以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。本明細書では、上下方向に伸びる中心軸Jの軸方向における図1の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示さない。また、中心軸Jに平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
図1に示すように、モータ10は、例えば、インナーロータ型のモータである。モータ10は、各部品を収容可能なハウジング20と、ロータ30と、筒状のステータ40と、ベアリングホルダ50と、ハウジング20に保持される下ベアリング60と、ベアリングホルダ50に保持される上ベアリング61と、下側バスバーアッシー70と、上側バスバーアッシー80と、端子92A,92Bと、を備える。
ロータ30は、中心軸Jに沿って配置されるシャフト31と、第1ロータコア33Aと、第2ロータコア33Bと、第3ロータコア33Cと、第1マグネット34Aと、第2マグネット34Bと、第3マグネット34Cと、を有する。シャフト31は、下ベアリング60および上ベアリング61によって中心軸J周りに回転可能に支持される。ロータ30は、ステータ40の内側において、ステータ40に対して回転可能である。
第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、筒状である。第1ロータコア33Aと、第2ロータコア33Bと、第3ロータコア33Cとは、軸方向の下側から上側に向かってこの順で並ぶ。第1ロータコア33Aの内側面、第2ロータコア33Bの内側面、および第3ロータコア33Cの内側面は、例えば、中心軸Jを中心とする円筒状である。第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、シャフト31に例えば圧入等により嵌め合わされて固定される。なお、第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、他の部材を介して間接的にシャフト31に固定されてもよい。
第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、例えば、周方向に延びる板状である。第1マグネット34Aは、第1ロータコア33Aの外側面に固定される。第2マグネット34Bは、第2ロータコア33Bの外側面に固定される。第3マグネット34Cは、第3ロータコア33Cの外側面に固定される。
第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、それぞれ周方向に沿って複数設けられる。なお、第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、それぞれ単一部材であってもよい。この場合、第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、例えば、円環状である。
ステータ40は、ロータ30と隙間を介して径方向に対向する。ステータ40は、例えば、ロータ30の径方向外側に配置される。ステータ40は、ステータコア40aと、複数のコイル43と、複数のインシュレータ44と、を有する。ステータコア40aは、例えば、複数の電磁鋼板が積層されて構成される。ステータコア40aは、周方向に延びる環状のコアバック41と、コアバック41から径方向に延びる複数のティース42と、を有する。すなわち、ステータ40は、コアバック41と、ティース42と、を備える。
コアバック41は、例えば、中心軸Jを中心とした円環状である。コアバック41の外周面は、ハウジング20の内周面に例えば圧入等により固定される。この実施形態では、複数のティース42は、コアバック41の内側面から径方向内側に延びる。複数のティース42は、周方向に沿って等間隔に配置される。
コイル43は、インシュレータ44を介してティース42に巻き回された導電線43aよりなる。コイル43は、各ティース42に配置される。コイル43は、導電線43aの端部であるコイル端43bを有する。コイル端43bは、コイル43のティース42に巻き回された部分から上側に延びる。インシュレータ44の少なくとも一部は、ティース42とコイル43との間に配置される。インシュレータ44は、ティース42の少なくとも一部を覆う。
下側バスバーアッシー70は、略円筒状である。下側バスバーアッシー70は、ステータ40の上側に配置される。下側バスバーアッシー70は、中性点バスバー90と、中性点バスバー90を保持する略円筒状の下側バスバーホルダ71と、を有する。すなわち、モータ10は、中性点バスバー90と、下側バスバーホルダ71と、を備える。
下側バスバーホルダ71は、例えば、絶縁性を有する樹脂製である。下側バスバーホルダ71は、インシュレータ44に固定される。中性点バスバー90は、コイル43と電気的に接続される。より詳細には、中性点バスバー90は、コイル端43bと接続される。これにより、中性点バスバー90は、ステータ40と電気的に接続される。中性点バスバー90は、複数のコイル端43bを中性点として繋ぐ。
上側バスバーアッシー80は、略円筒状である。上側バスバーアッシー80は、下側バスバーアッシー70の上側に配置される。上側バスバーアッシー80は、相用バスバー91と、相用バスバー91を保持する上側バスバーホルダ81と、を有する。すなわち、モータ10は、相用バスバー91と、上側バスバーホルダ81と、を備える。
上側バスバーホルダ81は、略円筒状であり、例えば、絶縁性を有する樹脂製である。上側バスバーホルダ81は、ハウジング20に固定される。相用バスバー91は、コイル43と電気的に接続される。より詳細には、相用バスバー91は、コイル端43bと接続される。相用バスバー91は、端子92A,92Bと接続される。これにより、相用バスバー91は、ステータ40と電気的に接続される。
端子92A,92Bは、上側に延びる板状の部材である。端子92A,92Bの上側の端部は、ハウジング20の上側の端部よりも上側に配置される。端子92A,92Bは、図示しない外部電源と接続される。
ロータ30について、さらに詳細に説明する。図4においては、説明のために各突起部の周方向位置を適宜異ならせて示す場合がある。
各ロータコアの構成および各マグネットの構成は、シャフト31に対する配置が異なる点を除いて、同様である。そのため、以下の説明においては、代表して第1ロータコア33Aおよび第1マグネット34Aについてのみ説明する場合がある。
図2に示すように、第1マグネット34Aは、径方向外側がN極となる第1マグネット34ANと、径方向外側がS極となる第1マグネット34ASと、を含む。第2マグネット34Bは、径方向外側がN極となる第2マグネット34BNと、径方向外側がS極となる第2マグネット34BSと、を含む。第3マグネット34Cは、径方向外側がN極となる第3マグネット34CNと、径方向外側がS極となる第3マグネット34CSと、を含む。
第1マグネット34ANと第1マグネット34ASとは、周方向に沿って交互に設けられる。第2マグネット34BNと第2マグネット34BSとは、周方向に沿って交互に設けられる。第3マグネット34CNと第3マグネット34CSとは、周方向に沿って交互に設けられる。すなわち、第1マグネット34Aの磁極と第2マグネット34Bの磁極と第3マグネット34Cの磁極とは、それぞれN極とS極とを有し、N極とS極とは、周方向に沿って交互に設けられる。
第1マグネット34AN,34AS、第2マグネット34BN,34BS、および第3マグネット34CN,34CSは、例えば、それぞれ3つずつ設けられる。すなわち、第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cのそれぞれにおいて、周方向に並ぶ極数は、例えば、6極である。マグネットにおける周方向に並ぶ極数は、特に限定されない。
第1マグネット34ANと第2マグネット34BNとは、軸方向に一部重なる。第2マグネット34BNと第3マグネット34CNとは、軸方向に一部重なる。
第2マグネット34BNの周方向の中心である第2中心CBは、周方向において、第1マグネット34ANの周方向の中心である第1中心CAに対して一方側にずれる。第3マグネット34CNの周方向の中心である第3中心CCは、周方向において、第2中心CBに対して一方側にずれる。すなわち、第1マグネット34AのN極の中心と、第2マグネット34BのN極の中心とは、周方向において異なる位置にある。第2マグネット34BのN極の中心と、第3マグネット34CのN極の中心とは、周方向において異なる位置にある。
第1マグネット34Aと第2マグネット34Bと第3マグネット34Cとは、互いにスキューが施されて配置される。これにより、モータ10のトルクリップルおよびコギングトルク等を低減できる。
第2ロータコア33Bは、第1ロータコア33Aの上側に配置される。第3ロータコア33Cは、第2ロータコア33Bの上側に配置される。第1ロータコア33Aは、第2ロータコア33Bと、少なくとも一部において隙間DP1を介して軸方向に対向する。第3ロータコア33Cは、第2ロータコア33Bと、少なくとも一部において隙間DP2を介して軸方向に対向する。
図3に示すように、第1ロータコア33Aの平面視外形は、略正六角形状である。第1ロータコア33Aの径方向と直交する各側面には、第1マグネット34Aがそれぞれ固定される。なお、第1ロータコア33Aの平面視外形は、特に上記の形状に限定されず、例えば、円形状であってもよい。
図4に示すように、第1ロータコア33Aは、第1ロータコア33Aの上面である第1上面33Aaと、第1ロータコア33Aの下面である第1下面33Abと、を有する。第2ロータコア33Bは、第2ロータコア33Bの上面である第2上面33Baと、第2ロータコア33Bの下面である第2下面33Bbと、を有する。第3ロータコア33Cは、第3ロータコア33Cの上面である第3上面33Caと、第3ロータコア33Cの下面である第3下面33Cbと、を有する。
第2下面33Bbは、第1上面33Aaと軸方向に対向する。第2上面33Baは、第3ロータコア33Cと軸方向に対向する。第3下面33Cbは、第2上面33Baと軸方向に対向する。
図3に示すように、第1ロータコア33Aは、第1上面33Aaに軸方向に貫通しない第1穴部38aを有する。第1穴部38aは、第1上面33Aaから下側に窪む。なお、第1穴部38aは、第1ロータコア33Aを軸方向に貫通してもよい。第1穴部38aの平面視外形は、例えば、円形状である。
第1ロータコア33Aは、複数の第1穴部38aを有する。複数の第1穴部38aは、周方向に沿って等間隔に並ぶ。図3では、第1穴部38aの数は、例えば、6つである。第1穴部38aは、例えば、第1ロータコア33Aをシャフト31に固定する際に、第1ロータコア33Aの周方向の位置決めに用いられる治具が取り付けられる。
図4に示すように、第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、軸方向に積層される複数の板部材38を有する。板部材38は、電磁鋼板である。図3に示すように、板部材38の平面視外形は、第1ロータコア33Aの平面視外形と同じである。すなわち、この実施形態では、板部材38の平面視外形は、略正六角形状である。なお、板部材38の平面視外形は、第1ロータコア33Aの平面視外形に合わせて、変更される。
図4に示すように、第1ロータコア33A、第2ロータコア33Bおよび第3ロータコア33Cにおいて、板部材38のそれぞれは、軸方向の一方側に突出する凸部37と、凸部37と軸方向に重なり、軸方向の一方側に窪む凹部36と、を有する。より詳細には、第1ロータコア33Aを構成する板部材38は、板部材38の上面から上側に突出する凸部37と、凸部37と軸方向に重なり、板部材38の上面から下側に窪む凹部36と、を有する。各板部材38は、例えば、凸部37と凹部36とをそれぞれ複数ずつ有する。第2ロータコア33Bおよび第3ロータコア33Cにおいて、各ロータコアを構成する板部材38は、例えば、第1ロータコア33Aを構成する板部材38と上下逆向きに配置される。
図3では、凸部37の平面視外形は、径方向に長い矩形状である。図4では、凸部37の断面形状は、突出する側(第1ロータコア33Aにおいては上側)の端部の角が面取りされた略矩形状である。なお、凸部37の平面視外形は、特に限定されず、例えば、円形状であっても、楕円形状であっても、多角形状であってもよい。凸部37の軸方向と直交する断面形状は、特に限定されず、例えば、半円形状、半楕円形状、であっても、多角形状であってもよい。
凹部36の平面視外形は、好ましくは凸部37の平面視外形と同じである。凹部36の内部の軸方向と直交する断面形状は、好ましくは凸部37の断面形状と同じである。凹部36の軸方向の寸法は、好ましくは、凸部37の軸方向の寸法と同じである。
軸方向に積層されて隣り合う板部材38において、軸方向の一方側に配置される板部材38の凹部36には、軸方向の他方側に配置される板部材38の凸部37が嵌め合わされる。これにより軸方向に積層されて隣り合う板部材38同士が互いに固定される。凸部37と凹部36とは、例えば、板部材38の一部がプレス加工等によってカシメられることで作られる。
第1ロータコア33Aは、第1上面33Aaから第2下面33Bbに向かって突出する凸部37である第1突起部37Aaを有する。そのため、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとを順にシャフト31に嵌め合わせて固定する際、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとを互いに軸方向に近づけた場合に、第1突起部37Aaが第2下面33Bbと接触して第1上面33Aaと第2下面33Bbとの軸方向の間に隙間DP1が設けられやすい。これにより、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとを軸方向に間隔を空けて配置することができる。したがって、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとが接触して第1マグネット34Aおよび第2マグネット34Bが損傷することを抑制できる。
第1突起部37Aaは、例えば、軸方向に隣り合う板部材38同士を固定する際にプレス加工によるカシメ作業等によって作られる。そのため、第1上面33Aaと第2下面33Bbとの軸方向の間に間隔を空けるための別部材を配置する必要がない。これにより、ロータ30の部品点数が増加することを抑制でき、ロータ30の組立工数が増加することを抑制できる。したがって、ロータ30の製造コストが増大することを抑制できる。
なお、ロータコアを構成する板部材の枚数を増やすことでロータコアの軸方向の寸法をマグネットよりも大きくし、軸方向に対向するマグネット同士が互いに接触することを抑制する方法が考えられる。この場合、ロータコアを構成する板部材の枚数が、ステータコアを構成する板部材の枚数よりも多くなりやすい。
ロータコアを構成する板部材とステータコアを構成する板部材とは、例えば、帯状の電磁鋼板を打ち抜いて製造される。この際、ロータコアを構成する板部材と、ステータコアを構成する板部材とを、帯状の電磁鋼板から同時に打ち抜いて製造する方法がある。この方法によれば、ロータコアを構成する板部材とステータコアを構成する板部材とを同時に製造できるため、各板部材の製造が簡便である。
この打ち抜き方法を用いた場合において、ロータコアを構成する板部材の枚数を増やしてマグネット同士の衝突を抑制する方法を採用すると、ロータコアを構成する板部材の枚数がステータコアを構成する板部材の枚数よりも多くなりやすい。そのため、ステータコアを構成する板部材が余り、無駄になる問題がある。
これに対して、本実施形態によれば、板部材38の枚数を変えることなく、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとが衝突することを抑制できる。そのため、板部材38とステータコア40aを構成する板部材とを、帯状の電磁鋼板から同時に打ち抜いて製造する方法を用いた場合に、打ち抜いたステータコア40aの板部材が無駄になることを抑制できる。
第1突起部37Aaは、第2下面33Bbと接触する。そのため、第1上面33Aaと第2下面33Bbとの軸方向の間に、第1突起部37Aaの軸方向の寸法の分だけ隙間DP1を設けることができる。これにより、より確実に隙間DP1を設けることができ、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとが接触して第1マグネット34Aおよび第2マグネット34Bが損傷することを抑制できる。
また、隙間DP1の軸方向の寸法を、第1突起部37Aaの軸方向の寸法と同じにできるため、第1突起部37Aaの軸方向の寸法を調整することで、隙間DP1の軸方向の寸法を調整することができる。また、第1突起部37Aaが第2下面33Bbと接触することで、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとの軸方向の相対位置が決まる。
この実施形態において、凸部37の平面視外形は、矩形状であり、第1突起部37Aaの平面視外形は、矩形状である。プレス加工によるカシメで凸部37を作る場合において、凸部37の平面視外形を矩形状とすると、凸部37の平面視外形が円形状の場合に比べて、凸部37の軸方向の寸法を大きくしやすい。そのため、隙間DP1の軸方向の寸法を十分に確保しやすい。
第1突起部37Aaの上側の端面である第1突起部先端面37Abは、第2下面33Bbと平行である。そのため、第1突起部37Aaを第2下面33Bbに対して安定して接触させることができる。
図3に示すように、第1ロータコア33Aは、複数の第1突起部37Aaを有する。複数の第1突起部37Aaは、周方向に沿って等間隔に配置される。そのため、第1突起部37Aaが第2下面33Bbと接触する場合、第1突起部37Aaによって第2ロータコア33Bを安定して支持できる。また、隙間DP1の軸方向の寸法を均一にしやすい。
図3では、第1ロータコア33Aは、例えば、3つの第1突起部37Aaを有する。第1突起部37Aaの数は、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。第1突起部37Aaは、周方向に隣り合う第1穴部38a同士の間に配置される。第1突起部37Aaの少なくとも一部は、第1穴部38aと同じ径方向位置にある。第1突起部37Aaは、径方向に延びる。第1ロータコア33Aの第1下面33Abには、第1下面33Abから上側に窪む凹部36が配置される。なお、第1突起部37Aaおよび第1突起部37Aaの少なくとも一部は、上記配置でなくてもよい。
図4に示すように、第2ロータコア33Bは、第2下面33Bbから第1上面33Aaに向かって突出する凸部37である第2突起部37Baを有する。
例えば、図4において、第1突起部37Aaが下向きに突出する場合、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bと第3ロータコア33Cとを合わせた全体の軸方向の寸法が、第1突起部37Aaの軸方向の寸法の分だけ大きくなる。
これに対して、本実施形態では、第1突起部37Aaと第2突起部37Baとは互いに逆向きに突出する。そのため、第1突起部37Aaと第2突起部37Baとを軸方向と直交する方向にずらして配置することで、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bと第3ロータコア33Cとを合わせた全体の軸方向の寸法が大きくなることを抑制できる。また、第1ロータコア33Aの下側に他の部材を取り付ける場合に、第1突起部37Aaが邪魔となることがない。
第2ロータコア33Bの第2上面33Baには、第2上面33Baから下側に窪む凹部36が配置される。第2突起部37Baの形状および配置等のその他の構成は、第1突起部37Aaの構成と同様である。なお、第2突起部37Baの構成は、第1突起部37Aaの構成と異なっていてもよい。
第3ロータコア33Cは、第3下面33Cbから第2上面33Baに向かって突出する凸部37である第3突起部37Caを有する。第3突起部37Caは、第2上面33Baと接触する。第3下面33Cbと第2上面33Baとの軸方向の間には、隙間DP2が設けられる。
第3ロータコア33Cの第3上面33Caには、第3上面33Caから下側に窪む凹部36が配置される。第3突起部37Caの形状および配置等のその他の構成は、第1突起部37Aaの構成と同様である。なお、第3突起部37Caの構成は、第1突起部37Aaの構成と異なっていてもよい。
この実施形態において、第1ロータコア33Aにおける第1マグネット34Aに対する凸部37および凹部36の相対的な位置と、第2ロータコア33Bにおける第2マグネット34Bに対する凸部37および凹部36の相対的な位置と、第3ロータコア33Cにおける第3マグネット34Cに対する凸部37および凹部36の相対的な位置とは、同じである。
この場合、例えば、第1マグネット34Aと、第2マグネット34Bと、第3マグネット34Cとを周方向において同じ位置に配置すると、各突起部同士、あるいは突起部と凹部36とが干渉する虞がある。
具体的には、例えば、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとが周方向において同じ位置にあると、第1突起部37Aaと第2突起部37Baとが軸方向に対向し、隙間DP1の軸方向の寸法が大きくなる。そのため、必要以上にロータ30が軸方向に大型化する虞がある。
また、例えば、第2マグネット34Bと第3マグネット34Cとが周方向において同じ位置にあると、第2上面33Baに配置される凹部36と第3突起部37Caとが軸方向に対向する。この場合、第3突起部37Caが凹部36に嵌め合わされ、隙間DP2が設けられない虞がある。
これに対して、本実施形態によれば、各マグネットはスキューが施されて配置されるため、各ロータコア間において、各突起部を含む凸部37の周方向位置および凹部36の周方向位置がずれる。これにより、上記のような干渉が生じることを抑制できる。具体的には、例えば、図3に二点鎖線で示すように、第2突起部37Baの周方向位置が、第1突起部37Aaに対してスキューを施された角度分だけ周方向にずれて、第1突起部37Aaと第2突起部37Baとが軸方向に対向することを抑制できる。図示は省略するが、第2上面33Baに配置される凹部36と第3突起部37Caとが軸方向に対向することも抑制できる。
したがって、各マグネット間にスキューを施すことで、各ロータコアの構造を同様としつつ、隙間DP1,DP2を設けることができる。これにより、各ロータコアを同じ製造方法を用いて製造できるため、ロータ30の製造コストを低減できる。
例えば、第1突起部37Aaの少なくとも一部が第1穴部38aと径方向において同じ位置にある場合において、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとの間にスキューが施されると、第2突起部37Baが第1穴部38aと軸方向に重なる虞がある。この場合、第1穴部38aに第2突起部37Baの全体が嵌ると、隙間DP1が設けられない問題があった。
これに対して、各突起部を径方向に延びる形状とする場合、各突起部の径方向の寸法を第1穴部38aの直径よりも大きくすることができる。そのため、第2突起部37Baと第1穴部38aとが軸方向に重なった場合であっても、第2突起部37Baが第1穴部38a内に嵌まることを抑制できる。したがって、隙間DP1が設けられないことを抑制できる。
また、各マグネット間にスキューが施される場合、各マグネット間に隙間DP1,DP2が設けられることで、各マグネットから放出される磁束が各マグネット同士の間に流れることを抑制できる。これにより、各マグネットから放出される磁束が無駄になることを抑制でき、各マグネットから放出される磁束がステータコア40aに流れやすい。したがって、モータ10のトルクを向上できる。このように、本実施形態による各マグネット間に隙間DP1,DP2を設けることができる効果は、各マグネット間にスキューが施される場合に特に有用である。
図3および図5に示すように、第1ロータコア33Aは、第2穴部38bを有する。図5に示すように、第2穴部38bは、第1下面33Abに配置される。第2穴部38bは、第1ロータコア33Aを軸方向に貫通する。そのため、図3に示すように、第2穴部38bは、第1上面33Aaに開口する。
第2穴部38bの径方向位置は、第1下面33Abに配置される凹部36の径方向位置と同じである。第1ロータコア33Aは、少なくとも第1突起部37Aaの数と同じ数だけ第2穴部38bを有する。すなわち、図3では、第1ロータコア33Aは、3つの第2穴部38bを有する。第2穴部38bは、周方向において、各第1突起部37Aa同士の間の中央に配置される。複数の第2穴部38bは、周方向に沿って等間隔に配置される。
図5に示すように、第2穴部38bの大きさは、凸部37を、第2穴部38bと凸部37との間の少なくとも一部に隙間が設けられた状態で、収容可能な大きさである。
各ロータコアの製造方法として、図5に示すようにして、板部材38を上側から順次積層して複数のロータコアを軸方向に重ねて製造する方法がある。この製造方法によれば、例えばプレス等によって打ち抜いて製造した板部材38が同じ箇所に積み上げられることによって、複数のロータコアをまとめて製造できる。そのため、ロータコアの生産性を向上できる。
この製造方法を用いた場合においては、軸方向に重ねて製造された複数のロータコアが、1つずつのロータコアにそれぞれ分離される。そして、各ロータコアにマグネットが固定された後、各ロータコアが順次シャフト31に嵌め合わされて固定される。
上記ロータコアの製造方法において、積層される板部材38は、凸部37が下向きの状態で積層される。1つのロータコアにおいては、上側に重ねられる板部材38の凸部37が、すでに下側に配置された他の板部材38の凹部36に嵌まる。これにより、凹部36と凸部37とが嵌め合わされ、軸方向に隣り合って積層された板部材38同士が固定される。
上述したようにして所定枚数の板部材38が積層されて固定されると、1つのロータコアが完成する。例えば、図5においては、所定枚数の板部材38が積層されて第1ロータコア33Aが形成された状態を示している。なお、図5における第1ロータコア33Aの上下の向きは、図4における第1ロータコア33Aの上下の向きと逆向きである。
第1ロータコア33Aが形成された後、第1ロータコア33Aの上側からさらに板部材38を積層し、第1ロータコア33Aの上側に次のロータコア、すなわち図5では第2ロータコア33Bを重ねて製造する。このとき、第1下面33Abの凹部36に、第2突起部37Baである凸部37が嵌ると、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとが固定され、複数のロータコアを製造した後に各ロータコアを分離できない。そのため、第2ロータコア33Bを構成する板部材38は、第1ロータコア33Aを構成する板部材38に対して周方向にずらした状態で積層する必要がある。
ここで、本実施形態の各ロータコアは、それぞれ突起部を有する。そのため、第2突起部37Baである凸部37が、周方向にずれて第1下面33Abに接触すると、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとの間に隙間が生じる。この場合、積層されて製造される際の、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとを合わせた軸方向の寸法が大きくなる。各ロータコア同士の軸方向の隙間は、軸方向に重ねて製造されるロータコア同士の間にそれぞれ生じるため、積層されるロータコアの数が多くなる程、積層されて製造される際の複数のロータコア全体の軸方向の寸法が大きくなる。したがって、上記ロータコアの製造方法を用いた際に、まとめて積層できるロータコアの数が少なくなり、生産性が低下する問題がある。
これに対して、本実施形態によれば、第2穴部38bが設けられるため、第2ロータコア33Bを構成する板部材38の凸部37を、周方向位置を第2穴部38bに合わせてずらすことで、第2穴部38b内に、第2突起部37Baである凸部37が収容される。これにより、第1下面33Abと第2下面33Bbとが接触した状態で、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとを積層して製造できる。また、第2穴部38bの大きさは、凸部37を、第2穴部38bと凸部37との間の少なくとも一部に隙間が設けられた状態で、収容可能な大きさであるため、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとが固定されることがない。
したがって、軸方向に隣り合って積層されるロータコア同士が固定されることなく、積層されて製造される際の複数のロータコア全体の軸方向の寸法が大きくなることを抑制できる。その結果、まとめて積層できるロータコアの数が少なくなることを抑制できる。これにより、生産性を低下することなく本実施形態のロータコアを製造することができる。
また、上記ロータコアの製造方法を用いて複数のロータコアを製造する際において、第2突起部37Baである凸部37を有する板部材38を第1ロータコア33A上に重ねる場合、第2突起部37Baが第1下面33Abと接触すると、第2突起部37Baの先端面が、板部材38の重み等によって潰れる虞がある。
これに対して、第2穴部38b内に第2突起部37Baである凸部37が収容されることで、第2突起部37Baの先端面が、第1下面33Abと接触しない。そのため、第2突起部37Baの先端面が、板部材38の重み等によって潰れることを抑制できる。
例えば、第2突起部37Baが複数設けられる場合に、第2突起部37Baの先端面が潰れると、各第2突起部37Baの軸方向の寸法が互いにばらつきやすく、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとの間の隙間DPを安定して設けられない虞がある。
これに対して、この実施形態では、第2突起部37Baの先端面が潰れることを抑制できるため、各第2突起部37Baの軸方向の寸法がばらつくことを抑制できる。したがって、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとの間の隙間DPをより安定して設けることができる。
図3の例では、各第2穴部38bは、各第1突起部37Aaに対して周方向に60°ずれて配置される。そのため、第2ロータコア33Bを構成する板部材38は、第1ロータコア33Aを構成する板部材38に対して、周方向に60°ずれて積層される。
図3に示すように、第2穴部38bの平面視外形は、好ましくは凸部37の平面視外形と同じである。すなわち、第2穴部38bの平面視外形は、ここでは、矩形状である。第2穴部38bは、第1ロータコア33Aを軸方向に貫通しなくてもよい。この場合、第2穴部38bは、第1下面33Abに開口する。
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明において上記説明と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
第1突起部37Aaは、第2下面33Bbと必ずしも接触しなくてもよい。この場合、第1ロータコア33Aと第2ロータコア33Bとは、全体において隙間を介して軸方向に対向する。
第1突起部37Aaは、図6に示す構成であってもよい。
図6に示すように、第1突起部137Aaは、軸方向と径方向との両方と直交する方向に延びる。第1突起部137Aaは、径方向において、第1ロータコア133Aの第1穴部38aと異なる位置にある。そのため、図示しない第2ロータコアの構成を第1ロータコア133Aの構成と同様とすることで、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとの間にスキューが施されても、第2突起部が第1ロータコア133Aの第1穴部38aと重なることがない。したがって、第2突起部が第1穴部38aに嵌まって隙間DP1が設けられないことを防止できる。
第1マグネット34Aと第2マグネット34Bと第3マグネット34Cとの間には、スキューが施されなくてもよい。この場合、例えば、第1マグネット34Aに対する凸部37および凹部36の相対位置と、第2マグネット34Bに対する凸部37および凹部36の相対位置と、が互いに異なる構成が好ましい。また、第2マグネット34Bに対する凸部37および凹部36の相対位置と、第3マグネット34Cに対する凸部37および凹部36の相対位置と、が互いに異なる構成が好ましい。
第1マグネット34Aと第2マグネット34Bと第3マグネット34Cとの間にスキューが施されない場合、例えば、図7に示す構成を採用してもよい。
図7に示すように、第1ロータコア233Aおよび第2ロータコア233Bのそれぞれにおいて、板部材238は、1つの第1板部材238aと、複数の第2板部材238bと、を含む。第1板部材238aは、第1ロータコア233Aおよび第2ロータコア233Bのそれぞれにおいて、各ロータコアを構成する板部材238のうち最も上側に配置される板部材238である。
第1板部材238aは、第1凸部237aと、第1凹部236aと、を有する。第2板部材238bは、第2凸部237bと、第2凹部236bと、を有する。第1凸部237aの形状および第2凸部237bの形状は、凸部37の形状と同様である。第1凹部236aの形状および第2凹部236bの形状は、凹部36の形状と同様である。
第1凸部237aの軸方向の寸法は、例えば、第1凹部236aの軸方向の寸法と同じである。第2凸部237bの軸方向の寸法は、例えば、第2凹部236bの軸方向の寸法と同じである。第1凸部237aの軸方向の寸法および第1凹部236aの軸方向の寸法は、第2凸部237bの軸方向の寸法および第2凹部236bの軸方向の寸法よりも大きい。
軸方向に積層されて隣り合う第2板部材238bにおいて、上側に配置される第2凹部236bには、軸方向の下側に配置される第2凸部237bが嵌め合わされる。
各ロータコアにおいて、第1凹部236aには、第1板部材238aの下側に配置され、第1板部材238aと軸方向に隣り合う第2板部材238bの第2凸部237bが嵌め合わされる。第1凹部236aの軸方向の寸法は、第2凸部237bの軸方向の寸法よりも大きいため、第1凹部236aの底面と第2凸部237bの上面との軸方向の間には、隙間DP4が設けられる。
第1ロータコア233Aの下面である第1下面233Ab、および第2ロータコア233Bの下面である第2下面233Bbには、第2凹部236bが配置される。
第1ロータコア233Aにおける第1凸部237aは、第1ロータコア233Aの上面である第1上面233Aaから上側に突出する第1突起部237Aaである。第2ロータコア233Bにおける第1凸部237aは、第2ロータコア233Bの上面である第2上面233Baから上側に突出する第2突起部237Baである。
第1突起部237Aaは、第2下面233Bbに配置される第2凹部236bと軸方向に重なる。第1突起部237Aaの軸方向の寸法L1は、第2凹部236bの軸方向の寸法L2よりも大きい。そのため、第1突起部237Aaが第2下面233Bbに配置される第2凹部236bに嵌め合わされた場合に、寸法L1と寸法L2との差分だけ、第1ロータコア233Aと第2ロータコア233Bとの軸方向の間に隙間DP3が設けられる。これにより、第1ロータコア233Aと第2ロータコア233Bとを同じ構成として、各マグネット間にスキューが施されない場合であっても、隙間DP3を設けることができる。
各マグネット間にスキューが施されない場合であっても、ロータ30のマグネットとして、それぞれ別部材である第1マグネット34Aと第2マグネット34Bと第3マグネット34Cとを用いることは有用である。それは、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bと第3マグネット34Cとが軸方向に連結された単一部材である場合に比べて、マグネットの渦電流損失を低減できるためである。この場合においても、各マグネット同士が接触すると各マグネットが損傷する虞があるため、本実施形態による各マグネット間に隙間DP1,DP2を設けることができる効果は有用である。
第1突起部37Aaと第2突起部37Baと第3突起部37Caとは、それぞれ同じ向きに突出してもよい。この場合、各ロータコアにおけるシャフト31に固定する向きをそれぞれ同じにできるため、ロータ30の組み立てが容易である。
ロータコアの数は、2つ以上であれば、特に限定されない。ロータコアの数は、例えば、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
上記実施形態において示したロータは、マグネットをロータコアの表面に固定するSPM(Surface Permanent Magnet)モータに用いられるロータとしたが、これに限らない。本発明が適用されるロータは、例えば、マグネットをロータコアの内部に固定するIPM(Interior Permanent Magnet)モータに用いられるロータであってもよい。
上記実施形態の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。