JP6523020B2 - 生体分子の検出又は定量方法、及び生体分子の検出又は定量用標識試薬粒子 - Google Patents
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Description
かかる生体分子の検出法の特徴として下記の3点が挙げられる。
(1)判定までに要する時間が短く迅速な検査が可能である。
(2)検体を滴下するだけで測定でき操作が簡便である。
(3)特別な検出装置を必要とせず判定が容易である。
これらの特徴を利用して、前記の検出法は妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬に用いられており、新たなPOCT(Point Of Care Testing)の手法として利用されている。また、食品検査においても、例えば食物アレルゲンの検査試薬等として広く利用され益々注目を集めている。
このうち競合法は、多孔質支持体に固定された捕捉物質と、標識試薬粒子及び標的物質とを競合的に接触させ、捕捉物質が固定化されている領域の標識試薬粒子由来の発色度に基づいて標的物質の濃度を定量する。競合法において標識試薬粒子及び標的物質が競合して捕捉物質が固定化されている領域に結合するので、標識試薬粒子由来の発色度は、標的物質の濃度が少ないほど上昇する。よって、競合法による検出方法では、サンドイッチ法では検出できないような極微量の低分子量の生体分子を検出することができる。
そこでこれまでに、各種生体分子検出用試験キットを用いた、競合法による生体分子の検出方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
検出対象の検出又は定量感度を向上させるためには、標識試薬粒子に対する検出対象の添加量を調整する必要がある。競合法において、標識試薬粒子に多量の検出対象が結合してしまうと、捕捉物質が固定されたラインに対する標識試薬粒子の結合が優勢となる。その結果、検出対象の検出又は定量感度が低下してしまう。
さらに本発明は、前記方法に好適に用いることができる標識試薬粒子を提供することを目的とする。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
(1)生体分子検出又は定量用試験キットを用いた、生体分子の検出又は定量方法であって、
前記生体分子検出又は定量用試験キットは、生体分子検出又は定量用の試験片と、生体分子検出又は定量用の標識試薬粒子を有し、
前記試験片は、生体分子と標識試薬粒子を捕捉する試験領域を有し、
前記標識試薬粒子が蛍光シリカナノ粒子からなり、
前記標識試薬粒子の表面にキャリア物質が導入されており、
検出対象である生体分子と競合する物質が、標識試薬粒子の表面に導入されており、
前記標識試薬粒子の比重が、前記試験片に滴下する生体分子を含む試料よりも大きく、
生体分子を含む試料と前記標識試薬粒子を加えた前記試験片の前記試験領域の発光強度に基づいて、前記試料に含まれる生体分子を検出又は定量する、生体分子の検出又は定量方法。
(2)前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン、ポリエチレングリコール、カゼイン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質である、前記(1)項に記載の方法。
(3)前記標識試薬粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下である、前記(1)又は(2)項に記載の方法。
(4)前記キャリア物質が親水性である、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)前記標識試薬粒子に導入されている生体分子と競合する物質の量が、前記蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たり0.0001個以上0.1個以下である、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)前記キャリア物質が、チオール基と結合できる反応性官能基、及びカルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基を有する、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)前記キャリア物質が、チオールと結合できる反応性官能基としてマレイミド基を有し、カルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基としてアミノ基、カルボキシル基又は活性エステル基を有する、前記(6)項に記載の方法。
(8)前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン又はポリエチレングリコールである、前記(6)又は(7)項に記載の方法。
(9)前記標識試薬粒子における生体分子と競合する物質の導入量が、前記標識試薬粒子における前記キャリア物質の導入量に対して、モル比で10以下である、前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の方法。
(10)水(4℃)に対する前記標識試薬粒子の比重が1.3以上2.2以下である、前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法。
(11)検出対象である生体分子を含む前記試料が全血である、前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の方法。
(12)検出対象である前記生体分子がステロイド系ホルモン又は性ホルモンである、前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の方法。
(13)生体分子を含む前記試料と前記標識試薬粒子とを混合し、得られた混合物を前記試験片に滴下する、前記(1)〜(12)のいずれか1項に記載の方法。
(14)前記試験片がラテラルフロー用の試験片である、前記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の方法。
前記標識試薬粒子が蛍光シリカナノ粒子からなり、
前記標識試薬粒子の表面にキャリア物質が導入されており、
検出対象である生体分子と競合する物質が、前記キャリア物質を介して標識試薬粒子の表面に導入されており、
前記生体分子を含む試料よりも比重が大きい、標識試薬粒子。
(16)前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン、ポリエチレングリコール、カゼイン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質である、前記(15)項に記載の標識試薬粒子。
(17)前記標識試薬粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下である、前記(15)又は(16)項に記載の標識試薬粒子。
(18)前記キャリア物質が親水性である、前記(15)〜(17)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(19)前記標識試薬粒子に導入されている生体分子と競合する物質の量が、前記蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たり0.0001個以上0.1個以下である、前記(15)〜(18)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(20)前記キャリア物質が、チオール基と結合できる反応性官能基、及びカルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基を有する、前記(15)〜(19)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(21)前記キャリア物質が、チオールと結合できる反応性官能基としてマレイミド基を有し、カルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基としてアミノ基、カルボキシル基又は活性エステル基を有する、前記(20)項に記載の標識試薬粒子。
(22)前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン又はポリエチレングリコールである、前記(20)又は(21)項に記載の標識試薬粒子。
(23)前記標識試薬粒子における生体分子と競合する物質の導入量が、前記標識試薬粒子における前記キャリア物質の導入量に対して、モル比で10以下である、前記(15)〜(22)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(24)水(4℃)に対する前記標識試薬粒子の比重が1.3以上2.2以下である、前記(15)〜(23)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(25)検出対象である前記生体分子がステロイド系ホルモン又は性ホルモンである、前記(15)〜(24)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(26)前記蛍光シリカナノ粒子の表面に前記キャリア物質を導入し、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入したキャリア物質と、検出対象である生体分子と競合する物質とを結合させて作製した、前記(15)〜(25)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
(27)前記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法に用いられる、前記(15)〜(26)のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
さらに本発明の標識試薬粒子は、前記方法に好適に用いることができる。
また、本明細書において「結合」又は「連結」とは、複数のものが分離した状態から連続して一体となることを全般的に指し、共有結合やイオン結合、水素結合といった化学的な結合のほか、化学吸着や物理吸着、そのほか嵌合、螺合、咬合した物理的な連結状態等も含む意味である。ここで、「結合」又は「連結」とは、直接複数のものが結合しても、別のものを介して間接的に結合してもよい意味である。
さらに、本明細書において「検出」とは、定性的な検出や定量的な検出のみならず、その他の各種の測定や同定、分析、評価等を含む概念である。
以下、本発明の構成についてその好ましい実施形態を中心に詳述する。
本発明において、生体分子の検出又は定量は競合法により行う。ここで「競合法」とは、検出対象物質(標的物質)と標識試薬粒子との間で競合して、多孔質支持体に固定された捕捉物質により検出対象物質及び標識試薬粒子を捕捉する手法である。競合法において、検出対象物質に比べて標識試薬粒子の量が多いと、捕捉物質への標識試薬粒子の結合が優位となる。したがって、検出対象物質の量が少ないほど、捕捉物質が固定化されている領域の標識試薬粒子による標識度合が上昇する。一方、検出対象物質が多量に存在する場合捕捉物質への検出対象物質の結合が優位となるため、捕捉物質が固定されている領域の標識度合は低下する。競合法はこのようなメカニズムに基づくものであって、捕捉物質が固定されている領域の標識度合を測定し、検出対象物質濃度が増えるにしたがって標識度合が低下する現象を利用して、間接的に検出対象物質の濃度を定量する。
本発明において、検出対象物質(標的物質)としての生体分子に特に制限はなく、抗原、抗体、核酸、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、その他生体活性を有する化学物質等が挙げられる。
前述のように、本発明において生体分子の検出又は定量は競合法により行う。本発明において生体分子は、競合法による検出又は定量により生体分子を認識できる大きさであれば特に問題ない。例えば、本発明における検出対象物質としての生体分子の分子量は、40以上が好ましく、80以上がより好ましい。
また、一般に、サンドイッチ法による生体分子の検出方法は、低分子量の生体分子の検出には不向きである。これは、サンドイッチ法において、生体分子に2種類の抗体を結合させる必要があるからである。生体分子が小さい場合、1つの抗体が生体分子に結合すると、もう1つの抗体が他方の抗体の立体障害により結合できなくなる。したがって、低分子量の生体分子の検出又は定量を行う場合、競合法はサンドイッチ法に比べて相対的に優位な手法である。そこで、本発明の検出又は定量方法がサンドイッチ法よりも優位であるとする観点からは、生体分子は低分子量であることが好ましい。例えば、本発明における検出対象物質としての生体分子の分子量は、1,000以下が好ましく、500以下がより好ましい。しかしこのような分子量の範囲は、分子量が大きいものが競合法に不向きであることを示すものではない。
また、試料は液体であればそのまま用いることもできる。試料が半固形又は固形物等の場合には、希釈や抽出等の処理を施した後に用いることもできる。
本発明の生体分子の検出又は定量方法における検出対象としての生体分子の具体例としては、ステロイド系ホルモン(コルチゾール、コルチゾン、コルチコステロン、アルドステロン、デオキシコルチコステロン、エストロン、エストラジオール、その他合成ステロイド系ホルモンなど)や性ホルモン(アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン(ゲスターゲン)など)が挙げられる。
本発明で用いる試験キットに含まれる試験片の形状に特に制限はないが、平面状の試験片であることが好ましく、ラテラルフロー用又は吸い上げ法用の試験片であることがより好ましく、ラテラルフロー用の試験片がさらに好ましい。
また、試験片の構造に特に制限はないが、試料添加用部材(サンプルパッド)と、生体分子と標識試薬粒子を競合的に捕捉する試験領域を有するメンブレンと、吸収パッドとが、この順でそれぞれ相互に毛細管現象が生じるように直列に連結している構造であることが好ましい。そして、各構成部材は粘着剤付きバッキングシートにより裏打ちされていることが好ましい。
以下、上記形状及び構造を有する試験片について、図1及び2を参照しながら本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
サンプルパッド2は、前記検体や標識試薬粒子を滴下する構成部材である。サンプルパッド2の材料や寸法等は特に限定されず、この種の製品に適用される一般的なものを利用することができる。
メンブレン3は、サンプルパッド2から毛細管現象により移動してきた抗原を捕捉するための構成部材である。
図1に示すように、メンブレン3には、少なくとも1つの試験領域10が設けられている。そして、抗原に対する特異的な結合性を有し抗原と複合体を形成しうる捕捉物質(以下、「第1の抗体」ともいう)が、試験領域10に導入されている。これにより、検出対象物質と結合した標識試薬粒子が試験領域10へ捕捉される。
この試験領域10で第1の抗体−抗原−標識試薬粒子からなる複合体が形成され、標識試薬粒子が濃縮される。そして、標識試薬粒子が有する標識量の程度により生体分子を定性的又は定量的に検出することができる。
前記参照領域に用いる、標識試薬粒子を捕捉する捕捉物質としては、標識試薬粒子に対して結合性を有するものから適宜選択することができる。具体的には、抗体、抗原、核酸、受容体、リガンド、糖鎖、アプタマーなどから適宜選択することができる。
第1の抗体の固定化方法としては、第1の抗体の溶液をメンブレン3の所定の領域に塗布、滴下又は噴霧後、乾燥して物理吸着により固定化する方法等が挙げられる。また、非特異的吸着による測定への影響を防止するため、捕捉物質の固定化後にメンブレン3全体をいわゆるブロッキング処理を施してもよい。
吸収パッド4は、毛細管現象でメンブレン3を移動してきた溶液を吸収し、一定の流れを生じさせるための構成部材である。
前記粘着剤付きバッキングシート6としては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
この種の試験キットに通常適用される標識試薬粒子としては、蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子、吸光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子、蛍光ラテックスナノ粒子からなる標識試薬粒子、吸光ラテックスナノ粒子からなる標識試薬粒子、半導体微粒子からなる標識試薬粒子、金コロイド粒子からなる標識試薬粒子、放射性物質で標識した粒子が挙げられる。
本発明で用いる標識試薬粒子は、蛍光シリカナノ粒子からなる。蛍光シリカナノ粒子を用いた場合、蛍光検出装置により蛍光強度を容易に数値化でき、高感度及び高精度で生体分子を検出することができる。さらに、蛍光シリカナノ粒子の表面に様々な官能基を導入することができ、試験領域の発光が高輝度である。そのため、蛍光シリカナノ粒子を用いた場合、広い定量レンジで生体分子の検出を実現することができる。さらに、蛍光シリカナノ粒子の表面に様々な官能基を導入することができるため、様々な種類の対象物質の検出に用いることができる。
以下、本発明で用いる蛍光シリカナノ粒子からなる標識試薬粒子について説明する。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
蛍光色素を含有するシリカ粒子は、蛍光色素とシランカップリング剤とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合若しくは吸着させて得られた生成物に1種又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。これによりオルガノシロキサン成分とシロキサン成分とがシロキサン結合してなるシリカ粒子が得られる。1例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基などの活性エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する又は付加した蛍光色素と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した100個の標識試薬シリカ粒子の合計の投影面積から蛍光シリカナノ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択した蛍光シリカナノ粒子の個数(100個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
なお、前記平均粒径は、一次粒子が凝集してなる二次粒子を含む概念の後述する「動的光散乱法による粒度」とは異なり、一次粒子のみからなる粒子の平均粒径である。
所望の平均粒径の蛍光シリカナノ粒子を得るためには、YM−10、YM−100(いずれも商品名、ミリポア社製)等の限外ろ過膜を用いて限外ろ過を行い、粒径が大きすぎる粒子、及び小さすぎる粒子を除去するか、又は適切な重力加速度で遠心分離を行い、上清若しくは沈殿のみを回収することで可能である。
蛍光シリカナノ粒子は粒状物質として単分散であることが好ましい。蛍光シリカナノ粒子の粒度分布の変動係数、いわゆるCV値に特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
動的光散乱法による粒度の測定装置としては、ゼータサイザーナノ(商品名;マルバーン社製)が挙げられる。この手法は、微粒子などの光散乱体による光散乱強度の時間変動を測定し、その自己相関関数から光散乱体のブラウン運動速度を計算し、その結果から光散乱体の粒度分布を導出するというものである。
本発明で用いる標識試薬粒子の比重は、水(4℃)に対して1.3以上2.2以下が好ましく、1.5以上2.0以下がより好ましい。
生体分子と競合する物質は、生体分子と競合して、前記試験領域に標識試薬粒子が結合しうるものであれば特に制限はなく、検出対象である生体分子や試験領域に固定化する捕捉物質などに応じて適宜選択することができる。なお、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入する生体分子と競合する物質は、検出対象である生体分子と同種の物質であっても、異種の物質であってもよい。
本発明で用いる標識試薬粒子の作製方法としては、蛍光シリカナノ粒子の表面にキャリア物質を導入し、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入したキャリア物質と、検出対象である生体分子と競合する物質とを結合させる方法、キャリア物質と、検出対象である生体分子と競合する物質との複合体を作製し、蛍光シリカナノ粒子の表面に複合体を導入する方法が挙げられる。このうち、本発明で用いる標識試薬粒子は、蛍光シリカナノ粒子の表面にキャリア物質を導入し、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入したキャリア物質と、検出対象である生体分子と競合する物質とを結合させる方法で作製することが好ましい。このように作製することで、検出対象である生体分子と競合する物質が、標識試薬粒子の表面に露出し、試験領域に固定化された捕捉物質との反応効率が向上する。
反応性官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、MPS、APS、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソチオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、(-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
反応性官能基がチオール基である場合は、蛍光シリカナノ粒子表面におけるチオール基の密度は0.002〜0.2個/nm2が好ましく、0.002〜0.1個/nm2がより好ましい。当該含色素シリカ粒子の表面に存在するチオール基の量Bは、DNTB(5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸))を試薬として用いて測定することができる。DNTBを用いたチオール基の定量法としては、例えば、Archives of Biochemistry and Biophysics, 82, 70(1959)の方法で行うことができる。具体的な方法の一例としては、リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した10mMのDNTBの溶液20μLと、200mg/mLに調製したシリカ粒子コロイド2.5mLとを混合し、1時間後に412nmの吸光度を測定し、標準物質としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を用いて作成した検量線から粒子表面に存在するチオール基量を定量することができる。
反応性官能基がチオール基である場合は、チオール基が導入された蛍光シリカナノ粒子と、マレイミド基及びカルボキシル基を有するリンカー分子とを非プロトン性溶媒中に共存させる。これにより、チオール基とマレイミド基との間でチオエーテル結合を形成させて、リンカー分子が結合した粒子を作製する。続いて、リンカー分子が結合した粒子と、カルボジイミドと、アミノ基を有するBSAとを水系溶媒中に共存させる。これにより、カルボジイミドにより活性エステル化されたリンカー分子のカルボキシル基と、BSAが有するアミノ基との間でアミド結合を形成させ、蛍光シリカナノ粒子とBSAとの複合体を形成する。
反応性官能基がアミノ基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基、イソシアネート基である場合も、常法によりBSAと蛍光シリカナノ粒子との複合体を形成することができる。これらの方法は、例えば、特開2009−274923号公報、特開2009−162537号公報、特開2010−100542号公報等の記載を参照することができる。
また、前記標識試薬粒子に導入されている生体分子と競合する物質の量は、前記標識試薬粒子に導入されている前記キャリア物質の添加量に対して、モル比で10以下であることが好ましい。このように生体分子と競合する物質の量を設定することで、試験領域に固定化された抗体に対しての標識試薬粒子の吸着力が強くなりすぎるのを防ぎ、検出対象物質の検出感度が向上する。
以下、前述の試験キットを用いた生体分子の検出又は定量方法について、好ましい実施態様に基づいて説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
ここで、試験領域の発光強度と、試験領域に結合する粒子量の関係性を決定する。そして、決定した発光強度と粒子量との関係性と、実際に測定した試験領域の発光強度から、試験領域に結合した標識試薬粒子量を算出することができる。その結果、間接的に、試料に含まれる生体分子を定性的又は定量的に検出することができる。
汎用の蛍光検出器は、励起光源及びフィルタからなる。前記励起光源としては水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、レーザダイオード、発光ダイオードなどが挙げられる。前記フィルタは、励起光源から特定の波長の光のみを透過するフィルタであり、前記蛍光微粒子の蛍光波長、蛍光波長から適宜選択する。前記蛍光検出器は、蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えていてもよい。これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出でき、さらにはその蛍光強度を測定できる。
照射する励起光の波長は特に限定されないが、300nm以上が好ましく、400nm以上がより好ましく、500nm以上が特に好ましい。また、700nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましく、550nm以下が特に好ましい。
蛍光の波長は350nm以上が好ましく、450nm以上がより好ましく、530nm以上が特に好ましい。また、800nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、580nm以下が特に好ましい。これら波長に対応する粒子を用いて測定することで、LED等の直進性の強い光源を用いることもできるため光源を簡素化でき、測定系の構築が技術的にも、コスト的にも容易になる。
(1)蛍光シリカナノ粒子の調製
蛍光分子であるカルボキシローダミン6Gを含有する蛍光シリカナノ粒子を以下の方法で調製した。
5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G・スクシンイミジルエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)31mgをジメチルホルムアミド(DMF)10mLに溶解した。これにAPS(信越シリコーン社製)12μLを加え室温(23℃)で1時間反応を行い、5-(及び-6)-カルボキシローダミン6G−APS複合体(5mM)を得た。
反応終了後18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿した粒子に蒸留水4mLを加え粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、分散液に含まれる未反応のTEOSやアンモニア等を除去した。
上記で得た蛍光シリカナノ粒子1gを水/エタノール=1/4の混合液150mLに分散させた。これにMPS(和光純薬社製)1.5mLを加えた。続いて28%アンモニア水20mLを加え、室温で4時間混合した。
得られたチオール基導入蛍光シリカナノ粒子A 500mgについて、DNTBを用いて導入されたチオール基の定量分析を行った。その結果、チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aの粒子表面のチオール基の密度は、0.046個/nm2であった。
以下の方法により、チオール基を介して、前記チオール基導入蛍光シリカナノ粒子AにBSAをキャリア物質として結合させた。
チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aの分散液(濃度25mg/mL、分散媒:蒸留水)80μLにDMF420μLを加え、15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去し、DMFを500μL加え遠心分離し、上清を除去した。再度DMF500μLを加えチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aを分散させた。これにリンカー分子として3-マレイミド安息香酸1mgを加え30分混合した。このようにして、前記リンカー分子のマレイミド基とチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aのチオール基との間でチオエーテル結合を形成させた。
15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させた。続いて15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。再度10mM KH2PO4(pH7.5)400μLを加え、粒子を分散させてコロイドを得た。
その結果、チオール基導入蛍光シリカナノ粒子A1gあたりのBSAの結合量は、14.6mgであった。
以下の方法により、BSAを介して、前記チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aにプロゲステロンを生体分子と競合する物質として結合させた。
BSA定量後に残ったコロイド200μLを15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH2PO4(pH7.5)500μLを加え、粒子を分散させた。分散液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いて蒸留水を74.6μL加え粒子を分散させた。さらに0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS230.4μL、19.2mg/mL EDC75μLを加え、よく混合した。
これにプロゲステロン−11α−ヘミコハク酸エステル(0.05mg/mL)20μLを加え、60分間混合した。
回収した上清液に含まれるプロゲステロンをELISA法により定量測定した結果、初期濃度からの減少分が0.13μgであった。すなわち、0.13μgのプロゲステロンが前記蛍光シリカナノ粒子に結合したことが分かった。これをチオール基導入蛍光シリカナノ粒子A 1nm2当たりで計算すると、プロゲステロンの結合量は1nm2あたり0.017個であった。
生体分子検出又は定量用テストストリップを以下の方法で作製した。
メンブレン3(丈25mm、商品名:Hi-Flow Plus180 メンブレン、MILLIPORE社製)の端から約8mmの位置に、幅約1mmの試験領域(テストライン)20として、ウサギ由来の抗プロゲステロンポリクローナル抗体(Sigma Aldrich社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH2PO4、pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
また、幅約1mmの参照領域(コントロールライン)21として、ウサギ由来の抗BSAポリクローナル抗体(ミリポア社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH2PO4、pH7.0)シュガー・フリー)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
その後、50℃で30分乾燥させ、メンブレン3を作製した。なお、テストライン20とコントロールライン21との間隔は5mmとした。
続いて、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、生体分子検出又は定量用テストストリップ1を作製した。
表1に示す濃度で、プロゲステロン(Sigma Aldrich社製)の溶液を調製した。
続いて、プロゲステロン溶液100μLと、前記調製例1で作製した蛍光シリカナノ粒子のコロイド(2.5mg/mL)2μLを混合し、混合液をテストストリップ1のサンプルパッド2に滴下した。
15分後、下記検出装置を用いて、テストラインの発光強度(T)とコントロールラインの発光強度(C)を数値化した。
その結果を表1に示す。
光源と光学フィルタと光電子倍増管(PMT)からなる検出ユニットを有し、該検出ユニットが、モーターによって一定速度で直線移動する機構を備え、PMTの受光強度を50μ秒ごとに記録する記録機構を備えた検出装置を作製した。なお、検出ユニットは、光源が532nmのレーザダイオードであり、レーザダイオードをサンプルに照射し、反射光を550nm以上の波長の光のみを透過する光学フィルタを透過させた後にPMTで受光する機構を有する。
測定感度の性能を示す指標として、IC50(inhibitory concentration:50%阻害濃度)と定量範囲がある。IC50とはサンプル液中の対象物質(阻害剤)が粒子とテストラインの抗体との反応の半分を阻害するにはどれだけの濃度が必要かを示す指標である。一方定量範囲とは、サンプル液中の対象物質濃度が測定可能な範囲を示す。
それぞれの値は、IC50の前後の濃度の蛍光強度測定結果を用いて、以下のように算出する。定量範囲の算出方法を模式的に示す図を図3に示す。
(1)テストライン蛍光強度の最大値と最小値から、IC50となる場合のテストライン強度(最大値と最小値の平均)を算出する。
(2)前記(1)で算出した、IC50となる場合のテストライン強度の前後2点(A、B)を通る直線式を求める。
(3)IC50付近は直線式で近似できるため、前記(1)で算出したテストライン強度を前記(2)で算出した直線式に代入し、IC50の濃度を算出する。
(4)最大値×0.8、最小値×1.2、のテストライン強度を算出する。
(5)前記(4)で算出したテストライン強度を、それぞれ前記(2)で算出した直線式に代入し、最大値x0.8のテストライン強度に対応する濃度を定量範囲の下限、最小値x1.2のテストライン強度に対応する濃度を定量範囲の下限とする。
ここで、図3に示すグラフの縦軸の「相対値」とは、検出対象物質の濃度が0ng/mLの場合の蛍光強度測定値を100%としたときの蛍光強度測定値を示す。
以下の方法により、チオール基を介して、前記チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aにプロゲステロンを結合させた。
チオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aの分散液(濃度25mg/mL、分散媒:蒸留水)80μLにDMF420μLを加え、15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去し、DMFを500μL加え遠心分離し、上清を除去した。再度DMF500μLを加えチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aを分散させた。これにリンカー分子としてN−(4−アミノフェニル)マレイミド1mgを加え30分混合した。このようにして、前記リンカー分子のマレイミド基とチオール基導入蛍光シリカナノ粒子Aのチオール基との間でチオエーテル結合を形成させた。
これにプロゲステロン−11α−ヘミコハク酸エステル(0.05mg/mL)20μLを加え、60分間混合した。
回収した上清液に含まれるプロゲステロンをELISA法により定量測定した結果、初期濃度からの減少分が0.024μgであった。すなわち、0.024μgのプロゲステロンが前記蛍光シリカナノ粒子に結合したことが分かった。これをチオール基導入蛍光シリカナノ粒子A 1nm2当たりで計算すると、プロゲステロンの結合量は1nm2あたり0.0032個であった。
BSA0.1%、Tween20 1%、EDTA 5mM、NaN3 0.1%を10mMリン酸バッファ(pH7.5)に溶解させ、フロー液を調製した。このフロー液80μLと、実施例1の粒子又は比較例の粒子(2.5mg/mL)0.6μLとを混合し、調製例1で作製したテストストリップ1のサンプルパット2に混合液全量を滴下した。滴下から15分後に、テストライン20の蛍光強度を測定した。
その結果を表2に示す。
以上のように本発明で作製した粒子は比較例で作製した粒子に比べて、テストストリップの試験領域への標識試薬粒子の結合効率が高いことが分かる。
実施例1において、蛍光シリカナノ粒子に対するプロゲステロンの添加量を調整し、プロゲステロンの結合量が蛍光シリカナノ粒子に結合させたBSAのモル数に対してモル比で12.5、10、5、0.5、0.2となるよう、実施例1と同様の方法で標識試薬粒子を作製した。
このように作製した標識試薬粒子を用いて、実施例2と同様に試験を実施し、テストラインの発光強度(T)を算出した。その結果を表3に示す。
(1)着色ラテックス粒子AとBSAとの結合
粒子表面にカルボキシル基が導入された、粒径160nmの着色ラテックス粒子(商品名:DC02B/5641,Bangs Laboratories社製)の分散液(濃度3.2mg/mL、分散媒:蒸留水)1mLを15000×gの重力加速度で10分遠心分離した。上清を除去後、蒸留水88.6μLを加え粒子を分散させた。続いて、0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS230.4μL、19.2mg/mL EDC75μLを加え混合した。
これにキャリア物質としてBSA(10mg/mL、Sigma Aldrich社製)を6.0μL加え、60分間混合した。
その結果、着色ラテックス粒子1gあたりのBSAの結合量は、28.2mgであった。これは1nm2あたり0.0069個に相当する。
以下の方法により、BSAを介して、前記着色ラテックス粒子にプロゲステロンを生体分子と競合する物質として結合させた。
BSA定量後に残ったコロイド200μLを15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。これに10mM KH2PO4(pH7.5)500μLを加え、粒子を分散させた。分散液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いて蒸留水を74.6μL加え粒子を分散させた。さらに0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS230.4μL、19.2mg/mL EDC75μLを加え、よく混合した。
これにプロゲステロン−11α−ヘミコハク酸エステル(0.05mg/mL)50μLを加え、60分間混合した。
実施例1と同様の方法で着色ラテックス粒子に結合したプロゲステロンの量を求めた結果、粒子1gあたり、0.67mgの結合量であった。これは1nm2あたり0.034個に相当する。したがって、BSA結合量に対し、分子数で5倍量のプロゲステロンが結合していることが分かった。
(1)金コロイドの調製
粒径40nmの金ナノ粒子のコロイド(British BioCell International社製)22mLに、キャリア物質としてBSA(10mg/mL、Sigma Aldrich社製)を6.0μL加え、60分間混合した。
以下の方法により、BSAを介して、前記金コロイドにプロゲステロンを生体分子と競合する物質として結合させた。
金コロイド(1mg/mL)900μLにBSA(1mg/mL)100μLを加え、1時間4℃で静置した。続いて反応液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を分離した。上清液に含まれるBSAの濃度から粒子に結合したBSAの量を評価した結果、粒子1gあたり5.9mgであった。これは1nm2あたり0.0069個に相当する。
上清を分離した後の粒子に、10mM KH2PO4(pH7.5)500μLを加え、粒子を分散させた。分散液を15000×gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。続いて蒸留水を74.6μL加え粒子を分散させた。さらに0.5M MES(pH6.0)100μL、50mg/mL NHS230.4μL、19.2mg/mL EDC75μLを加え、よく混合した。
これにプロゲステロン−11α−ヘミコハク酸エステル(0.01mg/mL)50μLを加え、60分間混合した。
実施例1と同様の方法で金ナノ粒子に結合したプロゲステロンの量を求めた結果、粒子1gあたり0.14mgであった。これは1nm2あたり0.034個に相当する。したがって、BSA結合量に対し、分子数で5倍量のプロゲステロンが結合していることが分かった。
0ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、2.5ng/mL、10ng/mL、50ng/mL、200ng/mL、500ng/mL、又は1000ng/mLの濃度で、プロゲステロン(Sigma Aldrich社製)の溶液を調製した。
続いて、前記プロゲステロン溶液100μLと、比較例2で作製した着色ラテックス粒子とを混合し、混合液を調製例1で作製したテストストリップ1に滴下した。その後、実施例2と同様に、定量可能範囲を算出した。なお、ライン発色の数値化はDiaScan(大塚電子製)を用いて行った。
さらに、比較例2で作製した着色ラテックス粒子に代えて、比較例3で作製した金コロイドを用いた以外は同様に、定量可能範囲を算出した。
これらの結果を表5に示す。
実施例1で作製した、BSAに対するプロゲステロンの結合量のモル比が5である標識試薬粒子を調製例1で作製したテストストリップ1のサンプルパット2に滴下し、テストライン20の蛍光強度の時間変化を測定した。実施例1で作製した標識粒子に代えて、比較例2で作製した着色ラテックス粒子、比較例3で作製した金ナノ粒子、又は蛍光色素で標識したプロゲステロンを用いて、同様に試験を実施しテストライン20の蛍光強度の時間変化を測定した。
各試験とも滴下後1時間以降ではテストライン強度が一定であった。また、1時間後のテストライン20の蛍光強度を100としたときに50のテストライン20の蛍光強度が得られる時間は表6の結果となった。
また、本発明の標識試薬粒子は比重の小さいラテックス粒子や粒径の小さい金ナノ粒子に比べてもテストライン20の蛍光強度が50になる時間が遅く、メンブレンを移動する速度が遅いことが分かる。このことから、シリカナノ粒子はラテックス粒子や金ナノ粒子に比べてプロゲステロンなどの低分子とメンブレンを移動する速度の差がより大きくなり、競合法によるイムノクロマト試験に好適といえる。
2 サンプルパッド
3 メンブレン
4 吸収パッド
6 バッキングシート
10 試験領域
20 試験領域
21 参照領域
Claims (27)
- 生体分子検出又は定量用試験キットを用いた、生体分子の検出又は定量方法であって、
前記生体分子検出又は定量用試験キットは、生体分子検出又は定量用の試験片と、生体分子検出又は定量用の標識試薬粒子を有し、
前記試験片は、生体分子と標識試薬粒子を捕捉する試験領域を有し、
前記標識試薬粒子が蛍光シリカナノ粒子からなり、
前記標識試薬粒子の表面にキャリア物質が導入されており、
検出対象である生体分子と競合する物質が、標識試薬粒子の表面に導入されており、
前記標識試薬粒子の比重が、前記試験片に滴下する生体分子を含む試料よりも大きく、
生体分子を含む試料と前記標識試薬粒子を加えた前記試験片の前記試験領域の発光強度に基づいて、前記試料に含まれる生体分子を検出又は定量する、生体分子の検出又は定量方法。 - 前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン、ポリエチレングリコール、カゼイン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質である、請求項1に記載の方法。
- 前記標識試薬粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記キャリア物質が親水性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記標識試薬粒子に導入されている生体分子と競合する物質の量が、前記蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たり0.0001個以上0.1個以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キャリア物質が、チオール基と結合できる反応性官能基、及びカルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法
。 - 前記キャリア物質が、チオールと結合できる反応性官能基としてマレイミド基を有し、カルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基としてアミノ基、カルボキシル基又は活性エステル基を有する、請求項6に記載の方法。
- 前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン又はポリエチレングリコールである、請求項6又は7に記載の方法。
- 前記標識試薬粒子における生体分子と競合する物質の導入量が、前記標識試薬粒子における前記キャリア物質の導入量に対して、モル比で10以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 水(4℃)に対する前記標識試薬粒子の比重が1.3以上2.2以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 検出対象である生体分子を含む前記試料が全血である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 検出対象である前記生体分子がステロイド系ホルモン又は性ホルモンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 生体分子を含む前記試料と前記標識試薬粒子とを混合し、得られた混合物を前記試験片に滴下する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記試験片がラテラルフロー用の試験片である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 競合法による生体分子の検出又は定量方法に用いられる標識試薬粒子であって、
前記標識試薬粒子が蛍光シリカナノ粒子からなり、
前記標識試薬粒子の表面にキャリア物質が導入されており、
検出対象である生体分子と競合する物質が、前記キャリア物質を介して標識試薬粒子の表面に導入されており、
前記生体分子を含む試料よりも比重が大きい、標識試薬粒子。 - 前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン、ポリエチレングリコール、カゼイン、スカシガイヘモシアニン、ヒト血清アルブミン、卵白アルブミン、グロブリン、アビジン、及びストレプトアビジンからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質である、請求項15に記載の標識試薬粒子。
- 前記標識試薬粒子の平均粒径が100nm以上500nm以下である、請求項15又は16に記載の標識試薬粒子。
- 前記キャリア物質が親水性である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 前記標識試薬粒子に導入されている生体分子と競合する物質の量が、前記蛍光シリカナノ粒子の表面1nm2当たり0.0001個以上0.1個以下である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 前記キャリア物質が、チオール基と結合できる反応性官能基、及びカルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基を有する、請求項15〜19のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 前記キャリア物質が、チオールと結合できる反応性官能基としてマレイミド基を有し、カルボキシル基又はアミノ基と結合できる反応性官能基としてアミノ基、カルボキシル基又は活性エステル基を有する、請求項20に記載の標識試薬粒子。
- 前記キャリア物質が、ウシ血清アルブミン又はポリエチレングリコールである、請求項20又は21に記載の標識試薬粒子。
- 前記標識試薬粒子における生体分子と競合する物質の導入量が、前記標識試薬粒子における前記キャリア物質の導入量に対して、モル比で10以下である、請求項15〜22のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 水(4℃)に対する前記標識試薬粒子の比重が1.3以上2.2以下である、請求項15〜23のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 検出対象である前記生体分子がステロイド系ホルモン又は性ホルモンである、請求項15〜24のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 前記蛍光シリカナノ粒子の表面に前記キャリア物質を導入し、蛍光シリカナノ粒子の表面に導入したキャリア物質と、検出対象である生体分子と競合する物質とを結合させて作製した、請求項15〜25のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に用いられる、請求項15〜26のいずれか1項に記載の標識試薬粒子。
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