本発明の透明フィルムヒーターは、透明フィルム基材上に透明導電層と通電用電極を有する透明フィルムヒーターであって、該透明導電層が少なくとも導電性高分子を含むことを特徴としている。この特徴は、請求項1〜6に係る発明に共通する技術的特徴である。
なお、本発明において、「透明」とは、JIS K 7361−1(ISO 13468−1に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が70%以上であることをいう。
本発明の透明フィルムヒーターの好ましい態様としては、透明フィルム基材の少なくとも片面に透明導電層と通電用電極を有する場合、あるいは2枚の透明フィルム基材の間に透明導電層と通電用電極を有する場合、透明導電層が化合物(A)、(B)および(C)を含有する塗布液から形成された透明導電層である場合、などを挙げることができる。また、本発明のヒーター機能付きガラスの好ましい態様としては、透明ガラス基材の少なくとも片面に本発明の透明フィルムヒーターを有する場合を挙げることができる。さらに、本発明のヒーター機能付き合わせガラスの好ましい態様としては、中間膜層に本発明の透明フィルムヒーターを含む態様を挙げることができる。
本発明の透明フィルムヒーターは柔軟性に優れており、曲面部分を有するガラス基材への加工に好ましく適用することができるため、特に自動車用窓ガラスに好ましく用いることができる。
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための好ましい態様等について詳細に説明する。
本発明の透明フィルムヒーターに用いられる透明フィルム基材としては、高い光透過性を有していればそれ以外に特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み、硬度、フィルム幅等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。また、ヒーター機能付きガラスやヒーター機能付き合わせガラスに用いる場合には、ポリビニルブチラールフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムを好ましく用いることができる。
本発明における透明フィルム基材には、前述の理由からポリエステルフィルムを用いることが好ましい。かかるポリエステルフィルムにおけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
本発明におけるポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。
粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、含有させる場合の粒子量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。含有粒子量が1.0重量%を超える場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。少ない場合には粒子による効果が十分でない場合がある。
粒子がない場合、あるいは少ない場合はフィルムの透明性が高くなり良好なフィルムとなるが、すべり性が不十分となるなど取り扱いが難しくなる場合があるため、ナーリングや塗布層中に粒子を入れる等の工夫が必要になることがある。
粒子を含有させる場合の平均粒径に関しては、通常は0.01〜5μmの範囲である。平均粒径が5μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする傾向がある。平均粒径が0.01μm未満では、粒子による効果が十分でない場合がある。
含有させる場合の粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
またその他に、適宜、各種安定剤、潤滑剤、導電剤等をフィルム中に加えることもできる。
本発明におけるポリエステルフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理(熱固定)を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造のいずれであっても良い。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚さは特に制限されないが、生産効率の点から500μm以下が好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムの透明度は特に制限されないが、透明性が必要とされる場合、本発明の塗布層が透明である特長を生かし、フィルム全体のヘーズとして1.8%以下が好ましく、1.2%以下とすることがさらに好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムの全光線透過率は特に制限されないが、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。
本発明におけるポリエステルフィルムのフィルム幅に特に制限はないが、本発明はITOやAgワイヤーよりも原料が安価で生産性に優れた、少なくとも導電性高分子を含有する塗布液を塗工することにより透明導電層を形成するため、例えば2000mm以上の広い幅のフィルムを製造する場合などがより効果的である。
本発明に用いられる透明フィルム基材には、透明導電層とは別に他の機能性を透明フィルムヒーターに付与するために、各種表面処理や各種機能性層を施すことができる。具体的には透明導電層を透明フィルム基材に形成する前に施すことや、透明導電層の裏面側の透明フィルム基材に施すことなどができる。各種表面処理や各種機能性層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また各種機能性層としては、易接着層、帯電防止層、離型層、ブリードアウト成分封止層、屈折率調整層、光線透過率向上層、防曇層、バリアコート層、ハードコート層、粘着剤層およびこれら機能性を複合させた層等を挙げることができる。また前記機能性層は単層でもよいが、2層以上の構成にしてもよい。
例えば、透明フィルム基材が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、透明導電層を設けた裏面側のフィルムにハードコート層を設ける場合は、フィルムに隣接する屈折率調整易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減し、ハードコート層表面の界面反射の光との干渉を抑え、フィルム表面の虹ムラ等を抑制ことができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズゾル、酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。また易接着層成分としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等の各種ポリマーやメラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などのアミノ樹脂、カルボジイミド、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、グリオキサール系、シランカップリング剤等の各種架橋剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を挙げることができる。
前記各種機能性層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方式を用いることができる。また各種機能性層の形成に関しては、透明フィルム基材の製膜工程中にフィルム表面を処理するインラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。
本発明における透明フィルムヒーターは、透明フィルム基材の少なくとも片面に導電性高分子を含む透明導電層と通電用電極を有することを特徴とする。一般に、透明フィルムヒーターの透明発熱層は、導電性材料を含む透明な発熱領域(透明導電層)と、該発熱領域の周辺部に該発熱領域に接して付設された少なくとも1対の通電用電極を含み構成される。本発明に係わる透明発熱層においては、導電性材料として少なくとも導電性高分子を含むことを特徴としており、該導電性高分子は、本発明に係わる透明発熱層において導電ネットワーク構造を形成し、該導電ネットワーク構造に通電用電極等を介して通電することによって発熱体として機能することができる。
本発明における透明フィルムヒーターの透明導電層は、導電性高分子を含有することを必須要件とする。導電性高分子とは、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの共重合体等の化合物を指す。
また、本発明においては、良好な導電性を得る観点から、透明フィルム基材の表面に化合物(A)および(B)を含有する塗布液から形成された透明導電層を有する透明フィルムヒーターを使用することが好ましく、化合物(A)、(B)および(C)を含有する塗布液から形成された透明導電層を有する透明フィルムヒーターを使用することはさらに好ましい。
本発明において用いる化合物(A)、(B)および(C)について説明する。
化合物(A)は、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、またはチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体である。これらの物質は、優れた導電性を示し好適である。化合物(A)としては、たとえば下記式(1)もしくは(2)の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものを例示できる。
上記式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数が1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基などを表す。
上記式(2)中、nは1〜4の整数を表す。
重合時に使用するポリ陰イオンとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などが例示される。かかる重合体の製造方法としては、例えば特開平7−90060号公報に示されるような方法が採用できる。
本発明において、好ましい様態として、上記式(2)の化合物においてnが2であり、ポリ陰イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものが挙げられる。
またこれらのポリ陰イオンが酸性である場合、一部または全てが中和されていてもよい。中和に用いる塩基としてはアンモニア、有機アミン類、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
本発明において、化合物(A)は、導電率の高い物が好ましい。具体的には、化合物(A)に必要に応じ助剤としてジメチルスルホキシドを乾燥前重量に対して5重量%加えて十分乾燥した時の導電率が200S/cm以上、好ましくは300S/cm以上、さらに好ましくは500S/cm以上である。
化合物(B)は、1種以上のポリヒドロキシ化合物のことであり、本発明におけるポリヒドロキシ化合物とは、分子構造に水酸基を2個以上有する化合物であれば、どの様な化合物を用いても良い。本発明のポリヒドロキシ化合物においては、導電性付与の観点から糖類や糖アルコールを用いることが好ましい。該糖アルコールの範疇には、例えば単糖類または二糖類とポリヒドロキシ化合物の縮合物等の糖アルコール誘導体も含む。本発明における糖アルコールとは、例えばマルチトールやイソマルツロースを還元して得られるイソマルツロース還元物(パラチニット)、ラクチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、リビトール、アラビトール、イジトール、タリトール、ガラクチトールなどに例示されるカテゴリーのC4以上の化合物全般を指す。また本発明においては前記糖アルコールを二種以上使用することも可能である。
本発明においては、糖類や糖アルコールの中でも、高導電性と高透明性の両立を図る観点から、二糖類または三糖類を還元して得られた糖アルコールが好ましく、さらに該糖アルコールの分子量が200以上600以下かつ水酸基等量が40以下であることはより好ましく、この中でも二糖類に対応する糖アルコールのマルチトール、ラクチトール、イソマルツロース還元物の使用は特に好ましい。
化合物(C)は、ポリウレタン樹脂(c1)、ポリエステル樹脂(c2)の群から選ばれる1種以上の化合物である。
本発明におけるポリウレタン樹脂(c1)とはウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性または水溶性のものが好ましい。本発明では単独でも2種以上を併用してもよい。
水分散性または水溶性を付与させるために、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をウレタン樹脂に導入することが一般的であり好ましい。前記の親水性基の中でも、塗膜物性および密着性の点からカルボン酸基またはスルホン酸基が特に好ましい。
本発明で用いる透明導電層の構成成分であるウレタン樹脂を作成する方法の一つに、水酸基とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
これらの中でもポリエステルポリオールが好ましく、芳香環を有するポリエステルポリオールがさらに好ましい。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。これらの中でも芳香環を有するジイソシアネートが好ましい。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
また、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を用いて、ウレタン骨格にカルボキシル基を導入し、後に塩基性化合物で中和してウレタンを親水化する手法も好ましく用いられる。
本発明におけるポリエステル樹脂(c2)とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノールA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
これらの中で多価カルボン酸の一部としてスルホイソフタル酸を共重合して、ポリエステル骨格にスルホン酸基を導入し、中和してアイオノマーとして親水化した物が好ましく用いられる。多価カルボン酸全体に対し1〜10モル%程度共重合するのが好ましい。
本発明によって設けられた透明導電層中の化合物(A)の重量は乾燥後で通常3〜300mg/m2、好ましくは5〜200mg/m2、さらに好ましくは10〜100mg/m2である。化合物(A)の量がこれより少ないと、導電性が不十分となることが多い。またこれより多いとコストが増大し、着色が強くなる。また延伸する場合に透明性の低下等の問題を起こすことがある。
透明導電層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として化合物(A)の比率は重量比率で通常2〜40%、好ましくは3〜30%、より好ましくは5〜20%、さらに好ましくは10〜15%である。化合物(A)の比率がこれより高いと、透明導電層の強度、透明性または導電性能が不十分となることが多い。化合物(A)の比率がこれより低いと、導電性能が不十分となったり、所望の導電性能を付与するための透明導電層が極めて厚くなったりする。透明導電層が極めて厚くなった場合、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、ライン速度低下によるコストアップを招きやすく好ましくない。
透明導電層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として化合物(B)の比率は通常10〜95%、好ましくは30〜92%、より好ましくは40〜88%、さらに好ましくは50〜83%である。この範囲を外れると、導電性能や塗膜の耐水性や透明性が悪化しやすい。
透明導電層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として化合物(C)の比率は重量比率で通常0〜40%、好ましくは5〜35%、より好ましくは7〜30%、さらに好ましくは10〜25%である。この範囲を外れると、導電性能や塗膜の耐水性、耐溶剤性や透明性が悪化しやすい。
本発明で使用する塗布液中には、フィルムへの塗布性を改良するため、界面活性剤を含むことができる。この界面活性剤としては、特にその構造中に(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むノニオン系ものを使用すると、得られる透明導電層の導電性を阻害せず好ましい。さらに疎水性部分にフルオロアルキル基を有する物がより好ましい。
本発明で使用する塗布液中には、必要に応じて、架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は主に、他の樹脂や化合物に含まれる官能基との架橋反応や、自己架橋によって、透明導電層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。使用することのできる架橋反応性化合物としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などのアミノ樹脂、カルボジイミド、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、グリオキサール系、シランカップリング剤などが好適に用いられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。
さらに必要に応じて、(C)以外のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用することができる。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂を含有することで、得られる透明導電層の強度や基材フィルムへの密着が向上することがある。
本発明で使用する塗布液は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、離型剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。また、これら添加剤としては、その構造中に、(ポリ)アルキレンオキサイドや(ポリ)グリセリン、これらの誘導体を含むものを使用すると、得られる透明導電層の導電性を阻害せず、より好ましい。
本発明における塗布液は、取扱い上、作業環境上、また塗布液組成物の安定性の面から、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。塗布液の有機溶剤含有量は10%以下が好ましく、さらに好ましくは5%以下である。
次に本発明における透明フィルムヒーターを構成する透明導電層の形成について説明する。透明導電層に関しては、透明フィルム基材の製膜工程中にフィルム表面を処理するインラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、透明フィルム基材製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、透明フィルム基材を形成する樹脂を溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と透明導電層形成を同時に行うことができるため、生産の工程数やコーティングに使用する塗布液の量などが少なくて良く、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、透明導電層の厚みを延伸倍率により変化させることもできる。また、延伸前にフィルム上に透明導電層を設けることにより、透明導電層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより透明導電層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、透明導電層の造膜性が向上し、透明導電層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、透明導電層自身も強固なものとすることができ、耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
本発明において塗布後の透明導電層の乾燥は、前記インラインコーティングを用いない場合でも150℃以上の温度にすることが望ましい。150℃未満では乾燥に時間がかかり生産性を悪くしたり、透明導電層自身または密着の強度が低下したりする恐れがある。
本発明の透明導電層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方式を用いることができる。
透明導電層の塗布量は、最終的な被膜としてみた際に、通常0.01〜3g/m2、好ましくは0.03〜1g/m2、さらに好ましくは0.05〜0.5g/m2である。塗布量が0.01g/m2未満の場合は導電性能や塗膜の耐水性、耐溶剤性において十分な性能が得られない恐れがあり、3g/m2を超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、ライン速度低下によるコストアップを招きやすい。なお、塗布量は、塗布した時間あたりの液重量(乾燥前)、塗布液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求めた。
本発明における透明導電層の表面抵抗率は通常200000Ω以下であり、好ましくは2000Ω未満、さらに好ましくは1000Ω未満である。
本発明の透明フィルムヒーターには、透明発熱層に含まれる導電性高分子に通電するための通電用電極を付設する。通電用電極は、透明導電層の周辺部の対向する位置に、透明導電層に接続させて1対で設けることもできるし、必要に応じて分割して設けてもよい。本発明の通電用電極の形成には公知の技術を適用することができる。
本発明の透明フィルムヒーターは、導電性高分子を含む透明導電層が異方導電性を有していても良い。本発明において透明導電層が異方導電性を有するとは、透明導電層において最も低い表面抵抗率が得られる方向(m)と、それに直交する方向(n)における表面抵抗率を各々Rm[Ω]、Rn[Ω]とし、その比をRr(=Rm/Rn)としたとき、Rr>2である場合をいう。
通常、透明フィルムヒーターは、透明導電層の周辺部の上下または左右の対向する位置に1対で設けられた通電用電極を介して透明導電層に通電されることによって発熱する。
従って、通電用電極間方向と透明発熱層において最も低い表面抵抗率が得られる方向(m)とを一致させ、かつRm[Ω]を必要な値に設計しておけば、それに直交する方向(n)の導電性は低下することが許容される。
異方導電性を有する透明導電層を形成する場合には、例えば透明導電層を形成後、新たにフォトリソグラフィ等を用いてエッチング加工を行い、微細なストライプ構造を透明導電層に形成する方法や、透明フィルム基材上に導電性高分子を含む分散液を塗布する際に、バーコート法やダイコート法、ブレードコート法などを用いて塗布液に十分なシェアがかかる様に塗布して、塗膜中で導電性高分子を塗布方向に配向させる方法や、延伸可能な透明フィルム基材上に導電性高分子を含む透明導電層を形成した後、透明フィルム基材を縦または横の何れか一方向に延伸したり、縦と横の延伸量に十分な差を設けたりする方法など従来公知の方法を用いることができる。
本発明の透明フィルムヒーターは、前記透明導電層および通電電極を透明フィルム基材の少なくとも片面に設けることができるが、前記透明導電層および通電電極を保護する目的等により、該透明導電層および通電電極を2枚の透明フィルム基材の間に設けていてもよい。
本発明で用いられる透明ガラス基材としては、高い光透過性を有していればそれ以外に特に制限はなく、その原料、製法、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス、ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、フツリン酸塩ガラス等を用いることができる。
本発明のヒーター機能付きガラスは、上記透明ガラス基材の少なくとも片面に、前記透明フィルムヒーターを有することを特徴とする。具体的には本発明の透明フィルムヒーターを、透明ガラス基材の少なくとも片面に重ねたり、貼り合わせたりして構成することができ、通電用電極を介して透明フィルムヒーターに通電することによってヒーター機能を発現させることができる。
本発明の透明フィルムヒーターを他の基材に貼り合せる場合には、本発明においては従来公知の各種貼り合わせの手段を適応させることができ特に制限はないが、その内の一つとして各種粘着層を透明フィルムヒーターの少なくとも片面に設ける方法がある。この時、粘着剤層には従来公知の各種粘着剤を用いることができるが、透明フィルムヒーターの透明性の観点から透明粘着剤を使用することが好ましい。
本発明のヒーター機能付きガラスは、防曇、防霜、除曇、除霜機能が求められる乗用車やトラック、電車等の車両、飛行機、冷凍ショーケース、建物等のガラスに好ましく適用できる。また、本発明のフィルムヒーターは柔軟性を有しており、ガラス基材が曲面部分を有する場合にも好ましく適用することができるため、本発明のヒーター機能付きガラスは、乗用車やトラック、飛行機等のフロントガラスにも好ましく用いることができる。
本発明に係わる合わせガラスとは、2枚以上の透明ガラス基材を組み合わせて一体化したガラスであり、一般には、2枚以上の透明ガラス基材の間に樹脂性の中間膜層、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムやポリビニルブチラールフィルム等を挟み加熱圧着して製造される。
本発明のヒーター機能付き合わせガラスは、上記合わせガラスを構成する少なくとも2枚の透明ガラス基材の間に、本発明の透明フィルムヒーターを、合わせガラスを構成する少なくとも1枚の透明ガラス基材の内側表面に重ねたり、貼り合わせたりして構成することができ、通電用電極を介して透明フィルムヒーターに通電することによりヒーター機能を発現させることができる。また、合わせガラスが中間膜層を有する場合には、該中間膜層に本発明のフィルムヒーターを貼り合わせて本発明のヒーター機能付き合わせガラスを構成することもできるし、本発明のフィルムヒーター自体を中間膜層として用いて本発明のヒーター機能付き合わせガラスを構成することもできる。
本発明のヒーター機能付き合わせガラスは、防曇、防霜、除曇、除霜機能が求められる乗用車やトラック、電車等の車両、飛行機、冷凍ショーケース、建物等のガラスに好ましく適用できる。また、本発明のフィルムヒーターは柔軟性を有しており、ガラス基材が曲面部分を有する場合にも好ましく適用することができるため、本発明のヒーター機能付き合わせガラスは、乗用車やトラック、飛行機等のフロントガラスにも好ましく用いることができる。
本発明のヒーター機能付き合わせガラスが中間膜層を有する場合には、該中間膜層にヒーター機能以外にも、防犯性能、防音効果、紫外線カット、熱線遮断、意匠性等の機能を付加することもできる。
以下に実施例、比較例および製造例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例、比較例および製造例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例および製造例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。
(1)塗布層の透明性(塗布層によるヘーズ上昇、塗布層による全光線透過率の変化)
JIS−K7136に準じて、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−2000によりフィルムのヘーズ、全光線透過率を測定した。塗布層を設けていないフィルムと塗布層を設けたフィルムのヘーズの差により塗布層を設けることによるヘーズの上昇を求め、塗布層の透明性とした。かかるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れるといえる。本方法においてヘーズの差が0.5%以下であれば透明性に優れ、0.3%以下であれば特に優れているといえる。一方、0.5%を超える場合は透明フィルムヒーターとして用いることは可能であるが、塗布層の透明性としてはやや劣り(△)、1.5%を超える場合は劣る(×)といえ、透明フィルムヒーター用途への適用は難しくなる。
同様にして塗布層を設けていないフィルムと塗布層を設けたフィルムの全光線透過率の差を計算し、塗布層を設けることによる全光線透過率の変化を求めた。全光線透過率の低下が大きい場合は、塗布層の透明性が劣るといえる。全光線透過率の低下は導電剤の吸収による影響が大きく、導電性の高いフィルムでは大きくなるが、本方法において全光線透過率の低下が、表面抵抗率1000Ω未満のフィルムでは、5%以下であれば透明性に優れ、2%以下であれば特に優れているといえる。また表面抵抗率1000Ω以上のフィルムでは、1%以下であれば透明性に優れ、0%以下であれば特に優れているといえる。
(2)表面抵抗率
三菱化学アナリテック社製低抵抗率計:ロレスタGP MCP−T600に四探針型ESPプローブ(探針間隔:5mm、探針先形状:直径2mmの円筒、探針押し圧:240g/本、RCF値は4.235一定とした)を使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、フィルム塗布層の中央付近の表面抵抗率を測定した。
(3)K値
(2)によって測定された表面抵抗率[Ω]の逆数を表面導電率[S]とするとき、表面導電率[S]を[g/cm2]単位で表された塗布層中の化合物(A)の塗布量(乾燥後)除した数をKとする。Kは化合物(A)の単位量あたりどれ程の導電性を発現したかを表すパラメーターとなる。Kの値が大きければ大きい程、少量の化合物(A)で高い導電性を得たことになり、低コストで着色の少ないフィルムを生産でき好ましい。具体的には100以上が好ましく、200以上がより好ましく400以上が最も好ましい。
(4)耐水性
フィルムを40℃の温水に24時間浸漬した後、表面抵抗率を測定し、浸漬前後で比較した。
○:処理後の表面抵抗率の増大が2倍以下
△:処理後の表面抵抗率の増大が2倍超10倍以下
×:処理後の表面抵抗率の増大が10倍超
(5)耐溶剤性
太平理化工業社ラビングテスター専用治具(5cm×7cm,押し圧690g/35cm2)にシート状コットン(旭化成社製ベンコット)を巻き付け、そこに溶剤を2ml染みこませて、導電性塗布層の表面を5往復(15cm長の範囲)拭いてサンプルを調整した。風乾後、擦った箇所の表面抵抗率を測定し、処理前後で比較した。
○:処理後の表面抵抗率の増大が2倍以下
△:処理後の表面抵抗率の増大が2倍超10倍以下
×:処理後の表面抵抗率の増大が10倍超
溶剤としては、エタノールおよび酢酸エチルで評価した。
下記製造例中で使用したポリエステル基材の原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.64のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径2.4μmの非晶質シリカを0.2重量%含有する、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート
また、塗布組成物としては以下を用いた。
(A1):ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸からなる導電剤(PEDOT/PSS)水分散物、ヘレウス社製 Clevios PH1000(導電率924S/cm、不揮発分濃度1.2%(メーカー測定値))を濃アンモニア水で中和してpH=9とした物。
(B1):マルチトール(分子量344、水酸基等量38)
(B2):ラクチトール(分子量344、水酸基等量38)
(B3):イソマルツロース還元物(立体異性体混合物、商品名:パラチニット、分子量344、水酸基等量38)
(B4):ソルビトール(分子量182、水酸基等量30)
(B5):ショ糖(分子量342、水酸基等量43)
(B6):ポリエチレンオキサイド、数平均分子量400(水酸基等量200)
(C11):テレフタル酸282重量部、イソフタル酸282重量部、エチレングリコール62重量部、およびネオペンチルグリコール250重量部を成分とするポリエステルポリオールを(C11a)としたとき、(C11a)876重量部、トリレンジイソシアネート244重量部、エチレングリコール81重量部、およびジメチロールプロピオン酸67重量部を構成成分としたポリエステルポリウレタンをアンモニアで中和して水分散させた物(不揮発分濃度20%、25℃での粘度50mPa・s)。
(C21):テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチレングリコールがモル比で49/49/2/50/50である、スルホン酸基導入水分散ポリエステル樹脂
(C22):テレフタル酸/イソフタル酸/スルホイソフタル酸/エチレングリコール/ジエチレングリコール/トリエチレングリコールがモル比で61/32/7/44/43/13である、スルホン酸基導入水分散ポリエステル樹脂
(D1):下記式に示す、側鎖にポリエチレンオキサイドを有する構造のノニオン性界面活性剤
上記式中のm、nはエチレンオキサイドの付加モル数を示す整数であり、ここではm+nの平均が10となるものを用いた。
(D2):疎水性基に分岐パーフルオロアルケニル基、親水性基にポリエチレンオキサイド鎖(平均鎖長12単位)を有する構造のフッ素系ノニオン性界面活性剤。
製造例A:
ポリエステル1、ポリエステル2をそれぞれ92%、8%の割合で混合した混合原料を外層の原料とし、ポリエステル1のみを中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(外層/中間層/外層=1:10:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸フィルムを得た。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.3倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが50μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムヘーズ値は0.7%、全光線透過率は88%であった。
製造例B:
製造例Aと同様にして一軸配向フィルムを得た。この一軸配向フィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に3.5倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが62μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムヘーズ値は0.8%、全光線透過率は88%であった。
製造例C:
製造例Aと同様にして一軸配向フィルムを得た。この一軸配向フィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に2.7倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが79μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このフィルムヘーズ値は0.8%、全光線透過率は88%であった。
製造例1
上記製造例Aと同様の工程の中で、長手方向への延伸後の一軸配向フィルムの片面に下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行い、以降は製造例Aと同様にし、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.27g/m2の量の透明導電層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。なお、塗布層透明性、全光線透過率変化を評価する際、透明導電層を設けていないフィルムの値としては、製造例Aのフィルムヘーズ0.7%、全光線透過率88%を用いた。
製造例2、4、5、9、10、11、12、13(製造例11、12、13は比較例に相当)
製造例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、表1に示した量の透明導電層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
製造例3
上記製造例Bと同様の工程の中で、長手方向への延伸後の一軸配向フィルムの片面に下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行い、以降は製造例Bと同様にし、フィルム厚みが62μmの基材フィルムの上に0.37g/m2の量の透明導電層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。なお、塗布層透明性、全光線透過率変化を評価する際、透明導電層を設けていないフィルムの値としては、製造例Bのフィルムヘーズ0.8%、全光線透過率88%を用いた。
製造例6、8
製造例3と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、表1に示した量の透明導電層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
製造例7
上記製造例Cと同様の工程の中で、長手方向への延伸後の一軸配向フィルムの片面に下記表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、その熱を利用して塗布組成物の乾燥を行い、以降は製造例Cと同様にし、フィルム厚みが79μmの基材フィルムの上に0.63g/m2の量の透明導電層を積層した塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。なお、塗布層透明性、全光線透過率変化を評価する際、透明導電層を設けていないフィルムの値としては、製造例Cのフィルムヘーズ0.8%、全光線透過率88%を用いた。
上記製造例で特に性能が良好であった製造例1〜10について、耐水性、耐溶剤性の評価結果を表3に示す。本発明により得られたフィルムは耐水性、耐溶剤性も優れていることがわかる。
製造例D
不揮発分重量比でA1(ただし未中和)/D1=95/5の混合物にA1原液重量(有り姿)に対して5%相当のジメチルスルホキシド添加し塗布液とした。この塗布液を厚さ50μmの透明二軸延伸PETフィルム(三菱樹脂製ダイアホイルO100−50)にA1とD1の不揮発分の合計が52mg/m2になるように塗布し、140℃で30秒間乾燥した。得られた塗膜は透明で外観も良かったが、基材との密着が不良で簡単に塗膜が脱落した。得られたフィルムの表面抵抗率は350Ωで、これより計算したK値は580であった。
本発明によって得られたフィルムは、透明導電層が延伸を受けていても透明性に優れ、なおかつ導電剤本来の性能(製造例DにおけるK値)に近い導電性、すなわち少ない導電剤(化合物(A))量で優れた導電性能を示し、経済性にも優れる。またこれらの結果は、原料の値段が高価なITOやAgワイヤー等を用いた従来の発明よりも、大幅に製造コストを削減することが可能であることを意味しており、産業上の利用価値が高い。
前記製造例で特に性能が良好であった、製造例1〜10で作成した透明導電層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムに通電用電極を付設し、実施例1〜10の透明フィルムヒーターを作成した。
図1に透明フィルムヒーターの構成例を示す。(1)は二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、(2)は透明導電層、(3)は通電用電極である。また比較例として、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムにITOをスパッタ成膜してITOフィルムヒーター(比較例1)を作成した。図2にITOフィルムヒーターの構成例を示す。(4)は二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、(5)はITO層、(6)は通電用電極である。
作成した透明フィルムヒーター(実施例1〜10)およびITOフィルムヒーター(比較例1)の屈曲耐性試験を行った。屈曲耐性の評価は、直径10mmのガラス棒にフィルムを巻き付けて戻すという操作を5回繰り返した後、巻き付ける方向を90度変えて巻き付けて戻すという操作を5回繰り返して行った。屈曲耐性試験前後での各試料の表面抵抗率の変化率(=試験後の表面抵抗率/試験前の表面抵抗率)の結果を表4に示す。
表4に示したとおり、本発明により得られた透明フィルムヒーター(実施例1〜10)は従来のITOフィルムヒーター(比較例1)に較べて非常に優れた屈曲耐性(柔軟性)を有しており、屈曲耐性試験後の発熱特性も良好であった。ITOフィルムヒーターは屈曲耐性試験前の発熱特性は良好であったが、屈曲耐性は無く屈曲耐性試験後の発熱特性は悪化した。
図3(a)にヒーター機能付きガラスの構成例1を示す。(7)はガラス基材、(8)は実施例1〜10のフィルムに通電用電極を付設した透明フィルムヒーター、(9)は通電用電極である。表4で示されたように、本発明のフィルムヒーターは屈曲耐性(柔軟性)に優れるため、曲面部分を有する透明ガラス基材にも好ましく適用することができる。
図3(b)は、上記ヒーター機能付きガラスの断面図である。(7)は透明ガラス基材、(10)は二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、(11)は実施例1〜10に示した本発明の透明導電層および通電用電極である。本発明のヒーター機能付きガラスは、透明ガラス基材への熱伝導効率を高め、かつ透明発熱層を保護するために、本発明の透明フィルムヒーターの透明発熱層側を透明ガラス基材と密着させて構成することが好ましい。
図4(a)にヒーター機能付きガラスの構成例2を示す。(12)はガラス基材、(13)は実施例1〜10のフィルムに通電用電極を付設した透明フィルムヒーター、(14)は通電用電極、(15)は保護フィルムである。表4で示されたように、本発明のフィルムヒーターは屈曲耐性(柔軟性)に優れるため、曲面部分を有する透明ガラス基材にも好ましく適用することができる。
図4(b)は、上記ヒーター機能付き合わせガラスの断面図である。(12)は透明ガラス基材、(15)は保護フィルム、(16)は実施例1〜10に示した本発明の透明導電層および通電用電極、(17)は二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、(18)は透明粘着剤である。
図5(a)にヒーター機能付き合わせガラスの構成例を示す。(19)は合わせガラス、(20)は実施例1〜10のフィルムに通電用電極を付設した透明フィルムヒーター、(21)は通電用電極である。表4で示されたように、本発明のフィルムヒーターは屈曲耐性(柔軟性)に優れるため、曲面部分を有する合わせガラスにも好ましく適用することができる。
図5(b)は、上記ヒーター機能付き合わせガラスの断面図である。(19)は透明ガラス基材、(22)は実施例1〜10に示した本発明の透明導電層および通電用電極、(23)は二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである。本発明のヒーター機能付き合わせガラスは、透明ガラス基材への熱伝導効率を高めるために、本発明の透明フィルムヒーターの透明発熱層側を、主としてヒーター機能を働かせたい側の透明ガラス基材の内側表面と密着させて構成することが好ましい。