JP6541231B2 - イチゴの休眠抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オオバの出蕾抑制方法およびイチゴの休眠抑制方法に関する。
オオバは、日照時間が短くなると出蕾して花をつける。そのため、日照時間が短くなる冬季においても、収穫可能な葉を継続して形成させて、葉の収量を増加させるためには、出蕾を抑制する必要がある。また、イチゴは、冬季に休眠状態となり、生育が停止する。そのため、冬季に葉の展開を促進して株あたりの光合成量を増加させ、果実収量の増加を図るためには、休眠を抑制して覚醒状態を維持させる必要がある。
従来、オオバの出蕾を抑制する方法、またはイチゴの休眠を抑制する方法として、電照栽培が行われている。前記電照栽培には、従来、白熱灯または蛍光灯が使用されている(非特許文献1および2参照)。
簑原善和監修、「電照・補光栽培の実用技術」、社団法人 農業電化協会、1996年発行、p143〜p177 社団法人 照明学会編、「光バイオインダストリー」、オーム社、1992年発行、p282〜p292
しかし、前記従来の電照栽培には、例えば、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果、品質向上効果など、収量増加において必要なその他の効果はない。そのため、前記従来の電照栽培においては、電照とは別に、病害防除などのための薬剤、設備および作業が必要であり、コストがかかる上に効率が悪いという問題がある。前記病害防除効果などを備えつつ、さらにオオバの出蕾抑制効果またはイチゴの休眠抑制効果を得ることができる技術があれば、コストを減らし、かつ、より効率よく栽培でき、さらなる収量の増加を図ることができる。また、前記従来の電照栽培では、オオバにおいて、細胞間の接着および固化、ならびに細胞壁の硬化を担うリグニンの蓄積を促進することができないという問題がある。
なお、前記の問題は、本発明者が検討し、見出したものである。
そこで、本発明は、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果および品質向上効果を備えつつ、出蕾抑制効果を得ることが可能なオオバの出蕾抑制方法、ならびに、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果および品質向上効果を備えつつ、休眠抑制効果を得ることが可能なイチゴの休眠抑制方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、オオバのリグニンの蓄積を促進することが可能なオオバのリグニン蓄積促進方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のオオバの出蕾抑制方法は、オオバに緑色光を照射して、前記オオバの出蕾を抑制することを特徴とする。
また、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法は、オオバに緑色光を照射して、前記オオバのリグニンの蓄積を促進させることを特徴とする。
また、本発明のイチゴの休眠抑制方法は、イチゴに緑色光を照射して、前記イチゴの休眠を抑制することを特徴とする。
本発明者が鋭意研究したところ、緑色光照射によって、オオバの出蕾抑制効果、およびイチゴの休眠抑制効果が得られることを、初めて見出すことができた。緑色光は、植物の病害防除、生育促進、害虫抑制、品質向上のために利用されている。したがって、本発明によれば、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果および品質向上効果を備えつつ、出蕾抑制効果を得ることが可能なオオバの出蕾抑制方法、ならびに、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果および品質向上効果を備えつつ、休眠抑制効果を得ることが可能なイチゴの休眠抑制方法を実現することができる。このため、本発明は、オオバの栽培、イチゴの栽培において、極めて有用である。
また、本発明者が鋭意研究したところ、緑色光照射によって、オオバのリグニンの蓄積が促進されることを、初めて見出すことができた。したがって、本発明によれば、オオバの電照栽培において、オオバのリグニンの蓄積を促進させることができる。このため、本発明は、オオバの栽培において極めて有用である。
図1は、本発明のオオバの出蕾抑制装置の一例を示す模式図である。 図2は、本発明のオオバの出蕾抑制装置のその他の例を示す模式図である。 図3は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるイチゴの休眠抑制の試験方法を示す図である。 図4は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるイチゴの休眠抑制結果を示すグラフである。 図5は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバのリグニン蓄積促進結果を示すグラフである。 図6は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバのリグニン蓄積促進結果を示す写真である。 図7は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの斑点病発生抑制の結果を示すグラフである。 図8は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの斑点病発生抑制の結果を示すグラフである。 図9は、本発明の一実施例における、緑色光照射による貯蔵中のオオバの斑点病発生抑制の結果を示すグラフである。 図10は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの水分減少抑制の結果を示すグラフである。 図11は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの水分減少抑制の結果を示すグラフである。 図12は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバのポリフェノール含有量増加の結果を示すグラフである。 図13(a)〜(c)は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの生育促進の結果を示すグラフである。 図14は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの根の活性の結果を示す写真である。 図15は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの根の活性の結果を示すグラフである。 図16(a)(b)は、本発明の一実施例における、緑色光照射によるオオバの品質の向上の結果を示すグラフである。
本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の波長は、480nm〜560nmの範囲であることが好ましい。
本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の照射光強度は、0.01μmol/m/s〜100μmol/m/sの範囲であることが好ましい。
本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の照射時間は、0.5時間〜12時間の範囲であることが好ましい。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記リグニンの蓄積の促進により、斑点病発生及び水分減少の少なくとも一方を抑制することが好ましい。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の波長は、480nm〜560nmの範囲であることが好ましい。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の照射光強度は、0.01μmol/m/s〜100μmol/m/sの範囲であることが好ましい。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の照射時間は、0.5時間〜12時間の範囲であることが好ましい。
本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の波長は、480nm〜560nmの範囲であることが好ましい。
本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の照射光強度は、0.01μmol/m/s〜100μmol/m/sの範囲であることが好ましい。
本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の照射時間は、0.5時間〜12時間の範囲であることが好ましい。
次に、本発明について、例をあげて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の説明によって限定および制限されない。
前述のように、本発明のオオバの出蕾抑制方法は、オオバに緑色光を照射することを特徴とする。
本発明のオオバへの緑色光の照射部位としては、オオバの全体または一部が緑色光照射の対象となっていればよい。
前述のように、本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の波長は、480nm〜560nmの範囲であることが好ましい。前記緑色光の波長は、より好ましくは、500nm〜530nmの範囲である。本発明において、照射する緑色光は、レーザーのような単波長のものでもよいし、波長分布を有するものでもよい。前記波長分布を有するものの場合、中心波長が前記の範囲内にあることが好ましい。
前述のように、本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の照射光強度は、0.01μmol/m/s〜100μmol/m/sの範囲であることが好ましい。前記緑色光の照射光強度は、より好ましくは、0.1μmol/m/s〜10μmol/m/sの範囲である。
前述のように、本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の照射時間は、0.5時間〜12時間の範囲であることが好ましい。前記緑色光の照射時間は、より好ましくは、0.5時間〜5時間の範囲である。
本発明のオオバの出蕾抑制方法は、白色光ではなく、緑色光をオオバに選択的に照射することにより、病害防除、生育促進、害虫抑制および品質向上などの効果が得られることに加え、出蕾抑制効果が得られる。したがって、本発明は、波長480nm〜560nmの範囲の緑色光のみを照射することが、特に好ましい。これにより、本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の照射は、太陽光が存在しない夜間に行われるのが好ましい。ここで、夜間とは、日没後から日の出前までの暗黒時をいう。また、前記緑色光の照射を日中に行う場合は、例えば、ビニール温室全体を黒色のシート等で覆って太陽光が届かないようにし、緑色光を照射するのが好ましい。前記緑色光の照射は、例えば、緑色光照射器具で、緑色光を選択的に照射してもよいし、緑色光のみを透過する分光フィルターを透過させた光源からの光または太陽光を照射してもよい。これによって、本発明は、単に白色光を用いた電照、または太陽光を照射する場合には得られない効果を得ることができる。
本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光の照射は、毎日照射でも、数日おきの照射でもよい。そして、前記緑色光の照射は、光中断であっても、日長延長方式であってもよい。光中断とは、例えば、夜間(例えば、22時〜24時)に照射器具を点灯して、所定時間(例えば、2時間)照射することである。日長延長方式とは、例えば、日没後または早朝に照射器具を点灯して所定時間(例えば、3〜4時間)照射することである。点灯は、連続点灯でもよいし、数分の点灯を繰り返す間欠点灯でもよい。連続点灯とは、例えば、緑色光を連続して所定時間(例えば、2時間)照射することである。間欠点灯とは、例えば、1時間に3分間〜15分間の点灯を繰り返すことである。
本発明のオオバの出蕾抑制方法において、前記緑色光は、単色であることが好ましいが、緑色光以外の波長域を有する光を含んでいても良い。
本発明に用いる緑色光照射器具は、緑色光に該当する波長を放射できるものであれば特に制限されない。前記照射器具は、レーザーのように単波長を照射するものであってもよいし、波長480nm〜560nmに中心波長をもつ光を照射するものであってもよい。前記照射器具は、例えば、発光ダイオード(LED)、蛍光管、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、ネオン管、無機エレクトロルミネッセンス、有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる他、前記該当波長域のみを透過する分光フィルターを透過させた前記光源から発せられる光または太陽光でもよい。
前記フィルターとしては、緑色光を透過するものであれば特に制限されないが、例えば、着色フィルム、透過性フィルム、偏光フィルター、透過性資材、ガラスなどがあげられる。
本発明の具体的な使用方法としては、例えば、ビニール温室などの施設栽培におけるオオバに照射する方法、露地栽培におけるオオバに照射する方法、育苗における実生苗に照射する方法、組織培養の培養器内のオオバに照射する方法、収穫後の貯蔵時に照射する方法などがあげられる。前記緑色光を照射する際に、他の波長域の光がオオバにほとんど届かないようにするため、ビニール温室全体を黒色のシート等で覆ってもよい。
次に、本発明のオオバの出蕾抑制装置について説明する。
本発明のオオバの出蕾抑制装置は、本発明のオオバの出蕾抑制方法に使用するオオバの出蕾抑制装置であって、緑色光を発する発光手段を備えることを特徴とする。
図1に、本発明のオオバの出蕾抑制装置の一例を示す。図示のとおり、この出蕾抑制装置10は、発光手段11と、コントローラ12とを備える。発光手段11は、オオバ13の上方から緑色光を照射する。発光手段11は、特に制限されず、例えば、前記緑色光照射器具を使用することができる。コントローラ12は、発光手段11の照射光強度および照射時間を制御する。コントローラ12は、任意の構成部材であり、無くてもよいが、あることが好ましい。図1においては、照射光強度制御、照射時間制御双方を行うコントローラ12を示しているが、コントローラ12は、それぞれを行う別の部材で構成されていてもよい。また、図1では、コントローラ12は、発光手段11と別部材となっているが、発光手段11の内部に組み込まれていてもよい。コントローラ12は、特に制限されず、例えば、従来の公知のものを用いればよい。
本例において、さらに、発光手段を移動させる移動手段を有してもよい。図2に、移動手段を有する本発明のオオバの出蕾抑制装置の一例を示す。図2において、図1と同一部分には同一の符号を付している。この出蕾抑制装置20は、移動手段24を有し、発光手段11は、移動手段24に取り付けられている。移動手段24は、育苗または栽培施設の規模または仕様に合わせて、栽培面上を移動しながら、栽培面全体を照射する。移動手段24は、特に制限されず、例えば、従来の公知のものを用いればよい。本例において、コントローラ12は、発光手段11の照射光強度および照射時間の他、移動手段24も制御する。図2においては、照射光強度制御、照射時間制御、および移動手段制御の全てを行うコントローラ12を示しているが、コントローラ12は、それぞれを行う別の部材で構成されていてもよい。コントローラ12は、前述のとおり特に制限されず、例えば、従来の公知のものを用いればよい。
なお、本発明のオオバの出蕾抑制装置は、本発明のオオバのリグニン蓄積促進装置および本発明のイチゴの休眠抑制装置としても使用することができる。
次に、本発明のオオバの生産方法について説明する。本発明のオオバの生産方法は、オオバの生産方法であって、オオバの出蕾抑制工程を含み、前記出蕾抑制工程が、本発明のオオバの出蕾抑制方法により実施されることを特徴とする。
次に、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法について説明する。
前述のように、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法は、オオバに緑色光を照射することを特徴とする。
そして、前述のように、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記リグニンの蓄積の促進により、斑点病発生及び水分減少の少なくとも一方を抑制することが好ましい。
本発明者は、研究の結果、オオバのリグニンの蓄積の促進が、斑点病発生及び水分減少の少なくとも一方の抑制に繋がることを見出した。リグニン蓄積により、オオバの細胞間の接着が強まり、細胞壁が強化される。そして、細胞壁が強化されることにより、斑点病の感染が抑制され、また、水分の減少が抑制されると推察される。
斑点病が発生したオオバは、商品として出荷できず、収穫後、廃棄処分される。また、収穫時には斑点病が発病していなくても、流通段階で発病することがあり、その場合、市場、店頭または消費者等からクレームが生じるおそれがある。また、水分が減少したオオバは、萎れが出るため、商品価値が下がってしまう。したがって、オオバの斑点病の発生を抑制すること、および、収穫後の水分減少を防ぐことは、オオバの栽培にとって重要な課題である。
本発明のオオバへの緑色光の照射部位としては、オオバの全体または一部が緑色光照射の対象となっていればよい。
前述のように、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の波長は、480nm〜560nmの範囲であることが好ましい。前記緑色光の波長は、より好ましくは、500nm〜530nmの範囲である。本発明において、照射する緑色光は、レーザーのような単波長のものでもよいし、波長分布を有するものでもよい。前記波長分布を有するものの場合、中心波長が前記の範囲内にあることが好ましい。
前述のように、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の照射光強度は、0.01μmol/m/s〜100μmol/m/sの範囲であることが好ましい。前記緑色光の照射光強度は、より好ましくは、0.1μmol/m/s〜10μmol/m/sの範囲である。
前述のように、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の照射時間は、0.5時間〜12時間の範囲であることが好ましい。前記緑色光の照射時間は、より好ましくは、0.5時間〜5時間の範囲である。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法では、白色光ではなく、緑色光をオオバに選択的に照射することにより、リグニン蓄積促進効果が得られる。したがって、本発明は、波長480nm〜560nmの範囲の緑色光のみを照射することが、特に好ましい。これにより、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の照射は、太陽光が存在しない夜間に行われるのが好ましい。ここで、夜間とは、日没後から日の出前までの暗黒時をいう。また、前記緑色光の照射を日中に行う場合は、例えば、ビニール温室全体を黒色のシート等で覆って太陽光が届かないようにし、緑色光を照射するのが好ましい。前記緑色光の照射は、例えば、緑色光照射器具で、緑色光を選択的に照射してもよいし、緑色光のみを透過する分光フィルターを透過させた光源からの光または太陽光を照射してもよい。これによって、本発明は、単に白色光を用いた電照、または太陽光を照射する場合には得られない効果を得ることができる。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光の照射は、毎日照射でも、数日おきの照射でもよい。そして、前記緑色光の照射は、光中断であっても、日長延長方式であってもよい。光中断とは、例えば、夜間(例えば、22時〜24時)に照射器具を点灯して、所定時間(例えば、2時間)照射することである。日長延長方式とは、例えば、日没後または早朝に照射器具を点灯して所定時間(例えば、3〜4時間)照射することである。点灯は、連続点灯でもよいし、数分の点灯を繰り返す間欠点灯でもよい。連続点灯とは、例えば、緑色光を連続して所定時間(例えば、2時間)照射することである。間欠点灯とは、例えば、1時間に3分間〜15分間の点灯を繰り返すことである。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法において、前記緑色光は、単色であることが好ましいが、緑色光以外の波長域を有する光を含んでいても良い。
本発明に用いる緑色光照射器具は、緑色光に該当する波長を放射できるものであれば特に制限されない。前記照射器具は、レーザーのように単波長を照射するものであってもよいし、波長480nm〜560nmに中心波長をもつ光を照射するものであってもよい。前記照射器具は、例えば、発光ダイオード(LED)、蛍光管、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、ネオン管、無機エレクトロルミネッセンス、有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる他、前記該当波長域のみを透過する分光フィルターを透過させた前記光源から発せられる光または太陽光でもよい。
前記フィルターとしては、緑色光を透過するものであれば特に制限されないが、例えば、着色フィルム、透過性フィルム、偏光フィルター、透過性資材、ガラスなどがあげられる。
本発明の具体的な使用方法としては、例えば、ビニール温室などの施設栽培におけるオオバに照射する方法、露地栽培におけるオオバに照射する方法、育苗における実生苗に照射する方法、組織培養の培養器内のオオバに照射する方法、収穫後の貯蔵時に照射する方法などがあげられる。前記緑色光を照射する際に、他の波長域の光がオオバにほとんど届かないようにするため、ビニール温室全体を黒色のシート等で覆ってもよい。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法は、前記本発明のオオバの出蕾抑制方法と併せて実施することができる。これにより、オオバの出蕾を抑制し、かつ、リグニンの蓄積も促進されるため、オオバの栽培にとって極めて有用である。
本発明のオオバのリグニン蓄積促進装置は、前述のとおり、前述の本発明のオオバの出蕾抑制装置と同様のものを用いることができる。
また、本発明のオオバの生産方法は、オオバの生産方法であって、オオバのリグニン蓄積促進工程を含み、前記リグニン蓄積促進工程が、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法により実施されることを特徴とする。
次に、本発明のイチゴの休眠抑制方法について説明する。
前述のように、本発明のイチゴの休眠抑制方法は、イチゴに緑色光を照射することを特徴とする。
本発明のイチゴへの緑色光の照射部位としては、イチゴの全体または一部が緑色光照射の対象となっていればよい。
前述のように、本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の波長は、480nm〜560nmの範囲であることが好ましい。前記緑色光の波長は、より好ましくは、500nm〜530nmの範囲である。本発明において、照射する緑色光は、レーザーのような単波長のものでもよいし、波長分布を有するものでもよい。前記波長分布を有するものの場合、中心波長が前記の範囲内にあることが好ましい。
前述のように、本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の照射光強度は、0.01μmol/m/s〜100μmol/m/sの範囲であることが好ましい。前記緑色光の照射光強度は、より好ましくは、0.1μmol/m/s〜10μmol/m/sの範囲である。
前述のように、本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の照射時間は、0.5時間〜12時間の範囲であることが好ましい。前記緑色光の照射時間は、より好ましくは、0.5時間〜5時間の範囲である。
本発明のイチゴの休眠抑制方法は、白色光ではなく、緑色光をイチゴに選択的に照射することにより、病害防除、生育促進、害虫抑制および品質向上などの効果が得られることに加え、休眠抑制効果が得られる。したがって、本発明は、波長480nm〜560nmの範囲の緑色光のみを照射することが、特に好ましい。これにより、本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の照射は、太陽光が存在しない夜間に行われるのが好ましい。ここで、夜間とは、日没後から日の出前までの暗黒時をいう。また、前記緑色光の照射を日中に行う場合は、例えば、ビニール温室全体を黒色のシート等で覆って太陽光が届かないようにし、緑色光を照射するのが好ましい。前記緑色光の照射は、例えば、緑色光照射器具で、緑色光を選択的に照射してもよいし、緑色光のみを透過する分光フィルターを透過させた光源からの光または太陽光を照射してもよい。これによって、本発明は、単に白色光を用いた電照、または太陽光を照射する場合には得られない効果を得ることができる。
本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光の照射は、毎日照射でも、数日おきの照射でもよい。そして、前記緑色光の照射は、光中断であっても、日長延長方式であってもよい。光中断とは、例えば、夜間(例えば、22時〜24時)に照射器具を点灯して、所定時間(例えば、2時間)照射することである。日長延長方式とは、例えば、日没後または早朝に照射器具を点灯して所定時間(例えば、3〜4時間)照射することである。点灯は、連続点灯でもよいし、数分の点灯を繰り返す間欠点灯でもよい。連続点灯とは、例えば、緑色光を連続して所定時間(例えば、2時間)照射することである。間欠点灯とは、例えば、1時間に3分間〜15分間の点灯を繰り返すことである。
本発明のイチゴの休眠抑制方法において、前記緑色光は、単色であることが好ましいが、緑色光以外の波長域を有する光を含んでいても良い。
本発明に用いる緑色光照射器具は、緑色光に該当する波長を放射できるものであれば特に制限されない。前記照射器具は、レーザーのように単波長を照射するものであってもよいし、波長480nm〜560nmに中心波長をもつ光を照射するものであってもよい。前記照射器具は、例えば、発光ダイオード(LED)、蛍光管、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、ネオン管、無機エレクトロルミネッセンス、有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる他、前記該当波長域のみを透過する分光フィルターを透過させた前記光源から発せられる光または太陽光でもよい。
前記フィルターとしては、緑色光を透過するものであれば特に制限されないが、例えば、着色フィルム、透過性フィルム、偏光フィルター、透過性資材、ガラスなどがあげられる。
本発明の具体的な使用方法としては、例えば、ビニール温室などの施設栽培におけるイチゴに照射する方法、露地栽培におけるイチゴに照射する方法、育苗における実生苗に照射する方法、組織培養の培養器内のイチゴに照射する方法、収穫後の貯蔵時に照射する方法などがあげられる。前記緑色光を照射する際に、他の波長域の光がイチゴにほとんど届かないようにするため、ビニール温室全体を黒色のシート等で覆ってもよい。
本発明のイチゴの休眠抑制装置は、前述のとおり、前述の本発明のオオバの出蕾抑制装置と同様のものを用いることができる。
また、本発明のイチゴの生産方法は、イチゴの生産方法であって、イチゴの休眠抑制工程を含み、前記休眠抑制工程が、本発明のイチゴの休眠抑制方法により実施されることを特徴とする。
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により限定および制限されない。
[実施例1]
(緑色光照射によるオオバの出蕾抑制)
無加温ビニール温室において、照射光強度を5〜10μmol/m/s、照射時間5時間(18時〜23時)として、平成22年10月15日から平成22年11月18日まで毎日、緑色光をオオバ(「大葉青しそ」、タキイ種苗株式会社製)に照射し、出蕾を調査した。前記緑色光の照射には、緑色LEDロープライトを用い、株の上方から照射した。前記オオバとしては、種子をロックウールキューブに播種し、育苗室において、室温25℃、蛍光灯照明による16時間日長で育てた苗を用いた。その他の栽培条件は、公知のロックウール養液栽培法に従った。無照射および本実施例において、n=6(栽培終了時)の平均値としての出蕾率を求めた。
その結果を表1に示す。表1に示すように、無照射では全て出蕾したが、緑色光を照射した場合、出蕾は見られなかった。
また、収穫調査(オオバの規格 M:8.8〜9.4cmを目安)を行った。その結果を表2に示す。表2に示すように、緑色光を照射した場合、出蕾が抑制されたことから、継続して収穫可能な葉が形成され、収量が増加した。
[実施例2]
(緑色光照射によるイチゴの休眠抑制)
加温ビニール温室の実圃場でイチゴ(「さぬき姫」、JA香川県より購入)を用い、平成22年12月初旬から平成23年3月中旬まで、緑色光を照射しながら栽培を行い、緑色光照射による休眠抑制効果を測定した。照射光強度は、0.2〜0.4μmol/m/sとした。緑色光の光源は、緑色LED電球および緑色LEDロープライトを用いた。緑色LED電球に関しては、照射区域に緑色LED電球を縦1列に配置した1列区と、2列に配置した2列区とを設けた。以下、本例において、緑色LED電球を照射した区域(1列区および2列区)を、緑色電球区、緑色LEDロープライトを照射した区域を、ロープライト区という。電照方法は光中断とし、緑色電球区では、23:00〜24:00の1時間、毎日照射し、ロープライト区では、20:00〜22:00の2時間、月、水、金曜日に照射した。試料数(n)は、10/区とした。その他の栽培条件は、公知の養液栽培法に従った。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、照射光強度を0.4〜0.8μmol/m/s、電照方法は23:00〜24:00の1時間毎日照射として、休眠抑制効果を測定した。本比較例においては、照射区域に白熱灯を縦1列に配置した。以下、本例において、白熱灯を照射した区域を、対照区という。
図3に、本実施例の緑色電球区および本比較例における光源の配置と、照射光強度を表した図を示す。図3左端は、2列区の図、中央は1列区の図、右端は、対照区の図である。本実施例のロープライト区については、図示していないが、イチゴの植え付け面に緑色LEDロープライトを設置して、緑色光を照射した。
測定結果を、図4に示す。図4において、(a)は葉柄長、(b)は葉面積、(c)は葉色、(d)はクラウン径の結果である。図4に示すように、対照区の株と、緑色電球区の株およびロープライト区の株とは、生育の状態がほぼ同じであり、緑色光照射によって休眠抑制効果が得られた。また、2列区およびロープライト区の生育が特に良好であることがわかった。
[実施例3]
(緑色光照射によるオオバの出蕾抑制)
ビニール温室において、オオバ(香北在来種)を平成23年5月28日に定植し、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m/s、照射時間1〜2時間として、緑色光を平成23年12月末まで毎日照射して栽培し、出蕾を調査した。前記緑色光の照射には、緑色LEDを使用した。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとした以外は同様にして、出蕾を調査した。
その結果、緑色光を照射した区域では、5月末の定植から12月上旬まで出蕾は見られなかった。また、緑色光を照射した区域において、一部(植物体の陰になり照度が低くなる場所)で、日長の最も短くなる12月中旬(冬至)に出蕾が見られたが、これらの現象は白熱灯でも見られたことから、緑色光は白熱灯と同等以上の出蕾抑制効果があることがわかった。
[実施例4]
(オオバのリグニン蓄積量への緑色光照射の影響)
ビニール温室において、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m/s、照射時間1〜2時間として、平成23年5月28日から平成23年12月末まで毎日、緑色光をオオバ(香北在来種)に照射し、オオバのリグニン蓄積量への緑色光照射の影響を調査した。本実施例において、試料数は、n=5とした。
平成23年9月27日に前記オオバを採取し、改良Wiesner試薬(フロログリシノール飽和溶液/5%HCl)を各3ml滴下し染色した。その後、オオバの葉片をシャーレに入れ、染色30分後の染色強度を、葉脈全体が染色された場合は「染色濃」とし、1/2程度染色された場合は「染色中」とし、1/4程度染色された場合は「染色薄」とし、染色が見られない場合は「染色なし」として、4段階で評価した。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m/sとした以外は同様にして、オオバのリグニン蓄積量を調べた。
その結果を、図5に示す。図5に示すように、白熱灯照射および赤色LED照射の場合、「染色中」の割合が全体の20%にとどまり、また、「染色濃」の結果は見られなかったのに対し、緑色LED照射の場合、「染色濃」が20%、「染色中」が40%見られた。また、図6に、緑色LED照射のオオバおよび白熱灯照射のオオバのリグニン染色結果の写真を示す。図6において、右側が緑色LED照射のオオバのリグニン染色結果を示す写真であり、左側が白熱灯照射のオオバのリグニン染色結果を示す写真である。図6において、AおよびA´で示す領域は、染色が見られた領域である。図6に示すように、白熱灯照射のオオバよりも、緑色LED照射のオオバの方が、染色された領域が広かった。これにより、緑色光をオオバに照射することで、リグニンの蓄積が促進されることがわかった。
[実施例5]
(1)緑色光照射によるオオバの斑点病抑制
ビニール温室において、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m/s、照射時間1〜2時間として、平成23年5月28日から平成23年12月末まで毎日、緑色光をオオバ(香北在来種)に照射し、斑点病の発生に及ぼす緑色光照射の影響を調査した。前記緑色光の照射には、緑色LEDを用いた。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m/sとした以外は同様にして、斑点病の発生に及ぼす影響を調査した。本実施例および比較例において、試料数はn=70株とした。
その結果、白熱灯の場合は、全体の54.3%のオオバに斑点病が発生し、赤色LEDの場合は、全体の48.6%のオオバに斑点病が発生したのに対し、緑色LEDを使用した場合、斑点病が発生したオオバは全体の8.6%にとどまった。
また、平成23年8月1日から平成23年12月21日までにかけて、試料(n=10)を採取し、斑点病発生の推移を調査した。その結果を図7に示す。図7に示すように、白熱灯および赤色LEDで照射した場合、8月〜9月に斑点病が著しく発生した。これに対し、緑色LEDで照射したオオバでは、8月〜9月における斑点病の発生が顕著に抑制された。
(2)光強度向上が及ぼす斑点病抑制への影響
照射光強度を向上させた場合の斑点病抑制効果を調べるため、照射期間を平成24年5月22日から平成24年8月末までとし、緑色光の光源として、標準型緑色LED電球(以下「標準型」という。)および光強度を前記標準型の1.8倍に向上させた高輝度型緑色LED電球(以下「高輝度型」という。)を使用した以外は、前述と同様にして、斑点病の発生率を調べた。標準型および高輝度型の仕様比較を表3に、光量子量の比較を表4に示す。本実施例において、試料数は、n=25とした。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m/sとした以外は同様にして、斑点病の発生に及ぼす影響を調査した。
その結果を図8に示す。図8に示すように、高輝度型を用いた場合には、標準型を用いた場合よりもさらに斑点病の発生が抑制された。これにより、照射光強度を向上させた高輝度型緑色電球を用いることで、さらに斑点病抑制効果が向上することがわかった。
[実施例6]
(貯蔵中のオオバの斑点病発生への緑色光照射の影響)
ビニール温室において、前記実施例5で使用した標準型および高輝度型の緑色LEDを用い、照射時間1〜2時間として、平成24年5月22日から平成24年8月末まで毎日、緑色光を照射して栽培したオオバ(香北在来種)について、収穫後貯蔵中の斑点病の発生を調査した。
本実施例では、平成24年8月29日に、病斑のないオオバ10枚を選んで採取し、5℃条件下で、平成24年8月30日から平成24年9月10日までの11日間貯蔵し、斑点病発生を調査した。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとした以外は同様にして、斑点病発生を調べた。
その結果を図9に示す。標準型および高輝度型の緑色LEDを照射して栽培したオオバについては、白熱灯照射で栽培したオオバと比較し、貯蔵中の斑点病の発生が抑制された。
[実施例7]
(オオバの水分減少率への緑色光照射の影響)
ビニール温室において、照射光強度を0.4〜1.1μmol/m/s、照射時間1〜2時間として、平成23年5月28日から平成23年12月末まで毎日、緑色光を照射して栽培したオオバ(香北在来種)について、収穫後の水分減少率を調査した。
本実施例では、平成23年8月28日にオオバ10枚を採取し、チャック付きビニール袋に入れて家庭用冷蔵庫野菜室にて保存し、平成23年9月6日から平成24年9月20日までの14日間、水分減少率を調査した。保存開始から3日目までは、霧吹きによる保水処理を行った。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用した以外は同様にして、水分減少率を調べた。
その結果を、図10に示す。図10に示すように、緑色LED照射のオオバは、白熱灯照射のオオバに比べて、水分減少率が低くかった。これにより、緑色光照射によって、オオバの水分減少が抑制されることがわかった。
[実施例8]
(オオバの水分減少率への緑色光照射の影響)
前記実施例7と同様にして栽培したオオバについて、収穫後の水分減少率を調査した。
本実施例では、平成23年12月21日にオオバ10枚を採取し、チャック付きビニール袋に入れて家庭用冷蔵庫野菜室にて保存し、平成23年12月22日から平成24年2月2日までの42日間、水分減少率を調査した。保存開始から葉柄基部に水を浸した紙片(「キムワイプ」、日本製紙クレシア社製)を巻き付け、貯蔵期間中において保水処理を行った。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用した以外は同様にして、水分減少率を調べた。
その結果を、図11に示す。図11において、LED・Gは、緑色LEDを、LED・Rは、赤色LEDを示す。図11に示すように、緑色LED照射のオオバは、白熱灯照射および赤色LED照射のオオバに比べて、水分減少率が低かった。これにより、緑色光照射によって、オオバの水分減少が抑制されることがわかった。
[実施例9]
(緑色光照射によるオオバのポリフェノール含有量への影響)
ビニール温室において、前記実施例5で使用した標準型および高輝度型の緑色LEDを用い、照射時間1〜2時間として、平成24年4月26日から毎日、緑色光をオオバ(香北在来種)に照射し、オオバのポリフェノール含有量を測定した。本実施例では、試料数はn=20とした。本実施例において、試料の採取は、平成24年5月22日から平成24年8月9日までの間で行った。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとした以外は同様にして、オオバのポリフェノール含有量を測定した。
その結果を、図12に示す。図12に示すように、白熱灯を使用した場合と比較して、標準型および高輝度型の緑色LEDを使用した場合の方が、ポリフェノール含有量が高かった。また、高輝度型緑色LEDを使用した場合、電照開始初期からポリフェノール含有量の向上が見られた。さらに、緑色LEDで電照を続けることで、ポリフェノール向上効果は持続することがわかった。
[実施例10]
(緑色光照射のオオバの生育への影響)
本実施例では、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、緑色光照射のオオバの生育への影響を調べた。本実施例において、調査項目は、主枝長、主枝節数および茎径とした。本実施例において、試料数は、n=10とした。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を
0.5〜1.1μmol/m/sとした以外は同様にして、成育への影響を調べた。
その結果を、図13に示す。図13(a)は、主枝長を示し、図13(b)は、主枝節数(節)を示し、図13(c)は、茎径を示す。図13(a)〜(c)に示すとおり、白熱灯を使用した場合と比較して、緑色光照射により、主枝長、主枝節数、茎径すべてが増加し、成育が促進されることがわかった。
[実施例11]
(緑色光照射のオオバの根への影響)
本実施例では、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、栽培終了時のオオバについて、根の外観の確認と、根のTTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)染色による活性の測定を行い、緑色光照射のオオバの根への影響を調べた。まず、5株のオオバから根を採取し、水洗後に前記根をプラスチックシャーレに入れ、0.1%TTC溶液を満たし、37℃暗所で5.5時間反応させた。その後、染色反応を示す根を1gずつ採取し、20mlの酢酸エチル中で2分磨砕し、抽出液を得た。そして、波長480nmにおける抽出液の吸光度を測定した。
また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとし、赤色LEDでは照射光強度を2.7〜6.3μmol/m/sとした以外は同様にして、根の外観の確認と根のTTC活性の測定を行った。
その結果を図14および図15に示す。図14は、根の状態を撮影した写真であり、図15は、根のTTC活性を測定したグラフである。図14に示すように、緑色LEDで照射したオオバは、白熱灯および赤色LEDを使用した場合と比較して、根が成長して密集していることがわかる。また、図15に示すように、緑色LEDで照射したオオバは、赤色LED照射および白熱灯照射のオオバと比べて、TTC活性(ABS WL:480nm)が高いことから、根の活性が高く、栽培終了時も生育が良好であることがわかった。
[実施例12]
(緑色光照射のオオバの品質への影響)
本実施例では、緑色光照射のオオバの品質(ビタミンC含有量、葉の光沢)への影響を調査した。
まず、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、ビタミンC含有量を調べた。本実施例では、オオバの試料を同量の5%メタリン酸水溶液で粉砕して濾過を行い、得られた濾液を測定試料として、小型反射式光度計RQフレックス(Merck社製)による簡易分析により、ビタミンC含有量を調査した。本実施例において、試料数は、n=44とした。また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯および赤色LEDを使用した以外は同様にして、ビタミンC含有量を調べた。
その結果を図16(a)に示す。図16(a)に示すように、緑色LEDを照射したオオバは、赤色LED照射および白熱灯照射のオオバと比べて、ビタミンC含有量が向上した。
次に、前記実施例3と同様にしてオオバを生育させ、葉の光沢を調べた。本実施例では、分光測色計(コニカミノルタ センシング(株)製 CM−700d)を用いて試料1枚につき2点を測定し、得られた計測値のL値を光沢の指標とした。本実施例において、試料数は、n=10とした。また、比較例として、緑色LEDに代えて、白熱灯を使用し、白熱灯では照射光強度を0.5〜1.1μmol/m/sとした以外は同様にして、葉の光沢を調べた。
その結果を、図16(b)に示す。図16(b)に示すように、緑色LEDを照射したオオバは、白熱灯照射のオオバと比べて、葉の光沢の向上が見られた。
本発明のオオバの出蕾抑制方法は、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果、品質向上効果をもつ緑色光を使用するため、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果および品質向上効果を備えつつ、出蕾抑制効果を得ることができる。また、本発明のオオバのリグニン蓄積促進方法によれば、オオバのリグニンの蓄積を促進することができる。そして、本発明のイチゴの休眠抑制方法は、前記緑色光を使用するため、病害防除効果、生育促進効果、害虫抑制効果および品質向上効果を備えつつ、休眠抑制効果を得ることができる。したがって、本発明は、オオバまたはイチゴの栽培において、有効に利用することができるが、その用途は限定されず、広い分野で使用することができる。
10、20 オオバの出蕾抑制装置
11 発光手段
12 コントローラ
13 オオバ
24 移動手段

Claims (4)

  1. 冬季に、イチゴに緑色光を照射し、
    前記緑色光の照射時間を、時間〜時間の範囲とし、
    前記照射時間は、照射を行う1日あたりの照射時間であり、
    前記緑色光の照射光強度を、0.2μmol/m/s〜0.4μmol/m/sの範囲とすることを特徴とするイチゴの休眠抑制方法。ただし、前記照射は、白色光および蛍光灯の光の照射を除く。
  2. 前記照射が、光中断もしくは日長延長方式での前記緑色光の照射である、または、日中、太陽光が届かない条件下での前記緑色光の照射である、請求項1記載のイチゴの休眠抑制方法。
  3. 前記緑色光の波長が、480nm〜560nmの範囲であることを特徴とする請求項1または2記載のイチゴの休眠抑制方法。
  4. 前記照射が、日中、太陽光が届かない条件下での緑色光の照射、または、緑色光のみを透過する分光フィルターを透過させた太陽光の照射である、請求項1からのいずれか一項に記載のイチゴの休眠抑制方法。
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