JP6531277B2 - 無電解めっき液及び無電解めっき方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自己触媒的に金属をめっきする無電解めっき液及び無電解めっき方法に係り、特に、炭化ケイ素(SiC)を用いて耐摩耗性等に優れためっき皮膜を得ることができる無電解めっき液及び無電解めっき方法に関する。
一般に、デジタルカメラや医療機器等に搭載される摺動部品等の耐久性を向上させるために無電解ニッケルめっき等の表面処理が行なわれている。しかし、無電解ニッケルめっきは物理蒸着(PVD)に比べ耐久性に劣り、物理蒸着は耐久性に優れるが、アスペクト比の高い深穴への処理が難しく、高額な設備投資が必要であり大量生産が難しいため製品コストが高くなってしまう。さらに、硬質クロムめっきは、低電部の付き回りが悪く膜厚精度が劣る。一方、この無電解ニッケルめっきだけでなく、近年、硬さや潤滑性等を有する無機微粒子を金属と共に共析させる所謂無電解複合ニッケルめっきの技術が開発され、実用化されているものもある。
従来、この種の無電解複合めっきの技術において、例えば、ニッケル及びタングステンのめっき金属を被めっき物に無電解めっきを行なうものであるが、無電解めっき液として、ニッケル及びタングステンの金属塩を金属イオン源とし、これに還元剤として次亜リン酸塩、錯化剤としてクエン酸塩類等を含み、更に、無機微粒子として炭化ケイ素の微粒子を添加したものを用いている。そして、常法に従い、めっき槽に上記の無電解めっき液を入れ、これに被めっき物を浸漬してめっきする(例えば、特開平6−65751号公報に掲載)。これにより、物理蒸着と同等の皮膜硬度を得ることができるようになる。
特開平6−65751号公報
ところで、この炭化ケイ素を添加した無電解めっき液による無電解めっきにあって、物理蒸着と同等の皮膜硬度が得られるものの、炭化ケイ素が非導電体であることに起因することもあって、例えば耐摩耗性等の点において、必ずしも、満足できるものになっていない。
本発明は、この点に鑑みてなされたもので、より一層の耐久性等の機能向上、特に、耐摩耗性,摺動性の向上を図った無電解めっき液及び無電解めっき方法を提供することを目的とする。
本願発明者らは、炭化ケイ素が非導電体であることに反し、高導電体であり、高硬度でしなやかな弾力性や耐腐食性を有するカーボンナノチューブ(CNT)に着目し、このカーボンナノチューブを添加・共析させることにより、高硬度で耐摩耗性,摺動性に優れた皮膜を形成する可能性があると考え、種々実験を試みて本発明を完成させた。
即ち、このような目的を達成するための本発明の無電解めっき液は、めっき金属の金属イオン源,還元剤及び錯化剤を含み、被めっき物の表面に無電解めっきによりめっき金属を被覆するための無電解めっき液において、炭化ケイ素とカーボンナノチューブとを添加した構成としている。
ここで、被めっき物としては、金属,樹脂等どのようなものでも良く、導電性,非導電性は問わない。例えば、鉄,銅,アルミニウムやそれらの合金素材,ステンレス,プラスチック,ガラス,セラミック等を挙げることができる。
めっき金属としては、例えば、最も一般的なめっき金属であるニッケル,コバルト,銅をはじめ、金,鉄,鉛,銀,スズ,クロム,オスミウム,パラジウム,インジウム,イリジウム,プラチナ,ロジウム,ルテニウム等を挙げることができる。めっき金属の金属イオン源としては、これらの塩化物,硫酸塩,硝酸塩等の金属塩であって、溶液中に含有される。めっき金属がニッケルの場合は、ニッケルイオン源としては、例えば、硫酸ニッケル,塩化ニッケル,次亜リン酸ニッケル,炭酸ニッケル等を挙げることができる。めっき金属が銅の場合は、銅イオン源としては、例えば、硫酸銅,塩化銅,水酸化銅,シアン化銅等を挙げることができる。
還元剤は、金属イオンの酸化還元電位よりも低い酸化還元電位を有し、溶液中では酸化速度が小さいもので、例えば、次亜リン酸塩,ホルムアルデヒド,パラホルムアルデヒド,水酸化ホウ素アンモニウム,ジメチルアミンボラン等を挙げることができる。特に、めっき金属がニッケルの場合は、次亜リン酸塩を使用することができる。
錯化剤は、例えば、酢酸,乳酸,グリシン,クエン酸,マロン酸,りんご酸,しゅう酸,こはく酸,酒石酸,チオグリコール酸,アンモニア,アラニン,グルタミン酸,エチレンジアミン等を挙げることができる。
このような本発明の無電解めっき液によれば、高精度な膜厚制御・薄膜化を可能とするとともに、この無電解めっき液に被めっき物を浸漬してめっきして得られた製品は、被めっき物の表面にめっき金属とともに炭化ケイ素及びカーボンナノチューブが共析したものになる。そのため、カーボンナノチューブは高導電体であり、高硬度でしなやかな弾力性や耐腐食性を有することから、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの相乗作用によって、機能向上を図ることができる。特に、耐摩耗性,摺動性の向上を図ることができる。
そして、必要に応じ、上記炭化ケイ素として、平均粒径が0.1μm〜10.0μmのものを選択し、上記カーボンナノチューブとして、平均直径が1.0nm〜300nm,最大長さが50μm以下のものを選択した。
炭化ケイ素は、望ましくは、平均粒径が0.25μm〜5.0μm、より望ましくは、0.5μm〜2.0μmのものが良い。
また、カーボンナノチューブは、望ましくは、平均直径が1.0nm〜200nm,最大長さが30μm以下のもの、より望ましくは、平均直径が50nm〜150nm,最大長さが10μm以下のものが良い。
カーボンナノチューブとしては、シングルウォール型(SWCNT)、複数の筒状のグラファイトシートが入れ子状となった形状のマルチウォール型(MWCNT)、カップ状のグラファイトシートが積み重なった形状のカップスタック型(CSCNT)等あり、本発明では、何れも使用することができる。
特に、上記カーボンナノチューブとして、カップスタック型のものを選択することが有効である。カップスタック型のカーボンナノチューブは、かさ比重が大きく親水性も良く、これに起因して、比較的分散性も良く、めっき液のpHの条件による影響が小さい。そのため、共析を確実に行なわせることができる。
また、一般に、カーボンナノチューブは、絡まりあった状態で凝集し塊状の黒色の粉末として存在するが、優れた特性を発揮するために、一般には、分散液に分散させている。分散溶媒としては、例えば、水,エタノール,メタノール,イソプロピルアルコール,エチルヘキサノール,アセトン,ブタノール,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,シクロヘキサン等を挙げることができる。
また、必要に応じ、上記炭化ケイ素を、0.5g/L〜10g/L、上記カーボンナノチューブを、10ppm〜3000ppm添加した構成としている。
炭化ケイ素において、0.5g/Lより少ないと共析が不十分になる。10g/Lを超えると、炭化ケイ素同士が凝集して大きな塊となりやすく、好ましくない。望ましくは、1.0g/L〜5.0g/L、より望ましくは、1.5g/L〜2.5g/Lである。
また、カーボンナノチューブにおいて、10ppmより少ないと共析が不十分になる。3000ppmを超えるとカーボンナノチューブが凝集して大きな塊となりやすく、好ましくない。望ましくは、2000ppm以下、より望ましくは、50ppm〜1000ppmである。
更に、必要に応じ、pH調整剤を添加し、pHを、4.0〜8.0にした構成としている。pH調整剤としては、アルカリまたは酸であれば特に制限はない。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物溶液を使用することができる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等を使用することができる。
pHが4.0未満であるとめっき析出速度が非常に低くなり、pHが8.0を超えるとめっき浴安定性が低下する。望ましくは、pHは、5.0〜7.0である。また、カップスタック型カーボンナノチューブでは、5.0〜6.0、マルチウウォール型カーボンナノチューブでは、6.0〜7.0が最適である。
本発明は、具体的には、ニッケルめっきに有効である。この場合、上記めっき金属はニッケルであり、上記金属イオン源として硫酸ニッケル六水和物を用い、上記還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用い、上記錯化剤としてグリシンを用いた構成としている。グリシンの採用により、特に、析出速度を速め、炭化ケイ素を密に共析させることができる。
この場合、硝酸鉛及び/または硝酸ビスマスからなる安定剤を添加したことが有効である。この安定剤を添加することにより、めっきしようとする表面以外に還元反応が起こるのを抑制することができ、めっき液の自然分解を抑制することができる。
より具体的には、本発明は、上記硫酸ニッケル六水和物を、0.05mol/L〜0.2mol/L用い、上記次亜リン酸ナトリウムを、0.1mol/L〜0.4mol/L用い、上記グリシンを0.1mol/L〜0.6mol/L用い、上記安定剤を、0.1ppm〜3.0ppm添加した構成としている。これにより、良好な皮膜を形成することができる。
望ましくは、硫酸ニッケル六水和物を、0.05mol/L〜0.15mol/L、次亜リン酸ナトリウムを、0.15mol/L〜0.25mol/L、グリシンを0.25mol/L〜0.35mol/L、安定剤を、0.2ppm〜2.0ppmとした。安定剤が硝酸ビスマスの場合は、0.5ppm〜1.5ppmである。
より望ましくは、硫酸ニッケル六水和物を、0.075mol/L〜0.125mol/L、次亜リン酸ナトリウムを、0.175mol/L〜0.225mol/L、グリシンを0.275mol/L〜0.325mol/L、安定剤を、0.2ppm〜1.5ppmとした。安定剤が硝酸ビスマスの場合は、0.75ppm〜1.25ppmである。
そしてまた、上記目的を達成するため、本発明の無電解めっき方法は、めっき金属の金属イオン源,還元剤及び錯化剤を含む無電解めっき液をめっき槽に入れ、該めっき槽内の無電解めっき液に被めっき物を浸漬して該被めっき物の表面にめっき金属を被覆する無電解めっき方法において、無電解めっき液として上記の無電解めっき液を用いた構成としている。この無電解めっき液に被めっき物を浸漬してめっきして得られた製品は、被めっき物の表面にめっき金属とともに炭化ケイ素及びカーボンナノチューブが共析したものになる。そのため、カーボンナノチューブは高導電体であり、高硬度でしなやかな弾力性や耐腐食性を有することから、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの相乗作用によって、機能向上を図ることができる。特に、耐摩耗性,摺動性の向上を図ることができる。
そして、必要に応じ、上記無電解めっき液の温度を、80℃〜90℃にした構成としている。この温度範囲で、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの共析量を確保できる。80℃未満であると析出速度が低下し、90℃を超えると粒子が共析しにくく共析量が少なくなり好ましくない。
また、必要に応じ、上記めっき槽内の無電解めっき液を撹拌する構成としている。炭化ケイ素及びカーボンナノチューブが沈殿することなく無電解めっき液中によく分散し、均一な共析を促進させることができる。
この場合、上記撹拌は、めっき槽内の無電解めっき液を循環させることにより行なうことが有効である。撹拌を確実に行なうことができ、均一な共析を促進させることができる。
また、必要に応じ、上記撹拌は、めっき槽内の無電解めっき液に空気を噴出させる構成としている。これによっても撹拌を確実に行なうことができ、均一な共析を促進させることができる。
この場合、上記空気を、めっき槽内の被めっき物に直接当接しないように噴出させることが有効である。めっき物に直接空気が当接すると、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの共析が阻害されることがあるが、空気が被めっき物に当たらないので、均一に共析を行なわせることができる。
本発明によれば、高精度な膜厚制御・薄膜化を可能とするとともに、この無電解めっき液に被めっき物を浸漬してめっきして得られた製品は、被めっき物の表面にめっき金属とともに炭化ケイ素及びカーボンナノチューブが共析したものになる。そのため、カーボンナノチューブは高導電体であり、高硬度でしなやかな弾力性や耐腐食性を有することから、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの相乗作用によって、機能向上を図ることができる。特に、耐摩耗性,摺動性の向上を図ることができる。
本発明の実施の形態に係る無電解めっき液の構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る無電解めっき方法で用いるめっき槽装置を示す一部断面斜視図である。 本発明の実施の形態に係る無電解めっき方法で用いるめっき槽装置を示す正面図である。 本発明の実施の形態に係る無電解めっき方法で用いるめっき槽装置を示す平面図である。 本発明の実施の形態に係る無電解めっき方法で用いるめっき槽装置を示す側面図である。 本発明の試験例に係り、炭化ケイ素,カーボンナノチューブの添加量の検討を行なう際に使用した溶液の成分を示す表図である。 本発明の試験例に係り、炭化ケイ素の濃度毎における炭化ケイ素の共析状態の評価結果を示す表図である。 本発明の試験例に係り、めっき液のpHが析出状態に及ぼす影響の評価結果を示す表図である。 本発明の試験例に係り、錯化剤の種類の検討を行なう際に使用した溶液の成分を示す表図である。 本発明の試験例に係り、安定剤の適正を確認する際,温度条件の検討を行なう際,膜厚の検討を行なう際に使用した溶液の成分を示す表図である。 本発明の実施例1〜4に係る無電解めっき液の成分を、比較例1〜5に係る無電解めっき液の成分とともに示す表図である。 本発明の実施例1に係る無電解めっき液の固形分を示す電子顕微鏡写真(100000倍)である。 本発明の実施例1に係る無電解めっき液を用いてめっきした実施例試料1の電子顕微鏡写真であり、(a)はめっきした試料の表面を示す電子顕微鏡写真(2000倍)、(b)はめっきした試料の表面を示す電子顕微鏡写真(100000倍)である。 実施例試料及び比較例試料に対して行なった耐摩耗性試験の試験条件を示す図である。 試験例に係り、実施例試料1〜4及び比較例試料1〜5に対して行なった耐摩耗性試験の結果を示す表図である。 本発明の実施例1,5,6,7に係る無電解めっき液の成分を、比較例1,2,4に係る無電解めっき液の成分とともに示す表図である。 本発明の実施例7に係る無電解めっき液を用いてめっきした実施例試料7の電子顕微鏡写真(20000倍)である。 試験例に係り、実施例試料1,比較例試料1,2,4を熱処理(400℃)した試料の表面硬度(ビッカース硬度)を未熱処理の試料のものとともに示す表図である。 試験例に係り、熱処理(400℃)を行なった実施例試料1,5,6,7、比較例試料1,2,4に対して行なった耐摩耗性試験の結果を示す表図である。
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る無電解めっき液及び無電解めっき方法について詳細に説明する。
実施の形態に係る無電解めっき液は、被めっき物の表面に無電解めっきによりめっき金属を被覆するためのもので、図1に示すように、めっき金属の金属イオン源,還元剤,錯化剤,pH調整剤,安定剤を含むとともに、炭化ケイ素とカーボンナノチューブとを添加している。
詳しくは、実施の形態に係る無電解めっき液は、被めっき物の表面に、めっき金属としてニッケルをめっきするためのものである。被めっき物としては、金属,樹脂等どのようなものでも良く、導電性,非導電性は問わない。例えば、鉄,銅,アルミニウムやそれらの合金素材,ステンレス,プラスチック,ガラス,セラミック等を挙げることができる。実施の形態では、鉄板,銅板あるいはステンレス板を用いた。
めっき金属の金属イオン源としては、例えば、硫酸ニッケル,塩化ニッケル,次亜リン酸ニッケル,炭酸ニッケル等を挙げることができる。実施の形態では、硫酸ニッケル六水和物を用いた。
還元剤は、金属イオンの酸化還元電位よりも低い酸化還元電位を有し、溶液中では酸化速度が小さいもので、例えば、次亜リン酸塩,ホルムアルデヒド,パラホルムアルデヒド,水酸化ホウ素アンモニウム,ジメチルアミンボラン等を挙げることができる。実施の形態では、次亜リン酸塩である、次亜リン酸ナトリウムを用いた。
錯化剤は、例えば、酢酸,乳酸,グリシン,クエン酸,マロン酸,りんご酸,しゅう酸,こはく酸,酒石酸,チオグリコール酸,アンモニア,アラニン,グルタミン酸,エチレンジアミン等を挙げることができる。実施の形態では、グリシンを用いた。
pH調整剤としては、アルカリまたは酸であれば特に制限はない。アルカリとしては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸ナトリウム,アンモニア水等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物溶液を使用することができる。酸としては、塩酸,硫酸,硝酸等を使用することができる。実施の形態では、水酸化ナトリウムと希硫酸を用いた。
安定剤としては、例えば、鉛,ビスマス,タリウム等の硝酸塩や所定のイオウ化合物の中から選択することができる。実施の形態では、硝酸鉛または硝酸ビスマスを用いた。
炭化ケイ素は、平均粒径が0.1μm〜10.0μmのものを選択した。
望ましくは、平均粒径が0.25μm〜5.0μm、より望ましくは、0.5μm〜2.0μmのものが良い。
カーボンナノチューブは、平均直径が1.0nm〜300nm,最大長さが50μm以下のものを選択した。望ましくは、平均直径が1.0nm〜200nm,最大長さが30μm以下のもの、より望ましくは、平均直径が50nm〜150nm,最大長さが10μm以下のものが良い。
また、カーボンナノチューブとしては、シングルウォール型(SWCNT)、マルチウォール型(MWCNT)、カップスタック型(CSCNT)等あるが、実施の形態では、マルチウォール型若しくはカップスタック型のものを選択した。カーボンナノチューブは、絡まりあった状態で凝集し塊状の黒色の粉末として存在するが、優れた特性を発揮するために、一般には、分散液に分散させている。分散溶媒としては、例えば、水,エタノール,メタノール,イソプロピルアルコール,エチルヘキサノール,アセトン,ブタノール,酢酸エチル,酢酸ブチル,トルエン,シクロヘキサン等を挙げることができる。
具体的には、硫酸ニッケル六水和物を、0.05mol/L〜0.2mol/L、次亜リン酸ナトリウムを、0.1mol/L〜0.4mol/L、グリシンを0.1mol/L〜0.6mol/L、安定剤を、0.1ppm〜3.0ppm添加した。
望ましくは、硫酸ニッケル六水和物を、0.05mol/L〜0.15mol/L、次亜リン酸ナトリウムを、0.15mol/L〜0.25mol/L、グリシンを0.25mol/L〜0.35mol/L、安定剤を、0.2ppm〜2.0ppmとする。安定剤が硝酸ビスマスの場合は、0.5ppm〜1.5ppmである。
より望ましくは、硫酸ニッケル六水和物を、0.075mol/L〜0.125mol/L、次亜リン酸ナトリウムを、0.175mol/L〜0.225mol/L、グリシンを0.275mol/L〜0.325mol/L、安定剤を、0.2ppm〜1.5ppmとする。安定剤が硝酸ビスマスの場合は、0.75ppm〜1.25ppmである。
例えば、硫酸ニッケル六水和物を、0.1mol/L、次亜リン酸ナトリウムを、0.2mol/L、グリシンを0.3mol/L、硝酸ビスマスを、1.0ppmとする。
また、炭化ケイ素を、0.5g/L〜10g/L添加した。望ましくは、1.0g/L〜5.0g/L、より望ましくは、1.5g/L〜2.5g/Lである。
更に、カーボンナノチューブを、10ppm〜3000ppm添加した。望ましくは、2000ppm以下、より望ましくは、50ppm〜1000ppmである。
次に、本発明の実施の形態に係る無電解めっき方法について詳細に説明する。この方法では、めっき槽装置を用いる。図2乃至図5に示すように、このめっき槽装置Sは、底壁2及び側壁3を有して容器状に形成されめっき液を収容するめっき槽1と、めっき槽1内のめっき液を循環させる循環部10と、めっき槽1に空気を吹き込む空気吹込み部20と、めっき槽1内のめっき液を加温する加温部30とを備え、めっき槽1内のめっき液に被めっき物Wを浸漬してめっきを行なう。
めっき槽1は、ステンレスの板で形成されており、その底壁2は、下に凹む四角錘状の内面を有した容器状の谷部4が一対連設されて形成されている。即ち、一対の谷部4の開口5の一辺同士が連設され、谷部4が並設された形状に形成されている。側壁3は、一対の谷部4の開口5を形成する外周縁に連設されて立設され、矩形筒状に形成されている。側壁3の下縁には底壁2を形成する一対の谷部4を覆う覆い板6が連設されている。この覆い板6にはめっき槽1を支持する脚部7が設けられている。また、各谷部4の下端の頂点には、めっき液の出口8が形成されている。
循環部10は、第1循環部10Aと第2循環部10Bとからなり、夫々、めっき液を吸引する吸引口12及び吸引しためっき液を吐出する吐出口13を有したポンプ11と、谷部4の出口8とポンプ11の吸引口12との間に接続される吸引側管路14と、ポンプ11の吐出口13に一端が接続され他端がめっき液をめっき槽1内に給液する給液口16としてめっき槽1内に開放する吐出側管路15とを備えて構成されている。即ち、第1循環部10A及び第2循環部10Bは、夫々、ポンプ11,吸引側管路14及び吐出側管路15の組からなり、各組が各谷部4毎に独立して設けられていることになる。第2循環部10Bの吐出側管路15は、二方向切換弁18を介して主管15aと従管15bとに分岐しており、従管15bにはフィルター17が介装されている。二方向切換弁18の切換えにより、吐出側管路15の従管15bにめっき液を通し、ゴミ等の比較的大きな異物を除去することができる。
空気吹込み部20は、空気を吸引して吹出口22から吹き出すブロワー21と、ブロワー21の吹出口22に一端が接続され他端が空気を上記めっき槽1内に噴出させる噴出口部24として構成された噴出管路23とを備えて構成されている。噴出口部24は複数(実施の形態では4つ)設けられている。即ち、噴出管路23は、4つの枝管(25a,25b,25c,25d)に分岐しており、各枝管(25a,25b,25c,25d)の先端部に夫々噴出口部24が設けられている。この噴出口部24は、これから噴出される空気がめっき槽1内の被めっき物Wに直接当接しないように噴出可能にめっき槽1の側壁3側に設けられている。符号27は、噴出管路23に介装したエアフィルタである。
また、枝管(25a,25b,25c,25d)のうち、2つの枝管(25a,25b)は直状に形成され、噴出口部24はこの枝管(25a,25b)の下向きの開放口で構成されている。他の2つの枝管(25c,25d)は直状部分の先端が側壁3に沿って水平方向に突出させられた突出管26を備え、噴出口部24はこの突出管26の先端の下向きの開放口で構成されている。
加温部30は、電気ヒータ31で構成され、めっき槽1内に一対設けられている。このヒータ31により、無電解めっき液の温度を、80℃〜90℃に設定する。
従って、このめっき槽装置Sを用いて被めっき物Wにめっきを行なうときは、めっき槽装置Sのめっき槽1に、先ず、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブ以外のめっき液を入れ、この状態で、二方向切換弁18の切換えにより、吐出側管路15の従管15bを有効にし、第2循環部10Bのポンプ11を駆動してめっき液を循環させ、フィルター17にめっき液を通して、ゴミ等の比較的大きな異物を除去する。次に、二方向切換弁18の切換えにより、吐出側管路15の主管15aを有効にし、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブを添加してめっき液とする。それから、ヒータ31を作動させてめっき液の温度を80℃〜90℃に設定する。そして、めっき槽1内に、空気吹込み部20の噴出口部24からの空気が被めっき物Wに直接当接しないように、被めっき物Wを例えば吊下してめっき槽1の中央に浸漬する。この状態で、第1循環部10Aと第2循環部10Bのポンプ11を駆動してめっき液を循環させるととともに、空気吹込み部20のブロワー21を駆動して噴出口部24から空気を噴出させ、所要時間この状態を保持する。これにより、被めっき物Wには、めっき金属としてのニッケルが析出して被着するとともに、炭化ケイ素とカーボンナノチューブが共析してゆく。
この場合、炭化ケイ素やカーボンナノチューブが、めっき槽1の底壁2に沈殿し、あるいは、めっき槽1内で凝集しようとしても、第1循環部10Aと第2循環部10Bによってめっき液が循環させられて撹拌され、空気吹込み部20の噴出口部24から噴出される空気によっても撹拌されるので、底部に沈殿したり、凝集が進行することが抑止され、そのため、炭化ケイ素やカーボンナノチューブの微粒子が、頻繁に被めっき物Wに接触し、ニッケルの被めっき物Wに対する析出とともに共析が促進される。
特に、めっき槽1の底壁2は、谷部4が複数連設して形成されているので、炭化ケイ素やカーボンナノチューブの微粒子が、各谷部4毎に吸込まれて循環させられることから、分散性が極めてよくなる。また、谷部4は、下に凹む錘状の内面を有し、出口が谷部4の頂点に形成されているので、平面にめっき液の出口を設ける場合に比較して、集約性が良く、炭化ケイ素やカーボンナノチューブの微粒子の全体を、満遍なく循環させることができ、この点でも、分散性を向上させることができる。更に、第1循環部10A及び第2循環部10Bは、夫々独立して駆動されるので、この点でも、撹拌性が向上させられ、分散性が極めて良いものになる。そのため、炭化ケイ素やカーボンナノチューブの微粒子を、凝集することなく、均一に被めっき物Wに共析させることができる。
更にまた、空気吹込み部20の噴出口部24が複数設けられているので、空気による撹拌が満遍なく行なわれ、この点でも、分散効率が向上させられる。この場合、噴出管路23の噴出口部24は、この噴出口部24から噴出される空気が、めっき槽1内の被めっき物Wに直接当接しないようにめっき槽1の側壁3側に配置されているので、空気によって共析しようとする炭化ケイ素やカーボンナノチューブの微粒子に悪影響を与えることが防止され、均一に共析を行なわせることができる。これにより、高精度な膜厚制御・薄膜化が可能になる。
所要時間経過したならば、被めっき物Wをめっき槽1から取り出す。この被めっき物Wには、めっき金属としてのニッケルが被覆されているとともに、その表面に炭化ケイ素とカーボンナノチューブとが散在して析出形成される。そのため、得られた製品においては、カーボンナノチューブは高導電体であり、高硬度でしなやかな弾力性や耐腐食性を有することから、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの相乗作用によって、機能向上を図ることができる。特に、耐摩耗性,摺動性の向上を図ることができる。
<試験例>
次に、試験例について説明する。
(1)炭化ケイ素の添加量の検討
平均径0.75μm(d50)の炭化ケイ素(太平洋ランダム社製GMF-15S)を用い、図6に示す成分の液に、炭化ケイ素を添加して、その添加濃度が、0.1g/L、0.5g/L、1.0g/L、2.0g/L、5.0g/L、10.0g/Lになる6種の無電解めっき液を作成し、各々のめっき液に被めっき物のサンプル(ハルセル鉄板2cm×2.5cm)を浸漬しめっき処理を行なった。めっき液はビーカに入れてスターラーで撹拌しながら、スターラー回転数300rpm、浴温度80℃、pH5.5、めっき処理時間60分の条件で行なった。めっき処理したサンプルを走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製,SU6600)を使用し、加速電圧:15kV、倍率:5000倍にてサンプル断面の観察を行なった。また、同箇所を元素分析装置(堀場製作所製,EMAX EX250 x−act)を使用し、加速電圧:15kV、積算時間:5分にて元素マッピングを行ない評価した。その結果を図7に示す。この結果において、全ての場合において皮膜中に炭化ケイ素が共析する事を確認できたが、炭化ケイ素共析状態の均一性に関しては、0.1g/Lでは共析が不十分であり、0.5g/L〜1.0g/Lでは炭化ケイ素がややまばらに共析していた。また、炭化ケイ素の添加濃度が5.0g/L以上になると、炭化ケイ素同士が凝集して比較的大きな塊となった。皮膜より脱落する虞を考慮すると、1.0g/L〜5.0g/Lが望ましい。共析状態は、添加濃度2.0g/Lが最良と判断された。
(2)カーボンナノチューブの添加量の検討
平均直径50nm、最大長さ1〜2μmのカップスタック型カーボンナノチューブ(三恵技研工業製)を用い、図6に示す成分の液に、カーボンナノチューブを添加し、その添加濃度1ppm、10ppm、100ppm及び1000ppmになる4種類の無電解めっき液を作成し、各々のめっき液に上記のサンプルを浸漬して、めっき処理を行なった。めっき液はビーカに入れてスターラーで撹拌しながら、スターラー回転数300rpm、浴温度80℃、pH5.5、めっき処理時間90分の条件で行なった。そして、上記と同様にめっき処理したサンプルを走査型電子顕微鏡にて断面の観察を行なった。その結果、添加濃度は、100ppm以上必要であると判断された。また、マルチウォール型のカーボンナノチューブにおいても同様であった。
(3)pH使用範囲の検討
pHの異なる数種の無電解めっき液を作成し、各々のめっき液に上記のサンプルを浸漬して、めっき処理を行ない、これらのサンプルについてめっき皮膜の表面を観察した。その結果、酸性域での使用範囲が良好と判断されたので、これを踏まえて、図6に示す成分の液に、平均直径50nm、最大長さ1〜2μmのカップスタック型のカーボンナノチューブ(三恵技研工業製)と、平均直径100〜150nm、最大長さ5〜10μmのマルチウォール型のカーボンナノチューブ(ナノフロンティアテクノロジー株式会社製)とを、夫々、100ppm加え、そのpHを、5.0、5.5、6.0、6.5及び7.0にした各々5種類ずつの無電解めっき液を作成し、スターラー回転数300rpm、浴温度80℃、炭化ケイ素濃度2.0g/Lの条件でめっきを行ない、各々のめっき状態を評価した。結果を図8に示す。この結果から、カップスタック型カーボンナノチューブでは全ての条件にてめっきが析出した。一方、マルチウォール型のカーボンナノチューブでは、pH5.0〜6.0においてめっき析出が不十分であった。そのため、pHは、カップスタック型カーボンナノチューブでは、5.0〜6.0、マルチウォール型では、6.0〜7.0が最適であると判断された。
(4)錯化剤の検討
上記図6に示す成分の液において、炭化ケイ素を10g/L加え、グリシン、及び、グリシンに代るクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸の各錯化剤を、純水に、例えば、0.2cM/L,0.4cM/L,0.6cM/L,0.8cM/L,1.0cM/Lで溶解させた溶液を加えて、各々の液において、炭化ケイ素の分散状態を検証した。グリシン溶液のみ1日経っても炭化ケイ素が沈降することなく、良好な分散状態を保つことができた。また、各溶液にて濃度による差は見られなかった。グリシンには、アミン(アミノ基)が含まれており、炭化ケイ素を分散させるのに有効に働いていると考えられた。
また、図9に示す成分の液(炭化ケイ素2g/L)に、乳酸,クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリシンの各錯化剤を0.6cM/L溶解させためっき液を作成し、各々のめっき液に上記のサンプルを浸漬して、めっき処理(pH5.5、温浴80℃)を行なった。そして、これらのサンプルについて、3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS:LEXT OLS4000)を使用し、上記と同様に炭化ケイ素の析出状態をみた。その結果、リンゴ酸とコハク酸はグリシンほど共析しておらず、乳酸とクエン酸は炭化ケイ素が凝集して共析しているものが多く、析出速度も遅い(乳酸やクエン酸は3μm/h、グリシンは8μm/h)ことから、錯化剤としてはグリシンが有効であると考えられた。
(5)安定剤の検討
安定剤を決定するために硝酸ビスマスの使用を検討し、図10に示す成分において、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブのない無電解めっき液、炭化ケイ素のみ添加の無電解めっき液、カーボンナノチューブのみ添加の無電解めっき液、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブを複合添加した無電解めっき液の4種のめっき液を作成し、各めっき液において、夫々、硝酸ビスマスの添加量を0.25mg/L,0.5mg/L、1.0mg/L、1.5mg/Lにした4種類の無電解めっき液を作成し、各々のめっき液に上記のサンプルを浸漬して、めっき処理(温度80℃、pH5.5、処理時間60分)を行なった。そして、各めっき液の安定性を確認した。確認方法としてICP発光分光分析装置(日立ハイテクサイエンス社製SPECTRO:ARCOS SOP)を使用し、めっき後の浴中のNi量を測定することにより浴の安定性を確認した。この結果から、硝酸ビスマス添加量0.25mg/Lの条件下ではめっき後の浴中Ni量が低下しているのが確認された。これは浴の安定性が悪いために、異常析出が発生してビーカ等にもめっきが析出してしまうためと考えられる。0.5mg/L以上の添加量が必要であることが確認できた。
(6)温度条件の検討
図6に示す成分の溶液に炭化ケイ素2.0g/L添加した無電解めっき液おいて、80℃〜92℃の範囲で2℃ずつ温度を変化させ、各温度ごとの炭化ケイ素の析出量を見た。その結果80℃〜90℃、望ましくは、80℃〜84℃の範囲が最適な温度であることが確認できた。
(7)膜厚の検討
図6に示す成分の溶液に炭化ケイ素2.0g/L添加した無電解めっき液おいて、温度80℃、pH5.5、処理時間60分の条件で、膜厚を、1μm、3μm、5μm、10μm、20μmのものを作成し、炭化ケイ素の共析状態を見た。その結果、1μmでは共析が見られなかった。よって、膜厚は、3μm以上必要であると考えられる。
また、膜厚3μmの試料について、表5点、裏5点計10点について膜厚を測定した。各点ともに3μm±0.5μmの範囲に入り、安定的に3μm±0.5μmの均一な膜厚を得る事が確認できた。更に、3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS:LEXT OLS4000)にて、本試料の表5点、裏5点計10点について表面粗さを測定した。表面及び裏面の算術平均表面粗さは、0.123μmであった。
以上の試験例を踏まえ、実施例に係る無電解めっき液(実施例1〜4)を作成した。図11に、各実施例の無電解めっき液の成分を示す。実施例1〜4では、平均直径50nm、最大長さ1〜2μmのカップスタック型カーボンナノチューブ(三恵技研工業製)を用いた。実施例1について、遠心分離を行ない、分離物について、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU6600)により、観察した。結果を図12に示す。炭化ケイ素微粒子間にカーボンナノチューブが混在していることが分かる。
そして、各実施例1〜4に係る無電解めっき液を用いて、上記のめっき槽装置を用いてめっきを行なった。被めっき物(サンプル)として、ハルセル鉄板(100mm×67mm×0.3mm)を用い、前処理として、アルカリ脱脂を行ない、水洗後、10%硫酸に浸漬し、その後水洗した。そして、温度条件を80℃、pH5.5、処理時間60分で、めっき厚を8μmにした。
そして、これら実施例1〜4に係る無電解めっき液を用いてめっき処理された試料(以下「実施例試料1〜4」という)について、先ず、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU6600)により、実施例試料1の表面状態を観察した。結果を図13に示す。図13(a)の2000倍の電子顕微鏡写真では炭化ケイ素微粒子(白い粒)が見られるもののカーボンナノチューブは認識できないが、図13(b)の100000倍の電子顕微鏡写真では炭化ケイ素微粒子の間にカップスタック型カーボンナノチューブが共析していることが分かる。
また、実施例試料1〜4について、比較例に係る無電解めっき液を用いて上記と同様にめっき処理された試料(以下「比較例試料1〜5」という)とともに、耐摩耗性試験を行なって評価した。比較例1〜5に係る無電解めっき液を、図11に示す。また、比較例試料1〜5は、実施例試料と同様に作成した。
この試験は、図14に示すように、試料(サンプル)は事前に#1500耐水研磨紙、ダイヤモンドスラリー粒度3μmを使用し表面研磨を行ない、線粗さRa=1〜2μmにしておく。使用試験機(トリニティーラボTL201Ts)を用い、耐水研磨紙#320(幅3.2cm)を、試料に対して長さ8.5cmの範囲で300回往復運動させ、試験前後のサンプル重量の減少量を測定した。試験は3回行ない、その平均値を求めた。
結果を図15に示す。先ず、比較例試料1と比較例試料2、3の結果から、炭化ケイ素の添加は耐摩耗性を向上させることが分かった。また、比較例試料1と、比較例試料4、5を比べると、カーボンナノチューブのみの添加において、少量添加は耐摩耗性を著しく低下させることが分かり、また、大量添加でも耐摩耗性の低下が見られる。そのため、カーボンナノチューブの添加は、耐摩耗性を悪化させる方に働くとの予想もできるが、しかしながら、各実施例試料の結果からは、逆に高い耐摩耗性が得られていることが分かる。
即ち、炭化ケイ素の添加量が同じである実施例試料1,2と比較例試料2とを比較すると、カーボンナノチューブの少量,大量添加にかかわらず、実施例試料1,2の耐摩耗性が向上していることが分かる。また、炭化ケイ素の添加量が同じである実施例試料4と比較例試料3とを比較しても、実施例試料4の耐摩耗性が向上していることが分かる。尚、実施例試料1は比較例試料3より数値が多いが、これは、炭化ケイ素の添加量の多さに起因していると考えられる。
従って、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの相乗作用によって耐摩耗性が向上するといえる。
次に、図16に示すように、先の実施例1の他に、新たに実施例5〜7に係る無電解めっき液を作成した。実施例5,6においては上記と同様に、平均直径50nm、最大長さ1〜2μmのカップスタック型カーボンナノチューブ(三恵技研工業製)を用いた。実施例7では、平均直径100〜150nm、最大長さ5〜10μmのマルチウォール型のカーボンナノチューブ(ナノフロンティアテクノロジー株式会社製)を用いた。
そして、上記と同様に、これら実施例5〜7を用いて上記と同様にめっき処理した実施例試料5,6,7を作成した。先ず、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU6600)により、実施例試料7の表面状態を観察した。結果を図17に示す。炭化ケイ素微粒子の間にマルチウォール型カーボンナノチューブが共析していることが分かる。
次に、実施例試料5,6,7について、先の比較例試料1,2,4とともに、ニッケルめっきの熱処理において一般的な400℃に熱処理したものを作成した。熱処理は、400℃まで昇温し、1時間保持し、その後、常温まで放置した。
そして、実施例試料1,比較例試料1,2,4に係る未処理のものと、400℃に熱処理したものとについて、硬度(ビッカース硬度)を測定した。試料は各々20個作成して測定し、その平均値を求めた。結果を図18に示す。実施例試料1の硬度に関して、未処理のものは比較例試料1,2,4と比べ同等の硬度が得られ、硬度は従来のめっきと同程度であることが分かった。また、400℃に熱処理したものについては、やや硬度が高くなり有意であることが分かった。
次に、400℃熱処理した実施例試料1,5,6,7について、同様に400℃熱処理した比較例試料1,2,4とともに、耐摩耗性試験を行なって評価した。試験は上記と同様に行なった。
結果を図19に示す。何れの実施例試料も各比較例試料に比較して耐摩耗性が向上していることが分かる。熱処理によっても、炭化ケイ素及びカーボンナノチューブの相乗作用によって耐摩耗性が向上するといえる。また、実施例試料において、カーボンナノチューブを多く添加した方が重量減少量が少なく、耐磨耗性が向上する。しかし、多量に添加しても重量減少量には変化が見られないことが分かった。
尚、上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
本発明によれば、高硬度でかつ導電性に優れるカーボンナノチューブを添加した無電解ニッケル−炭化ケイ素−カーボンナノチューブ複合めっき液を提供できるので、高精度な膜厚制御・薄膜化を可能とするとともに、耐熱性、耐摩耗性、耐焼付性、耐食性、防錆性、電気伝導性及び潤滑性の付与及び向上を図ることができ、種々の機械材料や電機材料等の応用が期待できる。
S めっき槽装置
W 被めっき物
1 めっき槽
2 底壁
3 側壁
4 谷部
8 出口
10 循環部
10A 第1循環部
10B 第2循環部
11 ポンプ
14 吸引側管路
15 吐出側管路
16 給液口
17 フィルター
20 空気吹込み部
21 ブロワー
23 噴出管路
24 噴出口部
30 加温部
31 ヒータ

Claims (11)

  1. めっき金属の金属イオン源,還元剤及び錯化剤を含み、被めっき物の表面に無電解めっきによりめっき金属を被覆するための無電解めっき液において、
    炭化ケイ素とカーボンナノチューブとを添加し、
    上記炭化ケイ素として、平均粒径が0.5μm〜2.0μmのものを選択し、
    上記カーボンナノチューブとして、カップスタック型のものを選択し、
    該カーボンナノチューブとして、平均直径が50nm〜150nm,最大長さが10μm以下のものを選択し、
    上記炭化ケイ素を、1.5g/L〜2.5g/L、上記カーボンナノチューブを、50ppm〜1000ppm添加したことを特徴とする無電解めっき液。
  2. pH調整剤を添加し、pHを、5.0〜6.0にしたことを特徴とする請求項1記載の無電解めっき液。
  3. 上記めっき金属はニッケルであり、上記金属イオン源として硫酸ニッケル六水和物を用い、上記還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用い、上記錯化剤としてグリシンを用いたことを特徴とする請求項1または2記載の無電解めっき液。
  4. 硝酸鉛及び/または硝酸ビスマスからなる安定剤を添加したことを特徴とする請求項3記載の無電解めっき液。
  5. 上記硫酸ニッケル六水和物を、0.05mol/L〜0.2mol/L用い、上記次亜リン酸ナトリウムを、0.1mol/L〜0.4mol/L用い、上記グリシンを0.1mol/L〜0.6mol/L用い、上記安定剤を、0.1ppm〜3.0ppm添加したことを特徴とする請求項4記載の無電解めっき液。
  6. めっき金属の金属イオン源,還元剤及び錯化剤を含む無電解めっき液をめっき槽に入れ、該めっき槽内の無電解めっき液に被めっき物を浸漬して該被めっき物の表面にめっき金属を被覆する無電解めっき方法において、
    無電解めっき液として上記請求項1乃至5何れかに記載の無電解めっき液を用いたことを特徴とする無電解めっき方法。
  7. 上記無電解めっき液の温度を、80℃〜90℃にしたことを特徴とする請求項6記載の無電解めっき方法。
  8. 上記めっき槽内の無電解めっき液を撹拌することを特徴とする請求項6または7記載の無電解めっき方法。
  9. 上記撹拌は、めっき槽内の無電解めっき液を循環させることにより行なうことを特徴とする請求項8記載の無電解めっき方法。
  10. 上記撹拌は、めっき槽内の無電解めっき液に空気を噴出させることにより行なうことを特徴とする請求項8または9記載の無電解めっき方法。
  11. 上記空気を、めっき槽内の被めっき物に直接当接しないように噴出させることを特徴とする請求項10記載の無電解めっき方法。
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