JP6519080B2 - 繊維製品用抗ウイルス組成物 - Google Patents
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Description
近年は、エンベロープ型ウイルスだけではなく、非エンベロープ型ウイルスに対しても効果の高い処方が提案されている。例えば、特開2013−40617号公報には、ジアルキルジメチルアンモニウム塩やアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩と、ベンジルアルコールとを組み合わせる方法が開示されている。特表2005−514427号公報には、特定のカチオン界面活性剤とアルカノールアミンを組み合わせる方法が開示されている。特開2010−53091号公報には、特定の4級アンモニウム化合物を特定のpHで用いる方法が開示されている。特開平2−115105公報や国際公開第2012/090989号には、特定の4級アンモニウム化合物を含む組成物は抗ウイルス活性を有することが開示されている。
しかしながら、これらの文献においては、ウイルスに直接薬剤を作用させる方法にて効果が確認されているにすぎず、繊維上のウイルスに対する抗ウイルス活性について具体的な検討はなされていない。
従って、本発明の課題は、繊維上のウイルスに対し、しかもエンベロープ型ウイルスだけではなく非エンベロープ型ウイルスに対しても優れた抗ウイルス活性を有する組成物を提供することである。
本発明は、このような新規な知見に基づいて完成されたものである。
(A)ポリオキシアルキレン基を有するカチオン界面活性剤
(B)水溶性溶剤
発明の一実施態様によれば、前記繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、(D)水溶性金属塩を更に含有することができる。
本発明の一実施態様において、前記繊維製品用抗ウイルス剤組成物を繊維上のウイルスに適用することを含む、ウイルス不活化方法が提供される。
本発明の一実施態様において、前記繊維製品用抗ウイルス剤組成物で繊維製品を処理することを含む、繊維上のウイルスを不活化するための繊維製品の処理方法が提供される。
本発明の一実施態様において、繊維製品に抗ウイルス活性を付与するための、前記繊維製品用抗ウイルス剤組成物の使用が提供される。
本発明の一実施態様によれば、更に、キレート剤及び/又は水溶性金属塩を併用することにより、より優れたウイルス不活化効果を示すことができる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物に含まれる(A)成分は、ポリオキシアルキレン基を有するカチオン界面活性剤である。
カチオン界面活性剤にはウイルス不活化効果があることが知られているが、繊維上では効果が低下して十分な抗ウイルス効果が得られない場合がある。本発明においては、カチオン界面活性剤がポリオキシアルキレン基を分子内に有することで、繊維上で優れた抗ウイルス効果を付与することができる。このようなカチオン界面活性剤のポリオキシアルキレン基は、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐オキシアルキレン単位から構成され、当該オキシアルキレン単位の平均付加モル数は0.1〜20である。
R1R2R3R4N+ X- (1)
式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルケニル基、−(AO)nR、−CH3、−CH2CH3又はベンジル基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルキル基又は炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの他の少なくとも1つは−(AO)nRである。ここで、Aは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキレン基から選ばれ、Aは、1つの−(AO)nR中、1種又は2種以上の基(単位)を含んでいてもよい。nは、(AO)の平均付加モル数を表し、0.1〜20であり、RはH又はCH3である。X-は対イオンを表し、無機酸若しくは有機酸の1価のアニオン又は当量の多価のアニオンである。例えば、X-としては、ハロゲンイオン、アルキル硫酸イオン、有機酸の一価のアニオンなどが挙げられ、具体的には、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオンなどが挙げられる。
式(1)中、好ましくは、R1、R2、R3及びR4のうちの1つ又は2つが、炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルキル基又は炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、R1、R2、R3及びR4のうちの他の1つ又は2つが、−(AO)nRである。
抗ウイルス効果の観点からは、R1、R2、R3及びR4のうち2つが炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、その場合のアルキル基又はアルケニル基は炭素数6〜14が好ましく、さらに好ましくは炭素数8〜12である。また、抗ウイルス効果の観点から、Aは炭素数2〜3のアルキレン基が好ましく、特に炭素数2が好ましい。nは0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜5である。RはHが好ましい。X-は、Cl-以外であることが好ましく、有機酸の1価のアニオンであることがさらに好ましい。
また、抗ウイルス効果を高める観点から、対イオンはプロピオン酸などの有機酸であることが好ましい。特に好ましい構造としては、ロンザジャパン株式会社から商品名Bardap26として販売されているジデシルメチルポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネートが挙げられる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物において、(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物中の(A)成分の配合量は、組成物の全質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜2質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%が好ましい。(A)成分の配合量が0.01質量%以上であるとウイルス不活化効果が十分であり、10質量%以下であると噴霧性状が良好に保たれる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物に含まれる(B)成分は、水溶性溶剤である。
(B)成分は、(A)成分の繊維への浸透性を向上させて、繊維内部にまで(A)成分の効果をもたらすことを可能にし、抗ウイルス効果を高めることができる。
(B)成分としては、繊維製品用処理剤組成物に一般的に使用されているものを使用することができる。本明細書で言う「水溶性溶剤」とは、任意の比率で水と混ぜて透明に混ざるものを指す。具体的には、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3の1級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のグリコール類;及びグリセリンなどの炭素数3〜8の多価アルコール類等が挙げられる。浸透性向上効果の観点から、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3の1級アルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物において、(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物中における(B)成分に対する(A)成分の比率は、10/1〜1/500であり、好ましくは1/1〜1/250、より好ましくは1/1〜1/100、さらに好ましくは1/10〜1/100である。(A)成分と(B)成分の比率において、10:1より(B)成分の比率が大きいと浸透効果が十分であり、1:500よりも(B)成分の比率が大きいと使用者がむせてしまう場合がある。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、(C)成分として、キレート剤を更に含み得る。(C)成分を配合することで抗ウイルス効果を高めることができるだけでなく、消臭効果を付与することができる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物において(C)成分として用いられるキレート剤は、金属イオンを補足する能力を有するものであればよく、特に限定されない。なお、(A)成分に含まれることのある有機酸以外に更に配合されるものを(C)成分とする。具体例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ホスホン酸類、トリポリリン酸、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)テトラ酢酸、クエン酸、マレイン酸、ポリアクリル酸、イソアミレン−マレイン酸共重合体、ケイ酸、グルコン酸、ヒドロキシベンジルイミジノ酢酸、イミジノ酢酸及びこれらの塩が挙げられる。(C)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
抗ウイルス効果を高める観点から、(C)成分は、下記式(I)〜(IV)で表されるアミノカルボン酸系の化合物であることが好ましい。
MIは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、アルカノールアミンからなる群より選ばれる1種を示す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。MIとしては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
mI及びnIは、それぞれ0〜2の整数である。mIは、好ましくは0又は1である。nIは、好ましくは0又は1である。mIとnIとがいずれも0の場合、AIは、CH3である。
前記式(I)で表される化合物のなかで好適なものとしては、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β−アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、又はこれらの塩が挙げられる。なかでもMGDA又はその塩がより好ましい。
QIIは、水素原子又は炭素数8〜22の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す。
RIIは、水素原子又は水酸基を表す。
nIIは、0または1を表す。
前記式(II)で表される化合物のなかで好適なものとしては、イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、又はこれらの塩が挙げられ、なかでもIDS又はその塩がより好ましい。
AIIIは、H、メチル基又は(CH2)mIII−COOXIIIを表す。AIIIとしては、(CH2)mIII−COOXIIIが好ましい。
mIIIは、1〜3のいずれかの数を表す。
XIIIは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はNH4を表す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
nIIIは1〜3のいずれかの数を表す。
オクチルアミノプロピオン酸ナトリウム、デシルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ミリスチルアミノプロピオン酸ナトリウム、パルミチルアミノプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアルキル又はアルケニルアミノプロピオン酸塩;
N-オクチルグリシンナトリウム、N-デシルグリシンナトリウム、N-ラウリルグリシンナトリウム、N-ミリスチルグリシンナトリウム、N-パルミチルグリシンナトリウム、N-オレイルグリシンナトリウム等のN-アルキル又はアルケニルグリシン塩;
N-オクチル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-デシル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ドデシル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ミリスチル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-パルミチル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-オレイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム等のN-アルキル又はアルケニル-N-メチル-β-アラニン塩;
オクチルアミノジ酢酸ナトリウム、デシルアミノジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム、パルミチルアミノジ酢酸ナトリウム、オレイルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキル又はアルケニルアミノジ酢酸塩;及び
オクチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、デシルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリスチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、パルミチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアルキル又はアルケニルアミノジプロピオン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、保存安定性から考えて、アルキル又はアルケニルアミノジ酢酸塩が好ましく、その中でもデシルアミノジ酢酸、ラウリルアミノジ酢酸、ミリスチルアミノジ酢酸、パルミチルアミノジ酢酸又はその塩が好ましく、特にラウリルアミノジ酢酸、ミリスチルアミノジ酢酸、パルミチルアミノジ酢酸又はその塩がより好ましい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物中の(C)成分の配合量は、組成物の全質量に対し、好ましくは0質量%を超え15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であって、また、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。(C)成分の配合量を10質量%以下とすることにより、本発明の組成物を適用した繊維製品にしみ等の変色が発生することを効果的に防ぐことができる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、(D)成分として、2価の水溶性金属塩を更に含み得る。更に(D)成分を含有することで、抗ウイルス効果を高めることができるだけでなく、消臭効果を付与することができる。(D)成分としては、具体的には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の水溶性亜鉛塩;硫酸銅、塩化銅等の水溶性銅塩;硫酸鉄等の水溶性鉄塩;塩化マンガン等の水溶性マンガン塩等があげられる。(D)成分としてこれらの水和物も含まれる。
抗ウイルス効果の観点から、水溶性亜鉛塩又は水溶性銅塩が好ましい。水溶性亜鉛塩としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛がより好ましい。水溶性銅塩としては、硫酸銅及びこれらの水和物が好ましく、硫酸銅水和物がより好ましく、硫酸銅5水和物が更に好ましい。
(D)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合、亜鉛塩を含むのが好ましい。
なお、本明細書において、「水溶性金属塩」とは、25℃の水1Lに10g以上溶解する金属塩を意味する。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物中の(D)成分の配合量は、組成物の全質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%である。ただし、(D)成分が水和物の場合は、無水物としての配合量を意味する。(D)成分の割合が0.01質量%未満であると消臭効果が充分でなくなる場合がある。(D)成分の割合10質量%を超えると、組成物の保存安定性が悪化したり、対象となる繊維にしみや変色等の不具合が起こる場合がある。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記(A)〜(D)成分以外の他の成分を含有してもよい。
該他の成分としては、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物において配合され得る公知の成分を適宜配合することができる。
非イオン性界面活性剤を含有させることにより、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の分散安定性を高めることができる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物において使用できる非イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(C1〜3)エステルや、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、オキシエチレン基の平均付加モル数が20〜100モルである硬化ヒマシ油、などが挙げられる。中でも、炭素数10〜14のアルキル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が5〜20モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が30〜50モルである硬化ヒマシ油が好ましい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物における非イオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。この範囲にあると、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の分散安定性をより高めることができる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物のpHは特に限定されない。しかしながら、液体組成物の貯蔵安定性や対象の臭気抑制効果を確保するために、上記pH調整剤を用いて液体組成物のpHを一定の範囲に調整することが好ましい。このようなpHの範囲は、例えば、下限が好ましくは3以上、上限は好ましくは8以下、より好ましくは6.5以下である。pHが上記範囲内であると、タバコ臭の悪臭消臭効果を高めることができる。また、pHの下限が好ましくは4以上、より好ましくは5.5以上、上限が好ましくは9以下であると、枕カバー臭や体臭などの悪臭消臭効果を高めることができる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の粘度は特に限定されないが、10mPa・s以下であることが好ましい。スプレー容器に入れて使用する場合には5mPa・s以下であることがより好ましい。なお、ここで示す粘度はB型粘度計(トキメック社製)を用いて、原液を25℃で測定した場合の数値である。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(B)成分である水溶性溶剤に、(A)成分、必要によりシリコーン化合物や非イオン界面活性剤等の任意成分を添加して混合後、水をある程度添加し、次いで任意に(C)成分及び(D)成分を添加し、混合する。その後、必要であれば、水酸化ナトリウムや塩酸、硫酸等のpH調整剤を用い、pHメーター(例えば、Mettler Toledo社製 型番MP230)で、配合物をスターラーにて攪拌したままpHを調整した後、残りの水を添加することにより製造することができる。
また、任意の量の水に、任意に(C)成分と(D)成分を添加攪拌した後、事前に(C)成分と(D)成分と水以外を混合して準備した混合物を添加し、水酸化ナトリウムや塩酸、硫酸等のpH調整剤を用い、pHメーター(例えば、Mettler Toledo社製 型番MP230)で、配合物をスターラーにて攪拌したままpHを調整した後、残りの水を添加することにより製造するという方法もある。
しかしながら、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の製造方法は、これらの方法に限らない。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物を繊維製品に使用する方法としては、繊維製品を組成物中に浸漬した後風乾すること、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に対して組成物を噴霧した後風乾することなどが挙げられるが、特に限定されない。特に、家庭においても手軽に実施できる簡便性や、必要量の組成物を繊維製品の気になる部位にのみ適用できるという経済性の点から、組成物をスプレー容器に収納し、繊維製品に噴霧して使用する方法が好ましい。
本発明は、繊維製品用抗ウイルス剤組成物で繊維製品を処理することを含む、繊維上のウイルスを不活化するための繊維製品の処理方法にも関するが、ここで言う「処理」には、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の原液又はその希釈溶液を滴下、塗布、噴霧等して適用対象となる繊維製品に接触させること、また、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の原液又はその希釈溶液に適用対象となる繊維製品を浸漬することが含まれる。
なお、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、繊維上にすでに存在するウイルスを不活化することができるとともに、予め繊維製品に本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物を適用又は予め繊維製品を本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物で処理しておけば、乾燥後であっても、その後繊維上に付着したウイルスを不活化することができる。即ち、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物によれば、繊維製品に抗ウイルス活性を付与することができると言うこともできる。このように、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、すでにウイルスが存在する繊維上に使用されてもよく、繊維上にウイルスが付着することが予想される繊維製品に予め使用されてもよい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物を、適用対象となる繊維製品に噴霧して使用する場合の噴霧量は、特に限定はされないが、繊維製品の質量に対して、下限が好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、上限は好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。噴霧量がこの範囲内にあると、ウイルス不活化効果及び経済性に優れるので好ましい。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、プラスチック製容器に収納することができる。プラスチック製容器としては、ボトル容器や詰替え用のスタンディングパウチ等が挙げられる。スタンディングパウチとしては、例えば、特開2000-72181号公報に記載のものが挙げられるが、材質としては、内層に100〜250μmの線状低密度ポリエチレン、外層に15〜30μmの延伸ナイロンの二層構造又は15μmの延伸ナイロンを中間層、15μmの延伸ナイロンを外層にした三層構造のスタンディングパウチが保存安定性の点から好ましい。
また、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物により不活化され得るウイルスは、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、一本鎖(+)RNAウイルス、一本鎖(−)RNAウイルス、及び逆転写ウイルスが挙げられる。
本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物により不活化され得るウイルスとしては、例えば、カリシウイルス科、オルトミクソウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科などに属するウイルスが挙げられる。中でも、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、カリシウイルス科に属するウイルスに対する不活化効果に優れている。カリシウイルス科に属するウイルスとしては、ノロウイルス属、サポウイルス属、ラゴウイルス属、ネボウイルス属及びベシウイルス属に属するウイルスが挙げられるが、中でも、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物は、ノロウイルス属に属するウイルス及びベシウイルス属に属するウイルスに対して良好な不活化効果を発揮する。
なお、本発明の繊維製品用抗ウイルス剤組成物におけるウイルス不活化効果は、ウイルスの感染又は増殖能力を除去又は低下させる効果を発揮するものであればよい。
下記のA−1〜A−4を使用した。
・A−1:ジデシルメチルポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネート(ロンザジャパン株式会社、商品名Bardap26)
・A−2:ビス(ポリオキシエチレン)アルキル(C8-18)メチルアンモニウム塩(ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社、商品名エソカード25)
・A−3(比較):塩化ベンザルコニウム(純正化学社製、50%(w/v)品)
・A−4(比較):塩化ジデシルジメチルアンモニウム(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、リポカード210−80E、80%(w/v)品)
下記のB−1〜B−2を使用した。
・B−1:エタノール(関東化学、特級)
・B−2:イソプロパノール(関東化学、特級)
以下のC−1〜C−2を使用した。
・C−1:メチルグリシン二酢酸ナトリウム(BASF社製、純分40%)
・C−2:クエン酸(関東化学、特級)
以下のD−1を使用した。
・D−1:硫酸亜鉛(関東化学、特級)
以下の任意成分を使用した。
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HC40:日本エマルジョン):0.5%
・ポリエーテル変性シリコーン(SH3775M:東レ・ダウコーニング株式会社製):0.2%
・特開2008-7872号公報の実施例に記載の香料組成物a−1−1:0.02%
各成分の配合量の表記は、調製される抗ウイルス剤組成物の総質量に対する各成分の質量%である。
各成分の配合量を、下記表1に記載の通り調整して、次の手順により試料溶液(繊維製品用抗ウイルス剤組成物)を調製した。
実施例、比較例及び参考例で使用した組成物は、表1又は2記載の配合量(質量%)、および上記した任意成分の配合量(質量%)で以下のように調製した。(A)成分、(B)成分、および任意成分を添加し、精製水をある程度添加し、次いで(C)成分および(D)成分を添加した。その後、室温25℃の部屋にてpH測定器(株式会社堀場製作所製 pHメーター 型番F−52、pH電極 型番9615−10D)を用い、組成物を攪拌しながらpHを測定しながら0.1規定の水酸化ナトリウムまたは希硫酸もしくは塩酸を用いてpHを調整し、残りの精製水を添加した。なお、以下の表1において精製水の添加量は、組成物の合計量を100質量%とした場合の残部である。
DOLBECCO'S MODIFIED EAGLE'S MEDIUM(D-MEM、SIGMA社、D6429)に、ペニシリンストレプトマイシン混合液(SIGMA社、P4333)3mL、及び56℃で30分間保温して非働化処理したウシ胎児血清(FBS、Fetal Clone III Hyclone社 SH30109.03)25mLを加え、5%FBS D-MEM培養液を調製した。
T-75細胞培養フラスコ(IWAKI社、75平方センチメートル、270mL、カントネック、3123-075)にて培養したネコ腎細胞(Crandall-Rees feline kidney cell、CRFK、ATCC株CCL-94)の培養上清を捨て、当該フラスコ中に、37℃に保温したダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))を10mL入れて細胞表面を洗浄して排水した。次いで、当該フラスコ中に、37℃のトリプシン-EDTA(GIBCO社、TrypLE Express with Phenol Red 12605-028)を2mL入れて、37℃で2分程度静置し、細胞を当該フラスコから剥した。そこにFBSを含まないD-MEM培養液を8mL入れて細胞を懸濁して抽出し、800rpm×5分間の遠心分離にて細胞を沈澱させた。上清を取り除き、前記のとおり調製した5%FBS D-MEM培養液を約8mL添加して細胞懸濁液を調製した。5%FBS D-MEM培養液10mLをT-75細胞培養フラスコに入れ、前記のとおり調製した細胞懸濁液を2mL添加し、CO2インキュベーターにて37℃で、3〜4日間培養した。
上記したとおり培養したCRFK細胞を、5%FBS D-MEM培養液で1/3〜1/7に希釈し、この希釈液を96穴マイクロプレート(Nunc社、167008)に0.2mLずつ添加し、同様に3〜4日間の培養を行った。
前記ネコ腎細胞の調製に従って準備した、培養細胞が十分に増殖した状態(コンフルエント)のT-75培養フラスコから培養上清を除き、PBS(-) 10mLで2回洗浄を行った。ネコカリシウイルス(Feline calicivirus F9株、FCV、ATCC株VR-782)を、PBS(-)に、TCID50約4log/mLとなるように懸濁し、その懸濁液1mLを当該フラスコ中に添加した。10分おきに攪拌して37℃で1時間培養し、そこにOpti-MEM(GIBCO社、31985-070)を12mL添加し、37℃で培養した。培養時間の目安は約20時間で、細胞培養面積の約90%に細胞変性(CPE)が認められた。その培養上清を回収して4,000rpmで10分間遠心し、その上清を0.2ミクロンメンブレンフィルターにてろ過した。その後、遠心式フィルターユニット(ミリポア社、Amicon Ultra-15、100KDa、50mL容器)に添加して4,000rpmで5分間遠心し、培養上清約80mLを1mL程度に濃縮し、感染価TCID50の常用対数/mLが1×9の溶液(ウイルス濃縮液)を調製した。
なお、ネコカリシウイルスは、ノロウイルスに対する薬剤の不活化作用を実証するために用いられることが広く知られている。
かなきん綿布を0.4gとなるように裁断し、試料溶液を0.2g噴霧し、終夜室内乾燥を行なった。乾燥後に2cm四方となるように裁断し、その10枚をまとめて各試料布とした。
なお、対照として、試料溶液0.2gの代わりに水0.2gを用いたものを準備した。
試料布をSV30バイアルびんに入れて、当該バイアルびん中にウイルス濃縮液を0.2mL滴下して密閉し、25℃で所定の時間放置した。対照として準備した布についても同様の処理を行った。その後、当該バイアルびんに0.1M HEPES(pH7.5)10mLを添加し、ボルテックスミキサーにて1分間撹拌した。撹拌後に得られた懸濁液を40μL抽出し、0.1M HEPES(pH7.5)360μLにて順次10倍希釈した。次いで、上記したとおり96穴マイクロプレート上にてCRFK細胞を培養したものから、5%FBS D-MEM培養液を取り除き、各ウェルに、前記10倍希釈系列の各希釈溶液30μLを添加し、CO2インキュベーターにて37℃で約30分間放置した。その後、各ウェルに、0.2%FBS D-MEM培養液を0.1mL添加し、37℃で3日間培養した。実体顕微鏡にてウイルス感染の有無を観察し、感染価(50%組織培養感染値量、50% tissue culture infective dose、TCID50)を求めた。TCID50は、Hierholzer J.C., Killington R.A., Virus isolation and quantitation, In Mahy B.W.J., Kangro H.O. (ed.), Virology methods manual, Harcourt Brace & Company, London, pp. 25-46 (1996)に記載されている、Behrens・Karber法に従った。
log TCID50=log(1列目の希釈度)−(各希釈列における(変性ウェル数/全ウェル数)の総和−0.5)×log(希釈率)
(対照のlog TCID50値)−(試料溶液のlog TCID50値)
で表し、試料溶液のウイルス不活化能を以下の基準により評価した。その結果を表1に示す。
<評価基準>
× :試料布にウイルス濃縮液を滴下して放置8時間後の抗ウイルス活性値が3.0未満
△ :試料布にウイルス濃縮液を滴下して放置8時間後の抗ウイルス活性値が3.0以上
○ :試料布にウイルス濃縮液を滴下して放置4時間後の抗ウイルス活性値が3.0以上
◎ :試料布にウイルス濃縮液を滴下して放置2時間後の抗ウイルス活性値が3.0以上
◎◎:試料布にウイルス濃縮液を滴下して放置1時間後の抗ウイルス活性値が3.0以上
試料溶液90μLにウイルス濃縮液を10μL入れて、25℃、一定時間、反応させた。その反応溶液40μLを抽出し、反応停止液である2%FBSを含むD-MEM 360μLと混合して反応を停止させた。得られた溶液40μLを抽出し、0.1M HEPES(pH7.5)360μLにて順次10倍希釈した。次いで、上記したとおり96穴マイクロプレート上にてCRFK細胞を培養したものから、5%FBS D-MEM培養液を取り除き、各ウェルに、前記10倍希釈系列の各希釈溶液30μLを添加し、CO2インキュベーターにて37℃、約30分間放置した。その後、各ウェルに、0.2%FBS D-MEM培養液を0.1mL添加し、37℃で3日間培養した。実体顕微鏡にてウイルス感染の有無を観察し、感染価(50%組織培養感染値量、50% tissue culture infective dose、TCID50)を求めた。
ウイルス濃縮液を精製水に添加した場合をコントロールとした。コントロールにおけるlog TCID50/mLは、1×8であった。ウイルス不活性化の評価を、log TCID50/mLが1×2以下となるのに要した、試料溶液(繊維製品用抗ウイルス剤組成物)をウイルス濃縮液と反応させた時間(分)で下記表2に示した。
これに対して、表1の結果からわかるように、水溶性溶剤と組み合わせて繊維製品に適用する場合には、両者の抗ウイルス効果は逆転する。即ち、水溶性溶剤と組み合わせて繊維製品に適用する場合には、Bardap26に代表されるA成分は、塩化ジデシルジメチルアンモニウムよりも優れた抗ウイルス効果を示す。
Claims (9)
- 以下の(A)成分及び(B)成分を含有する繊維製品用抗ウイルス剤組成物。
(A)式(1)で表される、ポリオキシアルキレン基を有するカチオン界面活性剤
R 1 R 2 R 3 R 4 N + X - (1)
(式中、R 1 、R 2 、R 3 及びR 4 のうちの2つが、炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐アルケニル基であり、
R 1 、R 2 、R 3 及びR 4 のうちの他の1つ又は2つが、−(AO) n Rであり、Aは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキレン基から選ばれる1種又は2種以上であり、nは、(AO)の平均付加モル数を表し、0.1〜20であり、RはH又はCH 3 であり、ここでR 1 、R 2 、R 3 及びR 4 のうちの他の1つが−(AO) n Rである場合、R 1 、R 2 、R 3 及びR 4 のうちの残りの1つは−CH 3 、−CH 2 CH 3 又はベンジル基であり、
X - は、無機酸若しくは有機酸の1価のアニオン又は当量の多価のアニオンである。)
(B)炭素数2〜3の1級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる少なくとも1種の水溶性溶剤 - (A)成分の配合量が、組成物の全質量に対し、0.1〜1質量%である、請求項1に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物。
- (C)キレート剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物。
- (D)2価の水溶性金属塩を更に含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物をスプレー容器に充填した、繊維製品用ウイルス不活化用物品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物を繊維上のウイルスに適用することを含む、ウイルス不活化方法。
- 前記適用が、前記繊維製品用抗ウイルス剤組成物を繊維上のウイルスに噴霧することにより行われる、請求項6に記載のウイルス不活化方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物で繊維製品を処理することを含む、繊維上のウイルスを不活化するための繊維製品の処理方法。
- 繊維製品に抗ウイルス活性を付与するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維製品用抗ウイルス剤組成物の使用。
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