本発明は、硝酸及び酸素を用いるジアルキルジスルフィドからのアルカンスルホン酸の製造方法に関する。
アルカンスルホン酸は、ヒドロキシル基と有機基との交換において構造的に異なる、硫酸の有機誘導体である。従って、アルカンスルホン酸の一般構造式はR−SO3−Hであり、ここで、Rは、例えば、アルキル基又はアリール基などの有機基を表す。この有機基に応じて、脂肪族、芳香族又は複素環式スルホン酸の間に区別が行われる。遊離スルホン酸は、一般に、その酸強度が無機酸のものに相当する無色で吸湿性の物質である。実際、−5.5のpKaを有する、トリフルオロメタンスルホン酸は、最強の既知の酸の一つであり、従って、超酸として知られている群に属している。水銀、鉛及び銀の硫酸塩とは対照的に、対応するスルホン酸塩は水に非常に良好な溶解性を有している。
アルカンスルホン酸の最も単純な代表例は、一般的に、methane sulfonic acidのように、その名称に基づいて、MSAとも略記されるメタンスルホン酸である。同時に、使用に関する多様な可能性のおかげで、メタンスルホン酸は、経済的に最も重要なアルカンスルホン酸でもある。例えば、メタンスルホン酸は、例えば、アルキル化、エステル化、重合又は複素環の合成などの有機反応の様々な溶媒及び触媒として作用する。別の適用分野は、ヒトの医学におけるメタンスルホン酸による塩基性医薬品の酸付加塩の形成である。また、この酸に色や臭いがないことで、メタンスルホン酸を洗浄溶液に容易に導入することができるため、洗浄製品の構成成分としての使用がますます見出されている。工業的観点から、最も重要なのは、メタンスルホン酸の金属塩であり、これは特にエレクトロニクス産業用の回路基板の製造のための、メタンスルホン酸電気めっき浴における電解質としての使用を見出す。メタンスルホン酸について別の新しい適用分野は、石油掘削の分野である:ボーリング穴によって利用される石油含有層は、多くの場合、限られた範囲でのみオイルを放出するか又は全く放出しない。従って、オイルの放出強化のために、油含有岩層は、メタンスルホン酸を使用して軟化される。
工業規模では、アルカンスルホン酸は、アルキルメルカプタン及び/又はジアルキルジスルフィド又はジアルキルポリスルフィドの酸化によって製造されている。
WO98/34914号は、対応するアルカンスルホン酸を得るための、分子臭素によるアルキルメルカプタン及び/又はジアルキルジスルフィドの酸化方法を開示している。この方法では、分子臭素を得るために、臭化水素が最初に、触媒量の硝酸の存在下で酸素により又は酸化剤としての硝酸により酸化されている。この反応で形成する窒素酸化物は、硝酸を得るために酸素と水で再生されており、これは臭化水素の分子臭素への酸化の処理工程に戻される。その後、このようにして得られた分子臭素を使用して、メルカプタン及び/又はジアルキルジスルフィドを、対応するアルカン酸に酸化する。分子臭素の使用の結果として、WO98/34914号の方法によって製造されたアルカンスルホン酸は、常に、ハロゲンを含有しているので、回路基板の製造における使用に適していない。その用途では、実際に、ハロゲンの存在は根本的に回避されなければならない。
また、アルキルメルカプタン又はジアルキルジスルフィドからアルカンスルホン酸を製造するための酸化剤として過酸化水素を使用することが知られている。しかしながら、この反応は、カルボン酸が存在する場合のみ問題なく行われる。従って、カルボン酸及び過酸化水素から形成される過カルボン酸が、実際の活性な酸化剤を構成していると考えられる。特に不利であるのは、このプロセスが、アルカンスルホン酸とカルボン酸及び過カルボン酸との混合物をもたらし、これによりアルカンスルホン酸を、しばしば困難を伴って純粋な形でしか分離できないことである。従って、アルカンスルホン酸のコスト及びエネルギー消費の回復が必要であり、これはこのプロセスを経済的に魅力のないものにする。更なるコストドライバは、かなり高価な酸化剤である過酸化水素の使用である。別の欠点は、1モルの水が1モルの反応した過酸化水素毎に形成されるので、かなりの量の水が形成されることである。しかしながら、この反応の副生物は再び酸化剤に変換するはずがないが、コスト及びエネルギー消費の蒸留手順により所望のアルカンスルホン酸から分離されるはずである。
米国特許第4,239,696号は、アルキルメルカプタン及びジアルキルジスルフィドと過酸化水素との酸化のための別の方法を開示している。このプロセスにおいて、アルキルメルカプタン又はジアルキルジスルフィドは、アルキルメルカプタン又はジアルキルジスルフィドの量を基準として、1%〜35%のアルカンスルホン酸を含有し、且つカルボン酸及び過カルボン酸を含まない、液体反応媒体中で過酸化水素により酸化される。3時間のかなり長い反応時間と高価な酸化剤である過酸化水素の使用は重大な欠点であり、これはこのプロセスを経済的観点から著しく魅力のないものにする。更に重要なのは、米国特許第4,239,696号は、このプロセスを連続プロセスとして実施する時に、この反応を2工程で実施することを教示しており、その際、第1工程は90℃以下の温度で実施され、第2工程は100℃〜110℃の間の温度で実施される。しかしながら、メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸は、これらの温度で腐食性であり、従って、重度の腐食現象につながり、これもこのプロセスを安全関連の観点から魅力のないものにする。
米国特許第2,433,395号及び同第4,433,396号は、触媒量の硝酸の存在下での、一般式RSnR’(式中、R及びR’は炭化水素基であり、且つnは1〜6の間の整数である)の有機硫黄化合物、特にジアルキルジスルフィドの、酸素を用いる直接酸化によるアルカンスルホン酸の製造を開示している。米国特許第2,433,395号の方法は、約121℃〜約148℃の温度範囲に等しい、最大で約250°F〜300°Fの反応温度での硫黄化合物の一段階の酸化である。比較すると、米国特許第2,433,396号の方法は、2段階の酸化で構成されている:第1酸化段階で硫黄化合物は約20℃から約70℃までの温度に曝される。スルホン酸の濃度が40%から約70%までの範囲に達すると、反応速度の低下が見られる:反応速度は、例えば、初期反応速度の約10分の1まで著しく低下する。従って、第1の酸化段階で得られる反応混合物は、反応混合物中のスルホン酸の含有量を増加させるために、第2の酸化段階において約70℃から約150℃までの反応温度に曝される。更なる欠点は、米国特許第2,697,722号に記載されているように、これらのプロセスの製品が、通常、淡い、赤褐色に着色した生成物であることである。この変色は、少なくとも部分的に色体及び臭気体に起因し、これはそれぞれのジアルキルジスルフィドの不完全酸化の結果であると考えられている。従って、例えば、米国特許第2,697,722号に記載されるように、色体及び臭気体を除去するために濃硝酸との粗反応生成物を漂白することが必要である。米国特許第2,433,395号の方法の更に別の欠点は、この方法の粗生成物が更なる不純物、例えば、二酸化硫黄及び刺激性のスルホキシドを含有し、その除去が追加の洗浄工程を必要とすることである。米国特許第2,433,395号はまた、酸化反応の混合物中に、石油エーテルなどの容易に蒸発可能な液体の導入を通して反応温度を制御することを教示している。液体は、高蒸気圧で蒸発させることにより、反応混合物からの酸化熱を除去し、それを冷却する。しかしながら、気相では、高蒸気圧の液体が酸素と一緒に爆発の危険のあるガス混合物を形成し得る。これはかなりの安全上のリスクであるため、米国特許第2,433,395号の方法は、工業的用途には適していない。
同様にアルカンスルホン酸の工業的製造に適していないのは、米国特許第2,433,396号の方法である。この文献は、アルカンスルホン酸の溶液中で、酸素及び触媒量の窒素の酸化物を用いる、ジアルキルジスルフィドの酸化によるアルカンスルホン酸の2段階の製造方法を開示している。しかしながら、この文献に開示された混合物の反応は、問題がないわけではなく;代わりに、爆発の危険のある混合物が形成され得る。更には、この方法によって製造されたアルカンスルホン酸は、依然としてかなりの量の窒素酸化物を含有しており、これはガス流を用いるストリッピング又は熱により粗アルカンスルホン酸から除去することができない。従って、きれいな、商業的に利用可能なアルカンスルホン酸を得るためには、例えば、米国特許第2,502,618号に開示されるように、アルカンスルホン酸含有相と、酸と混和しないオレフィン、更に特に少なくとも8個の炭素原子を有するモノオレフィン炭化水素とを接触させることにより、分離工程においてこの方法によって得られる粗アルカンスルホン酸を清浄化する必要がある。米国特許第2,433,396号の方法の更なる欠点は、第2の酸化段階において高い反応温度を使用することであり、これは更なる臭気体及び色体の形成並びに分解生成物の形成に有利である。従って、米国特許第2,433,395号及び同第2,433,396号の方法は、アルカンスルホン酸の工業的製造には適していない。
米国特許第2,697,722号は、少なくとも化学量論的量の硝酸の存在下での、炭化水素スルフィド又はポリスルフィドの酸素による対応するアルカンスルホン酸への酸化を開示している。このように、反応速度の低下と高められた反応温度の使用は避けられるものとする。具体的には、米国特許第2,697,722号は、約10パーセント〜70パーセントの間の濃度の硝酸からなる液体触媒媒体において炭化水素スルフィド又はポリスルフィドの酸化を実施することを教示している。しかしながら、結果的に、かなりの量の水も反応混合物中に導入される。米国特許第2,697,722号による方法の更なる欠点は、本質的に硝酸の希釈溶液である、窒素酸化物の水溶液としての酸化プロセスからの窒素酸化物含有オフガスをスクラブすることによって、硝酸を回収することである。この希硝酸は、硫化物酸化系に戻すことができ、且つ硝酸に加えることができる。しかしながら、そうすることによって、酸化系における水の量を着実に増加させて、アルカンスルホン酸の分離をさらに一層コスト及びエネルギー集約型にする。あるいは、希硝酸は、これを前記系に戻す前に濃縮される。しかしながら、この代替手段は、更にコスト及びエネルギー投資をもたらす。米国特許第2,697,722号の方法の更に別の欠点は、健康及び環境にとって危険な大量の窒素酸化物を形成することである。例えば、一酸化二窒素、N2Oは温室効果ガスであると考えられている。従って、これらのガスの環境や労働者への放出を避けるためにコスト及びエネルギー消費の対策が取られなければならない。従って、米国特許第2,697,722号の方法は、経済面でも安全関連面でも、工業的用途にとって魅力的ではない。
米国特許第2,498,318号は、反応領域における炭化と腐食の発生を防止又は少なくとも低減するために、52℃に等しい、125°F以下の温度で、窒素酸化物の存在下で、ジアルキルジスルフィドを酸素によりアルカンスルホン酸に酸化する方法を開示している。しかしながら、これらの反応条件は、ジアルキルジスルフィドの所望のアルカンスルホン酸への完全な変換を可能にしない。更には、この方法では、淡赤褐色の生成物も得られ、これは、着色剤及び臭気物質を除去するために、更なる工程で濃硝酸を用いて漂白されなければならない。
米国特許第2,505,910号は、触媒量の硝酸と少量の水の存在下で、アルキルメルカプタンを酸素で酸化することによるアルカンスルホン酸の別の製造方法を開示している。この方法では、アルキルメルカプタン及び触媒として窒素の酸化物を含む溶液に空気を含ませる。この溶液に酸素が吸収される前に、メルカプタン窒素酸化物複合体が形成される。しかしながら、これは、米国特許第2,727,920号によれば、この複合体中でメルカプタンの酸化が始まる時に、ほとんど爆発的な勢いで起こる。米国特許第2,505,910号の実施例は、プロセスが実施される時のNO2の激しい放出も記載しており、この現象は反応器内で激しい発泡も引き起こす。従って、米国特許第2,505,910号のプロセスは、簡単で且つ安全な手順を可能にせず、結果としてアルカンスルホン酸の大量生産には適していない。また、この方法によって製造されるアルカンスルホン酸は、濃硝酸を用いる処理によって除去されなければならない着色不純物を含有する。これも同様に米国特許第2,505,910号のプロセスを、経済的に魅力のないものにする。
米国特許第2,727,920号は、アルキルメルカプタンの、硝酸水溶液及び酸素を用いる対応するアルカンスルホン酸への単一段階酸化のための方法を開示している。しかしながら、この方法では、硝酸水溶液が、マルチモル過剰で、換言すれば、変換されるべきメルカプタンに関して、超化学量論的に導入され、これは、かなりの量の水と窒素酸化物が、得られるアルカンスルホン酸から分離されなければならないことを意味する。しかしながら、米国特許第2,727,920号によれば、アルキルメルカプタンは少量でも、付随する爆発の危険のために、硝酸に対して大量のアルキルメルカプタンの計量が問題外であるような激しさで反応するので、硝酸に対するメルカプタンの比の増加は選択肢ではない。従って、この処理により、ほんのわずかの空時収量しか達成できない。結果的に、米国特許第2,727,920号の方法は、アルカンスルホン酸の工業生産に適していない。
WO00/31027号は、50℃から150℃までの温度で、アルキルメルカプタン、ジアルキルジスルフィド、及び/又はジアルキルポリスルフィドを、硝酸を用いて酸化することによるアルカンスルホン酸の製造方法を開示している。反応混合物中の大部分の硝酸の結果として、かなりの量の水が反応中に導入され、続いて、高エネルギー消費で且つ高コストで、所望の生成物から分離されなければならない。このプロセスの別の欠点は、健康及び環境への危険に対して有害な大量の窒素酸化物の形成にあり、それらの一酸化二窒素、N2Oもまた温室効果ガスとして見なされる。これらの窒素酸化物の放出を回避するために、コスト及びエネルギーの高い手段が同様に取られなければならないので、これはWO00/31027号のプロセスを経済的に魅力のないものにする。
公開された中国特許出願CN−A101648892号は、空気と硝酸を用いるジアルキルジスルフィドの酸化によるアルカンスルホン酸の製造を開示している。このプロセスでは、硝酸は、酸化されるべきジアルキルジスルフィドに関して常に過剰である。かなりの量の硝酸の分解は生成物の変色をもたらす。従って、色を除去するために、生成物の混合物は脱硝触媒と混合されなければならない。更には、このプロセスにおける大量の硝酸の使用も、導入された大量の水を非常にエネルギー消費の高い蒸留によって再び分離しなければならないという欠点がある。
従って、本発明の課題は、安全性に関する側面で高い収率でアルカンスルホン酸の安価な製造を可能にする、硫黄含有前駆体化合物からのアルカンスルホン酸の製造方法を提供することである。
この課題は、所望のアルカンスルホン酸を得るために、20質量パーセント以下の濃度で溶液の形で対応するアルカンスルホン酸に導入される、ジアルキルジスルフィドの酸化によって解決される。
本発明は、従って、触媒量の硝酸の存在下で、アルカンスルホン酸の溶液中で、式R−S2−R(式中、RはC1〜C12アルキル基を表す)の対称ジアルキルジスルフィドと、当該ジアルキルジスルフィドの酸化により得られるアルカンスルホン酸と同一である溶媒として使用されるアルカンスルホン酸とを酸化することを含む式R−SO3−Hのアルカンスルホン酸の製造方法であって、溶液中のジアルキルジスルフィドの濃度が20質量%(質量%)以下であり、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比が2000:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)の範囲であり、溶媒として使用されるアルカンスルホン酸の濃度が70質量パーセントを上回る、前記方法を提供する。
「20質量パーセント以下」との表現は、本発明の文脈において、0質量%を上回り20質量%を含めてそれ以下の全ての考えられる値を指すように使用されている。「20質量パーセント以下」との表現は、従って、整数値、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20質量%を含むだけでなく、実数によって表すことができる0質量%を上回り20質量%を含めてそれ以下の全ての値も含む。
本発明の文脈において、ジアルキルジスルフィドの適切なアルカンスルホン酸溶液は、反応混合物とも呼ばれる。
「ジアルキルジスルフィド」との用語は、本発明の文脈において、当業者の一般常識に沿って利用され、一般式R1−S2−R2(式中、R1及びR2はそれぞれ炭化水素基を表す)に対応する有機ジスルフィドの群から化学化合物の群を特定する。これらの炭化水素基が、本発明の方法で利用される酸化条件下で化学的に反応せず、且つ当該ジアルキルジスルフィドがアルカンスルホン酸に溶解性であるか又は少なくとも十分に懸濁可能であるという条件で、本発明による方法は、ジアルキルジスルフィド中の炭化水素基の大きさ又は構造に対する制限を受けない。基R1及びR2は、直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素基、好ましくは直鎖状の、それぞれC1〜C12アルキル基、好ましくはC1〜C6アルキル基、更に特にC1〜C4アルキル基であり、任意に、酸化反応のための条件下で反応性ではない基によって置換される。R1及びR2は、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert−ブチルからなる群から選択される。本発明に従って使用されるジアルキルジスルフィドが対称であるため、基R1及びR2は同一である。
2000:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)のジアルキルジスルフィド対硝酸の比は、2000:1(モル/モル)を含めてこれ以上1:1(モル/モル)を含めてこれ以下の、整数及び実数によって表され得る全ての比を包含する。この比は、比2000:1(モル/モル)、1000:1(モル/モル)、500:1(モル/モル)、200:1(モル/モル)、100:1(モル/モル)、80:1(モル/モル)、60:1(モル/モル)、40:1(モル/モル)、30:1(モル/モル)、20:1(モル/モル)、10:1(モル/モル)、2:1(モル/モル)及び1:1(モル/モル)を明白に包含するが、これに限定されない。
本発明の文脈において、記載された濃度の数字は、反応の開始時の反応混合物中の特定成分の濃度を示す。例えば、ジアルキルジスルフィド濃度の数字は、ジアルキルジスルフィドが反応器中に供給され、その後、これがアルカンスルホン酸と混合された後に生じる濃度に関連し、その際、他の存在する化合物の量は無視できる。同様に、アルカンスルホン酸濃度の数字は、アルカンスルホン酸が反応器中に供給され、その後、これがジアルキルジスルフィドと混合された後に生じる濃度に関連し、その際、他の存在する化合物の量は無視できる。
本発明による方法がバッチ操作で実施される場合、反応混合物中のジアルキルジスルフィドの初期濃度は20質量%以下であり、また、反応の全過程にわたり継続的に減少する。本発明の方法におけるアルカンスルホン酸の初期濃度は80質量%であり、アルカンスルホン酸の継続的な形成のために、反応の過程にわたり継続的に増加する。連続操作では、対照的に、ジアルキルジスルフィドの濃度は永続的に最大20質量%である。
これらの手段によって、ジアルキルジスルフィドの対応するアルカンスルホン酸への酸化は、工業的規模でも安全に且つ爆発の傾向もなく実施され得ることが保証される。実際に、酸化が70質量パーセントを上回るアルカンスルホン酸を用いて溶液中で行われる事実は、反応の開始時に特に高い、放出された反応熱が、高沸点の溶媒(メタンスルホン酸の場合、沸点は13hPaで約167℃である)によって吸収されることを保証する。これの利点は、ジアルキルジスルフィドのアルカンスルホン酸への酸化が、本発明による方法において爆発的ではなく滑らかに進行することである。また、本発明による方法がバッチ反応器内で実施される場合、反応時間が進むにつれて、ジアルキルジスルフィドの連続的に減少する濃度のために、放出される反応熱が減少する。
アルカンスルホン酸の高沸点溶媒としての使用は、有機化合物と酸素とのガス混合物を形成する傾向が回避又は少なくとも爆発の危険性がないような程度まで低減される更なる安全上の利点を有する。
その一方で、公知の方法の場合のように、ジアルキルジスルフィドの濃度が20質量%を超える場合、放出される反応の熱は、もはや工業プロセスのために必要なレベルに制御することができない。
本発明の方法が、この方法の対象生成物でもあるアルカンスルホン酸を同時に溶媒として使用する事実により、所望の生成物から溶媒を分離する必要性(アルカンスルホン酸の公知の製造方法にある)がなくなる。その結果、本発明の方法において、粗生成物の蒸留精製はかなり安価で且つ複雑であり、それに応じて、これはより低い資本コストと運用コストを必然的に伴う。
文献に提示された見解によれば、ジアルキルジスルフィドからのアルカンスルホン酸の酸化が、S−アルキルチオアルカンスルホキシドR−S−SO−Rの中間体、その後、S−アルキルチオアルカンチオスルホネートR−S−SO2−R、S−アルキルスルホキシドアルカンチオスルホネートR−SO−SO2−R及びジアルキルジスルホンR−SO2−SO2−Rを介して進み、後者は最終的に所望のアルカンスルホン酸に加水分解される。本発明による方法において溶媒としてのアルカンスルホン酸と触媒量の硝酸とを組み合わせて使用することは、所望のアルカンスルホン酸を形成するために要求される水の量だけ反応に導入する必要があるという、従来技術の方法に優る利点を有する。これにより実質的に無水のアルカンスルホン酸を製造することができる。従って、「粗」アルカンスルホン酸の蒸留精製の完了は、主に、所望のアルカンスルホン酸から、極微量範囲の不純物及び硝酸の熱分解より得られる窒素の酸化物を除去する目的だけを果たす。従って、この「粗」アルカンスルホン酸の蒸留は、より少ない及びより単純な装置を必要とするだけでなく、より少ないエネルギーをも必要とするので、本発明の方法の資本コスト及びエネルギーコストは、従来技術より知られる方法の場合よりも有意に低い。
本発明の方法は、メタンスルホン酸の製造に特に適している。本発明の方法によって、実際に、メタンスルホン酸は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%の純度で得られる。顕著に低下した含水率は、特にメタンスルホン酸が化学反応において触媒として使用される時に、より少ない分解をもたらす。
従って、本発明の一実施態様では、対応するアルカンスルホン酸に対して反応されるジアルキルジスルフィドはジメチルジスルフィドであり、得られるアルカンスルホン酸はメタンスルホン酸である。
本発明に従って、本発明による方法は、1000:1(モル/モル)、更に2000:1(モル/モル)の比較的低いジアルキルジスルフィド対硝酸の比で、更には1000:1(モル/モル)を含めてこれ以上2000:1(モル/モル)を含めてこれ以下の間の任意の望ましい比でも実施され得る。500:1(モル/モル)のジアルキルジスルフィド対硝酸の比まで硝酸濃度を増加させることによって、ジアルキルジスルフィドの主要なフラクションはわずか90分以内にアルカンスルホン酸に対して反応される。
本発明の一実施態様では、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比は、従って、500:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)である。
100:1(モル/モル)のジアルキルジスルフィド対硝酸の比までの、硝酸濃度の更なる増加は、更に、60分以内のジアルキルジスルフィドのアルカンスルホン酸へのほぼ完全な変換を可能にする。10:1(モル/モル)のジアルキルジスルフィド対硝酸の比までの、硝酸濃度の更なる増加の結果、ジアルキルジスルフィドは、実際に、わずか30分以内に対応するアルカンスルホン酸にほぼ完全に酸化される。
好ましくは、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比は、従って、100:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)である。ジアルキルジスルフィド対硝酸の比は、好ましくは、80:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)、60:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)、40:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)、20:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)、又は10:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)である。
あるいは、硝酸の量がこのように顕著に減少し、これが本発明による方法のコスト効率を更に改善するので、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比が常に1:1よりも大きいことが有利である。プロセスで使用される硝酸は常にそのプロセスの反応条件下で再生されるので、少量の硝酸の使用は、アルカンスルホン酸を形成する場合の収率及び選択性に悪影響を及ぼさない。更には、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比が2:1(モル/モル)以上である場合、反応時間は顕著に増加しない。
ジアルキルジスルフィド対硝酸の比は、従って、好ましくは500:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)、200:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)、100:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)、80:1(モル/モル)、60:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)、40:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)、20:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)、又は10:1(モル/モル)である。
本発明の代替的な実施態様では、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比は、このように500:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)である。
本発明の方法は、20質量パーセント以下のアルカンスルホン酸中のジアルキルジスルフィドの最大濃度で、安全性の面から90%を上回る収率で、対応するジアルキルジスルフィドからアルカンスルホン酸を製造することができる。しかしながら、安全性の観点から、本発明の方法を、アルカンスルホン酸中で約10質量パーセント以下のジアルキルジスルフィドの濃度で実施することが更に一層好ましい。この理由は、この場合、ジアルキルジスルフィドの酸化中の温度と圧力の両方の変化が、ジアルキルジスルフィドの濃度が10質量パーセントを上回るか又は更に20質量パーセント以下である場合よりも少ないことである。これにより、本発明の方法を実施する際により効果的な温度の制御が可能である。
本発明の更なる実施態様では、アルカンスルホン酸中のジアルキルジスルフィドの濃度は約10質量パーセント以下である。
アルカンスルホン酸中のジアルキルジスルフィドの濃度は、好ましくは約1質量パーセント〜約6質量パーセント、更に好ましくは約2質量パーセント〜約6質量パーセント、更に特に約4質量パーセント〜約6質量パーセントである。
質量パーセントに関連する「約」との表現は、本発明の文脈において、明確に示された数値だけでなく、明確に示された数値から+/−10%だけ外れる数字も意味するように使用されている。「約10質量パーセント」との用語は、このように、9質量パーセント、10質量パーセント及び11質量パーセントの整数だけでなく、実数によって表され且つ9質量パーセントを含めてこれ以上及び11質量パーセントを含めてこれ以下の間にあり得る全ての数字も包含する。「約2質量パーセント」との用語は、2の整数だけでなく、実数によって表すことができ且つ2質量%を10%下回る値も含めてそれ以上及び2質量%を10%上回る値も含めてそれ以下の間にある全ての数字も包含する。「約4質量パーセント〜約6質量パーセント」との用語は4質量パーセント、5質量パーセント及び6質量パーセントの整数を包含し、さらには、実数によって表すことができ且つ4質量%を10%下回る値を含めてこれ以上及び6質量%を10%上回る値を含めてこれ以下の間にある全ての数字も包含する。
温度条件に関しては、ジアルキルジスルフィドの対応するアルカンスルホン酸への酸化において、プロセス中の温度が90℃を上回る場合に硫黄元素が析出することが判明した。これは、ジアルキルジスルフィドの酸化中の高温での反応混合物中の酸素の不足に起因する:反応混合物における酸素欠乏の場合、ジアルキルジスルフィド中の硫黄原子は、正の形式的な電荷を有する硫黄に完全に酸化されないことが考えられる。換言すれば、ジアルキルジスルフィドが、S−アルキルチオアルカンスルホキシドR−S−SO−R、S−アルキルチオアルカンチオスルホネートR−S−SO2−R、S−アルキルスルホキシドアルカンチオスルホネートR−SO−SO2−R又はジアルキルジスルホネートR−SO2−SO2−Rに完全に酸化されないと考えられる。更に、形式電荷0を有する硫黄で酸化が停止すると考えられており、これは観察された硫黄元素の析出の原因となる、有機化合物の分解を伴うと言われている。析出した硫黄は、製品の品質にとって有害であり、所望のアルカンスルホン酸の収率を低下させ、そして目詰まりパイプライン、ポンプ、カラム等による故障につながり得るため、硫黄析出物は、アルカンスルホン酸の工業的生産において避けなければならない。従って、恒久的に90℃を上回る反応温度は、避けなければならない。
本発明による方法において90℃以下の反応温度は、更に、酸素との爆発の危険のあるガス混合物が形成されないという利点を有する。この理由は、アルカンスルホン酸の沸点が90℃を十分に上回る;例えば、メタンスルホン酸、最も単純なアルカンスルホン酸の沸点が13hPaで167℃であることである。ジメチルジスルフィド、最も単純なジアルキルジスルフィドの沸点も同様に、110℃であり、従って本発明の方法における最高温度を上回る。ジメチルジスルフィドの点火温度は、顕著に高い:これは1気圧の空気中で370℃である。
従って、本発明の更なる実施態様では、本方法は、90℃以下の温度で実施される。
本発明による方法は、好ましくは、約30℃〜90℃の温度で実施される。この理由は、反応混合物中のジアルキルジスルフィド対硝酸の比に関わらず、これらの温度がジアルキルジスルフィドのアルカンスルホン酸への実質的に完全な酸化を可能にすることである。「約30℃」との表現は、本発明の文脈において、短時間の場合、換言すれば、反応時間に比べて無視できる時間の場合に、30℃から−5℃まで外れた値も包含するように使用されている。
しかしながら、低温では、比較的低いエネルギーの供給のために、酸化反応は、それ相応に長い反応時間が経過するまで完了しない。例えば、30℃又は40℃の反応温度で、ジメチルジスルフィドのメタンスルホン酸への酸化は、ジメチルジスルフィドの実質的に完全な変換を達成するために、約3時間又は4時間を必要とする。70℃又は90℃の温度での同じ反応の実施は、1時間を十分に下回る時間内で、ジアルキルジスルフィドの実質的に完全な変換につながる。
本発明による方法の好ましい実施態様では、本方法は、約70℃〜90℃の温度で実施される。
「約70℃」との表現は、本発明の文脈において、短時間の場合、換言すれば、反応時間に比べて無視できる時間の場合に、70℃から−5℃まで外れた値も包含するように使用されている。
本発明のよる方法において、酸化されるべきジアルキルジスルフィドの濃度は20質量%以下である。反応混合物中の硝酸の質量分率は、本発明の方法において、これがジアルキルジスルフィドに対して副化学量論的に使用されるので、ほぼ無視することができる。
本発明の文脈において、硝酸対ジアルキルジスルフィドの比に関する、「化学量論的」との用語は、1:1の硝酸対ジアルキルジスルフィドの比を意味するように使用されている。同様に、本発明の文脈において、硝酸対ジアルキルジスルフィドの比に関する、「副化学量論的」との用語は、1:1の硝酸対ジアルキルジスルフィドの比を下回る全ての硝酸対ジアルキルジスルフィドの比、例えば、80:1(モル/モル)、60:1(モル/モル)、40:1(モル/モル)、20:1(モル/モル)又は10:1(モル/モル)のジアルキルジスルフィド対硝酸の比を意味するように使用されている。
従って、本発明の方法では、反応混合物は80質量%以上のアルカンスルホン酸を含み得る。しかしながら、それに加えて、溶媒として作用し且つ酸化条件下で不活性である更なる成分が、反応混合物中に存在することも可能である。補足不活性成分は、所望のアルカンスルホン酸から蒸留により分離することができ且つ低い蒸気圧を有するものであり、それらが気相中で爆発性混合物を生じないことを意味する。限定することなく記載された、例示的な不活性成分は、スルホキシド及びジメチルホルムアミドである。反応混合物中で溶媒として使用されるアルカンスルホン酸が、酸化生成物と同一であり、従って、良好な収率で、生成物の混合物から蒸留により除去する必要がないので、反応混合物中のアルカンスルホン酸の割合は好ましくは可能な限り高い。
本発明の更なる実施態様では、溶媒として使用されるアルカンスルホン酸の濃度は従って少なくとも80質量%である。
本発明の文脈において、「少なくとも80質量%」との表現は、80質量パーセントを含めてそれ以上100質量%未満の全ての数字を包含するように使用されている。「80質量%」との表現は、従って、整数80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%及び99質量%を包含し、さらには実数を用いて表現することができる80質量%を含めてそれ以上100質量%未満の全ての考えられる値も包含する。
本発明による方法におけるアルカンスルホン酸の濃度は、好ましくは少なくとも約90質量パーセント、更に特に少なくとも約92質量パーセントであり、更に好ましくは約92質量パーセントから約96質量パーセントまでの範囲で使用されるアルカンスルホン酸の濃度である。「約90質量パーセント、約92質量パーセント及び約96質量パーセント」との表現は、本発明の文脈において、明確に記載されたそれぞれの数字から±2質量パーセントのずれをも意味するように使用されている。「少なくとも約90質量パーセント」との表現は、従って、88質量パーセントを含めてそれ以上100質量パーセント未満の全ての数字を包含する。これらは、明確に、整数値88質量パーセント、89質量パーセント、90質量パーセント、91質量パーセント、92質量パーセント、93質量パーセント、94質量パーセント、95質量パーセント、96質量パーセント、97質量パーセント、98質量パーセント、及び99質量パーセントであり、また、実数を使用して表され得る88質量パーセントを含めてそれ以上100質量パーセント未満の全ての考えられる値である。「少なくとも約92質量パーセント」との表現は、90質量パーセントを含めてそれ以上100質量パーセント未満の全ての数字を包含する:これらは明確に、90質量パーセント、91質量パーセント、92質量パーセント、93質量パーセント、94質量パーセント、95質量パーセント、96質量パーセント、97質量パーセント、98質量パーセント、及び99質量パーセントであり、また、実数を使用して表され得る90質量パーセントを含めてそれ以上100質量パーセント未満の全ての考えられる値である。同様に、「約92質量パーセント〜約96質量パーセント」との表現は、90質量パーセントを含めてそれ以上98質量パーセントを含めてそれ以下の全ての数字を包含する:これらは明確に、整数値90質量パーセント、91質量パーセント、92質量パーセント、93質量パーセント、94質量パーセント、95質量パーセント、96質量パーセント、97質量パーセント及び98質量パーセントであり、また、実数を使用して表され得る90質量パーセントを含めてそれ以上98質量パーセントを含めてそれ以下の全ての考えられる値である。
本発明の好ましい実施態様では、従って、溶媒として使用されるアルカンスルホン酸の濃度は少なくとも約90質量パーセントである。
本発明の方法は、基本的に酸化剤の制限を受けないが、依然として確実に酸化を安全に行うことができることを条件とする。本発明によれば、遊離型及び結合型の両方の酸素は、本発明の方法において適切な酸化剤である。本発明の文脈において、「遊離型の酸素」との用語は、当業者の共通の一般知識に従って使用され、且つ共有結合を介して、有機又は無機化合物の一部である酸素を指す。遊離型の酸素は、例えば、分子の酸素O2、オゾンO3又は酸素ラジカルである。従って、この理解によれば、複合体の一部であるか又は配位型で存在する酸素分子又は酸素ラジカルも、例えば、遊離型の酸素として解釈されている。従って、本発明の方法において使用される遊離型の酸素としては、純粋な酸素又は酸素富化空気流、例えば、酸素富化空気又は純粋な酸素と、酸化条件下で反応せず、不活性ガスと呼ばれるガス、例えば、窒素又はアルゴンとの混合物が挙げられ得る。逆に、「結合型の酸素」との用語は、少なくとも1つの共有結合の結果として、有機又は無機化合物の一部である、任意の酸素を意味する。結合型の酸素を有するこれらの化合物を最終的に使用して、酸素原子を、ジアルキルジスルフィドに存在する硫黄原子上に移動し、それらをジアルキルジスルフィドにおける−1の形式的な酸化状態からジアルキルジスルホンにおける+3の酸化状態へと酸化する。あるいは、本発明の文脈では、遊離型の酸素と結合型の酸素を同時に使用してジアルキルジスルフィドを酸化することも可能である。
従って、本発明の一実施態様では、酸化のために、空気、遊離型の酸素で富化されたガス流、及び/又は遊離型の純粋な酸素が供給される。
酸化のために有利なのは、遊離型の酸素又は遊離型の酸素で富化されたガス流を使用することである。この理由は、反応混合物中に分子の酸素及びさらに水も存在する結果、酸化反応及び熱分解の両方を受けて形成された窒素の酸化物が再生されて、再び硝酸を得ることである。酸化剤として硝酸を用いて本発明の方法を実施する間、この再生は自動であり、常に反応を伴う。それに応じて、アルカンスルホン酸と窒素酸化物が形成される同じ反応器では、酸素及び水による窒素酸化物の硝酸への再生も進行している。これの利点は、有利には、本発明の方法において硝酸を連続的に添加する必要がないことである。
しかしながら、窒素の酸化物が、硝酸に完全に再生されず、結果として硝酸の損失が生じる場合、このような損失は、新鮮な硝酸の添加によって補償することができる。再生されず、そのために失った硝酸の補充は、要求される特定量に応じて、散発的に又は連続的に行われ得る。
遊離型の酸素で富化されたガス流によるジアルキルジスルフィドの酸化は、純粋な酸素よりも比較的費用対効果のあるガス流が反応器内に供給される利点を有する。更には、酸化反応の過程に沿って、供給されるべきガス流中の酸素の量は自由に調整することができる。最も単純な場合、このガス流は、一般に空気中に20.942体積%(体積パーセント)を上回る酸素を含有する空気である。
21体積%を上回る遊離型の酸素を有するガス流を反応混合物中に供給することによって、ジアルキルジスルフィドの対応するアルカンスルホン酸への実質的に完全な酸化と、窒素の酸化物NOxの硝酸への再生の両方が行われることが保証される。
従って、本発明の好ましい実施態様では、21体積%を上回る遊離型の酸素含有率を有する、遊離型の酸素を含有するガス流が酸化のために供給される。
本発明の文脈において、「21質量%を上回る遊離型の酸素」との表現は、整数及び実数によって表され得る21体積%を上回り100体積%を含めてそれ以下の全ての数字を意味する。限定的な場合、21体積%を上回る遊離型の酸素の含有率を有するガス流は、遊離型の純粋な酸素、好ましくは分子の酸素O2である。
本発明の方法は、基本的に、それが実施される圧力の制限は受けない。本発明の方法における圧力の設定は、通常、反応混合物中に供給される遊離型の酸素を含有するガス流によって完了する。本発明によれば、これは、空気、遊離型の酸素で富化されたガス流、更に特に21体積%を上回る遊離型の酸素を含有するガス流、又は遊離型の純粋な酸素であってよい。
本発明の方法は、基本的に圧力の制限は受けない。圧力上限は使用する反応器の耐圧性によって決定される。高い又は非常に高い圧力は複雑で高価な反応器を必要とするので、本発明の方法は、好ましくは100バール以下での圧力で操作される。実際には、更に、20バールの圧力が収率の増加にも反応のより迅速な完了にもつながらないことが明らかになった。本発明の文脈において、「バール」との表現は、「絶対バール」と同義であり、絶対圧の単位として使用されている。当業者の一般的な知識によれば、絶対圧は、通常の空気圧を考慮せずに、換言すれば、完全に空の空間におけるゼロ圧力に対して測定される。しかしながら、有利には、本発明の方法は過圧下で行われる。本発明の文脈において、「過圧」との表現は、整数又は実数を使用して表され得る1バールを上回る範囲内の全ての圧力を包含するように使用されている。
従って、本発明の一実施態様では、本方法は1バールを上回り20バールまでの圧力で実施される。
約20バールの圧力は、本発明の文脈において、明確に記載された数字から±10%のずれも包含するように使用されている。「約20バール」との表現は、従って、18バールを含めてそれ以上22バールを含めてそれ以下の全ての整数、明示的に数字18バール、19バール、20バール、21バール及び22バール、さらには18バールを含めてそれ以上22バールを含めてそれ以下の実数を使用して表現され得る全ての数字も包含する。
反応混合物が受ける圧力は、有利には、それらが生成物の収率の増加をもたらすように選択される。2バールを上回る圧力、例えば、3バールの圧力で、およそ96%を上回るメタンスルホン酸の形成の収率に基づいて、例えば、3バールの圧力の段階的な増加は、それぞれの場合に、一定の温度と仮定して、99%を上回るまで収率の増加につながる。
従って、本発明の有利な実施態様では、本方法は、2バールを上回り約15バールまでの圧力で実施される。
約15バールの圧力が本発明の文脈において、明確に記載された数字から±2バールのずれも包含するように使用されている。従って、「約15バール」との表現は、13バールを含めてそれ以上17バールを含めてそれ以下の全ての整数値、明示的に数字13バール、14バール、15バール、16バール及び17バール、さらには13バールを含めてそれ以上17バールを含めてそれ以下の実数を使用して表現され得る全ての数字も包含する。
有利には、酸化反応のための反応器より先に、反応混合物の均質化を改善するためのミキサーがある。この追加のミキサーは、反応混合物の異なる相への非最適な均質性又は分離を防止又は低減する。反応混合物の一部で改善された均質性は、このため、所望のアルカンスルホン酸の改善された収率の結果を伴って、改善された反応速度に寄与する。反応混合物は、静的又は動的ミキサー内で均質化することができる。本発明の意味におけるスタティックミキサーは、流体の最適な混合が、撹拌機又はスクリューなどの構成要素を移動させることによってではなく、代わりに特に、混合されるべき流体の構造的に課せられた流れの動きによってのみ行われるミキサーである。本発明の意味におけるダイナミックミキサーは、対照的に、流体の最適な混合が、構成要素の移動の結果として起こるミキサーである。従って、本発明の文脈において、ダイナミックミキサーは、連続的に運転される撹拌タンクを含むことが理解されており、その際、例えば、反応を開始又は維持するために要求されるエネルギー又は触媒作用により活性な硝酸が供給されないので酸化反応は存在しない。
均質化は、好ましくは、スタティックミキサー内で行われる。その理由は、このように故障を起こしやすく、恐らく保守集中的な動的ミキサーの可動構成要素を必要としないことである。従って、好ましくは、酸化反応のための少なくとも1つの反応器より先に、スタティックミキサーがある。
アルカンスルホン酸の収量の増加につながる更なる要因は、細分割であり、更には反応混合物における酸素の高い滞留時間である。これは、例えば、ジェットノズルと呼ばれるものを使用するか又は多孔板を使用して酸素中に供給することによって、反応器内の適切な撹拌要素によって、又は長くて細い、連続的に運転される撹拌タンク反応器内で反応を実施することによって達成される。
本発明の方法では、更に、1つ以上の可溶化剤が、反応混合物の改善された均質性を確保するために使用され得る。本発明の文脈において、「可溶化剤」との用語は、溶媒中で低い溶解度を有する化合物の溶解に寄与する化合物を同定するために当業者の共通の一般知識に従って使用されている。基本的に、全ての化合物は、本発明の方法のための可溶化剤として適しているが、但し、それらが、ジアルキルジスルフィドのアルカンスルホン酸への酸化のための条件下で、ジアルキルジスルフィドの対応するアルカンスルホン酸及びそれ自体への溶解を可能にし、ジアルキルジスルフィドとも中間体とも所望の最終生成物とも反応しないことを条件とする。少なくとも1つの可溶化剤の選択は、所望のアルカンスルホン酸からの容易な分離可能性のために絶対条件によって支配されている。所望のアルカンスルホン酸の沸点が可溶化剤の沸点と十分に異なる場合、アルカンスルホン酸を蒸留によって少なくとも1つの可溶化剤から分離することができる。これは追加の資本コスト、運用コスト及びエネルギーコストを伴うことがある。アルカンスルホン酸及び少なくとも1つの可溶化剤の沸点が、互いに十分に異なっていない場合、又は少なくとも1つの可溶化剤の蒸留分離が、所望のアルカンスルホン酸に悪影響を与える場合の二者択一で、少なくとも1つの可溶化剤を蒸留により分離しないことが好ましい。後者の選択肢は、少なくとも1つの可溶化剤がアルカンスルホン酸中に残存することが事実ならば何も問題を起こさず、アルカンスルホン酸及びその後のその最終用途に悪影響を与えない。
従って、本発明の更なる実施態様では、ジアルキルジスルフィドとアルカンスルホン酸との間で可溶化剤が使用される。
本発明の方法における式R−SO2−S−Rのアルカンスルホン酸S−アルキルエステルの使用は、ジアルキルジスルフィドと対応するアルカンスルホン酸との間に効果的な可溶化をもたらす。この特定の可溶化剤の他に対する利点は、これがジアルキルジスルフィドのアルカンスルホン酸への酸化における中間体として形成され、従って、本発明による方法の反応条件下で、所望の酸化生成物への更なる反応を受けることが可能なことである。一般的には、本発明の方法の間に形成されるアルカンスルホン酸S−アルキルエステルは、最大2時間以内にアルカンスルホン酸へのほぼ完全な更なる反応を受ける。従って、アルカンスルホン酸S−アルキルエステルの基Rは、本発明の方法によって得られたアルカンスルホン酸の基Rと同一であり、従って、これはアルカンスルホン酸に関連して上記で定義されたのと同じ意味を有する。従って、ジメチルジスルフィドからのメタンスルホン酸の製造のために、特に有利な可溶化剤は、メタンスルホン酸S−メチルエステル(MMTS)である。特に、メタンスルホン酸中の約7質量パーセントを上回るジメチルジスルフィドの濃度で、MMTSは特に優れた可溶化剤であることが証明された。
従って、本発明の好ましい実施態様では、式R−SO2−S−Rのアルカンスルホン酸S−アルキルエステルは、ジアルキルジスルフィドとアルカンスルホン酸との間で可溶化剤として使用されており、その際、アルカンスルホン酸S−アルキルエステルのアルキル基Rが、変換されるべきジアルキルジスルフィドのアルキル基Rと同一であり、且つアルカンスルホン酸のアルキル基Rと同一である。
特に有利には、ジアルキルジスルフィドを含む反応混合物は、ジアルキルジスルフィドの酸化の前及びその間の両方で1つの相に存在する。これは、より具体的には、酸化反応において、可溶化剤としてアルカンスルホン酸S−アルキルエステルを用いて、ジアルキルジスルフィドとアルカン酸との間の酸化反応のための少なくとも1つの反応器の上流で、スタティックミキサーを組み合わせて達成される。
基本的には、本発明のプロセスは、プロセスを実行するために使用される反応器の種類に関して制限を受けない。従って、プロセスは、不連続的にバッチ反応器又は連続的に管状流反応器又は連続的に撹拌タンク反応器のいずれかで実施され得る。好ましいのは、本発明の方法を連続的に実施するための反応器の使用である。
反応器の数に関する限り、本発明の方法は、原則として制限を受けない。従って、本発明の方法は、単一の反応器で、例えば、撹拌タンク反応器で、又は2つ以上の反応器で、例えば、主反応器と仕上げ反応器又は後反応器とを組み合わせて実施される。一例として、最大量のジアルキルジスルフィドを反応させる、主反応器として連続的に運転される撹拌タンク反応器は、酸化反応を完了させる働きをする、仕上げ反応器又は後反応器として管状流反応器と組み合わせてよい。ジアルキルジスルフィドの完全な変換を達成するために、この組み合わせは比較的小さい反応器容積のみを必要とする。逆に、本発明の方法が、単一の反応器、好ましくは、連続的に運転される撹拌タンクで実施される場合、ジアルキルジスルフィドの完全な変換は有意に高い反応器容積を必要とする。
従って、好ましくは、本発明の方法は、主反応器と後反応器とを組み合わせて、更に具体的には連続的に運転される撹拌タンク反応器と管状流反応器とを組み合わせて実施される。
本発明のプロセスが、主反応器として連続的に運転される撹拌タンク反応器と後反応器として管状流反応器との反応器の組み合わせで運転される場合、好ましくは、硝酸及び/又は酸素は、ジアルキルジスルフィドの残りの部分のアルカンスルホン酸への実質的に完全な酸化を確保するために、管状流反応器内に付加的に供給される。
反応が行われる少なくとも1つの反応器の内部容積は、好ましくは、少なくともジアルキルジスルフィド及びアルカンスルホン酸を含む反応混合物で完全に満たされている。気相が、液相又は実際の反応混合物の上に形成する場合、この気相の容積は非常に小さく、そのため、潜在的な爆発の結果に反論できない。例えば、個々の気泡を、反応混合物全体の領域に上昇させることが可能である。しかしながら、これらの気泡の体積は、反応混合物又は反応器全体の容積に比べて無視できるほど小さく、気泡内の爆発は全く目立たない。
本発明のプロセスを、同様に、2つ以上の反応器内で実施する場合、多くの反応器のうち少なくとも最初の反応器の内部容積は、反応混合物で完全に充填されるべきである。その理由は、遊離型の酸素と爆発の危険のある混合物を形成し得る、ジアルキルジスルフィドの濃度が、多くの反応器のうち最初の反応器内で最高であることである。従って、爆発の危険のある混合物の形成のし易さは、多くの反応器のうち最初の反応器で最高である。その理由は、好ましくは、多くの反応器のうち少なくとも最初の反応器での内部容積が、少なくともジアルキルジスルフィド及びアルカンスルホン酸を含む反応混合物で完全に充填されることである。
ジアルキルジスルフィドが対応するアルカンスルホン酸に酸化された後、この変換から得られた生成物の混合物に蒸留精製が行われる。蒸留精製は、好ましくは、第一蒸留及び下流蒸留、第二蒸留に更に分割され、第一蒸留は、アルカンスルホン酸から低沸点物を除去し、第二蒸留は高沸点物を除去する。最も簡単な場合では、この蒸留精製は、2つの蒸留塔内で行われる。あるいは、この蒸留精製は、また、2つの熱的に結合された蒸留塔又は分割壁塔と呼ばれるもので行ってもよい。従って、本発明の方法は、好ましくは、分割壁塔で、又は少なくとも2つの蒸留塔で、好ましくは少なくとも2つの熱的に結合された蒸留塔で、本発明のプロセスから得られたアルカンスルホン酸の精製をも包含する。
本発明は更に以下の項目によって記述される:
1.触媒量の硝酸の存在下で、アルカンスルホン酸の溶液中で、式R−S2−Rの対称ジアルキルジスルフィドを酸化する工程を含む、式R−SO3−Hのアルカンスルホン酸の製造方法であって、ここでRはC1〜C12アルキル基を表し、溶媒として使用されるアルカンスルホン酸は当該ジアルキルジスルフィドの酸化から得られるアルカンスルホン酸と同一であり、溶液中のジアルキルジスルフィドの濃度が20質量パーセント以下であり、ジアルキルジスルフィド対硝酸の比が2000:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)の範囲であり、溶媒として使用されるアルカンスルホン酸の濃度が70質量パーセントを上回ることを特徴とする、前記方法。
2.ジアルキルジスルフィドがジメチルジスルフィドであり、アルカンスルホン酸がメタンスルホン酸である、項目1に記載の方法。
3.ジアルキルジスルフィド対硝酸の比が500:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)の範囲である、項目1又は2に記載の方法。
4.ジアルキルジスルフィド対硝酸の比が500:1(モル/モル)〜2:1(モル/モル)の範囲である、項目1又は2に記載の方法。
5.アルカンスルホン酸中のジアルキルジスルフィドの濃度が約10質量パーセント以下である、項目1から4までのいずれか1項に記載の方法。
6.前記方法が約90℃以下の温度で実施される、項目1から5までのいずれか1項に記載の方法。
7.前記方法が約70℃〜約90℃の温度で実施される、項目6に記載の方法。
8.溶媒として使用されるアルカンスルホン酸の濃度が少なくとも80質量パーセントである、項目1から7までのいずれか1項に記載の方法。
9.溶媒として使用されるアルカンスルホン酸の濃度が少なくとも90質量パーセントである、項目8に記載の方法。
10.酸化のために、空気、遊離型の酸素で富化されたガス流、及び/又は遊離型の純粋な酸素を供給する、項目1から9までのいずれか1項に記載の方法。
11.酸化のために、酸素を含み、21体積%を上回る遊離型の酸素を含有するガス流を供給する、項目10に記載の方法。
12.前記方法を、1バールを上回り約20バールまでの圧力で実施する、項目1から11までのいずれか1項に記載の方法。
13.前記方法を、2バールを上回り約15バールまでの圧力で実施する、項目12に記載の方法。
14.ジアルキルジスルフィドとアルカンスルホン酸との間で可溶化剤を使用する、項目1から13までのいずれか1項に記載の方法。
15.式R−SO2−S−Rのアルカンスルホン酸S−アルキルエステルを、ジアルキルジスルフィドとアルカンスルホン酸との間で可溶化剤として使用し、その際、アルカンスルホン酸S−アルキルエステルのアルキル基が、変換されるべきジアルキルジスルフィドのアルキル基と同一であり、且つアルカンスルホン酸のアルキルと同一である、項目14に記載の方法。
図1は、試料温度を、圧力/蓄熱試験(実験23)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で秒単位の時間の関数として℃で示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図2は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験23)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で秒単位の時間の関数としてバールで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図3は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験23)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてバールで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図4は、温度の時間依存的変化を、圧力/蓄熱試験(実験23)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてK/分で示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図5は、熱出力を、圧力/蓄熱試験(実験23)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてW/kgで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図6は、試料温度を、圧力/蓄熱試験(実験24)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数として℃で示す。調査した材料は、次のように、実験23からの反応流出物であった。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図7は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験24)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数としてバールで示す。調査した材料は、次のように、実験23からの反応流出物であった。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図8は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験24)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてバールで示す。調査した材料は、次のように、実験23からの反応流出物であった。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図9は、試料温度を、圧力/蓄熱試験(実験25)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数として℃で示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図10は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験25)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数としてバールで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図11は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験25)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてバールで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図12は、温度の時間依存的変化を、圧力/蓄熱試験(実験25)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてK/分で示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図13は、熱出力を、圧力/蓄熱試験(実験25)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてW/kgで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約70%
図14は、圧力/蓄熱試験(実験26)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数として、試料温度を℃(実線)で示し、圧力をバール(破線)で示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:110mlの容積を有するステンレス鋼1.4571、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約73%
図15は、温度の時間依存的変化を、圧力/蓄熱試験(実験26)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてK/分で示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:110mlの容積を有するステンレス鋼1.4571、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約73%
図16は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験26)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてバールで示す。試料の組成:79.2gのメタンスルホン酸/21.38gのジメチルジスルフィド/5gのH2O/1.1gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:110mlの容積を有するステンレス鋼1.4571、 総試料体積:約80ml、 試料容器の充填レベル:約73%
図17は、圧力/蓄熱試験(実験27)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数として試料温度を℃で示す。試料の組成:110.67gのメタンスルホン酸/11.0gのジメチルジスルフィド/2.6gのH2O/0.57gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約81ml、 試料容器の充填レベル:約74%
図18は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験27)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で時間(秒)の関数としてバールで示す。試料の組成:110.67gのメタンスルホン酸/11.0gのジメチルジスルフィド/2.6gのH2O/0.57gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約81ml、 試料容器の充填レベル:約74%
図19は、圧力を、圧力/蓄熱試験(実験27)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてバールで示す。試料の組成:110.67gのメタンスルホン酸/11.0gのジメチルジスルフィド/2.6gのH2O/0.57gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約81ml、 試料容器の充填レベル:約74%
図20は、温度の時間依存的変化を、圧力/蓄熱試験(実験27)にて断熱熱量計(Phi−TECII)で試料温度(℃)の関数としてK/分で示す。試料の組成:110.67gのメタンスルホン酸/11.0gのジメチルジスルフィド/2.6gのH2O/0.57gのHNO3(65%)/O2、 閉鎖した試料容器:115mlの容積を有するハステロイC276、 総試料体積:約81ml、 試料容器の充填レベル:約74%
実施例:
A)ジメチルジスルフィドの酸化における溶媒としてのメタンスルホン酸の適性
メタンスルホン酸を、ジメチルジスルフィドの酸化によるメタンスルホン酸の製造における溶媒としての適性について10回の試験で調べた。これを、様々な量のジメチルジスルフィドのメタンスルホン酸、硝酸(65質量%)及び少量の水の溶液を調製し、それらをオートクレーブに移すことによって行った。ジメチルジスルフィドのメタンスルホン酸への変換を、50℃〜90℃の温度、3バールから12バールまでの酸素の圧力で行った。この目的のために、酸素を、浸漬管を介してそれぞれの試料に導入し、撹拌機を使用して、反応混合物における最適分布を確保する。実験1〜10における反応混合物の個々の組成、及びこれらの反応における特定の反応条件を、表2にまとめる。
表2に再現された実験結果は、メタンスルホン酸(MSA)が原則的にジメチルジスルフィド(DMDS)のメタンスルホン酸への酸化における溶媒として適していることを示す。しかしながら、選択した反応条件(圧力、温度及び時間)に応じて、互いに大幅に異なるメタンスルホン酸の収率が得られる。メタンスルホン酸の収率は、例えば、78.0%(実験1)と99.0%超(実験5、6及び10)との間で変動する。
B)反応パラメータの生産性の最適化
オートクレーブにおける更なる実験11〜22では、反応パラメータを、最大の生産性(高いメタンスルホン酸の収率及び短い反応時間又は滞留時間)を視野に入れて最適化した。
反応混合物11〜22の個々の組成とこれらの実験における特定の反応条件を表3にまとめる。特定の反応温度に依存して、100:1(モル/モル)〜1:1(モル/モル)の範囲のジメチルジスルフィド対硝酸の比の場合、ジメチルジスルフィドの実質的に完全な変換は、ちょうど1時間以内に得られる。実験21では、実際に、ジアルキルジスルフィドの完全な変換は、30分以内に達成される。
C)反応パラメータの安全性の最適化
実験23〜27では、ジメチルジスルフィド、メタンスルホン酸、硝酸及び水の様々な混合物の反応挙動を、主として断熱条件下で純粋な酸素を添加して、プラントの安全性の観点から試験した。この目的のために、数多くの実験を、様々な実験条件で、それぞれの場合に、断熱熱量計(Phitec II)で閉じた試料を使用して行った。
1.試料:
1.1 メタンスルホン酸
1.2 ジメチルジスルフィド
1.3 硝酸、65%濃度
1.4 DI水(脱イオン水、即ち、完全に脱塩した水)
2. 断熱条件下での反応挙動の調査
2.1 断熱熱量計(Phi−TEC II)における測定
2.1.1 測定方法
Phi−TEC IIは、比較的少量、例えば、10〜100mlの試料を用いても工業プラントの条件下で大きな反応器の挙動をシミュレートするために使用することができるPC制御熱量計である。
PHITEC II熱量計の場合、反応において検出可能な熱出力(典型的には、閉じた試料容器を使用する場合、約2〜5W/kg)を考慮して、(義務付けた実験条件に依存して)比較的高い測定精度が得られる加圧/加熱積分法が使用される。反応の発熱と分解ガスの生成を反映する、経時的に測定された温度及び圧力のプロファイルから、当該試料の熱安定性を調べることができる。
実験を、断熱熱量計を用いて行い、全測定装置を、耐圧オートクレーブ内に設置する。
圧力容器には、110mlの体積を有する材料番号1.457のステンレス鋼製の円筒形試料容器(あるいは、ハステロイ製の試料容器)が装入され、装入は、加熱ユニットが、試料容器を完全に囲みながら、それとの機械的接触を全く有していないヒータシステムで行われる。試料容器の底部に配置されている磁気撹拌棒(磁気ノミ又は撹拌棒とも呼ばれる)を使用して、試料を撹拌する。
試料容器は、典型的には、わずか0.15mmの壁厚を有する、非常に薄い壁を有する。従って、測定の間に閉じた試料容器に生じ、且つ蒸気圧及び分解ガスの分圧で構成された圧力は、試料容器の変形を防止するために、周囲のオートクレーブ内で、追尾制御システムを介しても確立される。
試料容器の周囲温度は、継続的に試料温度に適合され、それによって試料から周囲環境への熱の流れを大幅に防止する。従って、周囲温度は、どの時点においても試料温度と周囲温度との間の差が0ケルビンであり、そして断熱条件が有効であることがないように制御される。
試料容器の熱容量対試料の熱容量の好ましい比は、以下の式で与えられるように、いわゆるファイ因子Φによって定量化された、比較的高い測定の感度をもたらす:
無次元ファイ因子の値は、理想的には1とあまり変わらない。
それぞれの実験で測定された最大断熱温度の上昇は、容器を加熱するために必要なエネルギーを考慮するために、ファイ因子によって補正される。
2.1.2 実験手順と測定結果
2.1.2.1 実験23
115mlの容量を有する、ニッケル−クロム−モリブデン合金ハステロイC276から作られた、閉じた試料容器を使用し、その際、容器は分子状酸素を供給するための浸漬管と撹拌棒を備えていた。
固有の蒸気圧の下で、予め排気された試料容器に、最初にメタンスルホン酸を装入し、さらに硝酸及び水のフラクションを装入し、そしてジメチルジスルフィドを添加した。その後、試料を70℃の設定値温度に加熱した。ヒーターのスイッチを切った時、その後の期間において弱い発熱反応が表れ、その際、酸素の添加の時点までに72℃の温度に達した。この後に、できるだけ迅速に12バールの全圧を設定するために、酸素の供給を使用する目的で、約7.5バールの試料容器内の初期圧力で、純酸素を添加した。この目的のために、酸素フラスコの減圧ステーションを目標圧力に設定し、基準圧力計を用いて確認した。供給ラインに設置された逆流防止手段は、ガスの逆流を防止した。酸素を導入した直後に、非常に強い発熱反応が、非常に急激な圧力上昇を伴って開始した。
非常に強い発熱反応のために、圧力制限にもかかわらず、試料容器内の圧力、及び酸素の供給ラインのバルブの遮断は、設定値圧力を十分に超えて上昇し、20.4バールの最高値に達した。試料温度は119℃の最高値に達した。温度のトラッキング制御系が、非常に急速な温度上昇に追従することができなかったので、達成可能な最高温度はさらに高くなることが想定されている。(温度上昇と圧力上昇の評価に含まれないものは、酸素の導入速度及び注入による圧縮熱のフラクションの効果である。)
温度及び圧力を、それぞれ、約84℃及び約11.2バールに低下させた後、酸素を12バールまで再び注入した。これは、最初の酸素の添加と比較して著しく程度が弱いが、更なる発熱効果をもたらした。
図1及び図2は、それぞれ、試料温度と圧力の時間依存性プロフィールを示し、図3は、圧力の温度依存性プロフィールを示す。結果の不確実性は、温度の場合±1Kであり、圧力の場合±0.4バールである。図4は、試料温度の関数としての温度の時間依存的変化を示し、図5は熱出力の温度関係を表す。発熱出力の計算のために、試料の比熱を一定圧力(cp)で推定した。この目的のために、有機化合物のフラクションの場合、2J/(g*K)の一定圧力(cp)における比熱が想定され、無機フラクションの場合、4.1J/(g*K)の(cp)が想定された。
この実験を行った際に、ジメチルジスルフィドの濃度により、温度及び圧力が非常に急速に増加した。しかしながら、実験条件下で、試料容器の損傷はなく、確かに破壊されていなかった。そのため、この実験で生じた温度及び圧力上昇は、重要ではなかった。このように、20質量%の濃度は、ジアルキルジスルフィドの対応するアルカンスルホン酸への酸化を依然として安全に且つ容易に実施することができる、本発明の方法における限界領域を表す。従って、ジアルキルジスルフィドのアルカンスルホン酸への酸化の制御可能な実施のために、反応混合物中のジアルキルジスルフィドの濃度は20質量%以下、好ましくは20質量%未満であるべきである。
2.1.2.2 実験24
この実験では、実験23からの反応流出物を使用し、異なる温度での酸素の添加の効果を調べた。この目的のために、試料容器に、実験23からの反応流出物を充填し、試料を、まず、撹拌機を運転しながら50℃の設定値温度に加熱した。ヒーターのスイッチを切った後、圧力は約0.7バールであり、温度は一定に保たれた。その後、純粋な酸素を、12バールの最終的な設定圧力を達成するために、試料容器の浸漬管を介して添加した。この目的のために、酸素フラスコの減圧ステーションを、この圧力に設定し、基準圧力計を用いて確認した。供給ラインに設置された逆流防止手段が逆流からのガスを防止した。
酸素の比較的速い注入でも、最初に約60℃までの、急激な温度上昇は明白であった。この時点で、試料容器内の圧力は、圧力制限と酸素供給ライン弁の遮断にもかかわらず、設定圧力よりも高く上昇し、約13バールの値に達した。若干低下した後、試料温度は、発熱反応の間に放出される熱だけの結果として、エネルギーの外部電源なしで約105℃まで上昇した。これと同時に13バールから3バールまでの圧力の低下が起こった。111°Cへの加熱と短い導入期間の後、酸素を再び12バールの設定値圧力まで注入し、12.1バールの圧力が確立されつつあった。注入中及びその後も、約1Kのわずかな温度の変化が認められた。この後に、121℃の最終温度まで更に2つの加熱工程を行ったが、発熱反応は全く認められなかった。そのため、実験を中止した。室温への冷却及び試料容器の放圧後、残りの試料を除去した。
図6は、試料温度の時間依存性プロフィールを示し、図7及び図8は、それぞれ、圧力の時間依存性及び温度依存性プロフィールを示す。測定精度は、温度の場合±1Kであり、圧力の場合±0.4バールである。
図6及び図7に示すような温度及び圧力のプロフィールは、実験23からの反応流出物の後続反応において、一定の変換がまだあることを示す。しかしながら、この後続反応では、温度の発現と圧力の発現の両方が、前述の変換における発現よりも有意に低い。2つの実験23及び24は、ジアルキルジスルフィドの対応するアルカン酸への酸化が、2つの連続した反応器内で制御可能に行うことができることを示す。
2.1.2.3 実験25
この実験では、酸素を50℃(実験23における70°Cの対応する温度とは対照的に)で添加し、設定値圧力は12バールであった。この目的のために、115mlの容量を有する、ステンレス鋼合金ハステロイC276製の閉じた試料容器を使用し、この容器は浸漬管及び撹拌棒又は撹拌ノミ(stirring flea)を備えていた。
固有の蒸気圧の下で、予め排気された試料容器に、最初にメタンスルホン酸を装入し、さらに硝酸及び水の対応するフラクションを装入した。その後、ジメチルジスルフィドの対応するフラクションを試料容器に添加した。その後、試料を、撹拌機を運転しながら、50℃の設定値温度に加熱した。
ヒーターのスイッチを切った時、その後の期間において、非常に弱い発熱反応が表れ、その際、酸素の添加の時点までに51.4℃の温度に達した。酸素を用いてできるだけ急速に12バールの全圧を設定するために、約6.7バールの圧力で、試料容器の浸漬管を介した純酸素の添加を開始した。この目的のために、酸素フラスコの減圧ステーションを、対応する圧力に設定し、基準圧力計を用いて確認した。供給ラインに設置された逆流防止手段は、ガス流の逆流を防止した。酸素を導入した直後に、非常に強い発熱反応が、非常に急激な圧力上昇を伴って表れた。酸素供給フラスコの圧力制限と入口弁の閉鎖にもかかわらず、試料容器内の圧力は約18.5バールまで上昇した。試料の温度は約98℃の最大値に達した。温度のトラッキング制御系が、非常に急速な温度上昇に追従することができなかったので、達成可能な最高温度はさらに高くなることが想定されている。(温度上昇と圧力上昇の評価に含まれないものは、酸素の導入速度及び注入による圧縮熱のフラクションの効果である。)最高温度に達し、酸素供給を遮断し、さらに約8.9バールへの圧力の低下後に、実験を終了した。
図9は、試料温度の時間依存性プロフィールを示す。図10及び図11は、それぞれ、圧力の時間依存性及び温度依存性プロフィールを表す。測定精度は、温度の場合±1Kであり、圧力の場合±0.4バールである。図12は、試料温度の関数としての温度の時間依存的変化を示し、図13は、試料温度の関数としての熱出力を示す。(発熱)熱出力を計算するために、一定圧力(cp)における試料の比熱を推定する。この目的のために、有機化合物のフラクションの場合、2J/(g*K)の一定圧力(cp)における比熱が想定され、無機フラクションの場合、4.1J/(g*K)の(cp)が想定される。
実験25では、ジメチルジスルフィドの対応するメタンスルホン酸への酸化は、実験23における対応する温度よりも20℃低い、50℃の温度で酸素を供給することによって開始する。従って、温度の時間依存的変化と反応の熱出力に関する曲線プロファイルも、実験23における対応する曲線プロファイルと比較して、実験25においてこの温度差だけシフトしている。このシフトは別として、温度の時間依存的変化に関するプロフィールと実験25における熱出力に関するプロフィールは、実験23におけるプロフィールに平行している(図4〜5及び図12〜13を参照)。同様のコメントが、実験23及び25(図1〜2及び図9〜11を参照)における温度の発現と圧力の発現に関しても適用される。
実験23及び実験25の結果は、ジアルキルジスルフィドの酸化が、それぞれの開始温度とは無関係に、両実験において同等の発熱と共に進行することを示す。
2.1.2.4 実験26
ハステロイC276合金製で、且つ浸漬管を有する試料容器を使用した、実験23〜25とは対照的に、この実験を、材料番号1.4571のステンレス鋼製の試料容器内で行った。この実験における閉じた試料容器は、110mlの容量を有し、撹拌棒又は撹拌ノミを備えているが、浸漬管を有していない。
酸素の添加前の初期設定値温度は50℃であり、酸素添加のための設定値圧力は12バールであった。
固有の蒸気圧の下で、予め排気された試料容器に、まず、メタンスルホン酸を装入し、さらに硝酸及び水のフラクションを装入した。その後、ジメチルジスルフィドのフラクションを試料容器に添加し、続いて、撹拌機を運転しながら、試料を50℃の設定値温度に加熱した。
試料温度の時間依存性プロフィール(実線)と圧力の時間依存性プロフィール(破線)を、一緒に図14に示す。図15は、試料温度の関数としての試料温度の時間依存的変化を示し、図16は、圧力の温度依存性プロフィールを示す。
50℃の設定値温度に達した時に、ヒーターのスイッチを切り、その後の期間において、酸素の添加を開始する前に約51.5℃の温度が確立された。この後に、純酸素を、酸素の供給により可能な限り迅速に12バールの全圧力を設定することを目的に、試料容器内で約71.2バールの圧力で添加した。この目的のために、酸素フラスコの減圧ステーションを目標圧力に設定し、基準圧力計を用いて確認した。供給ラインに設置された逆流防止手段はガスが逆流することを防止した。一定の遅延により、酸素導入後に非常に強い発熱反応が生じ、また、約350℃の最高温度に達した。遅延は、実験23〜25とは対照的に、酸素が、浸漬管を介して試料容器内に導入されない代わりに、液相に上から導入されるという事実に起因する。
酸素の添加の段階では、熱量計が実験のために置かれていたオートクレーブボックスからバンバンという雑音が聞こえた。実験はその後、加熱システムのスイッチを切ることで終了した。約5.5バールまでの実際の圧力上昇は、まだ記録されていたが、その後の圧力/時間プロファイルはもはや記録されていなかった。これは、最大許容圧力が100バールである、圧力変換器の破壊に起因するものである。
ジメチルジスルフィドの蒸気は、空気又は酸素を用いて、爆発性混合物を形成することができ、対応する発火温度は370℃である。可燃性ガスと空気又は酸化性ガスを有する蒸気との混合物の発火温度に関しては、圧力上昇と共に温度が非常に急激に低下することが知られている(例えば、Hirsch, W., Brandes, E., “Zuendtemperaturen binaerer Gemische bei erhoehten Ausgangsdruecken”, Physikalisch Technische Bundesanstalt, Braunschweig, 2005を参照のこと)。急激な温度上昇及び酸素添加時の上昇した初期圧力により、発火温度を得るための前提条件は、ジメチルジスルフィドに対して提供された。従って、試料容器内の自由気体体積が比較的小さいにもかかわらず、極めて高い確実性で、酸素及びジメチルジスルフィドを含有する気相が自己着火したと仮定することができる。
この実験は、明らかに発火性ジアルキルジスルフィドと酸素により爆発の危険のある混合物の形成を根本的に避けなければならないことを示す。
2.1.2.5 実験27
合金ハステロイC276製の試料容器を使用した。この閉じられた試料容器は、115mlの容積を有し、浸漬管及び撹拌棒又は撹拌ノミを備えている。
酸素の添加前の初期設定温度は50℃であり、添加のための設定値圧力は12バールであった。
固有の蒸気圧の下で、予め排気された試料容器に、最初にメタンスルホン酸を装入し、さらに硝酸及び水のフラクションを装入した。その後、ジメチルジスルフィドのフラクションを試料容器に添加し、続いて、撹拌機を運転しながら、試料を70℃の設定値温度に加熱した。
試料温度及び圧力の時間依存性プロフィールを、それぞれ、図17及び図18に示した。図19は、圧力の温度依存性プロフィールを示し、図20は、試料温度の関数として試料温度の時間依存的変化を示す。
発熱反応は、70℃の温度に達した時に、ヒーターのスイッチを切った直後に開始した。約71.3℃で、12バールの圧力を確立することを目的に、酸素を急速に添加した。初めてこの圧力に達し、入口弁が閉じられた時、試料温度は約93℃であった。圧力のその後の低下に続いて、12バールの圧力を再確立するために酸素を繰り返し注入した。しかしながら、温度に伴う増加は、もはや自発的ではなかったが、代わりに比較的遅かった。約4900秒の時間を超えて、酸素を繰り返し更に添加することにより、約110℃の最高試料温度を達成した。
この実験では、温度の発現だけでなく、圧力の発現も、実験23及び実験25よりもはるかに小さい(図17及び18図を参照)。従って、実験23及び実験25とは対照的に、この実験においてジメチルジスルフィドのために選択された出発濃度は、12バールの設定値圧力を著しく超えずに、長時間にわたって酸素の不連続な添加を可能にする。実験27のプロセスパラメータ、特にジメチルジスルフィドの選択された濃度は、従って、安全上の問題なく運転されるべきメタンスルホン酸の対応する製造方法を可能にする。