JP2009251261A - 電子楽器 - Google Patents

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Abstract

【課題】奏法に適合したエンベロープを付与することができる電子楽器を提供する。
【解決手段】図2(b)は、エンベロープ波形のアタック部を示し、アタックレートが1の場合は、立ち上がりが時刻0に開始され、時刻t12に最大値に達し、アタックレートが0の場合は、立ち上がりが時刻0に開始され、時刻t11に最大値に達する。アタックレートは、オンオンタイムが閾値Thより短い場合に、オンオンタイムが短いほど小さい値に設定される。図2(c)は、エンベロープ波形のリリース部を示し、リリースレートが1の場合は、減衰が時刻0に開始され、時刻t14に最小値0に達し、リリースレートが0の場合は、減衰が時刻0に開始され、時刻t13に最小値0に達する。リリースレートは、ゲートタイムが閾値GThより短い場合に、ゲートタイムが短いほど小さい値に設定される。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子楽器に関し、奏法に適合したエンベロープを付与することができる電子楽器に関するものである。
従来より電子楽器において、発生される楽音のエンベロープを奏法などによって変化するものが知られている。特開2002−32083号公報(特許文献1)には、押鍵から離鍵までの時間(ゲートタイム)を計時し、その計時された時間が所定値以下であればスタッカート演奏であると判断し、離鍵に応じて発声中の楽音を消音する速さであるリリース特性をスタッカート演奏ではない場合に比べて速くするものが開示されている。
特開平2002−32083号公報
しかしながら、奏法には多様な場合があり、単に押鍵から離鍵までの時間に応じてリリース特性を変化することだけでは、実際のアコースティック楽器による演奏を忠実に模擬することができないという問題点があった。特に、押鍵と押鍵との時間間隔(オンオンタイム)や、複数の鍵がほぼ同時に押下された場合のアタック波形の特性が奏法に適合するものではなかった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、奏法に適合したエンベロープを付与することができる電子楽器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の電子楽器は、楽音の発生開始を指示する発音指示と、その発音指示により発音された楽音の停止を指示する停止指示とを入力する入力手段と、発音指示に応じて楽音の発生を開始し、停止指示に応じて楽音の発生を停止する音源と、前記入力手段に入力された第1発音指示と、その第1発音指示の次に入力された第2発音指示との時間差を計時するオンオンタイム計時手段と、前記入力手段に入力された第2発音指示と、その第2発音指示に応じて発音された楽音の停止を指示する停止指示との時間差を計時するゲートタイム計時手段と、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するアタック特性設定手段と、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のリリース特性を前記ゲートタイム計時手段により計時された時間が短いほどリリースタイムが短いリリース特性に設定するリリース特性設定手段と、前記入力手段による前記第2発音指示の入力に応じて前記アタック特性設定手段により設定されたアタック特性で楽音の発生を開始するように前記音源に指示し、前記入力手段による前記停止指示の入力に応じて前記リリース特性設定手段により設定されたリリース特性で楽音の発生を停止するように前記音源に指示する指示手段とを備えている。
なお、アタックタイムは、楽音の発生開始が指示され、エンベロープ波形の立ち上がりを開始してから最大値に到達するまでの時間であり、リリースタイムは、発音のされている楽音の停止が指示されてからエンベロープ波形のレベルが最小値(0)に到達するまでの時間である。
請求項2記載の電子楽器は、請求項1記載の電子楽器において、前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が第1所定時間より短い場合は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するものであり、前記リリース特性設定手段は、前記ゲートタイム計時手段により計時された時間が第2所定時間より短い場合は、前記ゲートタイム計時手段により計時された時間が短いほどリリースタイムが短いリリース特性に設定するものである。
請求項3記載の電子楽器は、請求項1記載の電子楽器において、前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が所定時間である重音判定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定するものである。
請求項4記載の電子楽器は、請求項2記載の電子楽器において、前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が前記第1所定時間より短い所定時間である重音判定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定するものである。
請求項5記載の電子楽器は、楽音の発生開始を指示する発音指示を入力する入力手段と、発音指示に応じて楽音を発生する音源と、前記入力手段に入力された第1発音指示と、その第1発音指示を入力した後入力された第2発音指示との時間差を計時するオンオンタイム計時手段と、そのオンオンタイム計時手段により計時された時間が所定時間である重音判定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定し、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が前記重音判定時間以上である場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するアタック特性設定手段と、前記入力手段による前記第2発音指示の入力に応じて前記アタック特性設定手段により設定されたアタック特性で楽音の発生を開始するように前記音源に指示する指示手段とを備えている。
請求項6記載の電子楽器は、請求項5記載の電子楽器において、前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が前記重音判定時間以上で、且つ第1所定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するものである。
請求項1記載の電子楽器によれば、楽音の発生開始を指示する発音指示と、その発音指示により発音された楽音の停止を指示する停止指示とが入力手段に入力され、音源は、発音指示に応じて楽音の発生を開始し、停止指示に応じて楽音の発生を停止する。
入力手段に入力された第1発音指示と、その第1発音指示の次に入力された第2発音指示との時間差がオンオンタイム計時手段によって計時され、入力手段に入力された第2発音指示と、その第2発音指示に応じて発音された楽音の停止を指示する停止指示との時間差がゲートタイム計時手段によって計時される。第2発音指示に応じて発音される楽音はオンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性にアタック特性設定手段により設定されるとともにゲートタイム計時手段により計時された時間が短いほどリリースタイムが短いリリース特性に設定される。
そして、指示手段は、入力手段による第2発音指示の入力に応じて前記アタック特性設定手段により設定されたアタック特性で楽音の発生を開始するように音源に指示し、入力手段による停止指示の入力に応じてリリース特性設定手段により設定されたリリース特性で楽音を停止するように音源に指示する。
いわゆる連続する複数のノートを速く弾く速弾き演奏は、ノートの開始時刻と次のノートの開始時刻との時間差であるオンタイムと、ノートの開始時刻からそのノートの停止時刻との時間差であるゲートタイムとが短い演奏であり、速弾き演奏が行われた場合、連続して発音される複数の楽音は、アタックタイムとリリースタイムが短いエンベロープ波形が付与される。その結果、楽音どうしの重なりが抑制され、各楽音の輪郭がぼやけず粒立ちのよい楽音による演奏を行うことができる。したがって、奏法に適合したエンベロープ波形の楽音を生成することができるという効果がある。
請求項2記載の電子楽器によれば、請求項1記載の電子楽器の奏する効果に加え、次のような効果を奏する。すなわち、アタック特性設定手段は、オンオンタイム計時手段により計時された時間が奏法などを判定するための時間である第1所定時間より短い場合は、オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するものであり、リリース特性設定手段は、ゲートタイム計時手段により計時された時間が第2所定時間より短い場合は、ゲートタイム計時手段により計時された時間が短いほどリリースタイムが短いアタック特性に設定するものである。第1所定時間を速弾き演奏が行われる場合のオンオンタイムの最長の所定時間とし、第2所定時間を速弾き演奏が行われる場合のゲートタイムの最長の所定時間として設定することにより、オンオンタイムが第1所定時間より短く、且つゲートタイムが第2所定時間より短い場合に、速弾き演奏に適合したエンベロープ波形の楽音を生成することができるという効果がある。
請求項3記載の電子楽器によれば、請求項1記載の電子楽器の奏する効果に加え、アタック特性設定手段は、オンオンタイム計時手段により計時された時間が所定時間である重音判定時間より短い場合は、第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を、第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定されるので、複数の鍵をほぼ同時に押下したような演奏が行われた場合に、ほぼ同時に発音される重音のアタック特性がほぼ同一になり、まとまりのある重音を発生することができるという効果がある。
請求項4記載の電子楽器によれば、請求項2記載の電子楽器の奏する効果に加え、アタック特性設定手段は、オンオンタイム計時手段により計時された時間が第1所定時間より短い所定時間である重音判定時間より短い場合は、第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定するのでほぼ同時に発音される重音のアタック部がほぼ同一になり、まとまりのある重音を発生することができるという効果がある。
請求項5記載の電子楽器によれば、楽音の発生開始を指示する発音指示と、その発音指示により発音された楽音の停止を指示する停止指示とが入力手段に入力され、音源は発音指示に応じて楽音を発生する。
入力手段に入力された第1発音指示と、その第1発音指示の次に入力された第2発音指示との時間差がオンオンタイム計時手段によって計時され、そのオンオンタイム計時手段により計時された時間が所定の時間である重音判定時間より短い場合は、アタック特性設定手段により第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性は第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定される。
よって、複数の鍵をほぼ同時に押下したような演奏が行われた場合に、ほぼ同時に発音される重音のアタック特性がほぼ同一になり、まとまりのある重音を発生することができるという効果がある。
また、オンオンタイム計時手段により計時された時間が重音判定時間以上である場合は、そのオンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性にアタック特性設定手段により設定される。そして、入力手段による第2発音指示に応じて、アタック特性設定手段により設定されたアタック特性で楽音の発生を開始するように指示手段により音源に指示される。
よって、オンオンタイムが短い速弾き演奏が行われた場合は、アタックタイムが短く設定され、連続して発音される楽音どうしの重なりが抑制され、各楽音の輪郭がぼやけず粒立ちのよい楽音による演奏を行うことができる。したがって、奏法に適合したエンベロープ波形の楽音を生成することができるという効果がある。
請求項6記載の電子楽器によれば、請求項5記載の電子楽器の奏する効果に加え、次のような効果を奏する。すなわち、アタック特性設定手段は、オンオンタイム計時手段により計時された時間が重音判定時間以上で、且つ第1所定時間より短い場合は、第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性をオンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定する。よって、第1所定時間を速弾き演奏が行われる場合のオンオンタイムの最長時間に設定すると、オンオンタイムが重音判定時間以上で第1所定時間より短い場合に、オンオンタイムが短いほどアタックタイムが短いアタック特性の楽音が発生され、各楽音の輪郭がぼやけず粒立ちのよい楽音による演奏を行うことができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における電子楽器1の電気的構成を示すブロック図である。この電子楽器1は、鍵盤などによる演奏操作に合った楽音を発生することができるものである。
図1に示すように、電子楽器1は、CPU2、ROM3、RAM4、操作パネル5、MIDIインターフェース6、音源7、D/A変換器8を主に設けている。CPU2とROM3とRAM4と操作パネル5とMIDIインターフェース6と音源7とはバスラインにより相互に接続されている。
CPU2は、ROM3やRAM4に記憶される固定値データや制御プログラムに従って、電子楽器1の各部を制御するものである。CPU2は、タイマ2aを内蔵し、タイマ2aは、クロック信号を計数することにより、時刻を計時する。このタイマ2aにより計時される時刻により、一つのノートオン情報が入力されてから、次のノートオン情報が入力されるまでの時間であるオンオンタイムや、ノートオン情報が入力されてから、そのノートオン情報に対応するノートオフ情報が入力されるまでのゲートタイムなどが計時される。
なお、ノートオン情報およびノートオフ情報は、MIDI規格に適合する情報である。ノートオン情報は、鍵盤の鍵が押下された場合などに送信され、楽音の発生開始を指示する情報であって、ノートオン情報であることを示すステータスと、音高を示すノートナンバと、押鍵速度を示すノートオンベロシティとから構成される。また、ノートオフ情報は、鍵盤の鍵が離鍵された場合などに送信され、楽音の発生停止を指示する情報であって、ノートオフ情報であることを示すステータスと、音高を示すノートナンバと、離鍵速度を示すノートオフベロシティとから構成される。
ROM3は、書き替え不能なメモリであって、CPU2に実行させる制御プログラム3aなどが記憶される。制御プログラム3aの詳細については、図4に示すフローチャートを参照して後述する。ROM3には、制御プログラム3aの他に制御プログラム3aが実行される際にCPU2により参照される固定値データなどが記憶される。
RAM4は、書き替え可能なメモリであり、CPU2がROM3に記憶される制御プログラム3aの実行に当たって、各種のデータを一時的に記憶するためのワークエリア4aを設けている。このワークエリア4aには、ノートオン情報が示すノートナンバに対応してそのノートオン情報を入力した時刻が記憶される。この記憶された時刻は、次にノートオン情報が入力された時に参照され、直前に入力されたノートオン情報との時間差であるオンオンタイムが取得され、そのオンオンタイムの値に応じて今回入力されたノートオン情報により発音される楽音のアタックレートが設定され、その設定されたアタックレートが音源7に指示される。
このアタックレートは、標準のアタックタイムを変更するための係数であり、変更されるアタックタイムは、次式により求められる。
アタックタイム=標準アタックタイム×アタックレート+B(Bは所定の定数)
また、このノートオン情報を入力した時刻は、ノートオフ情報が入力された時にも参照され、ノートオン情報が入力された時刻からそのノートオン情報のノートナンバと同一のノートナンバのノートオフ情報が入力された時刻までの時間であるゲートタイムが取得され、そのゲートタイムの値に応じてリリースレートが設定され、その設定されたリリースレートが音源7に指示される。
このリリースレートは、標準のリリースタイムを変更するための係数であり、変更されるリリースタイムは、次式により求められる。
リリースタイム=標準リリースタイム×リリースレート+C(Cは所定の定数)
なお、標準のアタックタイムおよび標準のリリースタイムは、音色毎に予め設定されている。
操作パネル5は、演奏者によって操作される複数の操作子と、その操作子によって設定されたパラメータや、演奏に応じた状態を表示する表示器などを設けている。
主な操作子としては、発生される楽音の音色を選択するスイッチや、音量を設定するボリュームなどが設けられる。
MIDIインターフェース6は、MIDI規格に適合する通信を行うインターフェースであり、近年はUSBインターフェースが使用されることもある。このMIDIインターフェース6には、MIDI規格に適合する通信機能を有するMIDI鍵盤20が接続される。MIDI鍵盤20は、複数の白鍵、黒鍵を設け、いずれかの鍵が押下された場合にノートオン情報を出力し、鍵が離された場合は、ノートオフ情報を出力する。
音源7は、ピアノやトランペットなどの複数の音色の楽音波形を記憶し、CPU2からの楽音の発生の開始を指示する情報に応じて記憶されている楽音波形を読み出し、指示に応じた音高、音量、音色の楽音を発生する。また、CPU2からの楽音の発生の停止を指示する情報に応じて、対応する楽音の発生を停止する。発生される楽音には、エンベロープ波形が付与される。そのエンベロープ波形のアタック部はアタックレートに応じたエンベロープ波形が形成され、リリース部はリリースレートに応じたエンベロープ波形が形成される。
このアタックレートおよびリリースレートは、CPU2により音源7に指示される。アタックレートおよびリリースレートにより形成されるエンベロープ波形については、図2を参照して後述する。音源7により形成されたデジタル信号である楽音は、D/A変換器8によってアナログ信号に変換されて出力される。
D/A変換器8には、アンプ21が接続され、D/A変換器8により変換されたアナログ信号はアンプ21により増幅され、アンプ21に接続されたスピーカ22により放音される。
次に、図2を参照して本発明における奏法の変化によるエンベロープ波形の制御方法について説明する。図2(a)は、入力されるノートオン情報とノートオフ情報との時系列を示す模式図である。ノートオン情報が入力され、次にそのノートオン情報に対応するノートオフ情報が入力された状態を長方形により図示している。
図2(a)は、時刻t1にノート1のノートオン情報が入力され時刻t2にノート1のノートオフ情報が入力され、時刻t3にノート2のノートオン情報が入力され時刻t4にノート2のノートオフ情報が入力された場合を示している。また、図2(a)が示すように、あるノート(ノート1)のノートオン情報が入力された時刻(t1)から次に入力されたノート(ノート2)のノートオン情報が入力された時刻(t3)までの時間をオンオンタイムと称し、ノートオン情報を入力した時刻(t3)からそのノートオン情報に対応するノートオフ情報を入力した時刻(t4)までをゲートタイムと称す。
図2(b)および(c)は、音源7において発生される楽音に付与されるエンベロープ波形の形状を示すエンベロープ波形図である。演奏の状態に応じてCPU2からアタックレートとリリースレートとがCPU2により音源7に指示され、アタックレートに応じてエンベロープ波形のアタック部が形成され、リリースレートに応じてリリース部が形成される。具体的には、アタックレートに基づきエンベロープ波形のアタックタイムが計算され、リリースレートに基づきエンベロープ波形のリリースタイムが計算される。
図2(b)は、アタックレートに応じたアタック部のエンベロープ形状を示し、図2(c)は、リリースレートに応じたリリース部のエンベロープ形状を示し、横軸を時間とし縦軸をエンベロープレベルとしたものである。
押鍵によりノートオン情報が入力された場合は、その直前に入力されたノートオン情報の入力された時刻からの時間であるオンオンタイムが計時され、その計時されたオンオンタイムに応じたアタックレートが設定される。詳細には、前回の押鍵時刻から今回の押鍵時刻までの時間であるオンオンタイムが所定値である奏法判定時間Th以上である場合は、アタックレートは1に設定され、オンオンタイムが奏法判定時間Thより短い場合は、例えば、
アタックレート=オンオンタイム/Th ・・・(式A)
という計算式により、オンオンタイムに応じたアタックレート(0〜1)に設定される。 そして、アタックタイムは、前述したように例えば、
アタックタイム=標準アタックタイム×アタックレート+B(Bは所定の定数)
という計算式により設定される。このように設定するとオンオンタイムが短いほどアタックタイムが短い楽音が生成されるので、速く弾いたときに不要な音の重なりが起きにくくなり、各音の輪郭がぼやけず、粒立ちのよい楽音による演奏を行うことができる。
図2(b)に示すように、アタックレートが1に設定された場合は、実線で示すように立ち上がりが時刻0に開始され、時刻t12に最大値に達する。この場合のアタックタイムがt12である。アタックレートが0に設定された場合は、破線で示すように、立ち上がりが速くなり、立ち上がりが時刻0に開始され、時刻t11に最大値に達する。この場合のアタックタイムがt11である。
一方、離鍵によりノートオフ情報が入力された場合は、鍵が押下されていた時間に応じたリリースレートが設定される。そのリリースレートに従って音源7は、楽音のレベルを減衰し楽音の発生を停止する。詳細には、押鍵時刻から離鍵時刻までの時間であるゲートタイムが計時され、そのゲートタイムが所定値であるゲートタイム閾値GTh以上である場合は、リリースレートは1に設定され、ゲートタイムがゲートタイム閾値GThより短い場合は、例えば、
リリースレート=1−A×(GTh−ゲートタイム)/GTh
という計算式によりゲートタイムに応じたリリースレート(0〜1)に設定される。ここで、Aは、0〜1の値を取る係数であり、音色に応じて定めてもよい。そして、リリースタイムは、前述したように例えば、
リリースタイム=標準リリースタイム×リリースレート+C(Cは所定の定数)
という計算式により設定する。
このようにすると、ゲートタイムが短いほどリリースタイムの短い楽音が生成されるので、速く弾いたときに不要な音の重なりが起きにくくなり、各音の輪郭がぼやけず、粒立ちのよい楽音による演奏を行うことができる。速弾き演奏が行われた場合に、前述のようにアタックタイムを短くし、且つリリースタイムを短くすることにより、より粒立ちのよい楽音を発生することができる。
図2(c)に示すように、リリースレートが1に設定された場合は、実線で示すように減衰が時刻0に開始され、時刻t14に最小値0に達する。この場合のリリースタイムがt14である。また、リリースレートが0に設定された場合は、破線で示すように、減衰が速くなり、減衰が時刻0に開始され、時刻t13に最小値0に達する。この場合のリリースタイムがt13である。
次に、図3を参照して和音のように複数の鍵がほぼ同時に押下された重音が演奏された場合について説明する。図2(a)を参照して説明したように、オンオンタイムに応じたアタックタイムを設定すると、ほぼ同時に複数の押鍵が行われた重音の場合には、その複数の押鍵の中の2番目以降の押鍵についてはオンオンタイムが短いので、前述の式Aを用いてアタックレートを計算するとアタックレートが小さくなり、結果的にアタックタイムが短く設定されることになる。しかしながら、ほぼ同時に押鍵された重音の場合は速弾きとは異なり、重音を構成する複数の楽音の立ち上がり方がほぼ同一である方が、まとまりのある重音を発生することができる。そこで、オンオンタイムが所定時間である重音判定時間JTより短い場合は、2番目以降の楽音のアタックレートを先頭の楽音のアタックレートとほぼ同一に設定する。このようにすることで、ほぼ同時になされた複数の押鍵による楽音の立ち上がり方がほぼ同一となり、まとまりのある重音を発生することができる。
図3は、その重音と判定される場合の押鍵の状態を模式的に表す模式図である。図3は、横軸を時間とし、押鍵されている時間を時間軸に沿う長方形により示している。即ち、各長方形の左端が押鍵された時刻を示し、長方形の右端が離鍵された時刻を示している。ここでは、押鍵の時刻によりアタックレートが設定されるので、離鍵された時刻については、触れないものとする。なお、縦軸については、発生順にノートが重ならないように表したものであって、音高を表すものではない。
図3に示すように、時刻t1にノート1が押鍵され、次に、時刻t2にノート2が、時刻t3にノート3が、時刻t4にノート4がそれぞれ押鍵されたものとする。そして、ノート1が押鍵された時刻t1とノート2が押鍵された時刻t2との時間差であるオンオンタイムが所定時間である重音判定時間JT以上であり、ノート2が押鍵された時刻t2からノート3が押鍵された時刻t3との時間差は、重音判定時間JTより短く、ノート3が押鍵された時刻t3からノート4が押鍵された時刻t4との時間差も重音判定時間JTより短い場合を示している。この場合、ノート2とノート3、ノート3とノート4とは、ほぼ同時に押鍵されたものと判断される。
従って、ノート2のアタックレートは、ノート1とのオンオンタイムに応じた値に設定するが、ノート3のアタックレートはノート2に設定されたアタックレートとほぼ同一に設定し、ノート4のアタックレートはノート3に設定されたアタックレートとほぼ同一に設定する。このように設定することにより、ノート2、ノート3、ノート4のアタックレートがほぼ同一になるので楽音の立ち上がり方がほぼ同一となり、まとまりのある重音を発生することができる。
次に、図4を参照して、電子楽器1のCPU2により実行される処理について説明する。図4は、CPU2により実行される処理を示すフローチャートである。この処理は、電子楽器1の電源が投入されたとき起動され、電源が遮断されるまで繰り返し行われる処理である。
この処理では、まず、初期設定を行う(S1)。初期設定としては、ワークエリア4aに記憶するアタックレートを1に初期化し、タイマ2aによる時刻の計時を開始するように設定する。次に、MIDI入力に演奏情報が入力された否かを判断し(S2)、入力があれば(S2:Yes)、その入力された情報がノートオン情報であるか否かを判断する(S3)。なお、この実施形態では、入力される情報は、ノートオン情報およびノートオフ情報以外は入力されないものとする。
入力された情報がノートオン情報である場合は(S3:Yes)、前回ノートオン情報が入力された時刻からの時間(以下、「オンオンタイム」と称す)を取得する(S4)。なお、電源を投入した直後は前回ノートオン情報が入力された時刻が記憶されていないので、このオンオンタイムを奏法判定時間Thより長い所定時間に設定しておく。
次に、タイマ2aが計時する現在時刻をノートオン情報が示すノートナンバに対応してRAM4のワークエリア4aに記憶する(S5)。次に、S4の処理により取得されたオンオンタイムが重音判定時間JTより短いか否かを判断する(S6)。オンオンタイムが重音判定時間JTより短ければ(S6:Yes)、先のノートオンに対するアタックレートがRAM4のワークエリア4aに記憶されているので、そのアタックレートを読み出し、そのアタックレートを音源7に指示する(S7)。
S6の判断処理においてオンオンタイムが重音判定時間JTより短くなければ(S6:No)、ほぼ同時に演奏操作された重音ではないとし、オンオンタイムが奏法判定時間Thより短いか否かを判断する(S11)。オンオンタイムが奏法判定時間Thより短ければ(S11:Yes)、速弾き演奏されたものとし、オンオンタイムに応じたアタックレートを計算してその計算したアタックレートを音源7に指示し(S12)、RAM4のワークエリア4aに記憶されるアタックレートの値をその計算した値に変更する(S13)。
オンオンタイムが奏法判定時間Thより短くなければ(S11:No)、アタックレートを1として音源7に指示し(S14)、RAM4のワークエリア4aに記憶されるアタックレートの値を1に設定する(S13)。S7またはS13の処理を終了した場合は、音源7に発音の開始を指示する(S9)。
一方、S3の判断処理において入力した情報がノートオン情報でなければ(S3:No)、入力した情報は、ノートオフ情報であり、ゲートタイムを取得する(S21)。このゲートタイムは、RAM4のワークエリア4aにノートナンバに対応してノートオン情報が入力された時刻が記憶されているので、現在の時刻からその記憶された時刻を差し引くことにより求めることができる。
次に、このゲートタイムがゲートタイム閾値GThより短いか否かを判断する(S22)。ゲートタイムがゲートタイム閾値GThより短ければ(S22:Yes)、リリースレートを計算し、その計算したリリースレートを音源7に指示する(S23)。ゲートタイムがゲートタイム閾値GThより短くない場合は(S22:No)、リリースレートを1として音源7に指示する(S24)。S23またはS24の処理を終了した場合は、音源7にリリースを開始するように指示する(S25)。
S2の判断処理で入力がないと判断された場合(S2:No)、またはS9の処理またはS25の処理を終了した場合は、その他の処理を行い(S28)、S2の処理に戻る。
その他の処理としては、ノートオン情報とノートオフ情報以外の情報を受信し、その情報の処理を行ったり、操作子の操作を検出して、その操作に対応する処理などである。
以上、実施形態に基づいて説明したように、ノートオン情報が入力された際に前回ノートオン情報が入力された時刻からの時間であるオンオンタイムを計時し、そのオンオンタイムが奏法判定時間Th内である場合は、いわゆる速弾きされたものとしてアタックタイムを通常の場合より速く(短く)し、さらにノートオフ情報が入力された際にゲートタイムがゲートタイム閾値GThより短い場合に、リリースタイムを速く(短く)する。この処理により、いわゆる速弾きが行われた際に適正なアタック波形とリリース波形の楽音を生成することができる。
また、複数のノートオン情報が重音判定時間JT以内に入力された場合には、先頭のノートオン情報の以降に入力されるノートオン情報については、そのノートオン情報に基づいて形成される波形のアタックレートをその先頭の波形のアタックレートとほぼ同一に設定するので、複数のノートオン情報によって形成される楽音のアタック波形が近似し、粒が揃ったまとまりのある重音を発生することができるという効果がある。
なお、上記実施形態では、アタックレートは、ノートオン情報に含まれるノートオンベロシティの値には依らないものとしたが、アタックレートをノートオンベロシティの値により変化するようにしてもよい。すなわちノートオンベロシティの値が大きいほどアタックレートを小さくして、楽音の立ち上がりを大きく且つ速くしてもよい。
例えば、ベロシティレートをVR、ノートオンベロシティの値をVL(MIDI規格により規定される値は0から127の値である)とし、
VR=(127−VL)/127
とする。そして、α、βをそれぞれオンオンタイムとノートオンベロシティVLとに対する依存率を表す係数とし、
アタックレート=α×(オンオンタイム/Th)+β×VR ・・・(式B)
(例えば、α+β=1)
とすることで、アタックレートをオンオンタイムだけでなく、ノートオンベロシティVLの値によっても設定することができる。なお、式Aは、式Bにおいてα=1、β=0の場合である。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態では、図3に示すようにほぼ同時に押鍵された重音であることを判定する場合に、ノート2が押鍵された時刻t2からノート3が押鍵された時刻t3までのオンオンタイムが重音判定時間JT以内であればノート2とノート3とは重音であると判定し、同様にノート3が押鍵された時刻t3からノート4が押鍵された時刻t4までのオンオンタイムが重音判定時間JT以内であればノート3とノート4とは重音であると判定するものとしたが、ノート2が押鍵された時刻t2から計時を開始し、重音判定時間JT以内に押鍵されたノートは全て重音であると判定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、アタック部のエンベロープ波形は、説明を容易にするために直線とし、アタックタイムがアタックレートに応じて変化することで、その直線の傾きが変化するものとしたが、アタックレートに対応する立ち上がりの形状が異なる曲線を複数記憶し、その異なる曲線のいずれかを選択するようにしてもよい。これらの曲線は、単調増加関数が望ましい。同様にリリース部についても、直線に限らず曲線であってもよい。
また、上記実施形態では、ほぼ同時に押鍵された重音と判定された場合に、重音を構成する2番目以降の楽音のアタックレートを先頭の楽音のアタックレートにほぼ一致させるものとしたが、2番目以降の楽音のアタックレートを少し変化させるようにしてもよい。例えば、2番目の楽音のアタックレートを先頭の楽音のアタックレートの95%などとし、さらに3番目の楽音のアタックレートを2番目の楽音のアタックレートの95%などとしてもよい。
また、上記実施形態では、図3に示すようにノート2とノート3とがほぼ同時に押鍵された重音と判定された場合に、ノート3のアタックレートをノート2のアタックレートにほぼ一致させることで、ノート3のアタック特性をノート2のアタック特性とほぼ同一に設定するものとしたが、ノート3のアタック特性をノート1とのオンオンタイムに基づき設定してもよい。このようにノート3のアタック特性をノート1とのオンオンタイムに基づき設定しても、ノート2のアタック特性はノート1とのオンオンタイムに基づき設定されているので、ノート2とノート3とがほぼ同時に押鍵された重音であれば、結果的にノート3のアタック特性はノート2のアタック特性とほぼ同一に設定されるからである。
本発明における実施形態の電子楽器の電気的構成を示すブロック図である。 (a)はオンオンタイムとゲートタイムとを示す図であり、(b)はアタックレートに応じたアタック部のエンベロープ波形を示すグラフであり、(c)はリリースレートに応じたリリース部のエンベロープ波形を示すグラフである。 重音と判断される場合を示す模式図である。 CPUにより実行される処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 電子楽器
2 CPU
2a タイマ(オンオンタイム計時手段、ゲートタイム計時手段の一 例)
3 ROM
4 RAM
7 音源
S4 オンオンタイム計時手段
S21 ゲートタイム計時手段
S7,S12,S14 アタック特性設定手段
S23,S24 リリース特性設定手段
S9,S25 指示手段

Claims (6)

  1. 楽音の発生開始を指示する発音指示と、その発音指示により発音された楽音の停止を指示する停止指示とを入力する入力手段と、
    発音指示に応じて楽音の発生を開始し、停止指示に応じて楽音の発生を停止する音源と、
    前記入力手段に入力された第1発音指示と、その第1発音指示の次に入力された第2発音指示との時間差を計時するオンオンタイム計時手段と、
    前記入力手段に入力された第2発音指示と、その第2発音指示に応じて発音された楽音の停止を指示する停止指示との時間差を計時するゲートタイム計時手段と、
    前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するアタック特性設定手段と、
    前記第2発音指示に応じて発音される楽音のリリース特性を前記ゲートタイム計時手段により計時された時間が短いほどリリースタイムが短いリリース特性に設定するリリース特性設定手段と、
    前記入力手段による前記第2発音指示の入力に応じて前記アタック特性設定手段により設定されたアタック特性で楽音の発生を開始するように前記音源に指示し、前記入力手段による前記停止指示の入力に応じて前記リリース特性設定手段により設定されたリリース特性で楽音の発生を停止するように前記音源に指示する指示手段とを備えていることを特徴とする電子楽器。
  2. 前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が第1所定時間より短い場合は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するものであり、
    前記リリース特性設定手段は、前記ゲートタイム計時手段により計時された時間が第2所定時間より短い場合は、前記ゲートタイム計時手段により計時された時間が短いほどリリースタイムが短いリリース特性に設定するものであることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
  3. 前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が所定時間である重音判定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定するものであることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
  4. 前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が前記第1所定時間より短い所定時間である重音判定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定するものであることを特徴とする請求項2記載の電子楽器。
  5. 楽音の発生開始を指示する発音指示を入力する入力手段と、
    発音指示に応じて楽音を発生する音源と、
    前記入力手段に入力された第1発音指示と、その第1発音指示を入力した後入力された第2発音指示との時間差を計時するオンオンタイム計時手段と、
    そのオンオンタイム計時手段により計時された時間が所定時間である重音判定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記第1発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性とほぼ同一に設定し、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が前記重音判定時間以上である場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するアタック特性設定手段と、
    前記入力手段による前記第2発音指示の入力に応じて前記アタック特性設定手段により設定されたアタック特性で楽音の発生を開始するように前記音源に指示する指示手段とを備えていることを特徴とする電子楽器。
  6. 前記アタック特性設定手段は、前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が前記重音判定時間以上で、且つ第1所定時間より短い場合は、前記第2発音指示に応じて発音される楽音のアタック特性を前記オンオンタイム計時手段により計時された時間が短いほどアタックタイムが短いアタック特性に設定するものであることを特徴とする請求項5記載の電子楽器。
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