以下、図面を参照しながら、施肥装置を搭載した乗用型の田植機について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の施肥装置を搭載した7条植の乗用型田植機1の側面図であり、図2は、その平面図である。
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
この田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置100の本体部分が設けられている。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10及び左右一対の後輪11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に前輪10がそれぞれ取り付けられている。
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギアケース18がローリング自在に支持され、その後輪ギアケース18から外向きに突出する左右後輪車軸に後輪11がそれぞれ取り付けられている。
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(静油圧式無段階変速機)23を介してミッションケース12に伝達される。該HST23の出力は、後述のボンネット32に設ける変速レバー24の操作量によって増減されると共に、該変速レバー24の操作によって前後進及び走行停止が切り替えられる構成とする。該変速レバー24の操作量は、レバーポテンショメータ24aが検出する操作角度から判断される。
なお、該レバーポテンショメータ24aが後進操作を検出すると、前記苗植付部4を上昇させると共に、苗の植付と施肥を停止させる。
ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて左右一対の前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18に伝達されて左右一対の後輪11,11を駆動する。
また、外部取出動力は、ミッションケース12の機体右側に構成する植付クラッチケース25aに伝達され、該植付クラッチケース25aに内装する植付クラッチ25が入状態であれば、植付伝動軸26を経由して苗植付部4へ伝達される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10を操向操作する操縦ハンドル34が設けられている。該操縦ハンドル34の操作量は、ハンドルポテンショメータ34aで検出されており、操作量が旋回走行開始と見做す設定値に到達すると、苗植付部4を上昇させ、苗の植付及び施肥を停止させると共に、操作量が旋回走行終了と見做し得る設定値に到達すると、苗植付部4を下降させ、苗の植付及び施肥を開始させる制御を行う。また、ボンネット32で覆われた内部には、制御用のコントローラー210が収納されている。
エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視で門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、それらの先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢を保持したまま昇降する。
該昇降油圧シリンダ46の伸縮、即ち昇降リンク装置3の上下回動による苗植付部4の昇降操作は、前記変速レバー24に設ける昇降ボタン24bによって行うものとする。
なお、昇降リンク装置3が所定高さまで回動すると、施肥クラッチ及び後述の施肥クラッチ460が連動して切状態となり、苗や肥料が空中で放出され、余分に消費されることを防止する構成とする。
本願では7条植の構成である前記苗植付部4の構成について説明する。まず、機体左右方向の植付伝動フレーム50に、駆動力を後方に伝動する植付伝動ケース50a…を左右方向に間隔を空けて配置する。該植付伝動ケース50a…は、本願では4つ設ける。また、前記植付伝動フレーム50の上部には、苗を積載して左右往復移動する苗載せ台51を設ける。該苗載せ台51は、本願では左右方向に苗を7条分積載すべくフェンスで区切っており、各条ごとに苗を所定のタイミング、具体的には苗載せ台51が左右端部に到達したときに作動して苗を下方に移動させる苗送りベルト51b…を備えている。
そして、機体左右両端の植付伝動ケース50aと、機体左側端部の植付伝動ケース50aに隣接する植付伝動ケース50aの左右両側に、苗載せ台51から苗取り爪52aで苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置52を各々設けると共に、機体右側端部の植付伝動ケース50aに隣接する植付伝動ケース50aの左右どちらか一側、本願では左側一側には、苗植付装置52を一つだけ設ける。該苗植付装置52は、内装する偏心ギア機構(図示省略)によって楕円軌跡を描いて回転するものであり、回転軸(図示省略)を中心点として対象となる位置に苗取り爪52aを各々装着する。
なお、前記苗載せ台51の下部には、前記苗取り爪52aが通過する苗取り口51aを形成し、苗植付装置52の回転により設定量の苗を掻き取りながら移動できる構成としている。
また、前記苗植付部4の下部で且つ左右方向の中央位置付近にセンターフロート55を設け、該センターフロート55の左右両側にサイドフロート56を各々配置する。機体右側のサイドフロート56は、前記苗植付装置52を左右一側にのみ設ける植付伝動ケース50aの下方に設け、機体左側のサイドフロート56は、機体左側端部の植付伝動ケース50aと機体左側端部の植付伝動ケース50aに隣接する植付伝動ケース50aの左右間隔部に設ける。さらに、該左右のサイドフロート56,56の左右両外側で、且つ左右両側の植付伝動ケース50aの下方には、各々アウターフロート57を設ける。
該センターフロート55と左右のサイドフロート56とアウターフロート57を圃場面に接地させた状態で機体を進行させると、該各フロート55,56,57は圃場面の凹凸を整地しながら滑走する。この整地跡に、苗植付装置52が苗が植え付ける。
前記各フロート55,56,57は、圃場表土面の凹凸に対応して前端側が上下動する如く回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動がフロートセンサ (図6参照)により検出され、その検出結果に対応して昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブ(図示省略)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
次に、施肥装置100について説明する。
図1に示すとおり、施肥装置100は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を、各苗植付条毎に設けられている繰出装置61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でセンターフロート55、サイドフロート56及びアウターフロート57に取り付けた施肥ガイド63まで導き、施肥ガイド63の前側に設けた作溝体64によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む構成となっている。前記施肥ホース62は、繰出装置61の下部に後下がり傾斜姿勢で形成する放出筒部72の後側端部の外周を覆い、ホースクランプ(図示省略)等で締め付けて装着する。
なお、本願は前記苗植付部4の植付条数を7条としているので、施肥装置100も7条それぞれに同時に肥料を供給する必要があるので、前記繰出装置61と施肥ホース62は各々七つ設ける。
そして、図2、図4、図6及び図8で示すとおり、ブロアモータ66で駆動するブロア67で発生させた搬送風が、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成となっている。さらに、前記ブロア67には搬送風になる空気を吸入する吸気ダクト69の端部を接続している。該吸気ダクト69は、前記繰出装置61を挟んでエアチャンバ68とは反対側(機体後側)に左右方向に向けて配置すると共に、吸気ダクト69の基部を機体左右方向中央部で、前記エンジン20の後方に配置している。前記エアチャンバ68は、前記肥料ホッパ60の前側下方に配置し、前記放出筒部72の前側端部を筒内に進入させて連結させ、搬送風が各施肥ホース62に供給される構成とする。
さらに、図8に示すとおり、前記繰出装置61は、肥料ホッパ60に残留する肥料を後部の排出窓61bから排出可能な構成とし、排出される肥料が移動する左右方向の排出ダクト70を前記肥料ホッパ60の後側下方に設ける。該排出ダクト70の基部側は前記ブロア67に接続されており、施肥装置100の機体右側端部に設ける送風切替レバー71の操作により、搬送風がエアチャンバ68と排出ダクト70のどちらに移動するかを選択可能に構成している。そして、前記排出ダクト70の端部には、肥料を機外に排出する排出口77を設ける。該排出口77は目の細かい網状とし、搬送風は吹き抜け、肥料は排出口77に沿って下方に配置するバケツ等の回収容器に落下する構成となる。搬送風が抜けにくい形状では、肥料が搬送風によって排出口77の内部に押し付けられ、塊になって出てこなくなる問題があるが、網状とすることでこの問題を解消できる。
上記により、エンジン20の排熱を吸気ダクト69が吸引することにより、肥料の搬送風を高温化することができるので、搬送中の肥料から水分が除去され、肥料同士が塊になったり、エアチャンバ68や施肥ホース62等の搬送経路に張り付いたりして、圃場に供給される量が不足することが防止される。
そして、肥料ホッパ60に貯留されている肥料も暖められることにより、貯留中の肥料に含まれる水分も除去することができるので、いっそう肥料が塊になることや張り付くことが防止され、肥料を設定量ずつ供給可能になり、施肥精度が向上する。
また、図4及び図8に示すとおり、前記肥料ホッパ60の左右方向の中央部付近の下方、具体的には左右中央の施肥ホース62と該施肥ホース62の右側に隣接する施肥ホース62の左右間には、作業者が施肥量を調節する施肥量調節機構400が配置されている。また、該繰出調節機構400は、前記エンジン20の周囲を覆うエンジンカバー30の後方で、且つフロアステップ35の後部に設けるリアステップ37の上方に間隔を空けて配置される。
該繰出調節機構400は、図3、図4及び図6で示すとおり、施肥伝動機構300を介して伝達される駆動力を利用して肥料を設定量ずつ繰り出すための繰出装置61から繰り出される施肥量を調節するための機構である。施肥伝動機構300、繰出調節機構400については、更に後述する。
前記施肥装置100は、図4及び図11で示すとおり、前記繰出装置61、ブロア67、エアチャンバ68及び排出ダクト70等を装着する左右方向の施肥フレーム101を備えており、該施肥フレーム101には、四ヶ所に取付部(図示省略)を下方に突出させて形成するか、または装着する。また、前記メインフレーム15の後側には、後部梁フレーム16が左右方向を長手方向として配置されており、該後部梁フレーム16の左右両端部よりも機体内側には、機体後方に突出する施肥装置100の第1取付プレート16a,16aが各々装着されている。そして、該左右の第1取付プレート16a,16aの左右間には、第2取付プレート16b,16bを機体後方に突出させて設ける。なお、該第2取付プレート16b,16bは施肥装置100の荷重の大部分を受ける部材であり、前記左右の第1取付プレート16a,16aは取付を主目的としている。
前記施肥フレーム101の取付部のうち、機体左右外側よりも機体内側寄り、具体的には左右端部の繰出装置61及び施肥ホース62に隣接する機体内側の繰出装置61及び施肥ホース62の近傍に位置する取付部と、前記取付プレート16a,16aは、上下方向を長手方向とする第1施肥支持プレート102,102で各々連結する。
そして、該第1施肥支持プレート102,102の後部には後下がり傾斜部102aを各々形成する。これにより、前記左右の後輪11,11が跳ね上げた泥土が第1施肥支持プレート102に付着しても、この後下がり傾斜部102aによって機体後側下方に落下しやすくなり、泥土の除去作業に要する時間と労力が軽減される。
また、左右中央、本願では左右どちらから数えても四条目に位置する繰出装置61及び施肥ホース62の下方には、前記左右の第2取付プレート16b,16bを連結する正面(背面)視で門型のジョイントプレート103を設け、該ジョイントプレート103の上部に左右の第2施肥支持プレート104,104を設け、該第2施肥支持プレート104,104と四条目に位置する繰出装置61及び施肥ホース62の左右両側に位置する取付部を連結する。なお、該左右の第2施肥支持プレート104,104のうち、機体右側に位置するものは、施肥量調節装置400の近傍に配置される。
なお、側面視において、前記第1施肥支持プレート102,102及び第2施肥支持プレート104,104の後方で、且つ後輪11の上方には、前記吸気ダクト69が配置される。また、該吸気ダクト69は、前記施肥ホース62の下方に配置されるものとする。
前記左右の第1施肥支持プレート102,102、門型のジョイントプレート103及び第2施肥支持プレート104,104を介して後部梁フレーム16と施肥フレーム101を連結することにより、肥料ホッパ60やエアチャンバ68をリアステップ37上面よりも上方に位置させることができるので、作業者が誤って肥料ホッパ60やエアチャンバ68を蹴り、肥料ホッパ60やエアチャンバ68が変形したり破損したりすることが防止される。
また、エアチャンバ68がリアステップ37上面よりも上方に位置することにより、作業者がエアチャンバ68を踏んで破損させることを防止できると共に、エアチャンバ68内の搬送風の流れを乱し、設定量の肥料が供給されない植付作業条が発生することを防止でき、苗の生育の安定化が図られる。
そして、施肥装置100とリアステップ37の上下間隔部に作業者の足を差し込むことができるので、作業者は安定した姿勢で苗植付部4や施肥装置100に近付くことができ、苗や肥料の補充作業の能率や、作業の安全性が向上する。
さらに、エアチャンバ68がリアステップ37上面よりも上方に位置することにより、エアチャンバ68や放出筒部72の肥料詰まりの除去や掃除を行うスペースを広く確保できるので、作業能率やメンテナンス性が向上する。
また、左右の第1施肥支持プレート102,102を機体左右両端部よりも機体内側位置で施肥フレーム101の取付部と連結させることにより、リアステップ37の活用範囲が左右端部まで拡がるので、苗植付部4の左右両端部にも苗の補充作業が行いやすくなり、作業能率が向上する。
そして、左右の第2取付プレート16b,16bを連結するジョイントプレート102に左右の第2施肥支持プレート104,104を設けたことにより、施肥装置100の荷重が集中しやすい左右方向の中央部の支持強度を高めることができるので、メインフレーム15や施肥フレーム101の耐久性が向上すると共に、施肥装置100の中央が荷重で下方に撓むことが防止され、条毎に肥料の供給量の差が生じることが防止される。
前記苗植付部4には整地ローター27(第1整地ローター27aと第2整地ローター27bの組み合わせを単に整地ローター27と言うことがある)が取り付けられている。
また、苗載せ台51は、苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の上端部においてスライド可能に支持された支持ローラー65aにより左右方向にスライドする構成である。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく左右一対の予備苗枠38が設けられている。
以下、施肥装置100の各部の構成について更に説明する。
図3は、本実施の形態の施肥装置100を田植機の前方から視た時の概略正面図である。また、図6は、本実施の形態の施肥装置100の繰出装置61の左側面断面図である。
前記肥料ホッパ60の下部は施肥条数分(7条分)に分岐して漏斗状の流下部60bを形成しており、該流下部60bの下部が各繰出装置61の上端に接続されている。
図3から図6に示すとおり、繰出装置61は、肥料ホッパ60内の肥料を下方に繰り出す2個の第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bを内蔵している。該第1及び第2繰出ロール73A,73Bは、外周部に溝状の凹部74が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転する構成で嵌合している。なお、繰出軸75の駆動源については、図4を用いて後述する。
また、前記肥料ホッパ60の下部の流下部60bの下方と繰出装置61の間には、枠形状のシャッタケース80を各条に設け、該シャッタケース80の前後に形成された左右方向に長く上下方向に短いシャッタ穴80aに、板形状の施肥シャッタ81を摺動自在に設ける。
図6及び図9(a)(b)に示すとおり、該施肥シャッタ81は前後方向に長い、平面視で長方形の板状の部材で構成し、前端側を曲げて摺動操作用の取っ手81aを形成すると共に、該取っ手81aの直後に、前記流下部60bと略同じ形状の肥料落下孔81bを形成する。そして、該肥料落下孔81bよりも後側は、肥料の落下を防止する落下規制部81cとする。
なお、該落下規制部81cは、上面に溝や突起等を形成して平坦でない形状としておくと、肥料が載ったときに圧力を分散でき、肥料が自重によって固まり、流下部60bから肥料が落下しなくなることを防止できる。
上記の施肥シャッタ81を設けたことにより、施肥シャッタ81を摺動させて流下部60bに落下規制部81cを臨ませておくと、作業圃場への移動時に繰出装置61に肥料が溜まることを防止できるので、肥料が繰出装置61内で塊になり、第1繰出しロール73Aや第2繰出しロール73Bに設定量の肥料が供給されず、肥料不足による作物の生育不良の発生が防止される。
従来は、肥料ホッパ60に投入された肥料は幅の狭い流下部60bを経由して、同様に幅の狭い繰出装置61に落下しており、肥料の自重によって塊になり、落下しないことがあった。特に、流下部60bや繰出装置61の内部の壁面に集中的に付着してブリッジ化が生じると、ブリッジ化した箇所に落下した肥料はそのまま積もってしまい、設定量の肥料が供給されなくなる問題があった。
また、繰出装置61に肥料の詰まり等が生じ、メンテナンス作業の必要が生じたときに、施肥シャッタ81によって肥料の落下を規制することができるので、肥料ホッパ60に肥料を残したまま後方回動させることができ、メンテナンス作業が能率よく行える。
従来は、メンテナンス作業時には肥料ホッパ内の肥料を一旦取り除く必要があり、メンテナンス作業に要する時間を余分に要していたが、上記構成により、作業時間の短縮が図られる。
また、前記第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bが図 の矢印方向に回転することにより、肥料ホッパ60から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。
繰出装置61の吐出口61aには、前端部がエアチャンバ68の背面部に前後方向に挿入連結されて、後端部が繰出装置61の吐出口61aに連通する接続管(図示省略)が接続されている。
一方、エアチャンバ68の左端部はエア切替管を介してブロア67に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管から繰出装置61の吐出口61aを通過する際に、肥料を巻き込みながら施肥ホース62側に吹き込まれる構成となっている。
また、図示例の第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの凹部74の数は6個であり、両者の凹部74の位置が隣り合わない様にするために、その位相は異ならせて配置されている。これにより、第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの各凹部74が交互に肥料を繰り出すこととなり、吐出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。
第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの何れかを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの凹部74の位相を等しくすることも出来る。これで、圃場に点状に肥料を散布するときに適用可能となる。
また、繰出装置61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
前記繰出軸75を駆動回転させる駆動力の供給経路について説明する。図3及び図6に示すとおり、機体右側の後輪ギアケース18の内部で、且つ機体内側に設けられる施肥クラッチ460にクランク形状の施肥伝動出力軸461を設け、該施肥伝動出力軸461に上下方向に往復移動する施肥伝動駆動ロッド462を設ける。
そして、該施肥伝動駆動ロッド462から駆動力の伝達方向を機体前後方向に変更する中継ロッド463を左右方向に配置し、前記施肥伝動駆動ロッド462と中継ロッド463の間に、前記施肥伝動駆動ロッド462の上下動に連動して揺動連結支点ピン464aを支点として前後両端部が上下方向に揺動連結プレート464を配置すると共に、中継ロッド463の他端部に駆動力を後述する繰出回動アーム467に伝達するサブ駆動ロッド465を配置することにより、施肥伝動機構300が構成される。
該サブ駆動ロッド465は、肥料ホッパ60の機体後部側の下方に配置されており、該サブ駆動ロッド465の上端部に、前記繰出軸75を施肥量に合わせて駆動回転させる繰出回動アーム467の後端部を連結する。そして、該繰出回動アーム467の前端部と前記繰出軸75を、施肥駆動アーム468で連結する。
図10(a)(b)に示すとおり、前記繰出回動アーム467は細長い略直方体形状の筐体であり、該の左右側面には、左右の側壁部を貫通させて長孔467aを形成している。該長孔467aは前後方向に亘って形成されており、この長孔467a内に繰出回動ピン469を貫通させて配置する。該繰出回動ピン469は、長孔467aの上下端部に接触可能な径とし、該繰出回動ピン469の前後位置を変更することにより、前記繰出回動アーム467の回動支点位置が変更されて前記施肥駆動アーム468の前端部側の回動量の大小、言い換えると往復回動に要する時間を変化させ、所定時間当たりに前記第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bに複数個所形成された凹部74から肥料が落下される回数を増減され、これにより施肥量が変更される。
例えば、図10(b)に示すとおり、前記繰出回動ピン469を機体前側に移動させるほど、前記繰出回動アーム467の前端部側の回動量は小さく、即ち往復回動に要する時間が短くなり、施肥駆動アーム468の回動量が連動して小さくなるので、繰出軸75が回転する頻度が増加する。これにより、所定時間における第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの回転角度が大きくなり、落下位置に到達する凹部74の数を増加させることができるので、圃場に落下する肥料が増加する。
一方、図10(a)に示すとおり、前記繰出回動ピン469を機体前側または後側に移動させるほど、前記繰出回動アーム467の前端部側の回動量は大きく、即ち往復回動に要する時間が長くなり、施肥駆動アーム468の回動量が連動して大きくなるので、繰出軸75が回転する頻度が減少する。これにより、所定時間における第1繰出ロール73A及び第2繰出ロール73Bの回転角度が小さくなり、落下位置に到達する凹部74の数が減少するので、圃場に落下する肥料が減少する。
上記のとおり、繰出回動ピン469の前後位置を変更することにより、施肥装置100の施肥量を調節することができる。
この施肥量の調節作業を行うべく、図3、図4及び図11に示すとおり、ボールネジ420を回転させる施肥量調節ノブ410を該ボールネジ420の前端部に設け、該ボールネジ420の表面に形成された螺旋形状の溝に螺合して高速で機体前後方向に移動するボールナット430を設け、該ボールナット430に前記繰出回動ピン469を設ける。これにより、繰出調節機構400が構成される。
前記繰出回動ピン469は、前記ボールナット430の上下方向中央部よりも機体上側寄りに配置し、側面視で前記ボールネジ420とオフセットすると共に、該ボールネジ420よりも上方に位置する構成とする。また、ボールネジ420及び施肥量調節ノブ410は、前記エアチャンバ68及びエンジンカバー30よりも上方に配置される構成になる。
上記の配置構成により、施肥量調節ノブ410がエアチャンバ68及びエンジンカバー30よりも上方に配置されることにより、施肥量調節ノブ410を操作する際、作業者の手や指の動きが妨害されにくくなるので、施肥量の調節作業能率が向上すると共に、メンテナンス性が向上する。
また、繰出回動ピン469よりもボールネジ420が機体下方に位置することにより、繰出調節機構400の重量を機体下側に寄せることができるので、機体の低重心化が図られて走行姿勢が安定すると共に、苗の植付精度や施肥精度が向上する。
次に、苗の植付と施肥の入切を連動させる構成について説明する。
苗の植付と施肥の入切は、可能な限り同時に行われないと、肥料が供給されず、肥料不足により成長が他よりも遅れる苗が発生したり、苗の無い場所に肥料が供給されたりする問題が生じる。
この問題に対応すべく、図11に示すとおり、前記後部梁フレームの機体右側に機体前側に向かって突出する連動切替ステー90を設け、該連動切替ステー90の機体後側に植付クラッチ25と施肥クラッチ460を入切させるクラッチ入切モータ91を設ける。該クラッチ入切モータ91は正逆転モータとする。また、前記連動切替ステー90の機体前側に、該クラッチ入切モータ91に設ける伝動ギア91aと噛み合うラックギア92aを上側に設ける回動アーム92を左右方向の回動軸92bを中心として上下方向に回動可能に設けると共に、該回動アーム92の回動量を検出する入切ポテンショメータ93を設ける。
そして、前記回動アーム92の下側と前記植付クラッチケース25aに亘って連動入切ロッド94を設け、該回動アーム92の上下回動によって連動入切ロッド94が前後方向に摺動する構成とする。なお、該連動入切ロッド94は、前記植付伝動軸26の機体右側上方に位置し、該植付伝動軸26と平行に配置する。
さらに、前記連動入切ロッド94の前後間に下方に向かって突出する取付ステー95を設け、該取付ステー95と施肥クラッチ460を入切する施肥クラッチシフタ460aを入切ワイヤ96で連結し、連動入切ロッド94を機体前側にスライドさせると入切ワイヤ96が施肥クラッチシフタ460aを切側に移動させると共に、植付クラッチ25が切状態に切り替わる構成とする。
なお、前記クラッチ入切モータ91は、図7に示すとおり、前記昇降ボタン24bによる苗植付部4の昇降操作が行われたとき、前記ハンドルポテンショメータ34aが操縦ハンドル34の旋回操作を検出したとき、あるいはレバーポテンショメータ24aが変速レバー24の後進操作を検出したときに作動し、入切ポテンショメータ93が回動アーム92の所定量の回動を検出すると停止する構成とする。
前記連動入切ロッド94は、クラッチ入切モータ91が作動して回動アーム92が回動すると前後方向に摺動するので、取付ステー95も前後方向に移動する。これにより、入切ワイヤ96が施肥クラッチ460を切状態にする側、即ち引っ張られる際に入切ワイヤ96に弛みが生じにくくなるので、植付クラッチ25と施肥クラッチ460が切状態になるタイミングに遅れが生じることが防止され、余分な苗や肥料の消費が防止される。
また、取付ステー95のスライド方向が前後方向であることにより、スライド時に取付ステー95の上下位置は変わらないので、下方の部材と干渉することがなく、摩耗や破損が防止される。
なお、クラッチ入切モータ91で回動アーム92を回動させることにより、施肥クラッチ460は入状態、植付クラッチ25は切状態という状態でクラッチ入切モータ91を停止させることができるので、圃場端で旋回走行した後に苗植付部4を下降させて苗の植付と施肥を再開させる際、施肥装置100を先に駆動状態にすることができる。
苗植付部4による苗の植付は、植付クラッチ25が入状態になり、植付伝動軸26の駆動力が各植付伝動ケース50a…まで伝動されるとすぐに開始される。一方、施肥装置100による施肥には、施肥クラッチ460が入状態になり、各繰出装置61…に伝動されて作動した後、肥料が施肥ホース62…を経由して施肥ガイド63…に到達するまでのタイムラグが存在する。これにより、植付クラッチ25と施肥クラッチ460を同時に入状態にすると、旋回直後の数回分の植付苗には、肥料が供給されなくなる問題がある。
この問題に対応すべく、上記のとおり施肥クラッチ460は入状態、植付クラッチ25は切状態となるタイミングで一旦クラッチ入切モータ91を停止させ、その後植付クラッチ25が入状態になるまでクラッチ入切モータ91を作動させることで、旋回走行後の植付開始時に肥料を施肥ガイド63…に到達させることができるようになる。
これにより、肥料が供給されない箇所の発生が防止されるので、圃場全体の苗の生育が均一になり、後工程の作業、例えば肥料の追加(追肥)や収穫の時期が統一され、収穫作物の品質の均一化が図られる。
次に、エンジン20の排熱を含んだ空気をブロア67に取り込む吸気ダクト69の形状について説明する。
図8に示すとおり、吸気ダクト69は第1施肥支持プレート102,102及び第2施肥支持プレート104,104の後方で、後輪11と施肥ホース62…の上下間に配置されている。
この構成では、該吸気ダクト69と後輪11の上下間隔が狭くなるので、後輪11が付着した泥土によって大径化すると、泥土が吸気ダクト69に付着したり、泥土によって吸気ダクト69が圧迫されることがある。
吸気ダクト69に泥土が付着すると、作業収量後に泥土を除去する作業が必要になり、作業に要する時間と労力が増大するだけでなく、付着した泥土が取り込まれる空気の熱を奪い、搬送風の温度を低下させてしまい、肥料や肥料の搬送経路の乾燥効果が弱まる問題が生じる。
また、吸気ダクト69が圧迫されると、吸気ダクト69が破損するおそれがあると共に、内部を移動する空気の流れが変化し、ブロア67が安定した勢いの搬送風を供給できなくなり、各施肥ホース62…に均等に肥料が供給されず、施肥精度が低下する問題や、肥料の排出に必要な風量が確保できず、排出ダクト70内に肥料が堆積する問題が生じる。
この問題を解決すべく、図13に示すとおり、吸気ダクト69の下部に、後輪11の凸状の円弧面に対応する凹状の円弧面69aを形成し、吸気ダクト69と後輪11の上下間隔が広くなる構成とする。
上記構成により、後輪11が付着した泥土により大径化しても、吸気ダクト69に泥土が付着しにくくなるので、吸気ダクト69に取り込まれた空気の温度が低下することが防止され、ブロア67が発生させる搬送風により肥料や肥料の搬送経路が乾燥して肥料の付着が生じにくくなり、肥料の安定した供給が可能になる。
また、吸気ダクト69が接触した泥土に圧迫されることを防止できるので、吸気ダクト69内の空気の流れが乱れることが防止され、施肥ホース62…に供給される搬送風が安定し、各条の施肥量が安定すると共に、排出ダクト70内に肥料が堆積することが防止され、余った肥料の排出作業の能率が向上する。
また、吸気ダクト69と施肥ホース62…の上下間隔も狭いので、苗植付部4を下降させると施肥ホース62…が吸気ダクト69の上面や背面と接触して折れ曲がり、他の部分よりも径が小さくなることがある。
これにより、施肥ホース62…内の搬送風の流れが変化すると、肥料が施肥ガイド63…に到達するまでの時間が不安定になり、肥料が過剰に供給される箇所や、肥料の供給量が減少する箇所が発生し、苗の生育が不安定になる問題がある。
この問題を解決すべく、図12に示すとおり、吸気ダクト69の上部に凸状の円弧面69bを形成して側面視で山型とし、接触した施肥ホース62…が角度をつけて折れ曲がりにくい構成とする。
上記構成により、施肥ホース62…内の搬送風の流れが安定するので、肥料が施肥ガイド63…に到達するまでの時間が一定になり、圃場に供給される施肥量や苗の生育が安定する。
なお、図14に示すとおり、前記吸気ダクト69に形成する凹状の円弧面69aと凸状の円弧面69bは両方同時に形成してもよく、その場合は両方の効果が同時に発揮される。
次に、肥料ホッパ60のホッパ蓋60aの開閉量について説明する。
図1、図6及び図12から図14に示すとおり、肥料ホッパ60の上部は、機体後側の左右方向の回動ヒンジ(図示省略)により上下方向に回動するホッパ蓋60aにより覆われており、肥料の補充作業時は該ホッパ蓋60aを上方回動させると共に、作業中はホッパ蓋60aを下方回動させて上方を塞ぐ構成としている。また、前記苗植付部4の苗載せ台51の上方には、走行車体2から作業者が苗を投入しやすくすべく、苗補充ガイド51c…を各々配置している。
前記肥料ホッパ60とホッパ蓋60aは、開閉連携ワイヤ60wで連結されており、ホッパ蓋60aが支点越えする位置で該開閉連携ワイヤ60wがホッパ蓋60aの回動を規制すると共に、作業者がホッパ蓋60aを回動させないと閉まらない構成としている。
これにより、ホッパ蓋60aの上方回動量が多い状態、即ち肥料ホッパ60とホッパ蓋60aが形成する角度が略90度となる垂直姿勢、あるいは肥料ホッパ60とホッパ蓋60aが形成する角度が鈍角となる後上り傾斜姿勢では、苗植付部4が所定高さ以上に上昇すると、苗補充ガイド51c…がホッパ蓋60aに接触してしまう。
例えば、作業者が二人であるとき、一方の作業者が肥料を補充しているときにもう一人が誤って苗植付部4の上昇操作をしてしまうと、苗補充ガイド51c…がホッパ蓋60aを押して回動させ、肥料が肥料ホッパ60内に投入できず、周囲にこぼれてしまうことがある。
また、ホッパ蓋60aは肥料ホッパ60と同じく樹脂製であり、重量を抑えるべく薄手に構成しているので、苗補充ガイド51c…と接触すると破損し、穴が開いてしまうおそれがある。ホッパ蓋60aに穴が開くと、雨天の作業時にはこの穴から雨水が入り込み、肥料同士をくっつかせて塊にしたり、施肥ホッパ60の内部に張り付かせたりして、肥料が貯留ホッパ60から各繰出装置61…に流下しなくなる、あるいは各繰出装置61…が設定量の肥料を繰出せなくなり、肥料の供給量が不安定になる問題がある。
この問題を解消すべく、図15に示すとおり、肥料ホッパ60とホッパ蓋60aの間に設ける開閉連携ワイヤ60wの長さを短くし、ホッパ蓋60aを開放する際、支点越えすると同時に回動を規制することで、ホッパ蓋60aが約90度回動した姿勢より機体後方には回動しない構成とする。
上記構成により、苗植付部4の昇降時に苗補充ガイド51c…とホッパ蓋60aが干渉し合わない構成となるので、肥料の補充中にホッパ蓋60aが閉まって肥料の補充が妨げられることが防止され、作業能率が向上する。
また、苗補充ガイド51c…との接触によりホッパ蓋60aに穴が開くことを防止できるので、ホッパ蓋60aから肥料ホッパ60内に雨水が入り込むことが防止され、肥料が塊になったり肥料ホッパ60内に張り付いたりして、設定量の肥料が施肥されなくなることが防止される。