JP6529075B2 - 水溶性高分子粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、PVA系樹脂のように、湿潤により粘着性を有し、水溶性接着剤として用いることができるような水溶性高分子では、樹脂粉末を温水や熱水に一括投入すると、温水により素早く溶解した粒子表面の粘着性で樹脂粒子同士が付着し、固まってしまう、いわゆる継粉になるという現象が生じる。
本発明の水溶性高分子粒子は、水溶性高分子(A)の粒子を核とし、水溶性高分子(B)が前記核を被覆している水溶性高分子粒子であって、25℃の水285gに15gを配合した場合の前記水溶性高分子(A)の溶解率(Sa)が70〜100%で且つ前記水溶性高分子(B)の溶解率(Sb)が0.01〜30%である。
核を構成する水溶性高分子(A)(以下、「核用高分子(A)」という場合がある)としては、水に溶解することができる高分子で、天然、人工いずれでもよい。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA系樹脂等のPVA系樹脂、セルロース、澱粉、ポリビニルピロリドン、糖類、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド等があげられる。これらのうち水酸基含有高分子が、通常、湿潤により粘着性を有する傾向があることから、本発明の水溶性高分子粒子として用いることにより、継粉発生の問題を生じることなく、水溶液を調製することができ、特に有効である。
変性PVA系樹脂としては、ビニルアルコール構造単位を供与するビニルエステル系モノマー以外のモノマーを共重合することにより合成される共重合変性PVA系樹脂であってもよいし、未変性PVAを合成した後に主鎖または側鎖を適宜化合物で変性した後変性PVA系樹脂であってもよい。
ここでいう溶解率とは、25℃の水285gをプロペラ撹拌翼を用いて500rpm撹拌しているところへ水溶性高分子15gを徐々に投入し、1時間撹拌した後に測定される溶解度である。溶解度の測定は、ろ過液の乾燥残量(乾燥温度:105℃、乾燥時間3時間)により求められる。
核用高分子(A)として用いることができるPVA系樹脂の4%水溶液粘度は、通常2〜60mPa・s、好ましくは2.5〜55mPa・s、特に好ましくは3〜53mPa・sである。かかる重合度及び4%水溶液粘度が高すぎると、水に溶解しにくくなる傾向がある。低くても特に問題はないが、重合度の下限値として200程度、4%水溶液粘度の下限値としては2mPa・sである。
なお、ケン化度、重合度、及び4%水溶液粘度は、JIS K6726に準拠して測定するものである。
また、核用高分子(A)の粒子の平均粒径は、通常1μm〜500μm、好ましくは5μm〜200μm、特に好ましくは10μm〜100μmである。かかる平均粒径が小さすぎると、粒径の制御が困難となる傾向があり、大きすぎると溶解性が低下する傾向がある。
核を被覆する水溶性高分子(B)(以下、「被覆用高分子(B)」と称する場合がある)としては、核用高分子(A)で列挙したような高分子、すなわち未変性PVA、変性PVA系樹脂等のPVA系樹脂、セルロース、澱粉、ポリビニルピロリドン、糖類、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
被覆用高分子(B)として用いることができるPVA系樹脂の4%水溶液粘度は、通常2〜60mPa・s、好ましくは2.5〜55mPa・s、特に好ましくは3〜53mPa・sである。かかる重合度及び4%水溶液粘度が高すぎると、水に溶解しにくくなる傾向がある。低すぎても特に問題はないが、重合度の下限値としては200程度、4%水溶液粘度の下限値として2mPa・sである。
なお、ケン化度、重合度、及び4%水溶液粘度は、JIS K6726に準拠して測定するものである。
本発明に係る水溶性高分子粒子は、上記水溶性高分子(A)の粒子表面を、水溶性高分子(B)で被覆したものである。
被覆状態は特に限定しない。被覆層は核用高分子(A)の粒子の表面全体を被覆していることが好ましいが、部分的に被覆されているだけでもよい。核用高分子(A)からなる粒子の表面積の60%以上が被覆されていればよく、さらに70%以上が好ましい。
核用高分子(A)の占有重量割合が高すぎる(すなわち被覆用高分子(B)の占有重量割合が低すぎる)と、粉末投入からの撹拌により十分に分散させる前に、被覆用高分子(B)の溶解により核用高分子(A)が露出し、継粉が形成されやすくなる。一方、核用高分子(A)の占有重量割合が低すぎる(すなわち被覆用高分子(B)の占有重量割合が高すぎる)とコーティング処理に時間がかかりすぎ、水溶性高分子粒子の生産性が低下する傾向がある。また、被覆用高分子(B)の溶解に時間がかかるため、ひいては水溶性高分子の水溶液の調製に時間がかかり、結果として、本発明の水溶性高分子粒子としての効果が減殺される傾向にあるからである。
主たる化学的構造単位が等しく且つ溶解率(Sa、Sb)が上記範囲で相違する水溶性高分子の組み合わせとしては、例えば、共重合モノマーの含有割合、ケン化度の相違、変性度、重合度、ブロック性、結晶化度などが相違する組み合わせが挙げられる。例えば、PVA系樹脂の場合、核用高分子(A)のケン化度が70モル%以上で、被覆用高分子(B)のケン化度が90モル%超の組み合わせが挙げられる。PVA系樹脂の主たる化学的構造単位が等しい場合(具体的には、変性の種類が等しく、変性の程度が同程度である場合)、被覆用高分子(B)のケン化度が核用高分子(A)のケン化度よりも大きくなる組み合わせを選択することが好ましい。PVA系樹脂の溶解性は、一般に、ケン化度88モル%付近をピークとして、これより低くても高くても溶解率が低下する傾向にあるからである。なお、核用高分子(A)と被覆用高分子(B)のそれぞれの溶解率(Sa、Sb)が本発明の範囲内を充足する限りは、核用高分子(A)のケン化度が被覆用高分子(B)のケン化度よりも大きくなる組み合わせは排除されない。この場合、双方の溶解率(Sa、Sb)が本発明の範囲を充足するために、例えば、変性の種類、変性の程度が相違する組み合わせが挙げられる。
以上のような構成を有する水溶性高分子粒子は、核用高分子(A)の粒子表面を、被覆用高分子(B)で処理することにより製造することができる。
なお、他の成分を含んだ被覆層を形成する場合、被覆用高分子の水溶液に前記他の成分を溶解させた水溶液を用いればよい。
本発明の水溶性高分子粒子を用いて水溶性高分子の水溶液を製造する方法(水溶性高分子粒子の溶解方法)としては、溶媒が水、溶質が上記本発明の水溶性高分子粒子である水溶液の製造方法である。
このように、本発明の水溶性高分子粒子を用いる水溶液の製造方法によれば、継粉を生じることがないため、迅速に溶解させることができ、水溶液を容易に製造することができる。
本発明の水溶性高分子粒子を用いて調製される水溶液は、純度が高いので、使用する水溶性高分子の純度が要求される用途に好ましく用いることができる。具体的には、以下のような用途に好ましく用いられる。
・接着剤用途:木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バイ
ンダー、医薬結合剤、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着剤、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤、農薬粒剤バインダー等。
・被覆剤用途:紙のクリアーコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、医薬コーティング、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、暫定塗料等。
・疎水性樹脂用ブレンド剤用途:疎水性樹脂の帯電防止剤、および親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤等。
・懸濁分散安定剤用途:塗料、墨汁、水性カラー、接着剤等の顔料分散安定剤、農薬の分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤等。
・乳化分散安定剤用途:各種アクリルモノマー、エチレン性不飽和化合物、ブタジエン性化合物の乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ビチューメン等の後乳化剤、医薬・農薬の乳化剤等。
・増粘剤用途:各種水溶液やエマルジョンや石油掘削流体の増粘剤等。
・凝集剤用途:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水性等。
・交換樹脂等の用途:イオン交換樹脂、キレート交換樹脂、イオン交換膜等。
・その他:土壌改良剤、感光剤、感光性レジスト樹脂等。
(1)溶解率
25℃の水285gをプロペラ撹拌翼を用いて500rpmで撹拌しているところへ、15gの水溶性高分子を1分間にわたって徐々に投入し、1時間撹拌した後の溶解度を溶解率とした。溶解度の測定は、ろ過液の乾燥残量(105℃で3時間乾燥)により求めた。
レーザー回折式粒度分布計Malvern Mastersizer 3000の乾式モードにて、下記条件で測定した。
測定散乱強度設定 :0.1−15%
試料測定時間 :1秒
測定回数 :6回
空気圧 :4bar
データ処理 :体積分布
(3−1)継粉の発生の有無
80℃の熱水450gを400rpmで撹拌下、水溶性高分子粒子群50gを一括投入した後、80℃に保持したまま20分間撹拌した。このときの継粉の発生の有無を目視で確認した。
80℃の熱水450gを400rpmで撹拌下、水溶性高分子粒子群50gを一括投入した後、80℃に保持したまま撹拌を続けた。目視で完全に溶解したと判断できるまでの時間を溶解時間とした。
水溶性高分子粒子No.1:
核用高分子(A)として、未変性PVA(a)(ケン化度88モル%、重合度600、粒径70μm、溶解率100%)を用いた。
被覆用高分子(B)として、未変性PVA(b)(ケン化度98モル%、重合度500、粒径500μm、溶解率3%)を用いた。
コーティング条件
時間:100分
給気温度:80℃
排気温度:40℃
スプレー速度:4.5g/min(40分間)
7.5g/min(60分間)
ロータ:300min-1
水溶性高分子粒子No.2〜4として、粒径が70μm,570μm,250μmの被覆されていないPVA(a)の粒子を用いた。
Claims (6)
- 水溶性高分子(A)の粒子を核とし、水溶性高分子(B)が前記核を被覆している水溶性高分子粒子であって、
前記水溶性高分子(A)は、25℃の水285gに15gを配合した場合の溶解率(Sa)が70〜100%であるケン化度70モル%以上のポリビニルアルコール系樹脂であり、
且つ前記水溶性高分子(B)は、25℃の水285gに15gを配合した場合の溶解率(Sb)が0.01〜30%であるケン化度90モル%超のポリビニルアルコール系樹脂である
ことを特徴とする水溶性高分子粒子。 - 前記水溶性高分子(A)は、湿潤により粘着性を有する水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性高分子粒子。
- 前記水溶性高分子(A)と前記水溶性高分子(B)は、主たる構造単位が等しい水溶性高分子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性高分子粒子。
- 前記水溶性高分子粒子の平均粒径は1〜700μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶性高分子粒子。
- 前記核の粒径は、1〜500μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の水溶性高分子粒子。
- 水溶性高分子(A)の粒子表面に、水溶性高分子(B)の水溶液を塗布する工程を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の水溶性高分子粒子の製造方法。
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