時や生地の切断時、回転する生地ロールへのブレーキ時にトラブルが生じないロール状ラッピングネットを提供することにある。
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
即ち、本発明は、経編地のヨコ方向に一定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されたロール状ラッピングネットの製造方法において、前記ネット生地の編立て工程において、経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸を使用すると共に、ネット生地の巻取り工程において、ネット生地の鎖編組織の間隔を編立て工程直後の状態に保ちつつ、ネット生地を鎖編組織の間隔の範囲内(好ましくは鎖編組織の間隔と同じ幅)で幅方向に一定の大きさで振りながらロール芯に巻き取る方法を採用した点に特徴がある。
また本発明では、上記ネット生地の巻取り工程において、ネット生地を幅方向に振る速度を巻取り量の増加に応じて段階的または連続的に減速させるのが好ましい。
また本発明においては、上記ネット生地の巻取り工程において、ネット生地を幅方向に振る速度を、ロールの幅方向に並列させる同層上の同一の鎖編組織間に一定の隙間が空くように、かつ、前記鎖編組織間の隙間の大きさが鎖編組織一本分の幅よりも小さくなるように設定するのが好ましい。
また更に本発明では、上記ネット生地の巻取り工程において、ロール芯に巻き取られたネット生地に対してプレスを掛けることによりネット生地を圧縮して糸間の隙間を埋めるのが好ましい。
そしてまた、本発明では、上記ネット生地の編立て工程において、鎖編組織の綿糸を、撥水性を有する食品添加物または食用ワックスに擦らせながら送り出すことにより、ネット生地に撥水性を付与することができる。また食用ワックスを使用することでネット生地の滑りを良くして生地離れも改善できる。
また本発明では、上記ネット生地の巻取り工程において、巻き取られたネット生地に対し食品添加物として使用される着色剤を幅方向に帯状に付着させることにより、使用時にネット生地の残量等の確認を目視で行うことができる。
一方、本発明では、経編地のヨコ方向に所定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されたロール状ラッピングネットにおいて、前記ネット生地の経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸を使用すると共に、巻き取られた同一の鎖編組織が隣り合う別の鎖編組織と重なり合わない状態でロールの幅方向及び径方向に並列させ、前記一定間隔で並んだネット生地の各鎖編組織を均等に張力を掛けた状態で平行に引き出し可能とすることで従来の問題を解決できる。
また本発明では、上記ロール上ラッピングネットにおいて、ネット生地の鎖編組織に撥水性を有する食品添加物または食用ワックスを付着させることで、ネット生地に撥水性を付与することができ、生地離れも改善できる。
また本発明では、上記巻き取られたネット生地に対し、ネット生地の幅方向に食品添加物として使用される着色剤を帯状に付着させることで、使用時にネット生地の残量等を目視で確認することができる。
本発明では、綿糸製のネット生地を、異なる鎖編組織同士が重なり合わないようにロール芯に巻き取り、更に各鎖編組織がロールの幅方向及び径方向に並列するようにロール状ラッピングネットを構成したことにより、生地の重なり具合を均一化して生地ロール表面を平滑化することができるため、長尺な生地でも既存のロールベーラ−機に搭載できるコンパクトなサイズにロール化することができる。
しかも、本発明のロール状ラッピングネットは、ネット生地の鎖編組織の間隔が一定に保たれた状態で、各鎖編組織のループの張力(輪の閉じ具合)が均一となるように巻かれているため、ネット生地の引き出し時に各鎖編組織に張力を均等に掛けた状態で平行に引き出すことができる。またロールベーラ−機に装着して使用した場合でも、各鎖編組織に均等な張力を掛けて引っ張ることができるため、生地の切断もスムーズに行える。また据え置き型のロールベーラ−機に装着して使用する場合でも生地ロールがバケット内で暴れ難いため、回転する生地ロールへのブレーキが効き易くなる。
加えて、バケット内での生地ロールの暴れが抑制されることで、引き出し時に生地が幅方向に縮むトラブルや生地端が絡むトラブルも防止できる。また本発明のロール状ラッピングネットは、生地の経糸や挿入糸に自然分解される天然素材で、かつ、消化性にも優れた綿糸を使用しているため、環境上の問題や家畜の健康上の問題が生じない。
また本発明では、上記生地ロールを製造する際に、ネット生地の鎖編組織の間隔を編立て工程直後の状態に保ちながら、ネット生地を鎖編組織の間隔の範囲内で幅方向に一定の大きさで振ってロール芯に巻き取ることで、高品質な生地ロールを効率的に製造することができる。したがって、本発明により、酪農・畜産業者にとって使い易いロール状ラッピングネットを低コストで提供できることから、実用的利用価値は非常に高い。
本発明の第一実施形態におけるロール状ラッピングネットを表わす全体斜視図である。 本発明の第一実施形態におけるネット生地の編み組織を説明するための拡大図である。 本発明の第一実施形態におけるロール状ラッピングネットの巻き取られた鎖編組織の断面状態を表わす概略イメージ図である。 本発明の第一実施形態におけるロール状ラッピングネットの使用状態を表わす状態説明図である。 本発明の第一実施形態におけるロール状ラッピングネットの製造方法を表わす説明図である。 本発明の変更例におけるロール状ラッピングネットの製造方法を表わす説明図である。 本発明の第一実施形態におけるロール状ラッピングネットの製造方法を表わす説明図である。
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を図1〜図4に基づいて以下に説明する。なお図中、符号1で指示するものは、経糸であり、符号Cで指示するものは、鎖編組織である。また符号2で指示するものは、挿入糸であり、符号Nで指示するものは、ネット生地である。また符号Rで指示するものは、ロール状ラッピングネットであり、符号Pで指示するものは、ロール芯である。
「ロール状ラッピングネットの構成」
[1]ロール状ラッピングネットの基本構成について
本実施形態では、図1及び図2に示すように、綿糸から成る経糸1・1…によって経編地のヨコ方向に一定間隔で並んだ鎖編組織C1・C2…を形成すると共に、同じく綿糸から成る挿入糸2を隣り合う鎖編組織C1・C2…同士を繋ぐように斜め方向に架け渡してネット生地Nを構成している。そして、このネット生地Nをロール芯P(本実施形態では、紙管)にテンションをかけながら巻き取ってロール状ラッピングネットRを形成している。
また上記ロール状ラッピングネットRの各鎖編組織C1・C2…は、図3(a)(b)に示すように、巻き取られた同一の鎖編組織C・C…が隣り合う別の鎖編組織C’・C’…と重なり合わない状態でロールの幅方向及び径方向に並列した状態となっている。また巻き取られた各鎖編組織C1・C2…のループの張力が均一で、ネット生地Nの引き出し時に一定間隔で並んだ各鎖編組織C1・C2…に張力を均等に掛けた状態で平行に引き出し可能となっている。
なお本明細書中では、図3(a)(b)に示すように、ロールの径方向において同じ位置(誤差による多少のズレは同じ位置とみなす)に配置される鎖編組織群を「同層上の鎖編組織」とし、ロールの幅方向において同じ位置(誤差による多少のズレは同じ位置とみなす)に配置される鎖編組織群を「同列上の鎖編組織」とする。
上記のようにロール状ラッピングネットRを構成したことにより、飼料等のラッピングネットとして使用した際に、綿糸製のネット生地Nを家畜が食べても安全であるだけでなく、ネット生地Nの異なる鎖編組織C1・C2…が上下に重なり合ってロールの厚みが部分的に大きくなることもないため、最大径が同じロールでもネット生地Nの巻取り長をより大きくすることができる。
しかも、図4(a)に示すように、据え置きタイプのロールベーラ−機(バケットB内や複数のローラ上にロールを載せ、ブレーキローラLを押し当ててロールの回転をさせるもの)にロール状ラッピングネットRを使用する場合でも、ロールの厚み(表面形状)が従来よりも均一になるため、引き出し時にロールがバケットB内で左右どちらかに大きく傾いてネット生地Nの端側が絡む問題も生じない。
また上記据え置きタイプのロールベーラ−機に使用する場合には、各鎖編組織C1・C2…に均等な張力を掛けながらネット生地Nを引き出すことができるため、ロールがバケットB内で暴れる(激しく動く)こともなく、ロールの回転を止める際のブレーキローラLによる抑え付けも支障なく行うことができる。
また図4(b)に示すような、軸受けタイプのロールベーラ−機(ロール芯Pを軸受けGに装着してブレーキプーリQでロールの回転を停止させるもの)にロール状ラッピングネットRを使用する場合でも、長尺なネット生地Nをコンパクトにロール化することができるため、ロールベーラ−機に載せるロールの交換回数を減らして効率的に飼料ロールの作製を行うことができる。またネット生地Nの切断時に各鎖編組織C1・C2…に対し均一に張力を掛けることができるため、ネット生地Nの切断も良好に行える。
[2]経糸及び鎖編組織について
[2-1]経糸の材料及び鎖編組織の長さ
次に上記ロール状ラッピングネットRの各構成要素について説明する。まず上記経糸1については、本実施形態では木綿100%の綿糸を使用しているが、木綿を主原料とする糸材であれば消化性の良い植物繊維等を混ぜた混紡糸を使用することもできる。また本実施形態では、複数本の綿糸を束ねて経糸1として使用しているが、使用する綿糸の太さや本数は求められる強度等に応じて適宜変更することができる。また各鎖編組織C1・C2…の長さは、均一になっていることが望ましいが多少の誤差があっても問題ない。
[2-2]隣り合う鎖編組織の間隔
また上記経糸1から形成される鎖編組織Cに関しては、隣り合う鎖編組織C・C同士の間隔が狭すぎると同層上に配置できる鎖編組織C・C…の本数が少なくなってロールをコンパクト化することが難しくなり、また広くし過ぎると網目が粗くなって飼料ロールの形成が難しくなるため、鎖編組織C・C同士の間隔が10〜30mmの範囲となるように編み立てを行うのが好ましい。なお同層上に配置される同一の鎖編組織C・C…の本数は5本以上(好ましくは10本以上)となるようにするのが好ましく、鎖編組織Cの一本分の幅はテンションを掛けた状態で1.0〜3.0mmの大きさとなるようにするのが好ましい。
[3]挿入糸について
[3-1]挿入糸の材料
また上記挿入糸2に関しては、本実施形態では木綿100%の綿糸を使用しているが、木綿を主原料とする糸材であれば消化性の良い植物繊維等を混ぜた混紡糸を使用することもできる。また本実施形態では、挿入糸2に経糸1以上の強度を求めていないため、挿入糸2に使用する綿糸の本数を1本としているが、使用する綿糸の太さや本数はロールベーラ−機の幅出し機に耐えられる強度の範囲内で適宜変更できる。また挿入糸2の太さに関しては、巻取り時に嵩張らないようにできるだけ細くするのが好ましい。
[3-2]挿入糸の長さ
また本実施形態では、図2に示すように、編立て直後のネット生地Nにおいて挿入糸2が緩んだ状態となるように、鎖編組織C・C…との交点J・J間の直線距離を縮めない程度の糸張力で挿入糸2を交編している。これによりネット生地Nの巻取り時において、長さ方向にテンションが掛かったネット生地Nが幅方向に縮む現象を抑えられるため、鎖編組織C・C…の間隔を編立て直後の状態に保ったまま、ネット生地Nをロール芯Pに巻き取ることができる。
[3-3]挿入糸の方向
また上記挿入糸2を架け渡す方向に関しては、本実施形態では隣り合う鎖編組織C・Cに対してジグザグ状に斜め方向に架け渡しているが、斜め方向だけでなくヨコ方向に架け渡すこともできる。また隣り合う鎖編組織C・Cに対し複数の挿入糸2を交差するように架け渡すこともできるが、長さ方向にテンションが掛かったネット生地Nが幅方向に縮み易くなるため、本実施形態のように一本の挿入糸2を架け渡す構成が好ましい。
[4]巻き取られた鎖編組織の位置関係について
[4-1]同層上の鎖編組織
また上記ロール状ラッピングネットRにおける同層上の鎖編組織C・C…に関しては、図3(a)(b)に示すように、同一の鎖編組織C・C間の隙間の大きさが均一となっているのが望ましいが、鎖編組織C・C間の隙間の大きさが鎖編組織一本分の幅よりも小さくなっていれば、鎖編組織C・C…の位置に多少の誤差があっても問題はない。また鎖編組織C・C間の隙間の大きさは異なる層で多少違っていても問題はない。
また同層上の鎖編組織C・C…における異なる鎖編組織C・C’同士の隙間に関しては、本実施形態では、図3(a)(b)に示すように鎖編組織C・C’間の隙間の大きさを鎖編組織一本分の幅よりも小さくすることで、同層上に配置される鎖編組織C・C…の本数を最大化して、ロール径を変えずにネット生地Nをより多く巻き取れるようにしている。また同層上の鎖編組織C・C…における異なる鎖編組織C・C’間の隙間については、互いに重なり合わなければ同一の鎖編組織C・C間の隙間より大きくなっていても問題はない。
[4-2]同列上の鎖編組織
また同列上の鎖編組織C・C…に関しては、図3(a)(b)に示すように、上層側の鎖編組織Cが下層側の鎖編組織Cの上に配置されているのが望ましいが、下層側の鎖編組織C・C間の隙間に上層側の鎖編組織Cの一部が落ち込んでいても問題はない。特にネット生地Nの巻取り時にロールにプレスを掛ける場合、上層側の鎖編組織Cの一部が下層側の鎖編組織C・C間に落ち込み易くなる。
[5]撥水性を有する食品添加物または食用ワックスについて
また本実施形態では、上記ネット生地Nの鎖編組織Cに撥水性を有する食品添加物を付着させて、綿糸から成るネット生地Nに撥水性を付与している。これにより、水分のある土壌にネット生地Nを巻いた飼料ロールが置かれていた場合でも、セルロースを分解するバクテリアやカビが付着し難くなるため、バクテリア等によってネット生地Nの糸の強度が低下して飼料ロールが崩れる問題を抑制できる。もちろん、経糸1と挿入糸2の両方に撥水性を有する食品添加物を付着させることもできる。
なお上記撥水性を有する食品添加物としては、家畜が食べて有害でないものであればよく、例えば、木蝋やサトウキビ蝋、パーム蝋などの植物系蝋、或いは密蝋や鯨蝋などの動物系蝋などを使用することができる。一方、有害なものとしてはモンタンワックス等の鉱物系ワックスなどが挙げられる。また食用ワックスや食用油をすれば、ネット生地Nの滑りが良くなる(摩擦抵抗を軽減できる)ため、生地ロールからネット生地Nを引き出す際の生地離れが良くなる。
また上記のようにネット生地Nの鎖編組織Cに撥水性を有する食品添加物を付着させる場合には、撥水性を有する食品添加物に対して防カビ用の酵母や菌を混ぜて使用することもできる。その場合には、撥水性を有する食品添加物として低融点のワックスを使用することで、酵母や菌を熱で殺すことなくネット生地Nに付着させることができる。また撥水性を有する食品添加物に混ぜる機能性材料として、防カビ剤以外の材料(例えば、PH調整剤など)を使用することもできる。
ちなみに上記防カビ剤やPH調整剤の粉末等を液体に溶かして、その液体中に綿糸を浸漬して、或いはその液体を綿糸に噴霧して付着させる方法も考えられるが、それらの方法では、染色機や噴霧機、乾燥機などを使用する必要があるため、製造工程が複雑になって製造効率や製造コストが高く付き易い。また乾燥の温度条件によっては防カビ用の酵母や菌が死滅するリスクもある。
[6]着色剤について
また本実施形態では、上記ネット生地Nに対し、食品添加物として使用される着色剤をロール芯Pに巻き取ったネット生地Nに対して幅方向に帯状に付着させている。これにより、飼料ロールの形成時にネット生地Nに付着した着色剤が目印となって残量等を目視で確認することができる。なお着色剤としては、家畜が食べて有害でないものであればよく、例えば、食用タール系色素やベニバナ色素、クチナシ色素、カラメル色素等を使用することができる。
「ロール状ラッピングネットの製造方法」
[1]編立て工程について
次に上記ロール状ラッピングネットの製造方法について説明する。なお図5〜図7に関しては、ネット生地の移動を分かり易く説明するために挿入糸を省略している。まずネット生地の編立て工程では、経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸を使用して、経糸から鎖編組織を形成すると共に、これらの鎖編組織を繋ぐように挿入糸を斜め方向(またはヨコ方向)に架け渡してネット生地の編み立てを行う。その際、鎖編組織を形成する経糸を、撥水性を有する食品添加物に擦らせながら送り出すことにより、鎖編組織に撥水性を有する食品添加物を付着させることができる。
[2]巻取り工程について
そして、上記ネット生地の編み立てを行った後は、連続してネット生地の巻取り工程に入る。ネット生地の巻取り工程では、図5(a)(b)(c)に示すように、ネット生地の鎖編組織の間隔を編立て工程直後の状態に保ちつつ、ネット生地を鎖編組織の間隔の範囲内でロールの幅方向に一定の大きさで振りながらロール芯に巻き取る。その際、ロール芯に巻き取られたネット生地に対してプレスを掛けることにより、ネット生地を圧縮して糸間の隙間を埋めることでロール状ラッピングネットをコンパクト化する。
[3]ネット生地を幅方向に振る方法について
次に上記各工程の具体的な方法について説明する。まず上記巻取り工程において、鎖編組織間の間隔を保持してネット生地をロールの幅方向に振る方法については、本実施形態では、独自開発の方式を採用している。具体的には、ガイドローラに螺旋状に切られた溝に沿ってネット生地の鎖編組織を左右に往復移動させることにより、鎖編組織間の間隔を保持した状態でネット生地を左右に振ることができる。なお凹凸を備えたガイドローラや摩擦抵抗の大きいガイドローラを左右に振ってネット生地を移動させることもできる。
[4]ネット生地を左右に振る速度について
また上記ネット生地をロールの幅方向に振る速度については、本実施形態では、ロールの幅方向に並列させる同層上の鎖編組織間に一定の隙間が空くように、かつ、同層上の同一の鎖編組織間の隙間の大きさが鎖編組織一本分の幅よりも小さくなるように設定している。このネット生地の移動速度は、鎖編組織の間隔、鎖編組織の幅、同層上の同一の鎖編組織の巻数、ロールの直径と外周の長さ、及びネット生地の巻取り速度等から算出することができる。
また本実施形態においては、上記ネット生地をロールの幅方向に振る速度を、図5(a)(b)(c)に示すように、同一の鎖編組織がロールの幅方向(層方向)に鎖編組織一本分の幅よりも小さい隙間を空けて順に並ぶように設定している。これにより図3(a)に示すように、鎖編組織が(1)〜(25)の順に並ぶようにネット生地を巻き取ることができる。
一方、上記ネット生地をロールの幅方向に振る速度を、鎖編組織一本分の幅よりも大きい隙間を空けて並ぶように設定することもでき、その場合には、図6(a)(b)(c)に示すように、ネット生地を移動させる往路時に鎖編組織をロールの幅方向(層方向)に約一本分の隙間が空くように巻き取ると共に、復路時に往路時に形成した隙間に鎖編組織が収まるように巻き取る方法を採用できる。これにより図3(b)に示すように、鎖編組織が(1)〜(25)の順に並ぶようにネット生地を巻き取ることができる。
また本実施形態では、図7(a)(b)(c)に示すようにロール芯に対するネット生地の巻取り量が増加するにしたがい段階的にネット生地の移動速度を減速させて、巻き取られた同一の鎖編組織の隙間の調節を行っているが、ネット生地の移動速度を巻取り量の増加に応じて連続的に調整することもできる。なおネット生地の巻取り量が増加すると、一巻きの長さが長くなるため、同じ速度でネット生地を移動させていると鎖編組織の隙間が徐々に大きくなってしまう。
[5]巻き取ったネット生地をプレスする方法について
また上記ネット生地の巻取り工程時に、ロール芯に巻き取られたネット生地にプレスを掛ける方法としては、本実施形態では、軸受けに固定されたロールに対してプレスローラを上側から押し付ける方法を採用しているが、その他の方法を採用することもでき、例えば、上下にスライド可動な軸受けにロールを固定して、ロール芯内に棒状の錘を差し込んで下側に配置された載置ローラにロールを押し付ける方法を採用することもできる。
[6]撥水性を有する食品添加物を付着させる方法について
また上記ネット生地の編立て工程時に、撥水性を有する食品添加物を付着させる方法については、本実施形態では、撥水性を有する食品添加物(本実施形態では、動物性蝋)をドーナツ状に成形して、このドーナツの中空部内を経糸が通るようにして経糸が撥水性を有する食品添加物に触れるようにしているが、固体状の蝋を下側または上側から押し付ける等の方法や、流体状の蝋や油をスポンジ等に含浸させて接触させる方法、ガイドローラの外周を蝋で被覆して接触させる方法などを採用することもできる。
[7]着色剤を付着させる方法について
また本実施形態では、上記巻き取られたネット生地に対し、食品添加物として使用される着色剤を幅方向に帯状に付着させており、具体的には、揮発性を有する液体(アルコール等)に溶かした着色剤を、長方形型の窓部を備えた板材を通して噴霧することによってネット生地に帯状に付着させている。
「効果の実証試験」
次に本発明における効果の実証試験について説明する。本試験では、ネット生地の巻取り速度、鎖編組織の間隔、鎖編組織の幅、同層上の同一の鎖編組織の巻数、ロールの直径と外周の長さからロールの幅方向に振るネット生地の移動速度を算出して、実際に同層上の鎖編組織間に一定の隙間が空くように巻き取ることが可能か検証した。
「実施例1」
本実施例では、巻取り速度を600cm/min、鎖編組織の間隔を23mm、鎖編組織の幅を1.8〜2.0mm、同層上の同一の鎖編組織の巻数を11巻き、ロールの直径を16cm、ロールの外周の長さを約50cmとし、ネット生地の移動速度を下記式により0.418mm/secと算出した。そしてネット生地の巻き取りを行った結果、実際に同層上の鎖編組織間に、鎖編組織一本分の幅よりも小さい隙間が空くように巻き取れることが確認できた。
「実施例2」
本実施例では、巻取り速度を600cm/min、鎖編組織の間隔を23mm、鎖編組織の幅を1.8〜2.0mm、同層上の同一の鎖編組織の巻数を11巻き、ロールの直径を19cm、ロールの外周の長さを約60cmとし、ネット生地の移動速度を下記式により0.348mm/secと算出した。そしてネット生地の巻き取りを行った結果、実際に同層上の鎖編組織間に、鎖編組織一本分の幅よりも小さい隙間が空くように巻き取れることが確認できた。
1 経糸
2 挿入糸
R ロール状ラッピングネット
N ネット生地
C 鎖編組織
P ロール芯
J 交点
B バケット
L ブレーキローラ
G 軸受
Q ブレーキプーリ

Claims (9)

  1. 経編地のヨコ方向に一定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されたロール状ラッピングネットの製造方法であって、
    前記ネット生地の編立て工程において、経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸を使用すると共に、ネット生地の巻取り工程において、ネット生地を鎖編組織の間隔の範囲内で幅方向に一定の大きさで振りながらロール芯に巻き取ると共に、鎖編組織間の間隔を保持した状態でネット生地を幅方向に振る方法として、螺旋状の溝を備えたガイドローラを使用して、或いは凹凸を備えたガイドローラを左右に振ってネット生地を移動させることを特徴とするロール状ラッピングネットの製造方法。
  2. ネット生地の巻取り工程において、ネット生地を幅方向に振る速度を巻取り量の増加に応じて段階的または連続的に減速させることを特徴とする請求項1記載のロール状ラッピングネットの製造方法。
  3. ネット生地の巻取り工程において、ネット生地を幅方向に振る速度を、ロールの幅方向に並列させる同層上の同一の鎖編組織間に一定の隙間が空くように、かつ、前記鎖編組織間の隙間の大きさが鎖編組織一本分の幅よりも小さくなるように設定することを特徴とする請求項1または2に記載のロール状ラッピングネットの製造方法。
  4. ネット生地の巻取り工程において、ロール芯に巻き取られたネット生地に対してプレスを掛けることによりネット生地を圧縮して糸間の隙間を埋めることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のロール状ラッピングネットの製造方法。
  5. ネット生地の編立て工程において、鎖編組織の綿糸を、撥水性を有する食品添加物または食用ワックスに擦らせながら送り出すことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のロール状ラッピングネットの製造方法。
  6. ネット生地の巻取り工程において、巻き取られたネット生地に対し食品添加物として使用される着色剤を幅方向に帯状に付着させることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のロール状ラッピングネットの製造方法。
  7. 請求項1記載のロール状ラッピングネットの製造方法によって製造されたロール状ラッピングネットであって、
    経編地のヨコ方向に一定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されると共に、
    巻き取られた同一の鎖編組織が隣り合う別の鎖編組織と重なり合わない状態でロールの幅方向及び径方向に並列して、前記一定間隔で並んだネット生地の各鎖編組織が均等に張力を掛けた状態で平行に引き出し可能となっており、
    更に前記巻き取られた鎖編組織の一本分の幅は、テンションが掛かった状態で1.0mm〜3.0mmの大きさとなっており、かつ、同層上の鎖編組織において同一または異なる鎖編組織間の隙間の大きさが前記鎖編組織一本分の幅よりも小さくなっていることを特徴とするロール状ラッピングネット。
  8. 経編地のヨコ方向に所定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されたロール状ラッピングネットにおいて、
    前記ネット生地の経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸が使用されると共に、巻き取られた同一の鎖編組織が隣り合う別の鎖編組織と重なり合わない状態でロールの幅方向及び径方向に並列しており、更に前記ネット生地の鎖編組織には、撥水性を有する食品添加物または食用ワックスが付着していることを特徴とするロール状ラッピングネット。
  9. 経編地のヨコ方向に所定間隔で並んだ鎖編組織を構成する経糸と、隣り合う鎖編組織同士を繋ぐように斜め方向またはヨコ方向に架け渡された挿入糸とから成るネット生地をロール芯に巻き取って形成されたロール状ラッピングネットにおいて、
    前記ネット生地の経糸と挿入糸にそれぞれ綿糸が使用されると共に、巻き取られた同一の鎖編組織が隣り合う別の鎖編組織と重なり合わない状態でロールの幅方向及び径方向に並列しており、更に前記巻き取られたネット生地には、ネット生地の幅方向に食品添加物として使用される着色剤が帯状に付着していることを特徴とするロール状ラッピングネット。
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