JP6524113B2 - 酸性ガス分離モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、促進輸送膜を用いて原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離モジュールに関する。詳しくは、耐久性に優れる酸性ガス分離モジュールに関する。
近年、原料ガス(被処理ガス)から、酸性ガスを選択的に分離する技術の開発が進んでいる。例えば、酸性ガスを選択的に透過する酸性ガス分離膜を用いて、原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離モジュールが開発されている。
一例として、特許文献1には、原料ガスから炭酸ガス(二酸化炭素)を分離する酸性ガス分離膜(二酸化炭素分離ゲル膜)として、二酸化炭素透過性の支持体の上に、二酸化炭素キャリアを含む水溶液を、架橋構造を有するビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体に吸収させて形成したハイドロゲル膜を形成した酸性ガス分離膜が開示されている。
また、特許文献1には、この酸性ガス分離膜の製造方法として、未架橋のビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体水溶液を、二酸化炭素透過性の支持体上へ膜状に塗布した後、この水溶液を加熱し架橋させて水不溶化し、この水不溶化物に二酸化炭素キャリア水溶液を吸収させてゲル化する、酸性ガス分離膜の製造方法も開示されている。
特許文献1に示される酸性ガス分離膜は、いわゆる促進輸送膜を用いる酸性ガス分離膜である。促進輸送膜は、前述の二酸化炭素キャリアのような酸性ガスと反応するキャリアを膜中に有し、このキャリアによって酸性ガスを膜の反対側に輸送することで、原料ガスから酸性ガスを分離する。
このような酸性ガス分離膜は、通常、多孔質層などの多孔質支持体の上に、促進輸送膜を形成した構成を有する。
例えば、特許文献1には、促進輸送膜を、孔径10μm以下の多孔質体で支持することにより、酸性ガス分離膜を構成することが記載されている。
また、特許文献2には、多孔質層(第一層)と、酸性ガスと相互作用し得る分子量が150,000以下の化合物を含有する促進輸送膜(分離活性層である第二層)と、ガス透過性の高い第三層とを、この順に積層した酸性ガス分離膜が開示されている。
特公平7−102310号公報 特開2011−183379号公報
促進輸送膜を多孔質支持体で支持してなる酸性ガス分離膜では、特許文献2に示されるように、促進輸送膜は、多孔質支持体に一部が含浸された状態で支持される。
ここで、促進輸送膜は、キャリアを十分に機能させるために、膜中に多量の水分を保持させる必要がある。そのため、促進輸送膜には、非常に吸水性および保水性が高いポリマーが用いられる。加えて、促進輸送膜は、金属炭酸塩などのキャリアの含有量が多い程、吸水量が増えて、酸性ガスの分離性能が向上する。すなわち、促進輸送膜は、非常に柔らかい(粘性が低い)、ゲル膜である場合が多い。
加えて、促進輸送膜を利用する酸性ガス分離膜では、酸性ガスの分離時には、温度100〜130℃、湿度90%程度の原料ガスを、1.5MPa程度の圧力で供給される。
そのため、促進輸送膜の一部が多孔質支持体に含浸された状態で支持される従来の酸性ガス分離膜では、促進輸送膜の力学的な強度が不足しており、耐久性が不十分であるという問題が有る。加えて、促進輸送膜の力学的な強度が不足しているために、酸性ガスの分離のための十分な圧力が掛けられないという問題も有る。
さらに、促進輸送膜を含む積層体を巻回するスパイラル型の酸性ガス分離モジュールでは、積層体を巻回する際に、原料ガスを酸性ガス分離膜に供給する供給ガス流路用部材と促進輸送膜とが摺接して、促進輸送膜が損傷して、甚だしい場合には、原料ガスが促進輸送膜を抜けるようになってしまう。
親水性の多孔質支持体を用いたり、促進輸送膜を形成するための塗布液にアルコールを添加することで、多孔質支持体への促進輸送膜の含浸量を増やすことができる。この場合、促進輸送膜を形成するための塗布液の浸透性によっては、特許文献2に示されるように、促進輸送膜全体を多孔質支持体の中に形成することも可能である。
しかしながら、一般的な多孔質膜は、膜の厚さ方向に直線的に貫通孔が存在する。このような貫通孔は、微細に見ると圧力の方向に対して、多孔壁面からの摩擦力以外、抵抗力がないと考えられる。そのため促進輸送膜の保持力としては、十分な効果を発揮しないという問題が生じる。
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、促進輸送膜を有する酸性ガス分離膜を用いる酸性ガス分離モジュールであって、促進輸送膜の力学的強度を十分に確保することができ、しかも、原料ガスの抜け等が生じることもできる、耐久性に優れる酸性ガス分離モジュールを提供することにある。
この目的を達成するために、本発明の酸性ガス分離モジュールは、不織布と、酸性ガスと反応するキャリアおよびキャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜と、原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材と、促進輸送膜のキャリアが拡散することを抑制するキャリア拡散抑制層とを有し、
促進輸送膜が全て不織布の中に形成されており、もしくは、不織布の中が促進輸送膜で満たされており、
キャリアガス拡散抑制層が、不織布の一方の面側に積層され、さらに、供給ガス流路用部材が、不織布のキャリア拡散抑制層とは逆の面側に積層されることを特徴とする酸性ガス分離モジュールを提供する。
このような本発明の酸性ガス分離モジュールにおいて、不織布とキャリア拡散抑制層との間に多孔質層を有するのが好ましい。
また、キャリア拡散抑制層の不織布とは逆の面側に多孔質層が積層されるのが好ましい。
また、不織布のISO透気度が2.5μm/(Pa・sec)以上であるのが好ましい。
また、不織布の繊維径が1〜50μmであるのが好ましい。
また、不織布の目付量が10〜100g/m2であるのが好ましい。
また、促進輸送膜の厚さが50μm以下であるのが好ましい。
また、キャリア拡散抑制層がシリコーン樹脂で形成されるのが好ましい。
また、キャリアがアルカリ金属塩であるのが好ましい。
さらに、不織布、促進輸送膜、供給ガス流路用部材およびキャリア拡散抑制層を含む積層体を巻回してなるスパイラル型であるのが好ましい。
このような本発明によれば、促進輸送膜を有する酸性ガス分離膜を用いる酸性ガス分離モジュールにおいて、耐久性に優れる酸性ガス分離モジュールを得ることができる。
本発明の酸性ガス分離モジュールの一例を一部切り欠いて示す概略斜視図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの積層体の一部の概略断面図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの酸性ガス分離膜の一部の概略断面図である。 図4(A)〜図4(C)は、本発明の酸性ガス分離モジュールに用いられる酸性ガス分離膜の別の例を示す概念図である。 図5(A)および図5(B)は、図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図7(A)および図7(B)は、図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離モジュールの作製方法を説明するための概念図である。
以下、本発明の酸性ガス分離モジュールについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
図1に本発明の酸性ガス分離モジュールの一例の一部切欠き概略斜視図を示す。なお、以下の説明では、酸性ガス分離モジュールを、単に、分離モジュールとも言う。
図1に示すように、分離モジュール10は、基本的に、中心筒12と、酸性ガス分離膜20を有する積層体14aを巻回してなる積層体巻回物14と、テレスコープ防止板16とを有して構成される。また、積層体14aは、酸性ガス分離膜20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26とからなる積層体である。さらに、酸性ガス分離膜20は、促進輸送膜20aと、不織布20bと、キャリア拡散抑制層20cとからなるものである。
分離モジュール10は、一例として、一酸化炭素、炭酸ガス(CO2)、水(水蒸気)および水素を含有する原料ガスGから、酸性ガスGcとして炭酸ガスを分離する。
図示例の分離モジュール10は、いわゆるスパイラル型の分離モジュールである。具体的には、分離モジュール10は、後述するシート状の積層体14aを、複数、積層して、この積層物を中心筒12に巻回して積層体巻回物14を形成し、積層体巻回物14の両端面に、中心筒12を挿通してテレスコープ防止板16を設けてなる構成を有する。
すなわち、積層体巻回物14とは、積層されて巻回された積層体14aによる略円筒状物である。
巻回した積層体14aの最外周面は、ガス非透過性の被覆層18で覆われている。
なお、本発明の分離モジュールは、図示例のようなスパイラル型に限定はされず、シート状の積層体14aを、平板状に維持してなる、いわゆる平板型であってもよい。
分離モジュール10において、酸性ガスを分離される原料ガスGは、例えば図1中奥手側のテレスコープ防止板16の開口部16dを通って、積層体巻回物14の端面から各積層体14aの内部に供給される。
積層体14aに供給された原料ガスGは、積層体14a内を流れつつ、酸性ガスGcを分離される。
積層体14aによって原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、中心筒12から排出され、酸性ガスを分離された原料ガスG(以下、便宜的に残余ガスGrとする)は、積層体巻回物14の供給側とは逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16の開口部16dを通って分離モジュール10の外部に排出される。
中心筒(透過ガス集合管)12は、原料ガスG供給側の端面が閉塞する円筒状の管で、周面すなわち管壁には、複数の貫通孔12aが形成される。
原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、後述する透過ガス流路用部材26を通って、貫通孔12aから中心筒12内に至り、中心筒12の開放端12bから排出される。
中心筒12において、開口率は、1〜80%が好ましく、1〜75%がより好ましく、1.5〜70%がさらに好ましい。中でも、実用的な観点から、中心筒12の開口率は、1.5〜25%が、特に好ましい。中心筒12の開口率とは、具体的には、中心筒12の長さ方向の貫通孔12aの形成領域における、中心筒12の外周面に占める貫通孔12aの面積率である。
中心筒12の開口率を上記範囲とすることにより、効率的に酸性ガスGcを収集することができ、また、中心筒12の強度を高め、加工適性を十分に確保できる。
貫通孔12aは、直径0.5〜20mmの円形の孔であるのが好ましい。さらに、貫通孔12aは、中心筒12の周壁に、均一に形成されるのが好ましい。
中心筒12には、必要に応じて、分離した酸性ガスGcを開放端12b側に流すためのガス(スイープガス)を供給する供給口(供給部)を設けてもよい。
さらに、中心筒12の周壁には、軸方向に沿ってスリット(図示省略)が設けられているのが好ましい。このスリットに関しては、後に詳述する。
前述のように、積層体14aは、酸性ガス分離膜20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26とを積層してなるものである。
なお、図1の符号30は、酸性ガス分離膜20と透過ガス流路用部材26とを接着し、かつ、積層体14a同士を接着する、接着剤層30である。接着剤層30は、透過ガス流路用部材26における酸性ガスGcの流路を、中心筒12側が開口するエンベロープ状にする、流路形成部材としても作用する。
前述のように、図示例の分離モジュール10は、この積層体14aを、複数、積層して、この積層体14aの積層物を中心筒12に巻き付けてなる、略円筒状の積層体巻回物14を有する。
以下、便宜的に、図中に矢印yで示す、積層体14aの巻回に対応する方向を巻回方向、図中に矢印xで示す、巻回方向と直交する方向を幅方向とする。
分離モジュール10において、積層体巻回物14を構成する積層体14aは1枚でもよい。しかしながら、複数の積層体14aを積層して巻回することにより、酸性ガス分離膜20の膜面積を大きくして、1つの分離モジュールで分離する酸性ガスGcの量を向上できる。
積層体14aの積層数は、分離モジュール10に要求される処理速度や処理量、分離モジュール10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。ここで、積層する積層体14aの数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。積層体14aの積層数を、この数とすることで、中心筒12への積層体14aの巻回が容易になり、加工性を向上できる。
図2に、積層体14aの部分断面図を示す。前述のように、矢印xは幅方向、矢印yは巻回方向である。
図示例において、積層体14aは、後述する図6に示すように、二つ折りにした酸性ガス分離膜20の間に供給ガス流路用部材24を挟み込んで挟持体36とし、この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層してなる構成を有する。この構成については、後に詳述する。
前述のように、分離モジュール10において、原料ガスGは、テレスコープ防止板16の開口部16dを通って、積層体巻回物14の一方の端面から供給される。すなわち、原料ガスGは、各積層体14aの幅方向(矢印x方向)の端部(端面)に供給される。
図2に概念的に示すように、積層体14aの幅方向の端面に供給された原料ガスGは、供給ガス流路用部材24を幅方向に流れる。この流れの中で、酸性ガス分離膜20(促進輸送膜20a)に接触した酸性ガスGcは、促進輸送膜20aのキャリアによって、原料ガスGから分離され積層方向に輸送されて、酸性ガス分離膜20を積層体14aの積層方向に通過して、透過ガス流路用部材26に流入する。
透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、透過ガス流路用部材26を巻回方向(矢印y方向)に流れて、中心筒12に至り、中心筒12の貫通孔12aから中心筒12内に流入する。中心筒12内に流入した酸性ガスGcは、中心筒12を幅方向に流れて、開放端12bから排出される。
酸性ガスGcを除去された残余ガスGrは、供給ガス流路用部材24を幅方向に流れて、積層体巻回物14の逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16の開口部16dを通って、分離モジュール10の外部に排出される。
供給ガス流路用部材24は、その幅方向の端部から、原料ガスGを供給され、部材内を流れる原料ガスGと、酸性ガス分離膜20とを接触させる。
このような供給ガス流路用部材24は、前述のように二つ折りされた酸性ガス分離膜20のスペーサとして機能して、原料ガスGの流路を構成する。また、供給ガス流路用部材24は、原料ガスGを乱流にするのが好ましい。この点を考慮すると、供給ガス流路用部材24は、ネット状(メッシュ状/網目構造)、織布状、不織布状、多孔質状等の部材が好ましい。
供給ガス流路用部材24の形成材料としては、十分な耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。
一例として、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙などの紙材料、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。
樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデン等が、好適に例示される。このような供給ガス流路用部材24の形成材料は、複数の材料を併用してもよい。
供給ガス流路用部材24の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
本発明の分離モジュール10において、酸性ガス分離膜20は、促進輸送膜20aと、促進輸送膜20aを支持する不織布20bと、キャリア拡散抑制層20cとを有する。
本発明の分離モジュール10において、酸性ガス分離膜20を構成する促進輸送膜20aは、図3に概念的に示すように不織布20bの中に形成される。さらに、キャリア拡散抑制層20cは、不織布20bの供給ガス流路用部材24とは逆側の面に積層される。
促進輸送膜20aは、少なくとも、供給ガス流路用部材24を流れる原料ガスGに含有される酸性ガスGcと反応するキャリア、および、このキャリアを担持する親水性化合物を含有する。このような促進輸送膜20aは、原料ガスGから酸性ガスGcを選択的に透過させる機能を有している。
不織布20bは、内部に促進輸送膜20aを支持するものである。
キャリア拡散抑制層20cは、酸性ガスGcの分離時における圧力によって促進輸送膜20aが不織布20bから排出されてしまうことを防止すると共に、促進輸送膜20aのキャリアが、促進輸送膜20aから排出されて、透過ガス流路用部材26を透過してしまうことを防止するための層である。
促進輸送膜20a、不織布20bおよび拡散抑制層20cからなる酸性ガス分離膜20に関しては、後に詳述する。
透過ガス流路用部材26は、キャリアと反応して酸性ガス分離膜20を透過した酸性ガスGcを、中心筒12の貫通孔12aに流すための部材である。
前述のように、積層体14aは、酸性ガス分離膜20を不織布20bを内側にして二つ折りにして、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を有する。
この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着剤層30で接着することにより、1つの積層体14aが構成される。
透過ガス流路用部材26は、酸性ガス分離膜20の間でスペーサとして機能して、積層体14aの巻回中心(内側)に向かって中心筒12の貫通孔12aに至る、原料ガスGから分離した酸性ガスGcの流路を構成する。また、この酸性ガスGcの流路を適正に形成するためには、後述する接着剤層30が浸透する必要が有る。この点を考慮すると、透過ガス流路用部材26は、供給ガス流路用部材24と同様、ネット状(メッシュ状/ネット状)、織布状、不織布状、多孔質状等の部材が好ましい。
なお、本発明において、積層体14aは、折り返した酸性ガス分離膜20に供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を用いる構成に限定はされない。例えば、酸性ガス分離膜20の表面に供給ガス流路用部材24を貼着したものを用いて、挟持体36と同様に積層体を構成してもよい。
透過ガス流路用部材26の形成材料は、十分な強度や耐熱性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。具体的には、エポキシ含浸ポリエステルなどのポリエステル系の材料、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系材料、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系の材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。透過ガス流路用部材26の形成材料は、複数の材料を併用してもよい。また、透過ガス流路用部材26は、同一材料のものを、複数、重ねて用いてもよい。
透過ガス流路用部材26の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
前述のように、透過ガス流路用部材26は、原料ガスGから分離されて酸性ガス分離膜20を透過した酸性ガスGcの流路となる。
そのため、透過ガス流路用部材26は、流れるガスに対しての抵抗が少ないのが好ましい。具体的には、空隙率が高く、圧をかけたときの変形が少なく、かつ、圧損が少ないのが好ましい。
透過ガス流路用部材26の空隙率は、30〜99%が好ましく、35〜97.5%がより好ましく、40〜95%が特に好ましい。
圧をかけたときの変形は、引張試験を行ったときの伸度で近似できる。透過ガス流路用部材26は、10N/10mm幅の荷重をかけたときの伸度が5%以内であることが好ましく、4%以内であることがより好ましい。
圧損は、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失で近似できる。透過ガス流路用部材26は、15cm角の透過ガス流路用部材26に、室温で15L(リットル)/minの空気を流した際に、流量損失が7.5L/min以内であるのが好ましく、7L/min以内であるのがより好ましい。
積層体14aは、供給ガス流路用部材24、酸性ガス分離膜20、および、透過ガス流路用部材26を積層してなるものである。
前述のように、酸性ガス分離膜20は、促進輸送膜20aと、この促進輸送膜20aを中に支持する不織布20bと、圧力によって促進輸送膜20aが不織布20bから排出されてしまうことを防止すると共に、促進輸送膜20aのキャリアが酸性ガス分離膜20を通過して透過ガス流路用部材26に至ってしまうことを防止するキャリア拡散抑制層20cとから形成される。
以下、図3を参照して、本発明の分離モジュール10における酸性ガス分離膜20について、詳細に説明する。
前述のように、促進輸送膜20aは、原料ガスGから酸性ガスGcを選択的に透過させる機能を有している。言い換えると、促進輸送膜20aは、酸性ガスGcを選択的に輸送する機能を有している。
このような促進輸送膜20aは、少なくとも親水性ポリマー等の親水性化合物、酸性ガスと反応するキャリアおよび水等を含有する。
親水性化合物はバインダーとして機能するものであり、促進輸送膜20aにおいて、水分を保持して、キャリアによる二酸化炭素等の酸性ガスの分離機能を発揮させる。また、親水性化合物は、耐熱性の観点から、架橋構造を有するのが好ましい。
親水性化合物は、水に溶けて塗布組成物を形成できると共に、促進輸送膜20aが高い親水性(保湿性)を有するのが好ましいという観点から、親水性が高いものが好ましい。
具体的には、親水性化合物は、生理食塩液の吸水量が0.5g/g以上の親水性を有することが好ましく、生理食塩液の吸水量が1g/g以上の親水性を有することがより好ましく、生理食塩液の吸水量が5g/g以上の親水性を有することがさらに好ましく、生理食塩液の吸水量が10g/g以上の親水性を有することが特に好ましく、生理食塩液の吸水量が20g/g以上の親水性を有することが最も好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量は、安定な膜を形成し得る範囲で、適宜、選択すればよい。具体的には、20,000〜2,000,000が好ましく、25,000〜2,000,000がより好ましく、30,000〜2,000,000が特に好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量を20,000以上とすることで、安定して十分な膜強度を有する促進輸送膜20aを得ることができる。
親水性化合物が架橋可能基としてヒドロキシ基(−OH)を有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が30,000以上であるのが好ましい。この際には、重量平均分子量は更に好ましくは40,000以上であり、より好ましくは、50,000以上である。また、親水性化合物が架橋可能基としてヒドロキシ基を有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、6,000,000以下であることが好ましい。
架橋可能基としてアミノ基(−NH2)を有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が10,000以上であるのが好ましい。この際には、親水性化合物の重量平均分子量は、15,000以上であるのがより好ましく、20,000以上であるのが特に好ましい。また、親水性化合物が、架橋可能基としてアミノ基を有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、1,000,000以下であるのが好ましい。
なお、本発明において、各種の高分子材料の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によってPS換算の分子量として測定すればよい。
また、親水性化合物は、市販品も利用可能であり、市販品を用いる場合には、カタログ、仕様書などで公称される分子量を用いればよい。
親水性化合物を形成する架橋可能基としては、耐加水分解性の架橋構造を形成し得るものが、好ましく選択される。
具体的には、ヒドロキシ基、アミノ基、塩素原子、シアノ基、カルボキシ基、および、エポキシ基等が例示される。これらの中でも、アミノ基およびヒドロキシ基が好ましく例示される。さらに、最も好ましくは、キャリアとの親和性およびキャリア担持効果の観点から、ヒドロキシ基が例示される。
親水性化合物としては、具体的には、単一の架橋可能基を有するものとしては、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリエチレンオキサイド、水溶性セルロース、デンプン、アルギン酸、キチン、ポリスルホン酸、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリ−N−ビニルアセトアミドなどが例示される。最も好ましくはポリビニルアルコールである。親水性化合物としては、これらの共重合体も例示される。
複数の架橋可能基を有する親水性化合物としては、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体が例示される。ポリビニルアルコール−ポリアクリル塩共重合体は、吸水能が高い上に、高吸水時においてもハイドロゲルの強度が大きいため好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体におけるポリアクリル酸の含有率は、例えば1〜95モル%、好ましくは2〜70モル%、より好ましくは3〜60モル%、特に好ましくは5〜50モル%である。アクリル酸の含有率は、公知の合成方法で制御することができる。
なお、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体において、ポリアクリル酸は、塩であってもよい。この際におけるポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が例示される。
ポリビニルアルコールは市販品としても入手可能である。具体的には、PVA117(クラレ社製)、ポバール(クラレ社製)、ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール社製)等が例示される。分子量のグレードは種々存在するが、重量平均分子量が130,000〜300,000のものが好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩)も、市販品として入手可能である。例えば、クラストマーAP20(クラレ社製)が例示される。
本発明の製造方法において、促進輸送膜20aの親水性化合物は、2種以上を混合して使用してもよい。
親水性化合物の含有量は、形成した促進輸送膜20aにおいて、親水性化合物がバインダーとして機能し、かつ、水分を十分に保持できる量を、親水性組成物やキャリアの種類等に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、促進輸送膜20aにおける親水性化合物の含有量は、0.5〜50質量%が好ましく、0.75〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。親水性化合物の含有量を、この範囲とすることにより、上述のバインダーとしての機能および水分保持機能を、安定して、好適に発現できる。
親水性化合物の架橋構造は、熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋、光架橋等、公知の手法により形成できる。
好ましくは光架橋もしくは熱架橋であり、最も好ましくは熱架橋である。
促進輸送膜20aの形成には、親水性組成物と共に、架橋剤を用いるのが好ましい。すなわち、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物は、架橋剤を含有するのが好ましい。
架橋剤としては、親水性化合物と反応し、熱架橋や光架橋等の架橋し得る官能基を2以上有する架橋剤を含むものが選択される。また、形成された架橋構造は、耐加水分解性の架橋構造となるのが好ましい。
このような観点から、塗布組成物に添加される架橋剤としては、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤などが好適に例示される。より好ましくは多価アルデヒド、有機金属系架橋剤およびエポキシ架橋剤であり、中でも、アルデヒド基を2以上有するグルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの多価アルデヒドが好ましい。
エポキシ架橋剤は、エポキシ基を2以上有する化合物であり、4以上有する化合物も好ましい。エポキシ架橋剤は市販品としても入手可能であり、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄社化学社製、エポライト100MF等)、ナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、日油株式会社製エピオールE400などが例示される。
エポキシ架橋剤に類似する化合物として、環状エーテルを有するオキセタン化合物も、好ましく使用される。オキセタン化合物としては、官能基を2以上有する多価グリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、例えばナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、などが例示される。
多価グリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が例示される。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピル、オキシエチエンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソビトール等が例示される。
多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アシリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が例示される。
ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等が例示される。
多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が例示される。
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が例示される。
さらに、有機金属系架橋剤としては、例えば、有機チタン架橋剤、有機ジルコニア架橋剤等が例示される。
例えば、親水性化合物として、重量平均分子量が130,000以上のポリビニルアルコールを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、架橋剤として、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
親水性化合物として、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体を用いる場合は、架橋剤として、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
親水性化合物として、重量平均分子量が10,000以上のポリアリルアミンを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、架橋剤として、エポキシ架橋剤、グルタルアルデヒド、および、有機金属架橋剤が好ましく利用される。
親水性化合物として、ポリエチレンイミンやポリアリルアミンを用いる場合には、架橋剤として、エポキシ架橋剤が好ましく利用される。
架橋剤の量は、親水性化合物や架橋剤の種類に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、親水性化合物が有する架橋可能基量100質量部に対して0.001〜80質量部が好ましく、0.01〜60質量部がより好ましく、0.1〜50質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、架橋構造の形成性が良好であり、かつ、形状維持性に優れる促進輸送膜を得ることができる。
親水性化合物が有する架橋可能基に着目すれば、架橋構造は、親水性化合物が有する架橋可能基100molに対し、架橋剤0.001〜80molを反応させて形成されたものであるのが好ましい。
促進輸送膜20aにおいて、キャリア(酸性ガスキャリア)は、酸性ガス(例えば、炭酸ガス(CO2))と反応して、酸性ガスを輸送するものである。
キャリアは、酸性ガスと親和性を有し、かつ、塩基性を示す水溶性の化合物である。具体的には、アルカリ金属化合物、窒素含有化合物および硫黄酸化物等が例示される。
なお、キャリアは、間接的に酸性ガスと反応するものでも、キャリア自体が、直接、酸性ガスと反応するものでもよい。
前者は、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応するものなどが例示される。より具体的には、スチーム(水分)と反応してOH-を放出し、そのOH-がCO2と反応することで、促進輸送膜20a中に選択的にCO2を取り込むことができる化合物であり、例えば、アルカリ金属化合物である。
後者は、キャリア自体が塩基性であるようなもので、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物である。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、および、アルカリ金属水酸化物等が例示される。アルカリ金属としては、セシウム、ルビジウム、カリウム、リチウム、および、ナトリウムから選ばれたアルカリ金属元素が好ましく用いられる。なお、本発明において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属そのもののほか、その塩およびそのイオンも含む。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、および、炭酸セシウム等が例示される。
アルカリ金属重炭酸塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、および、炭酸水素セシウム等が例示される。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および、水酸化セシウム等が例示される。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性が良いという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、および、セシウムを含む化合物が好ましい。
キャリアとしてアルカリ金属化合物を用いる際には、2種以上のキャリアを併用してもよい。
促進輸送膜20a中に2種以上のキャリアが存在することにより、膜中で異なるキャリアを距離的に離間させることができる。これにより、複数のキャリアの潮解性の違いによって、促進輸送膜20aの吸水性に起因して、製造時等に促進輸送膜20a同士や、促進輸送膜20aと他の部材とが貼着すること(ブロッキング)を、好適に抑制できる。
ブロッキングの抑制効果を、より好適に得られる等の点で、2種以上のアルカリ金属化合物をキャリアとして用いる場合には、潮解性を有する第1化合物と、第1化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2化合物を含むのが好ましい。一例として、第1化合物としては炭酸セシウムが、第2化合物としては炭酸カリウムが、例示される。
窒素含有化合物としては、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、タウリン、ジアミノプロピオン酸などのアミノ酸類、ピリジン、ヒスチジン、ピペラジン、イミダゾール、トリアジンなどのヘテロ化合物類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、クリプタンド[2.1]、クリプタンド[2.2]などの環状ポリエーテルアミン類、クリプタンド[2.2.1]、クリプタンド[2.2.2]などの双環式ポリエーテルアミン類、ポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン四酢酸等が例示される。
硫黄化合物としては、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオール等が例示される。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量は、キャリアや親水性化合物の種類等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、促進輸送膜20aにおけるキャリアの量が、0.3〜30質量%となる量が好ましく、0.5〜25質量%となる量がより好ましく、1〜20質量%となる量が特に好ましい。
塗布組成物におけるキャリアの含有量を、上記範囲とすることにより、塗布前の塩析を好適に防ぐことができ、さらに、形成した促進輸送膜20aが、酸性ガスの分離機能を確実に発揮できる。
塗布組成物における親水性化合物とキャリアとの量比は、親水性化合物:キャリアの質量比で1:9〜2:3が好ましく、1:4〜2:3がより好ましく、3:7〜2:3が特に好ましい。
促進輸送膜20aは、必要に応じて、増粘剤を含有してもよい。すなわち、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物は、必要に応じて、増粘剤を含有してもよい。
増粘剤としては、例えば、寒天、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、キタンサンガム、グァーガム、ペクチン等の増粘多糖類が好ましい。中でも、製膜性、入手の容易性、コストの点から、カルボキシメチセルロースが好ましい。
カルボキシメチルセルロースを用いることにより、少量の含有量で、所望粘度の塗布組成物が容易に得られるうえ、塗布組成物に含まれる溶媒以外の成分の少なくとも一部が塗布組成物中で溶解できずに析出してしまう恐れも少ない。
増粘剤の含有量は、促進輸送膜20aを目的とする粘度に調節可能であれば、できるだけ少ないほうが好ましい。
一般的な指標としては、10質量%以下が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%以下がより好ましい。
促進輸送膜20a(促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物)は、このような親水性化合物、架橋剤およびキャリア、あるいはさらに増粘剤に加え、必要に応じて、各種の成分を含有してもよい。
このような成分としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤、炭素数3〜20のアルキル基または炭素数3〜20のフッ化アルキル基と親水性基とを有する化合物やシロキサン構造を有する化合物等の特定化合物、オクタン酸ナトリウムや1−ヘキサスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ポリオレフィン粒子やポリメタクリル酸メチル粒子等のポリマー粒子等が例示される。
その他、必要に応じて、触媒、保湿剤、吸湿剤、補助溶剤、膜強度調節剤、欠陥検出剤等を用いてもよい。
本発明の分離モジュールにおいて、促進輸送膜20aの厚さは、促進輸送膜20aの組成等に応じて、目的とする性能を得られる膜厚を、適宜、設定すればよい。具体的には、50μm以下が好ましく、3〜50μmがより好ましい。
促進輸送膜20aの厚さを50μm以下とすることにより、促進輸送膜20aのキャリアによる酸性ガスの輸送能を十分に発現して、効率の良い酸性ガス分離を行うことができる。促進輸送膜20aは、促進輸送膜20aの組成等に応じて、目的とする酸性ガスの分離能を発現できる厚さ以上とすればよいが、3μmとすることにより、安定して目的とする酸性ガスの分離能を発現できる。
なお、促進輸送膜20aの膜厚は、促進輸送膜20a(不織布20b)の凍結活段等を行って、電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で断面を観察することでによって測定できる。
不織布20bは、促進輸送膜20aを支持するものである。ここで、本発明の分離モジュール10においては、不織布20bは、図3に概念的に示すように、促進輸送膜20aを支持する支持体として不織布20bを用い、かつ、不織布20bの中に促進輸送膜20aを形成する。
本発明において、不織布とは、JIS L 0222の規定に準拠するものである。すなわち、本発明において、不織布とは、「繊維シート、ウェブまたはバットで、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、および/または融着、および/または接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨を除く。」ものである。
本発明の分離モジュール10は、このような構成を有することにより、ゲル状である促進輸送膜20aの力学的強度不足を担保して、耐久性が高く、かつ、原料ガスGが促進輸送膜20aを抜けてしまうことも防止している。
特許文献2に示されるように、従来の分離モジュール(酸性ガス分離膜)は、多孔質体からなる多孔質支持体を用い、一部を多孔質支持体に含浸した状態で、多孔質支持体の上に促進輸送膜を形成している。
酸性ガスの分離時には、分離モジュールに、温度100〜130℃、湿度90%程度の原料ガスGを、1.5MPa程度の圧力で供給される。
これに対し、促進輸送膜はゲル状であるため、力学的な強度が低い。そのため、従来の分離モジュールでは、使用に応じて促進輸送膜が劣化してしまい、十分な耐久性が得られない。また、従来の分離モジュールでは、酸性ガスの分離のための十分な圧力が掛けられない。さらに、スパイラル型の分離モジュールでは、積層体の巻回時に、促進輸送膜と供給ガス流路用部材とが摺接して、促進輸送膜が損傷してしまい、甚だしい場合には、原料ガスが促進輸送膜を抜けてしまうという問題も有る。
促進輸送膜を形成するための塗布液へのアルコール添加等によって、多孔質支持体への促進輸送膜の含浸量を増やすこともでき、特許文献2に示されるように、促進輸送膜を多孔質支持体の中に形成することもできる。しかしながら、この場合には、多孔質支持体と促進輸送膜との間に隙間が生じるため、原料ガスが促進輸送膜を抜けてしまう、酸性ガスの分離のための十分な圧力を掛けられない等の問題が生じる。
これに対し、本発明の分離モジュール10は、促進輸送膜20aの支持体として不織布20bを用い、かつ、不織布20bの中に促進輸送膜20aを形成して、支持する。さらに、後述するキャリア拡散抑制層20cを、不織布20bの供給ガス流路用部材24と逆側の面に設ける。言い換えれば、キャリア拡散抑制層20cと供給ガス流路用部材24とで、不織布20bを挟むような構成を有する。
そのため、ゲル状の促進輸送膜20aの力学的強度の不足を不織布20bで担保することができ、強度不足に起因する促進輸送膜20aの劣化を防止して、耐久性の良好な分離モジュール10を実現できる。また、後述するキャリア拡散抑制層20cとの相互作用によって、促進輸送膜20aを確実に保持できるので、酸性ガスの分離に必要な十分な圧力を掛けることができる。
さらに、積層体14aの巻回時に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24とが摺接することが無いので、促進輸送膜20aが損傷することがなく、また、摺接した場合でも、後述するように不織布20bが促進輸送膜20aで満たされているので、原料ガスが促進輸送膜20aを抜けることはなく、また、酸性ガスの分離能力低下も防止できる。
さらに、多孔質体よりも遥かに間隙が大きい不織布20bを用いるので、不織布20bと促進輸送膜20aとの間に隙間を生じることなく、不織布20bの全面、あるいは、不織布20bの必要な領域の全面に、隙間なく層状の促進輸送膜20aを形成できる。
本発明の分離モジュール10において、不織布20bは、必要な耐熱性を有するものであれば、公知の各種の材料からなる不織布が利用可能である。
一例として、PP、PPS、PET、PVA等の材料からなる不織布が例示される。
中でも、酸性やアルカリ性条件下の分解耐性等の点で、PPやPPSからなる不織布は、好適に用いられる。
不織布20bの透気度は、促進輸送膜20aの組成、促進輸送膜20aを形成する塗料の粘度、促進輸送膜20aの厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、促進輸送膜20aの透気度は、ISO透気度で2.5μm/(Pa・sec)以上が好ましく、3.0μm/(Pa・sec)以上がより好ましく、3.5μm/(Pa・sec)以上が特に好ましい。
促進輸送膜20aの透気度を2.5μm/(Pa・sec)以上とすることにより、キャリアによる炭酸ガスの輸送を好適に行うことができる等の点で好ましい。
なお、促進輸送膜20aをより確実に保持できる等の点で、不織布20bの透気度は9.0μm/(Pa・sec)以下が好ましい。
不織布20bの透気度は、JIS P 8117:2009の『紙および板紙−透気度および透気抵抗度試験方法』に準じて測定すればよい。
不織布20bの透気度は、促進輸送膜20aの形成前は、そのまま測定すればよい。促進輸送膜20aを形成した後でも、熱水で促進輸送膜20aを溶解して、洗い流すことで、不織布20bの透気度を測定できる。
不織布20bの繊維径も、促進輸送膜20aの組成、促進輸送膜20aを形成する塗布組成物の粘度、促進輸送膜20aの厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、1本の繊維と促進輸送膜20aとの密着の点からは、繊維径は、太い方が、密着力が高く、耐久性が高くなる。この点を考慮すると、不織布20bの繊維径は、1〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましく、15〜30μmが特に好ましい。
不織布20bの繊維径を1μm以上とすることにより、耐久性が良好な分離モジュール10が得られる等の点で好ましい。
不織布20bの繊維径を50μm以下とすることにより、酸性ガス分離膜20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
不織布20bの目付量も、促進輸送膜20aの組成、促進輸送膜20aを形成する塗布組成物の粘度、促進輸送膜20aの厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、不織布20bは、目付量が大きい、すなわち単位体積当たりの繊維の量が多い方が、耐久性の点で有利である。この点を考慮すると、不織布20bの目付量は、10〜100g/m2が好ましく、20〜60g/m2がより好ましく、30〜50g/m2が特に好ましい。
不織布20bの目付量を10g/m2以上とすることにより、耐久性が良好な分離モジュール10が得られる等の点で好ましい。
不織布20bの目付量を100g/m2以下とすることにより、酸性ガス分離膜20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
不織布20bの厚さも、目的とする酸性ガス分離膜20の厚さ、促進輸送膜20aの厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、不織布20bの厚さは、20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましく、50〜100μmが特に好ましい。
不織布20bの厚さを20μm以上とすることにより、より確実に促進輸送膜20aを支持できる。また、生産性を考えた際に、後述するRtoRなどにおける塗布機等の連続製造装置に適用するには、不織布20bを20um以上とすることで力学強度が確保でき、かつ、ハンドリング適性が確保できる点でも好ましい。
不織布20bの厚さを200μm以下とすることにより、酸性ガス分離膜20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
不織布20bは、促進輸送膜20aよりも薄くてもよい。すなわち、本発明の分離モジュール10では、後に図4(C)に示すように、不織布20bの中が促進輸送膜20aで満たされ、あるいはさらに、不織布20bから促進輸送膜20aが溢れたような状態となっていてもよい。
なお、図2および図3に示す例では、促進輸送膜20aは、不織布20bの中でキャリア拡散抑制層20c側に位置しているが、本発明は、これに限定されない。
例えば、促進輸送膜20aは、不織布20bの中で厚さ方向の中間に位置してもよく、すなわち、促進輸送膜20aとキャリア拡散抑制層20cおよび供給ガス流路用部材24との間に不織布20bのみの領域を有してもよい。あるいは、促進輸送膜20aが、不織布20bの中のキャリア拡散抑制層20cと逆側すなわち供給ガス流路用部材24側に位置してもよい。
すなわち、本発明の分離モジュールにおいて、促進輸送膜20aは、不織布20bの全面あるいは不織布20bの面方向の必要な領域において、不織布20bの中で空隙の無い層を構成していれば、厚さ方向の位置に限定は無い。
キャリア拡散抑制層20cは、キャリアが促進輸送膜20aから流出することを防止し、さらに、不織布20bと共に促進輸送膜20aを支持して、酸性ガスを分離する際の圧力等によって促進輸送膜20aが不織布20bから排出されてしまうことを防止する。以下の説明では、キャリア拡散抑制層20cを拡散抑制層20cとも言う。
本発明の分離モジュール10において、拡散抑制層20cは、不織布20bの供給ガス流路用部材24の積層面と逆側の面に積層される。言い換えれば、供給ガス流路用部材24は、拡散抑制層20cの形成面と逆側の面に当接して、不織布20bに積層される。
拡散抑制層20cは、各種の材料で形成可能である。
具体的には、拡散抑制層20cは、水酸基および/またはカルボキシル基と反応する官能基を有するのが好ましい。より具体的には、拡散抑制層20cは、エポキシ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシル基、および、カルボキシル基の少なくとも1つを有する化合物を主成分とするのが好ましい。
拡散抑制層20cの一例として、シリコーン結合を有する化合物やシリコーン含有化合物からなる層が例示される。具体的には、オルガノポリシロキサン(シリコーン樹脂)やポリトリメチルシリルプロピンなどシリコーン含有ポリアセチレン等が利用できる。オルガノポリシロキサンの具体例としては、下記の一般式で示されるものが例示される。
上記一般式中、nは1以上の整数を表す。ここで、入手容易性、揮発性、粘度等の観点から、nの平均値は10〜1000000の範囲が好ましく、100〜100000の範囲がより好ましい。
1n、R2n、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基、ビニル基、アラルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基からなる群より選択されるいずれかを示す。なお、n個存在するR1nおよびR2nは、それぞれ、同じであっても異なっても良い。また、アルキル基、アラルキル基およびアリール基は環構造を有していても良い。さらに、アルキル基、ビニル基、アラルキル基およびアリール基は置換基を有していても良く、この際における置換基は、例えば、アルキル基、ビニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基およびフッ素原子から選ばれる。これらの置換基は、可能であれば、さらに置換基を有することもできる。
1n、R2n、R3およびR4に選択されるアルキル基、ビニル基、アラルキル基およびアリール基は、入手容易性などの観点から、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基がより好ましい。
1n、R2n、R3およびR4は、メチル基またはエポキシ置換アルキル基が好ましく、例えば、エポキシ変性のポリジメチルシロキサン(PDMS)など、PDMS誘導体が好適に利用できる。
拡散抑制層20cとしては、上記のオルガノポリシロキサン以外にも、ポリ[1−(トリメチルシリル)−1−プロピン](PTMSP)等のシリコーン材料、ブタジエン系・イソプレン系ゴム材料、低密度なポリメチルペンテン等からなる層も利用可能である。
拡散抑制層20cの膜厚は、拡散抑制層20cの形成材料等に応じて、促進輸送膜20aからのキャリアの流出を防止でき、かつ、不織布20bと共に促進輸送膜20aを支持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、拡散抑制層20cの厚さは、0.5〜15μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。
拡散抑制層20cの厚さを0.5μm以上とすることにより、促進輸送膜20aからのキャリアの流出を好適に防止できる、促進輸送膜20aを好適に支持できる等の点で好ましい。
拡散抑制層20cの厚さを15μm以下とすることにより、酸性ガス分離膜20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
このような酸性ガス分離膜20は、公知の各種の方法で作製すればよい。好ましくは、RtoR(ロール・トゥ・ロール)を利用する塗布法によって作製する。
周知のように、RtoRとは、長尺な基板(被処理物)を巻回してなるロールから、基板を送り出し、長手方向に搬送しつつ、塗布組成物の塗布や乾燥等を行い、処理済の基板をロール状に巻き取る製造方法である。
酸性ガス分離膜20を作製する際には、長尺な不織布20bを巻回してなるロールを、拡散抑制層20cの形成装置に装填して、このロールから支持体を送り出して、不織布20bを長手方向に搬送しつつ、促進輸送膜20aとなる塗布組成物を塗布する。
促進輸送膜20aを形成する際の不織布20bの搬送速度は、塗布組成物の組成や粘度等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、不織布20bの搬送速度が速すぎると、塗布組成物の塗膜の膜厚均一性の低下や塗布組成物の乾燥が不十分になるおそれがあり、遅過ぎると生産性が低下する。この点を考慮すると、不織布20bの搬送速度は、0.5m/min以上が好ましく、0.75〜200m/minがより好ましく、1〜200m/minが特に好ましい。
前述のように、促進輸送膜20aは、親水性ポリマー等の親水性化合物、酸性ガスと反応するキャリアおよび水等を含有する。
従って、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物(塗布液/塗料)は、前述の親水性化合物、キャリアおよび水、あるいはさらに、架橋剤等の必要となる成分を含む塗布組成物である。水は、常温水でも加温水でもよい。
親水性化合物は、架橋、一部架橋および未架橋のいずれでも良く、また、これらが混合されたものでもよい。塗布組成物は、公知の方法で調製すればよい。
この塗布組成物の粘度、塗布時の塗布組成物の温度、塗布から乾燥までの時間等を調節することにより、不織布20bの中に促進輸送膜20aを形成できる。
この点を考慮すると、促進輸送膜20aとなる塗布組成物は、25℃における粘度が50〜300cpであるのが好ましい。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物の粘度を上記範囲とすることにより、好適に不織布20bの中に層状の促進輸送膜20aを形成できる塗布組成物を塗布する際のハジキを抑制できる、塗布組成物の塗布の均一性を良くできる等の点で好ましい。
なお、粘度は、JIS Z8803に準じて、B型粘度計による回転数60rpmにおける粘度を、25℃で測定すればよい。この点に関しては、後述する拡散抑制層20cをい形成するための塗布組成物も同様である。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物の塗布手段は、塗布組成物に応じた公知の物が、各種、利用可能である。例えば、ロールコータ、バーコータ、ダイレクトグラビアコータ、オフセットグラビアコータ、1本ロールキスコータ、3本リバースロールコータ、正回転ロールコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ等が例示される。
塗布組成物の好ましい粘度や塗布組成物の塗布量等を考慮すると、ロールコータ、バーコータ、正回転ロールコータ、ナイフコータ等は好適に利用される。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物の塗布量は、不織布20bの特性(ISO透気度、繊維径、目付量等)、不織布20bの搬送速度、促進輸送膜20aの厚さ、塗布組成物の粘度の濃度等に応じて、シミュレーションや実験等を行って、不織布20bの中に、目的とする厚さの促進輸送膜20aが形成できる量を、適宜、設定すればよい。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物を塗布したら、次いで、この塗布組成物を乾燥して、促進輸送膜20aを形成する。
乾燥方法は、温風乾燥や不織布20bの加熱による乾燥方法等、水の除去による乾燥を行う公知の方法が、各種、利用可能である。
温風乾燥を行う場合には、温風の風速は、塗布組成物を迅速に乾燥できると共に、塗布組成物の塗膜(ゲル膜)が崩れない速度を、適宜、設定すればよい。具体的には、0.5〜200m/minが好ましく、0.75〜200m/minがより好ましく、1〜200m/minが特に好ましい。
温風の温度は、不織布20bの変形などが生じず、かつ、塗布組成物を迅速に乾燥できる温度を、適宜、設定すればよい。具体的には、膜面温度で、1〜120℃が好ましく、2〜115℃がより好ましく、3〜110℃が特に好ましい。
不織布20bの加熱による促進輸送膜20aの乾燥を行う場合には、不織布20bの変形などが生じず、かつ、塗布組成物を迅速に乾燥できる温度を、適宜、設定すればよい。また、不織布20bの加熱に、乾燥風の吹き付けを併用してもよい。
具体的には、不織布20bの加熱による促進輸送膜20aの乾燥は、不織布20bの温度を60〜120℃として行うのが好ましく、60〜90℃として行うのがより好ましく、70〜80℃として行うのが特に好ましい。この際において、膜面温度は、15〜80℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。
塗布組成物を乾燥して、促進輸送膜20aすなわち酸性ガス分離膜20を作製したら、酸性ガス分離膜20をロール状に巻き取る。
次いで、促進輸送膜20aを形成した不織布20bのロールを拡散抑制層20cの形成装置に装填して、このロールから不織布20bを送り出して、長手方向に搬送しつつ、拡散抑制層20cとなる塗布組成物を塗布する。
酸性ガス分離膜20の作製にRtoRを利用する場合には、不織布20bの搬送速度は、生産性の観点から速い方が好ましい。しかしながら、塗布組成物を均一に塗布するために、不織布20bの搬送速度は、3〜200m/minが好ましく、5〜150m/minがより好ましく、10〜120m/minが特に好ましい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物は、前述のPDMS誘導体等の拡散抑制層20cとなる化合物のモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、プレポリマー、および、これらの混合物や、硬化剤、硬化促進剤、架橋剤、増粘剤、補強剤、および、フィラー等を、有機溶剤に溶解および/または分散してなる、塗布法によって樹脂層(樹脂製の膜)等を形成する際に用いられる、一般的な塗布組成物(塗布液/塗料)である。このような塗布組成物は、公知の方法で調製すればよい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物の塗布量は、不織布20bの特性(ISO透気度、繊維径、目付量等)、不織布20bの搬送速度、拡散抑制層20cの厚さ、塗布組成物の粘度の濃度等に応じて、シミュレーションや実験等を行って、目的とする厚さの拡散抑制層20cが形成できる量を、適宜、設定すればよい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物は、25℃における粘度が100cp以上であるのが好ましく、400cp以上がより好ましく、500cp以上が特に好ましい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度を100cp以上とすることにより、不織布20bの表面に拡散抑制層20cを安定して形成できる等の点で好ましい。
他方、拡散抑制層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度の上限は、使用する塗布装置における限界粘度に応じて設定すればよい。具体的には、拡散抑制層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度の上限は、拡散抑制層20cの厚さの制御、および、不織布20bへの染み込み量の制御が好適に行える等の点で、1,000,000cp以下が好ましい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物の塗布装置は、塗布組成物に応じた公知のものが、各種、利用可能である。特に、ロールコータ、ダイレクトグラビアコータ、オフセットグラビアコータ、1本ロールキスコータ、3本リバースロールコータ、正回転ロールコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ等は、好適に例示される。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物を塗布したら、次いで、この塗布組成物を乾燥する。乾燥も、温風乾燥やヒータによる乾燥等、公知の方法で行えばよい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物を乾燥したら、次いで、塗布組成物を硬化して、拡散抑制層20cを形成する。
硬化は、加熱硬化、紫外線照射、電子線照射等、拡散抑制層20cの形成材料に応じて、硬化が可能な方法を、適宜、選択すればよい。ここで、不織布20bのカールや変形を抑制できる、不織布20bを構成する樹脂などの劣化を防止できる等の理由により、紫外線照射や短時間の加熱による塗布組成物の硬化は、好適に利用される。特に、紫外線照射による硬化は、最も好ましく利用される。すなわち、本発明においては、紫外線の照射による硬化が可能なモノマー等を用いた塗布組成物によって、拡散抑制層20cを形成するのが好ましい。
拡散抑制層20cとなる塗布組成物の組成によっては、塗布組成物の乾燥および硬化を、同時に行ってもよい。
また、塗布組成物の乾燥および/または硬化は、必要に応じて、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行ってもよい。
このようにして不織布20bに拡散抑制層20cを形成したら、拡散抑制層20cを形成した不織布20bをロール状に巻き取る。
以上の例では、促進輸送膜20aを形成した後に、拡散抑制層20cを形成している。しかしながら、本発明では、逆に、拡散抑制層20cを形成した後に、促進輸送膜20aを形成してもよい。
さらに、以上の例では、拡散抑制層20cを形成した不織布20bを、一旦、巻取り、このロールから、拡散抑制層20cを形成した不織布20bを送り出して、促進輸送膜20aを形成している。しかしながら、これ以外にも拡散抑制層20cを形成した不織布20bを巻き取らず、そのまま長手方向に搬送して、促進輸送膜20aを形成して酸性ガス分離膜20を作製して、巻き取ってもよい。
図2および図3に示す例では、酸性ガス分離膜20は、不織布20bが促進輸送膜20aよりも厚く、促進輸送膜20aは、完全に不織布20bの中に収容された状態で層状に形成され、不織布20bの中には、厚さ方向に促進輸送膜20aが無い領域を有する。
しかしながら、本発明の分離モジュール10においては、不織布20bの中が促進輸送膜20aによって完全に満たされていてもよい。あるいは、図4(A)に概念的に示すように、促進輸送膜20aを不織布20bよりも厚くして、不織布20bの中を促進輸送膜20aで満たした上に、促進輸送膜20aを不織布20bから突出させてもよい。
本発明の分離モジュール10においては、酸性ガス分離膜20は、不織布20bの拡散抑制層20cが形成される面側、すなわち不織布20bの供給ガス流路用部材24とは逆の面側に、多孔質層20dを有してもよい。
この際においては、多孔質層20dは、図4(B)に示すように、多孔質層20dを不織布20bと拡散抑制層20cとの間に配置してもよい。あるいは、図4(C)に示すように、多孔質層20dと不織布20bとの間に、拡散抑制層20cを配置してもよい。
このような多孔質層20dを有することにより、酸性ガス分離膜20の強度を向上して耐久性に優れる分離モジュールが得られる、より確実に促進輸送膜20aを不織布の内部に保持できる等の点で好ましい。
多孔質層20dは、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない材料からなることが好ましい。このような多孔質層としては、具体的には、PSF、PES、PPおよびセルロースなどのメンブレンフィルター膜、ポリアミドやポリイミドの界面重合薄膜、PTFEや高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜等が例示される。
中でも、PTFE等の含フッ素ポリマー、PPおよびPSFから選択される1以上の材料を含む多孔質層は好ましく例示される。その中でも、PTFEや高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜は、高い空隙率を有し、酸性ガス(特に炭酸ガス)の拡散阻害が小さく、さらに、強度、製造適性などの観点から好ましい。特に、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない等の点で、PTFEの延伸多孔膜が、好適に利用される。
多孔質層20dとしては、このような有機系の材料以外にも、無機系の材料あるいは有機−無機ハイブリッド材料を用いてもよい。
無機系の多孔質支持体としては、セラミックスを主成分とする多孔質基体が挙げられる。セラミックスを主成分とすることにより、耐熱性、耐食性等に優れ、機械的強度を高めることができる。セラミックスの種類には、特に限定は無く、一般的に使用されるセラミックスが、各種、利用可能である。セラミックとしては、一例として、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア等が例示される。
また、2種類以上のセラミックスの併用、セラミックスと金属との複合化、セラミックスと有機化合物とを複合化した構成でもよい。
多孔質層20dの最大孔径は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。なお、多孔質層の最大孔径は、例えば、パームポロメータで測定すればよい。
多孔質層20dの孔の平均孔径は、0.001〜1μmが好ましく、0.001〜0.3μmがより好ましい。
多孔質層20dの最大孔径や平均孔径を、この範囲とすることにより多孔質層20dが酸性ガスの通過の妨げとなることを防止できる、促進輸送膜20aや拡散抑制層20cを形成する塗布組成物を塗布する際に、毛管現象などにより膜面が不均一になることを防げる等の点で好ましい。
多孔質層20dの厚さは、多孔質層20dの積層方向の位置、多孔質層20dの形成材料、多孔質層20dの最大孔径や平均孔径等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、多孔質層20dの厚さは、1〜100μmが好ましく、10〜80μmがより好ましく、20〜50μmが特に好ましい。
多孔質層20dの厚さを1μm以上とすることにより、多孔質層20dを有することの効果を好適に得られる等の点で好ましい。
多孔質層20dの厚さを100μm以下とすることにより、多孔質層20dが酸性ガスの通過の妨げとなることを防止できる、酸性ガス分離膜20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
このような多孔質層20dを有する酸性ガス分離膜において、図4(B)に示す構成の場合には、不織布20bの一面に多孔質層20dを貼着したものを基板として、同様に、促進輸送膜20aおよび拡散抑制層20cを形成すればよい。もしくは、拡散抑制層20cを形成した多孔質層20dと、促進輸送膜を形成した不織布20bとを、貼着することで酸性ガス分離膜を作製してもよい。
また、図4(C)に示す構成の場合には、先と同様にして酸性ガス分離膜20を作製した後に、公知の方法で多孔質層20dを拡散抑制層20cに貼着すればよい。もしくは、同様に、拡散抑制層20cを形成した多孔質層20dと、促進輸送膜を形成した不織布20bとを、貼着することで酸性ガス分離膜を作製してもよい。
酸性ガス分離膜が多孔質層20dを有する場合には、さらに、多孔質層20dを支持する補助支持膜を有してもよい。すなわち、本発明において、酸性ガス分離膜は、多孔質層20dと補助支持膜との積層体を用いてもよい。
多孔質層20dと補助支持膜との積層体を用いることにより、酸性ガス分離膜の強度を向上できる、拡散抑制層の形成を容易に行える、RtoRによる製造への対応性を向上できる等の点で好ましい。
なお、多孔質層20dと補助支持膜との積層体を用いる場合には、酸性ガス分離膜は、通常、多孔質層20dが拡散抑制層20cと対面するように形成される。
補助支持膜は、要求される強度、耐延伸性および気体透過性を満たすものであれば、各種の物が利用可能である。例えば、不織布、織布、ネット、および、メッシュなどを、適宜、選択して用いることができる。
補助支持膜も、前述の多孔質膜と同様、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない素材からなることが好ましい。この点を考慮すると、不織布、織布、編布を構成する繊維としては、耐久性や耐熱性に優れる、PPなどのポリオレフィン、アラミド(商品名)などの改質ポリアミド、PTFE、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂などからなる繊維が好ましい。メッシュを構成する樹脂材料も同様の素材を用いるのが好ましい。これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いPPからなる不織布は、特に好適に例示される。
補助支持膜の厚さは、50〜300μmが好ましい。
補助支持膜の厚さを50μm以上とすることにより、補助支持膜を有することの効果を十分に得られる等の点で好ましい。また、補助支持膜の厚さを300μm以下とすることにより、酸性ガス分離膜が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
このような多孔質層20dを有する構成であっても、不織布20bを促進輸送膜20aで満たす構成や、図4(A)に示すような促進輸送膜20aを不織布20bよりも厚くする構成も利用可能である。
以下、分離モジュール10における、酸性ガス分離膜20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26からなる積層体14aの作製方法、および、積層した積層体14aの巻回方法すなわち積層体巻回物14の作製方法を説明する。
以下の説明に用いる図5(A)〜図9では、図面を簡潔にして構成を明確に示すために、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26は、端面(端部)のみをネット状で示す。
まず、図5(A)および図5(B)に概念的に示すように、中心筒12の延在方向と短手方向とを一致して、中心筒12に、接着剤等の固定手段34を用いて、透過ガス流路用部材26の端部を固定する。
なお、前述のように、中心筒12の管壁には、軸方向に沿ってスリット(図示省略)が設けられているのが好ましい。この場合、スリットに、後述する透過ガス流路用部材26の先端部を入れ込み、中心筒12の内周面に固定手段で固定するようにする。この構成によれば、透過ガス流路用部材26を含んだ積層体を中心筒12に巻き付ける際に、テンションをかけながら巻き付けるようにしても、中心筒12の内周面と透過ガス流路用部材26との摩擦で、透過ガス流路用部材26がスリットから抜けることを防止でき、すなわち、透過ガス流路用部材26の固定が維持される。
一方で、図6に概念的に示すように、前述のよう作製した酸性ガス分離膜20を、不織布20bを内側すなわち拡散抑制層20cを外側にして、二つ折りにし、間に供給ガス流路用部材24を挟み込む。すなわち、供給ガス流路用部材24を、二つ折りにした酸性ガス分離膜20で挟持した挟持体36を作製する。この際には、酸性ガス分離膜20は均等に二つ折りにするのではなく、図6に示すように、一方が、若干、長くなるように、二つ折りする。
また、供給ガス流路用部材24による促進輸送膜20aの損傷を防止するために、酸性ガス分離膜20を二つ折りにした谷部に、二つ折りにしたシート状の保護部材(例えば、カプトンテープなど)を配置するのが好ましい。
さらに、二つ折りにした酸性ガス分離膜20の短い方の表面に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。前述のように、酸性ガス分離膜20は、不織布20bを外側にして二つ折りされているので、接着剤30aは、拡散抑制層20cの表面に塗布される。
接着剤30a(接着剤層30)は、図6に示すように、幅方向(矢印x方向)の両端部近傍で、巻回方向(矢印y方向)の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
次いで、図7(A)および図7(B)に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した面を透過ガス流路用部材26に向け、かつ、折り返し側を中心筒12に向けて、挟持体36を、中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26に積層し、透過ガス流路用部材26と酸性ガス分離膜20(拡散抑制層20c)とを接着する。
さらに、図7(A)および図7(B)に示すように、積層した挟持体36の上面(長い側の拡散抑制層20cの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。なお、以下の説明では、最初に固定手段34で中心筒12に固定された透過ガス流路用部材26と逆側の方向(図中上側)を、上側とも言う。
図7(A)および図7(B)に示すように、この面の接着剤30aも、先と同様、幅方向の両端部近傍で、巻回方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
次いで、図8に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した挟持体36の上に、透過ガス流路用部材26を積層し、酸性ガス分離膜20(拡散抑制層20c)と透過ガス流路用部材26とを接着し、積層体14aが形成される。
なお、透過ガス流路用部材26は、必要に応じて、複数枚を重ねて用いてもよい。
次いで、先と同様、図6に示すように、酸性ガス分離膜20で供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を作製して、接着剤層30となる接着剤30aを塗布して、接着剤を塗布した側を下に向けて、最後に積層した透過ガス流路用部材26と挟持体36とを積層して、接着する。
さらに、先と同様、積層した挟持体36の上面に、図7(A)および図7(B)に示すように接着剤30aを塗布して、次いで、図8に示すように、その上に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着し、2層目の積層体14aを積層する。
以下の図6〜図8の工程を繰り返して、図9に概念的に示すように、所定数の積層体14aを積層する。
積層体14aの積層は、図9に示すように、積層体14aは、上方に行くにしたがって、次第に、巻回方向に中心筒12から離間するように積層するのが好ましい。これにより、中心筒12への積層体14aの巻き付けを容易に行い、かつ、各透過ガス流路用部材26の中心筒12側の端部もしくは端部近傍が、好適に中心筒12に当接できる。
所定数の積層体14aを積層したら、図9に示すように、中心筒12の外周面に接着剤38aを、最初に中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上面の中心筒12と挟持体36との間に接着剤38bを、それぞれ、塗布する。
次いで、図9に矢印ywで示すように、積層した積層体14aを巻き込むようにして、積層体14aを中心筒12に巻き付ける。
巻き終わったら、最外周の透過ガス流路用部材26に、ひき出す方向すなわち巻き絞める方向の張力を掛けた状態で、所定時間、維持して、接着剤30a等を乾燥させる。最外周の透過ガス流路用部材26とは、最初に中心筒12に固定した最下層の透過ガス流路用部材26である。
所定時間が経過したら、最外周の透過ガス流路用部材26を1周した位置で超音波融着等によって固定し、固定位置よりも外方の余分な透過ガス流路用部材26を切断して、積層した積層体14aを中心筒に巻回してなる積層体巻回物14を完成する。
前述のように、原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の端部から供給され、酸性ガスGcは、酸性ガス分離膜20を積層方向に輸送されることで通過して、透過ガス流路用部材26に流入し、透過ガス流路用部材26内を流れて、中心筒12に至る。
接着剤30aを塗布されるのは、拡散抑制層20cであり、また、接着剤30aによって接着されるのは、ネット状の透過ガス流路用部材26である。従って、接着剤30aは、透過ガス流路用部材26内に浸透(含浸)し、透過ガス流路用部材26の内部に接着剤層30が形成される。
また、接着剤層30(接着剤30a)は、前述のように、幅方向の両端部近傍で、巻回方向の全域に延在して帯状に形成される。さらに、接着剤層30は、幅方向両端部近傍の接着剤層30を幅方向に横切るように、中心筒12側となる折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に形成される。すなわち、接着剤層30は、中心筒12側を開放して、透過ガス流路用部材26の外周を囲むように形成される。加えて、透過ガス流路用部材26は、酸性ガス分離膜20によって挟まれた状態となっている。
これにより、積層体14aの透過ガス流路用部材26には、中心筒12側が開放するエンベロープ状の流路が形成される。従って、酸性ガス分離膜20を透過して透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、外部に流出することなく、透過ガス流路用部材26内を中心筒12に向かって流れ、貫通孔12aから中心筒12内に流入する。
すなわち、接着剤層30は、接着のみならず、透過ガス流路用部材26等において、酸性ガスGcを所定の流路に封止するための封止部としても作用する。
本発明の分離モジュール10において、接着剤層30(接着剤30a)は、十分な接着力、耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の公知の接着剤が利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が好適に例示される。
接着剤層30となる接着剤30aは、一度塗りでもよいが、好ましくは、最初はアセトン等の有機溶剤で希釈した接着剤を塗布し、その上に、接着剤のみを塗布するのが好ましい。この際には、有機溶剤で希釈した接着剤は幅広に塗布し、接着剤は、これよりも狭い幅で塗布するのが好ましい。
本発明の分離モジュール10において、このようにして作製される積層体巻回物14の両端部には、テレスコープ防止板(テレスコープ防止部材)16が配置される。
前述のように、テレスコープ防止板16は、積層体巻回物14が原料ガスGによって押圧されて、供給側の端面が入れ子状に押し込まれ、逆側の端面が入れ子状に突出する、いわゆるテレスコープ現象を防止するための部材である。
本発明において、テレスコープ防止板16は、スパイラル型の分離モジュールに用いられる公知のものが、各種、利用可能である。
図示例のテレスコープ防止板16は、円環状の外環部16aと、外環部16aの中に中心を一致して配置される円環状の内環部16bと、外環部16aおよび内環部16bを連結して固定するリブ(スポーク)16cとを有して構成される。積層体14aを積層した積層物が巻回される中心筒12は、内環部16bを挿通する。
リブ16cは、外環部16aおよび内環部16bの中心から、等角度間隔で放射状に設けられおり、外環部16aと内環部16bとの間で、かつ、各リブ16cの間隙が、原料ガスGもしくは残余ガスGrが通過する開口部16dとなっている。
テレスコープ防止板16は、積層体巻回物14の端面に接触して配置しても良い。
しかしながら、積層体巻回物14の端面全域を原料ガスの供給や残余ガスGrの排出に使用するために、テレスコープ防止板16と積層体巻回物14の端面とは、若干の間隙を有して配置するのが好ましい。
テレスコープ防止板16の形成材料は、十分な強度と、耐熱性および耐湿性を有する、各種の材料が利用可能である。
具体的には、金属材料、樹脂材料、セラミックス等が好適に例示される。
金属材料としては、例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等が例示される。
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、PP、芳香族ポリアミド、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン、PTFE、ポリカーボネート、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。
樹脂材料としては、これらの樹脂を用いる繊維強化プラスチックも利用可能である。繊維としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などが例示される。繊維は、長繊維であるのが好ましい。繊維強化プラスチックとしては、より具体的には、ガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなどが例示される。
セラミックスとしては、例えば、ゼオライト、アルミナ等が例示される。
被覆層18は、積層体巻回物14の周面を覆って、この周面すなわち積層体巻回物14の端面以外から外部への原料ガスGや残余ガスGrの排出を遮断するためのものである。
被覆層18は、積層体巻回物14の周面のみならず、必要に応じて、さらに、テレスコープ防止板を覆って設けてもよい。
被覆層18は、原料ガスG等を遮蔽できる物が、各種、利用可能である。また、被覆層18は、筒状の部材であってもよく、線材やシート状の部材を巻回して構成してもよい。
一例として、FRP製の線材に、前述の接着剤層30に利用される接着剤を含浸して、接着剤を含浸した線材を、隙間無く、必要に応じて多重に、積層体巻回物14に巻き付けてなる被覆層18が例示される。FRPで使用するファイバーやマトリックス樹脂には、限定は無い。一例として、ファイバーとしては、ガラスファイバー、炭素繊維、ケブラー、ダイニーマなどが例示される。中でもガラスファイバーが特に好ましい。また、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが例示される。中でも、耐熱性、耐加水分解性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
なお、この際においては、必要に応じて、被覆層18と積層体巻回物14との間に、積層体巻回物14への接着剤の染み込みを防止するためのカプトンテープ等のシート状部材を設けてもよい。
以上、本発明の酸性ガス分離モジュールについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明の酸性ガス分離モジュールについて、より詳細に説明する。
[実施例1]
<促進輸送膜となる塗布組成物(1)の調整>
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(クラレ社製、クラストマーAP-2)3.3質量%、および、キャリアとしての炭酸セシウム6.0質量%を含む水溶液を調製した。なお、炭酸セシウムは、40%炭酸セシウム水溶液(稀産金属社製)を用いて、炭酸セシウム濃度が6.0質量%になるように添加した。
さらに、1%ラピゾールA−90(日油社製)を0.004質量%になるように添加し、撹拌後、脱泡して、促進輸送膜20aとなる塗布組成物(1)とした。
<拡散抑制層20cとなる塗布組成物の調製>
重合性ポリジメチルシロキサン(UV9300、モメンティブパフォーマンス社製)20質量%、および、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(I0591、東京化成工業社製)0.1質量%を含むヘプタン溶液を調製して、拡散抑制層20cとなる塗布組成物とした。
<酸性ガス分離膜の作製>
<<促進輸送膜20aの形成>>
不織布20bとして、厚さ80μm、繊維径30μm、目付量50g/m2、ISO透気度3.5μm/(Pa・sec)のPP製の不織布(タピルス社製)を用意した。
塗布装置(ロールコータ)および乾燥装置を有する、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な成膜装置に、この不織布20bを巻回してなるロールを装填して、所定の搬送経路に不織布20bを挿通して、先端を巻取り軸に巻回した。また、先に調製した促進輸送膜20aとなる塗布組成物(1)を、塗布装置の材料槽に充填した。
次いで、この成膜装置によって、不織布20bを長手方向に搬送しつつ、塗布装置によって塗布組成物(1)を塗布し、乾燥装置によって塗布組成物(1)を乾燥することで、促進輸送膜20aを形成して、ロール状に巻回した。
塗布組成物(1)の塗布は、乾燥によって形成される促進輸送膜20aの厚さが30μmとなるように行った。塗布組成物(1)の塗布量(塗膜厚)と、形成される促進輸送膜20aの厚さとの関係は、予め、実験によって調べておいた。
電子顕微鏡の断面観察像によって確認したところ、促進輸送膜20aは、面方向の全域において、不織布20bの中に層状に形成されていた。
<<拡散抑制層20cの形成>>
長尺な支持体をロール状に巻回してなる支持体ロールを用意した。この支持体は、PP不織布(補助支持膜)の表面に多孔質層20dを積層してなるものである。また、この多孔質層20dは、多孔質のPTFEである。
塗布装置(ロールコータ)、乾燥装置および紫外線照射装置を有する、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な成膜装置に、この支持体ロールを装填し、所定の搬送経路に支持体を挿通(通紙)して、先端を巻取り軸に巻回した。支持体ロールは、多孔質層20dが被塗布面となるように装填した。さらに、先に調製した、拡散抑制層20cとなる塗布組成物を、塗布手段の材料槽に充填した。
この成膜装置によって、支持体を長手方向に搬送しつつ、塗布装置によって拡散抑制層20cとなる塗布組成物を塗布し、乾燥装置によって塗布組成物を乾燥し、紫外線照射装置によって塗布組成物を硬化して、支持体に拡散抑制層20cを形成して、ロール状に巻回した。
塗布組成物の塗布は、常温で行った。塗布組成物の塗布は、作製した拡散抑制層20cの膜厚が5μmとなるように行った。塗布組成物の塗布量と拡散抑制層20cの厚さとの関係は、予め、実験によって調べておいた。
<<酸性ガス分離膜の形成>>
促進輸送膜20aを形成した不織布20bと、拡散抑制層20cを形成した支持体とを、所定の長さに切断して貼り合わせ、酸性ガス分離膜を作製した。
不織布20bと支持体との貼り合わせは、拡散抑制層20cと、不織布20bの促進輸送膜20aの形成面(塗布面)とを対面させて行った。また、貼着は、ゲル状である促進輸送膜20aの粘性を利用して行った。
<分離モジュールの作製>
まず、図5(A)および図5(B)に示すように、SUS製の中心筒12に、透過ガス流路用部材26を固定した。透過ガス流路用部材26は、100メッシュのステンレス製の金網(線径0.1mm、目開き0.154mm)を用いた。固定手段34は、SUSを接着可能な接着剤を用いた。
作製した酸性ガス分離膜を、所定の長さに切断して、促進輸送膜20aを内側にして二つ折りした。二つ折りは、図6に示すように、一方の酸性ガス分離膜が、若干、長くなるように行った。二つ折りした酸性ガス分離膜の谷部にカプトンテープを貼り、供給ガス流路用部材24の端部が酸性ガス分離膜の谷部を傷つけないように補強した。
二つ折りした酸性ガス分離膜に、供給ガス流路用部材24を挟み込んで、挟持体36を作製した。供給ガス流路用部材24は、厚さ0.5mmのPP製ネットを用いた。
この挟持体36の酸性ガス分離膜が短い方の拡散抑制層20c側に、図6に示すように、幅方向(矢印x方向)の両端部近傍に、巻回方向(矢印y方向)の全域に延在し、かつ、巻回方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、接着剤30aを塗布した。接着剤30aは、エポキシ系樹脂からなる接着剤(ヘンケルジャパン社製、E120HP)を用いた。
次いで、接着剤30aを塗布した側を下方に向けて、図7(A)および図7(B)に示すように、挟持体36と中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26とを積層し、接着した。
次いで、透過ガス流路用部材26に積層した挟持体36の酸性ガス分離膜の上面に、図7(A)および図7(B)に示すように、幅方向の両端部近傍に、巻回方向の全域に延在し、かつ、巻回方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、接着剤30aを塗布した。さらに、接着剤30aを塗布した酸性ガス分離膜20の上に、図8に示すように、透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、1層目の積層体14aを形成した。
先と同様にして、図6に示す挟持体36を、もう一つ作製し、同様に、短い側の酸性ガス分離膜の不織布20b側に接着剤30aを塗布した。次いで、図7(A)および図7(B)と同様に、接着剤30aを塗布した側を先に形成した1層目の積層体14aに向けて、挟持体36を、1層目の積層体14a(透過ガス流路用部材26)の上に積層し、接着した。さらに、この挟持体36の上面に、図7(A)および図7(B)と同様に接着剤30aを塗布し、その上に、図8と同様に透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、2層目の積層体14aを形成した。
さらに、上記2層目と同様にして、2層目の積層体14aの上に、3層目の積層体14aを形成した。
中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上に、3層の積層体14aを積層した後、図9に示すように、中心筒12の周面に接着剤38aを塗布し、さらに、中心筒12と最下層の積層体14aとの間の透過ガス流路用部材26上に、接着剤38bを塗布した。接着剤38aおよび38bは、接着剤30aと同じ物を用いた。
次いで、図9の矢印yw方向に中心筒12を回転することで、積層した3層の積層体14aを巻き込むようにして中心筒12に多重に巻き付け、積層体巻回物14とした。
このようにして作製した積層体巻回物14の両端部に、内環部16bに中心筒12を挿通して、図1に示される形状の、厚さ2cmのテレスコープ防止板16を取り付けた。テレスコープ防止板16は、ガラス繊維が40質量%入った、PPS製のものを用いた。テレスコープ防止板16と積層体巻回物14との距離は、1mmとした。
さらに、テレスコープ防止板16の周面および積層体巻回物14の周面に、FRP樹脂テープを巻き付けて封止することで、被覆層18を形成して、図1に示されるような分離モジュール10を作製した。作成した分離モジュール10の膜面積は、合計で1.2m2(設計値)であった。
なお、分離モジュール10は、同様の物を5本作製した。
[実施例2]
不織布20bとして、厚さ100μm、繊維径30μm、目付量30g/m2、ISO透気度3.1μm/(Pa・sec)のPP製の不織布(日本バイリーン社製、OL−30)を用いた以外は、実施例1と同様にして、5本の分離モジュール10を作製した。
[実施例3]
不織布20bとして、厚さ50μm、繊維径10μm、目付量30g/m2、ISO透気度2.8μm/(Pa・sec)のPPS製の不織布(セーレン社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、5本の分離モジュール10を作製した。
[実施例4]
<促進輸送膜となる塗布組成物(2)の調整>
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(クラレ社製、クラストマーAP-2)を3.3質量%、キャリアとしての炭酸セシウムを6.0質量%を含む水溶液を調製した。さらに、Ti系架橋剤であるオルガチックスTC-100(松本ファインケミカル社製)をPVA−PAA共重合体に対して10質量%の比率になるように添加し、攪拌し脱泡して、塗布組成物(2)を調製した。
塗布組成物(1)の代わりに塗布組成物(2)を用いて促進輸送膜20aを形成した以外には、実施例1と同様にして、酸性ガス分離膜を作製した。
さらに、この酸性ガス分離膜を用いた以外は、実施例1と同様にして、5本の分離モジュール10を作製した。
[比較例1]
拡散抑制層20cを形成しない以外は、実施例1と同様にして、5本の分離モジュール10を作製した。
[比較例2]
不織布20bの代わりに、厚さ30μm、目付量0.5g/m2、ISO透気度1.9μm/(Pa・sec)のPTFE製の多孔質層(ゴアテックス社製、ePTFE)を用いた以外は、実施例1と同様にして、5本の分離モジュール10を作製した。
[比較例3]
実施例1と同じ不織布20bの一面に、まず、実施例1と同様に拡散抑制層20cを形成した。次いで、この拡散抑制層20cの上に実施例1と同様に促進輸送膜20aを形成した。これにより、不織布20bの表面に拡散抑制層20cを有し、拡散抑制層20cの上に促進輸送膜20aを有する酸性ガス分離膜を作製した。
この酸性ガス分離膜を用いた以外は、実施例1と同様にして、5本の分離モジュール10を作製した。
[評価]
このようにして作製した分離モジュール10について、以下のようにして、歩留りおよび圧力耐久性を評価した。
<歩留り>
作製した分離モジュール10の供給側に、1.5MPaの圧力がかかるようにHeガスを充填して、密閉し、Heの漏れの有無を確認した。
Heガスの漏れが確認できなかったものを適正品として、歩留りを算出した。
<圧力耐久性>
原料ガスGを、流量0.32L/min、温度130℃、全圧1.5MPaの条件で、各分離モジュール10に供給した。原料ガスGは、N2:CO2:H2O=66:21:13の混合ガス(分圧比)を用いた。なお、中心筒12の原料ガス透過側の端部に、スイープガス供給用の貫通孔を形成して、此処から、スイープガスとして流量0.6L/minのArガスを供給した。
原料ガスGの供給を開始した後、1時間経過した時点と、10時間経過した時点とで、分離モジュール10を透過したガス(酸性ガスGcおよび残余ガスGr)をガスクロマトグラフで分析し、CO2/N2分離係数(α)を測定した。
1時間経過時点と、10時間経過時点とで、CO2/N2分離係数(α)の変化率を算出して、圧力耐久性を評価した。
変化率=
[(1時間経過時点の値−10時間経過時点の値)/1時間経過時点の値]×100
評価は、以下のとおりである。なお、評価は、5本のモジュールの平均で行った。
結果を下記の表に示す。
上記表に示されるように、不織布20bの中に促進輸送膜20aを支持し、かつ、拡散抑制層20cを有する本発明によれば、圧力耐久性に優れる分離モジュールを、高い歩留りで得ることができる。中でも、不織布20bの繊維径が太く、目付量も多い実施例1および実施例4は、優れた圧力耐久性を有している。
これに対して、拡散抑制層20cを有さない比較例1は、圧力を掛けた際に不織布20bから促進輸送膜20aが脱落してしまい、歩留りが0%で、圧力耐久性の測定を行うことができなかった。不織布20bではなく、PTFEの多孔質体の中に促進輸送膜20aを形成した比較例2は、多孔質体と促進輸送膜20aとの間に隙間が有ったと考えられ、不織布20b内に促進輸送膜20aを支持した本発明の分離モジュールに比して、圧力耐久性が大幅に劣る。不織布20b内ではなく、拡散抑制層20cの上に促進輸送膜20aを形成した比較例3は、分離モジュールを作製する際に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24とが摺接して、促進輸送膜20aが損傷してしまい、歩留りが0%で、圧力耐久性の測定を行うことができなかった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
10 (酸性ガス)分離モジュール
12 中心筒
14 積層体巻回物
14a 積層体
16 テレスコープ防止板
16a 外環部
16b 内環部
16c リブ
16d 開口部
18 被覆層
20 酸性ガス分離膜
20a 促進輸送膜
20b 不織布
20c (キャリア)拡散抑制層
20d 多孔質層
24 供給ガス流路用部材
26 透過ガス流路用部材
30 接着剤層
30a,38a,38b 接着剤
34 固定手段

Claims (10)

  1. 不織布と、酸性ガスと反応するキャリアおよび前記キャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜と、原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材と、前記促進輸送膜のキャリアが拡散することを抑制するキャリア拡散抑制層とを有し、
    前記促進輸送膜が全て前記不織布の中に形成されており、もしくは、前記不織布の中が前記促進輸送膜で満たされており、
    前記キャリアガス拡散抑制層が、前記不織布の一方の面側に積層され、さらに、前記供給ガス流路用部材が、前記不織布のキャリア拡散抑制層とは逆の面側に積層されることを特徴とする酸性ガス分離モジュール。
  2. 前記不織布とキャリア拡散抑制層との間に多孔質層を有する請求項1に記載の酸性ガス分離モジュール。
  3. 前記キャリア拡散抑制層の不織布とは逆の面側に多孔質層が積層される請求項1に記載の酸性ガス分離モジュール。
  4. 前記不織布のISO透気度が2.5μm/(Pa・sec)以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  5. 前記不織布の繊維径が1〜50μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  6. 前記不織布の目付量が10〜100g/m2である請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  7. 前記促進輸送膜の厚さが50μm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  8. 前記キャリア拡散抑制層がシリコーン樹脂で形成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  9. 前記キャリアがアルカリ金属塩である請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
  10. 前記不織布、促進輸送膜、供給ガス流路用部材およびキャリア拡散抑制層を含む積層体を巻回してなるスパイラル型である請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
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