JP6512922B2 - 負極材用アルミニウム合金及びその製造方法、ならびに、当該アルミニウム合金を含む負極を備える塩水アルミニウム電池 - Google Patents
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Description
(1)負極(アノード)反応:Al → Al3++3e
(2)正極(カソード)反応:O2+2H2O+4e → 4OH−
1.アルミニウム合金の組成
本発明に係る塩水アルミニウム空気電池の負極材用アルミニウム合金の組成は、Si:0.0001〜0.7000mass%(以下、単に「%」と記す)、Fe:0.0001〜0.7000%、Mg:0.05〜2.00%、Sn:0.01〜1.00%、Ga:0.005〜1.000%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。更に、選択的添加元素として、Mn:0.05〜0.30%を含有してもよい。
Si及びFeはアルミニウム合金マトリクス中において、Al−Fe系金属間化合物、Al−Fe−Si系金属間化合物及び金属Si等からなるFeやSiを含有する粒子として晶出又は析出する。これらの金属間化合物は、アルミニウム母相に対してカソード反応を生起し、自己腐食速度を増大させる。自己腐食速度が大きくなると、アルミニウムの消耗が速くなるだけでなく、同じ電流を取り出すためにはより多くのアノード反応が必要となる。その結果、負極の電位が貴化してしまい、正極との大きな電位差の確保が困難になる。そのためには、SiとFeはそれぞれ、0.7000%以下とする必要がある。一方、Si及びFeは、アルミニウム材の不可避不純物として知られており、それぞれの含有量を0.0001%未満にすることは工業生産上困難である。このように、アルミニウム合金中のSi含有量及びFe含有量は共に、0.0001〜0.7000%と規定する。なお、好ましいSi含有量及びFe含有量は共に、0.0001〜0.0200%である。
MgはSn系粒子に固溶することでアルミニウムの酸化皮膜の破壊を促進させ、アノード反応の分極を小さくする。このような効果を得るためには、0.05%以上のMgを含有させることが必要である。一方、過剰にMgが含有されれば、Mgを含有する酸化皮膜が形成されるため、アノード反応の分極が大きくなってしまう。この過剰Mgの含有によるアノード反応の分極の増大を回避するには、Mg含有量の上限は2.00%とする必要がある。このように、Mg含有量は0.05〜2.00%と規定する。なお、好ましいMg含有量は、0.20〜1.00%である。
Snはマトリクス中にSn系粒子として存在することにより、アルミニウムの酸化皮膜の破壊を促進させてアノード反応の分極を小さくする。このSn添加の効果を得るためには、0.01%以上のSnの含有が必要である。一方、過剰にSnが含有されれば、耐自己腐食性が低下するとともに、鋳造中に粗大なSn粒子が晶出してしまい、製造性を著しく損なう。この過剰なSnの含有による製造性や耐自己腐食性への悪影響を回避するためには、Sn量の上限は1.00%とする必要がある。このように、Sn含有量は0.01〜1.00%と規定する。なお、好ましいSn含有量は、0.05〜0.30%である。
Gaは結晶粒界やSn系粒子の周囲に存在し、アルミニウムの酸化皮膜の破壊を促進させ、アノード反応の分極を小さくする。このGa添加の効果を得るためには、後述するように0.2μm以下の円相当直径を有するSn系金属間化合物粒子密度を106個/mm2以上とする必要がある。そのためには、0.005%以上のGaの含有が必要である。一方、過剰にGaが含有されれば、耐自己腐食性が低下する。この過剰なGaの含有による耐自己腐食性への悪影響を回避するためには、Ga量の上限は1.000%とする必要がある。このように、Ga含有量は0.005〜1.000%と規定する。なお、好ましいGa含有量は、0.01〜0.20%である。
本発明の塩水アルミニウム空気電池の負極材用アルミニウム合金において、選択的添加元素としてMnを0.05〜0.30%更に含有することが好ましい。アルミニウム合金にMnが添加されることにより、上述のAl−Fe系金属間化合物はAl−Fe−Mn系金属間化合物として、また上述のAl−Fe−Si系金属間化合物はAl−Fe−Si−Mn系金属間化合物として晶出又は析出する。Al−Fe−Mn系金属間化合物は、Al−Fe系金属間化合物に比べ、またAl−Fe−Si−Mn系金属間化合物は、Al−Fe−Si系金属間化合物に比べ、アルミニウム合金の耐自己腐食性を大幅に向上させる効果を有しており、自己腐食速度を大幅に低減させることができる。その結果、負極の単位重量当たりに得られる電流、すなわち電流効率が向上する。このMn添加の効果を得るためには、0.05%以上のMnの含有させることが好ましい。一方、過剰にMnが含有されれば、マトリックス中のMn固溶量が増大し、負極の電位が上昇し、正極との電位差が小さくなってしまう。この過剰Mnの含有による電位の上昇を回避するには、Mn含有量の上限は0.30%とすることが好まましい。なお、さらに好ましいMn含有量は、0.10〜0.20%である。
〔0.2μm以下の円相当直径を有するSn系金属間化合物粒子が106個/mm2以上〕
本発明の塩水アルミニウム空気電池の負極材用アルミニウム合金の金属組織は、そのマトリクスにおいては、0.2μm以下の円相当直径を有するSn系金属間化合物粒子の密度を106個/mm2以上とする。ここで、Sn系金属間化合物には、Al−Sn系金属間化合物、Al−Sn―Ga系金属間化合物、Al−Mg−Si−Sn系金属間化合物、Al−Mg−Sn−Ga系金属間化合物が含まれ、アルミニウム合金にMnが含有される場合には、これら金属間化合物に加えてAl−Sn−Mn系金属間化合物、Al−Mg−Si−Sn−Mn系金属間化合物、Al−Mg−Sn−Ga−Mn系金属間化合物が含まれる。
次に、本発明の塩水アルミニウム空気電池の負極材用アルミニウム合金の製造方法について説明する。
本発明の塩水アルミニウム空気電池の負極材用アルミニウム合金は、アルミニウム合金の鋳造工程での板厚中央における冷却速度が200℃/秒以上であることが求められる。
200℃/秒以上の冷却速度は、Ga及びSnの最終凝固部への偏析を抑制できるため、Al−Sn系、Al−Sn−Ga系金属間化合物を微細に晶出させることが可能となり、上述のSn系金属間化合物の粒子密度を確保できる。また、同時に固溶限の低いSnを代表とする低融点元素を過飽和に固溶させることも可能となり、過飽和に固溶したSnを、後述する圧延工程においてAl−Sn系金属間化合物として微細に析出させることが可能となる。さらに、固溶限の低いFeを代表とする不可避的不純物も鋳造工程において過飽和に固溶させることが可能となり、不可避的不純物として存在するFeの固溶量を大幅に増大させることができ、Al−Fe系金属間化合物、Al−Fe−Si系金属間化合物の粗大化を抑制することができる。また、アルミニウム合金にMnが含有される場合には、Al−Fe−Mn系金属間化合物、Al−Fe−Si−Mn系金属間化合物の粗大化を抑制することができる。一方、板厚中央における冷却速度が200℃/秒より低い場合は、Ga及びSnが最終凝固部に偏析するため、Al−Sn系、Al−Sn−Mg−Ga系析出物の放電特性に有効な面密度が得られない。また、低融点元素であるSnや、不可避的不純物として添加されているFeのような、固溶限以上に添加された溶質元素が最終凝固部に偏析し、粗大な晶出物が形成される。Al−Fe系金属間化合物とAl−Fe−Si系金属間化合物、及び、アルミニウム合金にMnが含有される場合には、Al−Fe−Mn系金属間化合物とAl−Fe−Si−Mn系金属間化合物、ならびに、金属Si等からなるFeやSiを含有する粒子は、粗大化すると自己腐食速度を増大させる。なお、上記冷却速度は、好ましくは230℃/秒以上である。
本発明に係るアルミニウム合金材が、板厚中央において200℃/秒以上の冷却速度で鋳造されるためには、薄板連続鋳造法を用いることが望ましい。薄板連続鋳造は、DC鋳造と比較して鋳造板厚を小さくでき、且つ鋳造時に鋳型と鋳塊の接触時間を長く取れるため、板表面から板厚中央までの凝固を短時間で完了させることが可能である。そのため、薄板連続鋳造法は、凝固時の冷却速度がDC鋳造法に比べて数倍〜数百倍高い。DC鋳造法の場合の冷却速度が0.5〜20℃/秒であるのに対し、例えば、双ロール式薄板連続鋳造法の場合は100〜1000℃/秒である。
〔圧延温度〕
上記鋳造工程を経た鋳塊は、所定厚さまで圧延を施される。本発明では、圧延後の最終板厚さは、好ましくは0.1〜15mm、より好ましくは1〜5mmである。上述のように高い冷却速度で鋳造されたアルミニウム合金材には、Snが過飽和に固溶されているため、その後の圧延工程においてひずみが導入されると、そのひずみや結晶粒界を起点として、圧延中の局所的な微量の加工発熱によってAl−Sn系金属間化合物の微細析出が促進される。ただし、Al−Sn−Mg−Ga系晶出物の融点は480℃であるため、圧延は480℃未満で行なうのが好ましく、450℃以下で行うのがより好ましい。圧延中に材料温度が480℃を超えると、微細に分散されたAl−Sn系金属間化合物とそれらを取り囲むα−Al母相が部分的に溶融してしまう。溶融して液相として繋がった領域は、再び凝固する際に最終凝固部にて粗大な晶出物が生成され、且つ微細な析出物が消失してしまう。また、Al−Sn系合金の共晶温度は228℃であるため、Al−Sn系金属間化合物の部分溶融を最小限に抑制するには、圧延時の温度は更に好ましくは228℃未満であり、最も好ましくは200℃以下である。
本発明に係る塩水アルミニウム空気電池は、正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在し、1.0〜4.0mol/リットルのNaClを含有する電解水溶液とを備える。正極は酸素を正極活物質とし、酸素の酸化還元触媒と、これを担持する導電性の触媒担体とから構成される。酸化還元触媒としては、二酸化マンガンなどの金属酸化物、白金(Pt)等の金属及びこれらの合金が用いられる。また、触媒担体としては、カーボンブラックなどのカーボン粒子が用いられる。負極には、上述の負極材用アルミニウム合金材が用いられる。圧延後のアルミニウム合金材は、表面の酸化皮膜を除去するためにアルカリ溶液で処理し、次いで中和のために酸溶液で処理し、最後に水洗したものが負極に用いられる。電解溶液としては、1.0〜4.0mol/リットルのNaCl(塩化ナトリウム)を含有する水溶液が好適に用いられる。そして、この電解水溶液を含浸したセパレータを介して、上記正極と負極を対向配置して塩水アルミニウム空気電池が作製される。
塩水アルミニウム空気電池の負極材用アルミニウム合金には、表1に示す組成の合金を用いた。これらの合金に対し、表2に示す鋳造工程及び圧延工程を実施した。鋳造工程と圧延工程の条件を表2に示す。表2に示す鋳造工程において実施した鋳造方法は、TRC(Twin Roll Casting)が双ロール式薄板連続鋳造、TBC(Twin Belt Casting)が双ベルト式連続鋳造、DCがDC鋳造である。
Sn系金属間化合物粒子密度は、SEMを用いて以下のように測定した。上記試料片の厚さ方向及び鋳造方向に沿った試料断面のSEM像(倍率:15000倍)を、一つの試料について、板表面近傍、両表面からそれぞれ板厚1/4部、ならびに、板厚中央部より任意に8箇所撮影し、Sn系金属間化合物粒子の断面積及び数を画像処理により測定した。次いで、測定したSn金属間化合物粒子数を測定面積で割ることで各測定箇所の密度を求めた。更に、8個所の算術平均値をもって密度分布とした。
板厚中央における鋳造時の冷却速度は、デンドライト2次アーム間隔(Dendrite Arm Spacing:以下、単にDASと記す)を測定して算出する。アルミニウム合金の冷却速度Cα(℃/秒)と、公線法で測定したDAS、dr(μm)には下記式(3)に示す関係がある。
(3)冷却速度とDASの関係:dr=66.7Cα −0.36
25℃に保たれた2.0mol/リットルのNaCl水溶液中において、Pt板を正極に用い、上記で得た樹脂被覆試験片を負極に用いて、アルミニウム空気電池を作製した。この電池を用いて、100mA/cm2のアノード電流を60分間流した。このときの電位を、Ag/AgCl電極を基準として測定した。電流付与から、負極材の電位が−1000mV以下となるまでの時間を応答時間(分)とし、−1000mV以下の電位に保持された時間を有効時間(分)とし、100mA/cm2のアノード電流を60分間流したことから算出されるAlの溶解量を試験前後における負極の質量変化量(試験前−試験後)で除した値を電流効率とした。
Claims (5)
- Si:0.0001〜0.7000mass%、Fe:0.0001〜0.7000mass%、Mg:0.05〜2.00mass%、Sn:0.01〜1.00mass%、Ga:0.005〜1.000mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、マトリクス中に存在する0.2μm以下の円相当直径を有するSn系金属間化合物粒子の密度が106個/mm2以上であることを特徴とするアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金。
- 前記アルミニウム合金が、Mn:0.05〜0.30mass%を更に含有する、請求項1に記載のアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金。
- 請求項1又は2に記載のアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金の製造方法において、前記アルミニウム合金の鋳造工程での板厚中央における冷却速度が200℃/秒以上であり、鋳造工程後に、前記アルミニウム合金の板材が480℃未満の圧延工程において所定厚さまで圧延されることを特徴とするアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金の製造方法において、前記アルミニウム合金の鋳造工程での板厚中央における冷却速度が200℃/秒以上であり、鋳造工程において、双ロール式薄板連続鋳造法又は双ベルト式薄板連続鋳造法が用いられることを特徴とするアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金の製造方法。
- 正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在し、1.0〜4.0mol/リットルのNaClを含有する電解水溶液とを備え、前記負極が、請求項1又は2に記載のアルミニウム塩水電池の負極材用アルミニウム合金を含むことを特徴とするアルミニウム塩水電池。
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