JP2010110390A - 暖房便座 - Google Patents

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邦弘 鶴田
Munetaka Yamada
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Abstract

【課題】取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体蓄熱体を用いて熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座を提供する。
【解決手段】暖房便座は、着座面を有する便座と、着座面の裏側に配設した発熱体および蓄熱体とを備えている。蓄熱体は、蓄熱材を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆って構成され、マイクロカプセルはその軟化温度が、被覆材の硬化温度より高温にある材料が使用される。蓄熱体は、柔軟性のある蓄熱材をマイクロカプセルと被覆材で2重に被覆する構造になっているので、取り扱い性や成型性に優れる。また、発熱体の熱が蓄熱体に蓄熱されて効率的に利用され省エネルギーが図れる。
【選択図】図1

Description

本発明は、暖房便座に関する。
省エネルギー効果を高めた暖房便座が種々提案されており、断面図の1例を図5に示す。この暖房便座1は、これを構成する着座側部材2を中空のケースとしその中空空間内に、蓄熱材3を封入した袋材4および5から構成される蓄熱体6および7を複数個配置して、両者の衝合面部に加熱手段8を介在させ、これらを底部材9で蓋をする構造である(例えば、特許文献1参照)。加熱手段8の通電状態で、着座側部材2の表面から放熱されていた熱を蓄熱材3に蓄熱し、加熱手段8の休止(非通電)状態で蓄熱材3の蓄熱を放熱することで熱効率を高め、加熱手段8から発生する熱を効率的に利用している。また、電力需要が小さく安価な夜間帯に蓄熱材3に蓄熱しておき、昼間に蓄熱材3の放熱により便座を温めることで、省エネルギーも図れる。この暖房便座1は、便器10の上に積層されているがこれ以外に、蓄熱材を使用した種々の構成の暖房便座が提案されている。
蓄熱体は、種々の収納形態が提案されている。その1例は、酢酸ナトリウム3水塩の蓄熱材を、ポリポロピレン等の合成樹脂製の容器に充填した物である。また、他例として、パラフィン系の蓄熱材を、ゴムまたは合成樹脂に練り込んで板状に成形したものを、アルミラミネート被覆材で被覆した物である。
さらに最近は、蓄熱材を有機高分子系のマイクロカプセルに封入する技術が、提案されその商品化がなされている(例えば、特許文献2参照、特許文献3参照)。この技術は、脂肪族炭化水素の蓄熱材を、尿素ホルマリン樹脂やメラミンホルマリン樹脂などのマイクロカプセルに封入する技術である。最近は、マイクロカプセルとしては、有機高分子(具体的にはアラミド樹脂を使用)と無機化合物を複合化した材料が提案されている(例えば、特許文献4参照)。そして、これら従来例の中で、マイクロカプセルは、これら以外に、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、の樹脂が使用されると記載されている。 さらに、蓄熱材を封入するマイクロカプセルに関しては、スチレン−ブタジエン共重合体の樹脂で固形化する蓄熱体が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
これに加えて、蓄熱材を封入した有機高分子系のマイクロカプセルを、シリコーンゲルで固形化する蓄熱体も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
特開平11−128118号公報 特開2003−306672号公報 特許第3059558号公報 特開2007−137916号公報 特開平7−133479号公報 特開2007−145915号公報
従来の暖房便座で使用される蓄熱体6および7は、塩化カルシウムや硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールなどの蓄熱材3を袋材4および5に包み込んだ物である。蓄熱体6および7が、この収納形態だと、暖房便座に収納する製造工程中に、誤って袋材4および5を傷つける場合がありこの場合、液体や粉末の蓄熱材3が床に零れ落ちる課題があった。また、成型の自由度が乏しいので、暖房便座への収納が容易でない課題もあった。
一方、蓄熱材を封入するマイクロカプセルは、スチレン−ブタジエン共重合体などの硬質樹脂で固形化されている。しかしながら、硬質樹脂で固形化された蓄熱体は、成型の自由度が乏しいので、暖房便座への収納が容易でない課題もあった。また、蓄熱材を封入するマイクロカプセルをシリコーンゲルで固形化する技術は、マイクロカプセルの軟化温度とシリコーンゲルの硬化温度の関係が不明であるうえに、シリコーンゲルの架橋密度(ゴム部分の架橋点の大小を論じる架橋密度の高低)が不明であるので、成型の自由度が充分でなく、暖房便座への収納性の向上が求められていた。
本発明は、前記課題を解決して、取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体を提供するとともに、この蓄熱体を使用することで加熱手段から発生する熱を効率的に利用して省エネルギーを図った暖房便座を提供するものである。
前記課題を解決するために、本発明の暖房便座は、着座時に人体が接触する着座面を有する便座と、着座面の裏側に配設した発熱体および蓄熱体とを備え、蓄熱体は、蓄熱材を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆ってなり、マイクロカプセルは、その軟化温度が前記被覆材の硬化温度より高温である有機高分子重合物としたものである。
本発明は、着座面の裏側内面に発熱体と蓄熱体が配設されているので、発熱体から発生する熱が、蓄熱体に蓄熱されてその蓄熱が効率的に利用されるので省エネルギーが図れる。また、蓄熱材が、有機高分子重合物のマイクロカプセルの内部空間に内包されさらに、このマイクロカプセルが、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆われる2重の被覆構造になっている。この2重の被覆構造の蓄熱体は、暖房便座に収納する製造工程中に誤って被覆材を傷つけても、液体や粉末の蓄熱材が床に零れ落ちることがない。しかも、蓄熱体は、その周囲が柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆われているので、取り扱いが簡単で成型の自由度に富み、暖房便座への収納が容易にできる。これに加えて、マイクロカプセルはその軟化温度が、蓄熱体の被覆材の硬化温度より高温であるので、マイクロカプセルが被覆材で被覆される製造工程において破壊されることがなく、取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体を簡単な製造方法を用いて得ることができる。
また、本発明の暖房便座は、便座と、便座の表側に配置してその表面を人体が着座時に接触する着座面とする柔軟性蓄熱体と、便座の裏側内面に配設した発熱体とを備え、柔軟性蓄熱体は、蓄熱材をその内部空間に内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆ってなり、マイクロカプセルは、その軟化温度が前記被覆材の硬化温度より高温である有機高分子重合物ととしたものである。
本発明は、着座面の裏側内面に発熱体を配設し、着座面の表側に柔軟性蓄熱体を配設しているので、発熱体から発生する熱が、蓄熱材に蓄熱されてその蓄熱が効率的に利用されるので省エネルギーが図れる。また、取り扱い性や成型性に優れた柔軟性蓄熱体を簡単な製造方法を用いて得ることができる。
本発明の暖房便座は、蓄熱材を内包するマイクロカプセルを柔軟性の有機樹脂系の被覆材で覆う材料構成の蓄熱体を使用しているので、取り扱い性や成型性に優れた柔軟性の蓄熱体が得られるとともに、発熱体から発生する熱をこの蓄熱体に蓄熱させているので、蓄熱が効率的に利用され省エネルギーが図れる。
第1の発明の暖房便座は、着座時に人体が接触する着座面を有する便座と、着座面の裏
側に配設した発熱体および蓄熱体とを備え、蓄熱体は、蓄熱材を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆ってなり、マイクロカプセルは、軟化温度が被覆材の硬化温度より高温である有機高分子重合物としたものである。
着座面の裏側内面に発熱体と蓄熱体が配設されているので、発熱体から発生する熱が、蓄熱体に蓄熱されてその蓄熱が効率的に利用されるので省エネルギーが図れる。また、蓄熱材が、有機高分子重合物のマイクロカプセルの内部空間に内包されさらに、このマイクロカプセルが、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆われる2重の被覆構造になっている。この2重の被覆構造の蓄熱体は、暖房便座に収納する製造工程中に誤って被覆材を傷つけても、液体や粉末の蓄熱材が床に零れ落ちることがない。しかも、蓄熱体は、その周囲が柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆われているので、取り扱いが簡単で成型の自由度に富み、暖房便座への収納が容易にできる。これに加えて、マイクロカプセルはその軟化温度が、蓄熱体の被覆材の硬化温度より高温であるので、マイクロカプセルが被覆材で被覆される製造工程において破壊されることがなく、取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体を簡単な製造方法を用いて得ることができる。
第2の発明の暖房便座は、便座と、便座の表側に配置してその表面を人体が着座時に接触する着座面とする柔軟性蓄熱体と、便座の裏側内面に配設した発熱体とを備え、柔軟性蓄熱体は、蓄熱材をその内部空間に内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆ってなり、マイクロカプセルは、その軟化温度が前記被覆材の硬化温度より高温である有機高分子重合物としたものである。
着座面の裏側内面に発熱体を配設し、着座面の表側に柔軟性蓄熱体を配設しているので、発熱体から発生する熱が、蓄熱材に蓄熱されてその蓄熱が効率的に利用されるので省エネルギーが図れる。また、取り扱い性や成型性に優れた柔軟性蓄熱体を簡単な製造方法を用いて得ることができる。
第3の発明の暖房便座は、第1発明および第2発明において、被覆材は、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系、ニトリル系のいずれかの熱硬化性エラストマーであり、マイクロカプセルは、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物としたものである。被覆材とマイクロカプセルの材質組み合わせを最適化しているので、取り扱い性や成型性に一層優れた蓄熱体や柔軟性蓄熱体が得られる。
第4の発明の暖房便座は、第3発明の蓄熱体が、蓄熱材を内包するマイクロカプセルと熱伝導性材料を、熱可塑性エラストマーの被覆材で覆われる材料構成としたものである。蓄熱体は、黒鉛やアルミニウムなどの熱伝導材料を、蓄熱材を内包するマイクロカプセルとともに、熱可塑性エラストマーの被覆材で覆う材料構成としているので、熱伝導性に優れた蓄熱体が得られ、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となった。
第5の発明の暖房便座は、第1発明および第2発明において、被覆材は、ゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルであり、マイクロカプセルは、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物としたものである。被覆材とマイクロカプセルの材質組み合わせを最適化しているので、取り扱い性や成型性に一層優れた蓄熱体や柔軟性蓄熱体が得られる。
第6の発明の暖房便座は、第5発明の柔軟蓄熱体が、蓄熱材を内包するマイクロカプセルと熱伝導材料を、シリコーンゲルの被覆材で覆われる材料構成としたものである。黒鉛やアルミニウムなどの熱伝導材料を、蓄熱材を内包するマイクロカプセルとともに、シリ
コーンゲルの被覆材で覆う材料構成としているので、熱伝導性に優れた蓄熱体や柔軟性蓄熱体が得られ、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となった。
第7の発明の暖房便座は、第1発明および第2発明において、断熱体が、発熱体の下側側に配置されており、この断熱体は、蓄熱材をその内部空間に内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを、混入してなる材料構成としたものである。蓄熱材を内包するマイクロカプセルが混入した断熱体を、発熱体の下側側に配置しているので、発熱体の下側からの放熱が、断熱体に配置された蓄熱材に蓄熱され、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となる。
第8の発明の暖房便座は、第7発明において、断熱体は、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系、ニトリル系のいずれかの熱硬化性エラストマー、またはゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルに、マイクロカプセルを混入してなるシートを有する材料構成としたものである。断熱体は、熱硬化性エラストマーまたは、低架橋密度のシリコーンゲルに、マイクロカプセルを混入してなるシートを、一部または全部に使用するので、発熱体に密着できる。このため、発熱体の放熱を蓄熱材が一層蓄熱でき、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態である暖房便座の概略構成図と断面図であり、図1は暖房便座11を便器19の上に固定設置した外観図、図2は図1の暖房便座のA部の断面図を示す。暖房便座11は、着座時に人体が接触する着座面12を有する便座13と、着座面12の裏側内面に配設した発熱体14および蓄熱体15とを備えている。
蓄熱体15は、蓄熱材16をその内部空間に内包する有機高分子重合物のマイクロカプセル17を、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材18で覆って構成される。マイクロカプセル17は、有機高分子重合物でありその軟化温度が、有機高分子硬化物である被覆材18の硬化温度より高温にある材料を使用する。
蓄熱体15を試作して本発明の効果の判定をおこなった。発明試作品1は、融点32℃のn−ノナデカン(C19H40)の蓄熱材16を内包したメラミンホルマリン樹脂のマイクロカプセル17を、オレフィン系エラストマーの被覆材18に混合して柔軟性のあるシートとした構造物である。マイクロカプセル17の壁材として用いたメラミンホルマリン樹脂は、その軟化温度(熱変形温度とも称す)が150℃である。そこで、柔軟性の蓄熱体15を得るために用いる被覆材18は、硬化温度が110℃であるオレフィン系エラストマーを使用した。またこれ以外に、上記のマイクロカプセル17を、硬化温度130℃のシリコーンゲル(ゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルを使用)の被覆材18に混合して柔軟性のあるシートとした構造物を使用した発明試作品2も試作した。
蓄熱材16は、有機高分子重合物のマイクロカプセル17の内部空間に内包されさらに、このマイクロカプセル17が、柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材18で覆われる2重の被覆構造になっている。この2重の被覆構造の蓄熱体15は、暖房便座に収納する製造工程中に誤って被覆材18を傷つけても、液体や粉末の蓄熱材16が床に零れ落ちることがない。しかも、蓄熱体15は、その周囲が柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材18で覆われているので、取り扱いが簡単で成型の自由度に富み、暖房便座への収納が容易にできる。これに加えて、マイクロカプセル17はその軟化温度が、蓄熱体15の被覆材の硬化
温度より高温であるので、マイクロカプセル17が被覆材18で被覆される製造工程において破壊されることがなく、取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体を簡単な製造方法を用いて得ることができた。
暖房便座11は、便器19の上に載せて使用され、発熱体14を通電することで便座13を加温し、着座面12に座る人の臀部分を暖める。蓄熱材16は、発熱体14の通電状態において着座面12の表面から放熱されていた熱を蓄熱し、発熱体14の休止(非通電)状態においてその蓄熱を放熱することができるので熱効率が高まり、発熱体14から発生する熱を効率的に利用できた。またさらに、蓄熱材16は、例えば電力需要が小さく安価な夜間帯などの、人が使用しない時間帯に蓄熱した熱を、昼間に徐々に放熱して便座13を温めることができるので、省エネルギーにも貢献できた。
使用する材料について説明する。便座13は、合成樹脂もしくは、アルミニウムと合成樹脂とを積層した複合基板である。合成樹脂は、発熱体14の電気絶縁のため使用しており、熱伝導率が約200W/(m・K)と高いアルミニウムを合成樹脂に積層して複合基板にすると、昇温されると同時にすばやく着座面12まで熱を伝達することができるとともに、温度分布をより均一にする均熱効果が得られる。また、アルミニウムは、板厚を薄くしても必要な強度を確保することができるので、複合基板にすると、合成樹脂の単独使用と比較して全板厚を薄くすることができる効果も得られる。これらの効果は、着座面12としてアルミニウムを配置した構成とすると際立って現れるので、その表面に外観効果のための塗装した表面化粧層が形成してある。着座面12の外側表面に施す表面化粧層は、染色処理にすることもできるが、少なくとも外側表面に塗装を施せば、防食効果だけでなくアルミニウムの金属便座であっても見た感じの冷たいイメージ感を払拭でき、たとえば、真珠のようなパール塗装等によって、やわらかいイメージや高級なイメージを演出することができる。
発熱体14は、面状のヒータまたは、線状のヒータ線20の周囲をフッ素樹脂などの絶縁体21で覆った単線の線状であり、便座13の形状に収まるように配設されている。
ヒータ線20に使用した材料は、ニッケルクローム合金(体積抵抗率が1.08μΩ・m)、鉄クローム合金(1.42μΩ・m)、銅に銀を4%含有した低抵抗率の合金材料(0.017μΩ・m)である。この銅銀系の合金材料は、一般的にヒータ線として使用される汎用合金と比較して、体積抵抗率が1/100と非常に低いものであり、電気器具のリード線やコイルの材料等として使用される良導電性材料である。ヒータ線20は、この材料を使用することにより、発熱体14の太さを細くすることができこのことで、発熱体14の各種形状への成形性や加工精度の向上、加工の容易化を図ることができる。また、発熱体14は、線径が細くなることにより蓄熱体15への密着性が向上し、発熱が着座面12に効率よく伝達できるという効果を有する。絶縁体21は、フッ素樹脂の代わりにシリコンゴムを用いても良く、絶縁性や耐熱性が確保できる材料なら何ら問題ない。線状の発熱体14は、その上下両面を2枚のアルミ箔で接着した構成としている。
蓄熱材16は、融点あるいは凝固点が10〜80℃、好ましくは20〜60℃にある潜熱蓄熱剤である。具体的には、酢酸ナトリウム3水塩(融点58℃)、硝酸リチウム3水塩(融点30℃)、塩化カルシウム6水塩(融点27℃)、ステアリン酸(融点71℃)、セチルアルコール(融点51℃)、炭素数が15以上の脂肪族炭化水素(n−デカン、テトラデカン、ペンタデカン、エイコサン、ドコサンなど)が挙げられる。この中で特に、脂肪族炭化水素は、マイクロカプセル17への内包性が優れており、簡単な製法と品質管理で内包できるので、良好であった。脂肪族炭化水素は、炭素数の増加とともに融点が上昇するため、目的に応じた融点を有する脂肪族炭化水素の選択や、2種以上を混合も可能である。蓄熱剤16は、融点が10℃未満の材料、80℃を超える材料であると、複雑
な保温操作を有するため、本発明の用途が、主として人向け保温剤であることを考慮すると、これらの材料はいずれも非実用的な温度域の材料である。
マイクロカプセル17はそのカプセル壁が、有機高分子重合物である。具体的には、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アラミド樹脂、ゼラチンとカルボキシメチルセルロースもしくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂である。特に、熱的に安定な熱硬化性樹脂皮膜を有するマイクロカプセル17が、好ましくその中でも、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂を用いたマイクロカプセルが最適である。
被覆材18は、有機高分子を硬化させることで得られる柔軟性を有する有機高分子硬化物である。具体的には、シリコーンゲル(ゴム部分の架橋密度が低〜高タイプ)などのゲル材、有機エラストマー(オレフィン系、スチレン系、塩ビ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ニトリル系、シリコーン系)が使用される。マイクロカプセル17と被覆材18は、マイクロカプセル17の軟化温度(熱変形温度とも称す)が、被覆材18の硬化温度より高温にある材料を考慮して、お互いの材料組成と製造加熱プロセス温度を決めている。例えば、マイクロカプセル17はそのカプセル壁が、軟化温度(熱変形温度とも称す)150℃のメラミンホルマリン樹脂(メラミン樹脂とも称す)とした場合、被覆材18は硬化温度が略110℃のオレフィン系エラストマーを使用する。このことで、マイクロカプセル17が、被覆材18で被覆される製造工程において、破壊されることがなく、取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体15を簡単な製造方法を用いて得ることができる。
蓄熱体15は、マイクロカプセル17の20〜70wt%(望ましくは30〜60wt%)に対して、前述の材料からなる被覆材18を残部の重量割合で混合し、シート等の成型物に加工して得ており、この配合割合は、蓄熱体15が必要とする柔軟性に応じて変化させた。
発熱体14および蓄熱体15は、その下側面に配置された断熱体22によって下方側に逃げる熱が遮断されている。断熱体22は、断熱とともに固定を兼ねており、発泡ウレタン等の断熱材をステンレス等の固定冶具(記載せず)を用いてネジ止めし、発熱体14と蓄熱体15が便座13から落下しない役割も果している。
図3は、暖房便座11の平面図である。蓄熱体15は、便座13の着座面12と略相似形をしており、便座13の下側面(上側にある着座面12とは反対側にある面)に配設されている。発熱体14は、蓄熱体15の略全面でその下側面に、所定の配設パターンで線状に配設されている。その配設パターンは、着座した使用者の身体が主に接触する着座面12の範囲に対応する部分に、所定の広い幅の配設ピッチで線状の発熱体14を配設して暖房領域23を形成している。本実施形態においては、暖房領域23の配設ピッチは7mm〜10mmとしている。また、発熱体14の後方の外側部近傍には、安全装置24が形成されており、発熱体密設領域部とサーモスタットが取り付けられた構成となっている。
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態である暖房便座の断面図を示す。図1、図2および図3記載の第1の実施の形態と異なる点は、蓄熱体の配置場所であり、第2の実施の形態は、便座13の表側に、着座面12を表面とする柔軟性蓄熱体25を配置するとし、便座13の裏側内面には発熱体14のみを配設した構造としている。柔軟性蓄熱体25は、蓄熱材16を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセル17を、柔軟性の有機高分子硬
化物の被覆材18で覆って構成される。この柔軟性蓄熱体25は、前述の実施の形態1に記載した蓄熱体15より、柔軟性を高めた類似の材料と製法としているが、概略は前述の蓄熱体15とほぼ同じである。
この構造にすると、発熱体14から発生する熱が、蓄熱材16に蓄熱されてその蓄熱が効率的に利用されるので省エネルギーが図れる。また、取り扱い性や成型性に優れた柔軟性蓄熱体25を簡単な製造方法を用いて得ることができた。
(実施の形態3)
実施の形態3は、蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25で使用する、被覆材18およびマイクロカプセル17の組み合わせ材質について検討した。被覆材18に用いる有機高分子硬化物は、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系、ニトリル系の熱硬化性エラストマーであり、マイクロカプセル17は、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物の組み合わせとすると、取り扱い性や成型性に一層優れた蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25が得られた。これは、マイクロカプセル17の使用材質に合わせて、被覆材18に用いる熱硬化性エラストマーの材質を最適化したためである。
マイクロカプセル17で使用する、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物は、具体的には、ポリアミド樹脂(アミド基を有する)、ポリアクリルアミド樹脂(アミド基を有する)、ポリウレタン樹脂(エステル基を有する)、アミノプラスト樹脂(アミノ基を有する)、ポリアクリル酸エステル樹脂(エステル基を有する)、アラミド樹脂(芳香族の骨格のみで構成されるポリアミドの総称、アミド基を有する)、尿素ホルマリン樹脂(アミノ基を有する)、メラミンホルマリン樹脂(アミノ基を有する)である。
比較のため、被覆材18として上記以外の熱硬化性エラストマーを採用し、マイクロカプセル17に被覆させた蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25を試作して、効果の判定を行なった。これら比較試作品は、実施の形態3の発明品と比較して、やや硬くて柔軟性が不足気味であり、マイクロカプセル17への密着も不足気味であった。
(実施の形態4)
実施の形態5は、実施の形態3で使用する蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25の材料構成についてさらに検討した。黒鉛やアルミニウムなどの熱伝導材料26を、蓄熱材16を内包するマイクロカプセル17とともに、熱可塑性エラストマーの被覆材18で覆う材料構成とすると、熱伝導性に優れた蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25が得られ、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となった。
蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25は、熱伝導材料26の10〜30wt%と、マイクロカプセル17の20〜50wt%(望ましくは30〜40wt%)に対して、前述の熱硬化性エラストマーの被覆材18を残部の重量割合で混合し、シート等の成型物に加工して得ており、その配合割合は、必要とする柔軟性に応じて変化させた。
(実施の形態5)
実施の形態5は、蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25で使用する被覆材18およびマイクロカプセル17の組み合わせ材質について、さらに検討した。被覆材18に用いる有機高分子硬化物は、ゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルであり、マイクロカプセル17は、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物の組み合わせとすると、取り扱い性や成型性に一層優れた蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25が得られた。
これは、マイクロカプセル17の使用材質に合わせて、被覆材18に用いるシリコーンゲルの架橋密度を最適化したためである。ゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルを採用することで、硬さが減少して柔軟性が大幅に増加するとともに、粘着性が増加してマイクロカプセル17に良好に密着する様になり、耐久信頼性が向上した。
マイクロカプセル17で使用する、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物は、具体的には、ポリアミド樹脂(アミド基を有する)、ポリアクリルアミド樹脂(アミド基を有する)、ポリウレタン樹脂(エステル基を有する)、アミノプラスト樹脂(アミノ基を有する)、ポリアクリル酸エステル樹脂(エステル基を有する)、アラミド樹脂(芳香族の骨格のみで構成されるポリアミドの総称、アミド基を有する)、尿素ホルマリン樹脂(アミノ基を有する)、メラミンホルマリン樹脂(アミノ基を有する)である。
比較のため、ゴム部分の架橋点が多いタイプ、いわゆる中〜高タイプの架橋密度のシリコーンゲルを被覆材18として採用し、マイクロカプセル17に被覆させた蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25を試作して、効果の判定を行なった。これら比較試作品は、実施の形態5の発明品と比較して、やや硬くて柔軟性が不足気味であり、マイクロカプセル17への密着も不足気味であった。
(実施の形態6)
実施の形態6は、実施の形態5で使用する蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25の材料構成についてさらに検討した。黒鉛やアルミニウムなどの熱伝導材料26を、蓄熱材16を内包するマイクロカプセル17とともに、シリコーンゲルの被覆材18で覆う材料構成とすると、熱伝導性に優れた蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25が得られ、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となった。
蓄熱体15や柔軟性蓄熱体25は、熱伝導材料26の10〜30wt%と、マイクロカプセル17の20〜50wt%(望ましくは30〜40wt%)に対して、前述のシリコーンゲルの被覆材18を残部の重量割合で混合し、シート等の成型物に加工して得ており、その配合割合は、必要とする柔軟性に応じて変化させた。
(実施の形態7)
実施の形態7は、発熱体14の下側に配置する断熱体22の材料構成について検討した。蓄熱材(記載せず)をその内部空間に内包する有機高分子重合物のマイクロカプセル27が混入した断熱体22を使用すると、発熱体14の下側からの放熱を、蓄熱材が蓄熱するので、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となった。
(実施の形態8)
実施の形態8は、発熱体14の下側に配置する断熱体22の材料構成についてさらに検討した。断熱体22は、熱硬化性エラストマーまたはシリコーンゲルに、マイクロカプセルを混入してなるシートを、一部または全部に使用するので、発熱体14に良好に密着できる。しかも、熱硬化性エラストマーは、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系、ニトリル系のいずれかの熱硬化性エラストマーである。また、シリコーンゲルは、ゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルである。このため、発熱体14の放熱を蓄熱材が一層蓄熱でき、熱効率や省エネルギー性を一層高めた暖房便座となった。
断熱体22は、マイクロカプセルの20〜70wt%(望ましくは30〜60wt%)に対して、熱硬化性エラストマーまたはシリコーンゲルを残部の重量割合で混合し、シー
ト等の成型物に加工して得ており、この配合割合は、断熱体22が必要とする柔軟性に応じて変化させた。
本発明の暖房便座は、取り扱い性や成型性に優れた蓄熱体を用いて、発熱体から発生する熱を蓄熱し、その蓄熱を効率的に利用して省エネルギーを図っているので、使用者が着座する便座機器の暖房技術として適用することが可能である。
本発明の実施の形態1における暖房便座の外観図 同実施の形態1における暖房便座の断面図 同実施の形態1における暖房便座の平面図 同実施の形態2における暖房便座の断面図 従来の暖房便座の構成図と断面図
符号の説明
11 暖房便座
12 着座面
13 便座
14 発熱体
15 蓄熱体
16 蓄熱材
17 マイクロカプセル
18 被覆材
22 断熱体
25 柔軟性蓄熱体
26 熱伝導材料
27 蓄熱材を内包するマイクロカプセル(断熱体用)

Claims (8)

  1. 着座時に人体が接触する着座面を有する便座と、
    前記着座面の裏側に配設した発熱体および蓄熱体とを含み、
    前記蓄熱体は、蓄熱材を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆ってなり、前記マイクロカプセルは、軟化温度が前記被覆材の硬化温度より高温であることを特徴とする暖房便座。
  2. 便座と、
    前記便座の表側に配置してその表面を人体が着座時に接触する着座面とする柔軟性蓄熱体と、
    前記便座の裏側に配設した発熱体とを含み、
    前記柔軟性蓄熱体は、蓄熱材を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを柔軟性の有機高分子硬化物の被覆材で覆ってなり、前記マイクロカプセルは、軟化温度が前記被覆材の硬化温度より高温であることを特徴とする暖房便座。
  3. 被覆材は、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系ニトリル系のいずれかの熱硬化性エラストマーであり、マイクロカプセルは、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物とする請求項1または2に記載の暖房便座。
  4. 蓄熱体は、蓄熱材を内包するマイクロカプセルと熱伝導性材料を、熱可塑性エラストマーの被覆材で覆ってなる請求項3に記載の暖房便座。
  5. 被覆材は、ゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルであり、マイクロカプセルは、カルボニル基、エステル基、アミド基、アミノ基のいずれかの化学構造を有する有機高分子重合物である請求項1または2に記載の暖房便座。
  6. 柔軟蓄熱体は、蓄熱材を内包するマイクロカプセルと熱伝導材料を、シリコーンゲルの被覆材で覆ってなる請求項5に記載の暖房便座。
  7. 断熱体は、発熱体の下側に配置されており、蓄熱材を内包する有機高分子重合物のマイクロカプセルを混入してなる請求項1または2に記載の暖房便座。
  8. 断熱体は、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系、ニトリル系のいずれかの熱硬化性エラストマー、またはゴム部分の架橋点を減少させた低架橋密度のシリコーンゲルに、マイクロカプセルを混入してなるシートを有する請求項7に記載の暖房便座。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014208728A (ja) * 2013-04-16 2014-11-06 富士高分子工業株式会社 蓄熱性シリコーン材料及びその製造方法
CN107361689A (zh) * 2017-08-04 2017-11-21 杭州巨力绝缘材料有限公司 高效低耗环保型马桶盖及蓄热恒温方法
CN107411626A (zh) * 2017-08-04 2017-12-01 杭州巨力绝缘材料有限公司 高效低耗环保恒温刚性马桶盖及工作方法
JP2019089285A (ja) * 2017-11-16 2019-06-13 株式会社パワーバンクシステム 蓄冷/蓄熱シート及び蓄冷/蓄熱シート生成方法

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