JP6516319B2 - 熱硬化性多分岐型高分子とその製造方法および硬化多分岐型高分子 - Google Patents

熱硬化性多分岐型高分子とその製造方法および硬化多分岐型高分子 Download PDF

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本発明は、熱硬化性多分岐型高分子とその製造方法および硬化多分岐型高分子に関する。さらに詳しくは、本発明は、接着分野、塗料分野および電子材料分野での応用が期待できる硬化多分岐型高分子を提供し得る熱硬化性多分岐型高分子とその製造方法に関する。
ダイシング関連および接着剤などの接着分野、コーティング剤、インクおよび塗料などの塗料分野、ならびにアンダーフィルなどの電子材料分野では、その使用環境に耐え得る材料性能の向上、製造工程の簡素化や省エネ化など、様々な要求に応えるべく、材料、特に高分子材料の開発がなされている。
一般的な高分子(鎖状高分子)材料を接着剤や塗料として利用する場合には、該高分子を溶剤に溶解させ、低粘性化して利用されることが多い。
これに対して、多分岐型高分子は、同一分子量の鎖状高分子と比較して、低粘度であるため溶剤が不要または少量でよく、塗料や粘着剤用途では、有害な揮発性有機化合物の削減に効果を発揮すると期待される。
このような多分岐型高分子の合成法としては、自己縮合性ビニル重合が報告されており、多くの自己縮合性ビニルモノマーが合成されてきた。また、汎用ジビニルモノマーに適合可能な方法として、コバルト錯体などを用いる触媒的連鎖移動重合による多分岐型高分子の合成が報告されている。
一方、金属を用いない連鎖移動重合法として、付加開裂連鎖移動(AFCT)がある。AFCTは、成長ラジカルのAFCT剤への付加と、生じるアダクトラジカルのβ−開裂からなり、ω−末端にはプロペニル基、α−末端にはβ−開裂で放出されるラジカル由来の官能基が導入される。
この粘性の低い、多分岐型高分子材料を硬化させる試みとしては、多分岐型高分子と熱硬化性分子を混合させたり結合させたりする例が知られている。
例えば、特開2006−10829号公報(特許文献1)では、加水分解性シリル基やポリイソシアネートなどの熱硬化性の反応基を結合させた多分岐型高分子およびその製造方法が提案されている。
また、特開2002−146076号公報(特許文献2)では、熱硬化性ポリベンゾオキサゾール前駆体を必須成分とする絶縁膜用樹脂組成物が、特表2013−511604号公報(特許文献3)では、ジビニルベンゼンジオキシドを含む、低粘度強化エポキシ樹脂配合物が提案されている。
特開2006−10829号公報 特開2002−146076号公報 特表2013−511604号公報
しかしながら、多分岐型高分子自体の熱硬化性や、その耐熱性を向上させるなどの検討例はみられない。また、上記のような従来技術においては、硬化前の粘性を十分に下げることは難しい。
そこで、本発明は、低粘性であり、溶剤に溶解させることなしに加工可能であるという多分岐型高分子の特長に加えて、自発的な熱硬化が可能で、しかも硬化後の耐熱性が高く、材料として安定な熱硬化性多分岐型高分子とその製造方法および硬化多分岐型高分子を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、上記の課題を解決すべく、熱硬化性多分岐型高分子とその硬化後の熱特性について鋭意研究を重ねた結果、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと、特定の付加開裂連鎖移動剤との重合により得られる熱硬化性多分岐型高分子が、硬化後に著しいガラス転移点の上昇(室温付近から200℃以上)があり、材料として安定であることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明によれば、2つ以上のビニル基を有する、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である多官能モノマーと、一般式(I)〜(III):
Figure 0006516319
[式中、R1はハロゲン原子、−SR基、−OR基、−OOR基または−C(R)3基であり(Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシシリル基を含んでもよい)、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である]
で表される、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である付加開裂連鎖移動剤との重合により得られることを特徴とする熱硬化性多分岐型高分子が提供される。
また、本発明によれば、上記の熱硬化性多分岐型高分子の製造方法であり、
2つ以上のビニル基を有する、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である多官能モノマーと、一般式(I)〜(III):
Figure 0006516319
[式中、R1はハロゲン原子、−SR基、−OR基、−OOR基または−C(R)3基であり(Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシシリル基を含んでもよい)、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である]
で表される、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である付加開裂連鎖移動剤とを、温度30〜180℃で一段階重合させる工程を含むことを特徴とする熱硬化性多分岐型高分子の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の熱硬化性多分岐型高分子の熱硬化により得られた硬化多分岐型高分子が提供される。
本発明によれば、低粘性であり、溶剤に溶解させることなしに加工可能であるという多分岐型高分子の特長に加えて、自発的な熱硬化が可能で、しかも硬化後の耐熱性が高く、材料として安定な熱硬化性多分岐型高分子とその製造方法および硬化多分岐型高分子を提供することができる。
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、溶剤を用いることなしに膜などに加工できることから、揮発性有機化合物(VOC)の使用量を削減することにより環境問題に寄与でき、また硬化剤などの添加剤を加えることなしに加工でき、そして得られた膜を加熱することにより、耐熱性の高い高分子が得られるので、耐熱接着剤、耐熱塗料、アンダーフィルなどの電子材料としての応用が期待できる。
また、本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、次のいずれか1つの要件:
(1)2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーおよび付加開裂連鎖移動剤が、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である、
(2)2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーが、エチレングリコールジメタクリレートである、
(3)付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルである、
(4)熱硬化性多分岐型高分子が、550〜30,000の数平均分子量Mnおよび1.2〜10の重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnを有する、および
(5)2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレートであり、付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルであり、それらのモル比が1/0.5〜1/2である、ならびに
(6)熱硬化性多分岐型高分子が2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合体であり、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレートであり、一官能ビニルモノマーがメタクリル酸ドデシルであり、付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルである、
を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
さらに、熱硬化性多分岐型高分子の製造方法は、次のいずれか1つの要件:
(7)一段階重合がアゾ系重合開始剤の存在下で行われる、および
(8)一段階重合が、多官能モノマーと、付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合である
を満足する場合に、効率よく熱硬化性多分岐型高分子を製造することができる。
本発明の熱硬化性多分岐型高分子のNMRスペクトルとその構造の一例を示す図である(実施例8)。 本発明の熱硬化性多分岐型高分子のMALDI−MSスペクトルの一例を示す図およびそのピークデータである(実施例7)。 本発明の熱硬化性多分岐型高分子のGPC溶出曲線の一例を示す図である(実施例8)。 本発明の熱硬化性多分岐型高分子および硬化多分岐型高分子のTG−DTA曲線の一例を示す図である(実施例8)。 本発明の熱硬化性多分岐型高分子および硬化多分岐型高分子のDSC曲線の一例を示す図である(実施例8)。 本発明の熱硬化性多分岐型高分子熱硬化前後での引張せん断接着強度の変化を示す図である。 本発明の熱硬化性多分岐型高分子1本中の重合性基数と引張せん断接着強度との関係を示す図である。
(熱硬化性多分岐型高分子)
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと、一般式(I)〜(III):
Figure 0006516319
[式中、R1はハロゲン原子、−SR基、−OR基、−OOR基または−C(R)3基であり(Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシシリル基を含んでもよい)、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である]
で表される付加開裂連鎖移動剤との重合により得られることを特徴とする。
本発明において「多分岐型高分子」とは、繰り返し単位に不規則に枝分かれ構造を有する多分岐状の高分子であり、高分子量でありながら、3次元的な分子の絡まりが少なく、同一分子量の線状高分子より粘性(溶液粘度)が低い高分子を意味する。
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、550〜30,000の数平均分子量Mnおよび1.2〜10の重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnを有するのが好ましく、このような場合には、0.01〜0.05dL/s程度の範囲の粘度を有する。
また、本発明の熱硬化性多分岐型高分子の多分岐高分子1本中の重合性基の数は、1〜50程度であり、熱硬化性の点で、5〜50であるのが好ましい。
(2つ以上のビニル基を有する多官能モノマー)
2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーは、付加開裂連鎖移動剤とのラジカル重合により、熱硬化性多分岐型高分子を形成し得るものであれば特に限定されない。
2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーとしては、例えば、
エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジウレタンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−メタクリロイル)オキシエチルジスルフィド、ビス(2−アクリロイル)オキシエチルジスルフィド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、などの脂肪族(メタ)アクリル系モノマー
ジビニルベンゼン、ジブロモジビニルベンゼン、ジメトキシジビニルベンゼン、ジエトキシジビニルベンゼン、ジプロポキシシジビニルベンゼン、ジブトキシジビニルベンゼン、ジペンチルオキシジビニルベンゼン、ジヘキシルオキシジビニルベンゼン、ジヘプチルオキシジビニルベンゼン、ジオクチルオキシジビニルベンゼン、ジノニルオキシジビニルベンゼン、ジデジルオキシジビニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)オキシジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリセロラートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリセロラートトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリセロラートテトラ(メタ)アクリレート、1,4−フェニレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFグリセロラートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFグリセロラートトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFグリセロラートテトラ(メタ)アクリレート、などの芳香族(メタ)アクリル系モノマー
など挙げられる。
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤との2成分を基本とするが、本発明の効果を阻害しない範囲で、2種以上の多官能モノマーを併用してもよい。
2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーとしては、生成ポリマーのガラス転移温度、透明性や接着性の点で、脂肪族(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、EGDMAが特に好ましい。
なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
(一官能ビニルモノマー)
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、例えば、実施例9〜11に示されているように、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
一官能ビニルモノマーとしては、n−ドデシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート及びn−テトラデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、スチレン誘導体、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
一官能ビニルモノマーとしては、これらの中でも、共重合性、生成ポリマーのガラス転移温度、透明性や接着性の点で、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を有するメタクリレートが好ましく、n−ドデシルメタクリレート(DMA:メタクリル酸ドデシル)、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ウンデシルメタクリレート、10−ヒドロキシデシルメタクリレート、12−ヒドロキシラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、8−ヒドロキシオクチルメタクリレート、10−ヒドロキシデシルメタクリレート、12−ヒドロキシラウリルメタクリレートがより好ましく、DMAが特に好ましい。
(付加開裂連鎖移動剤)
付加開裂連鎖移動剤(AFCT剤)は、一般式(I)〜(III)で表される。
一般式(I)〜(III)の置換基R1のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、これらの中でも、連鎖移動定数の点で、塩素および臭素が好ましく、臭素が特に好ましい。
一般式(I)の置換基R1の−SR基、−OR基、−OOR基および−C(R)3基における置換基Rの炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチルなどの直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、連鎖移動定数の点で、tert−ブチルが特に好ましい。
置換基R1としては、上記以外にも、芳香環、酸素原子、窒素原子を有するものであってもよく、具体的には、2−ヒドロキシエチル、2−アミノエチル、2−カルボキシエチル、カルボキシメチル、3−(トリメトキシシリル)プロピル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、ビス(エトキシカルボニル)メチル、トリス(メトキシカルボニル)メチル、トリス(エトキシカルボニル)メチル、(ジメチルメトキシカルボニル)メチルなどが挙げられる。
一般式(I)の置換基R2の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、へキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシルなどの直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、熱安定性の点で、第一級および第二級エステル基を与えるアルキル基が特に好ましい。
置換基R2としては、上記以外にも、芳香環、酸素原子、窒素原子を有するものであってもよく、具体的には、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシヘキシル、6−ヒドロキシヘキシル、8−ヒドロキシオクチル、10−ヒドロキシデシル、12−ヒドロキシラウリルなどが挙げられる。
上記のように、一般式(I)〜(III)における置換基R1としては、単独重合性を示さない点、連鎖移動定数が大きい点、および生成多分岐型高分子の熱硬化性の点で、臭素が好ましく、置換基R2としては、熱安定性の点で、第一級および第二級エステル基を与えるアルキル基が特に好ましい。
付加開裂連鎖移動剤としては、
2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル(MBMA)、2-(ブロモメチル)アクリル酸エチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸n-プロピル、2-(ブロモメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ブロモメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸イソブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸sec−ブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸tert−ブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸ペンチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸へキシル、2-(ブロモメチル)アクリル酸シクロヘキシル、2-(ブロモメチル)アクリル酸ヘプチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸オクチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸2−エチルヘキシル、2-(ブロモメチル)アクリル酸ノニル、2-(ブロモメチル)アクリル酸デシル、2-(tert-ブチルチオメチル)アクリル酸メチル、2-(tert-ブチルチオメチル)アクリル酸エチル、2-(tert-ブチルチオメチル)アクリル酸ベンジル、2-(2-ヒドロキシエチルチオエチル)アクリル酸エチル、2-(カルボキシメチルチオメチル)アクリル酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチルチオメチル)アクリル酸、2-(カルボキシメチルチオメチル)アクリル酸、
2-(ブロモメチル)スチレン、2-(t−ブチルチオメチル)スチレン、2-(2-ヒドロキシエチルチオメチル)スチレン、2-(2-アミノエチルチオメチル)スチレン、2-(カルボキシメチルチオメチル)スチレン、2-(2-カルボキシエチルチオメチル)スチレン、2-((3-トリメトキシシリルプロピル)チオメチル)スチレン、
2-(ブロモメチル)アクリロニトリル、2-(tert-ブチルチオメチル)アクリロニトリル、2,2−ジメチル−4−メチレングルタミン酸ジメチルが挙げられる。
付加開裂連鎖移動剤としては、これらの中でも、生成ポリマーのガラス転移温度、透明性、および接着性の点で、脂肪族(メタ)アクリル系化合物が好ましく、連鎖移動能が高いMBMA、2-(ブロモメチル)アクリル酸エチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸n-プロピル、2-(ブロモメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ブロモメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸イソブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸sec−ブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸tert−ブチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸ペンチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸へキシル、2-(ブロモメチル)アクリル酸シクロヘキシル、2-(ブロモメチル)アクリル酸ヘプチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸オクチル、2-(ブロモメチル)アクリル酸2−エチルヘキシル、2-(ブロモメチル)アクリル酸ノニル、2-(ブロモメチル)アクリル酸デシルがより好ましく、MBMAが特に好ましい。
(2成分とそれらの比率)
2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーおよび付加開裂連鎖移動剤は、共に脂肪族(メタ)アクリル系化合物(モノマー)であるのが好ましく、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)であり、かつ付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチル(MBMA)であるのが特に好ましい。
2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤とのモル比は、モノマー成分の材料や得ようとする高分子材料の物性などにより適宜設定すればよい。
通常、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤との好ましいモル比は1/0.01〜1/10であり、より好ましいモル比は1/0.03〜1/10であり、さらに好ましいモル比は1/0.05〜1/10であり、よりさらに好ましいモル比は1/0.3〜1/2であり、特に好ましいモル比は1/0.5〜1/2である。
付加開裂連鎖移動剤が多官能モノマーの1モルに対して0.01モル未満では、重合反応中にゲル化することがある。一方、付加開裂連鎖移動剤が多官能モノマーの1モルに対して10モルを超えると、低分子量生成物しか生成しないことがある。
上記のことから、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレートであり、付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルであり、それらのモル比が1/0.5〜1/2であり、かつ熱硬化性多分岐型高分子が3,900〜8,100の数平均分子量Mnおよび1.4〜5.9の重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnを有するのが好ましい。
また、熱硬化性多分岐型高分子の粘度は、好ましくは0.01〜0.05dL/s程度である。
(一官能性ビニルモノマーを併用する場合の比率)
2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと一官能性ビニルモノマーとのモル比は、モノマー成分の材料や得ようとする高分子材料の物性などにより適宜設定すればよい。
通常、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと一官能性ビニルモノマーとの好ましいモル比は1/0.1〜1/4であり、より好ましいモル比は1/0.2〜1/2であり、さらに好ましいモル比は1/0.5〜1/1である。
一官能性ビニルモノマーが多官能モノマーの1モルに対して0.1モル未満では、生成ポリマーのガラス転移温度や室温での粘度が高く、無溶剤下で塗布できないことがある。一方、一官能性ビニルモノマーが多官能モノマーの1モルに対して4モルを超えると、分岐構造や反応性ビニル基の導入率が低下することがある。
熱硬化性多分岐型高分子が一官能性ビニルモノマー成分を含む場合には、多官能モノマーと一官能性ビニルモノマーとの合計量を、上記の多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤とのモル比における多官能モノマーとすればよい。すなわち、一官能性ビニルモノマーを多官能モノマーの置換物として、上記の付加開裂連鎖移動剤との比率になるように各成分を設定すればよい。
一官能性ビニルモノマーを用いること、および重合時間を調整することにより、ポリマー鎖1本当たりのビニル基の数を変動させることができる。
ポリマー鎖1本当たりのビニル基の数は、通常、1〜40個、好ましくは2〜30個、より好ましくは5〜25個である。
ビニル基の数が1個未満では、熱硬化しないことがある。一方、ビニル基の数が40個を超えると、重合時に架橋することがある。
上記のことから、熱硬化性多分岐型高分子が2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと前記付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合体であり、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)であり、一官能ビニルモノマーがメタクリル酸ドデシル(DMA)であり、付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチル(MBMA)であるのが好ましい。
(熱硬化性多分岐型高分子の製造方法)
本発明の熱硬化性多分岐型高分子の製造方法は、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと、一般式(I)、(II)または(III)で表される付加開裂連鎖移動剤とを、温度30〜180℃で一段階重合させる工程を含むことを特徴とする。
このような付加開裂連鎖移動により、開始末端、停止末端および側鎖にそれぞれ異なる官能基を導入した、本発明の熱硬化性多分岐型高分子(「可溶性ハイパーブランチポリマー」または「多官能多分岐型高分子」ともいう)を一段階で合成することができる。
熱硬化性多分岐型高分子が2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと前記付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合体である場合には、さらに一官能ビニルモノマーとを加えて一段階重合させる。
付加開裂連鎖移動(AFCT)は、次式のように、成長ラジカルのAFCT剤への付加と、生じるアダクトラジカルのβ−開裂とからなる連鎖移動反応の一種であり、ω−末端には2−置換−2−プロペニル基、α−末端にはβ−開裂で放出されるラジカル由来の官能基が導入される。
Figure 0006516319
一段重合は、過酸化物、アゾ化合物および過硫酸塩などのラジカル開始剤の存在下で行われるのが好ましい。特に一段重合は、過酸化物およびアゾ化合物のラジカル開始剤の存在下で行われるのが好ましく、アゾ化合物(アゾ系重合開始剤)の存在下で行われるのがさらに好ましい。
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
ラジカル開始剤の添加量は、モノマー成分の材料や得ようとする高分子材料の物性などにより適宜設定すればよいが、通常、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマー1モルに対して、0.0002〜0.02モル程度である。
また、一段重合は、有機溶剤の存在下または非存在下(バルク)の何れであってもよい。
溶剤としては、モノマー成分を溶解し、重合反応を阻害せず、得られた重合体に悪影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチルなどの極性溶媒が挙げられる。
一段重合における重合条件は、モノマー成分の材料や得ようとする高分子材料の物性などにより適宜設定すればよい。
重合温度は、通常、30〜200℃である。
重合温度が30℃未満では、連鎖移動能が低下することがある。一方、重合温度が200℃を超えると、生成ポリマーが熱分解することがある。好ましい重合温度は、30〜180℃である。
また、重合時間は、通常、0.1〜50時間である。
重合時間が0.1時間未満では、ポリマー収率が低いことがある。一方、重合時間が50時間を超えると、ゲル化が起こる、またはポリマー中に導入された二重結合が消費されることがある。好ましい重合時間は、0.5〜12時間である。
(硬化多分岐型高分子)
本発明の硬化多分岐型高分子は、熱硬化性多分岐型高分子の熱硬化により得られる。
本発明の硬化多分岐型高分子のガラス転移点Tgは、モノマー成分の材料やその比率などにも因るが、硬化前の室温前後から、硬化後に上昇する。
本発明の硬化多分岐型高分子は、熱硬化前に25℃以下のガラス転移点を有しかつ熱硬化後に200℃以上のガラス転移点を有するのが好ましい。
また、本発明の硬化多分岐型高分子の5%重量減少温度は、重合材料やその比率などにも因るが、250〜300℃程度である。
(熱硬化)
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、粘性が低いことから溶剤を用いることなしに、また自発硬化が可能であることから硬化剤などの添加剤を加えることなしに、塗布などの公知の方法により膜などに加工することができる。
そして、得られた硬化多分岐型高分子は、耐熱性が高く、材料として安定であることから、耐熱接着剤、耐熱塗料、アンダーフィルなどの電子材料としての応用が期待できる。
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例の各工程において得られた重合物を、以下の機器および条件で分析して同定し、またそれらの物性を評価した。
(NMR)
1H NMR(Bruker製、型式:Avance300)により、下記の条件で、得られた重合物の構造解析を行った。
周波数:300MHz
測定溶媒:TMS(テトラメチルシラン)含有重クロロホルム
(MS)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI MS、Shimazu製、型式:AXIMA-CFR Plus)により、下記の条件で、得られた重合物の構造解析を行った。
イオン化電位:20kV
イオン化モード:陽イオンモード
マトリックス:2,5−ジヒドロキシ安息香酸
カチオン化剤:ヨウ化ナトリウム
(GPC)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、型式:CCPD−RE8020)および標準ポリスチレン検量線を用いたGPC測定により、下記の条件で、得られた重合物の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよびそれらの比Mw/Mnを決定した。
カラム:TSKゲルカラムMP(XL)
カラム温度:40度
溶離液:テトラヒドロフラン
サンプル注入量:100μL
検出器:示差屈折検出器
(熱分析)
熱分析装置(SEIKO製、型式:EXSTAR6000)を用いた示差熱/熱重量分析(TG/DTA)および示差走査熱量測定(DSC)により、下記の条件で、得られた重合物の硬化前後のガラス転移温度Tg(℃)および硬化後の5%重量減少温度Td5(℃)を決定した。
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素気流下
(引張せん断接着強さ)
寸法10mm×100mm×厚さ1mmのアルミニウム板の一端面の10mm×10mmに得られた熱硬化性多分岐型高分子を室温下、無溶剤で塗布し、同形のアルミニウム板の一端面の10mm×10mmを重ねてクリップで固定し、180℃で1時間加熱して熱硬化性多分岐型高分子を硬化させて試験片を得ること、万能試験機(Shimadzu製、型式:AGS−X(1kNロードセル))に得られた試験片を装着し、接着面と水平方向に1mm/minの引張速度で荷重を加えること以外は、JIS K6850:1999に準拠して、熱硬化性多分岐型高分子の接着剤としての引張せん断接着強さを測定した。DMAを含まない熱硬化性多分岐高分子およびポリマー中のDMA含量約35重量%の熱硬化性多分岐高分子は、ドライヤーで加熱しながら塗布した。
(実施例1)
容量20mLのパイレックスガラス(登録商標)製の封管中で、2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーとしてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、AFCT剤としての2−(ブロモメチル)アクリル酸メチル(MBMA)およびラジカル開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、モル比(EGDMA/MBMA)=1/2およびモル比(EGDMA/AIBN)=1/0.001で、無溶剤(バルク)、温度60℃で34時間、重合を行い、収量約0.5g(収率48%)の重合物を得た(次式参照)。
得られた重合物は、EGDMA転化率99%で、ゲル化もしなかった。
Figure 0006516319
(実施例2〜8)
表1に示す重合の条件に代えたこと以外は、実施例1と同様にして重合物を得、評価した。
得られた結果を、重合の条件と共に表1に示す。
(実施例9〜11)
表2に示す重合の条件に変更して一官能ビニルモノマーとの共重合にしたこと以外は、実施例1と同様にして重合物を得、評価した。
得られた結果を、重合の条件と共に表2に示す。
図1は、実施例8で得られた熱硬化性多分岐型高分子のNMRスペクトルとその構造を示す図である。このスペクトルによれば、高分子中にEGDMA由来のペンダントビニル基およびAFCT剤由来の2−カルボメトキシ−2−プロペニル基の重合性の異なる2種のビニル基が確認された。
図2は、実施例7で得られた熱硬化性多分岐型高分子のMALDI−MSスペクトルを示す図およびそのピークデータである。このスペクトルによれば、高分子1分子中にMBMA由来の複数の末端基が含まれることが確認された。
図中の「m/z」は、質量電荷比を意味する。
図3は、実施例8で得られた熱硬化性多分岐型高分子のGPC溶出曲線を示す図である。このデータから、重量平均分子量Mwが47000、数平均分子量Mnが8040およびそれらの比Mw/Mnが5.85であることがわかった。
NMRとGPC分子量の比較から、実施例8で得られた熱硬化性多分岐型高分子1本中の重合性基(開始末端基)を求めたところ、複数(23.2)あることがわかった。
図4は、実施例8で得られた熱硬化性多分岐型高分子および硬化多分岐型高分子のTG−DTA曲線を示す図である。このデータから、熱硬化性多分岐型高分子は100から200℃の温度範囲で熱硬化し、5%重量減少温度Td5が292℃であることがわかった。
図5は、実施例8で得られた熱硬化性多分岐型高分子および硬化多分岐型高分子のDSC曲線を示す図である。このデータから、硬化前のガラス転移点Tgが25℃、硬化後(180度で3時間熱硬化後)の後者のガラス転移点Tgが210℃以上であることがわかる。
得られた結果を、重合の条件と共に表1および2に示す。
Figure 0006516319
Figure 0006516319
本発明の熱硬化性多分岐型高分子は、低粘性であり、溶剤に溶解させることなしに加工可能であるという多分岐型高分子の特長に加えて、自発的な熱硬化が可能で、しかも硬化後の耐熱性が高く、材料として安定であることがわかる。
重合材料モル比(EGDMA/MBMA)が1/2の条件下で得られた熱硬化性多分岐型高分子は、自発的に熱硬化し、熱硬化後のガラス転移点が10℃程度上昇した。
また、重合材料モル比(EGDMA/MBMA)が1/1および1/0.5の条件下で得られた熱硬化性多分岐型高分子は、多分岐高分子1本中に9個以上の重合性基を含み、自発的に熱硬化し、熱硬化後のガラス転移点が210℃以上に上昇した。
(実施例12〜22)
表3に示す重合の条件に変更して一官能ビニルモノマーとの共重合にしたこと以外は、実施例1と同様にして重合物を得、評価した。
なお、実施例12の重合物は、多官能モノマーと付加開裂連鎖移動剤との重合物であり、一官能ビニルモノマーを含む実施例13〜22の参考として、実施例4の結果と共に表3に示す。
得られた結果を、重合の条件と共に表3に示す。
図6は、本発明の熱硬化性多分岐型高分子熱硬化前後での引張せん断接着強度の変化を示す図である。これによれば、室温下、無溶剤で塗布可能な多分岐型高分子が熱硬化により0.125MPaから7.21Mpaに飛躍的に増加することがわかる。
図7は、本発明の熱硬化性多分岐型高分子1本中の重合性基数と引張せん断接着強度との関係を示す図である。これによれば、多分岐型高分子1本中の重合性基数、すなわち架橋性基(ビニル基)の数が増加すると、引張せん断接着強度が増加することがわかる。
Figure 0006516319
表3の結果から、熱硬化性多分岐型高分子中に一官能ビニルモノマー成分としてDMAを導入することにより熱硬化性多分岐型高分子のガラス転移温度Tgを低下させることができ、DMA含量が増えるほどTgが低下することがわかる。
また、重合仕込み比、すなわち多官能モノマー/一官能ビニルモノマー/付加開裂連鎖移動剤を変動させることにより、ポリマー鎖1本当たりの架橋性基(ビニル基)の数を制御することができることがわかる。

Claims (11)

  1. 2つ以上のビニル基を有する、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である多官能モノマーと、一般式(I)〜(III):
    Figure 0006516319
    [式中、R1はハロゲン原子、−SR基、−OR基、−OOR基または−C(R)3基であり(Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシシリル基を含んでもよい)、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である]
    で表される、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である付加開裂連鎖移動剤との重合により得られることを特徴とする熱硬化性多分岐型高分子。
  2. 前記2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーが、エチレングリコールジメタクリレートである請求項1に記載の熱硬化性多分岐型高分子。
  3. 前記付加開裂連鎖移動剤が、2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルである請求項1または2に記載の熱硬化性多分岐型高分子。
  4. 前記熱硬化性多分岐型高分子が、550〜30,000の数平均分子量Mnおよび1.2〜10の重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnを有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱硬化性多分岐型高分子。
  5. 前記2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレートであり、前記付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルであり、それらのモル比が1/0.5〜1/2である請求項1〜4のいずれか1つに記載の熱硬化性多分岐型高分子。
  6. 前記熱硬化性多分岐型高分子が前記2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーと前記付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合体であり、前記2つ以上のビニル基を有する多官能モノマーがエチレングリコールジメタクリレートであり、前記一官能ビニルモノマーがメタクリル酸ドデシルであり、前記付加開裂連鎖移動剤が2−(ブロモメチル)アクリル酸メチルである請求項1〜4のいずれか1つに記載の熱硬化性多分岐型高分子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の熱硬化性多分岐型高分子の製造方法であり、
    2つ以上のビニル基を有する、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である多官能モノマーと、一般式(I)〜(III):
    Figure 0006516319
    [式中、R1はハロゲン原子、−SR基、−OR基、−OOR基または−C(R)3基であり(Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシシリル基を含んでもよい)、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である]
    で表される、脂肪族(メタ)アクリル系化合物である付加開裂連鎖移動剤とを、温度30〜180℃で一段階重合させる工程を含むことを特徴とする熱硬化性多分岐型高分子の製造方法。
  8. 前記一段階重合が、アゾ系重合開始剤の存在下で行われる請求項7に記載の熱硬化性多分岐型高分子の製造方法。
  9. 前記一段階重合が、前記多官能モノマーと、前記付加開裂連鎖移動剤と、さらに一官能ビニルモノマーとの共重合である請求項7または8に記載の熱硬化性多分岐型高分子の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の熱硬化性多分岐型高分子の熱硬化により得られた硬化多分岐型高分子。
  11. 前記硬化多分岐型高分子が、熱硬化前に30℃以下のガラス転移点を有しかつ熱硬化後に200℃以上のガラス転移点を有する請求項10に記載の硬化多分岐型高分子。
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