(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電流検出素子1の透明斜視図である。図2(A)は、電流検出素子1の平面図、図2(B)は、図2(A)のB−B線における断面図である。図3は、電流検出素子1の実装面側の平面図である。電流検出素子1は、図示しないマザー基板に実装される。図3は、マザー基板に実装する側の面を示している。なお、以下に示す平面図は透視図である。
電流検出素子1は、複数のフェライトシートが積層され、焼結されてなる積層体10を備えている。フェライトシートは、本発明に係る「絶縁層」の一例である。本実施例では、フェライトシートは磁性フェライトから構成される。積層体10の一方主面には、複数の実装電極14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G,14Hが形成されている。電流検出素子1は、実装電極14A等が形成された積層体10の主面(以下、実装面と言う)をマザー基板側にして実装される。以下、積層体10の積層方向において、実装面側を下側とする。なお、フェライトシートは全て磁性フェライトである必要はなく、一部または全てのフェライトシートが非磁性フェライトでもよく、絶縁性を有する絶縁層であればよい。ただし、絶縁層が磁性を有することにより、後述の電流検出用導体に生じるインダクタンスが高まるため、検出感度が高くなる。
なお、図3に示す実装電極14A〜14Gはそれぞれ独立して形成されているが、実装電極14A,14B,14Cは積層体10の内部で互いに導通している。また、実装電極14D,14E,14Fも積層体10の内部で互いに導通している。
一のフェライトシートの主面には、直線状の主線路用電極11が形成されている。主線路用電極11に隣接して、コイル導体12A,12Bが配置される。コイル導体12A、主線路用電極11、コイル導体12Bの配列方向と交わる方向における、主線路用電極11の一方端付近は、層間接続導体11Aを介して、実装電極14Hに接続されている。コイル導体12A、主線路用電極11、コイル導体12Bの配列方向と交わる方向における、主線路用電極11の他方端付近は、図示しない層間接続導体を介して、実装電極14Gに接続されている。主線路用電極11は、本発明に係る「主線路導体」の一例である。
電流検出素子1は、コイル導体12A,12Bを備えている。コイル導体12A,12Bは、本発明に係る「電流検出用導体」の一例である。コイル導体12A,12Bは、巻回軸を積層体10の積層方向にし、かつ、積層方向からの平面視で、主線路用電極11を間に挟むようにして、形成されている。コイル導体12A,12Bの巻回軸は、主線路用電極11の延びる方向とは異なる方向を向いている。つまり、コイル導体12A,12Bの巻回軸は主線路用電極11とねじれの位置関係となっている。なお、コイル導体12A,12Bそれぞれの巻回軸は必ずしも積層方向と平行である必要はない。少なくとも巻回軸が積層方向成分を有するようにコイル導体12Aおよびコイル導体12Bが形成されればよい。つまり、コイル導体12A,12Bの巻回軸が積層方向に対して傾斜していてもよい。
コイル導体12Aは、異なる層のフェライトシートの主面に形成された開ループ状導体121,122,123,124が、層間接続導体(不図示)により接続されることで形成されている。コイル導体12Aの下側の一端は、積層体10の実装面の実装電極14A,14B,14Cに接続されている。
なお、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bは積層体10の内部に形成されているが、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bはそれぞれ積層体10の表面に少なくとも一部が形成されていてもよい。主線路用電極11及びコイル導体12A,12Bが積層体10に固定されればよい。コイル導体12Bは、異なる層のフェライトシートの主面に形成された開ループ状導体125,126,127,128が、層間接続導体(不図示)により接続されて、形成されている。開ループ状導体125,126,127,128は、開ループ状導体121,122,123,124が形成された層と同層のフェライトシートに形成されていてもよいし、異なる層のフェライトシートに形成されていてもよい。コイル導体12Bの下側の一端は、積層体10の実装面の実装電極14D,14E,14Fに接続されている。
コイル導体12A,12Bは、上側の一端で接続導体13により互いに接続されている。接続導体13は、主線路用電極11の上側を跨ぐようにして、フェライトシートの主面に形成されている。コイル導体12A,12Bは、接続導体13により直列に接続されることで、コイル導体12A,12Bは一つのコイルを形成している。なお、接続導体13は主線路用電極11から距離が離れた層に形成することにより、接続導体13と主線路用電極11との寄生容量を低減することができる。
図4は、コイル導体12A,12Bに生じる誘導電流の流れる方向を説明するための図である。主線路用電極11に電流が流れると、磁束が発生し、その磁束がコイル導体12A,12Bのコイル開口を通過することで、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとが磁気結合する。詳しくは、コイル導体12A,12Bの一方には、積層方向の上側から下側に向かう主線路用電極11による磁束が鎖交し、他方には下側から上側に向かう主線路用電極11よる磁束が鎖交する。主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとが磁気結合することで、コイル導体12A,12Bに誘導起電力が生じ、誘導起電力に応じてコイル導体12A,12Bに誘導電流が流れる。
コイル導体12A,12Bに生じる誘導電流の流れる方向は、主線路用電極11およびコイル導体12A,12Bを積層方向から平面視したとき、それぞれ逆回りである。ここで、コイル導体12Aとコイル導体12Bは、コイル導体12A,12Bに流れる誘導電流が互いに打ち消しあわないように接続される。つまり、図1に示すように、コイル導体12A,12Bの構造がともに左手の螺旋(left-handed helix)であるならば、コイル導体12A,12Bは互いに上側の一端を接続することで直列に接続される。したがって、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの磁気結合が弱まることはない。
なお、本実施形態では、コイル導体12A,12Bの構造がともに左手の螺旋、つまり同じ巻回方向であり、コイル導体12A,12Bは互いに上側の一端を接続することで直列に接続され、主線路用電極11に流れる電流により生じた磁束がコイル導体12A,12Bのコイル開口を通過して、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとが磁気結合するようにしているが、コイル導体12A,12Bの構造や接続の仕方は、これに限らない。主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとが磁界結合することでコイル導体12A,12Bに生じる誘導電流が打ち消しあわないように、コイル導体12A,12Bの構造の巻回方向と接続の仕方を選択する。積層方向からの平面視で、コイル導体12A,12Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向がともに同じであるならば、コイル導体12A,12Bの一方の巻き始めと他方の巻き始めとが接続される、または一方の巻き終わりと他方の巻き終わりとが接続され、コイル導体12A,12Bは直列接続される。積層方向からの平面視で、コイル導体12A,12Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向が互いに逆であるならば、コイル導体12A,12Bの一方の巻き始めと他方の巻き終わりとが接続され、コイル導体12A,12Bは直列接続される。
以上のように、電流検出素子1において、主線路用電極11に電流が流れると、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとは磁気結合する。一般的に、電流が流れる線路と、その線路近傍に配置されたコイル導体との磁気結合は、線路とコイル導体との位置関係のずれによって変化する。そして、積層構造において、位置関係のずれは、積層体を形成する際の積層ずれによって生じる。
本実施形態では、主線路用電極11は、コイル導体12A,12Bの間に配置されている。このため、仮に、積層ずれにより主線路用電極11とコイル導体12Aとの距離が離れて、主線路用電極11とコイル導体12Aとの磁気結合が弱くなった場合でも、主線路用電極11とコイル導体12Bとの距離は接近し、主線路用電極11とコイル導体12Bとの磁気結合は強くなる。コイル導体12A,12Bは直列接続され、一つのコイル導体を形成している。したがって、フェライトシートの積層ずれが生じても、主線路用電極11と、二つのコイル導体12A,12Bとの磁気結合は略変わらない。
後に詳述するが、主線路用電極11と磁気結合したコイル導体12A,12Bに生じる誘導起電力または流れる誘導電流を検出することで、主線路用電極11に流れる電流を検出できる。前記のように、積層ずれが生じても、主線路用電極11と、コイル導体12A,12Bとの磁気結合は略変わらないため、主線路用電極11に流れる電流の検出感度は低下せず、電流を確実に検出できる。また、電流検出素子1は、主線路用電極11を中心とした対称構造であるため、フェライトシートを積層して焼結する際の反りを軽減できる。これにより、主線路用電極11と、コイル導体12A,12Bとの位置関係のずれを、さらに抑制できる。
図5は、電流検出素子1を用いた電流検出回路を示す図である。前記のように、コイル導体12A,12Bは直列接続されている。図5では、コイル導体12A,12Bを一つのコイル12として表している。また、実装電極14H,14G間に示すインダクタL1は、主線路用電極11のインダクタンス成分である。
電流検出素子1は、主線路用電極11がマザー基板の主線路の途中に配置されるよう、マザー基板に実装される。また、電流検出素子1の実装電極14A,14B,14Cおよび実装電極14D,14E,14Fは、主線路用電極11を流れる電流を検出するための検出用回路に接続される。検出用回路は、キャパシタC1および負荷RLである。キャパシタC1は、本発明に係る「周波数特性を有する素子」の一例である。電流検出素子1をマザー基板に実装することで、コイル12は、キャパシタC1および負荷RLに直列に接続される。そして、コイル12に誘導電流が流れたとき、負荷RLの電圧を検出することで、主線路用電極11に流れる電流、すなわち、マザー基板の主線路に流れる電流を検出できる。
図6は、図5に示す電流検出回路における電気特性を示す図である。縦軸は変換比率[V/A]であり、横軸は主線路用電極11を流れる電流の周波数である。変換比率は、主線路用電極11に流れる電流と、負荷RLにかかる電圧との比である。この図では、周波数が約3MHz以上で、変換比率は一定(略「1」)である。すなわち、キャパシタC1を付加することで、電流検出素子1は広い周波数帯域で電流を検出できる。
なお、図5では、キャパシタC1は、コイル12に対して直列に接続されているが、並列に接続してもよい。また、キャパシタC1は、電流検出素子1に外付けに接続しているが、例えば、積層体10の上側主面に実装し、電流検出素子1がキャパシタC1を備えるようにしてもよい。この場合、また、キャパシタC1を、電流検出素子1に外付けする必要がないため、キャパシタC1を実装する領域をマザー基板に確保する必要がない。
以上のように、電流検出素子1の主線路用電極11が、マザー基板の主線路の一部を構成するよう、電流検出素子1をマザー基板に実装することで、マザー基板の主線路に流れる電流を確実に検出できる。また、電流検出素子1は、トロイダルコアを用いたカレントトランス等と比べて小型、低背であるため、マザー基板の実装領域の省スペース化が実現できる。
なお、電流検出回路は、図5に限定されない。
また、本実施形態では、コイル導体12Aとコイル導体12Bとは直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。コイル導体12Aとコイル導体12Bとを並列接続することにより、抵抗を下げて損失を抑えることができる。コイル導体12A,12Bが並列に接続される場合のコイル導体12A,12Bの巻回方向と接続の仕方は次の通りである。積層方向からの平面視で、コイル導体12A,12Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向がともに同じであるならば、一方の巻き始めと他方の巻き終わりとが接続され、さらに一方の巻き終わりと他方の巻き始めとが接続され、コイル導体12Aとコイル導体12Bとの2つの接続部間に検出用回路が接続される。積層方向からの平面視で、コイル導体12A,12Bの巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向が互いに逆であるならば、コイル導体12A,12Bの一方の巻き始めと他方の巻き始めとが接続され、さらに一方の巻き終わりと他方の巻き終わりとが接続され、コイル導体12Aとコイル導体12Bとの2つの接続部間に検出用回路が接続される。
図7は、電流検出回路の別の例を示す図である。この例では、電流検出素子1Aは、コイル12に並列に接続されたキャパシタC2を備え、他の構成は電流検出素子1と同じである。キャパシタC2は、本発明に係る「周波数特性を有する素子」の一例である。
電流検出素子1Aには、ダイオードD1、抵抗R1、キャパシタC3および負荷RLが接続されている。電流検出素子1AのダイオードD1は整流回路である。抵抗R1およびキャパシタC3は平滑回路である。そして、コイル12に誘導電流が流れたとき、負荷RLの電圧を検出することで、主線路用電極11に流れる電流を検出できる。
図8は、図7に示す電流検出回路の入出力特性を示す図である。横軸は、主線路用電極11に流れる電流(実効値)であり、縦軸は、負荷RLにかかる電圧である。この場合、主線路用電極11に流れる電流と負荷RLにかかる電圧の相関は線形性を示す。
また、図7に示す電流検出回路において、コイル12とキャパシタC2とで共振回路を構成していてもよい。この場合、共振回路の共振周波数は、主線路用電極11に流れる交流電流の周波数に設定することが好ましい。
図9は、図7に示す電流検出回路において、共振回路を構成した場合の、電流検出回路の出力電圧の周波数特性である。横軸は、主線路用電極11に流れる電流と電流検出回路の出力電圧との変換比率であり、横軸は周波数である。図9は、共振回路の共振周波数を、約6.78MHzに設定したときの図である。
図9から読み取れるように、周波数が約6.78MHzである場合、変換比率は最も高い。すなわち、共振回路の共振周波数を、主線路用電極11に流れる交流電流の周波数に設定することで、電流検出回路による電流検出感度を高めることができる。また、共振により電流検出回路による電流検出感度が高いため、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの寄生容量を低減させるために、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの距離を離すことができる。
以下、電流検出素子1の別の構造例について説明する。
図10(A)、図10(B)、図11(A)、図11(B)、図12(A)、図12(B)、図12(C)、図13(A)、図13(B)、図14(A)および図14(B)は、電流検出素子1の別の例を示す断面図である。
図10(A)に示す電流検出素子1Bの主線路用電極11は、多層構造としてある。異なる層のフェライトシートの主面には、主線路用電極111,112,113が形成されている。主線路用電極111,112,113は、図示しない層間接続導体により互いに接続されて、主線路用電極11が形成されている。この場合、主線路用電極11のインダクタンス成分、抵抗成分を小さくできる。
図10(B)に示す電流検出素子1Cの積層体10は、一部に非磁性体層10Aのフェライトシートを有している。非磁性体層10Aは、本発明に係る「低透磁率領域」に相当する。非磁性体層10A以外のフェライトシートの層は磁性体層であり、本発明に係る「高透磁率領域」に相当する。主線路用電極11は、非磁性体層10Aに形成されている。なお、図10(B)では、主線路用電極11は全体が非磁性体層10A内に配置されているが、非磁性体層10Aと磁性体層との境界に配置されるようにしてもよい。すなわち、主線路用電極11の一部が非磁性体層10A内に配置されるようにしてもよい。
主線路用電極11を非磁性体層10A内に配置することで、主線路用電極11近傍の磁束集中を弱めることができ、より大きな電流を流すことができる。非磁性体層10Aを主線路用電極11とコイル導体12A,12B間に跨るように配置しているので、主線路用電極11に電流が流れることで生じる磁束は、コイル導体12A,12Bを鎖交する磁束の割合が高くなるため、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの磁気結合を強めることができる。これにより、電流の検出感度を高めることができる。また、非磁性体層10Aを設けない場合と比べて、主線路用電極11周りの透磁率は低いため、非磁性体層10Aを設けることで、主線路用電極11のインダクタンス成分または磁気損失を小さくできる。さらに、主線路用電極11周りの磁気飽和を防止できる。
図11(A)に示す電流検出素子1Dでは、主線路用電極11を多層構造とし、さらに、その主線路用電極11を非磁性体層10A内に配置している。図10(A)と同様に、異なる層のフェライトシートの主面には、主線路用電極111,112が形成されている。主線路用電極111,112は、図示しない層間接続導体により互いに接続されて、主線路用電極11が形成されている。この場合、主線路用電極11のインダクタンス成分、抵抗成分を小さくすることができる。また、主線路用電極11を非磁性体層10A内に配置することで、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの磁気結合を強くできる。また、主線路用電極11のインダクタンス成分を小さくできる。さらに、主線路用電極11周りの磁気飽和を防止できる。
図11(B)に示す電流検出素子1Eでは、主線路用電極11を多層構造とし、非磁性体層10A内に配置している。また、主線路用電極11の幅を大きくすることで、コイル導体12A,12Bを形成する開ループ状導体が、主線路用電極11の一部と重なっている。この場合、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの磁気結合を強くできる。
図12(A)に示す電流検出素子1Fでは、図11(B)と同様に、コイル導体12A,12Bの開ループ状導体と主線路用電極11の一部とが重なるよう構成されている。また、主線路用電極11が形成された層と同層または隣接する層に形成されている開ループ状導体の径は、他の層に形成されている開ループ状導体よりも短い。これにより、コイル導体12A,12Bのコイル開口と重なる位置まで、主線路用電極11の幅を広くできる。この場合、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの磁気結合を強くできる。また、主線路用電極11を低インピーダンス化できる。
図12(B)に示す電流検出素子1Gでは、図11(B)と同様に、主線路用電極11の一部と、コイル導体12A,12Bとが重なるよう構成されている。また、図12(A)と同様、一部の開ループ状導体の径は、他の開ループ状導体よりも短い。さらに、主線路用電極11近傍であって、主線路用電極11と隣接する層に形成された開ループ状導体の径も、他の開ループ状導体よりも短くしている。この場合、主線路用電極11と開ループ状導体との間で形成される寄生容量を削減でき、他の回路への影響が及ぶことを抑制できる。
図12(C)に示す電流検出素子1Hでは、図12(B)と同様に、多層構造の主線路用電極11を非磁性体層10A内に配置している。これにより、主線路用電極11を流れる電流によって積層体10内部に生成される磁束密度を低減させる(磁束集中を弱める)ことができる。その結果、磁性層の飽和を防止することができるため、主線路用電極11に、より大きな電流を流すことができる。なお、主線路用電極11は、コイル導体12A,12Bと重ならない点で図12(B)と相違する。
非磁性体層10Aは、非磁性体層10Aを上下方向から挟む磁性体層の厚さよりも厚く形成されている。このとき、磁性体層の厚みを薄くすると磁束密度が層内で飽和(非線形性)しやすくなるため、磁性体層は、内部の磁束密度が許容できる範囲内となる厚みで形成することが好ましい。また、磁性体層の比透磁率は例えば50〜300である。
コイル導体12A,12Bは、非磁性体層10Aを挟んで積層方向の上側の磁性体層内に形成されたコイル導体12Au,12Buと、下側の磁性体層内に形成されたコイル導体12Ad,12Bdとで構成されている。コイル導体12Auとコイル導体12Adとの間の距離は、積層方向に互いに隣接するコイル導体12Auの間の距離またはコイル導体12Adの間の距離よりも長い。また、コイル導体12Buとコイル導体12Bdとの間の距離は、積層方向に互いに隣接するコイル導体12Buの間の距離またはコイル導体12Bdの間の距離よりも長い。なお、コイル導体12Au,12Buの下側一部、および、コイル導体12Ad,12Bdの上側一部は、非磁性体層10Aに形成されている。コイル導体12A,12Bを磁性体層に形成することで、コイル導体12A,12Bのインダクタンスは大きくなるため、電流の検出感度は高まる。また、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとを挟み込むように磁性体層が配置されているため、磁気結合が強まり、電流の検出感度は高まる。
また、非磁性体層10Aに形成されるコイル導体12Au,12Adと主線路用電極11との磁界結合に寄与する効果は小さいが損失は生じる。このため、コイル導体12Auとコイル導体12Adを離間させている。また、コイル導体12Auとコイル導体12Adとを離間させることにより、コイル導体12Auとコイル導体12Adは主線路用電極11とも離間するため、コイル導体12Au,12Adと主線路用電極11との間で寄生容量が発生するのを防ぐことができる。また、コイル導体12Au,12Adと主線路用電極11との間で絶縁距離を保つこともできる。同様の理由で、コイル導体12Buとコイル導体12Bdも離間させている。
また、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとは、積層体10の平面方向(積層方向の直交方向)において、重ならないように形成されている。これにより、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとが近接せず、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bと間に生じる寄生容量を低減できる。その結果、電流検出回路の出力電圧の誤差を低減できる。
図13(A)に示す電流検出素子1Iの主線路用電極11は、多層構造としてある。また、積層体10は一部に非磁性体部10Bを有している。主線路用電極11は、非磁性体部10B内に形成されている。この場合、主線路用電極11周りの透磁率は低いため、非磁性体部10Bを設けることで、主線路用電極11のインダクタンス成分を小さくできる。
図13(B)に示す電流検出素子1Jでは、主線路用電極11、コイル導体12A,12B、接続導体13および非磁性体部10Bは、図13(A)に示す電流検出素子1Iに比べて実装面側に寄せて形成されている。この場合、主線路用電極11等と、実装面の実装電極とを接続する層間接続導体の距離を短くできるため、層間接続導体のインピーダンスを低くできる。
図14(A)に示す電流検出素子1Kでは、積層体10の一または複数層を非磁性体層10Aとしている。そして、この非磁性体層10Aに、主線路用電極11およびコイル導体12A,12Bの一部を形成している。この場合、図12(B)と比べ、製造しやすい。
図14(B)に示す電流検出素子1Lでは、非磁性体部10Bに、主線路用電極11およびコイル導体12A,12Bの一部を形成している。この場合、図13(B)に示す電流検出素子1Jに比べて主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの間の透磁率を低くすることで、主線路用電極11とコイル導体12A,12Bとの磁気結合を強くできる。
図15(A)は、別の例を示す電流検出素子1Mの平面図、図15(B)は、図15(A)のXV−XV線における断面図である。この例では、コイル導体12A,12Bは、図2(A)および図2(B)等に示す接続導体13で接続されていない。すなわち、コイル導体12A,12Bは、それぞれ独立したコイルである。この場合、コイル導体12A,12Bの構造の巻回方向は、同じ方向の巻回であってもよいし、逆の方向の巻回であってもよい。コイル導体12A,12Bを独立させることで、電流検出素子1Mから、2つの電流検出結果を得ることができる。
電流検出素子1M内で、コイル導体12A,12Bは接続されていない。このため、電流検出素子1Mを実装するマザー基板(不図示)等で、コイル導体12Aとコイル導体12Bとの接続を変えることができる。例えば、図4で説明したように、コイル導体12Aとコイル導体12Bとをコイル導体12A,12Bに生じる誘導電流が互いに打ち消しあわないように直列接続することにより、インダクタンスを上げて検出感度を高めることができる。
また、コイル導体12A,12Bを並列に接続する場合であっても、前記のように、コイル導体12Aとコイル導体12Bとをコイル導体12A,12Bに生じる誘導起電力が互いに打ち消しあわないように並列接続することにより、抵抗を下げて損失を抑えることができる。
また、本実施形態では、主線路用電極11を挟むように2つのコイル導体を形成しているが、コイル導体の数は2つ以上であってもよい。例えば、コイル導体12Aが形成された領域に、主線路用電極11に沿って2つのコイル導体を形成し、コイル導体12Bが形成された領域に、主線路用電極11に沿って2つのコイル導体を形成してもよい。すなわち、主線路用電極11の両側には、それぞれ2つのコイル導体が形成され、電流検出素子は、合計4つのコイル導体を備えた構成であってもよい。
また、積層方向において、積層体10の最も外側の2つの層を非磁性体層とし、最も外側の2つの非磁性体層で、磁性体層及び他の非磁性体層を挟む構成でもよい。これにより、磁束を積層体10内に閉じ込めるとともに、積層体10の機械強度を強くすることができる。
(実施形態2)
図16(A)は、実施形態2に係る電流検出素子2の平面図、図16(B)は、図16(A)のXVI−XVI線における断面図である。
電流検出素子2は積層体10を備えている。積層体10の一方主面には、図3に示す実装電極14A〜14Hが形成されている。
積層体10の一のフェライトシートの主面には、直線状の主線路用電極21A,21Bが形成されている。主線路用電極21A,21Bに隣接してコイル導体22が配置される。主線路用電極21A、コイル導体22、主線路用電極21Bの配列方向と交わる方向における、主線路用電極21Aの一方端付近は、層間接続導体(不図示)を介して、例えば、図3に示す実装電極14Aに接続され、他方端付近は実装電極14Cに接続されている。また、主線路用電極21A、コイル導体22、主線路用電極21Bの配列方向と交わる方向における、主線路用電極21Bの一方端付近は、実装電極14Dに接続され、他方端付近は実装電極14Fに接続されている。
後述するが、主線路用電極21A,21Bが差動線路の一部を構成するよう、電流検出素子2は基板に実装される。主線路用電極21A,21Bには、それぞれ主線路用電極21A、コイル導体22、主線路用電極21Bの配列方向と交わる方向に沿って互いに逆方向に電流が流れる。
電流検出素子2は、コイル導体22を備えている。コイル導体22は、本発明に係る「電流検出用導体」の一例である。コイル導体22は、巻回軸を積層体10の積層方向にし、かつ、積層方向からの平面視で、主線路用電極21A,21Bの間に形成されている。コイル導体22の一端は、積層体10の実装面の実装電極14Gに接続され、他端は実装電極14Hに接続されている。なお、コイル導体22の巻回軸は必ずしも積層方向と平行である必要はない。少なくとも巻回軸が積層方向成分を有するようにコイル導体22が形成されればよい。つまり、コイル導体22の巻回軸が積層方向に対して傾斜していてもよい。
以上のように構成された電流検出素子2において、主線路用電極21A,21Bに電流が流れると、主線路用電極21A,21Bとコイル導体22とは磁気結合する。詳しくは、主線路用電極21A,21Bには、それぞれ主線路用電極21A、コイル導体22、主線路用電極21Bの配列方向と交わる方向に沿って互いに逆方向に電流が流れるため、主線路用電極21A,21Bには、コイル導体21のコイル開口付近において、同方向(積層体10の積層方向の上側から下側、または、その逆)の磁束が発生する。コイル導体21のコイル開口付近において、主線路用電極21A,21Bのそれぞれによる磁束は互いに強めあい、コイル導体21のコイル開口を通過する。この磁束が、コイル導体22に鎖交し、コイル導体22に誘導起電力が生じ、誘導起電力に応じてコイル導体22には誘導電流が流れる。
実施形態1と同様に、仮に、積層ずれにより主線路用電極21Aとコイル導体22との距離が離れて、主線路用電極21Aとコイル導体22との磁気結合が弱くなった場合でも、主線路用電極21Bとコイル導体22との距離は接近し、主線路用電極21Bとコイル導体22との磁気結合は強くなる。したがって、フェライトシートの積層ずれが生じても、主線路用電極21A,21Bと、コイル導体22との磁気結合は略変わらない。このため、主線路用電極21A,21Bに流れる電流の検出感度は低下せず、電流を確実に検出できる。
図17は、電流検出素子2を用いた電流検出回路を示す図である。図17に示す、インダクタL31,L32は主線路用電極21A,21Bのインダクタンス成分である。
電流検出素子2は、主線路用電極21A,21Bがマザー基板の差動線路の途中に配置されるよう、マザー基板に実装される。また、電流検出素子2の実装電極14H,14Gは、主線路用電極21A,21Bを流れる電流を検出するための検出用回路に接続される。検出用回路は、キャパシタC4および負荷RLである。コイル導体22に誘導電流が流れたとき、負荷RLの電圧を検出することで、主線路用電極21A,21Bに流れる電流、すなわち、マザー基板の差動線路に流れる電流を検出できる。コイル導体22が二つの主線路用電極21A,21Bの間に配置されていることで、コイル導体22が二つの主線路用電極21A,21Bの周囲に生じる磁束をともに検出するので、検出感度を高めることができる。
以下、電流検出素子2の別の構造例について説明する。
図18(A)、図18(B)、図19(A)および図19(B)は、電流検出素子2の別の例を示す断面図である。
図18(A)に示す電流検出素子2Aの主線路用電極21A,21Bは、多層構造としてある。この場合、主線路用電極11のインダクタンス成分、抵抗成分を小さくできる。
図18(B)に示す電流検出素子2Bの主線路用電極21A,21Bは、多層構造とし、端面が積層体10の壁面から露出するように形成されている。この場合、主線路用電極21A,21Bを積層体10の内側に形成して、主線路用電極21A,21B全てがフェライトシートで囲まれている場合と比べ、主線路用電極21A,21B周りの透磁率は低いため、主線路用電極21A,21Bのインダクタンス成分を小さくできる。さらに、主線路用電極21A,21B周りの磁気飽和を防止できる。
図19(A)に示す電流検出素子2Cの積層体10は、一部に非磁性体層10Aを有している。主線路用電極21A,21Bおよびコイル導体22の一部は、この非磁性体層10Aに形成されている。この場合、主線路用電極21A,21Bのインダクタンス成分を小さくできる。さらに、主線路用電極21A,21B周りの磁気飽和を防止できる。
図19(B)に示す電流検出素子2Dの積層体10は、一部に非磁性体部10B,10Cを有している。非磁性体部10B,10Cは、主線路用電極21A,21Bが形成された領域に形成されている。そして、主線路用電極21A,21Bは非磁性体部10B,10C内に形成されている。また、コイル導体22の一部は非磁性体部10B,10C内に形成されており、残りの部分は磁性体部内に形成されている。この場合、主線路用電極21A,21Bとコイル導体22との磁気結合を強くできる。
また、本実施形態では、主線路用電極21A,21Bの間に一つのコイル導体22を形成しているが、コイル導体の数は一つ以上であってもよい。例えば、コイル導体22が形成された領域に、主線路用電極21A,21Bに沿って2つのコイル導体を形成してもよい。2つのコイル導体を形成する場合、これらは互いに独立していてもよいし、図4で説明したように、一端同士が接続され、直列接続された一つのコイルを形成していてもよい。
(実施形態3)
図20(A)は、実施形態3に係る電流検出素子3の平面図、図20(B)は、図20(A)のXX−XX線における断面図である。
電流検出素子3は積層体10を備えている。積層体10の一方主面には、図3に示す実装電極14A〜14Hが形成されている。
積層体10の一のフェライトシートの主面には、直線状の主線路用電極31A,31Bが形成されている。主線路用電極31A,31Bは、その端面が積層体10の壁面から露出するよう形成されている。主線路用電極31A,31Bに隣接してコイル導体32A,32Bが配置される。主線路用電極31A、コイル導体32A,32B、主線路用電極31Bの配列方向と交わる方向における、主線路用電極31Aの一方端付近は、層間接続導体(不図示)を介して、例えば、図3に示す実装電極14A,14Dに接続され、他方端付近は、実装電極14C,14Fに接続されている。また、主線路用電極31A、コイル導体32A,32B、主線路用電極31Bの配列方向と交わる方向における、主線路用電極31Bの一方端付近は、層間接続導体(不図示)を介して、実装電極14A,14Dに接続され、他方端付近は、実装電極14C,14Fに接続されている。
すなわち、主線路用電極31A,31Bは電流検出素子3の内部またはマザー基板上等の外部で並列に接続された伝送線路であり、電流検出素子3が一の伝送線路途中に実装された場合、その伝送線路を分流する。したがって、主線路用電極31A,31Bには、それぞれ主線路用電極31A、コイル導体32A,32B、主線路用電極31Bの配列方向と交わる方向に沿って同方向に電流が流れる。2つの主線路用電極31A,31Bを形成することで、電流検出素子3における主線路のインピーダンスを低くできる。
電流検出素子3は、コイル導体32A,32Bを備えている。コイル導体32A,32Bは、巻回軸を積層体10の積層方向にし、かつ、積層方向からの平面視で、主線路用電極31A,31Bの間において、主線路用電極31A,31Bの配列方向に沿って配置されるように形成されている。また、コイル導体32A,32Bは、上側の一端で接続導体33により互いに接続されている。これにより、コイル導体32A,32Bは一つのコイルを形成している。一つのコイルを形成しているコイル導体32A,32Bの一端は、積層体10の実装面の実装電極14Gに接続され、他端は実装電極14Hに接続されている。
なお、コイル導体32A,32Bは、コイル導体12A,12Bの構造がともに左手の螺旋であり、図4で説明したように、コイル導体12A,12Bは互いに上側の一端を接続することで直列に接続される。
以上のように構成された電流検出素子3において、主線路用電極31A,31Bに電流が流れると、主線路用電極31A,31Bとコイル導体32A,32Bとは磁気結合する。詳しくは、コイル導体32Aは主に主線路用電極31Aと磁界結合し、コイル導体32Bは主に主線路用電極31Bと磁界結合する。主線路用電極31A,31Bに流れる電流の方向は一致しているため、主線路用電極31Aと主線路用電極31Bとの間の位置においては、主線路用電極31Aに流れる電流より生じる磁束と、主線路用電極31Bに流れる電流より生じる磁束とは、磁束の向きが異なる。
コイル導体32Aのコイル開口を通過する磁束は、主線路用電極31Bより主線路用電極31Aに近接しているため、主線路用電極31Bに流れる電流により生じる磁束より主線路用電極31Aに流れる電流より生じる磁束の方が多い。コイル導体32Bのコイル開口を通過する磁束は、主線路用電極31Aより主線路用電極31Bに近接しているため、主線路用電極31Aに流れる電流により生じる磁束より主線路用電極31Bに流れる電流により生じる磁束の方が多い。よって、コイル導体32A,32Bの一方には、主線路用電極31A,31Bにより生じた積層方向の上側から下側に向かう磁束が鎖交し、他方には下側から上側に向かう磁束が鎖交する。主線路用電極31A,31Bとコイル導体32A,32Bとが磁気結合することで、コイル導体32A,32Bに誘導起電力が生じ、誘導起電力に応じてコイル導体32A,32Bに誘導電流が流れる。コイル導体32A,32Bに生じる誘導電流の流れる方向は、主線路用電極31A,31Bおよびコイル導体32A,32Bを積層方向から平面視したとき、それぞれ逆回りである。したがって、主線路用電極31A,31Bとコイル導体32A,32Bとの磁気結合が弱まることはない。
なお、本実施形態では、コイル導体32A,32Bの構造がともに左手の螺旋(left-handedhelix)、つまり同じ巻回方向であり、コイル導体32A,32Bは互いに上側の一端を接続することで直列に接続され、主に主線路用電極31Aに流れる電流により生じた磁束がコイル導体32Aのコイル開口を通過して、主線路用電極31Aとコイル導体32Aとが磁気結合し、主に主線路用電極31Bに流れる電流により生じた磁束がコイル導体32Bのコイル開口を通過して、主線路用電極31Bとコイル導体32Bとが磁気結合し、主線路用電極31A,31Bとコイル導体32A,32Bとが磁界結合するようにしているが、コイル導体32A,32Bの構造や接続の仕方は、これに限らない。主線路用電極31A,31Bとコイル導体32A,32Bとが磁界結合することでコイル導体32A,32Bに生じる誘導電流が打ち消しあわないように、コイル導体32A,32Bの構造の巻回方向と接続の仕方を選択する。積層方向からの平面視で、コイル導体32A,32Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向がともに同じであるならば、コイル導体32A,32Bの一方の巻き始めと他方の巻き始めとが接続される、または一方の巻き終わりと他方の巻き終わりとが接続され、コイル導体32A,32Bは直列接続される。積層方向からの平面視で、コイル導体32A,32Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向が互いに逆であるならば、コイル導体32A,32Bの一方の巻き始めと他方の巻き終わりとが接続され、コイル導体32A,32Bは直列接続される。
本実施形態では、コイル導体32A,32Bとは直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。コイル導体32Aとコイル導体32Bとを並列接続することにより、抵抗を下げて損失を抑えることができる。コイル導体32A,32Bが並列に接続される場合のコイル導体32A,32Bの構造の巻回方向と接続の仕方は次の通りである。積層方向からの平面視で、コイル導体32A,32Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向がともに同じであるならば、一方の巻き始めと他方の巻き終わりとが接続され、さらに一方の巻き終わりと他方の巻き始めとが接続され、コイル導体32Aとコイル導体32Bとの2つの接続部間に検出用回路が接続される。積層方向からの平面視で、コイル導体32A,32Bの構造の巻き始めから巻き終わりまでの巻回方向が互いに逆であるならば、コイル導体32A,32Bの一方の巻き始めと他方の巻き始めとが接続され、さらに一方の巻き終わりと他方の巻き終わりとが接続され、コイル導体32Aとコイル導体32Bとの2つの接続部間に検出用回路が接続される。
実施形態1,2と同様に、仮に、積層ずれにより主線路用電極31Aとコイル導体32Aとの距離が離れて、主線路用電極31Bとコイル導体32Bとの磁気結合が弱くなった場合でも、主線路用電極31Bとコイル導体32Bとの距離は接近し、主線路用電極31Bとコイル導体32Bとの磁気結合は強くなる。したがって、フェライトシートの積層ずれが生じても、主線路用電極31A,31Bと、コイル導体32A,32Bとの磁気結合は略変わらない。このため、主線路用電極31A,31Bに流れる電流の検出感度は低下せず、電流を確実に検出できる。
また、主線路用電極31A,31Bの端面は、積層体10の壁面から露出しているため、主線路用電極31A,31B周りの透磁率は低いため、主線路用電極31A,31Bのインダクタンス成分を小さくできる。さらに、主線路用電極31A,31B周りの磁気飽和を防止できる。
以下、電流検出素子3の別の構造例について説明する。
図21(A)、図21(B)および図21(C)は、電流検出素子3の別の例を示す断面図である。
図21(A)に示す電流検出素子3Aの主線路用電極31A,31Bは、多層構造としてある。この場合、主線路用電極31A,31Bのインダクタンス成分、抵抗成分を小さくできる。
図21(B)に示す電流検出素子3Bの積層体10は、一部に非磁性体層10Aを有している。主線路用電極31A,31Bおよびコイル導体32A,32Bの一部は、非磁性体層10Aに形成されている。この場合、主線路用電極31A,31Bのインダクタンス成分を小さくできる。
図21(C)に示す電流検出素子3Cの積層体10は、主線路用電極31A,31Bが形成される領域それぞれに非磁性体部10B,10Cを有している。主線路用電極31Aおよびコイル導体32Aの一部は、非磁性体部10Bに形成されている。主線路用電極31Bおよびコイル導体32Bの一部は、非磁性体部10Cに形成されている。主線路用電極31A,31Bとコイル導体32A,32Bとの磁気結合を強くすることができる。また、主線路用電極31A,31Bのインダクタンス成分を小さくできる。
図22(A)は、別の例を示す電流検出素子3Dの平面図、図22(B)は、図22(A)のXXII−XXII線における断面図である。この例では、コイル導体32A,32Bは、図17に示す接続導体33で接続されていない。すなわち、コイル導体32A,32Bは、それぞれ独立したコイルである。この場合、コイル導体32A,32Bの構造の巻回方向は、同じ方向の巻回であってもよいし、逆の方向の巻回であってもよい。コイル導体32A,32Bを独立させることで、電流検出素子3Dから、2つの電流検出結果を得ることができる。
電流検出素子3D内で、コイル導体32A,32Bは接続されていない。このため、電流検出素子3Dを実装するマザー基板(不図示)等で、コイル導体32Aとコイル導体32Bとの接続を変えることができる。例えば、図4で説明したように、コイル導体32Aとコイル導体32Bとをコイル導体32A,32Bに生じる誘導電流が互いに打ち消しあわないように直列接続することにより、インダクタンスを上げて検出感度を高めることができる。また、コイル導体32A,32Bを並列に接続する場合であっても、前記したように、コイル導体32Aとコイル導体32Bとをコイル導体32A,32Bに生じる誘導起電力が互いに打ち消しあわないように並列接続することにより、抵抗を下げて損失を抑えることができる。
なお、本実施形態では主線路用電極31A,31Bが同方向に電流が流れるように接続されているが、その限りではない。主線路用電極31Aと主線路用電極31Bとには、逆方向に電流が流れるように接続されていてもよい。その場合、コイル導体32A,32Bに生じる誘導電流の流れる方向は、主線路用電極31A,31Bおよびコイル導体32A,32Bを積層方向から平面視したとき、それぞれ逆回りである。よって、コイル導体32Aとコイル導体32Bとをコイル導体32A,32Bに生じる誘導電流が互いに打ち消しあわないように直列接続、または並列接続することにより、主線路用電極31Aと主線路用電極31Bに流れる電流を検出することができる。直列接続および並列接続する場合の接続の仕方は、前記の通りである。
(実施形態4)
図23(A)は、実施形態4に係る電流検出素子4Aの平面図、図23(B)は、電流検出素子4Aの別の例を示す平面図である。
電流検出素子4Aは、複数のフェライトシートが積層され、焼結されてなる積層体40を備えている。フェライトシートの主面は、積層方向からの平面視で正方形状である。このフェライトシートの対角線上に、主線路用電極41が形成されている。主線路用電極41は、積層されたフェライトシートの複数層に形成されてもよいし、一層のみに形成されていてもよい。
電流検出素子4Aは、コイル導体42A,42Bを備えている。コイル導体42A,42Bは、積層方向からの平面視で、主線路用電極41の一部と重なっている。コイル導体42A,42Bは、主線路用電極41が形成された層とは異なる層に形成されている。コイル導体42A,42Bは、積層体40の積層方向において、主線路用電極41の上側に形成されていてもよいし、下側に形成されていてもよい。また、主線路用電極41の上下それぞれに形成され、層間接続導体で接続された構成でもよい。
主線路用電極41に電流が流れると、発生した磁束がコイル導体42A,42Bのコイル開口に鎖交し、コイル導体42A,42Bに誘導起電力が生じ、誘導起電力に応じてコイル導体42A,42Bには誘導電流が流れる。なお、コイル導体42A,42Bの構造の巻回方向は、同じ方向の巻回であってもよいし、逆の方向の巻回であってもよい。コイル導体42A,42Bを独立させることで、電流検出素子4Aから、2つの電流検出結果を得ることができる。
図23(B)に示す電流検出素子4Bでは、図23(A)に示す電流検出素子4Aのコイル導体42A,42Bを接続導体43で接続し、一つのコイルを形成している。この場合、コイル導体42A,42Bに生じる誘導電流の方向は、主線路用電極41およびコイル導体12A,12Bを積層方向から平面視したとき、それぞれ逆回りである。主線路用電極41に電流が流れると、発生した磁束がコイル導体42A,42Bに鎖交し、コイル導体42A,42Bには誘導電流が流れる。
図23(A)および図23(B)に示す電流検出素子4A,4Bでは、主線路用電極41の幅を広く形成できるため、主線路のインピーダンスを低くすることができる。
(実施形態5)
この例では、実施形態1で説明した電流検出素子1を備えた電力伝送システムについて説明する。
図24は、実施形態5に係る電力伝送システム100の回路図である。
電力伝送システム100は、送電装置101と受電装置201とを備えている。受電装置201は負荷回路211を備えている。この負荷回路211は充電回路および二次電池を含む。なお、二次電池は受電装置201に対し着脱式であってもよい。そして、受電装置201は、その二次電池を備えた、例えば携帯電子機器である。携帯電子機器としては携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯音楽プレーヤ、ノート型PC、デジタルカメラなどが挙げられる。送電装置101は、載置された受電装置201の二次電池を充電するための充電台である。
送電装置101は、直流電圧を出力する電源Vinを備えている。直流電源Vinは、商用電源に接続されるACアダプタである。直流電源Vinには、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路117が接続されている。インバータ回路117の出力側にはアクティブ電極114およびパッシブ電極115が接続されている。アクティブ電極114およびパッシブ電極115には、インバータ回路117から出力された交流電圧が印加される。アクティブ電極114およびパッシブ電極115は、本発明に係る「送電側結合部」の一例である。
インバータ回路117とアクティブ電極114およびパッシブ電極115との間には、インダクタL11を含むLC共振回路が形成されている。
また、インバータ回路117とパッシブ電極115との間には、電流検出素子1が設けられている。電流検出素子1の主線路用電極11が、インバータ回路117とパッシブ電極115との間の電力伝送ラインの一部となっている。そして、この電流検出素子1は、図示しないマザー基板に実装され、キャパシタC1および負荷RLに接続されている。実施形態1で説明したように、負荷RLの電圧を検出することで、インバータ回路117とパッシブ電極115との間に流れる電流(以下、送電電流と言う)を検出できる。
受電装置201は、アクティブ電極214およびパッシブ電極215を備えている。送電装置101に受電装置201を載置(装着)した場合、アクティブ電極114,214同士、パッシブ電極115,215同士がそれぞれ間隙を介して対向する。この対向配置により、アクティブ電極114,214同士、パッシブ電極115,215同士が電界結合する。この結合を介して送電装置101の電極と受電装置201の電極が非接触の状態で送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される。
受電装置201のアクティブ電極214およびパッシブ電極215には、整流平滑回路213が接続されている。アクティブ電極214およびパッシブ電極215は、本発明に係る「受電側結合部」の一例である。整流平滑回路213は、アクティブ電極214およびパッシブ電極215に誘起された電圧を整流および平滑する。整流平滑回路213には電力変換回路212が接続されている。電力変換回路212は、整流平滑回路213により整流および平滑された電圧を、安定化された所定電圧に変換し、負荷回路211へ供給する。
整流平滑回路213とアクティブ電極214およびパッシブ電極215との間には、インダクタL21を含むLC共振回路が形成されている。このLC共振回路は、送電装置101のLC共振回路と同じ共振周波数に設定されている。送電装置101および受電装置201の共振回路の共振周波数を同じにすることで、効率よく電力伝送が行える。
この電力伝送システム100において、送電装置101の送電電流と、送電装置101のLC共振回路への入力電圧V1を検出することで、インバータ回路117から受電装置201側を視たインピーダンスを検出できる。インピーダンスを検出することで、例えば、送電装置101に受電装置201が載置されたか否かを判定できる。送電装置101に受電装置201を載置した場合、送電装置101と受電装置201との共振回路が結合して、複合共振による周波数ピークが現れる。そして、インピーダンスの周波数特性を検出し、周波数ピークの有無を検出することで、受電装置201の載置の有無を判定できる。なお、電流検出素子1を用いて送電装置101の送電電流のみを検出した場合においても、電流の大きさ、または位相の変化により、受電装置201の載置の有無の判定または異常等の状態検知を行うことができる。
なお、図24では、電流検出素子1は、インバータ回路117とパッシブ電極115との間に設けているが、インバータ回路117とアクティブ電極114との間に設けてもよい。また、電流検出回路は、図7に示す回路としてもよい。
また実施形態5では、電界結合方式の電力伝送システムにおいて電流検出素子を備えた構成を示したが、磁界結合方式の電力システムに電流検出素子を備えた構成であってもよい。図25は、磁界結合方式の電力伝送システム100Aの回路図である。この例では、電力伝送システム100Aが備える送電装置101は、共振回路を構成するキャパシタC5およびコイルL5を有している。また、受電装置201は、共振回路を構成するキャパシタC6およびコイルL6を有している。そして、コイルL5,L6が磁界結合することで、送電装置101から受電装置201へ電力が伝送される。
(実施形態6)
この例では、実施形態2で説明した電流検出素子2を備えた電力伝送システムについて説明する。
図26は、実施形態6に係る電力伝送システム200の回路図である。電力伝送システム200は送電装置102と受電装置202とを備えている。送電装置102は、共振回路を構成するキャパシタC5およびコイルL5を有している。また、受電装置202は、共振回路を構成するキャパシタC6およびコイルL6を有している。そして、コイルL5,L6が磁界結合することで、送電装置102から受電装置202へ電力が伝送される。
送電装置102はインバータ回路118および電流検出素子2を備えている。電流検出素子2は、インバータ回路118の出力側に設けられ、電流検出素子2の主線路用電極21A,21Bが、インバータ回路118の出力側の電力伝送ラインの一部となっている。電流検出素子2は、図示しないマザー基板に実装され、キャパシタC4および負荷RLに接続されている。
インダクタL31は主線路用電極21Aのインダクタンス成分である。インダクタL32は主線路用電極21Bのインダクタンス成分である。コイル導体22のインダクタL22が、インダクタL31とインダクタL32とに磁界結合することにより、主線路用電極21A、21Bの電流を検出することができる。そして、実施形態2で説明したように、負荷RLの電圧を検出することで、インバータ回路118から出力される交流電流(以下、送電電流と言う)を検出できる。電流検出素子2は、インバータ回路118のハイ側とロー側との両方の出力電流を検出している。そのため、インバータ回路118からの出力が差動出力であった場合であっても、電流検出素子2を挿入したことによる電圧バランスの変動が抑えられる。送電装置102の送電電流と、送電装置102の共振回路への入力電圧V1を検出することで、インバータ回路118から受電装置202側を視たインピーダンスを検出できる。