以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
まず、後述する各実施例の反射光検出装置としての色ずれ濃度検出装置を用いる装置の1つであるカラー画像形成装置について、図1を用いて説明する。
図1中において、末尾にY,M,C,Bkが付された参照符号により示される構成要素はそれぞれ、それらに対応する現像材(トナー)の色が、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックであることを示す。ただし、以下の説明のうち各色に共通する事項については参照符号の末尾のY,M,C,Bkを省く。
カラー画像形成装置には、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色ごとに設けられた帯電部1、感光ドラム2、露光部3、現像部4および一次転写ローラー5を有する。帯電部1は、図中の細矢印が示す方向に回転する像担持体である感光ドラム2を一様に帯電する。露光部3は、対応する感光ドラム2に対してレーザー光を照射して感光ドラム2上に静電潜像を形成する。現像部4は、感光ドラム2に対して現像バイアスを印加して静電潜像にトナーを供給し、静電潜像を可視像であるトナー像とする。一次転写ローラー5は、一次転写バイアスの印加により感光ドラム2上のトナー像を中間転写ベルト6に転写する。
転写体としての中間転写ベルト6は、駆動ローラー7によって図中の太矢印が示す方向(X方向)に回転駆動(搬送駆動)される。中間転写ベルト6の表面上(対象物上)に各色の感光ドラム2からトナー像が互いに重なるように転写されることで、カラー画像が形成される。
搬送ローラー8,9,10は、カセット20内の記録材を搬送路11に沿って二次転写ローラー12まで搬送する。二次転写ローラー12は、二次転写バイアスの印加によって中間転写ベルト6のトナー像を記録材に転写する。記録材に転写されず中間転写ベルト6に残ったトナーは、クリーニングブレード13により除去され、廃トナー回収容器14へと回収される。
トナー像が転写された記録材は、定着部15において、加熱および加圧される。これによりトナー像が定着した記録材は、搬送ローラー16により装置外へと排出される。
エンジン制御部17は、マイクロコントローラを搭載しており、該画像形成装置の不図示の各種駆動源のシーケンス制御やセンサを用いた各種制御等を行う。
中間転写ベルト6に対向する位置(中間転写ベルト6に対して図中のZ方向に離間した位置)には、後述する各実施例の色ずれ濃度センサ18が設けられている。
以下の実施例1では、色ずれ濃度センサ18を含む色ずれ濃度検出装置の構成、鏡面反射光量を検出する受光素子群の選択方法、色ずれ量の検出方法および濃度の検出方法について順番に説明する。
また、実施例2および実施例3では、色ずれ濃度センサ18の受光素子の180度位相差配置を利用した色ずれ・濃度の検出方法および中間転写ベルトの速度検出方法について説明する。
また、実施例4では、受光素子の180度位相差配置を利用した検出対象物(ここでは、中間転写ベルト6)の表面の傾斜角度の変化を検出する方法について説明する。
さらに、実施例5では、検出対象物の表面(対象面)の傾斜による光線振れ量を抑制し、複数の受光素子の必要長を短くする構成について説明する。
図2には、本発明の実施例1である色ずれ濃度検出装置のセンサヘッドとしての色ずれ濃度センサ(反射光センサ)18の構成を示している。色ずれ濃度センサ18は、赤外波長の光源201と、中間転写ベルト6に照射される光スポット204の幅を制限する開口202を有する開口部材203と、中間転写ベルト6で反射した光(反射光)を受光可能な複数の受光素子205とを有する。
複数の受光素子205は、光源201から発せられた光が開口202を通って射出して中間転写ベルト6の表面の一部204で反射して進む主たる方向である図中のx方向に配列されてラインセンサを形成している。本実施例ではx方向は図1中に示したX方向、すなわち中間転写ベルト6の移動(搬送)方向に対応する。本実施例では、中間転写ベルト6における搬送方向に直交する幅方向をy方向とし、色ずれ濃度センサ18から中間転写ベルト6に向かう方向(x方向およびy方向に直交する方向)を、図1のZ方向に対応するz方向とする。
図3(a),(b)には、色ずれ濃度センサ(以下、単にセンサという)18を含む色ずれ濃度検出装置の構成を示している。図3(a)には、鏡面反射検出領域を選択(設定)する際の色ずれ濃度検出装置の動作を示している。図3(a)において、選択手段としての領域選択部305は、センサ18に対して、複数の受光素子205を分割して複数の受光素子群を設定するための領域設定情報306を出力する。各受光素子群は、複数の受光素子により構成される。
センサ18(複数の受光素子205)は、中間転写ベルト6からの鏡面反射光を受光してこれを光電変換し、検出光量を示すアナログ電圧値301を信号処理部302に出力する。信号処理部302のA/D変換部303は、アナログ電圧値301をデジタル化して検出光量情報304を生成し、これを領域選択部305に出力する。
領域選択部305は、センサ18において設定された複数の受光素子群のそれぞれの出力から得られた検出光量情報に基づいて、複数の受光素子群の中から鏡面反射検出領域としての第1の受光素子群と拡散反射検出領域としての第2の受光素子群とを選択する。第1の受光素子群は、中間転写ベルト6からの拡散反射光よりも鏡面反射光を主として受光する受光素子群である。また、第2の受光素子群は、中間転写ベルト6からの鏡面反射光よりも拡散反射光を主として受光する受光素子群である。本実施例では、中間転写ベルト6上にトナー像が形成されていない状態において、複数の受光素子群のうち検出光量が最大の受光素子群を第1の受光素子群として選択し、それ以外の受光素子群を第2の受光素子群として選択する。つまり、本実施例では、第2の受光素子群が、第1の受光素子群よりも広い受光面積を持つように選択される。
図3(b)には、センサ18に対向する中間転写ベルト6の表面に色ずれ濃度検出のために用いられるトナー像である色ずれ濃度検出用画像(以下、単に検出用画像という)307が形成された状態での色ずれ濃度検出装置の動作を示している。領域選択部305は、まずセンサ18に対して、図3(a)の状態で選択した第1および第2の受光素子群を設定するための領域設定情報306を出力する。これにより、センサ18において、鏡面反射および拡散反射検出領域である第1および第2の受光素子群が設定される。
センサ18は、第1の受光素子群にて中間転写ベルト6上の検出用画像307からの鏡面反射光を光電変換し、その検出光量であるアナログ電圧値301を信号処理部302に出力する。信号処理部302のA/D変換部303は、アナログ電圧値301をデジタル化して検出光量情報304を生成し、これを色ずれ濃度算出部308に出力する。色ずれ濃度算出部(鏡面反射算出手段およびパターン間隔算出手段)308は、検出光量情報304を用いた演算により色ずれ濃度情報309を生成し、これを画像形成のためのフィードバック情報として図1に示した画像形成装置のエンジン制御部17に送信する。
ここで、光線振れにかかわらず鏡面反射光を検出可能とするようにセンサ18において第1の受光素子群を可変に選択する方法について説明する。
まず、図4(a)〜(d)を用いて、光線振れが発生する例について説明する。図4(a)には、図1に示す画像形成装置においてセンサ18が基準位置に基準角度で取り付けられた状態(以下、基準状態という)を示している。センサ18は、中間転写ベルト6のうちこれが架け渡された駆動ローラー7のローラー面に沿った曲面部分の表面(以下、ベルト曲面という)に対向するように配置されている。基準状態では、ベルト曲面からの鏡面反射光線402は、複数の受光素子205のうちそれらが配列された方向(X方向)における中央に入射する。
図4(b)には、センサ18の取り付け位置が図4(a)に示した基準位置からX方向にずれた場合を示している。センサ18の取り付け位置がX方向にずれると、センサ18からベルト曲面への光線401の入射位置が変化するため、鏡面反射光線402の反射方向が変化して光線振れが発生する。この結果、複数の受光素子205のうち鏡面反射光線402が入射する位置がそれらの中央から光線振れの方向および量に応じてX方向にシフトする。
図4(c)には、センサ18の取り付け角度が図4(a)に示した基準角度からずれた場合を示す。このとき、センサ18からベルト曲面への光線401の入射角度および入射位置が変化するため、鏡面反射光線402の反射方向が変化して光線振れが発生する。これの結果、複数の受光素子205のうち鏡面反射光線402が入射する位置が線振れの方向および量に応じてX方向にシフトする。
図4(d)には、センサ18内において光源201の実装位置が本来の位置からずれた場合を示す。この場合、光源201と開口202との位置関係から、ベルト曲面に対する光線401の入射位置および入射角度が変化するため、鏡面反射光線402の反射方向が変化して光線振れが発生する。この結果、複数の受光素子205のうち鏡面反射光線402が入射する位置が線振れの方向および量に応じてX方向にシフトする。
図5(a)〜(d)にはそれぞれ、図4(a)〜(d)に示した状態にてベルト曲面から鏡面反射光線(ここではX方向にある幅を有する光線束とする)402が入射する受光素子群501を示す。また、受光素子群501の上側には、該受光素子群501上での鏡面反射光線402の光強度分布を示している。
このように、センサ18の中間転写ベルト6に対する取り付け位置や取り付け角度およびセンサ18の内部での光源の実装位置ずれ等に起因して、鏡面反射光線の光線振れが発生し、複数の受光素子205への該鏡面反射光線の入射位置がシフトする。
次に、図6から図8(a)〜(m)を用いて、複数の受光素子205から鏡面反射検出領域である第1の受光素子群を選択(設定)する方法について説明する。
図6には、センサ18において参照する受光素子群(第1の受光素子群として選択するか否かを判定する受光素子群:以下、参照素子群という)を切り替えるスイッチ回路を示している。複数の受光素子205を構成する個々の受光素子205a〜205pは、スイッチ回路601に接続されており、領域選択部305からの領域設定情報306に基づいて出力信号の接続先がVrefとVscaとの間で切り替えられる。参照素子群として選択された受光素子(ここでは、図5(a)〜(d)のそれぞれに示したように4つの受光素子)の検出電圧は合算されてVrefとして出力され、他の受光素子の検出電圧は合算されてVscaとして出力される。
図7には、領域設定情報306に基づいて切り替えられる各受光素子の出力信号の接続先を示す。本実施例では、領域設定情報306は4ビットの信号である。例えば、図中のSW306(1,1,1,1)で示される行は、領域設定情報306が全てHighレベルの4ビット信号である場合の受光素子205a〜205pの出力信号の接続先を示している。このとき受光素子205a〜205dは参照素子群としてVrefに接続され、他の受光素子はVscaに接続される。このように参照素子群が、領域設定情報306としての4ビットの信号(以下、切替え信号という)に応じて切り替えられる。
図8(a)〜(m)には、切替え信号の変化に応じて参照素子群801が切り替わっていく様子を示す。例えば図8(a)には、16個の受光素子205a〜205pのうち、図7で示した4ビットの切替え信号SW306(1,1,1,1)によって選択される4つの受光素子205a〜205dからなる参照素子群801を黒色で示している。
本実施例では、センサ18の受光領域全体がX方向に配列された16個の受光素子205a〜205pにより長さ(受光領域全長)L2を有するように形成されている。そして、長さL2の受光領域全体がX方向にn=16に分割され、その中で4個の受光素子により形成される長さL1の参照素子群801がその長さL1を保ちながら切替え信号(領域設定情報306)に応じて受光素子1個ごと(m=1)にシフトされる。こうして、領域選択部305は、X方向において互いに隣り合う第1の数(n/4=4)の受光素子を、該第1の数以下の第2の数(m=1)の受光素子ずつシフトさせて複数(13)の参照素子群801を設定する。そして、該複数の参照素子群801のうち最も大きな検出電圧Vrefが得られる参照素子群を鏡面反射検出領域としての第1の受光素子群を選択する。
図5(a)〜(d)に示した状態と鏡面反射検出領域として選択される参照素子群801との関係について説明する。図5(a)に示す基準状態では、図8(g)に示すように受光領域全体の中央にて選択された参照素子群801の検出電圧値Vrefが最大となり、この参照素子群801が鏡面反射検出領域として選択される。図5(b)に示した光線振れ状態では、例えば図8(e)に示すように光線振れの方向および量に応じて中央からシフトした参照素子群801の検出電圧値Vrefが最大となり、この参照素子群801が鏡面反射検出領域として選択される。同様に、図5(c)および図5(d)に示した光線振れ状態ではそれぞれ、例えば図8(l)および図8(b)に示すように中央からシフトした参照素子群801の検出電圧値Vrefが最大となり、その参照素子群801が鏡面反射検出領域として選択される。
このように、光線振れの方向および量に応じて検出電圧値Vrefが最大となる参照素子群801を鏡面反射検出領域として設定することで、光線振れが発生しても鏡面反射検出領域自体を拡大することなく、鏡面反射光の光量を精度良く検出することができる。
次に、図9(a)に示すように(つまりは本実施例のように)センサ18の受光領域(全長L2)を複数の受光素子205により形成する場合の効果を、図9(b)に示すように同じ受光領域全長を有する単一の受光素子901で形成する場合との比較により説明する。以下の説明において、センサ18の受光領域を複数の受光素子205により分割して形成することを条件1といい、単一の受光素子901により形成することを条件2という。
複数の受光素子205および単一受光素子901の全長L2は、センサ18の中間転写ベルト6に対する取り付け位置や角度のずれに起因する光線振れが生じても、中間転写ベルト6からの鏡面反射光904が受光領域からはみ出さない大きさとする。例えば、中間転写ベルト6上の照射光スポットのサイズがΦ=0.2mm、複数の受光素子205上の反射光スポットのサイズが0.5〜0.6mm程度である場合においては、受光領域全長L2は2.41mmとする。このとき、条件1(図9(a))における16個の受光素子のそれぞれのx方向幅は0.15mmとなる。
図9(c)には、中間転写ベルト6上に検出用画像が形成されていない状態での受光領域全体での鏡面反射光の強度分布を示している。この強度分布は、条件1での受光素子205jの位置に相当する受光位置を中心とした鏡面反射光904による強度ピークを有する。このとき、条件1では、図8(h)に示す参照素子群が鏡面反射検出領域に選択される。
図9(d)は、中間転写ベルト6上に検出用画像が形成されている状態での受光領域全体での鏡面反射光904の強度分布を示している。この状態では、受光領域の全域にわたって検査用画像からの拡散反射光903がほぼ均一に入射している。
図9(e)には、図9(c)および図9(d)に示すような鏡面反射光と拡散反射光の強度分布が受光領域上にて形成されるときの条件1の場合と条件2の場合とで得られる濃度検出信号を時刻の経過とともに示している。
Vitbは中間転写ベルト6からの鏡面反射光の強度に対応する濃度検出信号の平均値を示す。鏡面反射光の強度に対応する濃度検出信号は、中間転写ベルト6の表面の反射率のむらや表面の微細な凹凸に起因するノイズ成分としての振幅揺らぎVnが含まれる。このことは、条件1と条件2の双方において同じである。
一方、中間転写ベルト6上の検出用画像からの拡散反射光については、条件1と条件2において反射光の受光面積の差に起因した検出光量の差が生じる。条件1では、検出用画像からの拡散反射光を受光するのは鏡面反射検出領域(第1の受光素子群)以外の拡散反射検出領域(第2の受光素子群)であり、条件2に比べて受光面積が小さい。このため、条件1における拡散反射検出領域から得られる濃度検出信号の電圧値Vton1は条件2の場合に比べて小さく(濃度としてはより濃く)、条件2よりも大きい振幅V1が得られる。これに対して、条件1よりも検出用画像からの拡散反射光の受光面積が大きい条件2では、濃度検出信号の電圧値Vton2がVton1より大きく(濃度としてはより薄く)、V1より小さい振幅V2しか得られない。
S/Nで比較すると、V1/Vn>V2/Vnとなる。このため、条件1、つまりは本実施例のように受光領域において鏡面反射検出領域を可変に選択可能とすること、さらには鏡面反射検出領域と拡散反射検出領域とを分離することで、濃度検出信号のS/Nを向上させることができる。
なお、本実施例では、受光領域全体のうち鏡面反射検出領域以外の全ての受光領域を拡散反射検出領域とする場合について説明しているが、鏡面反射検出領域以外の受光領域の一部のみを拡散反射検出領域としてもよい。
次に、色ずれの検出方法について図10(a)〜(d)を用いて説明する。図10(a)には、中間転写ベルト6上に形成された色ずれ検出に用いられるトナー像としての検出用画像を示す。色ずれ検出に用いられる検出用画像では、X方向における互いに反対側に傾斜した2組のトナーパッチ群111,121がX方向に直列的に配置されている。各トナーパッチ群は、X方向における0(360)度位相位置に配置された最大濃度の基準色のトナーパッチ(Bk)1001と、これらの間の180度位相の位置に1つずつ配置された比較色のトナーパッチ(Y)1002,(M)1003,(C)1004とを含む。なお、図では、基準色トナーパッチ1001の参照符号にX方向に順にa〜hの添え字を付し、比較色トナーパッチ(Y)1002,(M)1003,(C)1004の参照符号には、その比較色トナーパッチの両側の基準色のトナーパッチの添え字を付している。例えば、基準色トナーパッチ1001a,1001bの間には、比較色トナーパッチ(Y)1002abが配置されている。また、基準色トナーパッチ1001f,1001gの間には、比較色トナーパッチ(M)1003fgが配置されている。
センサ18は、中間転写ベルト6上に形成された各色トナーパッチからなる複数のパターンが光源201からの光によって光スポットが形成された位置を通過した時刻を順次検出する。そして、検出した通過時刻から基準色トナーパッチに対する比較色のトナーパッチの位置のずれ(つまりは基準色トナーパッチと比較色のトナーパッチとの間隔)を算出する。
次に、各トナーパッチの通過時刻の検出方法について説明する。図10(b)には、図10(a)中の2組のトナーパッチ群111,121のそれぞれに対して設定された領域A,Bに含まれる部分トナーパッチ群1011,1021を示す。部分トナーパッチ群1011は、基準色トナーパッチ1001a,1001bと、それらの間の比較色トナーパッチ(Y)1002abと含む。また、部分トナーパッチ群1021は、基準色トナーパッチ1001e,1001fと、それらの間の比較色トナーパッチ(Y)1002efとを含む。これらのトナーパッチは中間転写ベルト6の駆動に伴って図中の矢印方向に搬送され、センサ18からの光によって光スポットが形成された位置(以下、スポット位置という)1005を1つずつ通過する。
図10(c)には、図10(b)に示したトナーパッチのスポット位置1005の通過に伴ってセンサ18の鏡面反射検出領域から出力される色ずれ検出信号の電圧値(検出電圧値)Vrefを示す。トナーパッチがスポット位置1005を通過していないときは、中間転写ベルト6からの鏡面反射光が多いために電圧値Vrefは高い。基準色トナーパッチがスポット位置1005を通過するときは、中間転写ベルト6からの鏡面反射光が最少となり、また該基準色トナーパッチによって光が吸収されて拡散反射光も少なくなるため、電圧値Vrefはほぼ0となる。したがって、色ずれ検出信号の電圧振幅値は大きくなる。
一方、比較色トナーパッチ(Y)1002ab,1002efは光反射性のトナーである。トナーパッチは粒経数ミクロンのトナー群により形成されているため、トナーパッチ表面は微細な凹凸を有し、光学的には光拡散性を示す。ここでは、受光素子、比較色トナーパッチおよび光スポットのサイズの関係に依存して受光素子により受光される拡散反射光の光量が変化し、色ずれ検出信号の電圧値Vrefは0にはならない。このため、基準色トナーパッチがスポット位置1005を通過するときに比べて色ずれ検出信号の電圧振幅値は小さくなる。
図10(d)には、センサ18からの色ずれ検出信号の電圧値Vrefが信号処理部302に入力され、A/D変換部303にて閾値電圧Vthで2値化された電圧値の時間変化を示す。各トナーパッチのスポット位置1005の通過時刻は、2値化信号の2回の極性変化を検出した時刻の平均値とする。これにより、前述したトナーパッチの色の違いにより生じる色ずれ検出信号の電圧振幅値の差の影響を受けることなく、各トナーパッチの中心位置がスポット位置1005を通過するときの時刻を算出することができる。基準色トナーパッチ1001aに対する2値化信号の2回の極性変化を検出した時刻がt1a,t2aであるとき、基準色トナーパッチ1001aの通過時刻は以下の式(1)により算出される。
同様に、部分トナーパッチ群1011,1021に含まれる他のトナーパッチ1002ab,1002ef,1001e,1002ef,1001fがスポット位置1005を通過する時刻は、以下の式(2)〜(6)に示すようになる。トナーパッチ1002ab,1002ef,1001e,1002ef,1001fに対する2値化信号の2回の極性変化を検出した時刻をそれぞれ、(t1ab,t2ab),(t1b,t2b),(t1e,t2e),(t1ef,t2ef),(t1f,t2f)とする。
次に、色ずれの演算方法について説明する。ここでは、基準色(Bk)に対する黄色(Y)の色ずれの演算方法について説明する。
色ずれには、中間転写ベルト6の搬送方向(X方向)の色ずれである副走査方向色ずれと、該搬送方向に対して直交する方向(Y方向)の色ずれである主走査方向色ずれとが存在する。主走査方向色ずれおよび副走査方向色ずれの演算式を以下の式(7)〜(12)に示す。
色ずれが生じていれば、式(7)または式(8)から時刻差ΔTYが算出され、該時刻差はエンジン制御部17に送信される。エンジン制御部17は、時刻差ΔTYに基づいて、例えば、露光部3Yでの露光タイミングを補正して転写位置を調整することで、基準色Bkに対する黄色の色ずれを補正する。
ここでは、基準色に対する比較色の1つである黄色の色ずれの検出および補正について説明したが、シアン色およびマゼンタ色についても同様の処理にて色ずれの検出および補正を行うことができる。このため、シアン色およびマゼンタ色の色ずれの検出および補正についての説明は省略する。
なお、本実施例では、色ずれ検出においては鏡面反射検出領域のみを用いる場合について説明をしたが、鏡面反射検出領域からの出力から拡散反射光の出力分を減算する処理を行い、反射性トナーパッチによる振幅の低下を抑制してもよい。また、拡散反射性を有するトナーパッチ色に関しては、拡散反射検出領域のみを用いてもよい。
次に、図11(a)〜(d)を用いて濃度の検出方法について説明する。本実施例において、濃度を検出するために用いられる検出用画像は、濃度表現の最小単位が4dot×4dotであるディザパターンとし、画像の最小単位である1dotが42.3[μm]×42.3[μm]とする。
図11(a)は、検出用画像として用いるグラデーションパターン1108を示している。グラデーションパターン1108の局所的な濃淡は、上述した微細なディザパターンにより表現されている。
図11(b)には、グラデーションパターン1108上の0%濃度領域1101、25%濃度領域1102、50%濃度領域1103、75%濃度領域1104および100%濃度領域1105でのディザパターンを示す。これらの図において、枠線は視認性を高めるために表記しており、実際には存在しない。ディザパターンの黒色部は、中間転写ベルト6の表面のうちトナーが堆積(付着)したトナー堆積部1106を示す。また、ディザパターンの白色部は、トナーが存在しない領域、つまりは中間転写ベルト6の表面のうち露出した部分(以下、表面露出部という)1107を示す。
濃度が変化すると、中間転写ベルト6の表面露出部1107の面積が変化することでディザパターンにおいて入射光を鏡面反射させる領域の面積が変化する。同様に、トナー堆積部1106の面積も変化するが、トナーの色によって光反射率が異なるため、本実施例では、トナーの特性に依存しない鏡面反射光量の増減を指標としてトナーの濃度を算出する方法を採る。
図11(c)には、センサ18のうち第1の受光素子群である鏡面反射検出領域で検出される鏡面反射光量および拡散反射光量のトナー濃度依存性を示す。縦軸は検出光量を示し、横軸は濃度を示す。図中に太実線(鏡面反射)で示す鏡面反射光量については、濃度が増加すると中間転写ベルト6の表面露出面1107の面積が線形に減少するため、これに応じて検出光量が線形に減少する。図中に細点線(拡散反射BK)および細実線(拡散反射Color)でそれぞれ示す拡散反射光量については、濃度に依存して拡散反射光量が非線形に変化するが、有色トナーと黒色トナーとでは光源の波長に対する分光特性差により検出光量に差が出る。これらのことから、鏡面反射検出領域にて検出される反射光量は、図中に太点線(合成BK)および破線(合成color)で示すように,濃度の増加に伴って拡散反射光による非線形性が顕在化する特性が得られる。このため、中〜高濃度側では拡散反射光量が濃度検出誤差となる。したがって、濃度を算出するためには、鏡面反射検出領域での光量の検出値から拡散反射光量の成分を取り除く必要がある。
次に、センサ18の鏡面反射検出領域の光量検出値から拡散反射光量の成分を取り除く方法を説明する。図11(d)には、センサ18を側面から見て示している。光源201から開口202を通って検出用画像307に照射された光束401のうち鏡面反射光904は、第1の受光素子群である鏡面反射検出領域1109に入射する。このとき、検出用画像307のトナーパターン1108によって発生する拡散反射光903も、同じく鏡面反射検出領域1109に入射する。
鏡面反射検出領域1109に隣接する第2の受光素子群である拡散反射検出領域1110には、鏡面反射光904は入射せず、拡散反射光903のみが入射する。そこで、色ずれ濃度算出部308は、以下の式(13)に示す計算を行う。すなわち、鏡面反射光904と拡散反射光903が入射する鏡面反射検出領域1109の光量検出値に対応する検出電圧値Vrefと、拡散反射検出領域1110のみが入射する拡散反射検出領域1110の光量検出値に対応する検出電圧値Vscaとの差分を求める。これにより、鏡面反射光量のみに対応する電圧値Vを抽出することができる。言い換えれば、色ずれ濃度算出部308は、鏡面反射成分算出手段第1および第2の受光素子群からの出力(Vref,Vsca)を用いて、第1の受光素子群からの出力のうち鏡面反射光に対応する出力成分(V)を算出することができる。
ただし、検出光量値に対応する電圧値の差分をとる鏡面反射検出領域1109および拡散反射検出領域1110の間に同一濃度に対する拡散反射光量に対する検出感度差が存在する場合は、該電圧値を補正する必要がある。
このため、最大濃度を検出して鏡面反射光が存在しない状態での拡散反射光量に対応する検出電圧値Vrefと拡散反射光量に対応する電圧値Vscaとの比から、以下の式(14)に示すように検出感度差に基づく補正係数αを求める。
濃度の算出時には、以下の式(15)に示すように拡散反射検出領域での電圧値Vscaに補正係数αを乗じた値を鏡面反射検出領域での検出電圧値Vrefから減じことで、これらの検出領域間で検出感度差を有する拡散反射光の成分を除去することができる。
以上の方法により、鏡面反射検出領域(第1の受光素子群)および拡散反射検出領域(第2の受光素子群)のそれぞれでの検出光量値(電圧値)を用いた演算により、鏡面反射検出領域での鏡面反射光量のみを算出し、精度良く濃度を検出することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、鏡面反射検出領域を可変に選択可能とすることで、鏡面反射検出領域で得られる濃度検出信号のS/Nを向上させることができる。これにより、鏡面反射検出領域に混入する拡散反射光による検出誤差を低減し、鏡面反射光の検出精度を向上させることができる。
なお、上述したセンサ18の受光領域に設けた受光素子の数や複数の受光素子群の設定は例にすぎない。例えば、受光領域をさらに多くの受光素子を用いて(つまりはさらに多くの数に分割して)構成したり、2つ以上の第2の数(ただし、第1の数以下)の受光素子ごとにシフトさせて複数の受光素子群を設定したりしてもよい。これにより、より高精度に鏡面反射光を検出したり、鏡面反射光の検出をより短時間で行ったりすることができる。
また、拡散反射検出領域を、複数の受光素子のうち鏡面反射検出領域以外の一部として、鏡面反射検出領域と同等量の拡散反射光量を検出する領域として設定することで、濃度検出時の補正係数αの算出処理を省略してもよい。
さらに、拡散反射光量の検出のみでしか判断できないもの、例えば高濃度でのトナーパッチ内の濃度むら等を検出する場合は、拡散反射光量のみを検出してその判断を行ってもよい。
次に、図12(a)〜(c)および図13(a)〜(f)を用いて本発明の実施例2である色ずれ濃度検出装置について説明する。本実施例の色ずれ濃度検出装置における色ずれ濃度センサ(以下、単にセンサという)18(a)においては、180度の位相差を持つように2組の受光素子群を設定する。
本実施例では、センサ18Aにおいて、少ない入力チャンネル数で広範囲の光線振れに対応できるように鏡面反射検出領域と拡散反射検出領域を設定できるとともに、中間転写ベルト6の搬送速度(移動速度)を検出することが可能となる。中間転写ベルト6の搬送速度を検出することで画像形成装置の動作状態をモニタしたり、中間転写ベルト6の突発的な速度変動を検出したりすることができる。
図12(a)〜(c)には本実施例の色ずれ濃度検出装置の構成を示しており、図12(a)には鏡面反射検出領域を選択(設定)する際の色ずれ濃度検出装置の動作を示している。信号処理部302Aは、A/D変換部303、領域選択部305Aおよび色ずれ濃度算出部308を有する。
本実施例における鏡面反射検出領域および拡散反射検出領域の定義は実施例1と同じであるが、センサ18Aが有するスイッチ回路が異なる。図13(a)には、そのスイッチ回路を示している。スイッチ回路の基本的な構成は実施例1におけるスイッチ回路と同じであるが、各受光素子の出力の接続先がVaおよびVbである点が実施例1と異なる。
また、図13(b)には、各受光素子の出力の接続先と領域設定情報306Aである2ビットの切替え信号との関係を示す。例えば、図13(b)の切替え信号SW306(1,1)で示される行は、領域設定情報306Aが全てHighレベルの2ビット信号である場合の受光素子205a〜205pの出力信号の接続先を示している。このとき受光素子205a〜205dおよび受光素子205i〜205lはVaに接続され、その他の受光素子はVbに接続される。このように、センサ18Aにおいて参照する受光素子群(参照素子群)の切り替えは、領域設定情報306Aとしての2ビットの切替え信号に応じて行われる。
図13(c)〜(f)は、切替え信号(領域設定情報306A)に応じて切り替わる2組の参照素子群1301,1302を示す。各参照素子群は互いに間隔をあけて設定された2つの受光素子群により構成される。参照素子群1301のX方向での長さはL1であり、参照素子群1302のX方向での長さはL3である。
例えば、図13(c)には、図13(b)で示した切替え信号SW306(1,1)に応じて検出電圧値Vaに接続される第1組(2つ)の参照素子群1301を黒塗りで示し、検出電圧値Vbに接続される第2組(2つ)の参照素子群1302を白抜きで示している。また、図13(d)には、切替え信号SW306(1,0)に応じて検出電圧値Vaに接続される第1組(2つ)の参照素子群1301を黒塗りで示し、検出電圧値Vbに接続される第2組(1つ)の参照素子群1302を白抜きで示している。この場合、左右の端部にて白抜きで示される1つおよび3つの受光素子は参照素子群1302としては扱わない。
図13(c)〜(f)に示すように、図12(a)中の領域選択部305Aは、それぞれX方向にて互いに隣り合う第1の数(n/4=4)の受光素子からなる受光素子群を、第1の数以下の第2の数(m=1)の受光素子ずつシフトさせる。これにより、4パターンの2組の参照素子群を設定する。
次に、本実施例における鏡面反射検出領域の設定方法について説明する。領域選択部305Aは、上述したように2組(4つ又は3つ)の参照素子群をシフトしながらそれぞれの参照素子群から得られる検出電圧値Va,Vbを比較する。そして、該4つ又は3つの参照素子群のうち最も大きな検出電圧値が得られる参照素子群を第1の受光素子群である鏡面反射検出領域として選択(設定)する。他の3つ又は2つの参照素子群は、拡散反射検出領域に設定する。センサ18Aからは、鏡面反射検出領域に設定された第1の受光素子群からの検出電圧値がVrefとして、拡散反射検出領域に設定された第2の受光素子群からの検出電圧値がVscaとして、それぞれアナログ電圧値301として信号処理部302Aに出力される。
本実施例では2組の参照素子群を180度の位相差を持つように配置しているので、各参照素子群を構成する受光素子の数(本実施例では4)以上に各参照素子群をシフトしても、すでに検出電圧値を比較した状態と等価となる状態を繰り返すことになる。このため、実施例1に対して少ない設定ビット数で鏡面反射検出領域を設定することができる。
例えば、実施例1にて図5(a)により示された状態は、本実施例では図13(e)に示される状態に相当する。すなわち、切替え信号SW(0,1)にて設定される参照素子群1301,1302のうち、白抜きで示した参照素子群1302が鏡面反射検出領域に設定され、黒塗りの受光素子群が拡散反射検出領域に設定される。このように、本実施例では、少なくとも鏡面反射検出領域については、実施例1と等価な設定が可能である。
図12(b)には、センサ18Aに対向する中間転写ベルト6の表面に色ずれ濃度検出のために用いられるトナー像である色ずれ濃度検出用画像(以下、単に検出用画像という)307が形成された状態での色ずれ濃度検出装置の動作を示している。センサ18Aから出力された鏡面反射検出領域からの検出電圧値Vrefおよび拡散反射検出領域からの検出電圧値Vscaを用いた色ずれ濃度算出部308による色ずれおよび濃度の検出は、実施例1と同じ方法で行われる。
次に、中間転写ベルト6の速度変動の検出方法について、図12(c)、図14(a),(b)、図15(a)〜(n)および図16(a),(b)を用いて説明する。図12(c)には、中間転写ベルト6の速度変動を検出する際の色ずれ濃度検出装置の動作を示している。信号処理部302Aは、2値化部1201と速度演算部1203とを有する。
領域選択部305Aは、上述した鏡面反射検出領域の設定結果に基づいて、領域設定情報(切替え信号)306Aをセンサ18に出力して、センサ18A上の複数の受光素子に鏡面反射検出領域を設定する。中間転写ベルト6の速度変動を検出するため検出用画像1205は、図15(a)〜(n)に示すように複数のラインがスペースを挟んでX方向に周期的に形成されたラインアンドスペースパッチパターンである。センサ18Aは、該パターンの通過に伴って生じる反射光量の変化を後述するように切り替え設定される受光素子群にて検出する。
受光素子群により検出された反射光量の変化を示すアナログ信号1206は、信号処理部302Aの2値化部1201に入力されて2値信号1202に変換される。2値信号1202は速度演算部(速度算出手段)1203に入力される。
速度演算部1203は、2値信号1202の0と1との間の変化が生じた時刻を検出し、該検出時刻から中間転写ベルト6の速度情報1204を算出する。速度情報1204は、エンジン制御部17に送信される。速度情報1204は、中間転写ベルト6へのトナー像の描画タイミングの制御、駆動ローラー7の速度制御等、画像の色ずれ制御情報として用いられる。また、製品開発段階においては回転ローラーの偏芯やギアの噛み合わせ周期等の多種の回転駆動系の色ずれへの影響を相殺する設計がなされており、その評価に中間転写ベルトの速度情報1204が用いられる。
次に、図14(a),(b)を用いて、中間転写ベルト6の速度変動を検出するための複数の受光素子群の切替え設定について説明する。図14(a)には、センサ18Aにおける複数の受光素子205上での中間転写ベルト6からの反射光の強度分布の例を示す。この例では、図13(e)に示した切替え信号SW(0,1)に対応する参照素子群において中央の参照素子群が第1の受光素子群(鏡面反射検出領域)1401として選択される。また、その両側の参照素子群が第2の受光素子群(拡散反射検出領域)1402として選択される。
そして、中間転写ベルト6の速度変動の検出のために、領域選択部305Aは、この状態から図14(b)に示すように、複数の受光素子群の位相を90度シフトさせる。図14(b)において、点線の円は中間転写ベルト6に照射された光スポットからの反射光によって形成される反射光スポット1403を示す。90度位相シフトにより、第1の受光素子群1401上の反射光スポット1403内に第3の受光素子群1404と第4の受光素子群1405の境界1406が含まれるように該第3および第4の受光素子群1404,1405が設定される。領域選択部305Aは、これら第3および第4の受光素子群1404,1405を速度検出用の検出領域として設定する。図14(b)の例では、図13(c)に示す切替え信号SW(1,1)に対応する参照素子群の設定状態が速度変動検出のための設定状態となる。
図14(b)に示す状態において、中間転写ベルト6上には、速度変動を検出するための検出用画像1501が形成される。図15(a)〜(g)には、搬送される中間転写ベルト6とともに移動する検出用画像1501と中間転写ベルト6に照射された光スポット1502との関係の時間変化を示している。また、図15(h)〜(n)には、第3および第4の受光素子群(検出領域)1404,1405と光スポットからの反射光によって形成される反射光スポット1403内の検出用画像1501の投影像(黒い部分)1503との関係の時間変化を示している。
中間転写ベルト6の搬送に伴って光スポット1502の位置を、検査用画像1501であるラインアンドスペースパターンが順次通過する。検出領域のうち投影像1503が存在する投影部分では光が検出されないため、該投影部分を含む検出領域から得られる検出電圧値は減少する。一方、投影像1503が存在しない非投影部分では中間転写ベルト6からの鏡面反射光が検出されるため、投影部分を含まない検出領域から得られる検出電圧値は増加する。こうして投影像1503が検出領域(第3および第4の受光素子群1404,1405)上を移動することで、これら検出領域のそれぞれから得られる検出電圧値は、互いに位相がずれた周期信号となる。
次に、図16(a),(b)を用いて中間転写ベルト6の速度変動の検出方法について説明する。図16(a)には、検出領域である第3および第4の受光素子群1404,1405から出力されるアナログ信号1206の電圧値(検出電圧値)Vb,Vaの時間変化を示す。図中の(h)〜(n)で示した時刻はそれぞれ、図15(h)〜(n)に対応する。
検出された電圧値Vb,Vaを不図示の閾値電圧値Vthにより2値化した信号波形を図16(b)に示す。検出電圧値Vbの極性変化が生じた時刻T1601とT1602の平均から第3の受光素子群1404による投影像1503の検出時刻を算出する。同様に、検出電圧値Vaの極性変化が生じた時刻T1611とT1612の平均から第4の受光素子群1405による投影像1503の検出時刻を算出する。そして、以下の式(16)に示すこれら2つの投影像検出時刻の差分である投影像通過時間ΔTは、投影像1503を生成する検出用画像1501の搬送速度、つまりは中間転写ベルト6の搬送速度Vに応じて変化する。
V∝ΔT=Average(T1612,T1611)−Average(T1602,T1601) (16)
このため、投影像通過時間ΔTをモニタしてその変動を検出することで、中間転写ベルト6の搬送に異常が生じた場合の該中間転写ベルト6の搬送速度Vの変動を検出することができる。
次に、本発明の実施例3として、実施例2で説明した180度位相差を持たせて配置した2組の参照素子群を設定するセンサ18Aを用いた中間転写ベルト6の速度検出の別の方法について説明する。本実施例によれば、実施例2に比べてより実速度に近い中間転写ベルト6の速度検出が可能となる。
図17(a)には、中間転写ベルト6の速度検出のためのセンサ18Aにおける反射光スポット1403の検出領域の設定を示している。反射光スポット1403が2つの検出領域を跨ぐように設定することは実施例2と同じであるが、本実施例では各検出領域の受光素子の数を実施例2に対して変更している。具体的には、速度検出方向(x方向)における受光素子の幅を、センサ18A上での反射光スポット1403の径よりも小さくして、図17(b)〜(e)に示す検出用画像1701a,1701bの投影像1702a,1702bの検出時刻と検出位置との対応をとる。
図17(b)〜(e)には、中間転写ベルト6の移動に伴う該中間転写ベルト6に照射された光スポット1703に対する検出用画像1701a,1701bの移動を示す。また、図17(f)〜(i)にはそれぞれ、図17(b)〜(e)に対応する状態においてセンサ18A上での反射光スポット1403に含まれる境界を挟んだ2つの検出領域としての受光素子205h,205i上の投影像1702a,1702bを示す。受光素子205h,205iは、第3および第4の受光素子群に相当する。
図17(j)は、図17(f)〜(i)に示す状態での受光素子205h,205iから得られる検出電圧値Vb,Vaを示す。図中の(f)〜(i)が図17(f)〜(i)に示す状態の時刻を示している。この図から、図17(g),(i)のように受光素子205h,205iの中心に(該受光素子に重なるように)投影像1702a,1702bが投影されている状態で検出電圧値Vb,Vaの振幅が最小となることが分かる。該検出電圧値Vb,Vaを2値化した結果を図17(g)に示す。2値化信号Vb,Vaの極性変化が生じた時刻tb1,tb2およびta1,ta2に基づいて投影像1702a,1702bが受光素子(検出領域)205h,205iのそれぞれの中心を通過した平均時刻Tb,Taを算出する。各受光素子のx方向幅がDであるとき、中間転写ベルト6の速度は以下式(17)により求まる。
図18(a)〜(i)は、切替え信号(領域設定情報)に基づいて切り替えられる各受光素子の出力信号の接続先と中間転写ベルト6の速度検出のための検出領域(以下、速度検出領域という)とを示す。図18(a)は、実施例2に示した鏡面反射検出領域の設定に対して本実施例の速度検出の構成を対応させたものである。図18(b)〜(i)は、図18(a)に示した出力信号の接続先に対応して設定される速度検出領域を示す。
中間転写ベルト6からの鏡面反射光の複数の受光素子への入射位置に基づいて、図18(b)〜(e)に示す鏡面反射検出領域(黒領域)と拡散反射検出領域(白抜き領域)とが設定される。そして、それぞれの領域設定に対応して、図18(f)〜(i)に示すような速度検出領域の設定がなされる。
図18(f)〜(i)に示す速度検出領域は、鏡面反射検出領域に選択される受光素子群に依らず、中間転写ベルト6の搬送方向に応じて速度算出のための時刻差分の演算が一意に決定できるように設定されている。例えば、中間転写ベルト6が+X方向に搬送されるときには時刻差分演算は(Ta−Tb)となり、−X方向に搬送される場合は(Tb−Ta)となる。
本実施例により、中間転写ベルト6の速度検出が可能な色ずれ濃度センサ18Aを提供することができる。
また、本実施例において色ずれ検出および濃度検出を行う場合は、実施例2と同様の設定および処理を行えばよい。
次に、本発明の実施例4として、実施例2で説明した180度位相差を持って配置された2組の受光素子群を利用して対象物である検出対象面(中間転写ベルト6の表面)の傾斜角度の変化を検出する方法について説明する。本実施例により、パッチを用いずに検出対象面の傾斜角度の変動を検出することができ、その検出結果を画像形成装置の画像プロセスや駆動系の制御にフィードバックすることで画質を向上させることが可能となる。
なお、色ずれ検出および濃度検出については実施例2と同様に行うことができ、中間転写ベルト6の速度検出については実施例3と同様に行うことができ、1つの反射光センサによって複数種類の検出機能を達成することができる。
図19(a)〜(c)を用いて、検出対象面の傾斜角度の変化を検出する方法について説明する。図19(a)には、中間転写ベルト6のうちこれが架け渡された駆動ローラー7のローラー面に沿った曲面部分の表面(以下、ベルト曲面という)に対向するように配置された色ずれ濃度センサ(以下、単にセンサという)18Bを示している。
光源から出射した光線401は、ベルト曲面にて反射されて鏡面反射光402として受光素子群205に入射する。このとき、駆動ローラー7の偏芯成分1901により、ベルト曲面の接線角度としての傾斜角度が変動し、反射光に光線振れ1902が発生する。
図19(b)には、センサ18B上の複数の受光素子における検出領域と鏡面反射光402により形成される反射光スポットとを示す。
検出領域の設定は、実施例2で説明した速度変動検出用の検出領域の設定と同じであるため、詳しい説明は省略する。センサ18B上の複数の受光素子において、それぞれ2つずつの第3および第4の受光素子群1404,1405が設定される。2つの第3の受光素子群1404の出力および2つの第4の受光素子群1405の出力はそれぞれ合成されて減算器1904に入力される。減算器1904は、受光素子群1405の合成出力から受光素子群1404の合成出力を減算し、その結果を差動出力電圧値Vppとして出力する。
駆動ローラー7の偏芯によって光線振れが発生すると、反射光スポット1403の位置も光線振れ1902に応じて変動する。反射光スポット1403が基準位置から第3の受光素子群1404側にシフトすると、減算される第3の受光素子群1404の出力が増加するため、差動出力電圧値Vppは減少する。一方、基準位置から受光素子群1405側にシフトすると、第3の受光素子群1404の出力が減少するため、差動出力電圧値Vppは増加する。
図19(c)には、駆動ローラー7の偏芯1901と差動出力電圧値Vppとの関係を示す。駆動ローラー7の偏芯1901に伴うベルト曲面の傾斜角度の変化により発生した反射光スポット1403の位置変動に応じて差動出力電圧値Vppが変化する。このため、中間転写ベルト6が搬送されている状態における差動出力電圧値Vppの変化から駆動ローラー7の偏芯状態の変化を検出することができる。そして、駆動ローラー7の偏心状態の変化を検出することで、駆動ローラー7の偏心に起因する中間転写ベルト6の速度変動の検出が可能となり、該速度変動の検出情報を描画タイミングや駆動ローラー7の回転速度制御に利用することで、色ずれの発生を抑制できる。
なお、本実施例では、実施例2や実施例3に対して、検出用画像、すなわちトナーを使用することなく、駆動ローラー7の偏心に起因した中間転写ベルト6の速度変動を検出が可能となる。このため、トナーの消費や検出シーケンス上のシステム的な制約を低減した検出が可能となる。
次に、本発明の実施例5として、検出対象物である対象面(中間転写ベルト6の表面)の傾斜角度の変化により生じる光線振れ発生量を抑制し、かつ拡散反射光の混入を抑制する構成について説明する。本実施例により、必要となる受光領域の長さを短縮することができ、反射光検出装置の小型化および検出信号のS/Nの向上が可能となる。
なお、色ずれ検出および濃度検出については実施例2と同様に行うことができ、中間転写ベルト6の速度検出については実施例3と同様に行うことができる。また、感度は低下するものの、検出対象面の傾斜角度の変動の検出については、実施例4と同様に行うことができる。このように、1つの反射光センサによって複数種類の検出機能を達成しつつ、該センサの小型化も実現できる。
図20を用いて、本実施例における反射光線振れの発生メカニズムについて説明する。図20(a)には、本実施例の色ずれ濃度センサの構成を示している。図20(a)には、駆動ローラー7に巻き掛けられた中間転写ベルト2004の表面(以下、ベルト曲面という)に対向するように配置された色ずれ濃度センサ(以下、単にセンサという)を示している。光源2001から出射した発散光束2002のうち鏡面反射光2003はベルト曲面2004にて反射されて開口部2005を通過し、複数の受光素子2006に入射する。
図20(b)および図20(c)には、図20(a)のA−A断面においてセンサと駆動ローラー7との相対位置の違いによる光線振れの差を示している。
図20(b)では、Z方向において駆動ローラー7の回転軸とセンサの中心とが同一軸上に存在している。このときベルト曲面2004上の鏡面反射光2003は該軸と同一軸上の光反射点2007を経て複数の受光素子2006の中心に入射する。
図20(c)では、駆動ローラー7の回転軸に対してセンサの中心がX方向にΔXだけ並進している。このとき、光源(図示せず)、開口部2005およびベルト曲面2004の傾斜状態に応じて、複数の受光素子2006上に到達可能となる鏡面反射光2003のベルト曲面2004上での反射点2008が決まる。本実施例では、光源側の光束に開口制限がなく、または開口制限があっても十分な照射領域を確保しているため、光反射点2008を含む領域に光が照射されている。このため、開口部2005を通過する鏡面反射光2003を複数の受光素子2006によって検出することができる。
複数の受光素子2006上での鏡面反射光2003入射点は、上述した反射点2008に作用する部材の位置関係によって変化するが、前述した実施例1の方法によって鏡面反射光2006が入射する第1の受光素子群を選択すればよい。このとき第1の受光素子群に入射する拡散反射光は、開口部2005により抑制され、検出空間周波数の低下が抑制されるとともに、検出信号のS/Nの向上が図れる。第1の受光素子群と異なる受光素子群には、実線矢印で示すような拡散反射光2009が入射するため、第1の受光素子群以外の受光素子群から任意に第2の受光素子群を選択すればよい。
ここで、鏡面反射光量を検出対象とする場合は、第2の受光素子群で検出された光量に第1の受光素子群により検出される拡散光成分に相当する係数を積算し、その結果を第1の受光素子群から検出された光量から減算する。これにより、第1の検出素子群から検出される鏡面反射光量をより正確に算出することが可能となる。
本実施例では、複数の受光素子2006上の開口部2005と対象面上を広く照射する光源2001との作用によって、複数の受光素子2006上の光線振れ量を抑制し、かつ選択された第1の受光素子群に入射する拡散反射光を抑制する。これにより、センサを小型化することができるとともに、検出信号のS/Nを向上させることができる。
なお、本実施例においては、光源から出射する光束を発散光束としたが、平行光束でもよい。
ここで、光源と光を照射する対象物であるベルト曲面と受光素子との関係において、ベルト曲面と受光素子との間に開口(いわゆる受光開口)を設けることによる受光素子の小型化について説明する。受光開口を設ける場合、上述したように、光源の位置およびサイズと、ベルト曲面の傾斜状態と、受光開口の位置およびサイズとによって、鏡面反射の幾何光線パスが決まる。このとき、光源、ベルト曲面および受光開口の位置関係の公差等によって光線パスの経路が変わるが、基本的に、光線パスの復路は受光開口を光線パス振れの支点として、受光素子に到達する位置が変化する原理となる。
これに対して、光源とベルト曲面との間に開口(いわゆる光源開口)を設ける場合は、光源の位置と光源開口との位置関係により往路の幾何光線パスが決まる。そして、往路の光線が照射されるベルト曲面の傾斜の状態によって、復路の光線パスが決定され、受光素子に到達する位置が決まる。
両者を比較すると、受光開口を設ける受光開口構成では、幾何光線パスを決定する開口部から受光素子に至る光路が明らかに短くなる。しかも、反射型検出において光線パス経路の決定に大きく寄与するベルト曲面に対して、復路側に開口部を配置する受光開口構成の方が受光素子上の光線パスの振れが抑制され、受光素子上での入射光線の位置変化が抑制される。したがって、受光開口構成の採用により、光源開口構成に比べて、受光素子のより小型が可能である。
なお、上記各実施例では、色ずれ濃度センサ(反射光センサ)として複数の受光素子を一次元方向に配列したラインセンサを用いる場合について説明したが、複数の受光素子を二次元配置したエリアイメージセンサを用いてもよい。さらに、上記各実施例では、拡散反射検出領域を色ずれ濃度センサの複数の受光素子上に設定する場合について説明したが、該複数の受光素子とは別の鏡面反射光のパス外に受光部を設け、これを拡散反射検出領域として用いてもよい。
また、上記各実施例では、反射光検出装置を画像形成装置におけるトナーの濃度や色ずれ等の検出に用いる場合について説明したが、反射光検出装置はその出力を用いて動作を行う様々な装置に用いることができる。
上記各実施例によれば、鏡面反射光の光線振れが生じても、受光領域の面積を広げることなく、該鏡面反射光の光量を良好に検出することができる。そして、その検出結果を用いて、画像形成装置におけるトナーの濃度、トナーの色ずれ、転写体の移動速度および転写体の傾斜の変化等を精度良く検出することができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。