以下では、この発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板Wの表面Wfに液膜を形成した後、当該液膜を凍結させてから凍結後の液膜(凍結膜)を基板Wの表面Wfから除去することにより、基板Wに対して一連の洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)を施す装置である。
この基板処理装置は、基板Wの表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2(本発明の「基板保持手段」に相当)と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜を凍結させるための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3(本発明の「凍結手段」に相当)と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて疎水化剤を供給する疎水化剤吐出ノズル5(本発明の「疎水化剤供給手段」に相当)と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて凍結膜を融解するための融解液を吐出する融解液吐出ノズル6と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材9と、遮断部材9に設けられ、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて処理液を供給する処理液吐出ノズル97(本発明の「液膜形成手段」に相当)とが設けられている。
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
なお、スピンチャック2としては、このような構成のものに限らず、たとえば、真空吸着式のバキュームチャックが採用されてもよい。このバキュームチャックは、基板Wの下面を真空吸着することにより、基板Wをほぼ水平な姿勢で保持することができる。そして、バキュームチャックは、基板Wを保持した状態で、ほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、基板Wをほぼ水平な姿勢を保ったまま回転させることができる。
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。
図3は図1の基板処理装置に装備された冷却ガス吐出ノズルの動作を示す図である。ここで、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。第1の回動モータ31を駆動して第1のアーム35を揺動させると、冷却ガス吐出ノズル3は基板Wの表面Wfに対向しながら同図(b)の移動軌跡T、つまり基板Wの回転中心位置Pcから基板Wの端縁位置Peに向かう軌跡Tに沿って移動する。ここで、回転中心位置Pcは基板Wの表面Wfと対向しながら基板Wの回転中心A0上に位置する。また、冷却ガス吐出ノズル3は基板Wの側方に退避した待機位置Psに移動可能となっている。
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部64(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガス供給部64から冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3に供給する。このため、冷却ガス吐出ノズル3が基板Wの表面Wfに対向配置されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。したがって、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら当該冷却ガス吐出ノズル3を移動軌跡Tに沿って移動させることで、冷却ガスを基板Wの表面Wfの全面にわたって供給できる。これにより、後述するように基板Wの表面Wfに液膜11fが形成されていると、当該液膜11fの全体を凍結させて基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fを生成可能となっている。
基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さは、冷却ガスの供給量によっても異なるが、例えば50mm以下、好ましくは数mm程度に設定される。このような基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さおよび冷却ガスの供給量は、(1)冷却ガスが有する冷熱を液膜11fに効率的に付与する観点、(2)冷却ガスにより液膜の液面が乱れることがないように液膜を安定して凍結する観点から実験的に定められる。
冷却ガスとしては、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを構成する液体の凝固点より低い温度を有するガス、例えば窒素ガス、酸素ガスおよび清浄なエア等が用いられる。このような冷却ガスによれば、基板Wの表面Wfへのガス供給前にフィルタ等を用いて冷却ガスに含まれる汚染物質を除去することが容易である。したがって、液膜11fを凍結させる際に基板Wの表面Wfが汚染されるのを防止できる。この実施形態では、後述するように基板Wの表面WfにDIWによる液膜11fが形成された状態で冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて冷却ガスを吐出することで、液膜11fを凍結させる。したがって、冷却ガスは液膜11fを構成するDIWの凝固点(氷点)よりも低い温度に調整されたものが用いられる。
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に疎水化剤吐出ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、疎水化剤吐出ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。疎水化剤吐出ノズル5は、疎水化剤供給部71(図2)および溶剤供給部72(図2)と接続されている。疎水化剤吐出ノズル5からは、疎水化剤供給部71から疎水化剤が、溶剤供給部72から溶剤が、基板Wの表面Wfに向けて選択的に吐出される。
疎水化剤供給部71には所定の温度(たとえば、室温から70℃の間)に昇温された液体の疎水化剤が調製されており、基板Wの表面Wfには常温よりも高温の疎水化剤が供給される。
疎水化剤は、基板Wの表面Wfに供給され、基板Wの表面Wfと反応することによって、基板Wの表面Wfの接触角を大きくし、基板Wの表面Wfの疎水性を上げる性質を有する。疎水化剤は、たとえば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、たとえば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
また、疎水化剤は、疎水化剤を溶解することができる希釈溶剤によって希釈された状態で、疎水化剤ノズル5に供給されてもよいし、希釈されずに疎水化剤ノズル5に供給されてもよい。なお、希釈溶剤としては、たとえば、アルコール(一価アルコール)、多価アルコール、ケトン、PGMEA、EGMEA、およびフッ素系溶剤の少なくとも一つを含む。アルコールは、たとえば、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、およびIPAの少なくとも一つを含む。多価アルコールは、たとえば、エチレングリコールを含む。ケトンは、たとえば、アセトン、およびジエチルケトンの少なくとも一つを含む。フッ素系溶剤は、たとえば、HFE、HFCの少なくとも一つを含む。
また、溶剤供給部72に準備されている溶剤は、たとえば、アルコール、ケトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EGMEA(エチレングリコールモノメチルエーテル)、およびフッ素系溶剤の少なくとも一つを含む。アルコールは、たとえば、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、およびIPA(イソプロピルアルコール)の少なくとも一つを含む。ケトンは、たとえば、アセトン、およびジエチルケトンの少なくとも一つを含む。フッ素系溶剤は、たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の少なくとも一つを含む。
図1に戻って説明を続ける。スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。回転支軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに処理液を供給するための処理液供給管25が挿通されている。処理液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する裏面処理液吐出ノズル27が設けられている。処理液供給管25は薬液供給部61(図2)およびリンス液供給部62(図2)と接続されており、薬液供給部61からSC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液が、リンス液供給部62からDIW等のリンス液が選択的に供給される。
回転支軸21の内壁面と処理液供給管25の外壁面の隙間は、円筒状のガス供給路29を形成している。このガス供給路29は乾燥ガス供給部65(図2)と接続されており、スピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に乾燥ガスとして窒素ガスを供給することができる。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給部65から乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出してもよい。
また、スピンチャック2の外方には、第3の回動モータ67が設けられている。第3の回動モータ67には、第3の回動軸68が接続されている。また、第3の回動軸68には、第3のアーム69が水平方向に延びるように連結され、第3のアーム69の先端に融解液吐出ノズル6が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第3の回動モータ67が駆動されることで、融解液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置と吐出位置から側方に退避した待機位置との間で往復移動させることができる。融解液吐出ノズル6は融解液供給部73(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて温水やSC1溶液等の融解液が融解液吐出ノズル6に圧送される。
また、スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材9が設けられている。遮断部材9は、その下面(底面)が基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材9を下降させる。
支持軸91は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材9の開口に連通したガス供給路95が挿通されている。ガス供給路95は、乾燥ガス供給部65と接続されており、乾燥ガス供給部65から窒素ガスが供給される。この実施形態では、基板Wに対する洗浄処理後の乾燥処理時に、ガス供給路95から遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路95の内部には、遮断部材9の開口に連通した液供給管96が挿通されており、液供給管96の下端に処理液吐出ノズル97が結合されている。液供給管96は処理液供給部74(図2)に接続されており、処理液供給部74より処理液が供給されることで、処理液吐出ノズル97から処理液を基板Wの表面Wfに向けて吐出可能となっている。処理液供給部74には所定の温度(たとえば0℃〜2℃)に冷却された処理液が調製されており、基板Wの表面Wfには常温よりも低温の処理液が供給される。処理液としては、薬液または純水、DIW(deionized Water)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水等が用いられる。
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図4を参照しつつ説明する。図4は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して当該基板Wに対して一連の洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)が実行される。ここで、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されることがある。つまり、基板Wの表面Wfがパターン形成面になっている。そこで、この実施形態では、基板Wの表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS1;本発明の「基板保持工程」に相当)。なお、遮断部材9は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、第2の回動モータ51を駆動させて、疎水化剤吐出ノズル5を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置に移動させる。そして、疎水化剤吐出ノズル5から常温よりも高温に昇温された疎水化剤を基板Wの表面Wfに供給する。基板Wの表面Wfに供給された疎水化剤は、基板Wの回転に伴う遠心力によって、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、基板Wの表面Wf全面に供給される。これにより、基板Wの表面Wfは疎水化される(ステップS2;本発明の「疎水化工程」に相当)。
所定時間にわたって基板Wの表面Wfに疎水化剤が供給された後、疎水化剤吐出ノズル5からの疎水化剤の吐出が停止され、疎水化剤吐出ノズル5から溶剤が基板Wの表面Wfに供給される。溶剤も基板Wの回転に伴う遠心力によって、基板Wの全面に供給される。これにより、基板Wに付着している疎水化剤が、溶剤に置換される(ステップS3)。そして、所定時間にわたって基板Wの表面Wfに溶剤が供給された後、疎水化剤吐出ノズル5からの溶剤の吐出が停止され、疎水化剤吐出ノズル5は待機位置に移動される。
次に、制御ユニット4は遮断板昇降機構94を駆動させることにより、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板Wの表面Wfに近接配置される。これにより、基板Wの表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4は処理液吐出ノズル97から処理液の一例であるDIWが常温よりも低温に冷却された状態で基板Wの表面Wfに供給される。基板Wの表面Wfに供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられ、その一部が基板外に振り切られる。これによって、基板Wの表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板Wの表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)が形成される(ステップS4;本発明の「液膜形成工程」に相当)。
なお、液膜形成に際して、上記のように基板Wの表面Wfに供給されたDIWの一部を振り切ることは必須の要件ではない。たとえば、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態で基板WからDIWを振り切ることなく基板Wの表面Wfに液膜を形成してもよい。
ここで、基板Wの表面WfはDIWの供給に先立って行われる疎水化工程において疎水性が高められている。したがって、基板Wの表面Wfに供給されたDIWは基板Wの端縁位置に留まりやすいため、液膜形成工程において形成される液膜の厚みは、疎水化処理が行われていない基板の表面に形成される液膜よりも増大する。
こうして、液膜形成工程が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置させるとともに、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから冷却ガス供給開始位置、つまり回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。
これにより、図3に示すように基板Wの表面Wfの表面領域のうち液膜11fが凍結した領域(凍結領域)が基板Wの表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fが生成される(ステップS5;本発明の「凍結工程」に相当)。なお、冷却ガス吐出ノズル3を移動させながら基板Wを回転させることによって、液膜の厚み分布に偏りが生じるのを抑制しつつ、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fを生成させることができるが、基板Wを高速回転させた場合、基板Wの回転によって生じる気流により、冷却ガス吐出ノズル3から吐出される冷却ガスが拡散してしまい、液膜の凍結の効率が悪くなるため、凍結工程時の基板Wの回転速度は、例えば1〜300rpmに設定される。また、冷却ガス吐出ノズル3の移動速度、吐出ガスの温度および流量、液膜の厚みも考慮して基板Wの回転速度は設定される。
このようにして凍結工程を実行すると、基板Wの表面Wfとパーティクルの間に入り込んだ液膜の体積が増加(摂氏0℃の水が摂氏0℃の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクルが微小距離だけ基板Wの表面Wfから離れる。その結果、基板Wの表面Wfとパーティクルとの間の付着力が低減され、さらにはパーティクルが基板Wの表面Wfから脱離することとなる。このとき、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されている場合であっても、液膜の体積膨張によってパターンに加わる圧力はあらゆる方向に等しく、つまりパターンに加えられる力が相殺される。そのため、パターンを剥離あるいは倒壊させることなく、パーティクルのみを選択的に優先して、基板Wの表面Wfから除去できる。
また、液膜の厚さが増大するにつれて、液膜が凍結したときの体積膨張により発生し、パーティクルに作用する圧力も増大するため、パーティクルの除去率は増大する。本実施形態では、液膜形成工程に先立って疎水化工程が実行されることにより、液膜形成工程において基板Wの表面Wfに形成される液膜の厚さを増大させることができ、パーティクルの除去率を増大させることができる。
液膜の凍結が完了すると、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psに移動させるとともに、第3の回動モータ67を駆動させて、融解液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置に移動させる。そして、凍結膜13fが融解しないうちに融解液吐出ノズル6および裏面処理液吐出ノズル27から約80℃の温水(融解液の一例)およびリンス液をそれぞれ基板Wの表裏面Wf,Wbに供給する。これにより、基板Wの表面Wfの凍結膜が温水によって解凍される。また、凍結膜13fと基板Wの表面Wfに供給された温水とに基板Wの回転による遠心力が作用する。その結果、基板Wの表面Wfからパーティクルを含む凍結膜13fが除去され、基板外に排出される(ステップS7)。さらに、基板Wの裏面Wbについてもリンス液が基板Wの回転により裏面全体に広がり基板Wの裏面Wbがリンス処理される。所定時間にわたって、温水およびリンス液の供給が行われた後、融解液吐出ノズル6は待機位置に移動される。
こうして、膜除去処理が終了して基板Wの洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)が完了すれば、続いて基板Wの乾燥処理が実行される。制御ユニット4は遮断板昇降機構94を駆動させることにより、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板Wの表面Wfに近接配置される。そして、チャック回転機構22および遮断部材回転機構93のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させる。これにより、基板Wの乾燥処理(スピンドライ)が実行される(ステップS7)。さらに、この乾燥処理においては、ガス供給路95,29から窒素ガスを供給することで、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に挟まれた空間およびスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に挟まれた空間が窒素ガス雰囲気とされる。これにより、基板Wの乾燥が促進され、乾燥時間を短縮することができる。
また、乾燥処理において基板Wの表面Wfが乾燥していく過程では、パターン同士を引き付ける力が生じてパターンが倒壊する場合がある。特にアスペクト比の高いパターンで倒壊が起こりやすい。この場合、基板Wの表面Wf、すなわちパターンの表面の接触角を大きくすれば、パターン同士を引き付ける力が減少し、パターン倒壊を抑制することができる。本実施形態では、基板Wの表面Wfは、疎水化工程において疎水化されている。したがって、基板Wの表面Wfに形成されているパターンの表面の接触角は大きくなる。したがって、乾燥処理において、基板Wの表面Wfに形成されている微細パターンが基板Wの表面Wfに付着している液体の表面張力によって倒壊することが防止される。乾燥処理後は基板Wの回転が停止され、装置から処理済の基板Wが搬出される(ステップS8)。
以上のように、本実施形態によれば、液膜形成工程に先立って、基板Wの表面Wfに疎水化剤を供給することによって、基板Wの表面Wfが疎水化される。したがって、液膜形成工程において、基板Wの表面Wfに供給されたDIWは基板Wの端縁位置に留まりやすくなり、基板Wの表面Wfに形成される液膜の厚みが増大する。したがって、基板Wの表面Wfに生成される凍結膜の厚みをより増大させることができ、パーティクルの除去率を増大させることができる。
また、本実施形態によれば、基板Wの表面Wfが疎水化剤によって疎水化されるため、乾燥工程において、基板Wの表面Wfに形成された微細パターンが倒壊することを防止することができる。
また、本実施形態によれば、疎水化工程において、所定の温度に昇温された液体の疎水化剤が供給されるので、基板Wの表面Wfの疎水化処理を効率的に行うことができる。すなわち、疎水化剤の温度を高くすることによって、基板Wの表面Wfと疎水化剤との反応性が高められ、より短時間で基板Wの表面Wfを疎水化することができる。また、短時間で基板Wの表面Wfを疎水化することができるため、基板Wの表面Wfに供給される疎水化剤の量を削減することができる。
また、本実施形態によれば、液膜形成工程において、所定の温度に冷却されたDIWが基板Wの表面Wfに供給される。したがって、基板Wの表面Wfに形成されるDIWの液膜の温度を低くすることができる。これにより、その後の凍結工程において、DIWの液膜を短時間で凍結させることができる。
なお、本実施形態では、基板Wの表面Wfに温水を供給して凍結膜を除去しているが、基板Wの表面Wfに対して化学洗浄を施して凍結膜を除去してもよい。すなわち、融解液吐出ノズル6から温水ではなく、SC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)が基板Wの表面Wfに供給されてもよい。ここで、SC1溶液中の固体表面のゼータ電位(界面動電電位)は比較的大きな値を有することから、基板Wの表面Wfと当該基板Wの表面Wf上のパーティクルとの間がSC1溶液で満たされることにより、基板Wの表面Wfとパーティクルとの間に大きな反発力が作用する。したがって、基板Wの表面Wfからのパーティクルの脱離をさらに容易にして、基板Wの表面Wfからパーティクルを効果的に除去することができる。
また、基板Wの表面WfへのSC1溶液の供給と同時に基板Wの裏面Wbにも裏面処理液吐出ノズル27からSC1溶液を供給してもよい。これにより、基板Wの裏面Wbに汚染物質が付着している場合でも、SC1溶液の化学洗浄作用により汚染物質を基板Wから効果的に除去することができる。なお、SC1溶液による洗浄後、基板Wの表裏面Wf,WbにDIWが供給され、DIWによるリンス処理が行われる。
図5はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態にかかる基板処理装置が第1実施形態と相違する点は、処理液吐出ノズル97から液体の疎水化剤が吐出される点である。すなわち、処理液吐出ノズル97は、疎水化剤供給部71(図2)と接続されている。処理液吐出ノズル97からは、疎水化剤供給部71から液体の疎水化剤が基板Wの表面Wfに向けて吐出される。さらに、第2実施形態においては、疎水化剤供給部71には所定の温度(たとえば、0℃〜2℃)に冷却された疎水化剤が調製されており、基板Wの表面Wfには常温よりも低温の疎水化剤が供給される。なお、第2実施形態においては疎水化剤吐出ノズル5およびこれに関連する構成は省略されている。また、融解液吐出ノズル6からは、融解液として溶剤が吐出される。溶剤の種類としては、第1実施形態において溶剤供給部72から供給される溶剤と同様である。なお、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
次に、第2実施形態にかかる基板処理装置における洗浄処理動作について図6を参照しつつ説明する。図6は図5の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。まず、第1実施形態と同様に、基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS11;本発明の「基板保持工程」に相当)。
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板Wの表面Wfに近接配置される。これにより、基板Wの表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、処理液吐出ノズル97から所定の温度に冷却された液体の疎水化剤が基板Wの表面Wfに供給される。基板Wの表面Wfに供給された疎水化剤には、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、基板Wの径方向外向きに均一に広げられる。これによって、基板Wの表面Wfの全面にわたって疎水化剤が供給される。
所定時間にわたって、疎水化剤が供給されることによって、基板Wの表面Wfが疎水化される。その後、基板Wの回転を停止させた状態あるいは基板Wを比較的低速で回転させた状態とすることにより、液膜の厚みを均一にコントロールして、基板Wの表面Wfの全体に所定の厚みを有する疎水化剤の液膜が形成される(ステップS12;本発明の「疎水化剤液膜形成工程」に相当)。
このように、第2実施形態では、処理液吐出ノズル97が本発明の「疎水化剤液膜形成手段」として機能する。第2実施形態においても第1実施形態と同様に、疎水化剤が基板Wの表面Wfに供給されることによって、基板Wの表面Wfの疎水性が高められる。したがって、基板Wの表面Wfに供給された疎水化剤は基板Wの端縁位置に留まりやすいため、疎水化剤液膜形成工程において形成される疎水化剤の液膜の厚みを増大させることができる。
こうして、疎水化剤液膜形成工程が終了すると、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置させるとともに、冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから冷却ガス供給開始位置、つまり回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転する基板Wの表面Wfに向けて冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。これにより、図3に示すように基板Wの表面Wfの表面領域のうち液膜11fが凍結した領域(凍結領域)が基板Wの表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fが生成される(ステップS13;本発明の「凍結工程」に相当)。なお、冷却ガス吐出ノズル3の移動速度、吐出ガスの温度および流量、液膜の厚みも考慮して基板Wの回転速度は設定される。
液膜の凍結が完了すると、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psに移動させるとともに第3の回動モータ67を駆動させて、融解液吐出ノズル6を基板Wの回転中心A0の上方の吐出位置に移動させる。そして、凍結膜13fが融解しないうちに融解液吐出ノズル6から融解液としての溶剤を基板Wの表面Wfに供給する。これにより、基板Wの表面Wfの凍結膜が溶剤によって解凍される。また、凍結膜13fと基板Wの表面Wfに供給された溶剤とに基板Wの回転による遠心力が作用する。その結果、基板Wの表面Wfからパーティクルを含む凍結膜13fが除去され、基板外に排出される(ステップS14)。所定時間にわたって、溶剤の供給が行われた後、融解液吐出ノズル6は待機位置に移動される。
こうして、膜除去処理が終了して基板Wの洗浄処理(液膜形成+液膜凍結+膜除去)が完了すれば、続いて基板Wの乾燥処理が実行される。制御ユニット4は遮断板昇降機構94を駆動させることにより、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板Wの表面Wfに近接配置される。そして、チャック回転機構22および遮断部材回転機構93のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させる。これにより、基板Wの乾燥処理(スピンドライ)が実行される(ステップS15)。さらに、この乾燥処理においては、ガス供給路95,29から窒素ガスを供給することで、遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に挟まれた空間およびスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に挟まれた空間が窒素ガス雰囲気とされる。これにより、基板Wの乾燥が促進され、乾燥時間を短縮することができる。第2実施形態においても、基板Wの表面Wfは、疎水化剤液膜形成工程において疎水化されているため、乾燥処理において、基板Wの表面Wfに形成されている微細パターンが倒壊することが防止される。乾燥処理後は基板Wの回転が停止され、装置から処理済の基板Wが搬出される(ステップS16)。
以上のように、第2実施形態によれば、基板Wの表面Wfに液体の疎水化剤が供給されることによって、基板Wの表面Wfが疎水化されつつ、疎水化剤の液膜が形成される。これにより、疎水化剤の液膜の厚みを増大させることができ、パーティクルの除去率を増大させることができる。
また、第2実施形態によれば、疎水化剤液膜形成工程において、所定の温度に冷却された疎水化剤が基板Wの表面Wfに供給される。したがって、基板Wの表面Wfに形成される疎水化剤の液膜の温度を低くすることができる。これにより、その後の凍結工程において、疎水化剤の液膜をより短時間で凍結させることができる。
さらに、第2実施形態によれば、第1実施形態のように、疎水化工程の後に、基板Wの表面Wfに付着している疎水化剤を溶剤で置換する溶剤置換処理を行う必要がない。
以上、この発明の第1および第2実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。前述の第2実施形態では、凍結膜を除去する融解液として溶剤が用いられているが、疎水化剤の種類によっては、融解液として温水やSC1溶液等が用いられてもよい。すなわち、疎水化剤と水が化学反応を起こす場合は、融解液として溶剤が用いられることが好ましいが、疎水化剤と水が反応しない、もしくはほとんど反応しない場合は、融解液として温水やSC1溶液等が用いられてもよい。
また、前述の第1実施形態では、疎水化工程の後に、基板Wに付着している疎水化剤を溶剤で置換し、その後基板WにDIWが供給されて液膜形成工程が行われているが、溶剤置換処理は必ずしも行われなくてもよい。上述のように水と化学反応を起こす疎水化剤の場合は、溶剤置換処理が行われることが好ましいが、水と反応しない、もしくはほとんど反応しない疎水化剤の場合は、溶剤置換処理が省かれてもよい。
また、前述の第1実施形態では、疎水化剤吐出ノズル5から液体の疎水化剤が基板Wの表面Wfに供給されているが、気体の疎水化剤が供給されてもよい。すなわち、疎水化工程において気体の疎水化剤が用いられてもよい。気体の疎水化剤を用いる場合は液体の疎水化剤を用いる場合に比べて、疎水化剤の使用量を削減することができる。
また、前述の第1および第2実施形態では、処理液吐出ノズル97は遮断部材9に設けられているが、遮断部材9に設けられていなくてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。