JP6529075B2 - 水溶性高分子粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水溶性高分子粒子に関するものであり、さらに詳しくは継粉になることなく、水、温水、または熱水に溶解させて水溶液を容易に調製することができる水溶性高分子粒子及びその製造方法に関するものである。
水溶性高分子の粉末を水などの溶媒に溶解して水溶液を調製する場合、溶解時間の短縮のため温水又は熱水に溶解させて調製する場合がある。また、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂(以下、ポリビニルアルコール系樹脂を「PVA系樹脂」と略記することがある)は、水溶性樹脂には分類されるものの、その種類の違い、例えば、ケン化度や重合度、変性の種類等の違いにより、常温の水では溶解しにくいものもある。これらの溶解しにくいPVA系樹脂については、温水または熱水を用いて溶解させることが好ましい。
しかしながら、PVA系樹脂のように、湿潤により粘着性を有し、水溶性接着剤として用いることができるような水溶性高分子では、樹脂粉末を温水や熱水に一括投入すると、温水により素早く溶解した粒子表面の粘着性で樹脂粒子同士が付着し、固まってしまう、いわゆる継粉になるという現象が生じる。
継粉を生じさせずに、水溶性高分子粉末を溶解させる方法として、例えば、特開平4−244223号公報(特許文献1)では、加温された溶媒と水溶性樹脂粒子とを連続的に分散機中に投入して半溶解状態にしたのち、溶解槽に投入することが提案されている。かかる方法によれば、樹脂粒子を1粒ずつ半溶解させて、溶解槽に投入することになるので、樹脂粒子同士が塊となることなく、溶媒中に分散され、溶解することができると説明されている(段落0005)。
また、特開2006−124661号公報(先行文献2)には、継粉を形成せずに速やかに溶解する冷水溶解性高分子(セルロース系高分子)粉粒物として、水溶性高分子粉粒物を流動させながら、界面活性剤で被覆することが提案されている。このようにして製造される高分子粉粒物は、冷水に対する速溶性に優れていることが示されている。
特開平4−244223号公報 特開2006−124661号公報
特許文献1に記載の方法では、半溶解にした後、溶解槽に投入という2段階の工程を経る必要があり、生産効率が低下する。また、撹拌や温度の制御が煩雑で、溶解性が安定しないという問題がある。
特許文献2で提案されている水溶性高分子の粉粒物は、速溶性に優れているので、水溶液の生産性という点では優れている。しかしながら、表面に界面活性剤が付着した状態の水溶性高分子粉粒物を溶解していることになるので、得られる水溶液には、界面活性剤が含有されていることになる。水溶液の用途によっては、界面活性剤の存在が、最終製品の物性に影響を及ぼす場合があるため、界面活性剤を用いない溶解方法が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶質となる水溶性高分子以外の成分を用いることなく、継粉を発生させずに素早く水溶液を調製することができる水溶性高分子粒子及びその製造方法を提供することにある。
本発明の水溶性高分子粒子は、水溶性高分子(A)の粒子を核とし、水溶性高分子(B)が前記核を被覆している水溶性高分子粒子であって、25℃の水285gに15gを配合した場合の前記水溶性高分子(A)の溶解率(Sa)が70〜100%で且つ前記水溶性高分子(B)の溶解率(Sb)が0.01〜30%であることを特徴とする。
前記水溶性高分子(A)は、湿潤により粘着性を有する水溶性高分子であることが好ましく、より好ましくは水酸基含有高分子である。
また、前記水溶性高分子(A)と前記水溶性高分子(B)は、主たる構造単位が等しいことを特徴とする水溶性高分子であることが好ましく、前記水溶性高分子(A)および前記水溶性高分子(B)は、ポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。この場合、前記水溶性高分子(A)が、ケン化度70モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂であり、且つ前記水溶性高分子(B)は、ケン化度90モル%超のポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。
前記水溶性高分子粒子の平均粒径は1〜700μmであることが好ましく、前記核の平均粒径は1〜500μmであることが好ましい。
本発明の水溶性高分子粒子の製造方法は、上記発明の水溶性高分子の製造方法であって、水溶性高分子(A)の粒子表面に、水溶性高分子(B)の水溶液を塗布する工程を含む。
本発明にいう溶解率は、25℃の水285gをプロペラ撹拌翼を用いて500rpmで撹拌しているところへ15gの水溶性高分子を徐々に投入し、1時間撹拌した後の溶解度で、溶解度の測定は、ろ過液の乾燥残量(乾燥温度:105℃、乾燥時間:3時間)により求められる。
本発明の水溶性高分子粒子は、その集合物(水溶性高分子粒子群)を、溶媒たる水、温水、熱水に一括投入しても継粉になりにくいので、水溶液の調製が容易で、且つ調製時間を短縮できる。
〔水溶性高分子粒子〕
本発明の水溶性高分子粒子は、水溶性高分子(A)の粒子を核とし、水溶性高分子(B)が前記核を被覆している水溶性高分子粒子であって、25℃の水285gに15gを配合した場合の前記水溶性高分子(A)の溶解率(Sa)が70〜100%で且つ前記水溶性高分子(B)の溶解率(Sb)が0.01〜30%である。
(1)水溶性高分子(A)の粒子
核を構成する水溶性高分子(A)(以下、「核用高分子(A)」という場合がある)としては、水に溶解することができる高分子で、天然、人工いずれでもよい。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA系樹脂等のPVA系樹脂、セルロース、澱粉、ポリビニルピロリドン、糖類、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド等があげられる。これらのうち水酸基含有高分子が、通常、湿潤により粘着性を有する傾向があることから、本発明の水溶性高分子粒子として用いることにより、継粉発生の問題を生じることなく、水溶液を調製することができ、特に有効である。
前記セルロ−スとしては、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等)等が挙げられる。
前記澱粉としては、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等);これらの澱粉を熱処理、分別処理等して得られる物理的変性澱粉(α−澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等);酵素処理により得られる酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等);化学分解して得られる化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等);架橋、化学反応処理等により得られる化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)などが挙げられる。
前記糖類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの単糖類、スクロースマルトース、ラクトースなどの二糖類、グルコース、アガロース、ペクチンなどの多糖類、オリゴ糖などが挙げられる。
前記PVA系樹脂としては、未変性PVA、変性PVA系樹脂が挙げられる。
変性PVA系樹脂としては、ビニルアルコール構造単位を供与するビニルエステル系モノマー以外のモノマーを共重合することにより合成される共重合変性PVA系樹脂であってもよいし、未変性PVAを合成した後に主鎖または側鎖を適宜化合物で変性した後変性PVA系樹脂であってもよい。
共重合変性PVA系樹脂に用いることができる共重合モノマー(不飽和単量体)としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類またはその塩、モノエステル、もしくはジアルキルエステル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩等が挙げられる。
また、共重合変性PVA系樹脂として、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂が挙げられる。かかるPVA系樹脂としては、例えば3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等を共重合して得られる側鎖1,2ジオール変性PVA系樹脂;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート等を共重合し、ケン化して得られる側鎖にヒドロキシメチル基を有するPVA系樹脂が挙げられる。
後変性PVA系樹脂の後変性の方法としては、未変性PVAあるいは上記変性PVA系樹脂をアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
核を構成する水溶性高分子(A)として用いることができる核用高分子(A)は、上記水溶性高分子のうち、25℃の水285gに15gを配合した場合の溶解率(Sa)が70%〜100%の高分子であり、好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%である。このように溶解性に優れた水溶性高分子は、湿潤により粘着性を有する傾向があり、継粉の問題が発生しやすい傾向にあるため、本発明の水溶性高分子粒子の核として用いることが有効である。かかる溶解率が低すぎる場合は、通常、継粉発生の問題が生じる傾向が低い。
ここでいう溶解率とは、25℃の水285gをプロペラ撹拌翼を用いて500rpm撹拌しているところへ水溶性高分子15gを徐々に投入し、1時間撹拌した後に測定される溶解度である。溶解度の測定は、ろ過液の乾燥残量(乾燥温度:105℃、乾燥時間3時間)により求められる。
PVA系樹脂の場合、ケン化度、重合度によって溶解率が相違する。核用高分子として用いることができるPVA系樹脂、すなわち溶解率(Sa)が70〜100%のPVA系樹脂は、ケン化度70モル%以上、好ましくは78〜95モル%、特に好ましくは85〜90モル%である。通常、PVA系樹脂は、重合度、変性の種類等により多少の相違はあるものの、ケン化度88モル%付近で最も高い溶解率を示す傾向がある。したがって、ケン化度が88%付近より高くなりすぎても、低くなりすぎても溶解性が低下する傾向がある。なお、ケン化度が90モル%以上の高ケン化度のPVA系樹脂の場合、変性種を工夫することにより、溶解率(Sa)を上記範囲内とすることが可能である。
また、核用高分子(A)として用いることができるPVA系樹脂の重合度は、通常200〜3000、好ましくは250〜2800、特に好ましくは300〜2600である。
核用高分子(A)として用いることができるPVA系樹脂の4%水溶液粘度は、通常2〜60mPa・s、好ましくは2.5〜55mPa・s、特に好ましくは3〜53mPa・sである。かかる重合度及び4%水溶液粘度が高すぎると、水に溶解しにくくなる傾向がある。低くても特に問題はないが、重合度の下限値として200程度、4%水溶液粘度の下限値としては2mPa・sである。
なお、ケン化度、重合度、及び4%水溶液粘度は、JIS K6726に準拠して測定するものである。
本発明の水溶性高分子粒子の核となる粒子は、以上のような核用高分子(A)で構成される粒子で、粒子形状は特に限定しない。球状に限らず、円柱状、ラグビーボール状、不定形状などを用いることもできる。
また、核用高分子(A)の粒子の平均粒径は、通常1μm〜500μm、好ましくは5μm〜200μm、特に好ましくは10μm〜100μmである。かかる平均粒径が小さすぎると、粒径の制御が困難となる傾向があり、大きすぎると溶解性が低下する傾向がある。
(2)水溶性高分子(B)
核を被覆する水溶性高分子(B)(以下、「被覆用高分子(B)」と称する場合がある)としては、核用高分子(A)で列挙したような高分子、すなわち未変性PVA、変性PVA系樹脂等のPVA系樹脂、セルロース、澱粉、ポリビニルピロリドン、糖類、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
ただし、被覆用高分子(B)として用いることができる水溶性高分子は、核用高分子(A)と主たる構造単位が同じであっても、25℃の水285gに15gを配合した場合の溶解率(Sb)が0.01〜30%、好ましくは0.05〜20%、特に好ましくは0.1〜10%という点で相違する。当該溶解率の測定方法は、核用高分子(A)の場合と同様である。
例えば、PVA系樹脂の場合、ケン化度90モル%超、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは97〜100モル%の高ケン化度のPVA系樹脂を、被覆用高分子(B)として使用することができる。このような高ケン化度のPVA系樹脂は、核用高分子(A)として用いられる部分ケン化PVA系樹脂と基本的に同じビニルアルコール単位で構成されているが、未ケン化部分のビニルエステル構造単位の含有割合が相違することになる。高ケン化度のPVA系樹脂は、ビニルアルコール単位で形成される結晶部分により、常温の水に対する溶解率が低い傾向にあるので、高ケン化度PVA系樹脂を溶解するには、水素結合を切断できる熱水に溶解させることが好ましい。一般に、溶媒たる水の温度が上がると溶解率も上がるため、熱水に対する溶解率が高くなりすぎると、被覆用高分子(B)の溶解が早くなり、継粉になる現象を回避できないおそれがある。PVA系樹脂の場合、ケン化度88モル%付近をピークとして、ケン化度が高くなるほど溶解率が低下していくので、ケン化度が高いほど好ましい傾向にある。
被覆用高分子(B)として用いることができるPVA系樹脂の重合度は、通常200〜3000、好ましくは250〜2800、特に好ましくは300〜2600である。
被覆用高分子(B)として用いることができるPVA系樹脂の4%水溶液粘度は、通常2〜60mPa・s、好ましくは2.5〜55mPa・s、特に好ましくは3〜53mPa・sである。かかる重合度及び4%水溶液粘度が高すぎると、水に溶解しにくくなる傾向がある。低すぎても特に問題はないが、重合度の下限値としては200程度、4%水溶液粘度の下限値として2mPa・sである。
なお、ケン化度、重合度、及び4%水溶液粘度は、JIS K6726に準拠して測定するものである。
(3)水溶性高分子粒子
本発明に係る水溶性高分子粒子は、上記水溶性高分子(A)の粒子表面を、水溶性高分子(B)で被覆したものである。
被覆状態は特に限定しない。被覆層は核用高分子(A)の粒子の表面全体を被覆していることが好ましいが、部分的に被覆されているだけでもよい。核用高分子(A)からなる粒子の表面積の60%以上が被覆されていればよく、さらに70%以上が好ましい。
被覆層の厚みは特に限定しないが、平均厚みとして、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1μmである。厚すぎると水溶性高分子粒子としての溶解性が低下する傾向があり、薄すぎると被覆用高分子(B)による被覆効果が発揮されず継粉が発生しやすくなる傾向がある。
核と被覆層の占有重量割合は、核用高分子(A)100重量部に対して、被覆用高分子(B)0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、特に好ましくは0.5〜0.1重量部である。
核用高分子(A)の占有重量割合が高すぎる(すなわち被覆用高分子(B)の占有重量割合が低すぎる)と、粉末投入からの撹拌により十分に分散させる前に、被覆用高分子(B)の溶解により核用高分子(A)が露出し、継粉が形成されやすくなる。一方、核用高分子(A)の占有重量割合が低すぎる(すなわち被覆用高分子(B)の占有重量割合が高すぎる)とコーティング処理に時間がかかりすぎ、水溶性高分子粒子の生産性が低下する傾向がある。また、被覆用高分子(B)の溶解に時間がかかるため、ひいては水溶性高分子の水溶液の調製に時間がかかり、結果として、本発明の水溶性高分子粒子としての効果が減殺される傾向にあるからである。
核用高分子(A)と被覆用高分子(B)の組み合わせは、特に限定しないが、主たる化学的構造単位が等しい高分子の組み合わせが好ましい。これにより、目的とする水溶性高分子(核用高分子(A))単独の水溶液と同等な水溶液を調製することができるからである。
主たる化学的構造単位が等しく且つ溶解率(Sa、Sb)が上記範囲で相違する水溶性高分子の組み合わせとしては、例えば、共重合モノマーの含有割合、ケン化度の相違、変性度、重合度、ブロック性、結晶化度などが相違する組み合わせが挙げられる。例えば、PVA系樹脂の場合、核用高分子(A)のケン化度が70モル%以上で、被覆用高分子(B)のケン化度が90モル%超の組み合わせが挙げられる。PVA系樹脂の主たる化学的構造単位が等しい場合(具体的には、変性の種類が等しく、変性の程度が同程度である場合)、被覆用高分子(B)のケン化度が核用高分子(A)のケン化度よりも大きくなる組み合わせを選択することが好ましい。PVA系樹脂の溶解性は、一般に、ケン化度88モル%付近をピークとして、これより低くても高くても溶解率が低下する傾向にあるからである。なお、核用高分子(A)と被覆用高分子(B)のそれぞれの溶解率(Sa、Sb)が本発明の範囲内を充足する限りは、核用高分子(A)のケン化度が被覆用高分子(B)のケン化度よりも大きくなる組み合わせは排除されない。この場合、双方の溶解率(Sa、Sb)が本発明の範囲を充足するために、例えば、変性の種類、変性の程度が相違する組み合わせが挙げられる。
被覆層は、被覆用高分子(B)のみで構成されることが好ましいが、得られる水溶液の用途物性に影響されない範囲(通常、被覆層の5%以下、好ましくは1%以下)であれば、界面活性剤、無機物、塩などのその他の成分を含有しても良い。
以上のような構成を有する水溶性高分子粒子(被覆層を有する高分子粒子)の平均粒径は、通常1〜700μm、好ましくは5〜200μm、特に好ましくは10〜100μmである。かかる平均粒径が大きすぎると溶解に時間を要し、小さすぎると被覆層が相対的に薄くなるため、溶解時に粒子同士が付着しやすくなる傾向がある。
以上のような構成を有する水溶性高分子粒子は、表面が溶解率が低い被覆用高分子(B)で被覆されているので、その集合物(粒子群)を温水や熱水に一括投入した場合であっても、表面の速溶が抑制される。よって、継粉が形成される前に、粒子群を溶媒中で分散させることができる。一括投入された水溶性高分子粒子群を、撹拌により溶媒中に分散できた状態では、被覆層の大部分が溶解して核用高分子(A)が露出した状態となっているので、核用高分子(A)の高い溶解性に基づいて、迅速に溶解し、目的とする水溶液が調製される。
(4)水溶性高分子粒子の製造方法
以上のような構成を有する水溶性高分子粒子は、核用高分子(A)の粒子表面を、被覆用高分子(B)で処理することにより製造することができる。
被覆用高分子(B)で表面を被覆する方法としては、例えば、次のようにして被覆する方法が挙げられる。例えば、a)被覆用高分子の水溶液に核用高分子の粒子を浸漬、b)被覆用高分子の水溶液を核用高分子表面に噴霧、c)核用高分子粒子表面を湿潤状態とし、かかる状態で被覆用高分子の粉末を付着させる等などにより被覆することができる。
なお、他の成分を含んだ被覆層を形成する場合、被覆用高分子の水溶液に前記他の成分を溶解させた水溶液を用いればよい。
被覆用高分子(B)の粉末としては、水溶液として用いる場合には特に限定はなく、粒径1〜1000μm、好ましくは5μm〜800μmのものを用いることができる。上記c)の方法のように、粉末のまま用いる場合には、1〜50μm、好ましくは1〜10μmの高分子粒子が用いられる。
被覆用高分子(B)の水溶液は、常温、必要に応じて加温した温水等に、被覆用高分子(B)を投入し、撹拌、必要に応じて加熱することで調製することができる。かかる水溶液の濃度は、1〜50重量%であることが好ましく、特に5〜20重量%である。かかる濃度が低すぎると、乾燥に時間がかかる傾向があり、高すぎると被覆層が厚くなり、溶解に時間がかかる傾向がある。
〔水溶性高分子の水溶液の製造方法〕
本発明の水溶性高分子粒子を用いて水溶性高分子の水溶液を製造する方法(水溶性高分子粒子の溶解方法)としては、溶媒が水、溶質が上記本発明の水溶性高分子粒子である水溶液の製造方法である。
前記水または必要に応じて加温した水に、本発明の水溶性高分子粒子の集合物(水溶性高分子粒子群)を投入することにより、溶媒たる水と溶質としての水溶性高分子粒子の集合物を混合する。
溶媒たる水の温度は、10〜100℃、特に好ましくは25〜90℃であり、核用高分子(A)、被覆用高分子(B)の溶解特性に応じて適宜選択される。
水溶性高分子粒子の投入は、一括投入でも分割投入でもよい。投入は、水を撹拌しながら行うことが好ましい。完全に溶解させるために、必要に応じて投入終了後、溶液を加熱してもよい。また、加熱しながら投入してもよい。
水溶液濃度は、水溶液の用途により異なるが、通常1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%である。
本発明の水溶性高分子粒子は、表面の被覆層の溶解率が低いので、上記のような高温の水に大量に投入されても、すぐには溶解しない。このため、撹拌により水中に分散させることができる。投入された水溶性高分子粒子群は、水中で個々の粒子に分散される間に、表層の被覆用高分子(B)が溶解する。したがって、核用高分子(A)が露出して、溶解し始める頃には、水溶性高分子粒子は個々に分散されているので、核用高分子(A)の迅速な溶解が開始されても、粒子同士が付着できない。
このように、本発明の水溶性高分子粒子を用いる水溶液の製造方法によれば、継粉を生じることがないため、迅速に溶解させることができ、水溶液を容易に製造することができる。
また、核用高分子(A)および被覆用高分子(B)として、主たる構造単位が等しい組み合わせを用いることにより、得られる水溶液は、核用高分子(A)単独の水溶液と同等であり、他の成分を実質的に含有しない水溶液を得ることができる。そのため、最終的製品の物性に及ぼす影響を小さくすることができる。
<用途>
本発明の水溶性高分子粒子を用いて調製される水溶液は、純度が高いので、使用する水溶性高分子の純度が要求される用途に好ましく用いることができる。具体的には、以下のような用途に好ましく用いられる。
・成形物用途:繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用、水溶性繊維等の成形用原料。
・接着剤用途:木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バイ
ンダー、医薬結合剤、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着剤、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤、農薬粒剤バインダー等。
・被覆剤用途:紙のクリアーコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、医薬コーティング、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、暫定塗料等。
・疎水性樹脂用ブレンド剤用途:疎水性樹脂の帯電防止剤、および親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤等。
・懸濁分散安定剤用途:塗料、墨汁、水性カラー、接着剤等の顔料分散安定剤、農薬の分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤等。
・乳化分散安定剤用途:各種アクリルモノマー、エチレン性不飽和化合物、ブタジエン性化合物の乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ビチューメン等の後乳化剤、医薬・農薬の乳化剤等。
・増粘剤用途:各種水溶液やエマルジョンや石油掘削流体の増粘剤等。
・凝集剤用途:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水性等。
・交換樹脂等の用途:イオン交換樹脂、キレート交換樹脂、イオン交換膜等。
・その他:土壌改良剤、感光剤、感光性レジスト樹脂等。
〔測定・評価方法〕
(1)溶解率
25℃の水285gをプロペラ撹拌翼を用いて500rpmで撹拌しているところへ、15gの水溶性高分子を1分間にわたって徐々に投入し、1時間撹拌した後の溶解度を溶解率とした。溶解度の測定は、ろ過液の乾燥残量(105℃で3時間乾燥)により求めた。
(2)平均粒径
レーザー回折式粒度分布計Malvern Mastersizer 3000の乾式モードにて、下記条件で測定した。
測定散乱強度設定 :0.1−15%
試料測定時間 :1秒
測定回数 :6回
空気圧 :4bar
データ処理 :体積分布
(3)速溶性
(3−1)継粉の発生の有無
80℃の熱水450gを400rpmで撹拌下、水溶性高分子粒子群50gを一括投入した後、80℃に保持したまま20分間撹拌した。このときの継粉の発生の有無を目視で確認した。
(3−2)溶解時間
80℃の熱水450gを400rpmで撹拌下、水溶性高分子粒子群50gを一括投入した後、80℃に保持したまま撹拌を続けた。目視で完全に溶解したと判断できるまでの時間を溶解時間とした。
〔水溶性高分子粒子の種類と評価〕
水溶性高分子粒子No.1:
核用高分子(A)として、未変性PVA(a)(ケン化度88モル%、重合度600、粒径70μm、溶解率100%)を用いた。
被覆用高分子(B)として、未変性PVA(b)(ケン化度98モル%、重合度500、粒径500μm、溶解率3%)を用いた。
転動流動コーティング装置(パウレック社製 MP−01)を用いて、未変性PVA(a)の粒子(平均粒径:70μm)700部に、未変性PVA(b)の3%水溶液700部(樹脂分:21部)でコーティングして、水溶性高分子粒子を得た。コーティング条件は、以下のとおりである。得られた水溶性高分子粒子の粒径は217μmであった。
コーティング条件
時間:100分
給気温度:80℃
排気温度:40℃
スプレー速度:4.5g/min(40分間)
7.5g/min(60分間)
ロータ:300min-1
水溶性高分子粒子No.2〜4:
水溶性高分子粒子No.2〜4として、粒径が70μm,570μm,250μmの被覆されていないPVA(a)の粒子を用いた。
Figure 0006529075
表1の結果から明らかなように、核用高分子(未変性PVA(a))の粒子単独(No.2〜4)では、いずれも継粉が発生し、溶解に2時間以上かかった。一方、表面を溶解率が低い被覆用高分子(未変性PVA(b))で被覆した本発明の水溶性高分子粒子No.1は、溶解時間が短く、継粉の発生もなかった。
本発明の水溶性高分子粒子は、水溶性高分子の水溶液の調製に際して、熱水に一括投入しても継粉になることなく、溶解性に優れる。そのため、水溶液調製工程を短縮できるので、工業的に有利である。

Claims (6)

  1. 水溶性高分子(A)の粒子を核とし、水溶性高分子(B)が前記核を被覆している水溶性高分子粒子であって、
    前記水溶性高分子(A)は、25℃の水285gに15gを配合した場合の溶解率(Sa)が70〜100%であるケン化度70モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂であり、
    且つ前記水溶性高分子(B)は、25℃の水285gに15gを配合した場合の溶解率(Sb)が0.01〜30%であるケン化度90モル%超のポリビニルアルコール系樹脂である
    ことを特徴とする水溶性高分子粒子。
  2. 前記水溶性高分子(A)は、湿潤により粘着性を有する水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性高分子粒子。
  3. 前記水溶性高分子(A)と前記水溶性高分子(B)は、主たる構造単位が等しい水溶性高分子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性高分子粒子。
  4. 前記水溶性高分子粒子の平均粒径は1〜700μmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の水溶性高分子粒子。
  5. 前記核の粒径は、1〜500μmである請求項1〜のいずれか1項に記載の水溶性高分子粒子。
  6. 水溶性高分子(A)の粒子表面に、水溶性高分子(B)の水溶液を塗布する工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の水溶性高分子粒子の製造方法。
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