JP6530640B2 - リチウム二次電池用正極活物質の処理方法 - Google Patents
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Description
また、該活物質のリチウムが引き抜かれたことにより結晶構造が脆くなり、該活物質のペーストを塗布・プレスする際に粒子が壊れ、粒子内部のアルカリ成分が溶出する可能性があり、電極作成の際の作業性の低下、あるいは作成された電池特性の低下の原因となっている。
更に、従来の製造方法によって製造された正極活物質の粒子強度も必ずしも十分ではないところから、より電池特性が改善されたリチウムイオン二次電池が得られ、しかも電極の作成が容易な正極材の開発が望まれている。
(1)正極活物質を、上記先行技術に見られるように、水やアルカリ性溶液等により洗浄した後、焼成するだけでは、この洗浄によって正極活物質として必要なリチウムまでもが引き抜かれることがあること、
(2)この状態のものを焼成するのでは、リチウムが引き抜かれた部分は焼結されるものの、正極活物質として必要なリチウム量が不足し、十分な電池特性が得られないこと、
(3)しかも、必要なリチウムを引き抜かないように該活物質を洗浄処理することは極めて難しいこと、
(4)但し、所定量のリチウムを追加しても、処理(すなわち再焼成)後の正極活物質のプレス前後における粒径変化が所定の値を示さないことがあり、十分な電池特性が得られない場合があること、
の知見を得た。
これらの知見を基に更に検討を加えたところ、電池特性を十分優れたものとするためには、
(5)再焼成後のリチウム二次電池用正極活物質中に残留する炭酸リチウムと水酸化リチウムの総量がリチウムに換算して該正極活物質の0.15wt%以下であればよいこと、
(6)上記(5)に代えて、あるいは上記(5)と共に、再焼成後のリチウム二次電池用正極活物質のプレス前後における粒径変化率がD50で80%以上であればよいこと、
の知見を得た。
そして、(7)上記(5)や(6)が充足しない場合には、洗浄と再焼成を繰り返し行うことがよい
との知見を得た。
本発明は、以上の知見に基づいて提案したものである。
上記処理後のリチウム二次電池用正極活物質中に残留する炭酸リチウムと水酸化リチウムの総量は、リチウムに換算して該正極活物質の0.15wt%以下であってよく、また処理後のリチウム二次電池用正極活物質のプレス前後における粒径変化率は、D50で80%以上であってよい。
上記処理後のリチウム二次電池用正極活物質の結晶の組成は、Li(x)Ni(1-a-b)Co(a)Mn(b)O2(式中、x、a、及びbは、それぞれ0.9≦x≦1.1、0<a≦0.34、及び0<b≦0.34)で表されてよい。
さらに、上記の洗浄とその後の再焼成の工程は、繰り返し行ってもよい。
先ず、被処理原料を洗浄液によって洗浄して被処理原料中のLi2CO3、LiOH等のアルカリ成分を除去する。この洗浄液は、純水、酸性やアルカリ性に調整された水、アルコール等の有機溶媒など、従来から一般に使用されている正極活物質用洗浄液が用いられるが、純度の点や経済的な観点等から純水が好ましい。
次いで上記固体分(被処理原料)を乾燥し、この乾燥固体に所定量のLi化合物を添加混合し、焼成する。
このLi化合物は、LiOH、ハロゲン化リチウム(LiX)、LiNO3、Li2SO4等が用いられるが、取り扱い易さの点でLiOHが好ましい。
なお、再処理を行う場合の焼成温度は、各回の処理において同一としてもよいし、各前回処理よりも低温で行ってもよい。低温の程度は、各前回処理時の温度の約5〜25%程度(具体的には、1つ前の処理時の焼成温度が900℃の場合、855℃〜675℃)が好適である。この程度の低温度合であれば、処理後の活物質の諸特性を正極材として好適にすることができる。
以上の本発明の処理方法によって得られる原料中に残存するアルカリ成分であるLi2CO3とLiOHの総量は、Liに換算して該原料の0.15wt%以下であることが極めて好適であり、また処理後の正極活物質のプレス前後における粒径変化率がD50で80%以上であることも極めて好適である。
〔被処理原料〕
結晶の組成がLi1.01Ni0.60Co0.20Mn0.20O2(Li/Ni+Co+Mnのモル比が1.01)の正極活物質を被処理原料(被処理原料A)とした。
なお、下記のようにして分析したところ、この被処理原料中にはアルカリ成分として、0.59wt%のLi2CO3と0.24wt%のLiOH(Liに換算すると0.18wt%)の未反応アルカリが残存していた。
被処理原料(10g)を純水(50ml)中に懸濁し、1時間撹拌後、濾過し、濾液を自動滴定装置にて中和滴定(Warder法)する。これにより濾液中のLi2CO3及びLiOHの含有量を定量し、濾液中に占めるLiの総重量の正極活物質の重量に対する割合を算出して、この値を残存アルカリ量とした。
前記被処理原料100gを容器に投入し、純水100mlを加えて5分間撹拌し、撹拌終了後30分間静置した。
その後濾過し、得られた固形分を140℃で16時間乾燥した。
前記固形分に、LiOHを、表1に示す量(該LiOH中のLiの、乾燥固形分中のNiとCoとMnの総量に対するモル比−以下の実施例において、同義−)で混合し、乾式にて十分に撹拌した。
これらの混合物をそれぞれ900℃、空気中で4.5時間焼成して、結晶組成がLi1.05Ni0.60Co0.20Al0.20O2の正極活物質を得た。
前記焼成を終えた正極活物質を、前記〔アルカリ成分の分析方法〕に従って分析した結果、該物質中の残留リチウム量は表1に示す通りであった。
また、これらの正極活物質を下記の方法で測定したプレス前後における粒径変化率が表1に示す通りであった。
前記焼成を終えた正極活物質について、粒度分布(D50)、及び約400MPaの圧力でプレスした後の粒度分布(D50)を測定し、プレス前の(D50)値に対するプレス後の(D50)の割合を算出した。この値(粒径変化率)が大きいほど粒子強度が大である。
前記の残留リチウム量と粒径変化率を示す正極活物質を使用してリチウム二次電池を作製し、これらのリチウム二次電池について、下記の要領で、初期充放電容量、レート特性、サイクル特性、抵抗増加率を測定し、結果を表2に示す。
各正極活物質につき、正極活物質90wt%に、アセチレンブラック7wt%及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)3wt%を混練して正極材とし、これを70μm厚に延ばし、直径11mmの円板状に打ち抜き、アルミメッシュに圧着し乾燥させて正極とした。金属リチウム箔を負極とし、1:1vol%のLiPF6/PC(プロピレンカーボネート)+DMC(ジメチルカーボネート)を非水電解液として、CR2016タイプのコインセル(リチウム二次電池)を作製した。得られたコインセル(リチウム二次電池)を20℃で作動させ、初期充・放電容量を測定した。
上記の各電池につき、電池を1Cで放電した場合の放電容量、該放電容量に対する0.2Cでの放電容量の割合からレート特性を評価した。
上記の各電池につき、100サイクルの充放電を繰り返した時の100回目の放電容量を測定し、初期(1回目)の放電容量に対する放電回数100回目の放電容量の割合からサイクル特性を評価した。
上記の各電池につき、100サイクルの充放電を繰り返した時の電池抵抗に対する、初期(1回目)放電時の電池抵抗の割合から抵抗増加率を評価した。この値(抵抗増加率)が小さいほど電池特性がより良好である。
実施例1・比較例Iの洗浄工程で得た固形分にLiOHを0.10モル比加え、同表に示す温度で焼成する以外は実施例・比較例Iと同様にして結晶組成がLi1.05Ni0.60Co0.20Mn0.20O2の正極活物質を得た。
これらの正極活物質について、実施例・比較例Iと同様にして残留リチウム量と粒径変化率を測定し、この結果を表3に合わせて示す。
また、これらの正極活物質を用いた以外は実施例・比較例Iと同様にしてリチウム二次電池を作製した。
これらリチウム二次電池についても実施例・比較例Iと同様にして、レート特性、サイクル特性、抵抗増加率を測定し、結果を表4に合わせて示す。
〔被処理原料〕
結晶の組成がLi1.10Ni0.60Co0.20Mn0.20O2(Li/Ni+Co+Mnのモル比が1.10)である正極活物質を被処理原料(被処理原料B)とした。
なお、被処理原料Bを実施例・比較例Iと同様にして分析したところ、アルカリ成分として、0.98wt%のLi2CO3と0.38wt%のLiOH(Liに換算して、0.29wt%)の未反応アルカリが残存していた。
被処理原料Bを用い、実施例・比較例I,IIと同様の処理を行って正極活物質を得、これらの正極活物質の残留アルカリ量、粒径変化率を測定した。結果を表5,6に示す。
また、これらの正極活物質を用い、実施例・比較例I,IIと同様にしてリチウム二次電池を作製し、これらの電池の諸特性を測定し、結果を表7に示す。
〔被処理原料〕
結晶の組成がLi0.93Ni0.60Co0.20Mn0.20O2(Li/Ni+Co+Mnのモル比が0.93)である正極活物質を被処理原料(被処理原料C)とした。
被処理原料Cを実施例・比較例I,IIと同様にして分析したところ、アルカリ成分として、0.58wt%のLi2CO3と、0.27wt%のLiOH(すなわち、Liに換算して、0.19wt%)の未反応アルカリが残存していた。
被処理原料Cを用い、実施例・比較例I,IIと同様の処理を行って正極活物質を得、これらの正極活物質の残留アルカリ量、粒径変化率を測定した。結果を表8,9に示す。
また、これらの正極活物質を用い、実施例・比較例I,IIと同様にしてリチウム二次電池を作製し、これらの電池の諸特性を測定し、結果を表10に示す。
〔被処理原料〕
実施例・比較例III−9で処理したものを被処理原料Dとし、該原料Dを再度、実施例・比較例III−9と同様にして洗浄・焼成処理した。結果は、表11,12に示す通りであった。
前記原料Dを、再度、実施例・比較例III−78と同様にして洗浄・焼成処理した。結果は、表11、12に示す通りであった。
さらに、該活物質をリチウム二次電池の正極材として使用することによって、該二次電池の放電容量、レート特性、抵抗増加率等の電池特性の向上を図ることができる。
よって、本発明は予め製造された既存のリチウム二次電池用正極活物質の特性向上化のための処理方法として有用である。
Claims (5)
- リチウム二次電池用正極活物質を洗浄液により洗浄した後、固液分離して得た固体成分にリチウムを含む化合物を添加し、これを酸化性雰囲気下において730〜980℃で焼成することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の処理方法。
- 処理後のリチウム二次電池用正極活物質中に残留する炭酸リチウムと水酸化リチウムの総量がリチウムに換算して該正極活物質の0.15wt%以下であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用正極活物質の処理方法。
- 処理後のリチウム二次電池用正極活物質のプレス前後における粒径変化率が、D50で80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のリチウム二次電池用正極活物質の処理方法。
- 処理後のリチウム二次電池用正極活物質の結晶組成が
Li(x)Ni(1-a-b)Co(a)Mn(b)O2(式中、x、a、及びbは、それぞれ0.9≦x≦1.1、0<a≦0.34、及び0<b≦0.34)で表されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のリチウム二次電池用正極活物質の処理方法。 - 請求項1の工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のリチウム二次電池用正極活物質の処理方法。
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