JP6517909B1 - 蓄冷/蓄熱シート及び蓄冷/蓄熱シート生成方法 - Google Patents

蓄冷/蓄熱シート及び蓄冷/蓄熱シート生成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロカプセルと熱伝導材料とを熱可塑性樹脂に混合して形成されるシートと、当該シートの一方の面に熱伝導シートとを備えることで、蓄冷/蓄熱効率を向上することができる蓄熱/蓄冷シートを提供する。【解決手段】主材料としての熱可塑性樹脂に、状態変化により蓄冷及び蓄熱を可能とする蓄冷/蓄熱材料が内包されたマイクロカプセル11と、当該マイクロカプセル11よりも熱伝導率が高い熱伝導材料として窒化アルミニウム12とが混合されて形成されるシート体15と、シート体15の一方の面に配設され、前記マイクロカプセル11及び窒化アルミニウム12よりも熱伝導率が高い伝熱シート16とを備えるものである。【選択図】図2

Description

本発明は、マイクロカプセルを利用した蓄冷/蓄熱シートに関する。
物質の状態変化を利用して蓄熱/蓄冷を行うことができる材料(例えば、パラフィン等)をメラミン樹脂等のカプセルで内包したマイクロカプセルが知られており、このマイクロカプセルが混合された断熱材や冷却材が利用されている。
このマイクロカプセルを断熱材や冷却材として利用する際に、マイクロカプセル自体は熱伝導率が良くないため、熱が内部の方まで侵入することができず、マイクロカプセルが潜在的に有する十分な蓄熱/蓄冷の機能を発揮することができないという問題がある。
上記のような問題に関連して、シリコーン樹脂にマイクロカプセルを混合する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に示す技術は、オルガノポリシロキサン(21)と熱伝導性粒子(23,24)と蓄熱材を含み、蓄熱材は融点0〜100℃の蓄熱物質をマイクロカプセル化した蓄熱材粒子(22)であり、オルガノポリシロキサン100重量部に対して熱伝導性粒子(23,24)を100〜2000重量部含み、熱伝導率が0.2〜10W/m・Kであり、この蓄熱性シリコーン材料(20)はシリコーンベースポリマー成分(A)と架橋成分(B)と触媒と熱伝導性粒子と、マイクロカプセル化した蓄熱材粒子(22)を(A+B)成分合計100重量部に対して100〜500重量部を混合し架橋させて得るものである。
なお、シリコーンゴムシートに対してエンボス加工されたエンボスシートでラミネートすることで空気を排除する技術が特許文献2に開示されている。
特開2014−208728号公報 特開2015−65403号公報
特許文献1に示す技術は、蓄熱性シリコーン材料に熱伝導性粒子と蓄熱材とを含むことで、熱伝導の効率を上げているが、蓄熱された熱を放出する手段がないため、処理対象物の冷却を十分に行うことができない。
また、マイクロカプセルと熱伝導性材料とが混合された蓄熱/蓄冷シートを利用する場合に、処理対象物に対して、蓄熱/蓄冷シートが直接接触するように貼着して使用することで、効率よく蓄熱/蓄冷シートを機能させることが可能となる。しかしながら、一般的に蓄熱/蓄冷シートを対象物に貼着する際には、接着剤等の接着層を介在させる必要があり、この接着層により蓄熱/蓄冷効率が下がってしまうため、接着層が熱伝導の抵抗となったり、蓄熱/蓄冷シートと接着剤との間で生じる熱伝導率の変化により、蓄熱/蓄冷シートの蓄熱/蓄冷が下がってしまう場合がある。特許文献1に示す技術においても、対象物に対して貼着して使用するような場合には接着層が必要となり、効率よく蓄熱/蓄冷をすることができない可能性がある。
さらに、マイクロカプセルの比重はシリコーン樹脂に比べて非常に軽いため、特許文献1に示すような割合でマイクロカプセルを混合した場合は、主材料であるシリコーン樹脂にマイクロカプセルを混練する際に大量の空気が混ざってしまい、混合させるのが極めて困難になってしまうという課題を有する。
なお、上記のようにシリコーン樹脂とマイクロカプセルとを混練する際に混ざった空気
やプレスの際にできる空気層により、表面にクレータ状の大きな孔が形成されてしまい、処理対象物との接触面積の減少や製品の性能低下の原因となってしまう。上記に示す特許文献2は、エンボスシートでラミネートすることで空気を排除するものであるが、この技術は、太陽電池モジュールを製造するためのものであり、蓄熱/蓄冷に関するものではない。
本発明は、マイクロカプセルと熱伝導材料とを熱可塑性樹脂に混合して形成されるシートと、当該シートの一方の面に放熱体とを備えることで、蓄冷/蓄熱効率を向上することができる蓄熱/蓄冷シートを提供する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、主材料としての熱可塑性樹脂に、状態変化により蓄冷及び蓄熱を可能とする蓄冷/蓄熱材料が内包されたマイクロカプセルと、当該マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料とが混合されて形成されるシート体と、前記シート体の一方の面に配設され、前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料よりも熱伝導率が高い熱伝導シートとを備えるものである。
このように、本発明に係る蓄冷/蓄熱シートにおいては、主材料としての熱可塑性樹脂に、状態変化により蓄冷及び蓄熱を可能とする蓄冷/蓄熱材料が内包されたマイクロカプセルと、当該マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料とが混合されて形成されるシートと、前記シート体の一方の面に配設され、前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料よりも熱伝導率が高い熱伝導シートとを備えるため、熱可塑性樹脂の熱伝導率が良くない場合であっても、熱伝導材料によりシートの内部にまで確実に熱を伝導してマイクロカプセルの蓄冷/蓄熱機能を最大限に活かすことができると共に、熱伝導シートにより熱を放熱/吸熱して冷却/加熱効果を高めることができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、少なくとも前記熱伝導シートが配設される側の面にエンボス加工がなされているものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、少なくとも前記熱伝導シートが配設される側の面にエンボス加工がなされているため、シートの表面積を大きくして放熱/吸熱の効率を上げることができるという効果を奏する。また、熱可塑性樹脂が、例えばシリコーン樹脂がゲル状態となった自己粘着性を有するような場合は、エンボスの凹部により生じる吸着力を利用して、シートを処理対象物に強固に貼着することが可能になるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記熱可塑性樹脂がゲル状のシリコーン樹脂であり、前記マイクロカプセルが前記シリコーン樹脂に対して80%以下の割合で混合されているものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、ゲル状のシリコーン樹脂に、マイクロカプセルをシリコーン樹脂に対して80%以下の割合で混合することで、ゲル状態のシリコーン樹脂が粘着性を保持することができ、接着剤を使うことなく処理対象物に直接貼着して、蓄熱/蓄冷効果を高めることができるという効果を奏する。
なお、マイクロカプセルを80%よりも高い割合で混合した場合は、シリコーン樹脂のゲル状態を保つことができなくなり、自己粘着性がなくなることが発明者らにより明らかとなった。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記熱伝導性材料が前記熱可塑性樹脂に対して10%以下の割合で混合されているものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、熱伝導性材料が熱可塑性樹脂に対して10%以下の割合で混合されているため、シートの内部にまで効率よく熱を伝導させ、マイクロカプセルの機能を十分に発揮することができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記マイクロカプセルの周囲に前記熱伝導材料が付着しているものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、前記マイクロカプセルの周囲に前記熱伝導材料が付着しているため、より効率よくマイクロカプセルに熱を伝導して蓄冷/蓄熱の効率を上げることができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記熱伝導材料が、前記蓄冷/蓄熱シートの深さ方向に異なる割合で混合されているものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、熱伝導材料が、前記蓄冷/蓄熱シートの深さ方向に異なる割合で混合されているため、シートの表面付近では熱伝導効率を上げ、内部に行くにしたがって徐々に熱伝導効率を下げることとなり、シート内部に効率よく熱を伝導することが可能になるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記熱伝導材料の割合に応じて、前記マイクロカプセルの混合割合が前記蓄冷/蓄熱シートの深さ方向に異なるものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、前記熱伝導材料の割合に応じて、前記マイクロカプセルの混合割合が前記蓄冷/蓄熱シートの深さ方向に異なるため、熱伝導材料が多い領域においてはマイクロカプセルの割合を高くし、熱伝導材料が少ない領域においてはマイクロカプセルの割合を低くすることで、マイクロカプセルの蓄冷/蓄熱効率を格段に向上させることができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記マイクロカプセルの粒径と前記熱伝導性材料の粒径との比率を50:1〜50:1.5とするものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、マイクロカプセルの粒径と熱伝導性材料の粒径との比率を50:1〜50:1.5とするため、熱伝導材料がマイクロカプセルの周囲の細かい隙間に入り込むことが可能となり、効率よく熱を伝導させることができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シートは、前記熱伝導シートが、前記マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料で形成される繊維であるものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、前記熱伝導シートが、前記マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料で形成される繊維であるため、シート表面における放熱/吸熱の効率を上げて、シート全体としての蓄熱/蓄冷効率を上げることができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シート生成方法は、熱可塑性樹脂とマイクロカプセルと当該マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料とを混合して蓄冷/蓄熱シートを生成する蓄冷/蓄熱シート生成方法において、前記熱可塑性樹脂、粉末状の前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料とを脱気しながら混合するものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シート生成方法においては、熱可塑性樹脂とマイクロカプセルと熱伝導材料とをを脱気しながら混合することで、マイクロカプセルの表面に形成される空気を排除して熱可塑性樹脂に確実で且つ分散させて混練することが可能になるという効果を奏する。また、混合中に脱気することで、無駄な空気を予め抜くことができ、樹脂中の空気を排除してプレス時に生じるクレータ状の空気孔を低減することができるという効果を奏する。
本発明に係る蓄熱/蓄冷シート生成方法は、混合された前記熱可塑性樹脂、前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料を表面がエンボス加工された成形板に押圧するものである。
このように、本発明に係る蓄熱/蓄冷シート生成方法においては、混合された前記熱可塑性樹脂、前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料を表面がエンボス加工された成形板に押圧するため、混合中に残留した空気が表面に出現した場合であっても、押圧によりエンボス加工されたシートがその空気を排除してクレータ状の孔をなくすことができるという効果を奏する。また、押圧する際に生じる空気層も同様に排除することが可能となる。
マイクロカプセルの機能を示す図である。 第1の実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートの内部構造を示す模式図である。 第1の実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートの表面形状を示す図である。 第1の実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートの形成工程を示すフローチャートである。 その他の実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおけるマイクロカプセルと熱伝導材料との構造を示す図である。 その他の実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおいて熱伝導材料の混合比率を変化させた場合の構造を示す図である。 その他の実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおいてマイクロカプセルの混合比率を変化させた場合の構造を示す図である。 実施例において、マイクロカプセルの混合割合を変えた場合の室温に対する冷却効果を示すグラフである。 実施例において、熱伝導シートの有無に応じた室温に対する冷却効果を示すグラフである。 実施例において、マイクロカプセルフィラーの混合率に対する蓄冷効果及び吸着力の結果を示す図である。 実施例において、マイクロカプセルの割合に応じた粘着性の程度を示す写真である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートについて、図1ないし図4を用いて説明する。本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートは、熱可塑性樹脂に、状態変化により蓄冷及び蓄熱を可能とする蓄冷/蓄熱材料が内包されたマイクロカプセルと、このマイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料とが混合されて形成されるシート体と、シート体の一方の面に配設され、マイクロカプセル及び熱伝導材料よりも熱伝導率が高い熱伝導シートとを備えるものである。なお、熱可塑性樹脂として、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。また、熱伝導材料として、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等を用いることができる。
図1は、マイクロカプセルの機能を示す図である。マイクロカプセルによる蓄冷/蓄熱は、物質の状態変化の際に必要となるエネルギーを利用するものであり、例えば、パラフィンのような有機化合物を蓄冷/蓄熱材料とし、これをメラミン、ウレタン、アクリル、ゼラチン等のカプセルに内包して形成されている。図1(A)において、周囲の温度が低くなると、蓄冷/蓄熱材料が固体の状態となることで熱を放出する。一方、図1(B)において、周囲の温度が高くなると、蓄冷/蓄熱材料が液体の状態となることで熱を吸収する。すなわち、周囲の温度変化に応じて熱を蓄えたり放出したりすることで、蓄冷/蓄熱を実現することが可能となる。
図2は、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートの内部構造を示す模式図である。図に示すように、蓄冷/蓄熱シート10は、熱可塑性樹脂中にマイクロカプセル11と窒化アルミニウム12とが均等に分散して混合されているシート体15と、このシート体15の一方の面に配設される伝熱シート16とを備える。
上述したように、シリコーン樹脂にマイクロカプセルが混練された蓄冷/蓄熱シート10においては、シート内部にまで十分に熱が伝導せずに、シートの内部に内在するマイクロカプセル11を十分に機能させることができず、結果的にシート全体の蓄冷/蓄熱効率が低下してしまう場合がある。そのため、本実施形態においては、図2に示すように、マイクロカプセル11と併せて、熱伝導性の材料(ここでは、窒化アルミニウム12に相当)を熱可塑性樹脂に混合する。そうすることで、窒化アルミニウム12を介して熱をシートの内部にまで十分に伝導することができ、シートの内部に内在するマイクロカプセル11の機能を十分に活かすことが可能となる。
また、本実施形態においては、シート体15の一方の面に熱伝導シート16が配設されており、この熱伝導シート16は、例えばアルミニウムのように、マイクロカプセル11及び窒化アルミニウム12よりもさらに熱伝導率が高いものである。すなわち、熱伝導シート16をシート体15の一方の面に配設することで、熱伝導シート16を介しての放熱/吸熱が効果的に行われ、蓄冷/蓄熱シート10の蓄冷/蓄熱効果をさらに高めることができる。特に、蓄冷/蓄熱シート10を太陽光パネルの裏面などに熱伝導シート16が外側となるように貼着することで、太陽光パネルの冷却効果を得ることができ、発電効率を上げることが可能となる。
なお、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シート10は、図3に示すように、表面にエンボス加工が施されていてもよい。図3(A)はエンボス加工あり、図3(B)はエンボス加工なしの場合のシート表面の写真である。表面のエンボスは後述する形成工程における成形板により形成することが可能であり、表面積を大きくすることで、吸熱及び放熱の効率を向上させることが可能となっている。
次に、上記蓄冷/蓄熱シートの形成方法について説明する。図4は、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートの形成工程を示すフローチャートである。まず、伝熱シート16となるアルミ板とエンボスフッ素フィルムを重ねて配置した成形板を準備しておく(S1)。熱可塑性樹脂、マイクロカプセル11及び窒化アルミニウム12を準備する(S2)。なお、このとき、第2の実施形態において後述するように、熱可塑性樹脂がシリコーンの場合には、マイクロカプセル11がシリコーンに対して80%以下となるように準備する。S2の材料を混ぜ合わせ、真空混練器にて脱気しながら混練する(S3)。
ここで、マイクロカプセル11の粉末は、熱可塑性樹脂に比べて比重が軽く粒径も小さいため、混練するのが極めて困難となってしまう。すなわち、マイクロカプセル11の周囲に空気層が形成され、それが塊となってしまうため、熱可塑性樹脂に個々のマイクロカプセル11の粉末が十分混練されない。そこで、ステップS3のように、混練中に空気を脱気することでマイクロカプセル11の周囲に形成される空気層を除去し、個々のマイクロカプセル11の粉末が効率よくシリコーン樹脂に混練することが可能となる。また、シート中に空砲が出来てしまうと、熱伝導率が悪くなるため、ステップS3のように脱気することで空砲が形成されるのを防止することが可能となる。
図4に戻って、材料が混練されると、ステップS1で準備した成形板に流し込む(S4)。成形温度80度、成形時間90分で成形処理を行う(S5)。温度が30度以下に下がったらエンボスフッ素フィルムを剥がし、蓄冷/蓄熱シートが完成する。
なお、ステップS1の成形板に材料を流し込むことで、表面にエンボス加工を施すことができる。このとき、熱可塑性樹脂の内部に残留していた空気が押し出されて表面にクレータ状の気泡が出来てしまったり、押圧時には押圧面に空気層が生じてしまい、シートの表面に凹凸が形成されてしまう場合があるが、押圧力を加えることで、エンボス加工を確実に施すと共に、クレータ状の気泡や空気層をエンボスの隙間から除去して空気層が原因となって形成される表面の凹凸をなくすことができる。
また、本実施形態において、窒化アルミニウム12の混合率を熱可塑性樹脂に対して10%以下(熱可塑性樹脂の重量に対して、窒化アルミニウム12の重量が10%以下)となるように混練してもよい。そうすることで、シート内部にまで十分に熱を通しつつ、マイクロカプセル11の蓄冷/蓄熱機能を最大限に機能させることが可能となる。
このように、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおいては、マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料が含まれるため、シートの内部にまで確実に熱を伝導して、熱伝導効率を上げることができると共に、一方の面に熱伝導シートを配設することで、放熱/吸熱効果を高め、蓄冷/蓄熱機能を最大限に機能させることが可能となる。
また、シートの一方の面がエンボス加工されているため、シートの表面積を大きくして放熱/吸熱の効率を上げることができる。
また、熱伝導性材料を熱可塑性樹脂に対して10%以下の割合とすることで、シートの内部にまで効率よく熱を伝導させつつ、マイクロカプセルの機能を十分に発揮することができる。
さらに、熱可塑性樹脂と粉末状のマイクロカプセルとを脱気しながら混合することで、マイクロカプセルの表面に形成される空気を排除して熱可塑性樹脂に確実で且つ分散させて混練することが可能になる。また、混合中に脱気することで、無駄な空気を予め抜くことができ、樹脂中の空気を排除してプレス時に生じるクレータ状の空気孔を低減することができる。
さらにまた、混合された材料をエンボス加工された成形板に押圧することで、混合中に
残留した空気が表面に出現した場合であっても、その空気を排除してクレータ状の孔をなくすことができる。また、シートで押圧する際に生じる空気層も同様に排除することが可能となる。
なお、表面のエンボス加工は必ずしも必要なものではなく、一様に平滑な状態であってもよい。
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートについて説明する。本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートは、熱可塑性樹脂をゲル状のシリコーン樹脂とし、それにマイクロカプセルと熱伝導性材料とを混合して形成されるものである。このとき、マイクロカプセルの混合比率をシリコーン樹脂の80%以下(シリコーン樹脂の重量に対して、マイクロカプセルの重量を80%以下)とすることで、シートに自己粘着性を生じさせるものである。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
本実施形態においては、ゲル状のシリコーン樹脂に対して80%以下の上記マイクロカプセル11を混合することで、蓄冷/蓄熱シート10を形成する。このとき、マイクロカプセル11の混合率が極めて重要な要素であることが発明者らにより明確となった。すなわち、マイクロカプセル11の混合比率が高過ぎるとゲル状のシリコーン樹脂の粘着性がなくなってしまうことが明らかとなった。
シリコーン樹脂の粘着性がなくなると、処理対象物に対して接着剤等の接着層を介して貼着する必要があり、熱伝導率の変化による熱伝導効率の低下を招いてしまう可能性がある。つまり、結果的に自己粘着性により処理対象物に直接貼着する場合に比べて蓄冷/蓄熱の効果が低下してしまう可能性がある。本実施形態においては、マイクロカプセル11の混合比率をシリコーン樹脂の80%以下とすることで、ゲル状のシリコーン樹脂が自己粘着性を維持することが可能となり、処理対象物に対して直接貼着して蓄冷/蓄熱の効果を上げることができる。
なお、処理対象物に対して接触する側の一の面にエンボス加工を施してもよい。そうすることで、エンボス加工の表面の凹凸により生じる吸着力を利用して、処理対象物に強固に貼着することが可能となる。また、他方の面にエンボス加工を施した場合は、第1の実施形態の場合と同様に、シートの表面積を大きくして放熱/吸熱の効率を上げることができる。
このように、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおいては、ゲル状のシリコーン樹脂に、状態変化により蓄熱及び蓄冷を可能とする蓄熱/蓄冷材料が内包されたマイクロカプセルを混合し、マイクロカプセルをシリコーン樹脂に対して80%以下の割合とすることで、ゲル状態のシリコーン樹脂が粘着性を保持することができ、接着剤を使うことなく処理対象物に直接貼着して、蓄熱/蓄冷効果を高めることができる。
(その他の実施形態)
本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートについて、図5ないし図7を用いて説明する。なお、本実施形態において、前記各実施形態と重複する説明は省略する。
本実施形態においては、マイクロカプセル11の周囲に熱伝導材料(例えば、窒化アルミニウム12)が接触して付着している構造を有している。図5は、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおけるマイクロカプセルと熱伝導材料との構造を示す図である。図5に示すように、マイクロカプセル11の周囲に窒化アルミニウム12が直接接触するように付着することで、マイクロカプセル11に効率よく熱を伝えることができ、蓄冷/蓄熱の効率を上げることができる。
なお、図5に示すような構造は、電気的な処理(静電気)や熱処理(加熱)により予めマイクロカプセル11の周囲に窒化アルミニウム12を付着させて一体化し、その状態で前記第1の実施形態に示したような生成工程を行うことを実現することが可能である。
また、本実施形態においては、窒化アルミニウム12の混合比率が、蓄冷/蓄熱シート10の深さ方向に異なる割合で混合されるものであってもよい。すなわち、前記第1の実施形態においては、シリコーン樹脂に対して10%以下の窒化アルミニウム12を均等に分散させて混練する構造としたが、蓄冷/蓄熱シート10の一方の面から他方の面に向かって窒化アルミニウム12の混合比率が変化するような構造であってもよい。
図6は、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおいて熱伝導材料の混合比率を変化させた場合の構造を示す図である。窒化アルミニウム12の混合比率は、図6(A)に示すように、蓄冷/蓄熱シート10の一方の面から他方の面に向かって次第に連続して変化するようにしてもよいし、図6(B)に示すように、蓄冷/蓄熱シート10の一方の面から他方の面に向かって段階的に層状に変化するようにしてもよい。なお、このとき、処理対象物側の面から伝熱シート16側の面に向かって、窒化アルミニウム12の混合比率が低くなるように混合されることが望ましい。
このような構造にすることで、例えば、処理対象物の温度を下げる場合には、蓄冷/蓄熱シート10の貼着面側から高い熱伝導率で熱を吸収し、内部に行くにしたがって徐々に熱伝導率が低下し、吸収した熱がシート内のマイクロカプセル11に十分に蓄熱される。また同時に、伝熱シート16により熱を効率よく放出することができるため、冷却効率を高めることが可能となる。
さらに、本実施形態においては、上述した窒化アルミニウム12の割合に応じてマイクロカプセル11の混合比率を変化させるようにしてもよい。図7は、本実施形態に係る蓄冷/蓄熱シートにおいてマイクロカプセルの混合比率を変化させた場合の構造を示す図である。マイクロカプセル11の混合比率は、図7(A)、(B)に示すように、窒化アルミニウム12の混合比率が高い領域ではそれに対応させて高くする。このような構造にすることで、熱伝導率が高く多くの熱を吸収できる領域においては、マイクロカプセル11も多く内在することとなり、より多くの熱をマイクロカプセル11で蓄熱することが可能となる。
さらにまた、本実施形態においては、マイクロカプセル11の粒径と熱伝導性材料の粒径との比率が50:1〜50:1.5としてもよい。例えば、具体的には、マイクロカプセルの粒径50μmに対して、熱伝導性材料の粒径を1.0μm〜1.5μm程度としてもよい。このような比率の粒径を有することで、マイクロカプセル11の隙間に熱伝導性材料が万遍なく拡散して熱伝導効率を上げることができる。
さらにまた、本実施形態においては、伝熱シート16として繊維状や布状の熱伝導シートを用いるようにしてもよい。また、窒化アルミニウム12の代わりに繊維状の熱伝導材料を用いることもでき、熱可塑性樹脂に繊維を混ぜ込んでシートを形成してもよい。
以上のように、本実施形態に係る蓄熱/蓄冷シートにおいては、シート内部にまで効率よく熱を伝送して熱伝導効率を向上させることができると共に、接着剤を使うことなく処理対象物に直接貼着して、蓄熱/蓄冷効果を高めることができる。
本発明に係る蓄冷/蓄熱シートについて、以下の実験を行った。
(1)マイクロカプセルの混合比率に応じた蓄冷効果の実験
マイクロカプセル11の混合割合に対する蓄冷効果を確認した。図8は、マイクロカプセルの混合割合を変えた場合の室温に対する蓄冷効果を示すグラフである。室温を60度に保った状態で、マイクロカプセル11の混合比率をシリコンに対して、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%と異ならせたシートを作成し、それぞれの温度変化を測定した。
グラフから明らかなように、混合比率が大きくなるほど室温の60度に到達するまでの時間が長くなっている。すなわち、マイクロカプセル11の混合比率を大きくすることで、蓄冷効果を高めることができることが明らかである。なお、実験データに含まれていないものの、マイクロカプセル11を混合することができる最大比率(80%)までは、蓄冷効果がマイクロカプセル11の混合比率に応じて高くなることが確認されている。
(2)熱伝導シートの有無に応じた蓄冷効果の実験
シート体の一方の面に熱伝導シートを貼着した場合の蓄冷効果を確認した。図9は、熱伝導シートの有無に応じた室温に対する蓄冷効果を示すグラフである。室温を60度から0度まで下げた場合に、
(A)マイクロカプセル11の混合比率50%のシート体の一方の面にアルミシートを貼着したもの(以下、「Alシート」という)
(B)マイクロカプセル11の混合比率50%のシート体の一方の面にアルミシートを貼
着して窒化アルミニウムを10%混合したもの(以下、「Alシート+Al10%」とい
う)
(C)マイクロカプセル11の混合比率50%のシート体としたもの(以下、「なし」と
いう)
のそれぞれについて、温度変化を測定した。
グラフから明らかなように、室温の低下に応じて、(B)「Alシート+Al10%」
、(A)「Alシート」、(C)「なし」の順に冷却され、最終的な温度もこの順に低く
なっていることがわかる。
以上のことから、本発明における蓄冷/蓄熱シートはマイクロカプセル11と窒化アルミニウム12により蓄冷/蓄熱効果を発揮することが明確であり、さらに一方の面に伝熱シート16を配設することで、より効果的に放熱/吸熱効果を高めることが可能であることが明らかとなった。
(3)自己粘着性についての実験
粘度が低いポッティング用シリコーンにマイクロカプセル11のフィラーを混合して感触による吸着力を確認した。シリコーンだけの場合は柔らか過ぎて破れてしまうが、マイクロカプセルフィラーを混合することで硬度が上がり破れにくくなる。図10は、マイクロカプセルフィラーの混合率に対する蓄冷効果及び吸着力の結果を示す図である。蓄冷効果は、マイクロカプセル11の割合が増えるに連れて効果が上がり、80%以上になると、マイクロカプセルの混合自体が困難となる。一方、吸着力はマイクロカプセル11の割合が増えるに連れて下がり、80%程度以上になるとほぼ自己粘着力がなくなってしまう。
また、自己粘着力を確認するために、室温60度の環境下で、垂直に立てた鉄板に張り付く時間をマイクロカプセル11の割合ごとに実験したところ、80%以下では1時間以上張り付くことができるが、80%より大きくなると1時間以上張り付くことができなかった。
さらに、図11は、マイクロカプセル11の割合に応じた粘着性の程度を示す写真である。図11(A)はマイクロカプセル11が0%の場合、図11(B)はマイクロカプセル11が40%の場合、図11(C)はマイクロカプセル11が80%の場合である。写真にあるように、マイクロカプセル11が0%のときは、自己粘着性が非常に高いが、引っ張るとすぐに破れてしまい取扱いが非常に難しいものとなる。マイクロカプセル11が40%のときは、自己粘着性が高く、多少引っ張っても破れることなく弾性力で元に戻るため、非常に取扱いが容易である。また、マイクロカプセル11が80%より大きいときは、自己粘着性が低く、引っ張ってもほとんど伸びない。つまり、壁面等に所定時間張り付いて維持することが困難な状態となってしまう。
以上のことから、本発明における蓄冷/蓄熱シートは、熱可塑性樹脂をシリコーン樹脂とした場合に、マイクロカプセル11の混合比率を80%以下とするのが望ましいことが明らかとなった。
10 蓄冷/蓄熱シート
11 マイクロカプセル
12 窒化アルミニウム
15 シート体
16 伝熱シート

Claims (10)

  1. ゲル状のシリコーン樹脂で構成される熱可塑性樹脂に、状態変化により蓄冷及び蓄熱を可能とする蓄冷/蓄熱材料が内包されたマイクロカプセルと、当該マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料とが混合されて形成されるシート体と、
    前記シート体における熱源側と反対側の面に配設され、前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料よりも熱伝導率が高い熱伝導シートとを備え
    前記マイクロカプセルが前記シリコーン樹脂に対して80%以下の割合で混合されていることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  2. 請求項1に記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    少なくとも前記熱伝導シートが配設される側の面にエンボス加工がなされていることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  3. 請求項1又は2に記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    前記熱伝導性材料が前記熱可塑性樹脂に対して10%以下の割合で混合されていることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    前記マイクロカプセルの周囲に前記熱伝導材料が付着していることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    前記熱伝導材料が、前記蓄冷/蓄熱シートの深さ方向に異なる割合で混合されていることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  6. 請求項5に記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    前記熱伝導材料の割合に応じて、前記マイクロカプセルの混合割合が前記蓄冷/蓄熱シートの深さ方向に異なることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    前記マイクロカプセルの粒径と前記熱伝導性材料の粒径との比率が50:1〜50:1.5であることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の蓄冷/蓄熱シートにおいて、
    前記熱伝導シートが、前記マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料で形成される繊維であることを特徴とする蓄冷/蓄熱シート。
  9. ゲル状のシリコーン樹脂で構成される熱可塑性樹脂とマイクロカプセルと当該マイクロカプセルよりも熱伝導率が高い熱伝導材料とを混合して蓄冷/蓄熱シートを生成する蓄冷/蓄熱シート生成方法において、
    前記熱可塑性樹脂、粉末状の前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料とを脱気しながら前記マイクロカプセルが前記シリコーン樹脂に対して80%以下の割合となるように混合してシート体を形成し、当該シート体における熱源側と反対側の面に前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料よりも熱伝導率が高い熱伝導シートを配設することを特徴とする蓄冷/蓄熱シート生成方法
  10. 請求項9に記載の蓄冷/蓄熱シート生成方法において、
    混合された前記熱可塑性樹脂、前記マイクロカプセル及び前記熱伝導材料を表面がエンボス加工された成形板に押圧することを特徴とする蓄冷/蓄熱シート生成方法。
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