JP6539718B1 - 地下構造物の施工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】部材の厚みを薄くすることが可能で、開削部にも非開削部にも適用でき、大幅な工期短縮が可能な地下構造物の施工方法を提供すること。
【解決手段】地上の均しコンクリート1上で、アーチ形状を有する複数のセグメント9同士を止水部材を介して周方向に連結し、周方向にプレストレスを付与してリング状構造体19を地組する。そして、クレーン35を用いてリング状構造体19を立て起こし、地盤に掘削された開削部41の所定の位置に吊り降ろす。次に、長手方向に設計荷重より小さなプレストレスを付与してリング状構造体19を既設のリング状構造体19に仮固定し、仮固定したリング状構造体19および既設のリング状構造体19を水平ジャッキ47を用いて長手方向に移動させる。これらの工程を繰り返した後、仮固定された所定数のリング状構造体19に、長手方向に設計荷重通りのプレストレスを付与する。
【選択図】図6

Description

本発明は、プレキャストコンクリートを用いた地下構造物の施工方法に関する。
従来、地下に構造物を施工する方法としては、地上から地盤を開削し、場所打ちコンクリートによって地下の構造物を施工する方法がある。また、その一部にプレキャストコンクリートを用いる方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、開削部に施工した基礎コンクリート上でプレキャストコンクリートを用いてアーチ状の閉合リングを形成し、閉合リングを牽引ワイヤで所定位置まで横引きして連続したトンネルを構築する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
他に、トンネル計画位置の上方の外周の地盤に周方向に所定の間隔で長尺材を押し込み、トンネル計画位置の外周を囲むように地盤改良を行った後、トンネル計画位置を掘削し、場所打ちコンクリートによってトンネルを構築する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
特開2008−2154号公報 特許第3453564号公報 特許第5308116号公報
しかし、プレキャストコンクリートを用いたボックスカルバートやアーチ状の閉合リングなどでは、地下での土圧や水圧に耐えるための耐力を得るために、所定以上の肉厚が必要であり、製造から運搬、設置過程などにおいて、必ずしも効率的ではなかった。
また、開削部、非開削部に関わらず、場所打ちコンクリートによって地下にトンネル等の構造物を構築すると、現地での作業時間が長くなり、多くの作業人員が必要であった。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、部材の厚みを薄くすることが可能で、開削部にも非開削部にも適用でき、大幅な工期短縮が可能な地下構造物の施工方法を提供することである。
前述した目的を達成するために、本発明は、地下構造物の施工方法であって、アーチ形状を有する複数のセグメント同士を止水部材を介して周方向に連結し、周方向にプレストレスを付与してリング状構造体を地組して構築する工程aと、
前記リング状構造体を立て起こす工程bと、前記リング状構造体を地盤に掘削された空間内の所定の位置に吊り降ろす工程cと、前記リング状構造体を既設のリング状構造体に仮固定し、前記リング状構造体および前記既設のリング状構造体を周方向に垂直な長手方向に移動させる工程dと、仮固定された所定数の前記リング状構造体に、長手方向にプレストレスを付与する工程eと、を具備し、前記リング状構造体が、少なくとも2本の脚部を有し、前記脚部は、前記リング状構造体を側方から見た時に底部から突出するように設けられることを特徴とする地下構造物の施工方法である。
本発明によれば、アーチ形状を有する複数のセグメントを用いるため、アーチアクションを利用することで部材を薄く軽量化することができる。そのため、リング状構造体を地組して立て起こし、地盤に掘削された空間内に吊り下げる作業や、仮固定した複数の既設のリング状構造体を周方向に垂直な長手方向に移動する作業を容易に行うことができ、場所打ちコンクリートを用いる場合と比較して、工期を大幅に短縮することができる。
また、プレキャストのセグメントを地組してリング状構造体を構築するため、広い組み立てエリアを必要とせず、都市部の狭隘な場所でも施工可能である。さらに、地上部でセグメントを組み立てるので、地下部分においてセグメントの組み立て作業エリアが不要であり、地下の作業スペースを有効に利用することができる。
前記リング状構造体には、少なくとも2本の形状保持部材が取り付けられ、前記形状保持部材が、前記リング状構造体を立て起こした時の上下方向において、ほぼ平行に配置され、前記形状保持部材の下部に、立て起こし用の滑動装置を取り付け、前記脚部は、前記滑動装置の上部に当接するように配置されることが望ましい。
形状保持部材を取り付けることにより、立て起こし時や吊り下げ時に、リング状構造体の形状を保持することができる。
形状保持部材を取り付ける場合、例えば、前記工程bで、立て起こし用の前記滑動装置を前記形状保持部材に取り付けた状態で前記リング状構造体を立て起こし、前記工程bと前記工程cとの間に、前記滑動装置を前記形状保持部材から取り外す。
形状保持部材を立て起こし用の滑動装置に取り付けることにより、リング状構造体を、形状を保持しつつ、容易に立て起こすことができる。
前記工程dで、前記脚部を前記所定の位置からつながる軌道部材上で移動させることにより、前記リング状構造体を周方向に垂直な長手方向に移動させてもよい。
2本の脚部と軌道部材とを用いることにより、リング状構造体を所定の位置から長手方向に安定して移動させることができる。
前記軌道部材上に、ボールベアリング、丸棒、フッ素樹脂板のいずれかを配置してもよい。
また、前記軌道部材がレールであり、前記脚部が下端部に車輪を有し、前記滑動装置を前記形状保持部材から取り外した後、前記脚部に前記車輪を取り付けてもよい。
このような構成とすることにより、リング状構造体を滑らかに移動させることができる。
前記工程dで、移動用部材を有する転倒防止架台に前記リング状構造体を取り付けて、前記移動用部材を前記軌道部材上で移動させてもよい。
転倒防止架台にリング状構造体を取り付ければ、移動時にリング状構造体の転倒を防止することができる。
本発明によれば、部材の厚みを薄くすることが可能で、開削部にも非開削部にも適用でき、大幅な工期短縮が可能な地下構造物の施工方法を提供することができる。
セグメント9を配置する工程を示す図 リング状構造体19を地組して構築する工程を示す図 リング状構造体19を立て起こす工程を示す図 リング状構造体19を立て起こした状態を示す図 リング状構造体19を吊り降ろす準備をする工程を示す図 リング状構造体19を開削部41に吊り降ろし、移動させて仮固定する工程を示す図 所定数のリング状構造体19を固定した状態を示す図 リング状構造体19のセグメント9の長手方向の断面を示す図 脚部15を用いずにリング状構造体19を移動させる例を示す図 非開削部59にリング状構造体19を設置する工程を示す図
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、セグメント9を配置する工程を示す図である。図1(a)、図1(b)は、均しコンクリート1の上方から見た図ある。
図1に示す工程では、まず、図1(a)に示すように、均しコンクリート1を地表に打設する。均しコンクリート1には、レール3が所定の間隔で埋め込まれて敷設される。また、均しコンクリート1上に、セグメント架台7を放射状に設置し、形状保持部材5を所定の間隔で設置する。形状保持部材5は、例えば、H型鋼である。
次に、図1(b)に示すように、セグメント9をセグメント架台7上に配置する。セグメント9は、プレキャストコンクリート製であり、それぞれアーチ形状を有する。セグメント9のうち、2つのセグメント9aには、外側面11から突出するように脚部15が設けられる。セグメント9の周方向の端面13には、図示しない止水部材が配置される。止水部材は、例えば水膨張性を有する。
セグメント9を配置する際には、セグメント架台7に設けられた図示しない外側アングル材をセグメント9の外側面11の位置のガイドとして用い、図示しない止水部材が接触しないように、周方向の端面13同士の間を20mm程度開ける。
図2は、リング状構造体19を地組して構築する工程を示す図である。図2(a)は、均しコンクリート1の上方から見た図、図2(b)は、図2(a)に示す矢印Aの方向から見た図である。図2(c)は、図2(b)の脚部15付近の拡大図であり、図2(d)は、図2(c)に示す矢印Bの方向から見た図である。
図2に示す工程では、まず、図2(a)に示すように、セグメント9がリング状に配置された状態で、セグメント9内に周方向に設けられたシースに緊張材23aを挿通し、周方向にプレストレスを付与して、リング状構造体10を構築する。セグメント9同士は、周方向のプレストレスで止水部材を確実に潰すことで、止水部材を介してリング状に連結される。プレストレスを付与する際には、セグメント架台7に設けられた図示しない内側アングル材をセグメント9の内側面17の位置のガイドとして用いる。これにより、セグメント9の目違いが防止され、リング状構造体10が真円状に構築される。リング状構造体19は、8つのセグメント9が連結されて構成される。
そして、図2(a)、図2(b)に示すように、セグメント9のうち、2つのセグメント9bに、吊治具21を取り付ける。また、形状保持部材5を、リング状構造体19の下面に取り付ける。セグメント9aに設けられた脚部15は、リング状構造体19を側方から見た時に底部33から突出するように設けられている。
次に、図2(c)、図2(d)に示すように、立て起こし用の滑動装置25を形状保持部材5に取り付ける。滑動装置25は、L型部材27、ピン29、チルタンク31等からなる。L型部材27は、部材27aと部材27bとを一体化したものである。L型部材27は、曲がり部に設けられたピン29によってチルタンク31に連結される。チルタンク31は、溝状のレール3に沿ってスライド移動可能である。L型部材27は、ピン29を中心として回転可能である。
図2(c)に示すように、リング状構造体19の脚部15は、形状保持部材5に平行な脚部15aと、脚部15aの下端に脚部15aに垂直に設けられた脚部15bとからなる。滑動装置25は、L型部材27の部材27bと形状保持部材5とを固定することにより、形状保持部材5に取り付けられる。このとき、リング状構造体19の脚部15bは、L型部材27の部材27aに当接する。
図3は、リング状構造体19を立て起こす工程を示す図である。図3(a)、図3(b)は、リング状構造体19の側方から見た図である。図4は、リング状構造体19を立て起こした状態を示す図であり、図3(b)に示す矢印Dの方向から見た図である。
図3に示す工程では、まず、図3(a)に示すように、リング状構造体19に取り付けた2ケ所の吊治具21に、クレーン35のワイヤ37を接続する。ワイヤ37は、途中に吊下げ用梁39を有する。
そして、クレーン35による吊位置を一定に保ちつつ、ワイヤ37を巻き上げる。これにより、チルタンク31がレール3に沿って矢印C2に示す方向にスライド移動すると同時に、L型部材27がピン29を中心に矢印C1に示す方向に回転し、リング状構造体19が図3(b)に示すように立て起こされる。
図3に示す工程では、離隔を設けて配置された2本の形状保持部材5に滑動装置25を取り付け、2ケ所の吊治具21にワイヤ37を接続することにより、リング状構造体19の回転や捻じれが防止され、リング状構造体19が安定した状態で立て起こされる。立て起こしたリング状構造体19は、図4に示すように、2本の脚部15によって支持され、2本の形状保持部材5によって形状が保持される。
図5は、リング状構造体19を吊り降ろす準備をする工程を示す図である。図5に示す各図は、図3(b)に示す範囲Eを示す拡大図である。
図5に示す工程では、まず、図5(a)に示す滑動装置25の部材27bと、リング状構造体19の形状保持部材5との固定を解除し、図5(b)に示すように、形状保持部材5から滑動装置25を取り外す。そして、図5(c)に示すように、滑動装置25を撤去し、脚部15aから脚部15bを取り外す。その後、図5(d)に示すように、車輪16を有する脚部15cを脚部15aに取り付ける。
図6は、リング状構造体19を開削部41に吊り降ろし、移動させて仮固定する工程を示す図である。図7は、所定数のリング状構造体19を固定した状態を示す図である。
図6に示す工程では、リング状構造体19を吊り降ろす前の適切な時期に、図6(a)に示すように、地盤に開削部41を掘削し、開削部41の底部に軌道部材であるレール43を敷設する。レール43は、リング状構造体19を吊り降ろす所定の位置からリング状構造体19の移動完了後の位置までを含むように敷設される。また、地上では、リング状構造体19を所定の位置に吊り降ろすのに適した位置にクレーン35を固定する。
さらに、開削部41の底部に水平ジャッキ47を固定する。また、水平ジャッキ47からレール43の軸方向に所定の間隔をおいて、レール43上に移動用部材49を有する転倒防止架台45を設置する。移動用部材49は図示しない車輪を有する。
そして、図6(a)に示すように、地上のクレーン35を用いて、リング状構造体19を開削部41の所定の位置に吊り降ろし、脚部15をレール43上に載置する。リング状構造体19は、転倒防止架台45と水平ジャッキ47との間に吊り降ろされる。そして、必要に応じて、水平ジャッキ47でリング状構造体19を転倒防止架台45に沿うように移動させる。
次に、図6(b)に示すように、吊り降ろしたリング状構造体19の長手方向のシースに緊張材23bを挿通し、緊張材23bを用いてリング状構造体19を転倒防止架台45に仮固定して、クレーン35のワイヤ37を吊治具21から取り外して吊荷重を解放する。転倒防止架台45は、吊荷重を解放した状態のリング状構造体19が転倒しないように支持する。その後、リング状構造体19から形状保持部材5および吊治具21を取り外し、地上に回収する。
次に、図6(c)に示すように、水平ジャッキ47を伸長して、リング状構造体19を、周方向に垂直な長手方向すなわち矢印F1に示す方向に、1リング分移動させる。上述したようにリング状構造体19の脚部15cや移動用部材49は車輪を有するため、リング状構造体19および転倒防止架台45は、車輪によってレール43上を滑らかに移動する。
次に、図6(d)に示すように、水平ジャッキ47を縮める。そして、地上で地組したリング状構造体19を、クレーン35を用いて、既設のリング状構造体19と水平ジャッキ47との間に吊り降ろす。その後、必要に応じて、吊り降ろしたリング状構造体19を水平ジャッキ47で既設のリング状構造体19に沿うように移動させる。そして、吊り降ろしたリング状構造体19を既設のリング状構造体19に緊張材23bを用いて仮固定し、吊荷重を解放して、形状保持部材や吊治具21を地上に回収する。
次に、図6(e)に示すように、水平ジャッキ47を伸長して、仮固定した2つのリング状構造体19を、周方向に垂直な長手方向すなわち矢印F2に示す方向に、1リング分移動させる。
その後、地上で地組したリング状構造体19を開削部41の所定の位置に吊り降ろす工程と、リング状構造体19を既設のリング状構造体19に緊張材23bを用いて仮固定し、リング状構造体19および既設のリング状構造体19を長手方向に移動させる工程とを、所定数のリング状構造体19が仮固定されるまで繰り返す。
所定数のリング状構造体19が仮固定された後、図7に示すように、所定数のリング状構造体19の長手方向のシースに緊張材23cを挿通する。そして、長手方向の緊張材23b、緊張材23cに設計荷重通りのプレストレスを付与することにより、所定数のリング状構造体19を固定する。
ここで、リング状構造体19同士を仮固定する方法および固定する方法の詳細について説明する。図8は、リング状構造体19のセグメント9の長手方向の断面を示す図である。図8(a)、図8(b)は、それぞれ、緊張材23b、緊張材23cの位置での断面を示す。
図8(a)に示すように、リング状構造体19のセグメント9は、長手方向の端面に、仮固定のために用いる凹部53を有する。凹部53は、図示しないシースの端部において、隣り合うリング状構造体19のセグメント9の対応する部位に形成される。既設のリング状構造体19の凹部53には、図示しない定着プレートおよびナットによって緊張材23bの端部が定着され、緊張材23bの端部には、カプラ51が設置される。
吊り降ろしたリング状構造体19を既設のリング状構造体19に仮固定するには、吊り降ろしたリング状構造体19の長手方向に設けられたシースに緊張材23bを挿通し、緊張材23bの一方の端部を既設のリング状構造体19の凹部53のカプラ51に連結する。その後、緊張材23bに、例えば設計荷重の30%程度のプレストレスを付与し、緊張材23bの他方の端部を図示しない定着プレートおよびナットを用いて凹部53に定着し、カプラ51を設置する。
図8(b)に示すように、所定数のリング状構造体19を固定するには、仮固定された所定数のリング状構造体19の長手方向に設けられたシースに緊張材23cを挿通する。緊張材23cは、所定数のリング状構造体19の全長とほぼ同等の長さを有する。その後、緊張材23cおよび仮固定に用いた緊張材23bに設計荷重通りのプレストレスを付与し、定着する。
なお、セグメント9の長手方向の端面には、適切なタイミングで、図示しない止水部材が配置される。止水部材は、例えば水膨張性を有する。リング状構造体19同士は、長手方向のプレストレスで止水部材を確実に潰すことで、止水部材を介してトンネル状に連結される。
このように、第1の実施の形態によれば、アーチ形状を有する複数のセグメント9を用いるため、アーチアクションを利用することで部材を薄く軽量化することができる。そのため、リング状構造体19を地組して立て起こし、地盤に掘削された開削部41に吊り下げる作業や、仮固定した複数の既設のリング状構造体19を長手方向に移動する作業を容易に行うことができ、場所打ちコンクリートを用いる場合と比較して、工期を大幅に短縮することができる。
また、プレキャストのセグメント9を地組してリング状構造体19を構築するため、広い組み立てエリアを必要とせず、都市部の狭隘な場所でも施工可能である。さらに、地上部でセグメント9を組み立てるので、地下部分においてセグメントの組み立て作業エリアが不要であり、地下の作業スペースを有効に利用することができる。
第1の実施の形態では、リング状構造体19に2本の形状保持部材5を取り付けることにより、立て起こし時や吊り下げ時に、リング状構造体19の形状を確実に保持することができる。形状保持部材5を立て起こし用の滑動装置25に取り付けることにより、リング状構造体19を、形状を保持しつつ、容易に立て起こすことができる。
また、リング状構造体19に2本の脚部15を設け、開削部41の底部に敷設したレール43上で移動させることにより、リング状構造体19を周方向に垂直な長手方向に安定した状態で滑らかに移動させることができる。
さらに、移動用部材49を有する転倒防止架台45をレール43上に設置し、リング状構造体19を転倒防止架台45に取り付けることにより、移動時にリング状構造体19の転倒を防止することができる。
なお、第1の実施の形態では、リング状構造体19に車輪16を有する脚部15cを取り付けてレール43上を移動させたが、車輪16を有する脚部15cは必須ではない。また、移動用部材49の車輪も必須ではない。レール43を用いる代わりに、開削部41の底部に敷設する軌道部材上にボールベアリング、丸棒、フッ素樹脂板(テフロン(登録商標)板)のいずれかを配置し、図5に示す工程において脚部15bを取り外さず、ボールベアリング、丸棒、フッ素樹脂板板のいずれかによって脚部15bが軌道部材上を移動するようにしてもよい。
第1の実施の形態では、1台のクレーン35と吊下げ用梁39とを用いてリング状構造体19を立て起こして吊り下げたが、2台のクレーンを用いて立て起こして吊り下げてもよい。
また、形状保持部材5の形状や本数は、上述したものに限らない。事前の検討によって、立て起こし時や吊下げ時に形状が保持できることが確認されていれば、形状保持部材5を設けなくてもよい。
さらに、滑動装置の構成は、上述したものに限らない。クレーンのみを用いてリング状構造体19を立て起こして吊り下げることが可能であれば、滑動装置25を用いなくてもよい。
第1の実施の形態では、リング状構造体19を開削部41に吊り降ろした後、脚部15を用いてリング状構造体19を長手方向に移動させたが、脚部15を用いずにリング状構造体19を移動させてもよい。
図9は、脚部15を用いずにリング状構造体19を移動させる例を示す図である。図9(a)に示す例では、第1の実施の形態の図6に示す工程において、リング状構造体19を開削部41に吊り下げる前の適切な時期に、開削部41の底部にレール43の代わりに軌道部材63を設置しておく。軌道部材63は、リング状構造体19を吊り降ろす所定の位置からリング状構造体19の移動完了後の位置までを含むように敷設される。軌道部材63は、鉄骨製もしくはコンクリート製の架台であり、リング状構造体19の外周に沿った形状の凹部67が上面に形成される。
また、図9(b)に示す例では、第1の実施の形態の図6に示す工程において、リング状構造体19を開削部41に吊り下げる前の適切な時期に、開削部41の底部にレール43の代わりに軌道部材65を設置しておく。軌道部材65は、リング状構造体19を吊り降ろす所定の位置からリング状構造体19の移動完了後の位置までを含むように敷設される。軌道部材65は、均しコンクリートであり、リング状構造体19の外周に沿った形状の凹部69が上面に形成される。
図9(a)、図9(b)に示す例では、開削部41の底部に水平ジャッキを固定する。また、必要に応じて、軌道部材63や軌道部材65上を移動可能な転倒防止架台を配置する。
図9(a)、図9(b)に示す例では、地上で地組したリング状構造体19を開削部41の所定の位置に吊り降ろし、軌道部材63の凹部67や軌道部材65の凹部69上に載置する工程と、リング状構造体19を既設のリング状構造体19に仮固定し、リング状構造体19および既設のリング状構造体19を軌道部材63や軌道部材65上で長手方向に移動させる工程とを、所定数のリング状構造体19が仮固定されるまで繰り返す。
図9に示す例においても、リング状構造体19を、開削部41の底部に敷設した軌道部材63や軌道部材65上で移動させることにより、リング状構造体19を周方向に垂直な長手方向に安定した状態で滑らかに移動させることができる。
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる点について説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
図10は、非開削部59にリング状構造体19を設置する工程を示す図である。非開削部59にリング状構造体19を設置する場合には、事前に、図10(a)に示すように、地盤を掘削して立坑41aを形成する。また、立坑41aから所定の距離をおいて、立坑55を形成する。
そして、立坑41aと立坑55との間に、パイプルーフ57を施工する。パイプルーフ57は、複数の鋼管57aからなる。パイプルーフ57は、断面が円形であり、内径がリング状構造体19の外径よりも若干大きくなるように施工される。鋼管57aには、継手が設けられる。鋼管57aの継手は、パイプルーフ57の断面が円形となるように鋼管57aの打設位置を決める役割を有する。
パイプルーフ57の鋼管57aを打設した後、パイプルーフ57の周囲の地盤を凍結工法、高圧噴射工法または薬液注入工法によって改良して改良地盤61を形成するとともに、鋼管57aの内部および継手部にモルタルを注入し、止水性を確保する。そして、パイプルーフ57の内部を掘削する。パイプルーフ57の内部は、地盤の非開削部59に掘削された空間となる。
図10に示す工程では、まず、図10(a)に示すように、第1の実施の形態と同様の方法で地組して立て起こしたリング状構造体19を、クレーン35で立坑41a内の所定の位置に吊り降ろす。リング状構造体19は、既設のリング状構造体19と水平ジャッキ47との間に吊り降ろされる。そして、必要に応じて、水平ジャッキ47で吊り降ろしたリング状構造体19を既設のリング状構造体19に沿うように移動させた後、吊り降ろしたリング状構造体19を既設のリング状構造体19に緊張材23b(図8)を用いて仮固定し、吊荷重を解放する。
次に、図10(b)に示すように、水平ジャッキ47を伸長して、仮固定されたリング状構造体19および既設のリング状構造体19を、パイプルーフ57の内側に押し込むように長手方向に1リング分移動させる。このとき、パイプルーフ57の外周からの外圧を、パイプルーフ57と改良地盤61との協働で支えているため、リング状構造体19には荷重がかからない。
図10に示す工程では、地上で地組したリング状構造体19を立坑41aの所定の位置に吊り降ろす工程と、リング状構造体19を既設のリング状構造体19に緊張材23b(図8)を用いて仮固定して長手方向に移動させる工程とを、所定数のリング状構造体19が仮固定されてパイプルーフ57の内側に押し込まれるまで繰り返す。そして、仮固定された所定数のリング状構造体19の長手方向の残りのシースに緊張材23c(図8)を挿通し、緊張材23b、緊張材23cに設計荷重通りのプレストレスを付与する。
図10に示す工程において、立坑41a内でのリング状構造体19の移動には、例えば図9(a)に示す軌道部材63を用いる。この場合、立坑41aの底部に、パイプルーフ57の内部に掘削される空間の底部に凹部67が連続するように、軌道部材63を設置しておく。そして、軌道部材63上に吊り降ろしたリング状構造体19を、軌道部材63上からパイプルーフ57の内側に押し込むように移動させる。
このように、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、アーチ形状を有する複数のセグメント9を用いるため、アーチアクションを利用することで部材を薄く軽量化することができる。そのため、リング状構造体19を地組して立て起こし、地盤に掘削された立坑41aに吊り下げる作業や、仮固定した複数の既設のリング状構造体19を長手方向に移動してパイプルーフ57の内側に押し込む作業を容易に行うことができ、場所打ちコンクリートを用いる場合と比較して、工期を大幅に短縮することができる。
また、プレキャストのセグメント9を地組してリング状構造体19を構築するため、広い組み立てエリアを必要とせず、都市部の狭隘な場所でも施工可能である。さらに、地上部でセグメント9を組み立てるので、地下部分においてセグメントの組み立て作業エリアが不要であり、地下の作業スペースを有効に利用することができる。
第2の実施の形態では、リング状構造体19を、地盤に掘削された立坑41aから非開削部59であるパイプルーフ57の内側に押し出して移動させることにより、リング状構造体19を非開削部59の躯体に適用することができる。
なお、第2の実施の形態では、パイプルーフ57の内側の掘削を完了した後にリング状構造体19をパイプルーフ57の内側に移動させたが、パイプルーフ57の内側を掘削する作業と、リング状構造体19および既設のリング状構造体19を長手方向に移動させてパイプルーフ57の内側に押し込む作業とを、並行して行ってもよい。これらの作業を並行して行えば、工期をさらに短縮できる。
第1の実施の形態では、水平ジャッキ47と転倒防止架台45との間にリング状構造体19を吊り降ろし、転倒防止架台45に仮固定したリング状構造体19を水平ジャッキ47で転倒防止架台45の方向に押してリング状構造体19を移動させたが、水平ジャッキ47と転倒防止架台45とリング状構造体19との位置関係や移動方向はこれに限らない。転倒防止架台45の一方の側に水平ジャッキ47を設置し、他方の側にリング状構造体19を吊り降ろしてもよい。すなわち、例えば図10に示す第2の実施の形態において、水平ジャッキ47と吊り降ろしたリング状構造体19との間に転倒防止架台45を設置してもよい。この場合、リング状構造体19を仮固定した転倒防止架台45を水平ジャッキ47でリング状構造体19の方向に押してリング状構造体19を移動させる。
第1、第2の実施の形態では、リング状構造体19を地盤内に直線状に形成された空間に移動させる場合について説明したが、リング状構造体は、曲線状に形成された空間にも施工可能である。この場合、曲線状に形成された空間に配置できるような形状のリング状構造体を用いる。
第1、第2の実施の形態において、リング状構造体19を既設のリング状構造体19に仮固定する際には、ガイド材を設置して、位置ずれを防止してもよい。また、リング状構造体19の長手方向の端面に調整ピンを設けて、位置ずれを防止してもよい。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………均しコンクリート
3、43………レール
5………形状保持部材
7………セグメント架台
9、9a、9b………セグメント
11………外側面
13………端面
15、15a、15b、15c………脚部
16………車輪
17………内側面
19………リング状構造体
21………吊治具
23a、23b、23c………緊張材
25………滑動部材
27a、27b………部材
29………ピン
31………チルタンク
33………底部
35………クレーン
37………ワイヤ
39………吊下げ用梁
41………開削部
45………転倒防止架台
47………水平ジャッキ
49………移動用部材
51………カプラ
53………凹部
41a、55………立坑
57………パイプルーフ
57a………鋼管
59………非開削部
61………改良地盤
63、65………軌道部材
67、69………凹部

Claims (7)

  1. 地下構造物の施工方法であって、
    アーチ形状を有する複数のセグメント同士を止水部材を介して周方向に連結し、周方向にプレストレスを付与してリング状構造体を地組して構築する工程aと、
    前記リング状構造体を立て起こす工程bと、
    前記リング状構造体を地盤に掘削された空間内の所定の位置に吊り降ろす工程cと、
    前記リング状構造体を既設のリング状構造体に仮固定し、前記リング状構造体および前記既設のリング状構造体を周方向に垂直な長手方向に移動させる工程dと、
    仮固定された所定数の前記リング状構造体に、長手方向にプレストレスを付与する工程eと、
    を具備し、
    前記リング状構造体が、少なくとも2本の脚部を有し、
    前記脚部は、前記リング状構造体を側方から見た時に底部から突出するように設けられることを特徴とする地下構造物の施工方法。
  2. 前記リング状構造体に、少なくとも2本の形状保持部材が取り付けられ
    前記形状保持部材が、前記リング状構造体を立て起こした時の上下方向において、ほぼ平行に配置され、
    前記形状保持部材の下部に、立て起こし用の滑動装置を取り付け、
    前記脚部は、前記滑動装置の上部に当接するように配置されることを特徴とする請求項1記載の地下構造物の施工方法。
  3. 前記工程bで、立て起こし用の前記滑動装置を前記形状保持部材に取り付けた状態で前記リング状構造体を立て起こし、
    前記工程bと前記工程cとの間に、前記滑動装置を前記形状保持部材から取り外すことを特徴とする請求項2記載の地下構造物の施工方法。
  4. 前記工程dで、前記脚部を前記所定の位置からつながる軌道部材上で移動させることにより、前記リング状構造体を周方向に垂直な長手方向に移動させることを特徴とする請求項から請求項3のいずれかに記載の地下構造物の施工方法。
  5. 前記軌道部材上に、ボールベアリング、丸棒、フッ素樹脂板のいずれかを配置することを特徴とする請求項4記載の地下構造物の施工方法。
  6. 前記軌道部材がレールであり、
    前記脚部が下端部に車輪を有し、
    前記滑動装置を前記形状保持部材から取り外した後、前記脚部に前記車輪を取り付けることを特徴とする請求項4記載の地下構造物の施工方法。
  7. 前記工程dで、移動用部材を有する転倒防止架台に前記リング状構造体を取り付けて、前記移動用部材を前記軌道部材上で移動させることを特徴とする請求項4記載の地下構造物の施工方法。
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