以下の説明において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、太陽電池用基板などの各種基板をいう。
以下の説明においては、一方主面のみに凹凸を有する回路パターン等(以下「パターン」と記載する)が形成されている基板を例として用いる。ここで、パターンが形成されている一方主面を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板の面を「下面」と称し、上方に向けられた基板の面を「上面」と称する。
また、以下の説明において、基板は略円形状の基板であり、一部の周縁にノッチやオリエンテーション・フラットが設けられている。基板としては、直径が40mm以上の基板を用い、具体的には、直径100mm、300mm、または450mmの基板を用いる。
以下の説明において、常温とは、本発明に係る基板洗浄装置が設備されている工場内の雰囲気の温度を意味する。また、以下の実施形態では、常温を摂氏20度±15度の範囲とする。
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板の処理に用いられる基板洗浄装置を例に採って図面を参照して説明する。なお、本発明は、半導体基板の処理に限らず、液晶表示器用のガラス基板などの各種の基板の処理にも適用することができる。
<第1実施形態>
図1、図2および図3はこの発明に係る基板洗浄装置9の概略構成を示す図である。図1は基板洗浄装置9の正面図であり、図2は図1の基板洗浄装置9のB1−B1線に沿った矢視断面図である。また、図3は図1の基板洗浄装置9を矢印B2側からみた側面図である。この装置は半導体基板等の基板W(以下、単に「基板W」と記載する)に付着しているパーティクル等の汚染物質(以下「パーティクル等」と記載する)を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板洗浄装置である。
なお、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。また、各座標系において、矢印の先端が向く方向を+(プラス)方向とし、逆の方向を−(マイナス)方向とする。
<1−1.基板洗浄装置の全体構成>
基板洗浄装置9は、基板Wを例えば25枚収容したFOUP(Front Open Unified Pod)949を載置するオープナー94と、オープナー94上のFOUP949から未処理の基板Wを取り出し、また処理完了後の基板WをFOUP949内に収納するインデクサユニット93と、インデクサユニット93とセンターロボット96との間で基板Wの受け渡しを行うシャトル95と、基板Wをセンターロボット96でその内部に収容して洗浄を行う洗浄ユニット91と、洗浄ユニット91に供給される液体や気体の配管、バルブ等を収容する流体ボックス92とで構成される。
まず、これらの平面的な配置について図2を用いて説明する。基板洗浄装置9の一端(図2において左端)には複数の(本実施形態においては3台の)オープナー94が配置される。オープナー94の図2における右側(+Y側)に隣接してインデクサユニット93が配置される。インデクサユニット93のX方向における中央付近であって、インデクサユニット93の図2における右側(+Y側)に隣接してシャトル95が配置され、シャトル95の図2における右側(+Y側)に、シャトル95と+Y方向に並ぶようにセンターロボット96が配置される。このように、インデクサユニット93、シャトル95およびセンターロボット96は、直交する二本のラインの配置をなしている。
+Y方向に並ぶように配置されたシャトル95とセンターロボット96の図2における上側(−X側)と下側(+X側)には洗浄ユニット91と流体ボックス92が配置されている。すなわち、シャトル95とセンターロボット96の図2における上側(−X側)または下側(+X側)に、インデクサユニット93の図2における右側(+Y側)に隣接して、流体ボックス92、洗浄ユニット91、洗浄ユニット91、流体ボックス92の順に配置されている。
なお、インデクサユニット93の+X側(図2における下側)の側面には後述する制御部70の操作部971が設置されている(図1参照)。
次に、オープナー94について説明する。オープナー94はその上部にFOUP949を載置する載置面941と、FOUP949の正面(図1および図2におけるFOUP949の右側(+Y側)の面)に対向して配置され、FOUP949の正面にある蓋部(図示省略)を開閉する開閉機構943(図3参照)を備える。
基板洗浄装置9の外部から自動搬送車両等により搬入されたFOUP949は、オープナー94の載置面941上に載置され、開閉機構943により蓋部が解放される。これにより、後述するインデクサユニット93のインデクサロボット931が、FOUP949内の基板Wを搬出し、逆にFOUP949内に基板Wを搬入することが可能となる。
次に、インデクサユニット93について説明する。インデクサユニット93には、FOUP949から処理工程前の基板Wを一枚ずつ取り出すとともに、処理工程後の基板WをFOUP949に一枚ずつ収容し、更に基板Wをシャトル95と受け渡しする、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド933を有するインデクサロボット931が備えられている。インデクサロボット931はX軸方向に水平移動自在であり、またZ軸方向に昇降移動自在であるとともに、Z軸周りに回転可能に構成されている。
次に、シャトル95について説明する。シャトル95には、基板Wの図2における上側(−X側)および下側(+X側)の周縁部付近であって、インデクサロボット931のハンド933および後述するセンターロボット96のハンド961と干渉しない位置を保持する、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド951と、2組のハンド951をそれぞれ独立してY軸方向に水平移動する水平移動機構(図示せず)とを備える。
シャトル95はインデクサロボット931とセンターロボット96との間で基板Wを受け渡し可能に構成されている。すなわち、図示しない水平移動機構によりハンド951が図2における左側(−Y側)に移動した場合、インデクサロボット931のハンド933との間で基板Wの受け渡しが可能となり、また、ハンド951が図2における右側(+Y側)に移動した場合はセンターロボット96のハンド961との間で基板Wの受け渡しが可能となる。
次に、センターロボット96について説明する。センターロボット96には、基板Wを1枚ずつ保持し、シャトル95または洗浄ユニット91との間で基板Wの受け渡しを行う、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド961と、鉛直方向(Z軸方向)に延設され、ハンド961の鉛直方向の移動の軸となる昇降軸963と、ハンド961を昇降移動させる昇降機構965と、ハンド961をZ軸周りに回転させる回転機構967を備える。センターロボット96はZ軸方向に昇降軸963に沿って昇降移動自在であるとともに、回転機構967によってハンドがZ軸周りに回転可能に構成されている。
なお、洗浄ユニット91の側壁であって、センターロボット96に対向する面には、センターロボット96のハンド961を伸ばして洗浄ユニット91内に基板Wを搬入し、または搬出するための開口が設けられている。また、センターロボット96が洗浄ユニット91と基板Wの受け渡しを行わない場合に上記開口を閉塞して洗浄ユニット91内部の雰囲気の清浄度を保持するためのシャッター911が設けられている。
図1に示すように洗浄ユニット91と流体ボックス92は上下2段に積み上げる構成とされている。したがって、本実施形態における基板洗浄装置9には洗浄ユニット91および流体ボックス92はそれぞれ8台ずつ備えられている。
なお、本発明の実施に関して、洗浄ユニット91および流体ボックス92の台数は8台に限られず、これより多い構成であっても、少ない構成であっても、本発明の実施は可能である。
次に、インデクサロボット931、シャトル95およびセンターロボット96による基板Wの搬送の手順について説明する。基板洗浄装置9の外部から自動搬送車両等により搬入されたFOUP949は、オープナー94の載置面941上に載置され、開閉機構943により蓋部が解放される。インデクサロボット931はFOUP949の所定の位置から下側のハンド933により基板Wを1枚取り出す。その後、インデクサロボット931はシャトル95の前(図2におけるインデクサユニット93のX軸方向中央付近)に移動する。同時にシャトル95は下側のハンド951をインデクサユニット93の側(図2における左側(−Y側))へ移動する。
シャトル95の前に移動したインデクサロボット931は下側のハンド933に保持した基板Wをシャトル95の下側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は下側のハンド951をセンターロボット96の側(図2における右側(+Y側))に移動する。また、センターロボット96がシャトル95にハンド961を向ける位置に移動する。
その後、センターロボット96が下側のハンド961により、シャトル95の下側のハンド951に保持された基板Wを取り出し、8つある洗浄ユニット91のいずれかのシャッター911へハンド961を向けるように移動する。その後、シャッター911が開放され、センターロボット96が下側のハンド961を伸ばして洗浄ユニット91内に基板Wを搬入し、洗浄ユニット91内での基板Wの洗浄処理が開始される。
洗浄ユニット91内で処理が完了した基板Wは、センターロボット96の上側のハンド961で搬出され、その後は上記未処理の基板Wを搬送する場合とは逆にセンターロボット96の上側のハンド961、シャトル95の上側のハンド951、インデクサロボット931の上側のハンド933の順に移載され、最終的にFOUP949の所定の位置に収容される。
<1−2.洗浄ユニット>
次に、洗浄ユニット91の構成について図4を用いて説明する。図4は洗浄ユニット91の構成を示す模式図である。ここで、本実施形態における8つの洗浄ユニット91はそれぞれ同じ構成であるため、図2における矢印B3の示す洗浄ユニット91(図1において左下側の洗浄ユニット91)を代表として説明する。
洗浄ユニット91は、パターンが形成された基板表面Wfを上方(Z方向)に向けて、基板Wを水平(XY平面内)に保持する基板保持ユニット20と、基板保持ユニット20をその内側に収容し、基板保持ユニット20および基板Wからの飛散物等を受け止めて排気・排液するカップ101と、基板保持ユニット20に保持された基板表面Wfに対向して配置され、基板表面Wfの上方の空間を外気から遮断する遮断機構30と、超音波印加液供給部40と、第1液体供給部50を備える。
さらに、洗浄ユニット91は、後述するプログラム73に基づいて基板洗浄装置9の各部の動作を制御する制御部70を備える。
また、洗浄ユニット91は、第1液体を第1液体供給部50へ供給する供給源である第1液体供給源601と、第2液体を超音波印加液供給部40および基板保持ユニット20へ供給する供給源である第2液体供給源602とを備える。また、洗浄ユニット91は、遮断機構30へ脱イオン水(De Ionized Water、以下「DIW」と称する)を供給する供給源であるDIW供給源603と、遮断機構30へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給源604、基板保持ユニット20へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給源605を備える。
第1液体および第2液体の組成等については、後述する。
第1実施形態において、基板Wはシリコンウエハである。基板表面Wfに形成されるパターンは、少なくとも絶縁膜を含み、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターンは、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。絶縁膜は、SiO2膜であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。積層膜を構成する各膜として、例えばポリシリコン膜、SiN膜、BSG膜(ホウ素を含むSiO2膜)、およびTEOS膜(TEOS(テトラエトキシシラン)を用いてCVD法で形成されたSiO2膜)等が用いられる。
乾燥気体は、該気体中に含まれる水蒸気の露点が、基板W近傍の雰囲気の温度よりも低い(すなわち、気体中に含まれる水蒸気の分圧が、基板W近傍の雰囲気における水の蒸気圧よりも低い)気体である。特に、露点が−10度(摂氏)以下の気体が好適であり、−40度(摂氏)以下の気体がより好適である。乾燥気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、または清浄乾燥空気(Clean Dry Air,窒素ガスと酸素ガスの分圧比が約80%:約20%の気体)が挙げられる。なお、本実施形態では、露点が−40度の窒素ガスを乾燥空気として用いる。
次に、洗浄ユニット91の各部について説明する。
基板保持ユニット20は、基板表面Wfまたは基板裏面Wbを上方(Z方向)に向けて、基板Wを水平(XY平面内)に保持するユニットである。
基板保持ユニット20は、洗浄ユニット91の底部に固設され、上方に基板裏面Wbと対向する円板状のステージ23を有する。ステージ23は、ステージ回転機構22に接続され、鉛直方向に沿った中心軸A0周りに水平面内に回転可能となっている。また、ステージ23には、中心軸A0と交差する位置に下方ノズル27として開口を有する。
ステージ23の周縁付近には、基板Wの周縁部を保持する複数個のチャック24が立設されている。チャック24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、ステージ23の周縁に沿って等角度間隔で配置される。各チャック24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する支持ピンと、該支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する保持ピンとを備えており、チャック24は基板Wを保持する保持部材として機能する。
各チャック24は公知のリンク機構や褶動部材等を介して図示しないエアシリンダに連結され、制御部70が該エアシリンダの駆動部と電気的に接続し、制御部70の動作指令によりエアシリンダは伸縮する。これにより、各チャック24が、その保持ピンが基板Wの外周端面を押圧する「閉状態」と、その保持ピンが基板Wの外周端面から離れる「開状態」との間を切り替え可能としている。なお、チャック24の開閉状態を変位させる駆動源として、エアシリンダ以外にモーターやソレノイド等の公知の駆動源を用いることも可能である。
ステージ23に基板Wが受渡しされる際には、各チャック24を開状態とし、基板Wに対して洗浄処理等を行う際には、各チャック24を閉状態とする。各チャック24を閉状態とすると、各チャック24が基板Wの周縁部を把持する。これにより、基板Wはステージ23から所定距離だけ離間して、基板表面Wfを上方に向け、基板裏面Wbを下方に向けた状態で水平姿勢に保持される。当該所定距離は、各チャック24の構造・サイズに依存するが、基板Wの半径と比べ十分短く、例えば5mm以上30mm以下の距離である。
ステージ23に設けられる下方ノズル27には、ステージ23から下方に貫通する下方内管25が連通する。下方内管25は一方を下方ノズル27と接続し、他方を第2液体供給源602と接続する。
第2液体供給源602は、DIW供給源621と気体溶解部622を備える。DIW供給源621は、気体溶解部622へDIWを供給する供給源である。気体溶解部622は、DIW供給源621から供給されるDIWに窒素ガスを溶解させて、DIW中の溶存ガス濃度を飽和レベル(大気圧・常温環境下で約18ppm)まで高める構成であり、例えば特開2004−335525号公報に記載されたガス溶解部を用いることができる。本実施形態では、このように溶存ガス濃度を飽和レベルにまで高めたDIWを、第2液体として用いる。
第2液体供給源602は、基板保持ユニット20の下方内管25および後述の超音波印加液供給部40の超音波ノズル41と接続する。図示省略するバルブ等により、第2液体供給源602から下方内管25および超音波ノズル41への第2液体の供給は、それぞれ独立に制御できるように構成される。
また、ステージ23には、下方内管25を取り囲むように下方外管21が設けられる。下方外管21は、下方内管25と同様にステージ23から下方に貫通し、下方内管25と下方外管21はいわゆる二重管構造をなす。下方外管21と下方内管25との間には、気体供給路26が形成され、気体供給路26はステージ23側に開口し、他方は乾燥気体供給源605と接続する。乾燥気体供給源605は、乾燥気体を気体供給路26へ供給する供給源である。
カップ101について説明する。カップ101は、基板保持ユニット20に保持される基板Wの周囲を包囲するように略円環状に設けられる。カップ101は、基板保持ユニット20および基板Wから飛散する液体などを捕集するために、中心軸A0に対し、略回転対称な形状を有する。なお、図4において、カップ101は断面形状を示している。
カップ101の具体的な構造・動作については、特開2006−286831号公報と同様であるため、詳細な説明は省略する。カップ101は、互いに独立して昇降可能な内構成部材、中構成部材および外構成部材で構成され、これらが重ねられた構造を有する。各部材には図示省略する上下方向駆動部が接続され、基板処理の内容に応じて各部材をそれぞれ独立に、又は複数の部材が同期して中心軸A0方向に沿って上下方向に移動可能に設けられる。
図4は、カップ101の各部材が最も下方に位置する状態であり、ホームポジションと称する。ホームポジションはセンターロボット96が基板Wを洗浄ユニット91内に搬入出する場合などにおいて取られる位置である。
遮断機構30について説明する。遮断機構30は、基板保持ユニット20に保持される基板Wの基板表面Wfと対向する基板対向面381を下面に有する遮断部材38を備える。遮断部材38は、円板状に形成され、中心部に上方内管ノズル37および上方外管ノズル39を有する。基板対向面381は水平面内に広がり、基板保持ユニット20に保持される基板Wの基板表面Wfと平行に対向する。また、遮断部材38のうち基板対向面381の直径は基板Wの直径と同等以上の大きさに形成される。遮断部材38は、その内部が中空であって略円筒形状を有する回転軸31の下方に回転可能に水平に支持される。
回転軸31は上方でアーム32と接続する。回転軸31および遮断部材38は、アーム32により基板保持ユニット20と対向する上方位置に支持される。遮断部材38は、回転軸31およびアーム32を介して、遮断部材38を回転する遮断部材回転機構33と接続する。遮断部材回転機構33は、図示しない中空モーターおよび中空軸で構成され、中空軸の一端が中空モーターの回転軸に連結し、他端が回転軸31の中を通して遮断部材38の上面に連結する。
また、遮断部材回転機構33は制御部70と電気的に接続する。制御部70の動作指令により遮断部材回転機構33が駆動すると、遮断部材回転機構33は、遮断部材38を回転軸31の中心を通る中心軸周りに回転させる。遮断部材回転機構33は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材38を回転させるように構成されている。なお、遮断部材38は、その中心軸がステージ23の中心軸A0と略一致するように配設される。したがって、ステージ23と遮断部材38は、略同じ中心軸周りに水平に回転する。
アーム32には、公知の駆動機構で構成された遮断部材昇降機構34が接続する。遮断部材昇降機構34は制御部70と電気的に接続する。制御部70の動作指令により遮断部材昇降機構34が駆動すると、遮断部材昇降機構34は、遮断部材38をステージ23に近接し、または離間する。
すなわち、制御部70は、遮断部材昇降機構34の動作を制御して洗浄ユニット91に対して基板Wを搬入出させる際や、基板Wに対して、後述する洗浄工程等を行う際には、遮断部材38を基板保持ユニット20の上方の離間位置に上昇させる。一方、基板Wに対して後述する基板乾燥工程を行う際には、遮断部材38を基板保持ユニット20に保持された基板表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
次に、遮断機構30の管路構成について説明する。遮断機構30のアーム32の上面から、回転軸31を介して、遮断部材38の中心部の開口まで連通する中空部の内部には、上方外管35が挿通されるとともに、該上方外管35に上方内管36が挿通され、いわゆる二重管構造となっている。上方外管35および上方内管36の下方端部は遮断部材38の開口に延設され、上方内管36の一方先端は上方内管ノズル37と、上方外管35の一方先端は上方外管ノズル39と、それぞれ接続する。上方内管ノズル37および上方外管ノズル39は、遮断部材38の基板対向面381の中央部に設けられる。
上方内管36は、他方をDIW供給源603と接続する。DIW供給源603は、DIWを上方内管36へ供給する供給源である。上方外管35は、他方を乾燥気体供給源604と接続する。乾燥気体供給源604は、乾燥気体を上方外管35へ供給する供給源である。
次に、超音波印加液供給部40の構成を説明する。超音波印加液供給部40は、第2液体に超音波を印加した超音波印加液を基板Wに供給する。超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41と、超音波ノズル41が備える振動子42へ超音波信号を出力する超音波出力機構43を備える。超音波ノズル41は、第2液体供給源602と連通する。
超音波ノズル41は、カップ101の最外部における上部にノズル取付部材によって、超音波ノズル41の吐出口が、中心軸A0の方向を向くように固設される。図4に示すようにカップ101をホームポジションに位置させると、超音波ノズル41は基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板裏面Wbよりも低い位置に位置決めされ、このとき、超音波ノズル41の吐出口はステージ23の外周側から基板裏面Wbの周縁部に向く。この位置決め状態で該吐出口の向く方向を「吐出方向44」と称する(図7参照)。この位置決め状態で第2液体供給源602から超音波ノズル41へ第2液体を圧送すると、超音波ノズル41の吐出口から第2液体が吐出方向44に沿って基板裏面Wbに供給される。
この超音波ノズル41の内部には振動子42が配置される。振動子42は、超音波ノズル41の内部に供給される第2液体に超音波振動を付与する。詳述すれば、振動子42は、図7に示すように吐出方向44において、超音波ノズル41の吐出口の反対側に配置される。
超音波出力機構43は、制御部70と電気的に接続し、制御部70からの制御信号にもとづいてパルス信号を振動子42へ出力する機構である。パルス信号が振動子42に入力されると、振動子42が超音波振動する。
超音波ノズル41の吐出口から第2液体が吐出方向44に沿って基板裏面Wbに供給された状態で、超音波出力機構43により振動子42を超音波振動させると、第2液体に超音波が印加され、基板裏面Wbには第2液体に超音波が印加された超音波印加液が供給される。これにより基板裏面Wbに超音波振動が伝播して基板裏面Wbを超音波洗浄することができる。
次に、第1液体供給部50の構成を説明する。第1液体供給部50は、中心ノズル53、補助ノズル54と、中心ノズル53、補助ノズル54と接続するアーム52と、アーム52の他方と接続する回転軸51と、回転軸51を鉛直方向に伸びる中心軸A1周りに回転することで、アーム52、中心ノズル53および補助ノズル54を中心軸A1周りに回転させるアーム回転機構55を有する。中心ノズル53および補助ノズル54は、第1液体を供給する供給源である第1液体供給源601とそれぞれ接続する。
第1液体供給源601は、DIW供給源611と脱気部612を備える。DIW供給源611は、脱気部612へDIWを供給する供給源である。脱気部612は、DIW供給源611から供給されるDIWに溶存する窒素ガス、酸素ガス等の気体を除去して、DIW中の溶存ガス濃度を低減する構成であり、例えば特開2004−335525号公報に記載されたガス脱気部を用いることができる。本実施形態では、脱気部612を流通することにより、脱気部612に供給される前のDIW供給源611におけるDIWと比較して溶存ガス濃度が低下したDIWを、第1液体として用いる。
より具体的には、DIW供給源611には、DIWに対する窒素ガスの溶存ガス濃度が飽和状態(約18ppm)のDIWが貯留されており、このDIWを脱気部612に通過させて窒素ガスの溶存ガス濃度を0.1ppmまで低減したDIWが、第1液体として中心ノズル53および補助ノズル54に供給される。
第1液体供給源601は、中心ノズル53および補助ノズル54と接続する。図示省略するバルブ等により、第1液体供給源601から中心ノズル53および補助ノズル54への第1液体の供給は、それぞれ独立に制御できるように構成される。
次に、制御部70の内部構成について説明する。図5は、制御部70と洗浄ユニット91の各構成との電気的接続を模式的に図示したブロック図である。
制御部70は、図5に示すように洗浄ユニット91の各部構成と電気的に接続し、動作指令により各部構成を制御する。制御部70は、上記説明のほか、供給源制御部60と電気的に接続する。供給源制御部60は、各種の供給源601ないし605とそれぞれ電気的に接続し、供給源からの液体または気体の供給を各個別に制御する制御部である。供給源制御部60からの動作指令により、例えば第2液体供給源602から下方ノズル27へ第2液体が圧送され、また第2液体の圧送が停止される。同様に、供給源制御部60からの動作指令により、例えば第1液体供給源601から中心ノズル53および補助ノズル54へ第1液体が圧送され、また第1液体の圧送が停止される。制御部70は、供給源制御部60の指令出力を総括的に制御する。
図6は、制御部70の内部構成を示す模式図である。制御部70は、演算処理部71およびメモリ72を有するコンピュータにより構成される。演算処理部71としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、メモリ72は、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、基板Wに応じた基板処理条件が、プログラム73(レシピとも呼ばれる)として予め格納されおり、CPUがその内容をRAMに読み出し、RAMに読み出された基板処理プログラムの内容に従ってCPUが基板洗浄装置9の各部を制御する。なお、制御部70にはプログラム73の作成・変更や、複数のプログラム73の中から所望のものを選択するために用いる操作部971(図1参照)が接続されている。
次に、中心ノズル53、補助ノズル54および超音波ノズル41の基板Wに対する配置関係について、図7および図8を用いて説明する。
図7は、中心ノズル53、補助ノズル54および超音波ノズル41の基板Wに対する配置関係を模式的に説明する側面図である。図8は、中心ノズル53、補助ノズル54および超音波ノズル41の基板Wに対する配置関係を模式的に説明する平面図である。
図8を参照する。制御部70からの動作指令にもとづき、アーム回転機構55が回転軸51を中心軸A1周りに回転させると、これに伴いアーム52とともに中心ノズル53および補助ノズル54がステージ23に対し揺動する。当該動作により、図8に示すように中心ノズル53をステージ23の回転中心である中心軸A0の略直上に位置決めすることができる。すなわち、ステージ23上にチャック24により保持される基板Wの基板表面Wfの中心と対向する位置に、中心ノズル53が位置決めされる。
また、この状態において、アーム52の途中に設けられる補助ノズル54は、ステージ23上にチャック24により保持される基板Wの基板表面Wfの中心を含む中央領域よりも外側に位置する周縁領域に対向する。
また、アーム回転機構55により中心ノズル53および補助ノズル54は、基板表面Wfと対向しないステージ23の径方向外側の領域に退避した状態(退避位置)に位置決めすることができる。
第1実施形態において、中央領域は基板Wの中心から半径の2/3以内の領域であり、周縁領域はその中央領域よりも周縁側に離れた領域をいう。例えば、半径が150mmである基板Wの場合、基板Wの中心から100mm以内の領域が中央領域であり、それよりも周縁側の領域が周縁領域である。
なお、周縁領域は上記の定義に限られず、基板表面Wfにおいてパターンが形成される複数のセル(例えば、露光の1ショットごとに領域分けされるセルであり、1つのセルサイズが26mm×33mm)のうち、最も周縁側に位置する周縁セルと、当該周縁セルよりも周縁側の領域を、周縁領域としてもよい。
図7に示すように、周縁領域に対向する補助ノズル54は、吐出方向56に沿って基板表面Wfへ第1液体を供給する。補助ノズル54から吐出される第1液体の着液地点を図中の記号「P1」にて示し、「第1着液地点P1」と称する。基板表面Wfにおいて、第1着液地点P1から所定距離以内の領域を第1着液領域と称し、該第1着液領域の裏面に相当する領域を図中の記号「R1」にて示し、「対象領域R1」と称する。
超音波ノズル41が吐出方向44に沿って吐出する超音波印加液が基板裏面Wbに着液する地点を図中の記号「P2」にて示し、「第2着液地点P2」と称する。第2着液地点P2が、対象領域R1に位置するように、超音波ノズル41と補助ノズル54が配置される。
図8に示すように、第1実施形態において、対象領域R1は第1着液地点P1からの実際の距離D1以内の領域であり、第1着液地点P1を中心とする半径D1の領域が対象領域R1となる。第1実施形態において、当該距離D1は2cmである。
また、図7および図8に示すように、第1着液地点P1は第2着液地点P2よりも中心軸A0に近い位置に配置され、また第1着液地点P1は第2着液地点P2よりも基板Wの回転方向上流側に配置される。図8において、基板Wはステージ回転機構22により中心軸A0を中心に反時計回りに回転され、第2着液地点P2は、対象領域R1のうち、第1着液地点P1よりも基板Wの回転方向下流側に位置する。これらの配置関係による効果については、後述する。
<1−3.基板処理の工程>
次に、上記のように構成された基板洗浄装置9における基板処理動作について説明する。ここで、基板表面Wfには、凹凸のパターンが前工程により形成されている。パターンは、凸部および凹部を備えている。凸部は、例えば100〜200nmの範囲の高さであり、10〜20nmの範囲の幅である。また、隣接する凸部間の距離(凹部の幅)は、例えば10〜20nmの範囲である。
以下、図4を適宜参照しながら、図9を用いて基板処理の工程を説明する。図9は第1実施形態における基板洗浄装置9の全体の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明において特に断らない限り、遮断機構30は、遮断部材38が対向位置にある場合、基板保持ユニット20のステージ回転機構22がステージ23を回転する方向に略同じ回転数で遮断部材38を回転するものとする。
まず、所定の基板Wに応じた基板処理用のプログラム73が操作部971(図1参照)で選択され、実行指示される。その後、基板Wを洗浄ユニット91に搬入する準備として、制御部70が動作指令を行い以下の動作をする。
すなわち、制御部70の動作指令によって、遮断部材38の回転を停止し、ステージ23の回転を停止する。また、遮断部材38を離間位置へ移動すると共に、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ101をホームポジションに位置決めする。ステージ23が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、各チャック24を開状態とする。また、中心ノズル53および補助ノズル54が退避位置に位置決めされる。
基板Wを洗浄ユニット91に搬入する準備が完了した後、未処理の基板Wを洗浄ユニット91へ搬入する基板搬入工程(ステップS101)を行う。すなわち、インデクサロボット931がオープナー94上のFOUP949の所定の位置にある基板Wを下側のハンド933で取り出し、シャトル95の下側のハンド951に載置する。その後、シャトル95の下側のハンド951をセンターロボット96の側に移動し、センターロボット96がシャトル95の下側のハンド951上の基板Wを、下側のハンド961で取り上げる。
その後、洗浄ユニット91のシャッター911が開かれ、センターロボット96が下側のハンド961を洗浄ユニット91の中に伸ばし、基板Wを基板保持ユニット20のチャック24の支持ピンの上に載置する。基板Wの洗浄ユニット91への搬入が終了すると、センターロボット96が下側のハンド961を縮めて洗浄ユニット91の外に出る。その後、シャッター911が閉じる。
続いて、洗浄ユニット91に搬入された基板Wを保持し、回転する基板保持・回転工程(ステップS102)が実行される。すなわち、未処理の基板Wが洗浄ユニット91の内部に搬入されると、チャック24の支持ピンの上に載置される。そして、制御部70が基板保持ユニット20へ動作指令を行い、チャック24を閉状態とする(基板保持工程)。
未処理の基板Wが基板保持ユニット20に保持された後、制御部70が基板保持ユニット20へ動作指令を行い、ステージ23の回転を開始する(基板回転工程)。そして、続く第1液体供給工程から基板乾燥工程までの間、回転を維持する。
ここで、最初の基板Wの回転速度は、基板表面Wfに供給される第1液体が基板表面Wfの全面に拡散可能となるように、100〜1000rpmとすることが好ましい。本実施形態では、第1液体供給工程における基板Wの回転速度を200rpmとして説明する。
次に、基板表面Wfへ脱気部612により脱気処理を行い、溶存ガス濃度を低めた第1液体を供給する第1液体供給工程(ステップS103)を実行する。
第1液体供給工程が開始すると、制御部70がアーム回転機構55に動作指令を行い、アーム52を中心軸A1周りに回動させて中心ノズル53を基板表面Wfの中心に位置決めし、補助ノズル54を基板表面Wfの周縁領域に位置決めする。
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、第1液体供給源601から第1液体が圧送され、中心ノズル53および補助ノズル54を介して基板表面Wfへ供給される。第1液体はステージ23の回転に伴う基板Wの中心軸A0周りの回転の遠心力によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給され、基板表面Wfの全体に第1液体の液膜を形成する。
次に、基板表面Wfの全体に第1液体の液膜が形成された状態を維持したまま、基板裏面Wbを超音波印加液により洗浄する洗浄工程(ステップS104)を実行する。
洗浄工程が開始すると、制御部70が動作指令を行い、第2液体供給源602から第2液体が圧送され、下方ノズル27を介して基板裏面Wbの中央部へ供給される。基板裏面Wbに供給された第2液体は、基板Wの回転による遠心力で基板Wの周縁部へ広がり、基板裏面Wbには第2液体の液膜が形成される。
そして、制御部70の動作指令にもとづき、第2液体供給源602から第2液体を超音波ノズル41へ圧送するとともに、超音波出力機構43が振動子42を振動させる。これにより、超音波ノズル41の内部に導入された第2液体に超音波が印加され、超音波ノズル41の吐出口から超音波印加液が吐出方向44に沿って吐出される。超音波印加液は、基板裏面Wbの周縁領域に着液する。基板裏面Wbおよび基板裏面Wbに形成される第2液体の液膜に、超音波印加液から超音波振動が伝搬し、基板裏面Wbが洗浄される。
第2液体は、気体溶解部622により溶存ガス濃度が飽和状態となっている。したがって、超音波の印加によって生じる気泡(キャビテーション)の生成および崩壊のエネルギー(キャビテーションエネルギー)が、基板裏面Wbに付着したパーティクル等の汚染物質により強く作用する。これにより、基板裏面Wbに付着したパーティクルを除去し、基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心部から基板Wの周縁部へ広がる第2液体にパーティクルが混入して、パーティクルが第2液体とともに基板Wの周縁部外側へ振り切られ、除去される。
基板裏面Wbへの超音波印加液の供給が所定時間行われることにより、基板裏面Wbの全面が洗浄され、基板裏面Wbの洗浄が完了すると、制御部70が動作指令を行い、超音波出力機構43から振動子42へのパルス信号の出力を停止し、第2液体供給源602から超音波ノズル41および下方ノズル27への第2液体の圧送を停止する。その後、第1液体供給源601から中心ノズル53および補助ノズル54への第1液体の圧送を停止する。これにより、基板Wへの第2液体および第1液体の供給が停止される。
ここで、基板表面Wfのパターン倒壊防止および汚染防止の効果について説明する。基板裏面Wbに印加される超音波振動は基板Wを介して基板表面Wf側にも伝搬し、第1液体中でもキャビテーションの生成および崩壊が生じる。
第1液体は、脱気部612により溶存ガス濃度が低減された液体であるため、第2液体と比べ、超音波の印加により基板表面Wfで作用するキャビテーションエネルギーは、基板裏面Wbで作用するエネルギーよりも弱くなる。溶存ガス濃度が低いほど、このエネルギーは弱くなり、キャビテーションエネルギーが強く作用することに起因するパターンへのダメージもより効果的に防止できる。
しかし、ノズルから吐出された脱気状態の第1液体は、周囲に存在する気体が溶けこむことにより、経時的に溶存ガス濃度が増加する。仮に、中心ノズル53のみを設ける場合、中心ノズル53から吐出された第1液体が基板表面Wfの中心に着液してから、基板Wの回転による遠心力で広がり、超音波ノズル41からの超音波印加液が着液する第2着液地点P2へ到達するまでの間に相当量の気体が溶けこみ、ダメージを防止できる溶存ガス濃度よりも高い濃度となることで、パターンへダメージが生じるおそれがある。これは、基板Wのサイズが大きくなるほど顕著となる。
基板裏面Wbへ超音波印加液を供給する超音波ノズル41の配置としては、図4に示すように、基板保持ユニットに保持される基板Wの径方向外側の下方に配置して基板裏面Wbの周縁領域へ超音波印加液を供給する構成とするほか、ステージ23の下方に振動子等を配置して、下方ノズル27から供給される第2液体に超音波を印加して基板裏面Wbの中心へ超音波印加液を供給する構成を採りえる。
しかしながら、下方ノズル27から超音波印加液を供給する構成とすると、ステージ23よりも下方に振動子を設ける必要があることから、振動子により超音波を印加する位置から基板Wまでの距離が長くなり、基板Wへ伝搬する超音波のエネルギーが減少する。これに対し、図4に示すように超音波ノズル41を基板保持ユニットに保持される基板Wの径方向外側の下方に配置する構成とすれば、振動子による超音波印加位置から基板Wまでの距離が短く、超音波のエネルギーをより強く基板Wへ伝搬させることができ、基板裏面Wbを良好に洗浄することができる。
第1実施形態では、中心ノズル53の他に、周縁領域へ第1液体を供給する補助ノズル54を設ける。補助ノズル54は、その吐出口から超音波ノズル41による超音波印加液の着液地点である第2着液地点P2までの距離が、中心ノズル53の吐出口から第2着液地点P2までの距離よりも短い。これにより、第2着液地点P2に対応する基板表面Wfにおける第1液体の溶存ガス濃度をより低くすることができ、第2着液地点P2近傍に位置するパターンで生じるダメージを防止することができる。
また、第1実施形態では、補助ノズル54から吐出される第1液体が着液する第1着液地点P1から所定距離D1以内の領域である第1着液領域の裏面に相当する対象領域R1内に第2着液地点P2が位置する。第1実施形態において、D1は2cmである。これにより、第2着液地点P2に対応する基板表面Wfにおける第1液体の溶存ガス濃度をより低くすることができ、第2着液地点P2近傍に位置するパターンで生じるダメージを防止することができる。
また、単に第2着液地点P2に対応する基板表面Wfにおける第1液体の溶存ガス濃度を低い状態とするのであれば、補助ノズル54のみから第1液体を供給した状態で基板裏面Wbの超音波洗浄を行えばよいが、この場合、基板表面Wfの中心に第1液体が供給されないため、基板表面Wfの全体に液膜を形成できない。基板表面Wfの全体に液膜を形成しない状態では、基板裏面Wbに供給する超音波印加液等の液体がチャック24等の各構成に当って跳ね返り、基板表面Wfに付着することで基板表面Wfのパターンを汚染するおそれがある。また、液体の跳ね返り以外にも、雰囲気中に浮遊して存在するパーティクル等の汚染物質が液膜に覆われずに露わになった基板表面Wfに付着することで、基板表面Wfのパターンを汚染するおそれがある。
これに対し、第1実施形態では、図4、図7および図8に示すように、中心ノズル53を設け、第1液体供給工程および洗浄工程では、中心ノズル53から基板表面Wfの回転中心である中心軸A0へ第1液体を供給する。これにより、基板表面Wfの全体を第1液体の液膜が覆い、さらに基板裏面Wbが洗浄される間、継続して第1液体が中心ノズル53から供給されることで、常に基板表面Wfを清浄な状態に保つことができる。これにより、基板裏面Wbからの液体の跳ね返りや、雰囲気中のパーティクル付着に起因する基板表面Wfのパターン汚染を防止できる効果がある。
また、図7および図8に示すように、第1着液地点P1は第2着液地点P2よりも中心軸A0に近い位置に配置される。第1実施形態において、超音波ノズル41は基板保持ユニット20に保持される基板Wの径方向外側の下方において、吐出方向44が基板Wの中心を向くように配置されるため、超音波ノズル41から吐出される超音波印加液は基板裏面Wbに着液後、基板Wの径方向内側へ進む傾向が強い。これに対し、第1実施形態において補助ノズル54は基板Wに対し垂直な吐出方向56を有するため、補助ノズルか54から吐出される第1液体は上記の超音波印加液と比べ基板Wの径方向内側へ進む傾向が弱く、基板Wの回転による遠心力で基板Wの径方向外側へ進む傾向が強い。
このため、第2着液地点P2を第1着液地点P1の真裏、または第1着液地点P1よりも基板Wの径方向内側に配置すると、第2着液地点P2から基板Wの径方向内側へ進んだ超音波印加液によってパターンダメージが生じる位置に、溶存ガス濃度が十分低い状態の第1液体を供給できず、第2着液地点P2よりも径方向内側においてパターンにダメージが生じるおそれがある。
これに対し、第1着液地点P1を第2着液地点P2よりも中心軸A0に近い位置に配置することで、第2着液地点P2よりも径方向内側で生じる基板表面Wfにおけるパターンへのダメージを防止することができ、さらに第1着液地点P1から基板Wの回転による遠心力で第1液体が径方向外側へ運ばれるため、第2着液地点P2の裏に相当する位置にあるパターンへのダメージも防止できる。
また、第2着液地点P2は、図8に示すように対象領域R1のうち第1着液地点P1よりも基板Wの回転方向下流側に配置される。第1着液地点P1に着液した第1液体は基板Wの回転による遠心力で径方向外側へ進むとともに、基板Wの回転方向にも移動する。上記のように第2着液地点P2を対象領域R1のうち第1着液地点P1よりも基板Wの回転方向下流側に配置することで、第1液体が第1着液地点P1に着液した後、進む方向に第2着液地点P2を確実に配置することができ、第2着液地点P2の裏に相当する位置にあるパターンへのダメージを防止することができる。
洗浄工程により、基板裏面Wbの超音波洗浄がなされると、次に基板表面Wfおよび基板裏面Wbを乾燥する基板乾燥工程(S105)が実行される。
基板乾燥工程が実行されると、制御部70がアーム回転機構55に動作指令を行い、アーム52を中心軸A1周りに回動して、中心ノズル53および補助ノズル54を退避位置に位置決めする。そして、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に移動させ、遮断部材38の回転を開始する。
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。基板乾燥工程における基板Wの回転速度は、基板Wに付着した第1液体および第2液体を基板Wの回転による遠心力で振り切ることができるように、500〜1000rpmに設定することが好ましい。
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源604から乾燥気体が上方外管ノズル39を介して基板表面Wfへ供給される。また、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源605から乾燥気体が気体供給路26を介してステージ23の開口から基板裏面Wbへ供給される。
基板表面Wfおよび基板裏面Wbに付着した第1液体および第2液体は、ステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから除去される。また、第1液体および第2液体は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板Wから除去される。
基板乾燥工程により、基板Wに付着した第1液体および第2液体が除去されると、次に、基板Wを洗浄ユニット91から搬出する基板搬出工程を行う(ステップS106)。
基板搬出工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に移動させ、遮断部材38の回転を停止する。
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、ステージの回転を停止し、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ101はホームポジションに位置決めする。そして、チャック24を開状態として基板Wを支持ピンの上に載置する。
その後、シャッター911を開放し、センターロボット96が上側のハンド961を洗浄ユニット91の中に伸ばし、基板保持ユニット20からハンド961へ基板Wが受け渡される。ハンド961により基板Wを保持した後、基板Wを洗浄ユニット91の外に搬出し、シャトル95の上側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は上側のハンド951をインデクサユニット93の側に移動する。
そして、インデクサロボット931が上側のハンド933でシャトル95の上側のハンド951に保持されている基板Wを取り出し、FOUP949の所定の位置に搬入し、一連の処理が終了する。
以上のように、第1実施形態の基板洗浄装置9は、基板表面Wfにパターンが形成された基板Wにおける基板裏面Wbを超音波により洗浄する装置である。このとき、基板表面Wfの周縁領域に第1液体を供給する補助ノズル54が、本願発明の「第1ノズル」として機能し、基板表面Wfの回転中心に第1液体を供給する中心ノズル53が、本願発明の「第3ノズル」として機能する。そして、中心ノズル53および補助ノズル54と接続するアーム52を基板保持ユニット20に対して相対的に移動させるアーム回転機構55が、「アーム移動部」として機能する。
超音波印加液供給部40における超音波ノズル41が、本願発明の「第2ノズル」として機能し、超音波ノズル41に設けられる振動子42に発信信号を出力する超音波出力機構43が本願発明の「発振器」として機能する。
また、ステージ23、チャック24を含む基板保持ユニット20が、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを水平に保持する「基板保持部」として機能し、これらステージ23、チャック24を中心軸A0周り、すなわち鉛直軸周りに回転させるステージ回転機構22が「基板回転部」として機能する。
このような基板洗浄装置および基板洗浄方法により、基板裏面Wbの超音波洗浄中における基板表面Wfのパターン倒壊およびパターン汚染を防止することができる。また、基板表面Wfのパターン汚染防止に固体膜や凍結膜の形成が不要であり、比較的コストの高い純水以外の薬液の消費量を低減することができ、冷却プロセスもなく常温環境下で基板処理が行える。このことから、本願発明は、装置コストおよび基板処理コストを削減できる効果もある。
<第2実施形態>
第1実施形態では、補助ノズル54から供給される第1液体が基板表面Wfに着液する第1着液地点P1からの実際の距離の関係で、超音波ノズル41から供給される超音波印加液が基板裏面Wbに着液する第2着液地点P2の位置を決定した。本発明の実施に関しては、これに限られず、補助ノズル54から第1液体が吐出された後、所定時間内に第1液体が到達する基板表面Wf内の領域の裏面に相当する対象領域内に第2着液地点P2を位置させてもよい。
当該所定時間は、事前の計測などにより適宜設定される。すなわち、事前にノズルから吐出される第1液体の吐出からの経過時間と、第1液体の溶存ガス濃度との関係を取得する。また、事前にパターンへのダメージを抑制できる最大の溶存ガス濃度を取得する。これらの関係により、パターンへのダメージを抑制できる溶存ガス濃度以下が保たれる吐出からの経過時間が得られるため、これを所定時間に設定することで、第1着液地点P1と第2着液地点P2の関係を決めることができる。
例えば、脱気部612により0.1ppmに脱気された第1液体が吐出から1秒後に0.2ppmになることと、パターンへのダメージを抑制できる最大の溶存ガス濃度が0.2ppmであることを事前に計測により取得した場合、所定時間を1秒に設定する。そして、補助ノズル54から第1液体が吐出された後、1秒以内に第1液体が到達する基板表面Wf内の領域をカメラによって基板表面Wfを撮像する等して計測し、その領域を取得する。第2着液地点P2が、これら事前の計測により取得した領域の基板裏面Wbに対応する位置となるように、補助ノズル54および超音波ノズル41を配置する。
これにより、基板裏面Wbの超音波洗浄中における基板表面Wfのパターン倒壊およびパターン汚染を防止することができる。
<第3実施形態>
図10を用いて、本願の第3実施形態に係る基板洗浄装置9を説明する。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、洗浄ユニット91において、補助ノズル54と異なる吐出方向561を有する補助ノズル57が用いられる点であり、その他の構成は同一であるため、同一構成については第1実施形態での説明と同一符号を附して説明を省略する。
図10は、第3実施形態に係る中心ノズル53、補助ノズル57および超音波ノズル41の基板Wに対する配置関係を模式的に説明する側面図である。第3実施形態に係る第1液体供給部50は、補助ノズル54に代えて補助ノズル57を有する。
超音波ノズル41は、第1実施形態と同様に吐出方向44を基板裏面Wbの周縁領域に向けて、基板保持ユニット20に保持される基板Wの径方向外側の下方に配置される。このとき、超音波ノズル41の吐出方向44と基板裏面Wbとは角度θ2の関係にある。ここで、θ2は超音波ノズル41から吐出される超音波印加液の基板裏面Wbへの入射角度である。
超音波ノズル41は基板Wの径方向外側の下方に配置されることから、入射角度θ2は、90度よりも小さい値となり、第3実施形態では30度である。
超音波ノズル41から超音波印加液を吐出した場合、その吐出方向44の延長上に位置する基板表面Wfのパターンにダメージが生じやすい傾向がある。したがって、第1実施形態のように補助ノズル54の吐出方向56が基板表面Wfに対し垂直な方向とし、補助ノズル54からの第1液体の入射角度を90度とすると、補助ノズル54から第1液体が着液する第1着液地点よりも基板Wの径方向内側で基板表面Wfのパターンにダメージが生じるおそれがある。
このダメージを確実に防止するために、第3実施形態では吐出方向561が、基板表面Wfとの角度θ1が角度θ2と等しくなるように、補助ノズル57を基板保持ユニット20に保持される基板Wの径方向外側の上方に配置する。さらに吐出方向44と吐出方向561が鉛直方向に同じ平面内に位置する構成とする。
超音波ノズル41から吐出される超音波印加液が基板裏面Wbに着液する第2着液地点P2は、第1実施形態と同様、補助ノズル57から吐出される第1液体が基板表面Wfに着液する第1着液地点P1から所定距離内の領域である第1着液領域の裏面に相当する対象領域R1内に位置する。第3実施形態において所定距離は、2cmである。
このような配置関係とすることで、補助ノズル57から吐出された第1液体が第1着液地点に到達後、基板表面Wfにおいて広がる方向と、超音波ノズル41から吐出された超音波印加液が第2着液地点に到達後、基板裏面Wbにおいて広がる方向が略同一となる。これにより、超音波印加液から基板Wへ伝搬される超音波エネルギーが基板表面Wfへ伝わっても、溶存ガス濃度の低い第1液体によって基板表面Wfのパターンに強いキャビテーションエネルギーが作用せず、パターンにダメージが生じることを防止することができる。
<第4実施形態>
図11を用いて、本願の第4実施形態に係る基板洗浄装置9を説明する。第4実施形態が第1実施形態と相違するのは、洗浄ユニット91において、中心ノズル53および補助ノズル54に代えてスリットノズル58が用いられる点であり、その他の構成は同一であるため、同一構成については第1実施形態での説明と同一符号を附して説明を省略する。
図11は、第4実施形態に係るスリットノズル58および超音波ノズル41の基板Wに対する配置関係を模式的に説明する側面図である。
スリットノズル58は、直線状に延設される吐出口581を有する。制御部70の動作指令により、アーム回転機構55により中心軸A1周りにアーム52を回動させることで、スリットノズル58を基板保持ユニット20に対し相対移動させることができる。そして、図12に示すように基板保持ユニット20に保持される基板Wの径方向に沿って、スリットノズル58の吐出口581を基板表面Wfと対向させることができる。このとき、吐出口581は基板表面Wfの中心軸A0から周縁領域に亘って位置する。
スリットノズル58へ第1液体供給源601から第1液体が供給されると、吐出口581から吐出方向562に沿って第1液体が基板表面Wfへ供給される。ここで、吐出口581は直線状に設けられるため、吐出方向562は線ではなく平面で表現される。第4実施形態において、吐出方向562は基板保持ユニット20により水平に保持される基板表面Wfに対し垂直な平面に沿う方向となる。したがって、第1着液地点P1も基板表面Wfの中心軸A0近傍から基板の周縁領域に亘って位置する。
また、スリットノズル58は、超音波ノズル41に対し、吐出方向44と吐出方向562が鉛直方向に同じ平面内に位置する構成となるように配置される。
超音波ノズル41から吐出される超音波印加液が基板裏面Wbに着液する第2着液地点P2は、第1実施形態と同様、スリットノズル58から吐出される第1液体が基板表面Wfに着液する第1着液地点P1から所定距離内の領域である第1着液領域の裏面に相当する対象領域R1内に位置する。第4実施形態において所定距離は、2cmである。
第4実施形態では、第1液体供給部50において第1液体を供給するノズルとして、スリットノズル58を用いる。これにより、基板表面Wf上の中心軸A0が交差する地点(すなわち基板表面Wfの中心)から、スリットノズル58の吐出口581の周縁側の端が対向する基板表面Wf上の地点までを結んで形成される、径方向に沿う線分領域全体へ、均一に第1液体を供給することができる。
これにより、超音波ノズル41から吐出された超音波印加液が第2着液地点に到達後、基板裏面Wbにおいて広がっても、その超音波エネルギーが強く伝搬する基板表面Wfに新鮮な第1液体を供給することができ、基板表面Wfのパターンに作用するキャビテーションエネルギーを低減することで、パターンにダメージが生じることを防止することができる。
<変形例>
本発明に係る基板洗浄装置および基板洗浄方法は、上記の第1〜4実施形態に限定されない。
上記の実施形態では基板乾燥工程において遮断機構30を用いたが、本発明の実施に関してはこれに限られず、遮断機構30に代えて、例えば特開2009−111220号公報に記載のガス噴射ヘッドを基板Wの略中央部上方に配置する構成としてもよい。
上記の実施形態では、第2液体として、溶存する窒素ガス濃度が飽和したDIWを用い、第1液体として、溶存ガス濃度が第2液体よりも低いDIWを用いた。このように、第1液体および第2液体へ同一の組成の液体を用いることで、消費する薬液の種類を少なくし、薬液コストや廃液処理のコストを削減することができる。
これに対し、基板裏面Wbをより良好に洗浄するために、基板裏面Wbへ供給する第2液体として、溶存する窒素ガス濃度が飽和した各種の洗浄液を用いてもよい。洗浄液としては、各種の水溶液が挙げられ、例えば、SC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水の混合水溶液)、SC2溶液(塩酸と過酸化水素水の混合水溶液)または希塩酸水溶液を用いることができる。