JP6546105B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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すなわち、高圧ポンプ内の燃料温度が燃料の沸点以上に上昇すると、高圧ポンプ内の燃料がベーパ化して、加圧動作を行っても内部のベーパが圧縮されるだけで液体の燃料に圧力を加えられない、いわゆるベーパロックの状態となる。そこで、従来、高圧ポンプ内の燃料温度が閾値以上となったときには、フィードポンプから高圧ポンプに供給される燃料の圧力であるフィード圧を増大させるフィード圧制御を行うことでベーパロックの発生を抑える装置が提案されている(特許文献3など)。そうしたフィード圧制御の実行に際して燃料温度の推定値を算出することが考えられるが、燃料温度の推定精度が低いと、実際の燃料温度が閾値に達していないにもかかわらず、フィード圧が増大されてしまい、フィードポンプの消費電力の不要な増加を、ひいては発電負荷の増大による内燃機関の燃費の不要な悪化を招くおそれがある。また、燃料温度の推定精度が低いと、実際の燃料温度が既に閾値に達しているにもかかわらず、フィード圧の増大が行われず、その結果、ベーパロックの発生を抑えることができなくなるおそれもある。
<内燃機関の燃料系の構成>
図1に示すように、本実施形態の制御装置が適用される車載用の内燃機関1の燃料系は、燃料タンク10内に設置された電動式のフィードポンプ12や、内燃機関1のシリンダヘッドカバーに設置された高圧ポンプ18などを備えている。
電子制御ユニット33は、低圧燃料噴射弁19及び高圧燃料噴射弁31による燃料の噴き分けを実施して噴射態様を変化させる。例えば、低回転低負荷領域では低圧燃料噴射弁19によるポート噴射のみを行い、中負荷中回転領域では低圧燃料噴射弁19及び高圧燃料噴射弁31の双方を用いたポート噴射及び筒内噴射を行う。そして、高負荷高回転領域では高圧燃料噴射弁31による筒内噴射のみを行う。こうした燃料の噴き分けは、機関運転状態に基づいて設定される燃料噴射量Qのうちで低圧燃料噴射弁19から噴射させる燃料量の割合を示すポート噴射割合Rpを種々変更することにより実行される。
上述したような噴き分けなどにより、高圧燃料噴射弁31による燃料噴射が停止されて、高圧ポンプ18の加圧動作の頻度が低減されると、高圧ポンプ18の燃料はほとんど入れ替わらなくなる。高圧ポンプ18は、内燃機関1の運転中に高温となるカム室内に設置されているため、燃料の入れ替わりがないと、高圧ポンプ18内の燃料が高温化してベーパが発生することがある。
電子制御ユニット33のフィード圧制御部33Bは、高圧ポンプ18内の燃料温度(以下、燃温という)Tfが高いときほどフィードポンプ12のフィード圧が高くなるようにフィードポンプ12の作動を制御する。
電子制御ユニット33の上記燃温算出部33Aは、上記フィード圧制御を行うために上記燃温Tfを所定周期毎(例えば数ms毎)に算出して推定する。ここで、燃温Tfの推定精度が低い場合には、以下のような不都合が生じるおそれがある。
また、高圧ポンプ18に流入した燃料によって高圧ポンプ18は冷却されるため、高圧ポンプ18の温度が低下する。こうした高圧ポンプ18内に流入する燃料の熱量と高圧ポンプ18内から流出した燃料の熱量との差を熱量差Qf[J/s]とする。
そして、高圧ポンプ18内に存在する燃料の温度は高圧ポンプ18の温度とほぼ等しくなることから、高圧ポンプ18での熱授受は、上記の各熱伝達量、熱量差、発熱量、及び燃温Tf等を使った次式(1)に示すモデル式で表すことができる。
Qo+Qa+Qf+Qhp=Mhp・Chp・(Tf−Tfold) …(1)
Mhp:高圧ポンプの質量[g]
Chp:高圧ポンプの比熱[J/g・K]
Tf:現在の高圧ポンプ内の燃温[K]
Tfold:前回推定された高圧ポンプ内の燃温[K]
潤滑油から高圧ポンプ18に伝わる熱伝達量Qoは、次式(2)で表すことができる。なお、式(2)から分かるように、潤滑油の温度が燃料温度よりも高いときには、熱伝達量Qoは正の値になる。
Qo=Koil・Sp1・(THO−Tfold) …(2)
Koil: 潤滑油と高圧ポンプとの間の熱伝達係数[J/m2・K・s]
Sp1:潤滑油と高圧ポンプとが接触する部分の表面積[m2]
THO:油温[K]
高圧ポンプ18から周囲の空気に伝わる熱伝達量Qaは、次式(3)で表すことができる。
Qa=Kair・Sp2・(Tahp−Tfold) …(3)
Kair:高圧ポンプと空気との間の熱伝達係数[J/m2・K・s]
Sp2:高圧ポンプと空気とが接触する部分の表面積[m2]
Tahp:雰囲気温度(高圧ポンプ周りの空気の温度)[K]
なお、式(3)から分かるように、燃料温度が雰囲気温度Tahpよりも高いときには、熱伝達量Qaは負の値になる。また、内燃機関1が搭載された車両が走行しているときには、高圧ポンプ18の周囲に存在する空気の流速が車速に変化に合わせて変化する。そのため、高圧ポンプ18と空気との間の熱伝達係数Kairは、車速に応じて変化させることが好ましい。
Tahp=(1−Khp)・THA+Khp・THW …(4)
Khp:重み付け係数
THA:吸気温度[K]
THW:冷却水温[K]
Qa=Kair・Sp2・{((1−Khp)・THA+Khp・THW)−Tfold} …(5)
上記熱量差Qfは、高圧ポンプ18に流入する燃料の温度Tfinと前回推定された高圧ポンプ18内の燃料の温度(燃温Tfold)との差、及び高圧ポンプ18に流入する燃料の流量Fhpに相関するため、次式(6)で表すことができる。
Qf=Cfu・(Tfin−Tfold)・Fhp …(6)
Cfu:燃料の定圧比熱[J/g・K]
Tfin:高圧ポンプに流入する燃料の温度[K]
Fhp: 高圧ポンプに流入する燃料の流量[g/s]
(*高圧燃料噴射弁の単位時間(秒)当たりの燃料噴射量[g/s]で代用)
なお、通常は、前回推定された高圧ポンプ18内の燃温Tfold、つまり高圧ポンプ18から流出した燃料の温度よりも、高圧ポンプ18に対して新たに流入してくる燃料の温度Tfinの方が低い。そのため、式(6)から分かるように、熱量差Qfは基本的に負の値になる。
Qf=Cfu・(THA−Tfold)・Fhp …(7)
THA:吸気温度[K]
Fhp: 高圧ポンプに流入する燃料の流量[g/s]
(*高圧燃料噴射弁の単位時間(秒)当たりの燃料噴射量[g/s]で代用)
高圧ポンプ18での発熱量Qhpは、次のようにして求めることができる。
Qhp1=Kh・NE^Kn …(8)
Kh:適合係数
NE:機関回転速度[r.p.m]
Kn:適合係数(例えば「1」など)
上記式(8)の適合係数Kh、Knの各値については、式(8)から求められる発熱量Qhp1が実際の発熱量に近づくように適合試験等を行い、その結果から得られた適合値が設定されている。
Qhp2=Kr1・LK …(9)
Kr1:適合係数
LK:加圧室22から副室41に漏れる単位時間当たりの漏れ燃料量[g/s]
上記式(9)の適合係数Kr1の値は、プランジャ27とシリンダ40との間の隙間における高圧ポンプ18と漏れ燃料との間の熱伝達係数や、同隙間における漏れ燃料と高圧ポンプ18との接触面積等を反映させた値であって、式(9)から求められる熱量Qhp2が実際の熱量に近づくように適合試験等を行い、その結果から得られた適合値を設定する。また、高圧側燃圧Pmと低圧側燃圧Pfとの差が大きく、上述した燃料の圧力低下量PDが大きいときほど、漏れ燃料量LKは多くなり、漏れ燃料量LKが多いときほど熱量Qhp2は多くなるため、上記式(9)では、そうした圧力低下量PDに相関する漏れ燃料量LK及び適合係数Kr1を使って熱量Qhp2を算出する。
LK=Kr2・{(Pm−Pf)^(1/2)}・S・(1/ν) …(10)
Kr2:適合係数
Pm:高圧側燃圧[MPa]
Pf:低圧側燃圧[MPa]
S:漏れ燃料の通過面積[cm2]
ν:動粘度
なお、図5に示すように、燃料温度が高くなるほど動粘度νは小さくなる。そのため、推定された燃温Tfが高いときほど動粘度νは小さい値となるように燃温Tfに基づいて可変設定することが好ましい。また、上記式(10)の適合係数Kr2の値については、式(10)から求められる漏れ燃料量LKが実際の量に近づくように適合試験等を行い、その結果から得られた適合値を設定する。また、上記式(10)からわかるように、高圧側燃圧Pmが高いほど、あるいは低圧側燃圧Pfが低いほど、算出される漏れ燃料量LKは多くなるため、漏れ燃料量LKは高圧側燃圧Pmや低圧側燃圧Pfの関数となっている。
Qhp2=Kr1・Kr2・{(Pm−Pf)^(1/2)}・S・(1/ν) …(11)
Kr1:適合係数
Kr2:適合係数
Pm:高圧側燃圧[MPa]
Pf:低圧側燃圧[MPa]
S:漏れ燃料の通過面積[cm2]
ν:動粘度
そして、高圧ポンプ18の発熱量Qhpは、次式(12)で表すことができる。
Qhp=Qhp1+Qhp2 …(12)
Qhp1:発熱量[J/s]
Qhp2:熱量[J/s]
ここで、上記式(8)に示されるように、発熱量Qhp1は機関回転速度NEに相関する関数になっている。また、上記式(9)及び上記式(10)に示されるように、熱量Qhp2は、高圧側燃圧Pmに相関する関数になっている。
Qhp=Kpfhp1・PpfMAX・(Pm/PMAX)^Kp・(NE/NEMAX)^Kn …(式13)
Kpfhp1:適合係数
PpfMAX:最大吐出圧PMAX及び許容最高回転速度NEMAXにおいて
高圧ポンプで発生する単位時間当たりの最大熱量[J/s]
Pm:高圧側燃圧[MPa]
PMAX:高圧ポンプの最大吐出圧[MPa]
Kp:適合係数(例えば「1」など)
NE:機関回転速度[r.p.m]
NEMAX:内燃機関の許容最高回転速度[r.p.m]
Kn:適合係数(例えば「1」など)
なお、上記適合係数Kpfhp1、Kp、Knの各値については、式(13)から求められる発熱量Qhpが実際の発熱量に近づくように適合試験等を行い、その結果から得られた適合値がそれぞれ設定されている。
Tf=(1−Kahp−Kfhp・Fhp−Kohp)・Tfold+Kahp・Khp・THW+Kohp・THO+Kahp・(1−Khp)・THA+{Kpfhp・PpfMAX・(Pm/PMAX)^Kp・(NE/NEMAX)^Kn}+Kfhp・Fhp・THA …(14)
この式(14)を用いて、電子制御ユニット33の上記燃温算出部33Aは燃温Tfを推定する。すなわち、前回の推定周期で推定された高圧ポンプ18内の燃温Tfoldと、今回の推定周期において取得した各種変数パラメータ、すなわち冷却水温THW、油温THO、吸気温度THA、高圧側燃圧Pm、機関回転速度NE、及び高圧ポンプ18に流入する燃料の流量Fhpを上記式(14)に代入して、今回の推定周期における燃温Tf(現在の高圧ポンプ18内の燃温Tf)を算出する。
機関回転速度NEが高くなると、プランジャ27とシリンダ40とが摺動することによって発生する摩擦熱が多くなるため、高圧ポンプ18内の燃料温度は高くなる。そこで、本実施形態では、上記式(14)を使うことにより、機関回転速度NEが高いときほど算出される燃温Tfが高くなるようにしている。
・高圧ポンプ18での発熱量Qhpを上記式(13)から求めるようにした。この他、上記式(13)に代えて、上記式(8)〜上記式(12)を使って発熱量Qhpを求めるようにしてもよい。この変形例の場合には、上記発熱量Qhp1及び上記熱量Qhp2が互いに独立してそれぞれ求められる。また、熱量Qhp2の算出に際しては実際の燃料の圧力低下量(Pm−Pf)に基づいて漏れ燃料の熱量が求められる。そのため、式(13)による簡易的な発熱量Qhpの算出に比べて発熱量Qhpの精度をより高めることができる。
Claims (4)
- シリンダと、前記シリンダ内を往復移動するプランジャと、前記シリンダ及び前記プランジャによって区画される加圧室と、フィードポンプによって燃料タンクから汲み出された低圧燃料を前記加圧室に供給する低圧燃料通路と、前記加圧室で加圧された高圧燃料が吐出される高圧燃料通路と、前記シリンダを挟んだ前記加圧室の反対側に設けられた副室と、前記副室と前記低圧燃料通路とを連通する連通路と、を有する高圧ポンプを備える内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の機関回転速度を取得する回転速度取得部と、
前記加圧室で加圧された高圧燃料の圧力を取得する圧力取得部と、
前記高圧ポンプの内部の燃料温度を算出する燃温算出部と、
を備えており、
前記燃温算出部にて前記燃料温度を算出するパラメータとして前記機関回転速度と前記高圧燃料の圧力とを含んでおり、
前記燃温算出部は、前記機関回転速度が高いときほど算出される前記燃料温度が高くなるように同燃料温度を算出するとともに、前記高圧燃料の圧力が高いときほど前記加圧室から前記副室に漏れる燃料の熱量が多くなるように同熱量を算出することによって前記高圧燃料の圧力が高いときほど算出される前記燃料温度が高くなるように同燃料温度を算出する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記燃温算出部は、予め求められている値であって前記高圧ポンプの吐出圧を最大吐出圧に設定したときの前記熱量を同熱量の最大熱量として記憶しており、
前記燃温算出部は、前記最大吐出圧に対する前記高圧燃料の圧力の比率を前記最大熱量に乗算して前記熱量を算出する
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記圧力取得部を第1圧力取得部としたときに、
前記低圧燃料通路内の低圧燃料の圧力を取得する第2圧力取得部を備えており、
前記燃温算出部は、前記高圧燃料の圧力と前記低圧燃料の圧力との差が大きいときほど前記熱量が多くなるように同熱量を算出する
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記燃温算出部で算出された前記燃料温度が高いときほど前記フィードポンプの吐出圧を増大させるフィード圧制御部を備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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