以下の説明において、基板とは、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの各種基板をいう。
以下の説明においては、一方主面のみに凹凸を有する回路パターン等(以下「パターン」と記載する)が形成されている基板を例として用いる。ここで、パターンが形成されている主面を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板の面を「下面」と称し、上方に向けられた基板の面を「上面」と称する。なお、第1実施形態においては上面を表面として説明し、第2実施形態においては上面を裏面として説明する。
また、以下の説明において、基板は略円形状の基板であり、一部の周縁にノッチやオリエンテーション・フラットが設けられている。基板としては、直径が100mm以上450mm以下の基板が通常用いられるが、本願発明の実施において、基板の形状や寸法は、これに限られない。
以下の説明において、常温とは、本発明に係る基板処理装置が設備されている工場内の雰囲気の温度を意味する。また、以下の実施形態では、常温を摂氏20度±15度の範囲とする。
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板の処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明する。なお、本発明は、半導体基板の処理に限らず、液晶表示器用のガラス基板などの各種の基板の処理にも適用することができる。
<第1実施形態>
図1、図2および図3はこの発明に係る基板処理装置9の概略構成を示す図である。図1は基板処理装置9の正面図であり、図2は図1の基板処理装置9のB1-B1線に沿った矢視断面図である。また、図3は図1の基板処理装置9を矢印B2側からみた側面図である。この装置は半導体基板等の基板W(以下、単に「基板W」と記載する)に付着しているパーティクル等の汚染物質(以下「パーティクル等」と記載する)を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。
なお、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。また、各座標系において、矢印の先端が向く方向を+(プラス)方向とし、逆の方向を-(マイナス)方向とする。
<1-1.基板処理装置の全体構成>
基板処理装置9は、基板Wを例えば25枚収容したFOUP(Front Open Unified Pod)949を載置するオープナー94と、オープナー94上のFOUP949から未処理の基板Wを取り出し、また処理完了後の基板WをFOUP949内に収納するインデクサユニット93と、インデクサユニット93とセンターロボット96との間で基板Wの受け渡しを行うシャトル95と、基板Wをセンターロボット96でその内部に収容して洗浄を行う洗浄ユニット91と、洗浄ユニット91に供給される液体や気体の配管、バルブ等を収容する流体ボックス92とで構成される。
まず、これらの平面的な配置について図2を用いて説明する。基板処理装置9の一端(図2において左端)には複数の(本実施形態においては3台の)オープナー94が配置される。オープナー94の図2における右側(+Y側)に隣接してインデクサユニット93が配置される。インデクサユニット93のX方向における中央付近であって、インデクサユニット93の図2における右側(+Y側)に隣接してシャトル95が配置され、シャトル95の図2における右側(+Y側)に、シャトル95と+Y方向に並ぶようにセンターロボット96が配置される。このように、インデクサユニット93、シャトル95およびセンターロボット96は、直交する二本のラインの配置をなしている。
+Y方向に並ぶように配置されたシャトル95とセンターロボット96の図2における上側(-X側)と下側(+X側)には洗浄ユニット91と流体ボックス92が配置されている。すなわち、シャトル95とセンターロボット96の図2における上側(-X側)または下側(+X側)に、インデクサユニット93の図2における右側(+Y側)に隣接して、流体ボックス92、洗浄ユニット91、洗浄ユニット91、流体ボックス92の順に配置されている。なお、インデクサユニット93の+X側(図2における下側)の側面には後述する制御部70の操作部971が設置されている(図1参照)。
次に、オープナー94について説明する。オープナー94はその上部にFOUP949を載置する載置面941と、FOUP949の正面(図1および図2におけるFOUP949の右側(+Y側)の面)に対向して配置され、FOUP949の正面にある蓋部(図示省略)を開閉する開閉機構943(図3参照)を備える。
基板処理装置9の外部から自動搬送車両等により搬入されたFOUP949は、オープナー94の載置面941上に載置され、開閉機構943により蓋部が解放される。これにより、後述するインデクサユニット93のインデクサロボット931が、FOUP949内の基板Wを搬出し、逆にFOUP949内に基板Wを搬入することが可能となる。
次に、インデクサユニット93について説明する。インデクサユニット93には、FOUP949から処理工程前の基板Wを一枚ずつ取り出すとともに、処理工程後の基板WをFOUP949に一枚ずつ収容し、更に基板Wをシャトル95と受け渡しする、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド933を有するインデクサロボット931が備えられている。インデクサロボット931はX軸方向に水平移動自在であり、またZ軸方向に昇降移動自在であるとともに、Z軸周りに回転可能に構成されている。
次に、シャトル95について説明する。シャトル95には、基板Wの図2における上側(-X側)および下側(+X側)の周縁部付近であって、インデクサロボット931のハンド933および後述するセンターロボット96のハンド961と干渉しない位置を保持する、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド951と、2組のハンド951をそれぞれ独立してY軸方向に水平移動する水平移動機構(図示せず)とを備える。
シャトル95はインデクサロボット931とセンターロボット96双方との間で基板Wを受け渡し可能に構成されている。すなわち、図示しない水平移動機構によりハンド951が図2における左側(-Y側)に移動した場合、インデクサロボット931のハンド933との間で基板Wの受け渡しが可能となり、また、ハンド951が図2における右側(+Y側)に移動した場合はセンターロボット96のハンド961との間で基板Wの受け渡しが可能となる。
次に、センターロボット96について説明する。センターロボット96には、基板Wを1枚ずつ保持し、シャトル95または洗浄ユニット91との間で基板Wの受け渡しを行う、Z軸方向に上下に配置された2組のハンド961と、鉛直方向(Z軸方向)に延設され、ハンド961の鉛直方向の移動の軸となる昇降軸963と、ハンド961を昇降移動させる昇降機構965と、ハンド961をZ軸周りに回転させる回転機構967を備える。センターロボット96はZ軸方向に昇降軸963に沿って昇降移動自在であるとともに、回転機構967によってハンドがZ軸周りに回転可能に構成されている。
なお、洗浄ユニット91の後述する側壁であって、センターロボット96に対向する面には、センターロボット96のハンド961を伸ばして洗浄ユニット91内に基板Wを搬入し、または搬出するための開口が設けられている。また、センターロボット96が洗浄ユニット91と基板Wの受け渡しを行わない場合に上記開口を閉塞して洗浄ユニット91内部の雰囲気の清浄度を保持するためのシャッター911が設けられている。
図1に示すように洗浄ユニット91と流体ボックス92は上下2段に積み上げる構成とされている。したがって、本実施形態における基板処理装置9には洗浄ユニット91および流体ボックス92はそれぞれ8台ずつ備えられている。なお、本発明の実施に関して、洗浄ユニット91および流体ボックス92の台数は8台に限られず、これより多い構成であっても、少ない構成であっても、本発明の実施は可能である。
次に、インデクサロボット931、シャトル95およびセンターロボット96による基板Wの搬送の手順について説明する。基板処理装置9の外部から自動搬送車両等により搬入されたFOUP949は、オープナー94の載置面941上に載置され、開閉機構943により蓋部が解放される。インデクサロボット931はFOUP949の所定の位置から下側のハンド933により基板Wを1枚取り出す。その後、インデクサロボット931はシャトル95の前(図2におけるインデクサユニット93のX軸方向中央付近)に移動する。同時にシャトル95は下側のハンド951をインデクサユニット93の側(図2における左側(-Y側))へ移動する。
シャトル95の前に移動したインデクサロボット931は下側のハンド933に保持した基板Wをシャトル95の下側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は下側のハンド951をセンターロボット96の側(図2における右側(+Y側))に移動する。また、センターロボット96がシャトル95にハンド961を向ける位置に移動する。
その後、センターロボット96が下側のハンド961により、シャトル95の下側のハンド951に保持された基板Wを取り出し、8つある洗浄ユニット91のいずれかのシャッター911へハンド961を向けるように移動する。その後、シャッター911が開放され、センターロボット96が下側のハンド961を伸ばして洗浄ユニット91内に基板Wを搬入し、洗浄ユニット91内での基板Wの洗浄処理が開始される。
洗浄ユニット91内で処理が完了した基板Wは、センターロボット96の上側のハンド961で搬出され、その後は上記未処理の基板Wを搬送する場合とは逆にセンターロボット96の上側のハンド961、シャトル95の上側のハンド951、インデクサロボット931の上側のハンド933の順に移載され、最終的にFOUP949の所定の位置に収容される。
<1-2.洗浄ユニット>
次に、洗浄ユニット91の構成について図4を用いて説明する。図4は洗浄ユニット91の構成を示す模式図である。ここで、本実施形態における8つの洗浄ユニット91はそれぞれ同じ構成であるため、図2における矢印B3の示す洗浄ユニット91(図1において左下側の洗浄ユニット91)を代表とし、以下、第1実施形態の洗浄ユニット91を「洗浄ユニット91a」と称して説明する。洗浄ユニット91aは、パターンが形成された基板表面Wfを上方(Z方向)に向けて、基板Wを水平(XY平面内)に保持する基板保持ユニット20と、基板保持ユニット20をその内側に収容し、基板保持ユニット20および基板Wからの飛散物等を受け止めて排気・排液するカップ101と、基板保持ユニット20に保持された基板表面Wfに対向して配置され、基板表面Wfの上方の空間を外気から遮断する遮断機構30と、超音波印加液供給部40と、水難溶性液体供給部50を備える。
さらに、洗浄ユニット91aは、後述する記憶部72におけるプログラムに基づいて基板処理装置9の各部の動作を制御する制御部70を備える。また、洗浄ユニット91aは、後述する各部構成により、基板Wの基板表面Wfまたは基板裏面Wbへ、水難溶性の液体、第1液体、第2液体、第2液体に超音波を印加した超音波液、乾燥気体を供給する。
第1実施形態において、基板Wはシリコンウエハである。基板表面Wfに形成されるパターンは、少なくとも絶縁膜を含み、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターンは、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。絶縁膜は、SiO2膜であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。積層膜を構成する各膜として、例えばポリシリコン膜、SiN膜、BSG膜(ホウ素を含むSiO2膜)、およびTEOS膜(TEOS(テトラエトキシシラン)を用いてCVD法で形成されたSiO2膜)等が用いられる。
水難溶性の液体とは、第1液体に対する難溶性の液体であり、不溶である液体も含む。具体的には、後述する第1液体として用いる脱イオン水(DIW)に対して不溶、または溶け難い公知の液体を用いることができる。例えば、シクロヘキサノン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ヘキサメチルジシロキサン、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、ハイドロフルオロカーボン(1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンやパーフルオロカーボンなど)ハイドロフルオロエーテル(HFE)、などが挙げられ、水への溶解度がおおよそ720ppm以下の液体である。なお、第1実施形態では、水難溶性の液体としてハイドロフルオロエーテル(以下「HFE」と称す)を用いる。
また、第1液体としては、基板表面Wfのパターンに対して比較的不活性な液体が用いられる。特に、一般にリンス液として用いられる液体が好適であり、例えばDIW、炭酸水、水素水等の純水が用いられる。第1実施形態では、第1液体としてDIWを用いる。
第2液体としては、基板Wの種類に応じて公知の洗浄液・リンス液が用いられる。特に、第1液体と同一組成の液体を用いることが、使用する液体の種類が少なくなりタンク等にかかるコストを低く抑えられ、また、液体回収機構等も簡易な構成とできるため好適である。すなわち、第1液体として純水が用いられるとき、第2液体としても純水を用いることが好適である。第1実施形態では、第2液体としてDIWを用いる。
なお、本発明の実施においてはこれに限られず、第2液体としては、例えば水酸化アンモニウム、過酸化水素水および水の混合液(SC-1)、塩酸、過酸化水素水および水の混合液(SC-2)、希弗酸(DHF)、または硫酸、過酸化水素水および水の混合液(SPM)等を用いても良い。
第2液体は、組成としては上記の液体を用いるが、その溶存ガス濃度は飽和レベルであることが好適である。溶存ガスとしては、例えば窒素ガス、空気(窒素約80%、酸素約20%)が用いられる。第1実施形態では、第2液体として窒素ガスの溶存ガス濃度が18ppm以上、すなわち大気圧環境下で窒素ガスの溶存ガス濃度が飽和したDIWを用いる。
乾燥気体は、該気体中に含まれる水蒸気の露点が、基板W近傍の雰囲気の温度よりも低い(すなわち、気体中に含まれる水蒸気の分圧が、基板W近傍の雰囲気における水の蒸気圧よりも低い)気体である。特に、露点が-10度(摂氏)以下の気体が好適であり、-40度(摂氏)以下の気体がより好適である。乾燥気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、または清浄乾燥空気(Clean Dry Air,窒素ガスと酸素ガスの分圧比が約80%:約20%の気体)が挙げられる。なお、本実施形態では、露点が-40度の窒素ガスを乾燥空気として用いる。
次に、洗浄ユニット91aの各部について説明する。基板保持ユニット20は、基板表面Wfまたは基板裏面Wbを上方(Z方向)に向けて、基板Wを水平(XY平面内)に保持するユニットである。第1実施形態では、基板表面Wfを上方に向けて保持する例を説明するが、同様にして基板裏面Wbを上方に向けて保持することもできる。
基板保持ユニット20は、洗浄ユニット91aの底部に固設され、上方に基板裏面Wbと対向する円板状のステージ23を有する。ステージ23は、ステージ回転機構22に接続され、鉛直方向に沿った中心軸A0周りに水平面内に回転可能となっている。また、ステージ23には、中心軸A0と交差する位置に下方ノズル27として開口を有する。
ステージ23の周縁付近には、基板Wの周縁部を保持する複数個のチャック24が立設されている。チャック24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、ステージ23の周縁に沿って等角度間隔で配置される。各チャック24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する支持ピンと、該支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する保持ピンとを備えており、チャック24は基板Wを保持する保持部材として機能する。
各チャック24は公知のリンク機構や褶動部材等を介して図示しないエアシリンダに連結され、制御部70が該エアシリンダの駆動部と電気的に接続し、制御部70の動作指令によりエアシリンダは伸縮する。これにより、各チャック24が、その保持ピンが基板Wの外周端面を押圧する「閉状態」と、その保持ピンが基板Wの外周端面から離れる「開状態」との間を切り替え可能としている。なお、チャック24の開閉状態を変位させる駆動源として、エアシリンダ以外にモーターやソレノイド等の公知の駆動源を用いることも可能である。
ステージ23に基板Wが受渡しされる際には、各チャック24を開状態とし、基板Wに対して洗浄処理等を行う際には、各チャック24を閉状態とする。各チャック24を閉状態とすると、各チャック24が基板Wの周縁部を把持する。これにより、基板Wはステージ23から所定距離だけ離間して、基板表面Wfを上方に向け、基板裏面Wbを下方に向けた状態で水平姿勢に保持される。当該所定距離は、各チャック24の構造・サイズに依存するが、基板Wの半径と比べ十分短く、例えば5mm以上30mm以下の距離である。
ステージ23に設けられる下方ノズル27には、ステージ23から下方に貫通する下方内管25が連通する。下方内管25は一方を下方ノズル27と接続し、他方を第2液体供給源605と接続する。第2液体供給源605は、第2液体を下方内管25の内部へ供給する供給源である。
また、ステージ23には、下方内管25を取り囲むように下方外管21が設けられる。下方外管21は、下方内管25と同様にステージ23から下方に貫通し、下方内管25と下方外管21はいわゆる二重管構造をなす。下方外管21と下方内管25との間には、気体供給路26が形成され、気体供給路26はステージ23側に開口し、他方は乾燥気体供給源606と接続する。乾燥気体供給源606は、乾燥気体を気体供給路26へ供給する供給源である。
カップ101について説明する。カップ101は、基板保持ユニット20に保持される基板Wの周囲を包囲するように略円環状に設けられる。カップ101は、基板保持ユニット20および基板Wから飛散する液体などを捕集するために、中心軸A0に対し、略回転対称な形状を有する。なお、図4において、カップ101は断面形状を示している。
カップ101の具体的な構造・動作については、特開2006-286831号公報と同様であるため、詳細な説明は省略する。カップ101は、互いに独立して昇降可能な内構成部材、中構成部材および外構成部材で構成され、これらが重ねられた構造を有する。各部材には図示省略する上下方向駆動部が接続され、基板処理の内容に応じて各部材をそれぞれ独立に、又は複数の部材が同期して中心軸A0方向に沿って上下方向に移動可能に設けられる。
図4は、カップ101の各部材が最も下方に位置する状態であり、ホームポジションと称する。ホームポジションはセンターロボット96が基板Wを洗浄ユニット91内に搬入出する場合などにおいて取られる位置である。
遮断機構30について説明する。遮断機構30は、基板保持ユニット20に保持される基板Wの基板表面Wfと対向する基板対向面381を下面に有する遮断部材38を備える。遮断部材38は、円板状に形成され、中心部に上方内管ノズル37および上方外管ノズル39を有する。基板対向面381は水平面内に広がり、基板保持ユニット20に保持される基板Wの基板表面Wfと平行に対向する。また、遮断部材38のうち基板対向面381の直径は基板Wの直径と同等以上の大きさに形成される。遮断部材38は、その内部が中空であって略円筒形状を有する回転軸31の下方に回転可能に水平に支持される。
回転軸31は上方でアーム32と接続する。回転軸31および遮断部材38は、アーム32により基板保持ユニット20と対向する上方位置に支持される。遮断部材38は、回転軸31およびアーム32を介して、遮断部材38を回転する遮断部材回転機構33と接続する。遮断部材回転機構33は、図示しない中空モーターおよび中空軸で構成され、中空軸の一端が中空モーターの回転軸に連結し、他端が回転軸31の中を通して遮断部材38の上面に連結する。
また、遮断部材回転機構33は制御部70と電気的に接続する。制御部70の動作指令により遮断部材回転機構33が駆動すると、遮断部材回転機構33は、遮断部材38を回転軸31の中心を通る中心軸周りに回転させる。遮断部材回転機構33は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材38を回転させるように構成されている。なお、遮断部材38は、その中心軸がステージ23の中心軸A0と略一致するように配設される。したがって、ステージ23と遮断部材38は、略同じ中心軸周りに水平に回転する。
アーム32には、公知の駆動機構で構成された遮断部材昇降機構34が接続する。遮断部材昇降機構34は制御部70と電気的に接続する。制御部70の動作指令により遮断部材昇降機構34が駆動すると、遮断部材昇降機構34は、遮断部材38をステージ23に近接し、または離間する。
すなわち、制御部70は、遮断部材昇降機構34の動作を制御して洗浄ユニット91aに対して基板Wを搬入出させる際や、基板Wに対して、後述する水難溶性液体供給工程を行う際には、遮断部材38を基板保持ユニット20の上方の離間位置に上昇させる。一方、基板Wに対して後述する洗浄工程等を行う際には、遮断部材38を基板保持ユニット20に保持された基板表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
次に、遮断機構30の管路構成について説明する。遮断機構30のアーム32の上面から、回転軸31を介して、遮断部材38の中心部の開口まで連通する中空部の内部には、上方外管35が挿通されるとともに、該上方外管35に上方内管36が挿通され、いわゆる二重管構造となっている。上方外管35および上方内管36の下方端部は遮断部材38の開口に延設され、上方内管36の一方先端は上方内管ノズル37と、上方外管35の一方先端は上方外管ノズル39と、それぞれ接続する。上方内管ノズル37および上方外管ノズル39は、遮断部材38の基板対向面381の中央部に設けられる。
上方内管36は、他方を第1液体供給源601と接続する。第1液体供給源601は、第1液体を上方内管36へ供給する供給源である。上方外管35は、他方を乾燥気体供給源602と接続する。乾燥気体供給源602は、乾燥気体を上方外管35へ供給する供給源である。
次に、超音波印加液供給部40の構成を説明する。超音波印加液供給部40は、第2液体に超音波を印加した超音波印加液を基板Wに供給する。超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41と、超音波ノズル41が備える振動子42へ超音波信号を出力する超音波出力機構43と、超音波ノズル41に連通して接続する第2液体供給源603とを備える。
超音波ノズル41は、カップ101の最外部における上部にノズル取付部材によって、超音波ノズル41の吐出口が、中心軸A0の方向を向くように固設される。図4に示すようにカップ101をホームポジションに位置させると、超音波ノズル41は基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板裏面Wbよりも低い位置に位置決めされ、このとき、超音波ノズル41の吐出口はステージ23の外周側から基板裏面Wbの周縁部に向く。この位置決め状態で該吐出口の向く方向を「吐出方向44」と称する。この位置決め状態で第2液体供給源603から超音波ノズル41へ第2液体を圧送すると、超音波ノズル41の吐出口から第2液体が吐出方向44に沿って基板裏面Wbに供給される。
この超音波ノズル41の内部には振動子42が配置される。振動子42は、超音波ノズル41の内部に供給される第2液体に超音波振動を付与する。詳述すれば、振動子42は、図4に示すように吐出方向44において、超音波ノズル41の吐出口の反対側に配置される。
超音波出力機構43は、制御部70と電気的に接続し、制御部70からの制御信号にもとづいてパルス信号を振動子42へ出力する機構である。パルス信号が振動子42に入力されると、振動子42が超音波振動する。
超音波ノズル41の吐出口から第2液体が吐出方向44に沿って基板裏面Wbに供給された状態で、超音波出力機構43により振動子42を超音波振動させると、第2液体に超音波が印加され、基板裏面Wbには第2液体に超音波が印加された超音波印加液が供給される。これにより基板裏面Wbに超音波振動が伝播して基板裏面Wbを超音波洗浄することができる。
次に、水難溶性液体供給部50の構成を説明する。水難溶性液体供給部50は、ノズル51と、一方をノズル51と接続するアーム52と、アーム52の他方と接続する回転軸53と、回転軸53を鉛直方向に伸びる中心軸A1周りに回転することで、アーム52およびノズル51を中心軸A1周りに回転させるアーム回転機構54と、ノズル51に水難溶性の液体を供給する供給源である水難溶性液体供給源604と、を有する。ノズル51の中心軸A1周りの回転動作については後述する。
次に、制御部70の内部構成について説明する。図5は、制御部70と洗浄ユニット91aの各構成との電気的接続を模式的に図示したブロック図である。制御部70は、図5に示すように洗浄ユニット91aの各部構成と電気的に接続し、動作指令により各部構成を制御する。制御部70は、上記説明のほか、供給源制御部60と電気的に接続する。供給源制御部60は、各種供給源601ないし606とそれぞれ電気的に接続し、供給源からの液体または気体の供給を各個別に制御する制御部である。供給源制御部60からの動作指令により、例えば第2液体供給源603から下方ノズル27へ第2液体が圧送され、また第2液体の圧送が停止される。同様に、供給源制御部60からの動作指令により、例えば水難溶性液体供給源604からノズル51へ水難溶性の液体が圧送され、また水難溶性の液体の圧送が停止される。制御部70は、供給源制御部60の指令出力を総括的に制御する。
図6は、制御部70の内部構成を示す模式図である。制御部70は、基板処理装置9の各部と電気的に接続しており(図1参照)、各部の動作を制御する。制御部70のハードウエアとしての構成は、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部70は、例えば、各種演算処理を行う演算処理部(CPU)71、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、およびプログラムやデータなどを記憶しておくHDDからなる記憶部72がバスライン73に接続して構成されている。記憶部72には、基板Wの処理内容および処理手順を規定するレシピ、および基板処理装置9の構成に関する装置情報などが記憶されている。
制御部70において、プログラムに記述された手順に従って主制御部としての演算処理部71が演算処理を行うことにより、基板処理装置9の各部を制御する各種の機能部が実現される。もっとも、制御部70において実現される一部あるいは全部の機能部は、専用の論理回路などでハードウエア的に実現されてもよい。なお、制御部70にはプログラムの作成・変更や、複数のプログラムの中から所望のものを選択するために用いる操作部971(図1参照)が接続されている。
次に、第1液体供給源601、第2液体供給源603,605へそれぞれ第1、第2液体としてのDIW(処理液)を供給する処理液供給部110について説明する。図7は、処理液供給部110の構成を模式的に示す図である。第1実施形態において、第1液体と第2液体は同一の処理液であるDIWが用いられるため、これら供給源601,603,605には同一の処理液供給部110が接続される。
処理液供給部110は、処理液L2(第1実施形態では、DIW)を貯留する貯留部111と、貯留部111と一方を接続する配管113および配管114と、配管113の他方と接続し窒素ガスを配管113に供給する供給源である窒素ガス供給源620と、配管113に介挿され、窒素ガス供給源620から窒素ガスを貯留部111の方向へ圧送するポンプ112と、を有する。
また、処理液供給部110は、配管114の分岐する他端とそれぞれ接続する配管115、配管116および配管117と、配管115に介挿されるバルブV1と、配管116に介挿されるバルブV2と、配管117に介挿されるバルブV3と、をさらに有する。
配管115は配管114と反対側のガス脱気部118を経由して第1液体供給源601と接続し、配管116は配管114と反対側の一端を第2液体供給源603と接続し、配管117は配管114と反対側の一端を第2液体供給源605と接続する。バルブV1ないしV3は、それぞれ配管115ないし117の連通をその開閉により制御可能に設けられる。
図8は脱気部の構成を模式的に示した断面図である。ガス脱気部118は、脱気配管118aの内部に中空糸118bを配置した二重管構造を有している。中空糸118bの外周部と脱気配管118aの内周部とによって囲まれる内部空間118cは、排気路から排気ポンプ119aを介して排気ドレイン119bと連通接続されている。そのため、排気ポンプ119aを動作させことにより、内部空間118cを真空状態にすることができる。したがって、排気ポンプ119aを動作させて内部空間118cを真空状態にするとともに、バルブV1を開成して中空糸118bに貯留部111から供給される処理液を流通させると、当該中空糸118bを流通する処理液に溶解しているガスを取り除いて脱気することができる。すなわち、ガス脱気部118は、中空糸118bを流通する処理液に溶存するガス濃度を低下させるガス濃度調整部として使用される。
図7に戻る。ポンプ112、バルブV1ないしV3は、それぞれ供給源制御部60と電気的に接続する。供給源制御部60の動作指令により、ポンプ112が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部111へ圧送されている状態で、バルブV1を開成すると、処理液L2が配管114、配管115を介し、ガス脱気部118を通過して第1液体供給源601へ供給される。そこから上方内管36を介して上方内管ノズル37から第1液体としての処理液L2が吐出される。
同様に、供給源制御部60の動作指令により、ポンプ112が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部111へ圧送されている状態で、バルブV2を開成すると、処理液L2が配管114、配管116を介して第2液体供給源603へ供給され、そこから下方内管25を介して下方ノズル27から第2液体としての処理液L2が吐出される。
同様に、供給源制御部60の動作指令により、ポンプ112が駆動され窒素ガスが窒素ガス供給源620から貯留部111へ圧送されている状態で、バルブV3を開成すると、処理液L2が配管114、配管117を介して第2液体供給源605へ供給され、そこから超音波ノズル41を介してその吐出口から第2液体としての処理液L2が吐出される。
このように、第1実施形態における処理液供給部110は、窒素ガスの圧送で処理液L2を洗浄ユニット91aの各部へ供給する構成であるため、処理液L2を貯留部111内に長時間放置すると、処理液L2における、貯留部の雰囲気である窒素ガスにたいする溶存ガス濃度は飽和状態となる。より具体的には、大気圧環境下における窒素ガスのDIWへの飽和溶存ガス濃度である18ppmと同程度か、それ以上の濃度となる。実際には窒素ガスが圧送されることで大気圧よりも高圧環境に処理液L2が曝されることにより、大気圧環境下における窒素ガスのDIWへの飽和溶存ガス濃度よりも高濃度の窒素ガスが溶存する。一方、第1液体供給源601へ供給される処理液は、ガス脱気部118を通過するため、第2液体供給源603及び605に供給される処理液に比べ、溶存ガス濃度を低下させることができる。
次に、水難溶性液体供給部50におけるノズル51の動作について、図9を用いて説明する。図9は、中心軸A1周りにおけるノズル51の回転動作と、ノズル51と基板保持ユニット20に保持された基板Wとの位置関係を模式的に示す図である。
制御部70からの動作指令にもとづき、アーム回転機構54が回転軸53を中心軸A1周りに回転させると、これに伴いアーム52が揺動し、ノズル51は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板表面Wfに対向した状態で、移動軌跡T1に沿って移動する。移動軌跡T1は、中心位置P11から位置P12を通って周縁位置P13に向かう軌跡である。
ここで、中心位置P11は、基板Wの上方で、かつ中心軸A0の略上に位置し、周縁位置P13は基板Wの周縁部の外周端の上方に位置する。すなわち、アーム回転機構54は、ノズル51を基板表面Wfに平行な方向に、基板Wに対して相対移動が可能である。また、ノズル51は、移動軌跡T1の延長線上であって基板Wと対向する位置から側方に退避した退避位置P14にも移動可能となっている。
これに加え、基板Wはステージ23の回転に伴って回転されるため、ステージ23をステージ回転機構22により回転させた状態で、アーム52をアーム回転機構54により揺動させることで、ノズル51を基板Wの全面に順次対向させる、すなわち基板Wの全面をノズル51がスキャンすることが可能となる。
<1-3.基板処理の工程>
次に、上記のように構成された基板処理装置9における基板処理動作について説明する。ここで、基板表面Wfには、凹凸のパターンが前工程により形成されている。パターンは、凸部および凹部を備えている。凸部は、例えば100~200nmの範囲の高さであり、10~20nmの範囲の幅である。また、隣接する凸部間の距離(凹部の幅)は、例えば10~20nmの範囲である。
以下、図4を適宜参照しながら、図10を用いて基板処理の工程を説明する。図10は第1実施形態における基板処理装置9の全体の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明において特に断らない限り、遮断機構30は、遮断部材38が対向位置にある場合、基板保持ユニット20のステージ回転機構22がステージ23を回転する方向に略同じ回転数で遮断部材38を回転するものとする。
まず、所定の基板Wに応じた記憶部72内の基板処理用のプログラムが操作部971(図1参照)で選択され、実行指示される。その後、基板Wを洗浄ユニット91aに搬入する準備として、制御部70が動作指令を行い以下の動作をする。
すなわち、制御部70の動作指令によって、遮断部材38の回転を停止し、ステージ23の回転を停止する。また、遮断部材38を離間位置へ移動すると共に、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ210をホームポジションに位置決めする。ステージ23が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、各チャック24を開状態とする。また、ノズル51が退避位置P14に位置決めされる。
基板Wを洗浄ユニット91aに搬入する準備が完了した後、未処理の基板Wを洗浄ユニット91aへ搬入する基板搬入工程(ステップS101)を行う。すなわち、インデクサロボット931がオープナー94上のFOUP949の所定の位置にある基板Wを下側のハンド933で取り出し、シャトル95の下側のハンド951に載置する。その後、シャトル95の下側のハンド951をセンターロボット96の側に移動し、センターロボット96がシャトル95の下側のハンド951上の基板Wを、下側のハンド961で取り上げる。
その後、洗浄ユニット91aのシャッター911が開かれ、センターロボット96が下側のハンド961を洗浄ユニット91aの中に伸ばし、基板Wを基板保持ユニット20のチャック24の支持ピンの上に載置する。基板Wの洗浄ユニット91aへの搬入が終了すると、センターロボット96が下側のハンド961を縮めて洗浄ユニット91aの外に出る。その後、シャッター911が閉じる。
続いて、洗浄ユニット91aに搬入された基板Wを保持し、回転する基板保持・回転工程(ステップS102)が実行される。すなわち、未処理の基板Wが洗浄ユニット91aの内部に搬入されると、チャック24の支持ピンの上に載置される。そして、制御部70が基板保持ユニット20へ動作指令を行い、チャック24を閉状態とする(基板保持工程)。
未処理の基板Wが基板保持ユニット20に保持された後、制御部70が基板保持ユニット20へ動作指令を行い、ステージ23の回転を開始する(基板回転工程)。そして、続く水難溶性液体供給工程から基板乾燥工程までの間、回転を維持する。
ここで、最初は基板表面Wfに供給される水難溶性の液体が基板Wの回転による遠心力で基板表面Wfの中心から周縁部に亘って広げることができる回転速度にする。本実施形態では、水難溶性液体供給工程における基板Wの回転速度を200rpmとする。
先ず、基板表面Wfのパターンに水難溶性の液体を供給する水難溶性液体供給工程(ステップS103)を実行する。制御部70は、遮断部材38が離間位置にあるか検知し、離間位置にいなければ、遮断部材38の回転を停止し、離間位置へ移動する。次に、制御部70がアーム回転機構54に動作指令を行い、ノズル51を退避位置P14から中心位置P11に位置決めする(図8参照)。この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、水難溶性液体供給源604から水難溶性の液体がノズル51を介して基板表面Wfへ供給される。水難溶性の液体はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給される。
図11(a)は、第1実施形態における水難溶性液体供給工程の基板表面Wfのパターン(以下、適宜パターンの凸部を「パターンWp」と称する)領域を拡大した様子を示す。上記の水難溶性の液体の供給により、基板表面Wfの全面に図11(a)のようにまんべんなく水難溶性の液体801を供給することができる。
次に、基板表面Wfのパターンに第1液体を供給した状態で、基板裏面Wbを超音波印加液により洗浄する洗浄工程(ステップS104)を実行する。洗浄工程が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に維持する。続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する場合は遮断部材38と共に回転速度を変更する。洗浄工程における基板Wの回転速度は、後述する、パターンWpに対する水難溶性の液体801による液膜を維持できる速度が好ましい。本実施形態では、洗浄工程における基板Wの回転速度を500rpmとして説明する。
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、第1液体供給源601から第1液体802が上方外管ノズル39から基板表面Wfへ供給される。第1液体802はステージ23の回転に伴う基板W回転の回転によって、基板表面Wfの中心部から基板Wの周縁部に亘って供給され、水難溶性の液体801から第1液体802に置換される。
図11(b)は、第1実施形態における第1液体を基板表面Wfに供給している状態でのパターン領域を拡大した様子を示す。第1液体802の供給により、基板表面WfはパターンWpの表面を除き水難溶性の液体801から第1液体802に置換される。
一方、パターンWpは水難溶性の液体801による液膜で覆われた状態となる。これは、水への溶解度が0.6-20ppmであるHFEのような水難溶性の液体が、既にパターンWpに接触していることから、液体の表面張力または物質間の界面自由エネルギーの影響により、このような現象が生じたものと考えられる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等の各種アルコール類であれば、第1液体802であるDIWに溶けやすいことから、この現象は生じない。また、先に第1液体802であるDIWを基板表面Wfへ供給して液膜を形成した後、HFEを基板表面Wfへ供給したところ、HFEは基板表面Wfへ到達せず、パターンに対して液膜は形成されなかった。
なお、第1実施形態における水難溶性の液体801であるHFEは、常温(25℃)での比重が1.43-1.67あたりであり、水より重い。即ち、パターンが形成された基板表面Wfが上方に向けた状態であれば、第1液体802の比重に対して重い液体を用いることが好適であると考える。
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、第2液体供給源605から第2液体が下方ノズル27を介して基板裏面Wbの中央部へ供給し、基板Wの回転による遠心力で基板Wの周縁部へ広がることで基板裏面Wbに第2液体の液膜を形成する。
そして、制御部70の動作指令にもとづき、第2液体供給源603から第2液体を超音波ノズル41へ供給し、超音波出力機構43が振動子42を振動させて超音波ノズル41の内部に導入された第2液体に超音波を印加した状態で、超音波ノズル41の吐出口から吐出方向44に沿って基板裏面Wbへ超音波印加液を供給する。これにより、超音波振動が第2液体供給源605から供給された第2液体にも伝搬し、基板裏面Wbを良好に洗浄することができる(超音波洗浄工程)。
第2液体は、図7により説明したように溶存ガス濃度が飽和状態の液体であるため、超音波の印加によって生じる気泡(キャビテーション)の生成および崩壊のエネルギー(キャビテーションエネルギー)が、基板裏面Wbに付着したパーティクル等の汚染物質により強く作用する。これにより、基板裏面Wbに付着したパーティクルを除去し、基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心部から基板Wの周縁部へ広がる第2液体にパーティクルが混入して共に基板Wの周縁部外側へ振り切られ、除去される。
一方、第1の液体は、処理液供給部110におけるガス脱気部118を通って第1液体供給源601から供給されるため、第2液体に比べ溶存ガス濃度が低い。但し、実際には雰囲気中に残存するガスが処理液に溶解することから、処理液から完全にガスを取り除くことは難しい。特に、処理液供給部110が窒素ガスの圧送で供給しているなどの装置構成においては、なおさらである。
ここで、基板表面Wfのパターン倒壊防止および汚染防止の効果について説明する。基板裏面Wbに印加される超音波振動は基板Wを介して基板表面Wf側にも伝搬し、前述通り、第1液体中でもキャビテーションの生成および崩壊が生じる。仮に、パターンWp同士の間に液体が存在する(例えば、パターンWp間に第1液体が充填される)状態である場合、パターンWpの表面、特にパターンWpの側面部分が接液状態であることに起因してパターンWpにもキャビテーションエネルギーが作用し、パターンWpが折れる等、ダメージが発生するおそれがある。
これに対し、第1実施形態では、図11(b)に示すように、パターンWpの表面に水難溶性の液体801による液膜が存在し、基板裏面Wbの超音波による洗浄が実行される。すなわち、パターンWpの表面は第1液体とは異なる液体に覆われており、この液体は少なくとも難溶であることから、第1液体にガスが溶存していたとしても、ガスは水難溶性の液体へ移動し難い。従って、パターンWpに対し、溶存ガスにより生じるキャビテーションエネルギーが作用することを防止でき、基板表面Wfのパターン倒壊を防止することができる。
なお、たとえ第1液体から水難溶性の液体へガスが移動したとしても、水難溶性の液体におけるキャビテーションエネルギーが第1液体におけるキャビテーションエネルギーより小さければ、パターンWpへのキャビテーションによる影響を軽減することができる。
ここで、キャビテーションエネルギーUは下の数式より算出できる。σは表面張力、Peは静圧,Pvは蒸気圧を表す。この式より、キャビテーションエネルギーによる損傷は液体の表面張力σが大きいほど激しいことが分かる。前述の表1に、本願発明における水難溶性の液体として挙げた液体の表面張力を表す。本願発明において挙げた液体は第1液体である水と比べて表面張力が小さいため、キャビテーションエネルギーによる損傷を軽減することができる。
また、パターンWpに水難溶性の液体による液膜を形成した状態にすれば、基板表面Wfに第1液体等の液体を供給しない状態で、基板裏面Wbの超音波洗浄を行えばよいが、この場合、基板裏面Wbに供給する超音波印加液等の液体がチャック24等の各構成に当って跳ね返り、基板表面Wfに付着することで基板表面Wfのパターンを汚染するおそれがある。また、液体の跳ね返り以外にも、雰囲気中に浮遊して存在するパーティクル等の汚染物質が液膜に覆われずに露わになった基板表面Wfに付着することで、基板表面Wfのパターンを汚染するおそれがある。
これに対し、第1実施形態では、図11(b)に示すように、基板裏面Wbを洗浄する間、基板表面Wfの全体を第1液体801で継続して供給されることで、常に基板表面Wfを清浄な状態に保つことができ、基板裏面Wbからの液体の跳ね返りや、雰囲気中のパーティクル付着に起因する基板表面Wfのパターン汚染を防止することができる。
次に基板表面Wfおよび基板裏面Wbを乾燥する基板乾燥工程(S105)が実行される。基板乾燥工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に移動させ、遮断部材38の回転を開始する。
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。基板乾燥工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfにおける溶解液を基板Wの回転による遠心力で振り切ることができるように、500~1000rpmに設定することが好ましい。
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源602から乾燥気体が上方外管ノズル39を介して基板表面Wfへ供給される。また、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源606から乾燥気体が気体供給路26を介してステージ23の開口から基板裏面Wbへ供給される。
第1液体、および水難溶性の液体はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板表面Wfから除去される。また、第1液体、および水難溶性の液体は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板表面Wfから除去される。
ここで、第1実施形態のように基板表面Wfに微細なパターンが形成されている場合には、パターン間に充填された液体を乾燥する際に当該液体の表面張力に起因してパターンに応力が作用し、隣接するパターン同士が当該液体の乾燥に伴って引き寄せられ、パターンが倒壊するおそれがある。
第1実施形態における水難溶性の液体は、HFEであり、前述通り、DIW等の純水と比較して低い表面張力を有する液体である。したがって、基板表面Wfに形成されたパターンが水難溶性の液体の乾燥に伴って受ける応力も純水と比べ小さくなり、パターン倒壊を防止しつつ良好に基板を乾燥することができる。すなわち、第1実施形態において、水難溶性の液体は、洗浄時の保護液として機能し、かつ基板表面Wfの乾燥時のパターン倒壊を防止するためのリンス液としても機能する。
また、基板裏面Wbに付着した第2液体も、基板乾燥工程により除去される。すなわち、第2液体はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板裏面Wbから除去される。また、第2液体は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板裏面Wbから除去される。
基板乾燥工程により、基板Wに付着した溶解液および第2液体が除去されると、次に、基板Wを洗浄ユニット91aから搬出する基板搬出工程を行う(ステップS106)。基板搬出工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に移動させ、遮断部材38の回転を停止する。
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、ステージの回転を停止し、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ101はホームポジションに位置決めする。そして、チャック24を開状態として基板Wを支持ピンの上に載置する。
その後、シャッター911を開放し、センターロボット96が上側のハンド961を洗浄ユニット91aの中に伸ばし、基板保持ユニット20からハンド961へ基板Wが受け渡される。ハンド961により基板Wを保持した後、基板Wを洗浄ユニット91aの外に搬出し、シャトル95の上側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は上側のハンド951をインデクサユニット93の側に移動する。そして、インデクサロボット931が上側のハンド933でシャトル95の上側のハンド951に保持されている基板Wを取り出し、FOUP949の所定の位置に搬入し、一連の処理が終了する。
<2.第2実施形態>
次に、図12を用いて、本願の第2実施形態に係る基板処理装置9および当該装置による基板処理方法について説明する。図12は、第2実施形態に係る洗浄ユニット91(以下、「洗浄ユニット91b」と称する)の構成を模式的に示す図である。第2実施形態に係る基板処理装置9の洗浄ユニット91bは、第1実施形態と同様の遮断機構30および基板保持ユニット20を備える。第1実施形態と第2実施形態が相違する点は、これら機構へ接続する供給源の配置と、超音波印加液供給部40の構成である。
第2実施形態において、遮断機構30の上方内管ノズル37には、リンス液を供給する供給源であるリンス液供給源607が上方内管36を介して接続する。リンス液としては、DIW等の純水、IPA等、基板Wに対する諸々のリンス液を用いてよい。第2実施形態では、IPAよりも比較的コストの低いDIWをリンス液として用いる。また、遮断機構30の上方外管ノズル39には、第1実施形態と同様の乾燥気体供給源602が接続する。
基板保持ユニット20における下方ノズル27には、第1液体を供給する供給源である第1液体供給源601および水難溶性の液体を供給する供給源である水難溶性液体供給源604が、下方内管25を介して接続する。第2実施形態における水難溶性の液体は、水と比べて比重の軽いシクロヘキサンを用いる。
これら第1液体供給源601および水難溶性液体供給源604は、それぞれ供給源制御部60と電気的に接続し、供給源制御部60の動作指令にもとづき、それぞれ独立して各液体を下方ノズル27から吐出することができる。また、気体供給路26には、第1実施形態と同様の乾燥気体供給源606が接続する。
第2実施形態において、基板保持ユニット20は、基板Wをチャック24により保持する際、基板裏面Wbを上方(Z方向)に向け、基板表面Wfをステージ23に対向させた状態で保持する。すなわち、パターンが形成された基板表面Wfがステージ23側を向いた状態で、基板Wがチャック24により水平姿勢に保持される。
次に、第2実施形態における超音波印加液供給部40の構成について説明する。図12に示すように、超音波印加液供給部40は、振動子42を有する超音波ノズル41、超音波出力機構43、超音波ノズル41へ第2液体を供給する供給源である第2液体供給源605を有する。また、超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41を支持するアーム45、アーム45と接続する回転軸46、回転軸46を鉛直方向に伸びる中心軸A2周りに回転させるアーム回転機構47とをさらに有する。
アーム回転機構47は、制御部70と電気的に接続し、制御部70の動作指令にもとづき、回転軸46を中心軸A2周りに回転させる。回転軸46の回転に伴い、回転軸46からXY水平面内の一方向に伸びるアーム45がXY水平面内で中心軸A2周りに回動し、これとともに超音波ノズル41も回動する。
また、超音波印加液供給部40は、超音波ノズル41とアーム45の間に、超音波ノズル41の基板Wに対する角度を調整可能な方向調整部(図示省略)をさらに備える。
次に、超音波印加液供給部40における超音波ノズル41の動作について、図13を用いて説明する。図13は、中心軸A2周りにおける超音波ノズル41の回転動作と、超音波ノズル41と基板保持ユニット20に保持された基板Wとの位置関係を模式的に示す図である。
制御部70からの動作指令にもとづき、アーム回転機構47が回転軸46を中心軸A2周りに回転させると、これに伴いアーム45が揺動し、超音波ノズル41は、基板保持ユニット20に保持された基板Wの基板裏面Wbに対向した状態で、移動軌跡T2に沿って移動する。移動軌跡T2は、中心位置P21から位置P22を通って周縁位置P23に向かう軌跡である。
ここで、中心位置P21は、基板Wの上方で、かつ中心軸A0の略上に位置し、周縁位置P13は基板Wの周縁部の外周端の上方に位置する。すなわち、アーム回転機構47は、超音波ノズル41を基板裏面Wbに平行な方向に、基板Wに対して相対移動させる。また、超音波ノズル41は、移動軌跡T2の延長線上であって基板Wと対向する位置から側方に退避した退避位置P24にも移動可能となっている。
これに加え、基板Wはステージ23の回転に伴って回転されるため、ステージ23をステージ回転機構22により回転させた状態で、アーム45をアーム回転機構47により揺動させることで、超音波ノズル41を基板Wの全面に順次対向させる、すなわち基板Wの全面を超音波ノズル41がスキャンすることが可能となる。
なお、中心位置P21は、超音波ノズル41から吐出される第2液体または超音波印加液が基板Wの中央部に着液する位置であればよく、後述する入射角度θ1に応じて、適宜設定されるものであるため、中心軸A0の略上に位置する構成は必須ではない。
超音波ノズル41は、基板保持ユニット20により基板裏面Wbを上方に向けて保持される基板Wと対向し、超音波ノズル41の吐出口と基板裏面Wbとは、角度θ1の関係にある。ここで、θ1は超音波ノズル41から吐出される超音波印加液の基板裏面Wbへの入射角度であり、75度以上90度以下であることが好適である。
図14は、基板Wの一方主面から超音波印加液を供給した際の、他方主面に伝搬する超音波振動の大きさ(音圧)と、入射角度θ1との関係の実測値を示す図である。入射角度θ1の好適な値について、図14を用いて説明する。
図14に示す測定では、基板Wの一方主面から超音波出力20Wの超音波印加液を流量1.5L/mにて供給し、基板Wの他方主面にハイドロフォンを配置して、当該ハイドロフォンにて音圧を測定した。これにより、基板W自体に与えられる音圧を測定することができる。測定された音圧は、入射角度θ1に対して明瞭な依存性が認められた。より具体的には、入射角度θ1=82で音圧が極大化した。
超音波洗浄では、基板Wに与えられる音圧が大きいほど、より強い洗浄力が得られるため、基板Wの主面を良好に洗浄するためには、図14のグラフから入射角度θ1については75度ないし90度の範囲に設定するのが望ましく、82度に設定するのがさらに好ましい。
以上から、第2実施形態では、入射角度θ1を82度としている。しかしながら、最適な入射角度θ1は、超音波ノズル41の形状や超音波振動出力等の各種条件により、その都度変化するとされるため、本発明の実施に関しては、入射角度θ1は82度に限られず、図14のように音圧が最大となる入射角度θ1を装置ごとに測定することにより、装置ごとに最適な入射角度θ1が選択されてよい。このため、超音波ノズル41とアーム45の間には、45度から90度まで入射角度θ1を設定可能な方向調整部(図示省略)が設けられる。
次に、第2実施形態における基板処理装置の動作について説明する。図10のフローチャートを参照する。第2実施形態において、基板洗浄動作が開始されると、第1実施形態と基板Wの表裏が逆となった状態で(すなわち、パターンが形成された基板表面Wfを下方に向けた状態で)基板搬入工程(S101)および基板保持・回転工程(S102)が実行される。
基板保持・回転工程において、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、基板の回転を開始し、続く水難溶性液体供給工程までその回転を維持する。水難溶性液体供給工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfに供給される水難溶性の液体が基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心から周縁部に亘って広げることができるように、100~1000rpmに設定することが好ましい。
続いて、水難溶性液体供給工程(S103)が開始すると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に維持し、遮断部材38の停止を維持する。
次に、制御部70の動作指令にもとづき、水難溶性液体供給源604から水難溶性の液体が下方ノズル27から基板表面Wfへ供給される。水難溶性の液体は、基板Wの回転に伴って、下方ノズル27が位置する基板Wの中央部から基板Wの周縁部へ広がり、基板表面Wfの全体に供給される。
パターンWp表面が水難溶性の液体による液膜801で被膜された後、洗浄工程(S104)を開始する。洗浄工程では、まず、制御部70の動作指令にもとづき、ステージ回転機構22が、基板表面Wfに供給される第1液体を基板Wの回転による遠心力で基板Wの中心から周縁部に亘って広げることができるように、基板Wの回転速度を100~1000rpmに設定する。
続いて、制御部70の動作指令にもとづき、第1液体供給源601から下方ノズル27を介して基板表面Wfへ第1液体が供給される。第1液体は、基板Wの回転に伴う遠心力で、基板表面Wfの中心部から周縁部へ広げられる。
図15(a)は、第2実施形態における水難溶性液体供給工程終了後のパターンWp領域を拡大した様子を示す。水難溶性の液体は、基板表面Wfの全体に供給された後、自重によりパターンWpの表面を除き落滴する。一方、パターンWpの表面には水難溶性の液体による液膜801が形成される。これは、液体の表面張力または物質間の界面自由エネルギーの影響により生じると考えられる。
図15(b)は、第2実施形態において、第1液体を基板表面Wfに供給している状態でのパターン領域を拡大した様子を示す。パターンWpの表面は、水難溶性の液体による液膜801が形成され、さらに基板表面Wf全体に第1液体による液膜が形成される。水難溶性の液体であるシクロヘキサンは、比重が0.78であり、前述通り第1液体の液膜より先にパターンWpの表面を液膜で形成していることから、第1液体であるDIWに置換されることなく液膜が維持される。
この状態で、基板裏面Wbへ超音波ノズル41から超音波印加液を供給し、超音波ノズル41を回動させて基板裏面Wbをスキャンすることで、基板裏面Wbの全面を良好に超音波洗浄する。まず、制御部70の動作指令にもとづき、超音波ノズル41を中心位置P21(図13参照)に位置決めする。次に、第2液体供給源605から第2液体が超音波ノズル41を介して基板裏面Wbへ供給され、この状態で超音波出力機構43からパルス信号を振動子42へ出力することで、振動子42を超音波振動させ、第2液体に超音波を印加する。これにより、超音波ノズル41は吐出口から超音波印加液を吐出する。
超音波ノズル41から超音波印加液を吐出した状態で、制御部70がアーム回転機構47に動作指令を行い、中心位置P21から周縁位置P23の間を、1回または複数回スキャンして、基板裏面Wbの全面を洗浄する(超音波洗浄工程)。
このとき、基板表面Wfには第1液体の液膜が形成されているため、基板表面Wfのパターン汚染が防止できる。また、もし第1液体にガスが溶存していたとしても、水難溶性の液体による液膜801へガスが移動しにくい。従って、パターンWpへキャビテーションエネルギーが作用することを防止でき、基板表面Wfのパターン倒壊を防止することができる。さらに、たとえ第1液体から水難溶性の液体へガスが移動したとしても、水難溶性の液体におけるキャビテーションエネルギーが第1液体におけるキャビテーションエネルギーより小さければ、パターンWpへのキャビテーションによる影響を軽減することが可能である。第2実施形態において用いる水難溶性の液体はシクロヘキサン、第1液体は第1実施形態と同じDIWであり、シクロヘキサンは水に比べて表面張力が小さいため、第2実施形態でもパターンWpへのキャビテーションによる影響を軽減することができる。
次に基板表面Wfおよび基板裏面Wbを乾燥する基板乾燥工程(S105)が実行される。基板乾燥工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を近接位置に移動させ、遮断部材38の回転を開始する。
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、回転速度を変更する。基板乾燥工程における基板Wの回転速度は、基板表面Wfにおける第1液体、および水難溶性の液体を基板Wの回転による遠心力で振り切ることができるように、500~1000rpmに設定することが好ましい。
この状態で、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源602から乾燥気体が上方外管ノズル39を介して基板裏面Wbへ供給される。また、制御部70の動作指令にもとづき、乾燥気体供給源606から乾燥気体が気体供給路26を介してステージ23の開口から基板表面Wfへ供給される。
第1液体、および水難溶性の液体はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板表面Wfから除去される。また、第1液体、および水難溶性の液体は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板表面Wfから除去される。
また、基板裏面Wbに付着した第2液体も、基板乾燥工程により除去される。すなわち、第2液体はステージ23の回転に伴う基板Wの回転によって、基板Wの周縁部外側へ振り切られることにより、基板裏面Wbから除去される。また、第2液体は、基板表面Wfおよび基板裏面Wbから供給される乾燥気体中へ蒸発することによっても、基板裏面Wbから除去される。
基板乾燥工程により、基板Wに付着した第1液体、水難溶性の液体および第2液体が除去されると、次に、基板Wを洗浄ユニット91aから搬出する基板搬出工程を行う(ステップS106)。基板搬出工程が実行されると、制御部70が遮断部材昇降機構34および遮断部材回転機構33に動作指令を行い、遮断部材38を離間位置に移動させ、遮断部材38の回転を停止する。
続いて、制御部70がステージ回転機構22に動作指令を行い、ステージの回転を停止し、ステージ23を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、カップ101はホームポジションに位置決めする。そして、チャック24を開状態として基板Wを支持ピンの上に載置する。
その後、シャッター911を開放し、センターロボット96が上側のハンド961を洗浄ユニット91aの中に伸ばし、基板保持ユニット20からハンド961へ基板Wが受け渡される。ハンド961により基板Wを保持した後、基板Wを洗浄ユニット91aの外に搬出し、シャトル95の上側のハンド951に移載する。その後、シャトル95は上側のハンド951をインデクサユニット93の側に移動する。そして、インデクサロボット931が上側のハンド933でシャトル95の上側のハンド951に保持されている基板Wを取り出し、FOUP949の所定の位置に搬入し、一連の処理が終了する。
以上のように、本実施形態では、一方主面にパターンが形成された基板に対し、その他方主面に付着した汚染物質を超音波により除去して、基板を洗浄する超音波洗浄処理において、キャビテーションによるパターンの倒壊を防止し、かつ他方主面に対し良好な洗浄処理を行うことができる。
また、本実施形態によれば、他方主面に付着した汚染物質を超音波により除去して、基板を洗浄する超音波洗浄処理を、一方主面に液膜を形成した状態で実行するため、超音波洗浄処理中におけるパターンを含む一方主面の汚染を防止することができる。
上述した本実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、本発明の効果がある限りにおいては、基板処理装置及び基板処理方法に、本実施形態に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。