以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態の一側面としての露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、パターンを基板上に形成するリソグラフィ装置(パターン形成装置)の一例である。露光装置100は、マスク(レチクル)1を保持するマスクステージ2と、基板3を保持する基板ステージ4と、マスクステージ2に保持されたマスク1を照明する照明光学系5とを有する。また、露光装置100は、マスク1のパターンの像を基板ステージ4上に保持された基板3に投影する投影光学系6と、露光装置100の全体の動作を統括的に制御する制御部(コンピュータ)17とを有する。
露光装置100は、本実施形態では、マスク1と基板3とを走査方向に互いに同期走査しながら(即ち、ステップ・アンド・スキャン方式で)、マスク1のパターンを基板3に転写する走査型露光装置(スキャナー)である。但し、露光装置100は、マスク1を固定して(即ち、ステップ・アンド・リピート方式で)、マスク1のパターンを基板3に投影する露光装置(ステッパー)であってもよい。
以下では、投影光学系6の光軸と一致する方向(光軸方向)をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスク1及び基板3の走査方向をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。また、X軸周り、Y軸周り及びZ軸周りのそれぞれの回転方向を、θX方向、θY方向及びθZ方向とする。
照明光学系5は、マスク1、具体的には、マスク上の所定の照明領域を、均一な照度分布の光(露光光)で照明する。露光光としては、例えば、超高圧水銀ランプのg線(波長約436nm)やi線(波長約365nm)、KrFエキシマレーザ(波長約248nm)、ArFエキシマレーザ(波長約143nm)、F2レーザ(波長約157nm)などが用いられる。また、より微細な半導体素子を製造するために、数nm〜数百nmの極端紫外光(Extreme Ultra Violet:EUV光)を露光光として用いてもよい。
マスクステージ2は、投影光学系6の光軸に垂直な平面内、即ち、XY平面内で2次元移動可能に、且つ、θZ方向に回転可能に構成される。マスクステージ2は、リニアモータなどの駆動装置(不図示)によって1軸駆動又は6軸駆動される。
マスクステージ2には、ミラー7が配置されている。また、ミラー7に対向する位置には、レーザ干渉計9が配置されている。マスクステージ2の2次元方向の位置及び回転角はレーザ干渉計9によってリアルタイムで計測され、かかる計測結果は制御部17に出力される。制御部17は、レーザ干渉計9の計測結果に基づいてマスクステージ2の駆動装置を制御し、マスクステージ2に保持されたマスク1を位置決めする。
投影光学系6は、複数の光学素子を含み、マスク1のパターンを所定の投影倍率βで基板3に投影する。基板3には感光剤(レジスト)が塗布されており、マスク1のパターンの像が感光剤に投影されると、感光剤に潜像パターンが形成される。投影光学系6は、本実施形態では、投影倍率βとして、例えば、1/4又は1/5を有する縮小光学系である。
基板ステージ4は、基板を吸着して保持するチャックを介して基板3を保持するZステージと、Zステージを支持するXYステージと、XYステージを支持するベースとを含む。基板ステージ4は、リニアモータなどの駆動装置によって駆動される。基板を吸着して保持するチャックは、基板ステージ4に対して着脱可能に設けられている。
基板ステージ4には、ミラー8が配置されている。また、ミラー8に対向する位置には、レーザ干渉計10及び12が配置されている。基板ステージ4のX軸方向、Y軸方向及びθZ方向の位置はレーザ干渉計10によってリアルタイムで計測され、かかる計測結果は制御部17に出力される。同様に、基板ステージ4のZ軸方向の位置、θX方向及びθY方向の位置はレーザ干渉計12によってリアルタイムに計測され、かかる計測結果は制御部17に出力される。制御部17は、レーザ干渉計10及び12の計測結果に基づいて基板ステージ4の駆動装置を制御し、基板ステージ4に保持された基板3を位置決めする。
マスクアライメント検出系13は、マスクステージ2の近傍に配置される。マスクアライメント検出系13は、投影光学系6を介して、マスクステージ2に保持されたマスク1の上のマスク基準マーク(不図示)と、基板ステージ4に配置されたステージ基準プレート11の上の基準マーク39とを検出する。
マスクアライメント検出系13は、基板3を実際に露光する際に用いられる光源と同一の光源を用いて、マスク1の上のマスク基準マークと、投影光学系6を介して基準マーク39とを照明する。また、マスクアライメント検出系13は、マスク基準マーク及び基準マーク39からの反射光を撮像素子(例えば、CCDカメラなどの光電変換素子)で検出する。かかる撮像素子からの検出信号に基づいて、マスク1と基板3との位置合わせ(アライメント)が行われる。この際、マスク1の上のマスク基準マークとステージ基準プレート11の上の基準マーク39との位置及びフォーカスを合わせることで、マスク1と基板3との相対的な位置関係(X、Y、Z)を合わせることができる。
マスクアライメント検出系14は、基板ステージ4に配置される。マスクアライメント検出系14は、透過型の検出系であって、基準マーク39が透過型のマークである場合に使用される。マスクアライメント検出系14は、基板3を実際に露光する際に用いられる光源と同一の光源を用いて、マスク1の上のマスク基準マーク及び基準マーク39を照明し、かかるマークからの透過光を光量センサで検出する。この際、基板ステージ4をX軸方向(又はY軸方向)及びZ軸方向に移動させながら、マスクアライメント検出系14は、基準マークを透過した透過光の光量を検出する。これにより、マスク1の上のマスク基準マークとステージ基準プレート11の上の基準マーク39との位置及びフォーカスを合わせることができる。このように、マスクアライメント検出系13、或いは、マスクアライメント検出系14のどちらを用いても、マスク1と基板3との相対的な位置関係(X、Y、Z)を合わせることができる。
ステージ基準プレート11は、その表面が基板3の表面とほぼ同じ高さになるように、基板ステージ4のコーナーに配置される。ステージ基準プレート11は、基板ステージ4の1つのコーナーに配置されていてもよいし、基板ステージ4の複数のコーナーに配置されていてもよい。
ステージ基準プレート11は、図2に示すように、マスクアライメント検出系13又は14によって検出される基準マーク39と、基板アライメント検出系16によって検出される基準マーク40とを有する。図2は、ウエハ3およびウエハステージ4をZ方向から見た平面図である。ステージ基準プレート11は、複数の基準マーク39や複数の基準マーク40を有していてもよい。また、基準マーク39と基準マーク40との位置関係(X軸方向及びY軸方向)は、所定の位置関係に設定されている(即ち、既知である)。なお、基準マーク39と基準マーク40とは、共通のマークであってもよい。なお、図2に示すように、ウエハ3の各ショット領域の間のスクライブラインにアライメント用のマークが形成されている。
フォーカス検出系15は、基板3の表面に光を投射する投射系と、基板3の表面で反射した光を受光する受光系とを含み、基板3のZ軸方向の位置を検出して、かかる検出結果を制御部17に出力する。制御部17は、フォーカス検出系15の検出結果に基づいて基板ステージ4を駆動する駆動装置を制御し、基板ステージ4に保持された基板3のZ軸方向の位置及び傾斜角を調整する。
基板アライメント検出系16は、マークを照明する照明系、かかるマークからの光によりマークの像を形成する結像系などの光学系を含む。基板アライメント検出系16は、各種マーク、例えば、基板3に形成されたアライメントマークやステージ基準プレート11の上の基準マーク40を検出し、かかる検出結果を制御部17に出力する。制御部17は、基板アライメント検出系16の検出結果に基づいて基板ステージ4を駆動する駆動装置を制御し、基板ステージ4に保持された基板3のX軸方向及びY軸方向の位置又はθZ方向の回転角度を調整する。
また、基板アライメント検出系16は、基板アライメント検出系用のフォーカス検出系(AF検出系)41を含む。AF検出系41は、フォーカス検出系15と同様に、基板3の表面に光を投射する投射系と、基板3の表面で反射した光を受光する受光系とを含む。フォーカス検出系15は、投影光学系6のフォーカス合わせに用いるのに対して、AF検出系41は、基板アライメント検出系16のフォーカス合わせに用いる。
基板側のマークを検出する検出系の構成は、一般的には、オフアクシスアライメント(OA)検出系と、TTL(Through the Lens Alignment)検出系の2つに大別される。OA検出系は、投影光学系を介さずに、基板に形成されたアライメントマークを光学的に検出する。TTL検出系は、投影光学系を介して、露光光の波長とは異なる波長の光(非露光光)を用いて基板に形成されたアライメントマークを検出する。基板アライメント検出系16は、本実施形態では、OA検出系であるが、アライメントの検出方式を限定するものではない。例えば、基板アライメント検出系16がTTL検出系である場合には、投影光学系6を介して、基板に形成されたアライメントマークを検出するが、基本的な構成は、OA検出系と同様である。
図3を参照して、基板アライメント検出系16について詳細に説明する。図3は、基板アライメント検出系16の具体的な構成を示す概略図である。基板アライメント検出系16は、各種マークを検出する検出部として機能する。例えば、基板アライメント検出系16は、基板3の表面(第1面)に形成されたアライメントマーク(第1マーク)を検出し、基板3の裏面(第1面とは反対側の第2面)に形成されたアライメントマーク(第2マーク)も検出する。ここで、基板の裏面とは、基板を吸着して保持するチャックにより吸着される基板の吸着面側の面であり、基板の表面は基板の吸着面とは反対側の面であって、パターン形成用の感光剤が塗布される面である。また、後述のように、基板アライメント検出系16は、チャックに形成された基準マークを検出する。説明を簡単にするために、図3では、図2に示す基板3の表面側に形成されたアライメントマーク(以下、「表面側マーク」とする)19を基板アライメント検出系16が検出する場合を例に説明する。また、基板3は、Siウエハであるものとする。
光源20は、基板3を透過しない波長の光として可視光(例えば、400nm〜800nmの波長の光)、及び、基板3を透過する波長の光として赤外光(例えば、800nm〜1500nmの波長の光)を射出する。光源20からの光は、第1リレー光学系21、波長フィルタ板22及び第2リレー光学系23を通過して、基板アライメント検出系16の瞳面(物体面に対する光学的なフーリエ変換面)に位置する開口絞り24に到達する。
波長フィルタ板22には、透過させる光の波長帯域が互いに異なる複数のフィルタが配置され、制御部17の制御下において、複数のフィルタから1つのフィルタが選択されて基板アライメント検出系16の光路に配置される。本実施形態では、可視光を透過する可視光用のフィルタ及び赤外光を透過する赤外光用のフィルタが波長フィルタ板22に配置され、これらのフィルタを切り替えることで、可視光及び赤外光のいずれか一方の光でマークを照明する。なお、波長フィルタ板22は、新たなフィルタを追加することが可能な構成を有する。
開口絞り24として、互いに照明σ(開口径)が異なる複数の開口絞りが配置され、制御部17の制御下において、基板アライメント検出系16の光路に配置する開口絞りを切り替えることで、マークを照明する光の照明σを変更することができる。なお、開口絞り24として、新たな開口絞りを追加することが可能な構成を有する。
開口絞り24に到達した光は、第1照明系25及び第2照明系27を介して、偏光ビームスプリッター28に導かれる。偏光ビームスプリッター28に導かれた光のうち紙面に垂直なS偏光は、偏光ビームスプリッター28で反射され、NA絞り26及びλ/4板29を透過して円偏光に変換される。λ/4板29を透過した光は、対物レンズ30を通過して、基板3に形成された表面側マーク19を照明する。なお、NA絞り26は、制御部17の制御下において、絞り量を変えることでNAを変更することができる。
表面側マーク19からの反射光、回折光及び散乱光は、対物レンズ30を通過し、λ/4板29を透過して紙面に平行なP偏光に変換され、NA絞り26を介して、偏光ビームスプリッター28を透過する。偏光ビームスプリッター28を透過した光は、リレーレンズ31、第1結像系32、コマ収差調整用光学部材35及び第2結像系33を介して、光電変換素子(例えば、CCDなどのセンサ)34の上に表面側マーク19の像を形成する。光電変換素子34は、表面側マーク19の像を撮像(検出)して検出信号を取得する。また、光電変換素子34の上に基板の裏面に形成されたアライメントマークの像が形成される場合には、光電変換素子34は、かかるアライメントマークの像を撮像して検出信号を取得する。
基板アライメント検出系16が基板3に形成された表面側マーク19を検出する場合、表面側マーク19の上には、レジスト(透明層)が塗布(形成)されているため、単色光又は狭い波長帯域の光では干渉縞が発生してしまう。従って、光電変換素子34からの検出信号に干渉縞の信号が加算され、表面側マーク19を高精度に検出することができなくなる。そこで、一般的には、広帯域の波長の光を射出する光源を光源20として用いて、光電変換素子34からの検出信号に干渉縞の信号が加算されることを低減している。
処理部45は、光電変換素子34で撮像されたマークの像に基づいてマークの位置を求める処理を行う。但し、処理部45の機能は、制御部17、又は、外部の制御装置が有していてもよい。
上述の基板のアライメントマークの検出方法として、基板の表面側からマークを照明して検出する例を説明したが、本実施例では、基板の裏面側からマークを照明して検出する例を説明する。
まず、検出対象のアライメントマークが形成されている基板について説明する。本実施例では、図4に示すように、積層構造の基板310の間にアライメントマークが形成されている例を示す。図4は、その基板310の概略断面図である。基板310には、第1ウエハ301と第2ウエハ303の間に、赤外光を透過させにくい材料で構成された金属層または高ドープ層などの中間層302が形成されている。第2ウエハ303にはアライメントマーク304が形成されており、第2ウエハ303の下面がチャックによって吸着される。第2ウエハ303のアライメントマーク304は、アライメントマーク304の検出位置に基づいて基板310の位置合わせを行い、第1ウエハ301上にパターンを形成する工程のために用いられる。
中間層302は赤外光を透過させにくいため、第1ウエハ301の側から赤外光を用いてアライメントマーク304を検出することが困難である。そこで、本実施例では、第2ウエハ303の側からアライメントマーク304を検出する。図5に、第2ウエハ303の側からアライメントマーク304を検出するための光学系160を示す。図5は、光学系160を含む構成の断面図である。光学系160は、基板を吸着して保持するチャック400(保持部)の内部で位置が固定されており、チャック400と一体的に構成されている。光学系160は、基板アライメント検出系16からの照明光を反射するミラー161、ミラー161で反射された光を基板310へ導くレンズ、および、鏡筒等で構成されている。光学系160は、基板アライメント検出系16からの照明光を用いて基板310のアライメントマーク304を照明し、基板310から離れた位置にある像面163にアライメントマーク304の像を形成するリレー(結像)光学系である。基板アライメント検出系16は、その像面163に形成されたアライメントマーク304の像を検出し、アライメントマーク304の位置を求める。なお、像面163のZ方向高さは、設計で任意に変更することができる。そのため、基板(ウエハ)の厚みとマーク位置によって変化する像面163の高さの範囲がステージ4のZ方向駆動範囲内に収まるように設定できる。
照明光の光源や光電変換素子は基板アライメント検出系16に設けられ、光学系160にはリレー光学系を構成することによって、チャック400の熱変形を抑え、軽量化を図っている。照明光の波長は、例えば1000nm以上のシリコンを透過する赤外光の波長とするのが望ましい。なお、基板310におけるアライメントマーク304の位置、つまり、チャック400による基板310の吸着面312からアライメントマーク304までの距離が変わると、像面163の位置が変わる。そのため、吸着面312からアライメントマーク304までの距離に応じて、基板アライメント検出系16で検出できる焦点深度内に像面163が入るように、ステージ4をZ方向へ移動させる。
本実施例では、マークの位置計測精度と光学系の大きさを考慮し、光学系160による検出(観察)視野はφ1mm程度であり、光学系160の倍率は1倍である。位置計測精度は500nm程度である。例えば、光学系160を倍率縮小系にすると、観察視野は拡大するが計測精度が悪化する。また、光学系160のレンズ径をさらに大きくすると観察視野は拡大するが、チャック400内のスペースの制約がある。
図6に、チャック400をZ方向からみた上面図を示す。なお、図6は、チャック400が基板310を吸着している状態を示す。チャック400には、点線で示す光学系160の他に、光学系160に対してX方向にずれた位置に光学系160´が設けられている。光学系160´は光学系160の構成と同じである。図5に示す光学系160は、図6の断面Y−Y´における断面図を示している。光学系160は、その観察視野(検出視野)164内でアライメントマーク304を照明して、像面163にアライメントマーク304の像を形成する。また、基板310には、アライメントマーク304の他に、アライメントマーク304に対してX方向にずれた位置にアライメントマーク304´が設けられている。光学系160´は、その観察視野164´内でアライメントマーク304´を照明して、像面163´にアライメントマーク304´の像を形成する。これにより、光学系160と光学系160´を用いて、基板310のX、Y方向の位置、および、基板の中心位置に対するZ軸回りの回転角度(回転位置)θを計測することができる。光学系160、160´の観察視野164、164´は、チャック400がずれずに基板ステージ4に配置されたときに、Y方向の位置が同じになるように配置されている。光学系160と光学系160´の構成(光路長)を同じにしているため、像面163、163´も、チャック400がずれずに基板ステージ4に配置されたときにY方向の位置が同じになるように配置されている。
なお、基板310(ウエハ303)を露光する際のショットレイアウトでは、光学系160、160´の観察視野に合わせたマークを設計する必要がある。光学系160、160´のそれぞれの観察視野の中心位置は、基板310の中心を(X,Y)=(0,0)として、(−67.20,−35.50)、(67.20,−35.50)とした。Y方向の像高を同じにした理由は、ショットレイアウトを配置する際のX方向の制約を少なくするためである。例えば、Y=−35.50位置に一列に1mm間隔で複数のマークを入れることで、光学系160、160´の観察視野内で必ず計測が可能となる。または、(−67.20,−35.50)、(67.20,−35.50)の位置の視野に合うように、座標を特定してマークを配置するという事でも良い。なお、Z軸回りの回転角度θを検出するために、マークは少なくとも2眼分必要となる。観察視野の像高は、Y=0またはX=0上としても良いし、任意で設定可能である。
チャック400は、基板ステージ4に対して着脱可能に設けられている。吸着すべき基板に応じて、又は、メンテナンスのために、チャック400が別のチャックへ交換される。光学系160の観察視野の像高(X、Y方向の位置)がチャック400に対して固定である。そのため、チャック400に吸着される基板310のショットレイアウトやアライメントマークの位置が変更になった場合、光学系160でアライメントマークを検出できない場合がある。その場合、チャックを取り外し、チャックに対して光学系160の観察視野の位置が異なる新たなチャックへ交換する。つまり、チャック400に吸着される基板310のショットレイアウトやアライメントマークの位置に応じてチャックを交換し、光学系160の観察視野の像高を変更する。また、光学系160の汚損や損傷した時に光学系160が設けられたチャック400ごと容易に交換することができる。
露光装置100は、チャック400を搬入又は搬出するチャック交換機構(不図示)を有する。チャックを搬出する時は、基板ステージ4上で真空吸着されているチャックの吸着力をOFFにした後、チャック交換機構でチャックを持ち上げて、基板ステージ4から移動させる。また、チャックを搬入する時は、チャック交換機構で基板ステージ4上に移動させて、基板ステージ4上に突き出ている2本以上の位置決めピンにチャック側の位置決め穴を差し込んで、位置決めを行う。その後、チャックの吸着力をONにすることでチャックを基板ステージ4上に固定する。なお、この際に、位置決めピンに対して、チャック側の位置決め穴を大きくしてすき間ができるようにしておくことで、チャック側の位置決め穴に基板ステージ4側の位置決めピンをはめ込むことが容易にできる。ただし、すき間を大きく取り過ぎると、基板ステージ4上においてチャックの位置決め誤差が大きくなり、例えば、チャックが大きくθ回転するなどして、光学系160の観察視野が所定の位置からずれてしまう。光学系160の観察視野が所定の位置からずれてしまうと、チャック400上に基板310を予め決められた位置に配置したとき、基板310のアライメントマーク304を検出することができないおそれがある。
そこで、本実施例では、図5、6に示すように、光学系160の検出視野の位置を測定するための基準マーク401、401´がチャック400上の所定の位置に固定して設けられている。基準マーク401は、チャック400上に固定されたマーク板410に設けられている。また、基準マーク401´は、チャック400上に固定されたマーク板410´に設けられている。基準マークは、X、Y方向の位置を測定するために、2次元的に特徴をもったマークが好ましい。例えば、田の字や、+の字のようなX、Y両方向に幅を持ったマーク等である。基準マーク401と基準マーク401´の各位置は、チャック400の回転角度θをより高い精度で算出するために、チャック(基板配置領域)の中心位置(図6の1点鎖線の交点)からできるだけ離れた位置に設けるのがよい。図6では、チャック400のX方向の最外の縁付近に基準マーク401と基準マーク401´を配置した例を示している。また、基準マーク401、401´は、チャック400がずれずに基板ステージ4に配置されたときに、Y方向の位置が同じになるように配置されていてもよい。
図7に基準マーク401が設けられるマーク板410の一例を示す。マーク板410には、基準マーク401の位置を検出しやすくするため、基準マーク401の模索用として、基準マーク401の位置を表す、例えば矢印マーク402などが形成されている。マーク板410の大きさは、例えば、X、Y方向、□3mmであり、チャック400が基板ステージ4上に配置されるときに生じうる配置誤差よりも大きく設定されている。そのため、チャック400を交換した場合にも、基準マーク401を確実に検出できるようにしている。なお、基準マーク401の汚損や損傷に備えて、別の種類のマーク403を予備で配置してもよい。
基準マーク401は、チャック400の中心位置に対するチャック400全体のZ軸回りの回転角度を計測するために、離間された、少なくとも2つ以上のマークを持つこととする。図6に示すように、チャック400には2ヶ所の部材上のそれぞれに基準マーク401、401´が設けられているが、例えば、1つの部材上に2つのマークを形成してもよい。基準マーク401、401´は、基板アライメント検出系16によって検出される。基板アライメント検出系16は、基板ステージ4を移動させて、基準マーク401と、基準マーク401´とを順次検出して、各基準マークの位置を計測する。そして、予め得られているチャックの中心位置と基準マーク401、401´の相対位置(設計値等)と、計測された基準マーク401、401´の位置とから、チャック400の位置を求める。具体的には、チャック400の位置として、X、Y方向の位置及びチャックの中心位置に対するZ軸回りの回転角度θcを求める。なお、光学系160、160´は基準マーク(チャック400)に対して所定の位置に固定されているため、その所定の位置の情報と、計測された基準マークの位置と、から光学系160、160´の観察視野の位置を求めることができる。つまり、計測された基準マーク401、401´の位置からチャック400の位置を求めることは、光学系160、160´の観察視野の位置を求めることと同等である。
なお、基準マーク401、401´と、光学系160、160´の観察視野との相対的位置関係は、設計値を使用しても良いし、予め測定しておいてもよい。測定する場合、例えば、チャック吸着面(裏面)側のマークと、反対側(表面側)のマークとの相対位置が既知の工具基板を用いる。工具基板をチャック400に吸着し、光学系160、160´を用いて裏面側のマークを検出し、光学系160、160´の検出視野の中心位置に対する裏面側のマークの位置を求める。次に、基板アライメント検出系16を用いて、表面側のマークを検出することで、表面側のマークの位置を求める。したがって、求められたこれらの位置と、裏面側マークと表面側マークの相対位置と、から、基板ステージ4の座標系における、光学系160、160´の検出視野の中心位置を求めることができる。基準マーク401、401´の位置は、基板アライメント検出系16を用いて検出する。これにより、基準マーク401、401´と、光学系160、160´の観察視野との相対的位置を実測することできる。
基板を吸着して保持するチャックの交換から基板をアライメントして露光するまでの方法を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。まず、装置の事前調整としてベースラインが計測されている。具体的には、マスクアライメント検出系13が、投影光学系6を介して、基板ステージ4に配置されたステージ基準プレート11の上の基準マーク39とを検出する。また、基板アライメント検出系16を用いてステージ基準プレート11の上の基準マーク39を検出する。検出された2つの位置から、マスクアライメント検出系13(投影光学系6)と基板アライメント検出系16の光軸間距離(ベースライン)が求められる。
S1において、交換前のチャックの基準マーク401、401´の位置を基板アライメント検出系16を用いて測定する(S1)。具体的には、基板アライメント検出系16は基準マーク401、401´を検出し、基準マーク401、401´のそれぞれの中心位置を測定する。位置は基板ステージ4の座標系で計測される。測定された基準マークの位置から、交換前のチャックのX、Y方向の位置、および、交換前のチャックの中心位置に対するZ軸回りの回転角度θを求めることができる。次に、チャック交換機構を用いて、別のチャックへ交換する(S2)。チャックを交換した際、前述のように、基板ステージ上におけるチャックの配置誤差が生じうる。そのため、交換後のチャックの基準マーク401、401´の位置を基板アライメント検出系16を用いて測定する(S3)。測定方法はS1と同様である。測定された基準マークの位置から、交換後のチャックのX、Y方向の位置、および、交換後のチャックの中心位置に対するZ軸回りの回転角度θを求めることができる。そして、チャック交換前後における、チャックのX、Y方向の位置差及びZ軸回りの回転角度差を制御部17のメモリ(記憶部)に記憶する(S4)。なお、交換前後における基準マークの計測位置をそのまま記憶しておいてもよい。基準マーク401、401´と、光学系160、160´の観察視野との相対的位置は、前述のように既知であるため、S3で測定された基準マークの位置から光学系160、160´の観察視野の位置を求めることができる。なお、チャック交換前後における基準マークの回転角度差が基板ステージ4のZ軸回りの回転角度の駆動範囲よりも大きい場合には、チャックのZ軸回りの回転角度を調整して基板ステージ上に配置し直してもよい。基板ステージ上にチャックを初めて配置する場合や、前回配置したチャックの基準マークの位置情報が得られない場合などでは、S1、S2を行うことなく、S4において、交換後のチャックの位置及び回転角度の情報をメモリに記憶しておけばよい。
露光装置100は、基板を保持し、基板の中心位置を計測するプリアライメント(PA)検出器50(プリアライメント検出部)を有する。図9にPA検出器50を示す。PA検出器50は、基板をY方向に移動させるステージ51と、基板をX方向に移動させるステージ52と、基板をXY平面上で回転駆動できるステージ53と、を有する。また、PA検出器50は、基板の外周、ノッチ55又はオリフラを検出することが可能な複数のカメラ54(計測部)と、カメラ54で検出された情報から基板の位置を算出する不図示の処理部(コンピュータ)とを、有している。PA検出器50において、XY平面内における基板310の中心位置が算出される。具体的には、PA検出器50は、まずは基板310の位置ずれを検出するため、基板をZ軸回りに360度回転させて、カメラ54で基板の外周の形状を観察する。基板の外周の形状から理想的な基板の中心位置を処理部によって計算する。また、ノッチ55またはオリフラがある基板に関しては、基板の回転方向の位置も測定できる。図10に基板を搬送する搬送ハンド60(搬送部)の構成を示す。基板を搬送する際に、搬送ハンド60がPA検出器50のステージ53上にある基板310の下に入り込む。その際、PA検出器50のステージ53による基板310の吸着を予め弱めておき、搬送ハンド60がZ方向に下がった状態から、搬送ハンド60がZ方向に基板310と接触する位置まで上昇する。搬送ハンド60にも吸着機構があり、搬送ハンド60によって基板310の吸着を行った後、搬送ハンド60はさらにZ方向に上昇する。その後、搬送ハンド60はガイド61に沿って、基板ステージ4の位置まで基板310を移動させることができる。
S4の後、光学系160、160´により基板の吸着面側から検出される基板のアライメントマークが光学系160、160´の検出視野内に入るように、PA検出器50から基板ステージ4上に基板を配置する(S5)。基板ステージ4上への配置は、S3で測定された基準マーク401、401´の位置に基づいて行われる。例えば、搬送ハンド60によって基板ステージ4まで基板を移動させる際に、搬送ハンド60が基板を保持した状態で、基板ステージ4のX、Y方向の位置やZ軸回りの回転角度を、S4でメモリに記憶された位置や回転角度の差分をオフセットとして補正する。または、3軸以上の自由度をもった搬送ハンドであれば、搬送ハンドの位置制御系において、S4でメモリに記憶された位置や回転角度の差分をオフセットとして入力し、搬送ハンドの位置を補正してもよい。または、PA検出器で基板の中心位置を求めた後に、PA検出器のステージ上において、基板のX、Y方向の位置やZ軸回りの回転角度を、S4でメモリに記憶された位置や回転角度の差分だけ変更させる。その後、搬送ハンドが基板をPA検出器から基板ステージ4まで移動させてもよい。または、基板ステージ4上における、チャック400(光学系160、160´の検出視野)の位置や角度を調整してもよい。または、これらの補正方法を組合せてもよい。なお、Z軸回りの回転角度は、PA検出器で基板ステージ4の座標系に合わせた角度から、できるだけ補正量を小さくした方が望ましい。なぜならば、Z軸回りの回転角度を基板ステージ4の座標系で補正して露光を行う際に、基板の回転角度が基板ステージ4の角度駆動範囲を超えた場合には、基板の回転を補正する動作が必要になる。具体的には、基板をピンで持ち替えて基板ステージのみを回転させて、基板の回転を補正する。そうすると、スループットが低下する。そのため、光学系160の観察視野164内に基板のアライメントマークを配置する場合に、Z軸回りの回転角度の補正量はなるべく小さい方がよい。
基板ステージ4には不図示のチャックの昇降機構及び、チャック下降時に突出する吸着ピンがある。基板ステージ4への基板受け渡し前に、チャックは昇降機構により下降しており、吸着ピンが突出している。搬送ハンドをZ方向に下降させて、基板が吸着ピンに接触する前に搬送ハンドの吸着を弱めておく。さらに、搬送ハンドを下降させて、吸着ピンにて基板を吸着して、基板が受け渡される。搬送ハンドはその後、水平方向に後退して基板ステージ4上から離れる。基板ステージ4では搬送ハンドが移動したことを確認してから、チャックを昇降機構により上昇駆動させる。チャックの吸着機構に基板が接触する前に吸着ピンの吸着を弱めておく。さらに、チャックを上昇させて、チャックにて基板を吸着して、チャックへ基板が受け渡される。
以上により、光学系160、160´により基板の吸着面側から検出される基板のアライメントマークが光学系160、160´の検出視野内に入り、アライメントマークの検出エラーをなくすことができる。また、検出エラーのために基板の置き直しやチャックの交換や置き直しをすることが、不要となり、スループットが向上する。
次に、光学系160、160´の検出視野内にある基板310のアライメントマーク304、304´を検出する。検出されたアライメントマーク304、304´の位置から、基板のX、Y方向の位置およびZ軸回りの回転角度(姿勢)を求める(S6)。図11を用いて、アライメントマーク304、304´の検出を説明する。アライメントマーク304、304´の位置を光学系160、160´および基板アライメント検出系16を用いて計測する。基板アライメント検出系16の光電変換素子34の位置基準で、計測して得られたアライメントマーク304、304´の位置を(X1,Y1)、(X2,Y2)とする。基板のZ軸回りの回転角度θは、Y2−Y1=ΔYを、光学系160と光学系160´の観察視野間の距離で割って算出される。なお、基板のZ軸回りの回転角度の補正に関しては、基板ステージ4の座標系で、算出された回転角度θから、基準マークを基準としたチャック400の回転ずれ分θcを差し引いて、実際の基板ステージ4の走りに対する回転角度補正量を算出する必要がある。図11には、基準マークを基準としたチャック400の回転ずれ分θcがない場合の図を示している。基準マークを基準としたチャック400の回転ずれ分θcがある場合は、観察視野164、164´の位置がずれ、合わせて像面163、163´もずれる。
次に、S6で求められた基板の位置姿勢と、S3で測定された基準マーク位置から求められる光学系160、160´の観察視野(チャック)の位置とに基づいて、基板の位置合わせを行う。具体的には、基板のX、Y方向位置とZ軸回りの回転角度について投影光学系(基板ステージ4の座標系)に対して位置合わせする(S7)。そして、露光装置100は、基板310の表面側、つまり、ウエハ301上に塗布された感光剤にマスク1のパターンの像を投影して、感光剤に潜像パターンを形成する(S8)。S7において、基板の位置合わせを行った後に基板上にパターンを形成することで、基板の裏側のパターンと表側のパターンとの重ね合わせ精度を向上させることができる。
(変形例)
なお、基準マーク401、401´を、マーク板410に設けるのではなく、図12に示すように、チャック400を構成する部材の表面に形成したマーク420、420´としても良い。その場合は、チャック400の表面上にも基板アライメント検出系16のピントが合うように基板ステージ4のZ方向のストロークを確保する必要がある。
また、基準マーク401、401´を設けることなく、S3において、基準マーク401、401´を検出することなく、工具基板を用いて、光学系160、160´の検出視野の中心位置を求めてもよい。この場合、前述のように、チャック吸着面(裏面)側のマークと、反対側(表面側)のマークとの相対位置が既知の工具基板を用いる。工具基板をチャック400に吸着し、光学系160、160´を用いて裏面側のマークを検出し、光学系160、160´の検出視野の中心位置に対する裏面側のマークの位置を求める。次に、基板アライメント検出系16を用いて、表面側のマークを検出することで、表面側のマークの位置を求める。したがって、求められたこれらの位置と、裏面側マークと表面側マークの相対位置と、から、基板ステージ4の座標系における、光学系160、160´の検出視野の中心位置を求めることができる。
また、基板面におけるアライメントマーク304の位置は、ショットレイアウト、基板(デバイス)の種類によって様々である。そのため、チャック400内において光学系160、160´の観察視野を移動可能に構成して、光学系160、160´の観察視野を移動させることでアライメントマーク304を検出してもよい。これによって、基板面における任意の像高のアライメントマークを検出することができ、ショットレイアウト、基板の種類(アライメントマークの位置)ごとにチャック400を交換する手間を省くことができる。
また、基板は基板310に限定されることなく、基板の裏面、つまり、チャック400による基板310の吸着面312に対向する表面にアライメントマークが形成されていてもよい。なお、その場合には、光学系160によりアライメントマークを照明する光はシリコン等の基板を透過する必要が無いので、赤外波長でなくとも良い。
また、チャック400が適用される装置は露光装置に限定されるものではなく、描画装置やインプリント装置などのリソグラフィ装置にも適用することができる。ここで、描画装置は、荷電粒子線(電子線やイオンビームなど)で基板を描画するリソグラフィ装置であり、インプリント装置は、基板上のインプリント材(樹脂など)をモールドにより成形してパターンを基板に形成するリソグラフィ装置である。また、基板は、Siウエハに限定されるものではなく、SiC(シリコンカーバイド)、サファイア、ドーパントSi、ガラス基板などであってもよい。
(物品の製造方法)
次に、前述のリソグラフィ装置を利用した物品(半導体IC素子、液晶表示素子等)の製造方法を説明する。かかる物品は、前述のリソグラフィ装置を用いてパターンを基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)に形成する工程と、パターンが形成された基板を加工(現像、エッチングなど)する工程とを含む。本物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。または、前述のリソグラフィ装置は、高いスループットで経済性よく高品位なデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)などの物品を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。