ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)エフェクタの構成:
(2)動作例:
(3)第2実施形態:
(3−1)動作例:
(3−2)GATE信号生成部の構成例:
(4)第3実施形態:
(4−1)動作例:
(5)第4実施形態:
(5−1)動作例:
(6)他の実施形態:
(1)エフェクタの構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかるエフェクタ10の構成を示すブロック図である。エフェクタ10は、ハードウェアによって構成されても良いし、ソフトウェアによって構成されても良い。ここでは、DSP(Digital Signal Processor)によってエフェクタ10が構成されている例を説明する。
エフェクタ10には他の機器から音信号が入力される。エフェクタは、当該音信号が示す音に対して音響効果を与え、音響効果信号として出力する。
本実施形態において、音信号は音波を示すデジタル信号である。このような信号の信号源としては、種々の装置が想定可能である。例えば、MIDI信号に基づいて音信号を生成、出力するトーンジェネレータや、マイクによって検出された音波に対してアナログデジタル変換を実施する装置等を信号源とすることができる。
音響効果信号は、音響効果が付与された音の音波を示すデジタル信号である。音を出力するための構成は、種々の構成を採用可能である。例えば、音響効果信号をアナログ信号に変換する装置と、当該アナログ信号を増幅するサウンドシステムと、当該増幅された信号によって音を出力するスピーカーを利用する構成等が挙げられる。
本実施形態において、エフェクタ10は、区切り取得部20と音響効果信号生成部21と音響効果無効化部22と増幅器23とを備えている。区切り取得部20は、音信号における音楽の区切りを取得する。区切りは、区切りの前後において音楽を(曲等の内容を)区別できるように時間軸上に設定可能なタイミングであり、本実施形態においては、小節線のタイミングである。すなわち、本実施形態において音信号が示す音は小節毎の音符(または休符)が示す音で構成される楽曲である。そこで、本実施形態において、区切り取得部20は、小節が切り替わるタイミング(各小節の1拍目の開始タイミング)を区切りとして取得する。
本実施形態において区切り取得部20は、エフェクタ10の外部の装置が出力するクロック信号(音信号の出力タイミングを制御するための信号)に基づいて音楽の区切りを取得する。具体的には、区切り取得部20は、クロック信号の数を計測するカウンターを備えており、カウント数を示す信号を出力する。本実施形態において、クロック信号は所定の周期で出力され、1小節の時間長に相当するクロック信号の数は予め決められている。従って、エフェクタ10に対して音信号とクロック信号とが提供され、クロック信号によって音信号の出力タイミングが制御される構成において、区切り取得部20が、音信号による音の出力開始タイミング以後のクロック信号の数を計測することにより、区切りを取得することが可能である。
例えば、クロック信号が960個で1小節に相当する場合、区切り取得部20は、クロック信号を1〜960個まで計測し、960個計測されると計測をクリアし、再度1個目から計測を行う。この構成であれば、960個計測されると1小節が終了し、次の1個目が次の1小節の開始タイミングであることが取得される。従って、クロック信号10個分の期間が必要な処理を区切りに合わせて完了させるためには、クロック信号950個目のタイミングで処理を開始すべきであり、区切り取得部20におけるカウント数はこのように区切りに合わせた処理を実施するために利用可能である。従って、区切り取得部20が出力する、カウント数を示す信号は区切りを示しているといえる。なお、図1Bにおいては、区切り取得部20が出力する信号を模式的に示している。すなわち、カウント数と示したタイミングチャートにおいて、カウント数が0〜最大値まで増加し、その後再びカウント数が0となり、さらにカウント数が上昇していく様子が示されている。
音響効果信号生成部21は、音信号に効果を与えた音響効果信号を出力する。また、音響効果信号生成部21は、当該音響効果信号を生成する際に、任意の時点における音響効果信号を当該時点より過去の出力音を参照して生成する。すなわち、音響効果信号生成部21は、時系列の音信号を順次入力し、サンプル期間に渡る音信号を記録するとともにFIFO(First In First Out)形式で順次削除する図示しないメモリと、当該メモリに記録された音信号に基づいて所定の処理を行う図示しない処理部とを備えている。所定の処理は、メモリに記録された音信号に基づいて音信号が示す音に所定の音響効果を付与する処理である。
このように、本実施形態における音響効果信号生成部21は、時系列の音信号をメモリに順次入力し、メモリに記録された音信号に基づいて音響効果を与えた音響効果信号を生成する。そして、ある時点においてメモリに記録されている音信号に着目すると、当該ある時点における音以前の音を示す音信号が記録されていることになる。従って、音響効果信号生成部21は、音響効果信号を生成する際に、任意の時点における音響効果信号を当該時点より過去の出力音を参照して生成することになる。
なお、本実施形態において、音響効果信号生成部21は、メモリに記録された音信号を一括消去することができる。すなわち、音響効果無効化部22がメモリ制御信号(後述)を出力すると、音響効果信号生成部21は、当該メモリ制御信号に応じてメモリの消去を開始する。この結果、わずかな所定の期間を要してメモリに記録された音信号が消去され、過去の出力音の参照が無効化される。なお、音響効果は、任意の効果であってよく、例えば、リバーブ、ディレイ、コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロ、ワウ、コンプレッサー、ディストーション等の任意の種類の効果が挙げられる。また、任意の音響効果において、その効果の強弱や音の変調度合い等を示すパラメータが可変であってよい。さらに、効果の種類やそのパラメータが利用者によって選択可能であってもよい。
音響効果信号生成部21が音響効果信号を生成すると、音響効果信号は増幅器23に入力される。増幅器23は、0%から100%の間でゲインを調整可能であり、ゲインが調整されると、ゲイン調整後の音響効果信号はエフェクタ10の外部に出力される。なお、本実施形態において、増幅器23におけるゲインは外部から入力される信号によって調整される。すなわち、増幅器23においては、音響効果無効化部22が出力する信号によってゲインが調整される。
音響効果無効化部22は、音信号における音楽の区切りにおいて過去の出力音の参照を無効化する。具体的には、音響効果信号生成部21は、区切り取得部20が出力する信号に基づいて、音楽の区切りに合わせて音響効果を無効化するための無効化信号を生成し、出力する。本実施形態において、無効化信号は、ゲイン制御信号とメモリ制御信号とによって構成されている。
ゲイン制御信号は、増幅器23におけるゲインを制御するための信号であり、本実施形態において音響効果無効化部22は、区切り取得部20の出力信号に基づいて、小節の開始タイミング〜終了タイミングの期間においてゲインが0%から徐々に増加し、100%を維持した後、徐々に減少し0%となる信号を生成する。具体的には、ゲイン制御信号は図1Bに示したような信号である。このようなゲイン制御信号は、例えば、区切り取得部20の出力信号が0カウントから10カウントに変化する間にゲインを0%〜100%に上昇させ、区切り取得部20の出力信号が11カウントから940カウントに変化する間ゲインを100%に維持し、区切り取得部20の出力信号が941カウントから950カウントに変化する間にゲインを100%〜0%に減少させ、区切り取得部20の出力信号が951カウントから960カウントに変化する間ゲインを0%維持させるように、音響効果無効化部22が信号を生成することによって実現される。
メモリ制御信号は、音響効果信号生成部21が備えるメモリに記録された音信号を一括消去するための信号であり、本実施形態において音響効果無効化部22は、区切り取得部20の出力信号に基づいて、区切りにおいてメモリに記録された情報の消去が完了するように、メモリ制御信号を生成する。具体的には、メモリ制御信号は図1Bに示したような信号である。このようなメモリ制御信号は、例えば、区切り取得部20の出力信号が950カウントから960カウントに変化する期間において電圧が0から最大値(図1Bに示す"1")まで上昇し、直ぐに0に変化するように、音響効果無効化部22がパルス信号を生成することによって実現される。なお、メモリ制御信号はパルス上の信号であるため、メモリの一括消去が完了した後には、過去の出力音の参照が有効化されることになる。
(2)動作例:
次に、図1Bに基づいてエフェクタ10の動作例を説明する。図1Bは、時系列のカウント数(区切り取得部20の出力信号)とゲイン制御信号およびメモリ制御信号(音響効果無効化部22が出力する無効化信号)とを模式的に示す図である。区切り取得部20は、クロック信号に基づいてその数をカウントし、カウント数を示す信号として出力している。当該カウントは小節の最後のタイミングを示す最大値まで達するとクリアされて0になるため、図1Bに示すようにカウント数が0になる時刻T1,T2,T3,T4が区切り(小節の開始タイミング)である。
一方、音響効果信号生成部21は、クロック信号に同期して時系列の音信号を順次取得し、取得した音信号をメモリに順次記録していく。メモリに音信号が記録された状態において、音響効果信号生成部21は、メモリに記録された音信号に基づいて音響効果が付与された音を示す音響効果信号を生成し、出力する。従って、メモリがクリアされなければ、音響効果信号生成部21は、音響効果が付与された音響効果信号を順次出力する。
音響効果信号生成部21から出力された音響効果信号に対しては、増幅器23によるゲイン調整がなされ、エフェクタ10から順次出力される。そして、増幅器23においては、図1Bに示すゲイン制御信号によってゲインが調整されるため、小節の初期(例えば、時刻T1,T2,T3,T4以後、クロック信号10個分の期間)において、エフェクタ10から出力される音響効果信号の出力レベルは徐々に増加する。その後、音響効果信号の出力レベルが最大値に維持され、小節の終期(例えば、時刻T1,T2,T3,T4よりクロック信号20個分前の期間)において、エフェクタ10から出力される音響効果信号の出力レベルは徐々に減少する。
本実施形態においては、音響効果信号の出力レベルが0%となった後にメモリ制御信号が音響効果信号生成部21に対して出力される。従って、音響効果信号生成部21は、音響効果信号の出力レベルが0%となった後にメモリを消去し、過去の出力音の参照を無効化する。すなわち、音響効果信号生成部21は、過去の出力音を参照して音響効果信号を生成するため、過去の出力音の参照が無効化されると、それ以前の効果がキャンセルされる。従って、本実施形態においては、区切りにおいて過去の出力音の参照が無効化され、区切りより前において出力音に与えられていた効果がなくなる。この結果、区切りにおいて効果を大きく変化させることができる。例えば、無効化前にリバーブ等の音響効果が音信号に対して与えられていた場合であっても、その効果はキャンセルされる。従って、小節の開始タイミング以後において、再び音響効果信号の出力レベルが上昇した場合において、当該音響効果信号が示す音は、過去の音響効果の影響を受けない。
このため、本実施形態においては、音楽の区切りのたびに、過去の音響効果がキャンセルされ、新たに音響効果が付与されることになる。従って、音楽の区切りにおいて出力音に与えられた効果が大きく変化する。この結果、原音においてアタック等の強弱が乏しい場合であっても、原音の強弱に影響されることなく、区切りのタイミングで出力音に与えられる効果を変化させることが可能である。なお、本実施形態においては、図1Bに示すように、メモリが消去されるタイミングにおいて、増幅器23のゲインが0%となるように調整されている。従って、メモリを一括消去して音響効果をキャンセルしたとしても、突然に音響効果が断ち切られという印象を与えない。さらに、本実施形態においては、メモリに記録された音信号を区切りにおいて消去する構成を採用しているため、簡易な処理によって過去の音信号の参照を無効化することができる。
(3)第2実施形態:
音響効果信号が示す音は、音信号に任意の効果が与えられた音であってもよいし、任意の効果が与えられた音と他の音(例えば、音信号が示す音)とが混合された音であっても良い。すなわち、音響効果信号が示す音は、いわゆるウェット音であっても良いし、ウェット音とドライ音とが混合された音であってもよい。図2Aは、ウェット音とドライ音とを混合させた音を示す音響効果信号を出力するエフェクタ100の構成例を示すブロック図である。なお、ここでは、音響効果としてディレイが想定されているが、むろん、他の音響効果が与えられる構成であってもよい。
図2Aに示す実施形態において、エフェクタ100は、区切り取得部200と音響効果信号生成部210と音響効果無効化部220とを備えている。区切り取得部200および音響効果無効化部220は、図1に示す区切り取得部20および音響効果無効化部22とほぼ同様の構成によって実現可能である。ただし、図2Aに示す音響効果無効化部220においては、出力する無効化信号にゲイン制御信号は含まれておらず、メモリ制御信号に相当する信号のみを出力する。そこで、本実施形態においては当該信号を無効化信号と呼ぶ。図2Bにおいては、当該無効化信号を模式的に示している。図2Bに示すように、本実施形態においては、小節の開始タイミングに立ち下がりエッジが存在し、その直前に立ち上がりエッジが存在するパルス信号によって無効化信号が形成される。
音響効果信号生成部210は、GATE信号生成部210aとゲート部210bと混合器210c,210iと遅延信号生成部210dと増幅器210e,210g,210hとLPF(ローパスフィルタ)210fとを備えている。混合器210c,210iは、複数の種類の信号が示す音を同時に発音させるための混合信号を生成する回路である。すなわち、混合器210cは、ゲート部210bの出力信号と増幅器210gの出力信号とを混合した混合信号を生成し、出力する。混合器210iは、増幅器210e,210hの出力信号を混合した混合信号を生成し、音響効果信号としてエフェクタ100の外部に出力する。
LPF210fは、実際の音響空間において音が反射する際の音の高域成分の減衰をシミュレートするために、入力信号の高域成分を減衰させて出力する。増幅器210gは、当該LPF210fの出力信号のゲインを調整して出力する。すなわち、本実施形態においては、遅延信号生成部210dの出力信号の高域成分が減衰され、ゲインが調整され、混合器210cを介して遅延信号生成部210dに再び入力されるフィードバックループが形成されている。
増幅器210hは、音信号のゲインを調整して出力する。増幅器210eは、遅延信号生成部210dの出力信号のゲインを調整して出力する。従って、本実施形態においては、増幅器210hから出力されるドライ音と増幅器210eから出力されるウェット音が混合器210iで混合され、音響効果信号として出力される。
遅延信号生成部210dは、混合器210cの出力信号にディレイ効果を与えて出力する。本実施形態において、遅延量は1拍分の期間に設定されている。すなわち、遅延信号生成部210dは、時系列の混合器210cの出力信号を順次入力し、サンプル期間に渡る出力信号を記録するとともにFIFO(First In First Out)形式で順次削除するする図示しないメモリと、当該メモリに記録された信号に基づいてディレイ処理を行う図示しない処理部とを備えている。そして、遅延信号生成部210dは、音信号に含まれる任意の情報がメモリに記録された後、1拍分の期間が経過した場合に当該情報を出力する。この結果、1拍分の遅延効果が与えられた遅延信号が出力される。なお、本実施形態においても、遅延信号生成部210dに対して無効化信号が入力されると、メモリに記録された音信号が一括消去される。
GATE信号生成部210aおよびゲート部210bは、時系列の音信号の一部を処理対象音信号として抽出し、遅延信号生成部210dに対して供給する。ゲート部210bは、2個の入力部(図2Aにおいて1,0と付記。以下、入力部1、入力部0と呼ぶ)に入力される2種類の信号のいずれかを出力する機能を有しており、出力対象はGATE信号によって制御される。すなわち、GATE信号がハイレベルである場合、ゲート部210bは入力部1に入力された信号を出力し、GATE信号がローレベルである場合、ゲート部210bは入力部0に入力された信号を出力する。
本実施形態においては、図2Aに示すように、入力部1に音信号が入力され、入力部0は0レベルに維持される。従って、本実施形態においては、GATE信号がハイレベルである場合にゲート部210bから音信号が出力され、GATE信号がローレベルである場合にはゲート部210bから信号が出力されない(0レベルである)。このため、GATE信号生成部210aおよびゲート部210bは、GATE信号がハイレベルの期間の音信号を抽出して遅延信号生成部210dに供給することになる。
なお、GATE信号生成部210aは、音信号から遅延信号生成部210dに供給される信号を抽出する期間を示すGATE信号を生成することができればよく、種々の構成を採用可能である。本実施形態において、GATE信号生成部210aは、音信号の出力タイミングを制御するためのクロック信号(CLK)と、小節の区切りを示すリセット信号(RESET)と、GATE信号の時間長を示すGATETIME信号を入力としてGATE信号を生成するが、構成の一例は後述する。なお、本明細書に添付した図において信号を示す文字(例えばCLK)上に直線が付されている場合、反転された信号を意味する。
(3−1)動作例:
次に、図2Bに基づいてエフェクタ100の動作例を説明する。図2Bにおいては、GATE信号生成部210aが出力するGATE信号、音響効果無効化部220が出力する無効化信号、エフェクタ100に入力される音信号、ゲート部210bから出力される処理対象音信号、遅延信号生成部210dが出力する遅延信号のタイミングチャートの例を示している。
また、図2Bに示す例においては、音信号の示す音が、1小節が4拍の楽曲である例を示しており、タイミングチャートの上方に小節線のタイミング(nやn+1と付記)や拍のタイミングを示している。図2Bに示す例においてGATE信号は、小節線のタイミングから1拍分の期間長(遅延信号生成部210dによる遅延量と同一)だけハイレベルになっている。
従って、小節線のタイミングから1拍分の期間内にゲート部210bに対して入力された音信号がゲート部210bから出力され、他の期間内にゲート部210bに入力された音信号はゲート部210bから出力されない。このため、図2Bに示すように、小節線のタイミングから1拍分の期間内の音信号が処理対象音信号として抽出され、ゲート部210bから出力されることになる。
一方、図2Bに示す例において無効化信号は、小節の開始タイミングに立ち下がりエッジが存在し、その直前に立ち上がりエッジが存在するパルス信号である。従って、音響効果無効化部220から出力された無効化信号が遅延信号生成部210dに入力されると、小節の最後にメモリが消去されることになる。このため、図2Bに示す例においては、小節線の開始タイミングから小節の最後に至るまで期間において、遅延信号生成部210dがメモリの記録内容を参照して遅延を行う。
一方、小節の最後においてメモリが消去されると、過去にメモリに記録された信号(混合器210cの出力信号)の参照が無効化される。従って、次の小節線において混合器210cの出力信号が順次遅延信号生成部210dに入力され始めたとしても、遅延量である最初の1拍分においては遅延信号生成部210dから信号は出力されない。
すなわち、図2Bに示す例において、小節線のタイミングから1拍分の期間では、LPF210fおよび増幅器210gによって構成されるフィードバックラインから混合器210cに信号は入力されない。一方、小節線のタイミングから1拍分の期間において、ゲート部210bからは混合器210cに対して音信号が入力される。従って、小節線のタイミングから1拍分の期間においては、混合器210cに対して音信号のみが入力され、音信号のみが遅延信号生成部210dに対して供給される。このため、図2Bに示す例においては、GATE信号が示す期間の音信号が処理対象音信号として抽出されて遅延信号生成部210dに供給されることになる。
処理対象音信号が遅延信号生成部210dに対して入力されると、遅延量である1拍分の期間の遅延が与えられた後に遅延信号生成部210dから出力される。従って、図2Bに示す遅延信号の2拍目の開始タイミングから3拍目の直前のタイミングまでの期間において、遅延信号生成部210dから出力される信号は、1拍目の開始タイミングから2拍目の直前のタイミングまでにおける音信号と同一の信号である。
2拍目の開始タイミングから3拍目の直前のタイミングまでの期間において、遅延信号生成部210dから遅延信号が出力されると、当該遅延信号は増幅器210eに入力される一方で、フィードバックラインを介して混合器210cに入力される。図2Bに示す例において、2拍目以後(次の小節線のタイミングまで)に混合器210cに対して処理対象音信号は入力されないため、2拍目以後において混合器210cから出力される信号はフィードバックラインから入力される信号のみである。
2拍目の開始タイミングから3拍目の直前のタイミングまでにおいて遅延信号が遅延信号生成部210dに入力されると、やはり、1拍分の期間だけ遅延が与えられた後、遅延信号生成部210dから出力される。従って、図2Bに示す例において、2拍目の開始タイミングから3拍目の直前のタイミングまでの信号と、3拍目の開始タイミングから4拍目の直前のタイミングまでの信号と、4拍目の開始タイミングから次の小節線の直前のタイミングまでの信号とは、類似した(高域成分の含有量とゲインとが異なる:ただし図2Bにおいては高域成分の含有量とゲインの影響を無視した図としている)信号となる。
以上のように、遅延信号生成部210dからは、図2Bに示す遅延信号が出力されて増幅器210eに対して入力されるため、増幅器210eは、2拍目の開始タイミングから小節線の直前のタイミングまでの期間に発音され得るウェット音を示す信号を出力する。一方、増幅器210hには音信号が入力されるため、増幅器210hはドライ音を示す信号を出力する。そして、これらのウェット音とドライ音とは、混合器210iによって混合され、音響効果信号として出力される。
すなわち、図2Bに示す例においては、音信号に所定のゲインが作用した信号と遅延信号に所定のゲインが作用した信号とが混合された信号が音響効果信号となる。そして、以上の構成において、音楽の区切りである小節線を境にして過去の音の参照が無効化されるため、音響効果信号が示す音は、音楽の区切りにおいて出力音に与えられた効果が大きく変化する。例えば、図2Bに示す小節線n+1の前後において遅延信号は大きく異なっている。なお、増幅器210e,210g,210hにおけるゲインは、種々の要素に基づいて設定可能である。例えば、ゲインは、予め固定されたゲインであってもよいし、図示しないインターフェースによって利用者が調整可能であってもよい。
(3−2)GATE信号生成部の構成例:
図3Aは、GATE信号生成部210aの構成例を示すブロック図であり、図3Bは、GATE信号生成部210aに入力される信号およびGATE信号生成部210aの構成要素の出力信号を示すタイミングチャートである。この例において、クロック信号(CLK)は所定の周期(図3Bでは32分音符の長さの周期)でトグル動作をする信号であり、あるクロック信号の立ち上がりエッジが小節線のタイミングと見なされる。従って、クロック信号の反転信号は、図3Bに示すように、小節線のタイミングや拍のタイミングに立ち下がりエッジを有する信号である。
リセット信号(RESET)は小節線のタイミングに立ち上がりエッジを有するパルス信号であり、その反転信号は小節線のタイミングに立ち下がりエッジを有する信号である。GATETIME信号は、GATE信号の時間長を示す信号であり(図示せず)、例えば、GATE信号の長さをクロック信号の数によって示した信号である。図3Bにおいては、GATETIME信号が1拍分の長さを示している(クロック数が8個であることを示している)例が想定されている。
同図3Aに示す構成において、GATE信号生成部210aは、カウンター210a1と比較器210a2とラッチ210a3とインバータ210a4とを備えている。カウンター210a1は立ち下がりエッジの回数を計測する機能を有している。また、カウンター210a1においては、リセット信号の反転信号や比較器から出力されるパルス信号によって計測値がクリアされる。
比較器210a2は、カウンター210a1の出力信号(立ち下がりエッジの数を示す信号)とGATETIME信号とを比較する。そして、カウンター210a1の出力信号がGATETIME信号と一致した場合、比較器210a2は、カウンター210a1とラッチ210a3にパルス信号を出力する。
ラッチ210a3は、クロック信号の反転信号における立ち下がりエッジに同期して動作する。また、ラッチ210a3は、リセット信号の反転信号が入力されると、リセットされて出力レベルがローレベルとなる。さらに、ラッチ210a3は、比較器210a2が出力するパルス信号が入力されると、出力レベルがハイレベルとなり、再びリセット信号の反転信号が入力されるまでこの状態が保持される。
以上の構成によれば、ラッチ210a3は、リセット信号の反転信号に同期してハイレベルからローレベルに変化し、比較器210a2が出力するパルス信号に同期してローレベルからハイレベルに変化する信号を出力する。従って、ラッチ210a3からは、図3Bにおいてラッチ出力と示したように、小節線の開始タイミングから1拍分の期間だけ出力レベルがローレベルとなる信号が出力される。このため、当該信号がインバータ210a4を介して出力されることにより、図2Bに示すような、小節線の開始タイミングから1拍分の期間だけ出力レベルがハイレベルとなるようなGATE信号が出力される。
(4)第3実施形態:
過去の出力音の参照を無効化する際には、上述のようにメモリを一括消去しても良いし、音楽の区切り以前のサンプリング期間に渡って音信号のメモリに対する入力を停止させることにより、過去の出力音の参照を無効化してもよい。図4Aは、音信号のメモリに対する入力を停止させることで過去の出力音の参照を無効化する構成を備えるエフェクタ101の構成例を示すブロック図である。なお、ここでは、音響効果としてディレイが想定されているが、むろん、他の音響効果が与えられる構成であってもよい。
図4Aに示す実施形態において、エフェクタ101は、区切り取得部201と音響効果信号生成部211と音響効果無効化部221とを備えている。区切り取得部201および音響効果無効化部221は、図2Aに示す区切り取得部20および音響効果無効化部22とほぼ同様の構成によって実現可能である。ただし、図4Aに示す音響効果無効化部221においては、無効化信号がハイレベルとなっている期間と遅延信号生成部211dにおける遅延量とが一致するように無効化信号が生成される。
音響効果信号生成部211は、GATE信号生成部211aとゲート部211b,211jと混合器211c,211iと遅延信号生成部211dと増幅器211e,211g,211hとLPF(ローパスフィルタ)211fとを備えている。
この構成において、GATE信号生成部211a、ゲート部211b、混合器211c,211i、遅延信号生成部211d、増幅器211e,211g,211hとLPF211fの構成は、図2Aに示すGATE信号生成部210a、ゲート部210b、混合器210c,210i、遅延信号生成部210d、増幅器210e,210g,210h、LPF210fの構成と同様である。
ただし、遅延信号生成部211dにおける遅延量は図2Aに示す例と異なっており、1/2拍分の期間に設定されている。また、遅延信号生成部211dにおいては、外部からの制御信号に応じてメモリを一括消去する機能を備えていなくても良い。ただし、メモリは、クロック信号に同期して記録内容を順次先の記録素子に伝達していくシフトレジスタによって構成されている。従って、遅延信号生成部211dは、メモリに対して記録された情報の内容に関わらず、クロック信号に同期して情報を先の記録素子に伝達することになり、遅延量に相当する期間に渡ってメモリに対して信号が入力されない(情報0が入力される)状態が続くとメモリがクリアされる(記憶された情報が全て0になる)。
さらに、ゲート部211jは、ゲート部211bと同様の構成を有する。ただし、ゲート部211jには、音響効果無効化部220が出力する無効化信号が入力される。さらに、入力部1は0レベルに維持され、入力部0には混合器211cの出力信号が入力される。ゲート部211jの出力信号は、遅延信号生成部211dに入力される。従って、無効化信号がハイレベルである場合、ゲート部211jから信号は出力されず、無効化信号がローレベルである場合、ゲート部211jから混合器211cの出力信号が出力される。
(4−1)動作例:
次に、図4Bに基づいてエフェクタ101の動作例を説明する。図4Bにおいては、GATE信号生成部211aが出力するGATE信号、音響効果無効化部221が出力する無効化信号、エフェクタ101に入力される音信号、ゲート部211bから出力される処理対象音信号、遅延信号生成部211dが出力する遅延信号のタイミングチャートの例を示している。
また、図4Bに示す例においても、音信号の示す音が、1小節が4拍の楽曲である例を示しており、タイミングチャートの上方に小節線のタイミング(nやn+1と付記)や拍のタイミングを示している。図4Bに示す例においてもGATE信号は、小節線のタイミングから1拍分の期間長(遅延信号生成部211dによる遅延量の2倍)だけハイレベルになっている。
従って、小節線のタイミングから1拍分の期間内にゲート部211bに対して入力された音信号がゲート部211bから出力され、他の期間内にゲート部211bに入力された音信号はゲート部211bから出力されない。このため、図4Bに示すように、小節線のタイミングから1拍分の期間内の音信号が処理対象音信号として抽出され、ゲート部211bから出力されることになる。ゲート部211bから出力される処理対象音信号は、混合器211cを経てゲート部211jに入力される。
一方、図4Bに示す例において無効化信号は、小節の最後の1/2拍分のパルス信号である。従って、音響効果無効化部221からゲート部211jに対して入力される無効化信号により、小節の最後の1/2拍の期間だけゲート部211jから信号は出力されなくなる。一方、小節線の開始タイミングから(4+1/2)拍目の開始タイミングの直前の期間においては、ゲート部211jから混合器211cの出力信号が出力される。本実施形態において、処理対象音信号は、小節線のタイミングから1拍分の期間内の音信号であるため、当該音信号は、ゲート部211jを介して遅延信号生成部211dに対して入力されることになる。
遅延信号生成部211dに対して処理対象音信号が入力され始めると、当該処理対象音信号に対して1/2拍の遅延が与えられた後に、遅延信号生成部211dから遅延信号が出力される。例えば、n小節目の1拍目においては、前半の1/2拍分だけ処理対象音信号が存在するため、当該処理対象音信号が入力されると、小節線のタイミングから1/2拍だけ遅延した後に遅延信号が出力され始める。n+1小節目の1拍目においては、前半の1/2拍分に処理対象音信号が存在せず、後半の1/2拍分に処理対象音信号が存在するため、当該処理対象音信号が入力されると、2拍目から遅延信号が出力され始める。
いずれにしても、遅延信号が出力され始めると、LPF211fおよび増幅器211gによって構成されるフィードバックラインを経て遅延信号が混合器211cに入力される。この結果、混合器211cからは、処理対象音信号、遅延信号、処理対象音信号と遅延信号との混合信号、のいずれかが出力される。なお、本実施形態においては、図2Aに示す構成と異なり、混合器211cにおいて処理対象音信号と遅延信号とが同時に入力され得るため、同時に入力された場合は、図2Aに示す構成と比較して、より複雑な効果が得られる。
このように、小節線の開始タイミングから遅延期間である1/2分の期間が経過すると、遅延信号生成部211dからは遅延信号が順次出力されていく。この状態で、小節の最後の1/2分の期間に達すると音響効果無効化部221から無効化信号が出力される。
音響効果無効化部221から無効化信号が出力されると、当該無効化信号はゲート部211jに入力され、ゲート部211jから信号が出力されなくなる。従って、当該1/2拍分の期間においては、遅延信号生成部211dに対して新たに信号は供給されない。一方、遅延信号生成部211dのメモリにおいては、入力された情報の内容に関わらず、クロック信号に同期して情報を先の記録素子に伝達する。従って、遅延信号生成部211dにおける遅延期間と同一の期間である1/2拍分の期間に渡って遅延信号生成部211dに信号が入力されない場合、メモリの記録内容はクリアされる。この場合、過去の信号の参照が無効化され、次の小節線において0レベルではない信号が順次遅延信号生成部211dに入力され始めたとしても、遅延量である最初の1/2拍分においては遅延信号生成部211dから信号は出力されない。
以上の結果、遅延信号生成部211dからは、図4Bに示す遅延信号が出力されて増幅器211eに対して入力されるため、増幅器211eは、小節線の開始タイミングから1/2拍分の期間経過したタイミングから小節線の直前のタイミングまでの期間に発音され得るウェット音を示す信号を出力する。一方、増幅器211hには音信号が入力されるため、増幅器211hはドライ音を示す信号を出力する。そして、これらのウェット音とドライ音とは、混合器211iによって混合され、音響効果信号として出力される。
すなわち、図4Bに示す例においては、音信号に所定のゲインが作用した信号と遅延信号に所定のゲインが作用した信号とが混合された信号が音響効果信号となる。そして、以上の構成において、音楽の区切りである小節線に同期して過去の音の参照が無効化されるため、音楽の区切りにおいて出力音に与えられた効果が大きく変化する。例えば、図4Bに示す小節線n+1の前後において遅延信号は大きく異なっている。
(5)第4実施形態:
音楽の区切りに合わせて過去の出力音の参照を無効化する際には、音響効果の種類やパラメータを変更しても良い。図5は、音楽の区切りに合わせて音響効果の種類やパラメータを変更する構成を備えるエフェクタ102の構成例を示すブロック図である。なお、ここでは、音響効果として遅延量が異なる2種類のディレイが想定されているが、むろん、他の音響効果が与えられる構成であってもよい。
図5に示す実施形態において、エフェクタ102は、区切り取得部202と、音響効果信号生成部212と、音響効果無効化部222とを備えている。区切り取得部202は、音楽の区切りを示すリセット信号(RESET)を取得し、音響効果信号生成部212および音響効果無効化部222に受け渡す。なお、本実施形態において、リセット信号は小節線のタイミングに立ち上がりエッジを有するパルス信号である。
音響効果無効化部222は、Dラッチによって構成されており、区切り取得部202が出力するリセット信号に同期して状態を変化させる。すなわち、区切り取得部202が出力するリセット信号に同期して、出力信号を交互にハイレベル、ローレベルに切り替える。従って、本実施形態においては、リセット信号に同期してハイレベルとローレベルとが切り替わる信号が無効化信号である。なお、音響効果無効化部222から出力される無効化信号は、後述するゲート部212b3,212j1,212j3に供給される。また、音響効果無効化部222の出力信号の反転信号は、後述するゲート部212j2に供給される。
音響効果信号生成部212は、GATE信号生成部212aとゲート部212b1,212b2,212b3,212j1,212j2,212j3と混合器212c1,212c2,212iと遅延信号生成部212d1,212d2と増幅器212e,212g1,212g2,212hとLPF(ローパスフィルタ)212f1,212f2とインバータ212kとを備えている。これらの構成要素のそれぞれは、入力信号、出力信号が図4Aに示す実施形態と異なり得るものの、機能としては同等の機能を有している。ただし、遅延信号生成部212d1での遅延量は1拍分、遅延信号生成部212d2での遅延量は1/2拍分である。
さらに、図5に示すGATE信号生成部212aは、2種類のGATE信号(GATE信号A,B)を出力することが可能である。このようなGATE信号生成部212aは、GATE信号生成部210a、211aと同様の構成を2系統備える構成によって実現可能である。図7AはGATE信号生成部212aの構成例を示す図であり、GATE信号生成部210a、211aと同様の構成要素であるGATE信号A生成部212a1とGATE信号B生成部212a2とを備えている。従って、GATE信号A生成部212a1とGATE信号B生成部212a2のそれぞれにクロック信号の反転信号とリセット信号の反転信号を入力し、互いに異なるGATETIME信号(GATETIME A,GATETIME B)を入力すれば、ハイレベルの期間が異なる期間である2個のGATE信号(GATE信号A,GATE信号B)を生成することができる。
本実施形態においては、ゲート部212b1,212b2,212b3によって遅延信号生成部212d1,212d2に供給される処理対象音信号が選択される。すなわち、ゲート部212b1,212b2の入力部1には音信号が入力され、入力部0は0レベルに維持される。また、ゲート部212b1にはGATE信号Aが入力され、ゲート部212b1にはGATE信号Bが入力される。従って、ゲート部212b1は、GATE信号Aがハイレベルの期間における音信号を抽出して出力する。ゲート部212b2は、GATE信号Bがハイレベルの期間における音信号を抽出して出力する。ここでは、前者を処理対象音信号A、後者を処理対象音信号Bと呼ぶ。
ゲート部212b1の出力信号はゲート部212b3の入力部1に入力され、ゲート部212b2の出力信号はゲート部212b3の入力部0に入力される。従って、ゲート部212b3に入力される無効化信号がハイレベルの期間には、ゲート部212b1の出力信号(処理対象音信号A)がゲート部212b3から出力される状態となる。ゲート部212b3に入力される無効化信号がローレベルの期間には、ゲート部212b2の出力信号(処理対象音信号B)がゲート部212b3から出力される状態となる。
一方、遅延信号生成部212d1,212d2において遅延信号を生成し、また、過去の音の参照および参照の無効化を行うための構成は、図4Aに示す構成と同等である。すなわち、混合器212c1、ゲート部212j1、遅延信号生成部212d1、LPF212f1、増幅器212g1は、図4Aに示す混合器211c、ゲート部211j、遅延信号生成部211d、LPF211f、増幅器211gと同様の構成である。また、混合器212c2、ゲート部212j2、遅延信号生成部212d2、LPF212f2、増幅器212g2も、図4Aに示す混合器211c、ゲート部211j、遅延信号生成部211d、LPF211f、増幅器211gと同様の構成である。
ただし、ゲート部212j1には音響効果無効化部222から無効化信号が供給され、ゲート部212j2には当該無効化信号の反転信号が供給される。従って、混合器212c1,212c2に入力された信号がゲート部212j1,212j2を通過するタイミングは互いに異なり、信号が一方のゲート部を通過する期間において、当該信号は他方のゲート部を通過しない(入力部0に入力された0レベルとなる)。
なお、混合器212c1,212c2に入力された信号がゲート部212j1,212j2を通過しない期間においては、ゲート部212j1,212j2の出力は0レベルとなるため、この期間において遅延信号生成部212d1,212d2のメモリは順次クリアされていく。そこで、本実施形態においては、無効化信号によってゲート部212j1,212j2の出力が0レベルとなっている期間が、遅延信号生成部212d1,212d2における遅延期間より長くなるように設定される。この結果、無効化信号により、音楽の区切り(小節線)に合わせて、遅延信号生成部212d1,212d2における音響効果を無効化することが可能である。
遅延信号生成部212d1の出力は、ゲート部212j3の入力部1に入力され、遅延信号生成部212d2の出力は、ゲート部212j3の入力部0に入力される。従って、無効化信号がハイレベルの期間においては、遅延信号生成部212d1が出力する遅延信号がゲート部212j3から出力され、無効化信号がローレベルの期間においては、遅延信号生成部212d2が出力する遅延信号がゲート部212j3から出力される。
いずれにしても、本実施形態においては、以上のようにしてゲート部212j3から出力された信号が示すウェット音と音信号が示すドライ音とが、増幅器212h,212e、混合器212iによってゲイン調整されるとともに混合され、音響効果信号として出力される。
(5−1)動作例:
次に、図6に基づいてエフェクタ102の動作例を説明する。図6においては、GATE信号生成部212aが出力するGATE信号AおよびGATE信号B、音響効果無効化部222が出力する無効化信号、エフェクタ102に入力される音信号、リセット信号、クロック信号の反転信号、ゲート部212b1,212b2から出力される処理対象音信号Aおよび処理対象音信号B、ゲート部212j3から出力される遅延信号のタイミングチャートの例を示している。
また、図6に示す例においても、音信号の示す音が、1小節が4拍の楽曲である例を示しており、タイミングチャートの上方に小節線のタイミング(nやn+1と付記)や拍のタイミングを示している。
図6に示す例においてGATE信号Aは、小節線のタイミングから1拍分の期間長(遅延信号生成部212d1による遅延量と同一)だけハイレベルになっている。また、GATE信号Bは、小節線のタイミングから1/2拍分の期間長(遅延信号生成部212d2による遅延量と同一)だけハイレベルになっている。
従って、小節線のタイミングから1拍分の期間内にゲート部212b1に対して入力された音信号がゲート部212b1から出力され、他の期間内にゲート部212b1に入力された音信号はゲート部212b1から出力されない。このため、図6に示すように、小節線のタイミングから1拍分の期間内の音信号が処理対象音信号Aとして抽出され、ゲート部212b1から出力されることになる。
一方、小節線のタイミングから1/2拍分の期間内にゲート部212b2に対して入力された音信号がゲート部212b2から出力され、他の期間内にゲート部212b2に入力された音信号はゲート部212b2から出力されない。このため、図6に示すように、小節線のタイミングから1/2拍分の期間内の音信号が処理対象音信号Bとして抽出され、ゲート部212b2から出力されることになる。
処理対象音信号Aと処理対象音信号Bは、ゲート部212b3に対して入力される。ゲート部212b3においては、無効化信号のレベルに合わせて出力信号が選択される。図6に示すn小節目のように、無効化信号がハイレベルになっている期間においては、ゲート部212b3から処理対象音信号Aが出力される。このように無効化信号がハイレベルになっている期間において、ゲート部212j1は入力部1への入力信号を通過させて出力し、ゲート部212j2は入力部0への入力信号を通過させる。従って、この状態において遅延信号生成部212d2には0レベルが入力されてメモリが消去される。一方、ゲート部212j1からは混合器212c1の出力信号が出力される。
そして、n小節目においてGATE信号Aがハイレベルの期間は、処理対象音信号Aが混合器212c1およびゲート部212j1を介して遅延信号生成部212d1に入力される。本例において、遅延信号生成部212d1は1拍分の遅延を与えるため、n小節目においてGATE信号Aがハイレベルの期間では、遅延信号生成部212d1から遅延信号は出力されない。
n小節目においてGATE信号Aがローレベルになると、ゲート部212b1からの出力が0レベルになる。ただし、この場合、遅延信号生成部212d1によって1拍の遅延が与えられた遅延信号がLPF212f1および増幅器212g1からなるフィードバックライン、混合器212c1およびゲート部212j1を経て遅延信号生成部212d1に入力される状態となる。従って、n小節目においてGATE信号Aがローレベルである期間においては、遅延信号生成部212d1から順次遅延信号が出力される。
一方、図6に示すn+1小節目のように、無効化信号がローレベルになっている期間においては、ゲート部212b3から処理対象音信号Bが出力される。このように無効化信号がローレベルになっている期間において、ゲート部212j2は入力部1への入力信号を通過させて出力し、ゲート部212j1は入力部0への入力信号を通過させる。従って、この状態において遅延信号生成部212d1には0レベルが入力されてメモリが消去される。一方、ゲート部212j2には混合器212c2の出力信号が入力される。
そして、n+1小節目においてGATE信号Bがハイレベルの期間は、処理対象音信号Bが混合器212c2およびゲート部212j2を介して遅延信号生成部212d1に入力される。本例において、遅延信号生成部212d2は1/2拍分の遅延を与えるため、n+1小節目においてGATE信号Bがハイレベルの期間では、遅延信号生成部212d2から遅延信号は出力されない。
n+1小節目においてGATE信号Bがローレベルになると、ゲート部212b2からの出力が0レベルになる。ただし、この場合、遅延信号生成部212d2によって1/2拍の遅延が与えられた遅延信号がLPF212f1および増幅器212g1からなるフィードバックライン、混合器212c2およびゲート部212j2を経て遅延信号生成部212d2に入力される状態となる。従って、n+1小節目においてGATE信号Bがローレベルである期間においては、遅延信号生成部212d2から順次遅延信号が出力される。
さらに、無効化信号はゲート部212j3にも入力され、遅延信号生成部212d1が出力する遅延信号はゲート部212j3の入力部1に供給され、遅延信号生成部212d2が出力する遅延信号はゲート部212j3の入力部0に供給される。このため、無効化信号がハイレベルの期間は、遅延信号生成部212d1が出力する遅延信号がゲート部212j3を通過し、無効化信号がローレベルの期間は、遅延信号生成部212d2が出力する遅延信号がゲート部212j3を通過する。
以上の結果、ゲート部212j3からは、図6に示す遅延信号が出力されて増幅器212eに対して入力されるため、増幅器212eは、小節線の開始タイミングから1拍分または1/2拍分の期間経過したタイミングから小節線の直前のタイミングまでの期間に発音され得るウェット音を示す信号を出力する。一方、増幅器212hには音信号が入力されるため、増幅器212hはドライ音を示す信号を出力する。そして、これらのウェット音とドライ音とは、混合器212iによって混合され、音響効果信号として出力される。
以上の構成において、音楽の区切りである小節線に同期して過去の音の参照が無効化される。さらに、音楽の区切りである小節線に同期して音響効果のパラメータが変化する。このため、音楽の区切りにおいて出力音に与えられた効果が大きく変化する。例えば、図6に示す小節線n+1の前後において遅延信号は大きく異なっている。
(6)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、区切り取得手段において区切りは種々の手法で取得可能であり、音信号に基づいて取得しても良いし、音信号以外の信号等に基づいて取得しても良い。区切りは、区切りの前後において音楽を(曲等の内容を)区別できるように時間軸上に設定可能なタイミングであればよく、曲を構成する単位(小節、拍等)の区切りであっても良いし、当該単位の整数分の1のタイミングを区切りとしても良いし、曲の内容に応じた区切り(フレーズの切れ目等)であっても良いし、予め決められた周期で周期的に現れる区切りであっても良い。
なお、上述の実施形態においては、区切りにおいて過去の出力音の参照を無効化した後、直ぐに、過去の出力音の参照が有効化されていたが、所定の期間経過後に過去の出力音の参照が有効化されても良い。さらに、過去の出力音の参照を無効化した後、無効化が継続される構成が採用されてもよい。
さらに、音響効果信号出力手段においては、効果の強弱や音の変調度合い等を示すパラメータが可変であってよい。さらに、効果やそのパラメータ等が利用者によって選択可能であってもよい。
図7Bにおいては、エフェクタ102に入力されるリセット信号、クロック信号、GATETIME信号や遅延量を指定するための信号が利用者によって指定可能である構成の例を示すブロック図である。同図7Bにおいては、図5に示すエフェクタ102に入力する信号をリアルタイム制御部300およびパラメータ制御部400によって作成している。リアルタイム制御部300は、エフェクタ102の各部の構成要素を動作させるためのタイミングを規定するリセット信号とクロック信号(クロック信号の反転信号)を生成する回路を備えている。
また、利用者は、図示しないインターフェースによってリアルタイム制御部300にテンポ、音楽の区切り、クロック精度を規定する数値を入力することができる。なお、テンポは音楽演奏の速さを指定する値であり、例えば、1分間における4分音符の数等である。音楽の区切りを示す値は、リセット信号の立ち上がりエッジのタイミングの周期を指定する値であり、小節または拍の数によって指定される。例えば、1小節と指定された場合、各小節の小節線が音楽の区切りとされる。また、2拍と指定された場合、2拍毎に拍の開始タイミングが音楽の区切りとされる。クロック精度は、クロック信号の周期を指定する値であり、例えば、音符長によってクロック周期の長さを指定する構成とすることができる。
リアルタイム制御部300は、テンポとクロック精度に基づいてクロック信号の時間軸上でのパルス幅および周期を決定し、クロック信号を生成してその反転信号を出力する。また、リアルタイム制御部300は、当該クロック信号の数を計測し、音楽の区切りで指定された小節や拍の期間に相当する数のクロック信号を計測するたびにリセット信号を生成し、出力する。そして、リアルタイム制御部300が生成したリセット信号とクロック信号の反転信号がエフェクタ102に入力されることにより、エフェクタ102は利用者に指定された速度で音信号が示す音を出力することが可能になる。また、利用者が指定した音楽の区切りで過去の音の参照を無効化することが可能になる。
さらに、パラメータ制御部400は、エフェクタ102の各部の構成要素を動作させる際に選択可能な可変のパラメータを示す信号(GATETIME信号(A/B)、遅延量(A/B)を示す信号)を生成する回路を備えている。
また、利用者は、図示しないインターフェースによってパラメータ制御部400にテンポ、クロック精度、サンプリング周波数、拍子、GATE長(A/B)、遅延長(A/B)を規定する数値を入力することができる。なお、サンプリング周波数は、音信号をデジタル信号化する際の1秒当たりのサンプル数を示しており、例えば、44100Hz等の数値である。拍子は、音信号が示す楽曲における1小節の拍数と1拍に相当する音符を示す数値で規定され、例えば、4/4拍子等の数値である。
GATE長(A/B)は、音信号から処理対象音信号A,Bを抽出する期間を指定するための数値であり、例えば、GATE信号(A/B)をハイレベルにすべき期間を音符の長さ(4分音符)等で示した数値である。遅延長(A/B)は、遅延信号生成部212d1,212d2における遅延量を指定するための数値であり、例えば、遅延される期間を音符の長さ(4分音符)等で示した数値である。
パラメータ制御部400は、サンプリング周波数とテンポと遅延長と拍子とに基づいて、遅延量をサンプル数で示す信号(遅延量(A/B))を出力する。すなわち、パラメータ制御部400は、(サンプリング周波数/テンポ)×(遅延長/拍子内の1拍)によって、遅延量をサンプル数で示す値を算出し、当該値を示す信号を生成する。例えば、サンプリング周波数が44100Hz、テンポが120(4分音符120個/分)、遅延長が4分音符、拍子が4/4拍子である場合を想定する。この場合、1分当たり44100×60サンプルであるため、44100×60/120が1拍当たりのサンプル数である。
一方、遅延長である4分音符を1/4と見なし、拍子内の1拍である4分音符を1/4とすると、(遅延長/拍子内の1拍)は1(=(1/4)/(1/4))である。従って、遅延量は、22050(=44100/2)と計算される。むろん、この処理はA,Bのそれぞれについて実行される。そして、パラメータ制御部400は、当該遅延量を示すサンプル数をエフェクタ102に対して出力する。
さらに、パラメータ制御部400は、GATE長とクロック精度に基づいて、音信号から処理対象音信号A,Bを抽出する期間をクロック信号の数で示すGATETIME信号を生成し、出力する。すなわち、パラメータ制御部400は、GATE長/クロック精度によって、GATETIME信号を生成する。例えば、GATE長が4分音符、クロック精度が32分音符であった場合、GATETIME信号の値は、8(=(1/4)/(1/32))である。そして、パラメータ制御部400が生成したGATETIME信号(A/B)と遅延量(A/B)がエフェクタ102に入力されることにより、エフェクタ102は利用者に指定された長さの音信号を処理対象音信号A,Bとして抽出し、また、遅延信号生成部212d1,212d2における遅延量を決定することが可能になる。むろん、図4Aに示す構成や図1に示す構成において、図7Bと同様の構成を採用することで、楽曲の速さやパラメータを利用者が指定可能であってもよい。