JP6524204B2 - 筋量増加用食品組成物、筋量増加剤、筋萎縮予防用の食品組成物及び筋萎縮予防剤 - Google Patents
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Description
サルコペニアとは、European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によれば、筋肉量の低下に加え、筋肉の質の低下、すなわち筋力の低下あるいは身体的機能の低下がみられるものであると定義されている(非特許文献1)。
ロコモティブシンドロームとは、日本整形外科学会によれば、骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」、「歩く」といった機能が低下している状態であると定義されている(非特許文献2)。
ユーグレナは、ビタミン,ミネラル,アミノ酸,不飽和脂肪酸など、人間が生きていくために必要な栄養素の大半に該当する59種類もの栄養素を備え、多種類の栄養素をバランスよく摂取するためのサプリメントとしての利用や、必要な栄養素を摂取できない貧困地域での食糧供給源としての利用の可能性が提案されている。
ユーグレナは、鞭毛運動をする動物的性質をもちながら、同時に植物として葉緑体を持ち光合成を行うユニークな生物であり、ユーグレナ自体やユーグレナ由来の物質に、多くの機能性があることが期待されている。
そのため、大量供給可能となったユーグレナ及びユーグレナ由来物質の利用法の開発が望まれている。
このとき、大腿四頭筋の量を増加させるために用いられる筋量増加用食品組成物であるとよい。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナを有効成分として含有し、廃用性の筋肉の萎縮を抑制するために用いられることを特徴とする筋量増加剤により解決される。
また、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナを有効成分として含有し、廃用性の筋肉の萎縮を予防するために用いられることを特徴とする筋萎縮予防剤により解決される。
本発明の筋量増加用食品組成物、筋量増加剤、ロコモティブシンドローム治療剤、サルコペニア治療剤、運動機能維持剤、筋萎縮関連遺伝子発現抑制剤、筋タンパク質分解抑制剤、筋萎縮予防剤、筋合成関連遺伝子発現促進剤及び筋合成促進剤は、これまでに副作用の報告がなく、食品衛生法に合致する水準の安全性を備えたユーグレナを有効成分としているため、長期間の継続投与および継続摂取が可能である。
本実施形態は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有する筋量増加用食品組成物、筋量増加剤、ロコモティブシンドローム治療剤、サルコペニア治療剤、運動機能維持剤、筋萎縮関連遺伝子発現抑制剤、筋タンパク質分解抑制剤、筋萎縮予防剤、筋合成関連遺伝子発現促進剤及び筋合成促進剤に関するものである。
ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)とは、日本整形外科学会によれば、骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」、「歩く」といった機能が低下している状態であると定義されている(非特許文献2)。
ロコモティブシンドロームは、ロコモと略されたり、ロコモティブ症候群、運動器症候群などと呼ばれることもある。
以下、ロコモティブシンドロームの診断基準について説明する(吉村典子、「ロコモティブシンドロームの臨床診断値と有病率」、日本老年医学会雑誌52巻4号、350−353頁(2015))。
ロコモティブシンドロームの診断基準の一つとなるロコモ度テストは、(1)立ち上がりテスト、(2)2ステップテスト、(3)ロコモ25からなる。
(1)立ち上がりテストは、10cm、20cm、30cm、40cmの4つの高さの台を準備して、片脚または両脚で立ち上がれるかどうかで脚力を測るテストである。
(2)2ステップテストは、できるかぎり大股で2歩歩き、2歩分の歩幅を測定し、身長で除して2ステップ値を算出する。2ステップ値により,下肢の筋力、バランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を評価する。
(3)ロコモ25は、過去1カ月の間に体の痛みや日常生活の困難がなかったかどうかについて25項目の問診票で評価する。
ロコモ度1の臨床判断値は以下の通りである。
1)立ち上がりテスト:どちらか一方の片脚で40cmの高さから立ち上がれない
2)2ステップテスト:2ステップ値が1.3未満
3)ロコモ25:ロコモ25の結果が7点以上
上記1)〜3)のいずれかひとつでもあてはまる場合は「ロコモ度1」と判定され、移動機能の低下が始まっている状態と判断される。
1)立ち上がりテスト:両脚で20cmの高さから立ち上がれない
2)2ステップテスト:2ステップ値が1.1未満
3)ロコモ25:ロコモ25の結果が16点以上
上記1)〜3)のいずれかひとつでもあてはまる場合は「ロコモ度2」と判定され、移動機能の低下が進行している状態と判断される。
サルコペニア(sarcopenia)とは、加齢に伴い骨格筋が萎縮し、骨格筋量及び骨格筋力の低下または身体機能の低下を伴うことを特徴とする症候群である。
サルコペニアは、国や地域などによって異なる多く診断基準が提唱されているが、筋肉量の低下を必須項目とし、筋力または身体能力の低下のいずれかに該当した場合にサルコペニアと診断される(葛谷雅文、「サルコペニアの診断・病態・治療」日本老年医学会雑誌52巻4号、343−349頁(2015))。
以下、サルコペニアの診断基準について説明する(公益財団法人長寿科学振興財団、健康長寿ネット、サルコペニアの診断、URL:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sarcopenia/shindan.html)。
EWGSOPによれば、四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下がある場合にサルコペニアと診断される。
具体的には、四肢骨格筋量(ALM)は四肢の筋肉量を身長(m)の2乗で割った、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)の値(kg/m2)が男性では7.23kg/m2以下の場合、女性では5.67kg/m2以下であることが必須の条件であり、さらに10mの歩行速度が0.8m/秒未満の場合、あるいは握力が男性では30kg未満、女性では20kg未満の場合にサルコペニアと診断される。
歩行速度が0.8m/秒より早かった場合には、握力を測定し、男性で30kg、女性で20kgよりも高値の場合はサルコペニアではないと診断され、高値の場合は四肢骨格筋量を測定し、診断基準値以下の場合はサルコペニア、診断基準値以上の場合はサルコペニアではないと診断される。
EWGSOPの診断基準は、ヨーロッパのワーキンググループによって作られた基準であり、ヨーロッパ人とアジア人では体格や身体機能に違いがあるため、アジアのサルコペニアについてのワーキンググループ、ASIAN
working Group FOR SARCOPENIA(AWGS)によってアジア人向けの診断基準が作られている。AWGSによる診断基準では、EWGSOPの診断基準と握力、筋肉量の基準が異なっている。
EWGSOPの診断基準は欧米人の高齢者を基準としており、日本人と欧米人では、高齢者であっても体格や生活習慣の違いがあるため、日本人の高齢者に合ったサルコペニアの簡易基準案が国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS−LSA)によって作成されている。
歩行速度、握力が基準値以上であった場合は正常。歩行速度、握力が基準値以下でもBMI、下腿囲が基準値以上であれば脆弱高齢者であるがサルコペニアではないと診断される。
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、動物学や植物学の分類でユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種のすべてを含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)の微生物とは、動物学では原生動物門(Protozoa)の鞭毛虫綱(Mastigophorea)、植物鞭毛虫亜綱(Phytomastigophorea)に属するミドリムシ目(Euglenida)のユーグレノイディナ亜目(Euglenoidina)に属する微生物である。一方、ユーグレナ属の微生物は、植物学ではミドリムシ植物門(Euglenophyta)のミドリムシ藻類綱(Euglenophyceae)に属するミドリムシ目(Euglenales)に属している。
ユーグレナ細胞としては、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)、特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)NIES−49株などを用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のvar. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株由来のβ−1,3−グルカナーゼ、Euglena intermedia, Euglena piride、及びその他のユーグレナ類、例えばAstaia longaであってもよい。
ユーグレナ属は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
ユーグレナ細胞の培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行っても良い。
また、ユーグレナ細胞の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行っても良い。
ユーグレナ細胞の分離は、例えば培養液の遠心分離,濾過又は単純な沈降によって行われる。
本実施形態では、ユーグレナ藻体として、遠心分離,濾過又は沈降等によって分離したユーグレナ生細胞をそのまま用いることができる。ユーグレナ生細胞は、培養槽から収穫後そのままの状態で使用することもできるが、水若しくは生理食塩水で洗浄するのが好ましい。また、ユーグレナ藻体が水などの液体に分散した分散液の状態で用いてもよい。本実施形態において、ユーグレナ生細胞を凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理して得たユーグレナの乾燥藻体をユーグレナ藻体として用いると好適である。
更に、ユーグレナ生細胞を超音波照射処理や、ホモゲナイズ等の機械処理を行うことにより得た藻体の機械的処理物をユーグレナ藻体として用いてもよい。また、機械的処理物に乾燥処理を施した機械的処理物乾燥物をユーグレナ藻体として用いてもよい。
本実施形態において、「ユーグレナ水性溶媒抽出物」とは、水性溶媒を用いてユーグレナから抽出される抽出物を意味し、特に、水性溶媒として水を用い、5℃〜600℃で、数秒〜数十時間抽出したユーグレナの水抽出物又は熱水抽出物を用いることが好ましい。
抽出に使用する水は、必ずしも蒸留水や、純水、又は超純水である必要はなく、例えば、水道水や不純物を含むものであってもよいが、活性成分の抽出を妨げる成分を含まない水が好ましい。
ここで、「水」とは、0〜50℃(0℃を除く。)の水を意味する。
水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは1〜40℃、より好ましくは5〜35℃、特に好ましくは10〜30℃である。
ここで、「熱水」とは、50℃よりも高温の水を意味し、「熱湯」も含む概念であり、沸騰状態にある水も含まれる。また、液体状態の熱水に限定されることなく、気体状態及び超臨界状態の熱水も含まれる。
熱水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50℃より高く120℃以下、より好ましくは50℃より高く100℃以下である。
したがって、抽出用の水性溶媒とは、沸騰状態や超臨界状態にある水性溶媒も含むものである。抽出に使用する水性溶媒の量は、ユーグレナ中に含まれる水溶性活性成分を十分に溶解することができる量であることが好ましい。
また、抽出を促進するために、ユーグレナを添加後の水性溶媒を加熱することも可能である。
水抽出を行う場合の抽出時間は、活性成分が抽出される時間であれば特に限定されず、数秒〜数十時間の範囲で、抽出の温度に応じて適宜設定することができる。
高温高圧下で抽出を行なう場合には、抽出時間が長す過ぎると活性成分が分解したり、化学反応を起こすことがある。従って、高温高圧下で抽出を行なうときには、抽出時間を短時間、例えば、3分以内とするのが好ましく、1分以内とするのがより好ましく、30秒以内とすることが特に好ましい。
また、ユーグレナ抽出物やその画分を、濃縮、乾燥して水性溶媒を除去し、これを水性溶媒抽出物として使用することもできる。
本実施形態に係る筋量増加剤は、ユーグレナ由来物質を有効成分とする筋量増加剤(筋肉量増加剤)である。
「ユーグレナ由来物質」には、ユーグレナ生細胞やユーグレナの乾燥藻体などのユーグレナ藻体の他、ユーグレナの水性溶媒抽出物、ユーグレナ藻体の加工品等が含まれる。
「筋肉を増強する」とは、筋肉量が増加することや、筋力が向上することをいう。筋肉量の増加は、例えば、筋肉量の測定から判断され、筋力の向上は、例えば、筋力計などによる筋力の測定から判断される。
本実施形態に係る筋量増加剤は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、ロコモティブシンドロームやサルコペニアを予防又は治療するためのロコモティブシンドローム予防剤、ロコモティブシンドローム治療剤、サルコペニア予防剤、サルコペニア治療剤としても用いることができる。
「ロコモティブシンドロームを治療する」、「サルコペニアを治療する」とは、本実施形態の筋量増加剤の有効成分であるユーグレナ由来物質を摂取する前の状態と比べて、ロコモティブシンドロームやサルコペニアの症状が軽減することをいう。
本実施形態に係る筋量増加剤は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、運動機能を維持するための運動機能維持剤や、運動機能を改善するための運動機能改善剤としても用いることができる。
「運動機能を維持する」とは、対比される状態、例えば、本実施形態の筋量増加剤の有効成分であるユーグレナ由来物質を摂取する前の状態と比べて、「立つ」、「歩く」等の運動機能が維持されることをいう。
「運動機能を改善する」とは、対比される状態、例えば、本実施形態の筋量増加剤の有効成分であるユーグレナ由来物質を摂取する前の状態と比べて、「立つ」、「歩く」等の運動機能が改善されることをいう。
ユーグレナ由来物質は、筋萎縮関連遺伝子の発現を抑制する作用を有しているため、筋萎縮関連遺伝子発現抑制剤、筋萎縮予防剤、筋タンパク質分解抑制剤として用いることが可能である。
ユーグレナ由来物質によって発現が抑制される筋萎縮関連遺伝子の例としては、例えば、ユビキチンリガーゼの遺伝子(Cbl−b(配列番号1),Atrogin−1(配列番号2),MuRF1(配列番号3))が例示される。
ユーグレナ由来物質は、筋合成関連遺伝子の発現を促進する作用を有しているため、筋合成関連遺伝子発現促進剤や筋合成促進剤として用いることが可能である。
ユーグレナ由来物質によって発現が促進される筋合成関連遺伝子の例としては、例えば、筋タンパク質の合成を促進するS6Kの遺伝子(配列番号5)が例示される。
実施形態に係るユーグレナ由来物質を有効成分として含有する筋量増加剤は、筋肉量の減少や筋力が低下している患者や、ロコモティブシンドロームやサルコペニアの確定診断を受けた患者に投与される。
また、本実施形態のユーグレナ由来物質を有効成分として含有する筋量増加剤は、医薬組成物、健康食品等の食品組成物として構成され、筋肉量の減少や筋力の低下を自覚した者や、ロコモティブシンドロームやサルコペニアに罹患する可能性の高い者等、ロコモティブシンドロームやサルコペニアの予備軍の者に、予防的に投与される。
よって、本実施形態のユーグレナ由来物質を有効成分として含有する筋量増加用食品組成物、筋量増加剤を、生活習慣、加齢、食生活、運動不足により、筋肉量の減少や筋力の低下する可能性の高い人、ロコモティブシンドロームやサルコペニアに罹患する可能性の高い環境にある人、例えば、生活習慣や食生活の乱れた家庭の人に対して、長期間継続投与できる。
40歳以上のヒト、特に60歳または65歳以上の高齢者は、加齢によって筋肉量が減少したり、筋力が低下したりする傾向があるが、ユーグレナ由来物質が備える、筋肉量増加作用により、筋肉量の減少や筋力の低下を抑制することができる。
また、本実施形態のユーグレナ由来物質は、食品にも用いることが可能である。
本実施形態の筋量増加用食品組成物、サルコペニア予防用、サルコペニア改善用、ロコモティブシンドローム予防用又はロコモティブシンドローム改善用の食品組成物、筋萎縮関連遺伝子発現抑制用、筋タンパク質分解抑制用、筋萎縮予防用、筋合成関連遺伝子発現促進用又は筋合成促進用の食品組成物は、食品の分野では、目的となる作用を有効に発揮できる有効な量のユーグレナ由来物質を食品素材として、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
すなわち、本発明は、食品の分野において、筋量増加用等と表示された食品の食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等が挙げられる。また、食品添加物として用いることもできる。
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
本実施形態に係るユーグレナ由来物質を有効成分として含有する筋量増加剤、ロコモティブシンドローム予防剤、ロコモティブシンドローム治療剤、サルコペニア予防剤、サルコペニア治療剤、運動機能維持剤、運動機能改善剤、筋萎縮関連遺伝子発現抑制剤及び筋タンパク質分解抑制剤、筋萎縮予防用、筋合成関連遺伝子発現促進剤、筋合成促進剤は、医薬組成物として利用することができる。
本実施形態の筋量増加剤、ロコモティブシンドローム予防剤、ロコモティブシンドローム治療剤、サルコペニア予防剤、サルコペニア治療剤、運動機能維持剤、運動機能改善剤、筋萎縮関連遺伝子発現抑制剤、筋タンパク質分解抑制剤、筋萎縮予防剤、筋合成関連遺伝子発現促進剤、筋合成促進剤は、医薬の分野では、目的となる作用を有効に発揮できる量のユーグレナ由来物質と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
当該医薬組成物は、内用的に適用されても、また外用的に適用されても良い。従って、当該医薬組成物は、内服剤、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
当該医薬組成物の剤型としては、適用の形態により、適当に設定できるが、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤が挙げられる。
例えば、本実施形態に係る医薬組成物を経口剤に適用させる場合、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、保存剤、着色剤、矯味剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。また、ドラックデリバリーシステム(DDS)を利用して、徐放性製剤等にすることもできる。
本実施形態の筋量増加剤の用法としては、例えば、粉末剤、カプセル剤、錠剤、顆粒、液剤又はシロップ等によって経口投与すると良い。
本実施形態の筋量増加剤の投与量や投与形態は、対象、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択すればよい。例えば、ユーグレナ由来物質として、ユーグレナを選択し、ヒト(成人)を対象に筋肉量増加効果を得ることを目的として経口投与する場合には、一般に、ユーグレナを乾燥重量で1日当たり1〜5000mg、好ましくは100〜3000mg、さらに好ましくは500〜2000mg程度となるように、1日に1〜2回程度(朝と晩)、週に5回以上となる割合で継続的に投与するとよい。
以下の実施例では、ユーグレナ由来物質としてユーグレナ粉末を用い、ユーグレナ粉末の継続摂取が筋肉量や筋関連遺伝子に与える影響の検討を行った。
筋量増加剤として、ユーグレナ由来物質であるユーグレナ・グラシリス粉末(ユーグレナ藻体、(株)ユーグレナ製)を用いた。
試験1では、疾患モデルでないマウスにおいて、ユーグレナの摂取が筋肉量へ与える影響を明らかにすることを目的としている。4週間摂取後の大腿四頭筋および肝臓をサンプルとした。
・飼料調製
CE−2食(日本クレアより購入)中にユーグレナ粉末を2%含むよう混合し、ユーグレナ食を調製した。CE−2食の栄養成分を表1乃至3に示す。
12週齢のC57BL/6J雄性マウスを平均体重が等しくなるよう3群に群分けし、それぞれコントロール群、ユーグレナ群とした(n=6)。コントロール群にはCE−2(通常食)、ユーグレナ群には2%ユーグレナ含有CE−2(ユーグレナ食)を摂食させた(表4)。4週間の摂食期間経過後、マウスから大腿四頭筋および肝臓を採取し、臓器重量を測定した。
結果を図1乃至4に示す。試験摂食時の体重変化(図1)および摂食量(図2)に有意な差は見られなかった。また、肝臓重量において各群間における有意な差は見られなかったが(図3)、大腿四頭筋重量においてコントロール群に対してユーグレナ群の筋重量が有意に高値を示した(図4)。
したがって、ユーグレナ由来物質としてのユーグレナに筋肉量を増加させる作用があり、筋量増加剤や筋量増加用食品組成物として用いることができることがわかった。
ユーグレナ由来物質としてのユーグレナは、大腿四頭筋の筋肉量を増加させる作用を有しており、立ち上がり、歩行、走行などの動作を向上させることができるため、ロコモティブシンドロームやサルコペニアを予防及び/又は改善するために用いることができることがわかった。
試験2では、ユーグレナを摂取することで筋萎縮へ与える影響を明らかにすることを目的としている。
C57BL/6マウス(雄性、12週齢、32匹)を平均体重が等しくなるよう群分けし、それぞれ通常飼育群(−)、尾懸垂群(C)、尾懸垂+ユーグレナ低濃度群(EL)、尾懸垂+ユーグレナ高濃度群(EH)とした。
通常飼育群および尾懸垂群には水を、尾懸垂+ユーグレナ低濃度群(EL)および尾懸垂+ユーグレナ高濃度群(EH)にはユーグレナをそれぞれ40mg/mouseまたは80mg/mouseとなるようゾンデにより1日1回経口投与した。
投与開始から7日後、尾懸垂試験を開始し、尾懸垂試験開始から10日後、イソフルラン麻酔下で屠殺した。腹部大動脈採血により血液を採取し、肝臓、ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋、大腿四頭筋の各筋肉を摘出し、重量を測定した。
足底筋および大腿四頭筋からTri reagentによりRNAを抽出後、cDNAを合成し、リアルタイムPCRにより各遺伝子(Cbl−b(配列番号1),Atrogin−1(配列番号2),MuRF1(配列番号3),4E−BP1(配列番号4),RPS6KB1(配列番号5))の発現量を測定した。内部標準としてβ−actinを用いた。
群分けは、以下のとおりである(各群n=8)。
・通常飼育群(−):尾懸垂無し、dH2O投与
・尾懸垂群(C):尾懸垂有り、dH2O投与
・尾懸垂+ユーグレナ低濃度群(EL):尾懸垂有り、ユーグレナ40mg/mouse/day(1%摂食相当)投与
・尾懸垂+ユーグレナ高濃度群(EH):尾懸垂有り、ユーグレナ80mg/mouse/day(2%摂食相当)投与
(A.体重および肝臓重量測定)
体重および肝臓重量測定の結果を図5に示す。
試験終了時の体重は通常飼育群(−)と比較して、尾懸垂群(C)ならびに尾懸垂+ユーグレナ低濃度群(EL)に有意な減少がみられた。また、肝臓重量においても体重と同じ挙動を示した。
筋重量測定の結果を図6及び7に示す。
図6に示すように、通常飼育群と比較し、尾懸垂において筋重量の低下が見られたことから、尾懸垂により廃用性筋萎縮が誘導されたことが確認された。
図7に示すように、足底筋および大腿四頭筋においてユーグレナの摂取により筋重量の低下が抑制された。ユーグレナには多くの成分が含まれており、筋タンパク質の分解阻害あるいは合成促進に寄与した可能性が考えられる。
また、足底筋や大腿四頭筋は運動機能と強く関連する筋肉であるため、ユーグレナを運動機能維持剤や運動機能改善剤として用いることが可能である。
筋萎縮関連遺伝子発現量測定の結果を図8に示す。
図8に示すように、足底筋においてユーグレナの摂取により筋タンパク質の分解に関わるユビキチンリガーゼの遺伝子(Cbl−b(配列番号1),Atrogin−1(配列番号2),MuRF1(配列番号3)、図9)の発現を抑制する傾向が見られた。
一方、大腿四頭筋においてユーグレナの摂取によりCbl−b(配列番号1)およびAtrogin−1(配列番号2)の遺伝子発現を抑制する傾向は見られなかった。以上の結果より、筋肉の部位によりユーグレナによる効能に差がみられる可能性が示された。
また、ユーグレナを、筋タンパク質の分解を抑制する筋タンパク質分解抑制剤や、筋萎縮を予防する筋萎縮予防剤として用いることが可能であることがわかった。
筋合成関連遺伝子発現量測定の結果を図10に示す。
図10に示すように、足底筋と大腿四頭筋においてユーグレナの摂取により筋タンパク質の合成阻害因子である4E−BP1(配列番号4)(図11)の発現を抑制し、筋タンパク質の合成を促進するS6K(RPS6KB1、配列番号5)の遺伝子(図11)の発現を促進する傾向が見られた。ユーグレナは筋タンパク質の分解を抑制するとともに、筋合成を促進することで筋萎縮改善作用を発揮することが示唆された。また、ユーグレナには数多くの成分が含まれていることから、その作用点は複数存在し、組み合わさることで効果を発揮している可能性が考えられる。
また、ユーグレナを、筋合成を促進する筋合成促進剤として用いることが可能であることがわかった。
Claims (5)
- ユーグレナを有効成分として含有し、
廃用性の筋肉の萎縮を抑制するために用いられることを特徴とする筋量増加用食品組成物。 - 大腿四頭筋の量を増加させるために用いられることを特徴とする請求項1に記載の筋量増加用食品組成物。
- ユーグレナを有効成分として含有し、
廃用性の筋肉の萎縮を抑制するために用いられることを特徴とする筋量増加剤。 - ユーグレナを有効成分として含有し、
廃用性の筋肉の萎縮を抑制するために用いられることを特徴とする筋萎縮予防用の食品組成物。 - ユーグレナを有効成分として含有し、
廃用性の筋肉の萎縮を予防するために用いられることを特徴とする筋萎縮予防剤。
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