JP6527434B2 - 粘性流体の混練状態の解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粘性流体の混練状態を、コンピュータを用いて解析するための方法に関する。
近年、未加硫ゴム等の粘性を有する流体(以下、単に「粘性流体」ということがある。)の混練状態を、コンピュータを用いて解析するための方法が、種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
従来の解析方法では、例えば、コンピュータに、混練機のケーシングを有限個の要素でモデル化したケーシングモデル、ケーシング内に配置されるロータを有限個の要素でモデル化したロータモデル、及び、粘性流体を有限個の要素でモデル化した粘性流体モデルがそれぞれ入力される。そして、コンピュータが、ロータモデルを回転させたときの粘性流体モデルの流動計算が行われる。
特開2013−256026号公報
粘性流体は、混練機によって練られることによってせん断変形し発熱する。粘性流体の熱は、ケーシング及びロータとの接触によってこれらに移動し、冷却される。このため、粘性流体の混練状態を精度よく計算するには、粘性流体モデルのせん断変形による発熱量だけでなく、ロータ等への放熱量も計算する必要があるため、多くの計算時間が必要であった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、計算時間を短縮しつつ、粘性流体の混練状態を精度よく計算することができる粘性流体の混練状態の解析方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、混練空間であるチャンバーを区画するケーシングと、前記チャンバー内で回転可能に配置されたロータとを含む混練機の前記チャンバー内で混練される粘性流体の混練状態を、コンピュータを用いて解析するための方法であって、前記コンピュータに、前記ケーシングを有限個の要素でモデル化したケーシングモデルを入力する工程、前記コンピュータに、前記ケーシングモデル内に配されかつ前記ロータを有限個の要素でモデル化したロータモデルを入力する工程、前記コンピュータに、前記ケーシングモデル内に配されかつ前記粘性流体を有限個の要素でモデル化した粘性流体モデルを入力する工程、前記コンピュータに、前記粘性流体モデルの流動計算に必要な境界条件を入力する境界条件入力工程、及び前記コンピュータが、前記ロータモデルを回転させたときの前記粘性流体モデルの流動計算を行う工程を含み、前記境界条件入力工程は、前記ケーシングモデルと前記粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程と、前記ロータモデルと前記粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程と、前記粘性流体モデルに、前記粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件を設定する工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る前記粘性流体の混練状態の解析方法において、前記発熱条件を設定する工程は、前記粘性流体モデルと前記ケーシングモデルとの間、及び、前記粘性流体モデルと前記ロータモデルとの間に、それぞれ熱伝導がある場合に得られる前記粘性流体モデルの第1温度に基づいて前記発熱条件を設定するのが望ましい。
本発明に係る前記粘性流体の混練状態の解析方法において、前記発熱条件を設定する工程は、前記第1温度、並びに前記粘性流体モデルと前記ケーシングモデルとの間、及び、前記粘性流体モデルと前記ロータモデルとの間に、それぞれ熱伝導がない場合に得られる前記粘性流体モデルの第2温度に基づいて、前記発熱条件を設定するのが望ましい。
本発明に係る前記粘性流体の混練状態の解析方法において、前記発熱条件は、下記式(1)で定義されるのが望ましい。
Q=A・η・γ2 …(1)
ここで、
Q:発熱量
A:発熱調整係数で0より大かつ1より小
η:粘性流体のせん断粘度
γ:せん断速度
本発明の粘性流体の混練状態の解析方法は、コンピュータに、粘性流体モデルの流動計算に必要な境界条件を入力する境界条件入力工程、及び、コンピュータが、ロータモデルを回転させたときの粘性流体モデルの流動計算を行う工程を含んでいる。
境界条件入力工程は、ケーシングモデルと粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程と、ロータモデルと粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程と、粘性流体モデルに、粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件を設定する工程とを含んでいる。
本発明の解析方法では、上記断熱条件により、ケーシングモデル及びロータモデルへの粘性流体モデルの放熱量が計算されないため、計算時間を短縮することができる。しかも、粘性流体モデルには、粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件が設定されるため、流動計算を行う工程で得られる粘性流体モデルの温度を、ケーシングモデル及びロータモデルへの粘性流体モデルの放熱量が計算された粘性流体モデルの温度に近似させることができる。従って、本発明の解析方法では、計算時間を短縮しつつ、粘性流体の混練状態を精度よく計算することができる。
混練機の部分断面図である。 本発明の粘性流体の混練状態の解析方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。 粘性流体の混練状態の解析方法の一例を示すフローチャートである。 ケーシングモデル及びロータモデルを示す断面図である。 チャンバーモデルの斜視図である。 チャンバーモデルの断面図である。 チャンバーモデルを分解して示す断面図である。 チャンバーモデル内に粘性流体モデルと気相モデルとを混在して配置した状態を示す断面図である。 境界条件入力工程の処理手順を示すフローチャートである。 発熱条件設定工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第1境界条件入力工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第2境界条件入力工程S638の処理手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の他の実施形態の発熱条件設定工程S63の処理手順の一例を示すフローチャートである。 粘性流体モデルの温度と混練時間との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の粘性流体の混練状態の解析方法(以下、単に「解析方法」ということがある)は、混練機のチャンバー内で混練される粘性流体の混練状態を、コンピュータを用いて解析するための方法である。
ここで、「混練」とは、例えば、ゴム材料や樹脂材料の成形時の前処理として、原材料の薬品、粉体などと液状バインダを分散させながら互いに濡らし、それらを均質にする作用乃至操作として定義される。代表的な混練工程は、混練機(バンバリーミキサー)を用いて行われる。図1は、混練機の部分断面図である。
混練機1は、混練空間であるチャンバー4を区画するケーシング2と、チャンバー4内で回転可能に配置されたロータ3とを含んで構成されている。ケーシング2は、筒状に形成されている。本実施形態では、一対のロータ3、3が含まれている。各ロータ3、3には、円筒状の基部3aと、基部3aからケーシング2の内周面2iに向かってのびる少なくとも一つの翼部3bとが設けられている。また、ケーシング2及び各ロータ3、3の内部には、冷却水を循環させるための配管7が設けられている。これにより、せん断変形によって発熱した粘性流体の熱を、冷却することができる。
ケーシング2とロータ3、3との間には、混練空間であるチャンバー4が区画される。本実施形態のチャンバー4は、断面横向きの略8の字状に形成されている。なお、チャンバー4は、このような形状に限定して解釈されるものではない。
粘性流体(図示省略)としては、安定的な流動状態とみなせるものであれば特に限定されない。本実施形態の粘性流体は、架橋前のゴムや樹脂等の粘性を有する流動性材料である場合が例示される。流動状態としては、例えば、架橋前のゴムの場合、十分に練られて約80℃程度まで昇温した状態が相当する。なお、粘性流体は、可塑性を有するゴムや樹脂又はエラストマー等に限定されるものではない。
図2は、本発明の解析方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ6は、本体6a、キーボード6b、マウス6c及びディスプレイ装置6dを含んでいる。本体6aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置6a1、6a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態の解析方法を実行するためのソフトウェア等が予め入力されている。図3は、本実施形態の解析方法の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の解析方法では、先ず、コンピュータ6に、ケーシング2を有限個の要素(「セル」ということもある。)F(i)でモデル化したケーシングモデル12を入力する(工程S1)。図4は、ケーシングモデル12及びロータモデル13、13を示す断面図である。
工程S1では、従来の方法と同様に、図1に示したケーシング2の設計データ(例えば、CADデータ)に基づいて、ケーシング2の輪郭が、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素F(i)(i=1、2、…)でモデル化(離散化)される。これにより、ケーシングモデル12が定義される。
要素F(i)としては、例えば、三次元のソリッド要素が採用されている。ソリッド要素は、精度がよく、接触面の設定が容易な6面体が好ましいが、複雑な形状を表現するのに適した4面体要素でもよい。なお、これらの要素以外にも、ソフトウェアで使用可能な三次元ソリッド要素でもよい。各要素F(i)には、要素番号、節点(図示省略)の番号、及び、節点の座標値等の数値データが定義される。また、各要素F(i)は、外力が作用しても変形不能な剛性に定義される。
次に、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6に、ロータ3、3(図1に示す)を有限個の要素G(i)でモデル化したロータモデル13、13を入力する(工程S2)。
本実施形態の工程S2では、従来の方法と同様に、図1に示した各ロータ3、3の設計データ(例えば、CADデータ等)に基づいて、基部3a及び翼部3bの輪郭が、有限個の要素G(i)でモデル化(離散化)される。これにより、基部モデル13a及び翼部モデル13bをそれぞれ含む一対のロータモデル13、13が定義される。要素G(i)は、要素F(i)と同様に、変形不能な剛性が定義される。
各ロータモデル13、13は、ケーシングモデル12内に配置される。また、ロータモデル13、13は、その中心Oa、Obの周りで回転可能に定義される。
次に、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6に、チャンバー4を有限個の要素H(i)でモデル化したチャンバーモデル14を入力する(工程S3)。図5は、チャンバーモデル14の斜視図である。図6は、チャンバーモデル14の断面図である。図7は、チャンバーモデル14を分解して示す断面図である。
本実施形態の工程S3では、従来の方法と同様に、図1に示したケーシング2及びロータ3、3の設計データ(例えば、輪郭等)に基づいて、ケーシング2の内周面2iと、ケーシング2の幅方向の両端を閉じる両端面(図示省略)と、一対のロータ3、3の外周面3oとで閉じられた三次元空間(輪郭)が、有限個の要素H(i)でモデル化(離散化)される。これにより、ケーシングモデル12内に配されるチャンバーモデル14が入力される。このチャンバーモデル14は、図1に示したケーシング2の内周面2iによって規定される外周面14oと、図1に示したケーシング2の両端面によって規定される両端面14t(図5に示す)と、図1に示した一対のロータ3、3の外周面3oで規定される内周面14iとを有している。
要素H(i)は、例えば、オイラー要素が採用されている。従って、要素H(i)は、ラグランジェ要素とは異なり、そのメッシュが変形することはない。また、要素分割(離散化)は、四面体、六面体などの他、多面体セル(ポリヘドラルグリッド)といった三次元要素で行われる。そして、各要素H(i)には、後述する粘性流体モデル16又は気相モデル17について、圧力、温度及び/又は速度等の物理量が計算される。
本実施形態のチャンバーモデル14は、図7に分離させて示されるように、一対の回転可能な回転部14A、14Bと、一対の回転部14A、14B間を継ぎ、かつ、これらが収容される外枠部14Cとの3つの部分に分けて構成される。
回転部14A、14Bは、各々、円形の外周面14Ao、14Boと、ロータモデル13、13の外周面13oに等しい内周面14iを有する筒状に設定されている。回転部14A、14Bは、各々、外枠部14Cの内部に填め込まれる。また、回転部14A、14Bは、ロータモデル13、13とともに、中心Oa、Obの周りで回転可能に定義される。
外枠部14Cは、回転部14A、14Bを囲む筒状をなし、その軸方向両端は、前記両端面14t(図5に示す)によって閉じられている。外枠部14Cは、各回転部14A、14Bと接触する凹円弧面14Coを有している。外枠部14Cの凹円弧面14Coと回転部14A、14Bの外周面14Ao、14Boとは、スライディングサーフェース等の境界条件が定義される。
次に、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6に、粘性流体を有限個の要素でモデル化した粘性流体モデル16を入力する(工程S4)。図8は、チャンバーモデル14内に粘性流体モデル16と気相モデル17とを混在して配置した状態を示す断面図である。図8では、粘性流体モデル16を着色して表示している。また、図8では、ケーシングモデル12及びロータモデル13、13を簡略化して表示している。
粘性流体モデル16は、図1に示したチャンバー4内を流動する粘性流体をモデル化したものである。本実施形態の粘性流体モデル16は、図6に示されるように、オイラー要素が採用されたチャンバーモデル14の有限個の要素H(i)で定義される。チャンバーモデル14の要素H(i)には、粘性流体の物性(例えば、せん断粘度、比熱、熱伝導率及び比重等)が定義される。これにより、粘性流体モデル16がモデル化され、図4に示されるように、ケーシングモデル12内に配される(定義される)。
せん断粘度は、例えば、解析対象となる粘性流体から粘弾性特性(G'及びG”)が複数の温度条件で測定され、Cox-Merz則などを用いてせん断粘度に変換することで得られる。このようにして得られたせん断粘度ηは、例えば下記式(3)のべき乗法則で近似される。
η=mγ'n-1 …(3)
ここで、mは係数、γ'はせん断速度、nは係数である。
比熱は、解析対象の粘性流体から、例えば断熱型連続法(@25℃)にて測定される。さらに、熱伝導率は、解析対象の粘性流体から、例えば熱線法(@25℃)にて測定される。これらの比熱及び熱伝導率は、コンピュータ6に入力される。
次に、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6に、図1に示したチャンバー4内に存在する空気を、有限個の要素でモデル化した気相モデル17を入力する(工程S5)。本実施形態の気相モデル17は、粘性流体モデル16と同様に、図6に示されるように、オイラー要素が採用されたチャンバーモデル14の有限個の要素H(i)によって定義される。チャンバーモデル14の要素H(i)には、空気の粘度、及び、比重といった物性が定義される。これにより、気相モデル17がモデル化され、図4に示されるように、ケーシングモデル12内に配される(定義される)。また、チャンバーモデル14には、後述の境界条件入力工程S6において、気相モデル17の充填率が設定される。
次に、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6に、粘性流体モデル16の流動計算に必要な境界条件を入力する(境界条件入力工程S6)。図9は、本実施形態の境界条件入力工程S6の処理手順を示すフローチャートである。
本実施形態の境界条件入力工程S6では、先ず、ケーシングモデル12(図4に示す)と粘性流体モデル16(図8に示す)との間に、断熱条件を設定する(工程S61)。断熱条件は、後述する流動計算において、粘性流体モデル16の熱を、ケーシングモデル12側に移動させない(逃がさない)ための条件である。このような断熱条件は、従来の方法と同様の手順に基づいて設定され、コンピュータ6に入力される。
次に、本実施形態の境界条件入力工程S6では、図8に示したロータモデル13、13と粘性流体モデル16との間に、断熱条件を設定する(工程S62)。断熱条件は、後述する流動計算において、粘性流体モデル16の熱を、ロータモデル13、13側に移動させない(逃がさない)ための条件である。このような断熱条件は、従来の方法と同様の手順に基づいて設定され、コンピュータ6に入力される。
次に、本実施形態の境界条件入力工程S6では、粘性流体モデル16(図8に示す)に、粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件を設定する(発熱条件設定工程S63)。本実施形態の発熱条件は、下記式(1)で定義される。
Q=A・η・γ2 …(1)
ここで、
Q:発熱量
A:発熱調整係数
η:粘性流体のせん断粘度
γ:せん断速度
粘性流体の発熱量は、粘性流体のせん断粘度ηに、せん断速度γの二乗した値を乗じることによって求められる。この粘性流体の発熱量(η・γ2)に、発熱調整係数Aを乗じていることにより、本実施形態の発熱量Qが定義される。発熱調整係数Aには、0より大かつ1より小の値が設定される。これにより、実際の粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件を、粘性流体モデル16(図8に示す)に設定することができる。
次に、本実施形態の境界条件入力工程S6では、流速境界条件を設定する(工程S64)。流速境界条件としては、従来の方法と同様に、シミュレーションの用途や精度等に応じて、壁面ノースリップ条件、又は、壁面スリップ条件のいずれかが採用される。本実施形態では、壁面スリップ条件が採用される。
次に、本実施形態の境界条件入力工程S6では、流動計算の初期条件を設定する(工程S65)。初期条件には、従来の方法と同様に、図8に示した粘性流体モデル16の初期温度、図4に示したロータモデル13、13の回転数(チャンバーモデル14の回転部14A、14Bの回転数)、チャンバーモデル14の外周面14oのスリップ率、チャンバーモデル14の容積に対する粘性流体モデル16及び気相モデル17の充填率が含まれる。
さらに、初期条件には、流動計算の初期状態、タイムステップ、内部処理でのイタレーションの反復回数、及び、計算終了時刻が含まれる。流動計算の初期状態は、例えば、図8に示されるように、粘性流体モデル16及び気相モデル17の充填率に基づいて、チャンバーモデル14を横切る水平な境界面Sを基準として、それよりも上部を気相モデル17の領域Arとし、それよりも下部を粘性流体モデル16の領域Mfとして混在配置される。
次に、図3に示されるように、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6が、図8に示したロータモデル13、13を回転させたときの粘性流体モデル16の流動計算を行う(工程S7)。流動計算には、例えば、汎用の流体解析ソフトウェアが用いられる。
流動計算では、粘性流体モデル16の運動状態を特定する3方向(X,Y,Z)の速度成分、粘性流体モデル16の内部状態を特定する未知量である圧力p及び温度Tが計算される。これらの物理量は、一対のロータモデル13、13の回転開始から予め定められた時間まで継続して計算される。また、本実施形態では、非圧縮性流れの場合のナビエストークス方程式とし、気相モデル及び材料モデルの各密度は、一定として取り扱われる。
本実施形態の流動計算において、粘性流体モデル16は、全温度領域で流体として扱われる。このため、流体の方程式(ナビエストークス方程式、質量保存式、エネルギー方程式の連立)を解くことになる。
本実施形態の流動計算では、図8に示されるように、粘性流体モデル16と気相モデル17とが混在するため、2つの流体を一度に扱う必要がある。本実施形態では、自由界面の流れの計算で用いられるVOF(Volume of Fluid)法が用いられる。VOF法では、2つの流体の界面の移動を直接計算するのではなく、粘性流体モデル16の充填率である体積分率を定義して、自由界面が表現される。なお、支配方程式、及び、流動計算の処理手順については、上記特許文献1に記載されるとおりである。
本実施形態の流動計算を行う工程S7では、図8に示したケーシングモデル12と粘性流体モデル16との間の断熱条件、及び、ロータモデル13、13と粘性流体モデル16との間の断熱条件により、ケーシングモデル12及びロータモデル13、13への粘性流体モデル16の放熱量が計算されない。このため、本実施形態の解析方法では、流動計算の計算時間を短縮することができる。
しかも、粘性流体モデル16には、粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件(上記式(1)で定義)が設定されている。このため、流動計算を行う工程S7では、粘性流体モデル16の温度を、ケーシングモデル12及びロータモデル13、13への粘性流体モデル16の放熱量が計算される粘性流体モデル16の温度(実際の混練機1(図1に示す)で練られた粘性流体の温度)に近似させることができる。従って、本発明の解析方法では、計算時間を短縮しつつ、粘性流体の混練状態を精度よく計算することができる。
次に、図3に示されるように、本実施形態の解析方法では、コンピュータ6が、粘性流体モデル16の混練状態が、良好か否かを判断する(工程S8)。工程S8では、例えば、工程S7の流動計算によって得られた粘性流体モデル16(図8に示す)の温度、粘性流体モデル16の流量、又は、せん断力等に基づいて、粘性流体モデル16の混練状態が、良好か否かが判断される。
工程S8において、粘性流体モデル16の混練状態が良好であると判断された場合(工程S8で、「Y」)、本実施形態の解析方法の一連の処理が終了する。他方、粘性流体モデル16の混練状態が良好でないと判断された場合(工程S8で、「N」)、粘性流体モデル16の物性、又は、混練機1の設計因子を変更して(工程S9)、工程S1〜工程S8が再度実施される。これにより、本実施形態の解析方法では、混練状態が良好な粘性流体、又は、混練機1を確実に設計することができる。
上記式(1)において、発熱調整係数Aは、0より大かつ1より小の値であれば、適宜設定することができる。しかしながら、技術者の経験や勘によって、発熱調整係数Aが設定された場合、流動計算を行う工程S8で計算される粘性流体モデル16(図8に示す)の温度を、ケーシングモデル12及びロータモデル13、13への粘性流体モデル16の放熱が計算されて得られる粘性流体モデル16の温度に、十分に近似できないおそれがある。
このため、発熱条件設定工程S63では、図8に示した粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間に、それぞれ熱伝導(伝熱)がある場合に得られる粘性流体モデル16の第1温度に基づいて、発熱条件が設定されるのが望ましい。
この実施形態では、図8に示した粘性流体モデル16の第1温度、並びに、粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間に、それぞれ熱伝導がない場合に得られる粘性流体モデル16の第2温度に基づいて、発熱条件が設定される。図10は、発熱条件設定工程S63の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の発熱条件設定工程S63は、先ず、コンピュータ6に、ケーシング2(図1に示す)をモデル化したケーシングモデル12(図4に示す)を入力し(工程S631)、ロータ3、3(図1に示す)をモデル化したロータモデル13、13(図4に示す)を入力する(工程S632)。工程S631及び工程S632の処理手順は、図3に示した工程S1及び工程S2の処理手順に基づいて実施される。本実施形態では、発熱条件設定工程S63で設定されるケーシングモデル12及びロータモデル13、13を、工程S1及び工程S2で設定されるケーシングモデル12及びロータモデル13、13とは独立して入力している。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6に、チャンバー4(図1に示す)をモデル化したチャンバーモデル14(図6に示す)を入力し(工程S633)、粘性流体をモデル化した粘性流体モデル16(図8に示す)を入力し(工程S634)、チャンバー4内に存在する空気をモデル化した気相モデル17(図8に示す)を入力する(工程S635)。工程S633、工程S634及び工程S635の処理手順は、図3に示した工程S3、工程S4及び工程S5の処理手順に基づいて実施される。本実施形態では、発熱条件設定工程S63で設定されるチャンバーモデル14、粘性流体モデル16及び気相モデル17は、工程S3、工程S4及び工程S5で設定されるチャンバーモデル14、粘性流体モデル16及び気相モデル17とは独立して入力される。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、粘性流体モデル16(図8に示す)の第1温度を計算するために必要な境界条件を入力する(第1境界条件入力工程S636)。図11は、この実施形態の第1境界条件入力工程S636の処理手順の一例を示すフローチャートである。
この実施形態の第1境界条件入力工程S636では、先ず、図8に示したケーシングモデル12と粘性流体モデル16との間に熱伝導率を設定する(工程S651)。工程S651で設定される熱伝導率は、後述する流動計算(工程S637(図10に示す))において、粘性流体モデル16の熱を、ケーシングモデル12側に移動させる(逃がす)ためのものである。この実施形態では、図1に示したケーシング2の材質に基づいて、熱伝導率が決定される。熱伝導率は、コンピュータ6に入力される。
次に、この実施形態の第1境界条件入力工程S636では、図8に示したロータモデル13、13と粘性流体モデル16との間に熱伝導率を設定する(工程S652)。工程S652で設定される熱伝導率は、後述する流動計算(工程S637(図10に示す))において、粘性流体モデル16の熱を、ロータモデル13、13側に移動させる(逃がす)ためのものである。この実施形態では、図1に示したロータ3、3の材質に基づいて、熱伝導率が決定される。熱伝導率は、コンピュータ6に入力される。
次に、この実施形態の第1境界条件入力工程S636では、粘性流体モデル16(図8に示す)に発熱条件を設定する(工程S653)。本実施形態の発熱条件は、下記式(2)で定義される。これにより、粘性流体モデル16に、実際の粘性流体と同様に発熱する発熱条件が設定されうる。
Q=η・γ2 …(2)
ここで、
Q:発熱量
η:粘性流体のせん断粘度
γ:せん断速度
次に、この実施形態の第1境界条件入力工程S636では、流速境界条件を設定し(工程S654)、流動計算の初期条件を設定する(工程S655)。工程S654及び工程S655の処理手順については、図9に示した境界条件入力工程S6の工程S64及び工程S65の処理手順と同一である。
次に、図10に示されるように、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6が、粘性流体モデル16(図8に示す)の第1温度を計算する(工程S637)。工程S637では、第1境界条件入力工程S636で設定された境界条件に基づいて、ロータモデル13、13を回転させたときの粘性流体モデル16の流動計算を行う。流動計算は、図3に示した解析方法の流動計算を行う工程S7と同一の処理手順に基づいて計算される。
工程S637では、粘性流体と同様に発熱する発熱条件に基づいて、粘性流体モデル16の発熱量が計算される。さらに、工程S637では、図8に示した粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間の熱伝導率、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間の熱伝導に基づいて、ケーシングモデル12及びロータモデル13、13への粘性流体モデル16の放熱量が計算される。
そして、工程S637では、粘性流体モデル16の発熱量から放熱量が減じられることにより、粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間に、熱伝導(伝熱)がある場合に得られる粘性流体モデル16の第1温度が計算される。この第1温度は、実際の混練機1(図1に示す)で練られた粘性流体の温度に近似する。第1温度は、一対のロータモデル13、13の回転開始から予め定められた時間まで継続して計算される。第1温度は、コンピュータ6に入力される。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6に、粘性流体モデル16の第2温度を計算するために必要な境界条件を入力する(第2境界条件入力工程S638)。上述したように、粘性流体モデル16の第2温度は、粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間に、それぞれ熱伝導がない場合に得られるものである。図12は、この実施形態の第2境界条件入力工程S638の処理手順の一例を示すフローチャートである。
この実施形態の第2境界条件入力工程S638では、先ず、図8に示したケーシングモデル12と粘性流体モデル16との間に、断熱条件を設定し(工程S661)、ロータモデル13、13と粘性流体モデル16との間に、断熱条件を設定する(工程S662)。工程S661及び工程S662は、図9に示した境界条件入力工程S6の工程S61及び工程S62と同一の処理手順に基づいて設定される。
次に、第2境界条件入力工程S638では、粘性流体モデル16(図8に示す)に、発熱条件を設定する(工程S663)。この実施形態の発熱条件は、上記式(1)に基づいて定義される。工程S663において、発熱調整係数Aには、「1」が設定される。これにより、粘性流体モデル16には、上記式(2)と同様の発熱条件が設定されうる。
次に、この実施形態の第2境界条件入力工程S638では、流速境界条件を設定し(工程S664)、流動計算の初期条件を設定する(工程S665)。工程S664及び工程S665の処理手順については、図9に示した境界条件入力工程S6の工程S64及び工程S65の処理手順と同一である。
次に、図10に示されるように、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6が、粘性流体モデル16(図8に示す)の第2温度を計算する(工程S639)。工程S639では、第2境界条件入力工程S638で設定された境界条件に基づいて、図8に示したロータモデル13、13を回転させたときの粘性流体モデル16の流動計算を行う。工程S639は、図3に示した解析方法の流動計算を行う工程S7と同一の処理手順に基づいて計算される。従って、工程S639では、図8に示した粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間に、それぞれ熱伝導(伝熱)がない場合に得られる(即ち、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された)粘性流体モデル16の第2温度が計算される。
上述したように、図8に示した粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間には、断熱条件が設定されている。このため、工程S639では、上記式(1)の発熱調整係数Aに「1」が設定される場合、熱伝導(伝熱)がある場合に得られる粘性流体モデル16の第1温度よりも高い第2温度が計算される。第2温度は、コンピュータ6に入力される。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6が、粘性流体モデル16の第1温度と、粘性流体モデル16の第2温度との差が、許容範囲内か否かを判断する(工程S640)。粘性流体モデル16の第1温度と、粘性流体モデル16の第2温度との差が、許容範囲内であると判断された場合(工程S640で、「Y」)、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された粘性流体モデル16の第2温度が、熱伝導(伝熱)がある場合に得られる粘性流体モデル16の第1温度に近似している。従って、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて、本実施形態の解析方法(図3に示す)で用いられる粘性流体モデル16に、発熱条件が設定される(工程S641)。
他方、粘性流体モデル16の第1温度と、粘性流体モデル16の第2温度との差が、許容範囲内ではないと判断された場合(工程S640で、「N」)、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された粘性流体モデル16の第2温度が、熱伝導(伝熱)がある場合に得られる粘性流体モデル16の第1温度に近似していない。従って、発熱調整係数Aが変更され(工程S642)、工程S639及び工程S640が再度実施される。
このように、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、粘性流体モデル16の第1温度と、粘性流体モデル16の第2温度とが近似するまで、発熱調整係数Aの値が変更される。このため、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、図4に示したケーシングモデル12及びロータモデル13、13への放熱(伝熱)が実際に計算された場合に得られる粘性流体モデル16の温度に近似しうる上記式(1)の発熱調整係数Aを、確実に設定することができる。
なお、第1温度と第2温度との差の許容範囲としては、求められる計算精度に応じて、適宜設定することができる。なお、第1温度及び第2温度との差の許容範囲は、例えば、0.1〜5.0℃に設定されるのが望ましい。
工程S642において、発熱調整係数Aの値は、0より大かつ1より小の範囲で適宜変更される。例えば、第2温度が第1温度よりも大きい場合、発熱調整係数Aを小さくして、第2温度を小さくしている。また、第2温度が第1温度よりも小さい場合、発熱調整係数Aを大きくして、第2温度を大きくしている。これにより、図4に示したケーシングモデル12及びロータモデル13、13への放熱(伝熱)が実際に計算された場合に得られる粘性流体モデル16(図8に示す)の温度に近似させうる発熱調整係数Aを、早期に設定することができる。
なお、流動計算の境界条件(例えば、ロータモデル13、13の回転数等)が変更されたとしても、図8に示した粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間の熱伝導率、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間の熱伝導は変化しない。このため、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて設定された発熱条件は、流動計算の境界条件(例えば、ロータモデル13、13の回転数等)を変更した各流動計算において、そのまま使用できる。従って、この実施形態の解析方法では、各境界条件に基づく流動計算において、ロータモデル13、13等への放熱量を計算する必要がないため、計算時間を短縮することができる
ところで、粘性流体モデル16の第1温度は、コンピュータ6によるシミュレーションによって計算されるため、例えば、図6に示した粘性流体モデル16等の要素H(i)の大きさの相違や、単位時間の大きさの相違によってバラつく場合がある。従って、粘性流体モデル16の第1温度を、混練状態の粘性流体の温度に十分に近似させることが難しい。
このため、発熱条件設定工程S63では、図1に示した混練機1によって練られた粘性流体の第3温度に基づいて、発熱条件が設定されるのが望ましい。この実施形態では、第3温度と、図8に示した粘性流体モデル16の第2温度(即ち、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された温度)とに基づいて、発熱条件が設定される。図13は、本発明の他の実施形態の発熱条件設定工程S63の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の発熱条件設定工程S63は、先ず、混練機1によって練られた粘性流体の第3温度が測定される(工程S643)。工程S643は、先ず、図1に示した混練機1のチャンバー4に、粘性流体を投入する。次に、工程S643は、一対のロータ3、3を回転させる。これにより、粘性流体が混練される。そして、混練された粘性流体の温度が測定される。なお、粘性流体の温度は、例えば、チャンバー4内に配置された温度計によって測定される。また、粘性流体の温度は、一対のロータ3、3の回転開始から予め定められた時間まで継続して測定される。この粘性流体の温度は、第3温度としてコンピュータ6に入力される。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63は、図10に示した前実施形態の発熱条件設定工程S63と同様に、コンピュータ6に、ケーシング2(図1に示す)をモデル化したケーシングモデル12(図4に示す)を入力し(工程S631)、ロータ3、3(図1に示す)をモデル化したロータモデル13、13(図4に示す)を入力する(工程S632)。さらに、コンピュータ6に、チャンバー4(図1に示す)をモデル化したチャンバーモデル14(図8に示す)を入力し(工程S633)、粘性流体をモデル化した粘性流体モデル16(図8に示す)を入力し(工程S634)、チャンバー4内に存在する空気をモデル化した気相モデル17(図8に示す)を入力する(工程S635)。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6に、図8に示した粘性流体モデル16の第2温度を計算するために必要な境界条件を入力する(第2境界条件入力工程S638)。なお、第2境界条件入力工程S638は、図12に示した前実施形態の第2境界条件入力工程S638と同様の処理手順で実施される。
即ち、第2境界条件入力工程S638は、図8に示したケーシングモデル12と粘性流体モデル16との間に断熱条件を設定し(工程S661)、ロータモデル13、13と粘性流体モデル16との間に断熱条件を設定する(工程S662)。また、第2境界条件入力工程S638は、発熱調整係数Aに「1」が設定された上記式(1)に基づいて、粘性流体モデル16に発熱条件を設定する(工程S663)。これにより、粘性流体モデル16には、上記式(2)と同様の発熱条件が設定されうる。さらに、この実施形態の第2境界条件入力工程S638では、流速境界条件を設定し(工程S664)、流動計算の初期条件を設定する(工程S665)。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6が、図8に示した粘性流体モデル16の第2温度を計算する(工程S639)。これにより、粘性流体モデル16とケーシングモデル12との間、及び、粘性流体モデル16とロータモデル13、13との間に、それぞれ熱伝導(伝熱)がない場合に得られる(即ち、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された)粘性流体モデル16の第2温度が計算される。第2温度は、コンピュータ6に入力される。
次に、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、コンピュータ6が、粘性流体の第3温度と、粘性流体モデル16の第2温度との差が、許容範囲内か否かを判断する(工程S644)。この実施形態の許容範囲については、前実施形態と同様の許容範囲に設定される。
工程S644において、粘性流体の第3温度と、粘性流体モデル16の第2温度との差が、許容範囲内であると判断された場合(工程S644で、「Y」)、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された粘性流体モデル16の第2温度が、粘性流体の第3温度に近似している。従って、発熱調整係数Aに基づいて、本実施形態の解析方法(図3に示す)で用いられる粘性流体モデル16に、発熱条件が設定される(工程S645)。
他方、粘性流体の第1温度と、粘性流体モデル16の第2温度との差が、許容範囲内ではないと判断された場合(工程S640で、「N」)、上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算された粘性流体モデル16の第2温度が、粘性流体の第3温度に近似していない。従って、発熱調整係数Aが変更され(工程S642)、工程S639、及び、工程S644が再度実施される。これにより、この実施形態の発熱条件設定工程S63では、粘性流体の第3温度と、粘性流体モデル16の第2温度とが近似するまで、発熱調整係数Aの値が変更されるため、図1に示した混練機1によって練られた実際の粘性流体の温度に近似しうる発熱調整係数Aを、確実に設定することができる。
これまでの実施形態では、図8に示した気相モデル17が入力される態様が示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、ケーシングモデル12内に粘性流体モデル16が100%配されるものが定義されてもよい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図3及び図9に示した処理手順に従って、粘性流体モデルに発熱条件が設定され、粘性流体モデルの温度が計算された(実施例)。実施例では、図10〜図12の処理手順に従って、粘性流体モデルとケーシングモデルとの間、及び、粘性流体モデルとロータモデルとの間に、それぞれ熱伝導がある場合に得られる粘性流体モデルの第1温度が計算された。さらに、実施例では、粘性流体モデルとケーシングモデルとの間、及び、粘性流体モデルとロータモデルとの間に、それぞれ熱伝導がない場合に得られる(上記式(1)及び発熱調整係数Aに基づいて計算される)粘性流体モデルの第2温度が計算された。
そして、実施例では、粘性流体モデルの第1温度及び第2温度に基づいて、上記式(1)の発熱条件が設定された。計算の結果、発熱調整係数Aが0.5であった。なお、回転数30rpmの流動計算の結果としては、第1温度が採用された。第1温度及び第2温度を計算するための流動計算の主な条件は、次のとおりである。
ロータモデルの回転数:30rpm
単位時間(タイムステップ): 1.973×10−3
粘性流体モデルの充填率:70%
混練時間:20秒
次に、実施例では、ケーシングモデルと粘性流体モデルとの間、及び、ロータモデルと粘性流体モデルとの間に断熱条件を設定し、上記発熱調整係数A(本例では、0.5)が定義された発熱条件に基づいて、ロータモデルを40rpm及び50rpmで回転させたときの粘性流体モデルの流動計算が行われた。なお、流動計算の主な条件は、回転数を除いて上記のとおりである。
また、比較のために、粘性流体モデルとケーシングモデルとの間の熱伝導率、及び、粘性流体モデルとロータモデルとの間の熱伝導率を設定して、ロータモデルを、30rpm、40rpm及び50rpmで回転させたときの粘性流体モデルの流動計算が行われた。なお、流動計算の主な条件は、回転数を除いて上記のとおりである。
図14は、粘性流体モデルの温度と混練時間との関係を示すグラフである。図14のグラフでは、ロータモデルの回転数50rpmのときの粘性流体モデルの温度が示されている。テストの結果、実施例は、ケーシングモデル及びロータモデルへの粘性流体モデルの放熱量を計算しなくても、粘性流体モデルの放熱量を計算する比較例に、粘性流体モデルの温度を近似させることができた。
また、実施例及び比較例の計算時間は、次のとおりである。実施例では、発熱調整係数Aの定義に15時間の計算時間を要したが、回転数40rpm、50rpmにおいて、ケーシングモデル及びロータモデルへの粘性流体モデルの放熱量を計算することなく、粘性流体モデルの温度を精度良く計算することができた。このため、実施例は、比較例に比べて、計算時間を短縮しつつ、粘性流体の混練状態を精度よく計算することができた。なお、実施例は、流動計算の境界条件(例えば、ロータモデルの回転数等)が異なる流動計算が多いほど、計算時間を大幅に短縮できることが確認できた。
実施例の合計計算時間:25時間
回転数30rpm(第1温度の計算(熱伝導率設定)):10時間
回転数30rpm(第2温度の計算(断熱条件設定)):5時間
回転数40rpm(断熱条件設定):5時間
回転数50rpm(断熱条件設定):5時間
比較例の合計計算時間:30時間
回転数30rpm(熱伝導率設定):10時間
回転数40rpm(熱伝導率設定):10時間
回転数50rpm(熱伝導率設定):10時間
S61 ケーシングモデルと粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程
S62 ロータモデルと粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程
S63 粘性流体モデルに、粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件を設定する工程

Claims (4)

  1. 混練空間であるチャンバーを区画するケーシングと、前記チャンバー内で回転可能に配置されたロータとを含む混練機の前記チャンバー内で混練される粘性流体の混練状態を、コンピュータを用いて解析するための方法であって、
    前記コンピュータに、前記ケーシングを有限個の要素でモデル化したケーシングモデルを入力する工程、
    前記コンピュータに、前記ケーシングモデル内に配されかつ前記ロータを有限個の要素でモデル化したロータモデルを入力する工程、
    前記コンピュータに、前記ケーシングモデル内に配されかつ前記粘性流体を有限個の要素でモデル化した粘性流体モデルを入力する工程、
    前記コンピュータに、前記粘性流体モデルの流動計算に必要な境界条件を入力する境界条件入力工程、及び
    前記コンピュータが、前記ロータモデルを回転させたときの前記粘性流体モデルの流動計算を行う工程を含み、
    前記境界条件入力工程は、
    前記ケーシングモデルと前記粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程と、
    前記ロータモデルと前記粘性流体モデルとの間に、断熱条件を設定する工程と、
    前記粘性流体モデルに、前記粘性流体よりも発熱が小さい発熱条件を設定する工程とを含むことを特徴とする粘性流体の混練状態の解析方法。
  2. 前記発熱条件を設定する工程は、前記粘性流体モデルと前記ケーシングモデルとの間、及び、前記粘性流体モデルと前記ロータモデルとの間に、それぞれ熱伝導がある場合に得られる前記粘性流体モデルの第1温度に基づいて前記発熱条件を設定する請求項1記載の粘性流体の混練状態の解析方法。
  3. 前記発熱条件を設定する工程は、前記第1温度、並びに
    前記粘性流体モデルと前記ケーシングモデルとの間、及び、前記粘性流体モデルと前記ロータモデルとの間に、それぞれ熱伝導がない場合に得られる前記粘性流体モデルの第2温度に基づいて、前記発熱条件を設定する請求項2記載の粘性流体の混練状態の解析方法。
  4. 前記発熱条件は、下記式(1)で定義される請求項1乃至3のいずれかに記載の粘性流体の混練状態の解析方法。
    Q=A・η・γ2 …(1)
    ここで、
    Q:発熱量
    A:発熱調整係数で0より大かつ1より小
    η:粘性流体のせん断粘度
    γ:せん断速度
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