以下、本発明の第1の実施の形態に係る扉開閉用ハンドル100について、図1ないし図16に基づいて説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る扉開閉用ハンドル100は、図1に示されるように、扉101の扉面101a(本実施の形態では屋内面)に取り付けられ、扉101の開閉操作に用いられるものである。扉開閉用ハンドル100が取り付けられる扉101は、防音室等に用いられる気密扉であり、防音室等を出入りするための開口部周縁に沿って枠体102を取り付け、その枠体102に側縁が支持されて開口部を開閉可能とするものである。
扉開閉用ハンドル100は、いわゆるローラー締りハンドルであり、扉101に取り付けられる台座1、開閉操作が行なわれるハンドル部3、およびハンドル部3を台座1に回動自在に支持するための軸部2を備え、ハンドル部3の一端には、ローラー部37bが取り付けられている。枠体102の側縁のうち扉101を閉めた状態において扉開閉用ハンドル100と対向する部位には、上下方向に縦長の溝状の係合穴部103が設けられており、実線で示されるように、ローラー部37bが係合穴部103に係合されることで扉の開閉が阻害され、二点鎖線で示されるように、ハンドル部3が回動されてローラー部37bと係合穴部103との係合が解除されると扉の開閉が許されるようになっている。
図10に示されるように、係合穴部103は、その扉側の内壁103aは上半部が厚肉部103bに、下半部が傾斜部103cに形成されている。扉101を閉めた状態において、扉開閉用ハンドル100を、ローラー部37bが係合穴部103に係合される方向へと回動させると、ローラー部37bが傾斜部103cに当接して傾斜部103cを転がりながら厚肉部103bに移動し、厚肉部103bの厚みに応じて扉101が枠体102に引き寄せられ、扉101が枠体102と密着し、気密性および防音性が保たれるようになっている。
以下、本明細書および特許請求の範囲において、図1に実線で示すように、ハンドル部3が扉101を閉めた状態で扉101の開閉を阻害する位置にあるときをハンドル部3の閉位置Pcといい、図1に二点鎖線で示すように、扉の開閉を許す位置にあるときをハンドル部3の開位置Poという。また、ハンドル部3が閉位置側から開位置側へ回動する方向を開方向Doといい、ハンドル部3が誡位置側から閉位置側へ回動する方向を閉方向Dcという。以下の説明において、扉開閉用ハンドル100を扉101の扉面101aに取り付けた状態において扉面101aに対向する側を裏、その反対側を表として説明する。
扉開閉用ハンドル1の台座1は、図1および図2に示されるように、正面視において外縁がD字形状に形成された板状部材であって、その裏面が扉101への取付面11となる基台部10と、該基台部10の表面12の略中央から表側に向って若干先細りの円柱状に延出された延出部14とから概略構成される。台座1には、例えば真鍮等の銅合金やステンレス(SUS304)等の非磁性体の合金材料が用いられている。図4も参照して、延出部14の延出した先端面は、取付面11と平行な座面15となっている。
台座1には、延出部14の座面15の略中央に位置して、座面15から基台部10の裏面までを貫通し、軸部2が挿入される軸挿入孔16が形成されている。さらに、基台部10の取付面11の中央には、基台部10の表面12側に向って凹み、軸挿入孔16と連通している取付面凹部13が形成されている。基台部10には、図2および図3に示すように、表裏に貫通するボルト挿通孔17が、延出部14を取り囲むように4箇所に設けられている。
このように構成される台座1は、取付面11を扉101の扉面101a(屋内面)に対向させて、図1に示すように、表面側からボルト挿通孔17に挿通された4本のボルト18により扉101の扉面101aに取り付けられている。また、本実施の形態においては、取付面11と扉面101aとの間に、図2に示すような、正面視D字状で所定の厚みを有するライナー19を介在させることで、扉開閉用ハンドル100の取付レベル(扉面101aからの距離)を調整している。
図2に示されるように、軸部2は、一端に雄ねじ部20が設けられ、軸方向において一端側(すなわち雄ねじ部20側)には、第1軸部21が形成されており、他端側には、第1軸部21と連設され、第1軸部21よりも拡径された第2軸部23が形成されている。第1軸部21と第2軸部23とは径が異なるので、軸部2は第1軸部21と第2軸部23との境界において段部22となっている。
軸部2の他端側には、第2軸部23に連設して第2軸部23よりも軸方向外側に、第2軸部23よりも拡径された円盤状のフランジ部24が一体に形成されている。軸部2には、鋳鉄系の材料が用いられている。
図3も参照して、第2軸部23には、外周面から軸部2の軸中心X2に向って円柱形に凹む二つの凹部23a1,23a2が、軸中心X2を中心とする所定角度間隔α(本実施の形態では65度)で設けられている。フランジ部24には、軸方向視で軸部2の軸中心X2を中心として所定角度範囲(本実施の形態では約80度)に亘ってフランジ部24の外周縁が所定幅で切欠かれた切欠き部24aが設けられている。切欠き部24aの両方の端部24a1。24a2は、図7に示されるように、後述する円柱状の制限ピン38の外周円弧に沿うように形成されている。
図2ないし図4に示されるように、ハンドル部3は、所定の厚みを有し中央に軸挿入孔32が形成された基部30と、基部30と一体に形成された把持部33と、基部30に取り付けられ扉101の締付けを補助するローラー締り部37と、把持部33のほぼ全体を覆うハンドル部グリップ35とを備えている。基部30および把持部33には、例えば真鍮等の銅合金やステンレス(SUS304)等の非磁性体の合金材料が用いられる。
基部30の軸挿入孔32は、基部30の中央部の表裏を貫通して台座1の軸挿入孔16よりもやや拡径されて形成されている。基部30には、軸挿入孔32の中心X3を中心として所定角度を存して延出する二つの延出部30a,30bが設けられている。
図3および図4に示されるように、基部30の一方の延出部30bから、軸挿入孔32の径方向外方に向ってさらに延出して、把持部33が一体に形成され、該把持部33は略全体がハンドル部グリップ35で覆われている。ハンドル部グリップ35は、表裏で二分割されており、把持部33を挟み込むように取り付けられ、把持部33の幅方向中央に位置し把持部33の長手方向(以下、単に「長手方向」という。)に沿って、表裏六か所がねじ36でもって固定されている。
基部30の他方の延出部30aには、ローラー締り部37が設けられている。該ローラー締り部37は、図3に示されるように、ローラー軸37aと該ローラー軸37aに回転可能に支持されるローラー部37bとを備えており、該ローラー軸37aは、基部30の他方の延出部30aに、軸方向を軸挿入孔32の中心X3に向けて取り付けられている。ローラー軸37aは、中心X3を中心として、把持部33の長手方向中心と所定角度を存するようになっている。図2および図4に示されるように、基部30の表面の軸挿入孔32の周縁部に、ハンドル部3の回動を規制する一本の円柱状の制限ピン38が突設されている。
把持部33のうち、ハンドル部グリップ35で覆われた部分の表面側の一部には、図4および図7に示されるように、裏面側へ向って平面状に凹む把持部凹部34が形成されている。把持部凹部34内には、ハンドル部グリップ35を固定するねじ36が螺合される固定柱34aが、長手方向の中央部と基部30から離れる側の端部の二か所に立設されている。図4に示されるように、二つの固定柱34aの長手方向の間に位置してトリガ軸34bが立設されている。該トリガ軸34bは、図7に示されるように、把持部33の幅方向において、固定柱34aよりものハンドル部3の開方向Do側に位置して配設されている。図4および図7に示されるように、ハンドル部3の基部30、延出部30bおよび把持部33の内部には、長手方向に向かって、把持部凹部34と軸挿入孔32とを貫通するシャフト挿通孔33aが設けられている。
次に、図4を参照して台座1に軸部2およびハンドル部3が組付けられた状態について説明する。
ハンドル部3は、ハンドル部3の基部30の裏面(以下、「対向面31」という。)と台座1の座面15と対向し、ハンドル部3の軸挿入孔32の中心X3と台座1の軸挿入孔16の中心X1とが一致するように、台座1に重ねられ、軸部2がハンドル部3側から両軸挿入孔16,32に挿入されている。このとき、軸部2の第2軸部23はハンドル部3の軸挿入孔32に、第1軸部21は台座1の軸挿入孔16にそれぞれ挿入された状態となり、フランジ部24はハンドル部3の表面に、軸部2の段部22は台座1の座面15にそれぞれ当接され、軸部2の雄ねじ部20は台座1の取付面凹部13内に突出した状態となっている。雄ねじ部20には、取付面凹部13内においてワッシャ25が挿通されナット26が螺合されている。軸部2は、後述する固定部材4とキー溝40で位置決めされ、段部22とナット26とにより台座1に固定されている。このようにして、軸部2は、軸方向が座面15と直交するよう座面15の中央に配設され、ハンドル部3は、軸部2を介して台座1に回動可能に支持される。
図3に示されるように、台座1に軸部2およびハンドル部3が組付けられた状態において、制限ピン38はフランジ部24の切欠き部24a内に位置するよう配設されており、該制限ピン38により、ハンドル部3の回動範囲が規制されている。すなわち、ハンドル部3は、切欠き部24aの一方の端部24a1が制限ピン38に当接する状態から、他方の端部24a2が制限ピン38に当接する状態までの間の範囲内でのみ回動可能であり、図1に示されるように、その回動範囲は、開位置Poと閉位置Pcとの間の所定の角度ε(本実施の形態では約65度)に規制されている。フランジ部24と制限ピン38は軸部カバー27により覆われている。
次に、軸部2を台座1に固定する固定部材4とキー溝40について説明する。キー溝40は、図3および図4に示されるように、台座1の軸挿入孔16の内周面に設けられる台座側キー溝40aと、台座側キー溝40aに対向する軸部2の外周面に設けられる軸部側キー溝40bとからなり、これらの台座側キー溝40aと軸部側キー溝40bとが合わさると、軸方向に沿う略円柱状の空間になるように形成されている。すなわち、キー溝40は、軸挿入孔16の内周面の一部と、これに対向する軸部2の外周面の一部に設けられている。
台座側キー溝40aは、台座1の軸挿入孔16の内周面の一部が、取付面11側の端縁から座面15側に向って略半円柱状に切欠かれて形成されている。また、軸部側キー溝40bは、雄ねじ部20および第1軸部21の外周面の一部が、軸方向に沿って略半円柱状に切欠かれて形成されている。軸部側キー溝40bは、図4に示されるように、台座側キー溝40aよりも段部22方向(表方向)側に長く形成され、後述するキー41の回転を規制する規制部40b1となっている。
軸部2は、キー溝40に挿入される固定部材4により、基台部10に対して回動不能に固定されている。固定部材4は、図6に示されるように、キー溝40の内部に収容されるキー41と、キー溝40に収容されたキー41の外周面の一部を、キー溝40の内周面の一部に押圧するための押圧部材となる雄ねじ部材44を備えている。なお、以下の固定部材4の説明において、座面15側を先端、取付面11側を後端として説明する。
図2および図6に示されるように、キー41は、第1キー部42と第2キー部43とからなり、それぞれの軸中心が重なるように第1キー部42と第2キー部43とが合わさると、キー溝40の内径よりも小さい径の厚肉円筒形状となる。第1キー部42と第2キー部43は、この厚肉円筒形状のキー41が、軸方向に対して斜めに二分割された形状になるよう形成されている。
第1キー部42の先端には、図2に示されるように、先端の一部が軸方向に沿って突出した突部42cが形成されている。図4に示されるように、突部42cがキー溝40の規制部40b1に嵌ることで、第1キー部42のキー溝40内での回動が規制される。さらに、図6に示されるように、第1キー部42には、軸中心を貫通して雌ねじ部42bが形成され、後端は軸方向に対して傾斜する傾斜面42aとなっている。
第2キー部43には、軸中心を貫通して第1キー部42の雌ねじ部42bよりもやや拡径された円孔43bが形成されており、前端は第1キー部42の傾斜面42aと同じ傾斜角に傾斜する傾斜面43aとなっている。
図6に示されるように、キー41はキー溝40内に、第1キー部42が先端側、第2キー部43が後端側となるように基台部10の取付面11側から挿入されており、第1キー部42の傾斜面42aと第2キー部の傾斜面43aとは摺動可能に当接されている。このような状態で、雄ねじ部材44は、第2キー部43の円孔43bに挿通され、第1キー部42の雌ねじ部42bに螺合される。このため、第2キー部43は、雄ねじ部材44(押圧部材)により第1キー部42に押圧されることとなる。前述したように、円孔43bは雌ねじ部42bよりも拡径されているため(すなわち、雄ねじ部の外径よりも内径が大きい)、第2キー部43が第1キー部42に雄ねじ部材44で押圧されると、第2キー部43は第1キー部42に対して傾斜面43aに沿って傾斜方向に摺動する。そのため、第1キー部42の外周面の一部と第2キー部43の外周面の一部は、それぞれキー溝40に強く押し付けられた状態となり、キー41はキー溝40に強く押圧されることとなる。このようにして、軸部2は、固定部材4により台座1にガタつきなく強固に回動不能に固定される。
次に、図7を参照して、ハンドル部3に設けられ、ハンドル部3の回動動作を規制・解除するトリガ機構6について説明する。
トリガ機構6は、操作に供するトリガレバー60、軸部2の凹部23a1,23a2に係脱されるハンドル部固定シャフト62、およびトリガ機構6へ付勢力を供給するトリガばね63を備えている。トリガレバー60は、正面視でL字状に屈曲して形成され、屈曲部60aにおいてトリガ軸34bに搖動自在に支持されている。
トリガレバー60の一端部60bには、前述したシャフト挿通孔33aに挿通されたハンドル部固定シャフト62が連結部61を介して連結されており、トリガレバー60の揺動に伴い、ハンドル部固定シャフト62が軸方向(長手方向)に移動され、ハンドル部固定シャフト62の軸部2側の先端は、シャフト挿通孔33aから軸部2側に出没するようになっている。
トリガ軸34bには、トリガレバー60を把持部33から遠ざける方向(以下、「ロック方向DL」という。)へ付勢するトリガばね63が巻回されて取り付けられており、トリガレバー60が受けるトリガばね63からの付勢力により、ハンドル部固定シャフト62は軸部2へ向けて付勢されており、トリガレバー60を操作しない場合には、ハンドル部固定シャフト62の軸部2側の先端は、シャフト挿通孔33aから軸部2側に突出された状態となる。
トリガ機構6はこのように構成されているので、図7に示されるようなハンドル部3が開位置Poにありトリガレバー60が操作されていないときは、ハンドル部固定シャフト62の先端はトリガばね63の付勢力により軸部2の凹部23a2に係合され、ハンドル部3が閉位置Pcにありトリガレバー60が操作されていないときは、ハンドル部固定シャフト62の先端はトリガばね63の付勢力により軸部2の凹部23a1に係合され、それぞれハンドル部3は、開位置Poまたは閉位置Pcに固定されて回動が規制されるようになっている。
このような状態から、トリガばね63の付勢力に抗してトリガレバー60を把持部33に近づける方向(以下、「アンロック方向DU」という。)に搖動させることで、ハンドル部固定シャフト62が軸部2の凹部23a1,23a2から離脱し、ハンドル部3の回動の規制が解除され、ハンドル部3を回動させることができるようになる。この回動可能な状態から、ハンドル部3が開位置Poまたは閉位置Pcへと回動され、トリガレバー60から操作者が手を離すと、トリガレバー60はトリガはね63の付勢力によりロック方向DLへと揺動されて、ハンドル部3の回動が規制される状態となる。
次に、主に図8および図9を参照して、台座1の座面15とハンドル部3の対向面31とに設けられ、磁力を用いてハンドル部3に付勢力を与えるとともにハンドル部3を開位置Pおよび閉位置Pcに固定する台座側磁石70およびハンドル側磁石71について説明する。
台座1の座面15には、図2および図8に示されるように、座面15から台座1の取付面11側に向って円柱状に凹む台座側磁石取付け凹部15a、および該台座側磁石取付け凹部15aを連結するように保護プレート取付溝15bが設けられている。保護プレート取付溝15bは、後述する台座側保護プレート50を取り付けるための溝である。保護プレート取付溝15bの深さは、台座側保護プレート50の厚さと同じになっている。保護台座側磁石取付け凹部15aは、軸挿入孔16の中心X1(すなわち、軸部2の軸中心X2)を中心とする仮想円Cの円周上に、全周に亘って等角度間隔β(本実施の形態では45度)で8か所設けられている。ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「角度間隔」とは、基準となる所定の中心を頂点として、その周方向に配置される対象物の中心を通る線分同士がなす角度をいう。また、図中のSおよびNの文字は、SがS極を、NがN極をそれぞれ示している(以下、同じ。)。
各台座側磁石取付け凹部15aには、一端をS極、他端をN極とする円柱状の台座側磁石70が、隣接する台座側磁石70同士の座面15に現れる磁極を相互に異極として、保護プレート取付溝15bと面一になるように圧入されて取り付けられている。すなわち、8個の台座側磁石70は、隣接する台座側磁石70同士の磁極を相互に異極として仮想円Cの円周上に全周に亘って等角度間隔β(本実施の形態では45度)で配置されている。また、台座側磁石70は、等角度間隔γ(本実施の形態では90度)で座面15に現れる磁極が同極となるように配置されている。本実施形態では、台座側磁石70の中心点70cが、仮想円Cの円周上を通るように配置されているが、台座側磁石70の中心点70cが、仮想円Cの円周上を通らなくとも、台座側磁石70の一部が、仮想円Cの円周に重なるように配置すればよい。
本実施の形態では、各台座側磁石取付け凹部15aには、それぞれ1個づつ台座側磁石70が取り付けられているが、磁力を高めるために、複数個の台座側磁石70を重ねて、各台座側磁石取付け凹部15aに取り付けてもよい。
各磁石取付け凹部15aに、それぞれ台座側磁石70が圧入された後に、磁石取付け凹部15aおよび保護プレート取付溝15bに、図2に示されるような台座側保護プレート50が嵌装される。該台座側保護プレート50は、磁石取付け凹部15aに嵌合する磁石保護部50a、と保護プレート取付溝15bに嵌合する連結部50bから構成されている。台座側保護プレート50が、磁石取付け凹部15aおよび保護プレート取付溝15bに取り付けられると、台座1の座面15と台座側保護プレート50の表面は面一になる。このように台座側保護プレート50が取り付けられているので、ハンドル部3の対向面31が台座1の座面15に対して摺動しても、台座側磁石70の表面は、台座側保護プレート50により保護され摩耗することがない。
ハンドル部3の基部30の対向面31には、図2および図9に示されるように、対向面31からハンドル部3の表面側に向って台座側磁石取付け凹部15aと同一形状に凹むハンドル側磁石取付け凹部31aが、仮想円Cの円周上に、全周に亘って等角度間隔β(本実施の形態では45度)で8か所設けられている。さらに、ハンドル側磁石取付け凹部31aを連結するように、後述するハンドル側保護プレート51を取り付けるための保護プレート取付溝31bが設けられている。保護プレート取付溝31bの深さは、ハンドル側保護プレート51の厚さと同じになっている。
各磁石取付け凹部31aには、一端をS極、他端をN極とする円柱状のハンドル側磁石71が、隣接するハンドル側磁石71同士の対向面31に現れる磁極を相互に異極として、保護プレート取付溝31bと面一になるように圧入されて取り付けられている。すなわち、8個のハンドル側磁石71は、隣接するハンドル側磁石71同士の磁極を相互に異極として仮想円C上に全周に亘って等角度間隔β(本実施の形態では45度)で配置されている。また、ハンドル側磁石71は、等角度間隔γ(本実施の形態では90度)で対向面31に現れる磁極が同極となるように配置されている。なお、台座側磁石70およびハンドル側磁石71にはネオジム磁石等の永久磁石が用いられている。本実施形態では、ハンドル側磁石71の中心点71cが、仮想円Cの円周上を通るように配置されているが、ハンドル側磁石71の中心点71cが、仮想円Cの円周上を通らなくとも、ハンドル側磁石71の一部が、仮想円Cの円周に重なるように配置すればよい。
本実施の形態では、各ハンドル側磁石取付け凹部31aには、それぞれ1個づつハンドル側磁石71が取り付けられているが、磁力を高めるために、ハンドル側磁石70を複数個重ねて、各ハンドル側磁石取付け凹部31aに取り付けてもよい
各磁石取付け凹部31aに、それぞれハンドル側磁石71が圧入された後に、磁石取付け凹部31aおよび保護プレート取付溝31bに、図2に示されるようなハンドル側保護プレート51が嵌装される。該ハンドル側保護プレート51は、磁石取付け凹部31aに嵌合する磁石保護部51aと、保護プレート取付溝31bに嵌合する連結部51bとで構成されている。ハンドル側保護プレート51が、磁石取付け凹部31aおよび保護プレート取付溝31bに取り付けられると、ハンドル部3の対向面31とハンドル側保護プレート51の表面は面一になる。このようにハンドル側保護プレート51が取り付けられているので、ハンドル部3の対向面31が台座1の座面15に対して摺動しても、ハンドル側磁石71の表面は、ハンドル側保護プレート51により保護され摩耗することがない。
次に、ハンドル部3を台座1に組付けた状態における台座側磁石70とハンドル側磁石71の相互の位置関係について図11ないし図13を用いて説明する。
図中、実線がハンドル側磁石71を、破線が台座側磁石70をそれぞれ簡易的に示し、SおよびNの文字は、SがS極を、NがN極をそれぞれ示し、仮想円Cの円周の外側が台座側磁石70の磁極を、内側がハンドル側磁石71の磁極をそれぞれ示している。また、ハンドル側磁石71の位置を明示するため、ハンドル側磁石71の一つに黒丸を付す。
以下、説明のため、ハンドル部3が閉方向Dcへ向けて回動する際に、台座側磁石70に対してハンドル側磁石71が動く方向(図中時計回り方向)を正方向CWとし、ハンドル部3が開方向Doへ向けて回動する際に、台座側磁石70に対してハンドル側磁石71が動く方向(図中反時計回り方向)を逆方向ACWとする。
図11に示されるように、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するとき、ハンドル側磁石71は、台座側磁石70と完全に一致して対向する位置にはなく、台座側磁石70に対して逆方向ACW側(図中、反時計回り方向側)へ所定角度θ(本実施の形態では12.5度)ずれて、台座側磁石70とその一部が対向するように配置されている。このとき、台座側磁石70とハンドル側磁石71とは、異なる磁極同士で一部が対向されているので、台座側磁石70とハンドル側磁石71とは、互いが完全に一致して対向するようにと引き寄せ合い、台座側磁石70とハンドル側磁石71との間には磁力による吸引力および吸着力が作用している。
図12に示されるように、ハンドル部3が閉位置Pcと開位置Poの中間の中間位置Pmに位置するとき、台座側磁石70とハンドル側磁石71とは、同じ磁極同士で完全に一致するように対向して位置され、台座側磁石70とハンドル側磁石71との間には磁力による反発力が作用している。
図13に示されるように、ハンドル部3が開位置Poに位置するとき、ハンドル側磁石71は、台座側磁石70と完全に一致して対向する位置にはなく、台座側磁石70に対して正方向CW側(図中、時計回り方向側)へ所定角度θ(本実施の形態では12.5度)ずれ、台座側磁石70と一部が対向するように配置されている。このとき、台座側磁石70とハンドル側磁石71とは、異なる磁極同士で一部が対向されているので、台座側磁石70とハンドル側磁石71とは、互いが完全に一致して対向するようにと引き寄せ合い、台座側磁石70とハンドル側磁石71との間には磁力による吸引力および吸着力が作用している。
ここで、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するときにハンドル側磁石71と一部対向する台座側磁石70は、ハンドル部3が中間位置Pmに位置するときにハンドル側磁石71と対向する台座側磁石70の正方向CW側(時計回り方向側)に隣接する台座側磁石70である。また、ハンドル部3が開位置Poに位置するときにハンドル側磁石71と一部対向する台座側磁石70は、ハンドル部3が中間位置Pmに位置するときにハンドル側磁石71と対向する台座側磁石70の逆方向ACW側(反時計回り方向側)に隣接する台座側磁石70である。
すなわち、ハンドル側磁石71は、ハンドル部3が閉位置Pcおよび開位置Poに位置するときには、中間位置Pmにおいてハンドル側磁石71と対向する台座側磁石70寄りに所定角度θずれ、台座側磁石70と異なる磁極同士で一部対向する。そして、台座側磁石70とハンドル側磁石71とは、ハンドル部3が中間位置Pmに位置するときにのみ同じ磁極同士で対向する。
次に、台座側磁石70とハンドル側磁石71の作用について、ハンドル部3の閉位置Pcから開位置Poまでの回動を例に、図14ないし図16を用いて以下説明する。
図中、台座側磁石70とハンドル側磁石71とを区別するため、台座側磁石70を破線およびハッチを入れて示し、ハンドル側磁石71を実線で示す。また、以下の説明においては、ハンドル側磁石71のうちの一つに着目して符号aを付し、そのハンドル側磁石71aに関連する三つの台座側磁石70に符号A、B、Cをそれぞれ付す。また、ハンドル部3を二点鎖線で縮小して例示する。
図14に示されるように、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するとき、ハンドル側磁石71aには、一部対向している台座側磁石70Aとの間に生じる吸引力(図中、黒塗り矢印で例示する)と、該台座側磁石70Aの逆方向ACW側(反時計回り方向側)に隣接する台座側磁石70Bとの間に生じる反発力(図中、白抜き矢印で例示する。)が作用する。このように、ハンドル側磁石71には吸引力と反発力の二つの磁力が作用し、ハンドル部3は、同じ磁極同士の反発力により閉方向Dc側に付勢されるとともに、異なる磁極同士の吸着力により閉位置Pcに固定される。
ハンドル部3が、磁力の吸引力(吸着力)および反発力に抗して閉位置Pcから開方向Do側へ回動し中間位置Pmへ近づいていく、ハンドル側磁石71aに作用する台座側磁石70Aとの間の吸引力は弱まっていき、台座側磁石70Bとの間の反発力は強くなっていく。
そして、図15に示されるように、ハンドル部3が中間位置Pmに位置するとき、ハンドル側磁石71aは台座側磁石70Bと完全に一致して対向し、ハンドル側磁石71aに作用する台座側磁石70Aからの吸引力は最小となり、台座側磁石70Bからの反発力は最大となる。そのため、ハンドル部3は、反発力により中間位置Pmに留まることができず、ハンドル部3が中間位置Pmから閉方向Dc側に少しでも回動すると、ハンドル部3には同反発力によりハンドル部3を閉方向Dc側(閉位置Pc側)へと付勢する力が作用する。一方、ハンドル部3が中間位置Pmから開方向Do側に少しでも回動すると、ハンドル部3には台座側磁石70とハンドル側磁石71との反発力によりハンドル部3を開方向Do側(開位置Po側)へと付勢する力が作用する。
開位置Poと閉位置Pcとの間を回動するハンドル部3が中間位置Pmを超える際に、扉開閉用ハンドル100を操作する者は、同極同士の反発力が最大となる位置を乗越えることによりいわゆるクリック感を得ることができる。
ハンドル部3が、中間位置Pmから開方向Do側へ回動すると、ハンドル側磁石71aには、ハンドル部3が中間位置Pmに位置するときに対向する台座側磁石70Bとの間に生じる反発力と、該台座側磁石70Bの逆方向ACW側(反時計回り方向側)に隣接する台座側磁石70Cとの間に生じる吸引力が作用する。ハンドル部3が開位置Poへ近づくと、台座側磁石70Bとの間の反発力は弱まり、台座側磁石70Cとの間の吸引力は強くなる。
そして、図16に示されるように、ハンドル部3が開位置Poに位置するとき、ハンドル側磁石71aには台座側磁石70Cとの間の吸引力(図中、黒塗り矢印で例示する。)と台座側磁石70Bとの間の反発力(図中、白抜き矢印で例示する。)の二つの磁力が作用し、ハンドル部3は、同じ磁極同士の反発力により閉方向Dc側に付勢されるとともに、異なる磁極同士の吸着力により閉位置Pcに固定される。
以上、図14ないし図16において、台座側磁石70A,70B,70Cおよびハンドル側磁石71aに着目して説明したが、他の台座側磁石70およびハンドル側磁石71についても同様の位置関係が適用され、同様の作用が生じる。
このように、本発明においては、永久磁石の磁力によってハンドル部3に付勢力を作用させているため、ばねのように使用頻度に伴って付勢力が減少していくことがなく、付勢力を半永久的に持続させることができる。なお、開位置Poおよび閉位置Pcに位置するハンドル部3に、磁力の吸引力および反発力の両方を作用させるためには、ハンドル部3の回動範囲が、台座側磁石70同士およびハンドル側磁石71同士が同極となる角度間隔γ(本実施の形態では90度)よりも狭く、異極となる角度間隔β(本実施の形態では45度)よりも広い角度εに規制されることが望ましい。
以上、詳細に説明した本実施の形態に係る扉開閉用ハンドル100は、以下の効果を奏する。
ハンドル部3が回動範囲の中間位置Pmと開位置Poとの間に位置するとき、台座側磁石70とハンドル側磁石71の磁力の吸引力により、ハンドル部3を開方向Do(開位置Po)へ向って付勢することができる。また、ハンドル部3が中間位置Pmと閉位置Pcとの間に位置するとき、同じく磁力の吸引力により、ハンドル部3を閉方向Dc(閉位置Pc)へ向って付勢することができ、ハンドル部3が開方向Doへ向かって付勢されることがないので、扉101の自然開放を防止することができる。
また、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するときには、台座側磁石70とハンドル側磁石71との吸着力によりハンドル部3を閉位置Pcに固定することができ、ハンドル部3が開位置Poに位置するときには、同吸着力によりハンドル部3を開位置Poに固定することができる。そのため、扉101を開閉させようとして、ハンドル部3を開位置Poへ一端移動させた後は、ハンドル部3は開位置Poに留まり、ローラー部37bが扉101の戸先から突出していない状態が維持されるので、扉101の開閉の際に、ローラー締り部37が、操作者の衣服等を引っ掛けたり、枠体102へ衝突することがなく、操作性を向上させるとともに、ローラー締り部37や枠体102の破損を防止することができる。
このように、本発明に係る扉開閉用ハンドル100は、ばね等の付勢部材ではなく磁力を用いるという簡易な構成で、開位置Po側に位置するハンドル部3を開方向Doへ向けて付勢しつつ開位置Poに固定し、閉位置Pc側に位置するハンドル部3を閉方向Dcへ向けて付勢しつつ閉位置Pcに固定することができるので、製造コストの低減を図りつつ、ハンドル部3の開方向Doおよび閉方向Dcへの付勢力が維持されるので、メンテナンスが容易になる。
ハンドル部3が回動範囲の中間位置Pmに位置するときには、台座側磁石70とハンドル側磁石71は同じ磁極同士で対向しており、磁力の反発力によりハンドル部3が中間位置Pmに留まることができない。また、中間位置Pmで作用する反発力により、ハンドル部3が中間位置Pmと開位置Poとの間に位置するときにはハンドル部3を開方向Do(開位置Po)側へ、ハンドル部3が中間位置Pmと閉位置Pcとの間に位置するときにはハンドル部3を閉方向Dc(閉位置Pc)側へ、それぞれ付勢することができる。
ハンドル側磁石71は、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するとき、台座側磁石70と完全には一致して対向しておらず、ハンドル側磁石71と中間位置Pmにおいて対向する台座側磁石70寄りに所定角度θずれ、台座側磁石70と異なる磁極同士で一部が対向するように配置されている。そのため、閉位置Pcに位置するハンドル部3には、台座側磁石70とハンドル側磁石71との吸引力および反発力の両方が作用し、ハンドル部3をさらに閉方向Dc側に付勢することができるとともに、台座側磁石70とハンドル側磁石71との吸着力でハンドル部3を閉位置Pcへ固定することができる。
一方、ハンドル側磁石71は、ハンドル部3が開位置Poに位置するとき、台座側磁石70と完全には一致して対向しておらず、ハンドル側磁石71が中間位置Pmにおいて対向する台座側磁石70寄りに所定角度θずれ、台座側磁石70と異なる磁極同士で一部が対向するように配置されている。そのため、開位置Poに位置するハンドル部3には、台座側磁石70とハンドル側磁石71との吸引力および反発力の両方が作用し、ハンドル部3をさらに開方向Do側に付勢することができるとともに、台座側磁石70とハンドル側磁石71との吸着力によりハンドル部3を開位置Poへと固定することができる。
台座側磁石70とハンドル側磁石71は、軸部2の軸中心X2を中心に等角度間隔βで仮想円Cの円周の全周に亘ってそれぞれ配置されるため、ハンドル部3に作用する吸着力(吸引力)と反発力を、軸部2の軸中心X2を中心として仮想円Cの円周の全周に亘ってバランスよく配分することができる。
また、軸部2は、図4に示されるように、軸挿入孔16に挿入されて、キー溝40に挿入される第1キー部42と第2キー部43とを備えた固定部材4により、基台部10に対して回動不能に固定されている。軸挿入孔16の内周面の一部および該一部に対向する軸部2の外周面の一部に形成されたキー溝40に、傾斜面42a,43a同士が当接した状態で第1キー部42と第2キー部43とが挿入されている。そして、第2キー部43は、第1キー部42に雄ねじ部材44(押圧部材)で押圧されている。そのため、第2キー部43は第1キー部42に対して傾斜面43aに沿って傾斜方向に摺動されたずれた状態でキー溝40に押圧されて、軸部2を、第1キー部42、第2キー部43および雄ねじ部材44から構成される固定部材4により、台座1にガタつきなく強固に回動不能に固定することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る扉開閉用ハンドル200について、図17ないし図21に基づいて説明する。
第2の実施の形態の扉開閉用ハンドル200が第1の実施の形態の扉開閉用ハンドル100と異なる点は、第1の実施形態における台座側磁石取付け凹部15a、保護プレート取付溝15b、ハンドル側磁石取付け凹部31a、保護プレート取付溝31b、台座側磁石70、ハンドル側磁石71の配置、および台座側保護プレート50、ハンドル側保護プレートの51形状と、第2の実施形態における台座側磁石取付け凹部115a、保護プレート取付溝115b、ハンドル側磁石取付け凹部131a、保護プレート取付溝131b、台座側磁石170およびハンドル側磁石171の配置、および台座側保護プレート150、ハンドル側保護プレート151の形状とである。他の構成は第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同じ部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
図17に示されるように、台座1の座面115には、座面115から台座1の取付面11側に向って円柱状に凹む座面側磁石取付け凹部115aが、軸挿入孔116の中心X1(すなわち、軸部2の軸中心X2)を中心とする仮想円Cの円周上に、隣接する座面側磁石取付け凹部115a同士が所定の角度間隔β(本実施の形態では36度)となるように6か所、正面視Dの字状の台座1の長い直線側に向って凸となる半円状に偏るようにして設けられている。さらに台座側磁石取付け凹部115aのそれぞれを連結するように保護プレート取付溝115bが設けられている。保護プレート取付溝15bの深さは、台座側保護プレート150の厚さと同じになっている。
各座面側磁石取付け凹部115aには、円柱状の台座側磁石170が、隣接する台座側磁石170同士の座面115に現れる磁極を相互に異極として、保護プレート取付溝115bと面一になるように圧入固定されている。すなわち、6個の台座側磁石170は、隣接する台座側磁石170同士の磁極を相互に異極として仮想円Cの円周上に半円状に偏って等角度間隔β(本実施の形態では36度)で配置されている。また、台座側磁石170は、等角度間隔γ(本実施の形態では72度)ごとに磁極が同極となるように配置されている。本実施形態では、台座側磁石170の中心点170cが、仮想円Cの円周上を通るように配置されているが、台座側磁石170の中心点170cが、仮想円Cの円周上を通らなくとも、台座側磁石170の一部が、仮想円Cの円周に重なるように配置すればよい。
台座側保護プレート150は、図19に示されるように、座面側磁石取付け凹部115aに嵌合する磁石保護部150aが形成され、保護プレート取付溝115bに嵌合する連結部150bが形成されている。各磁石取付け凹部115aに、それぞれ台座側磁石170が圧入された後に、台座側保護プレート150が取付られ、台座1の座面115と台座側保護プレート150の表面は面一になり、台座側磁石170の表面は台座側保護プレート150により保護される。
図18に示されるように、ハンドル部3の対向面131には、対向面131からハンドル部3の表面側に向って座面側磁石取付け凹部115aと同一形状に凹むハンドル側磁石取付け凹部131aが、仮想円Cの円周上に、隣接するハンドル側磁石取付け凹部131a同士が等角度間隔β(本実施の形態では36度)で6か所、把持部133の反対側に向って凸となる半円状に偏るようにして設けられている。さらにハンドル側磁石取付け凹部131aのそれぞれを連結するように保護プレート取付溝131bが設けられている。保護プレート取付溝131bの深さは、ハンドル側保護プレート151の厚さと同じになっている。
各磁石取付け凹部131aには、円柱状のハンドル側磁石171が、隣接するハンドル側磁石171同士の対向面131に現れる磁極を相互に異極として、対向面131と面一になるように圧入固定されている。すなわち、6個のハンドル側磁石171は、隣接するハンドル側磁石171同士の磁極を相互に異極として仮想円Cの円周上に半円状に偏って等角度間隔β(本実施の形態では36度)で配置されている。本実施形態では、ハンドル側磁石171の中心点171cが、仮想円Cの円周上を通るように配置されているが、ハンドル側磁石171の中心点171cが、仮想円Cの円周上を通らなくとも、ハンドル側磁石171の一部が、仮想円Cの円周に重なるように配置すればよい。また、ハンドル側磁石171は、等角度間隔γ(本実施の形態では72度)ごとに磁極が同極となるように配置されている。
ハンドル側保護プレート151は、図19に示されるように、台座側保護プレート150と同一形状に形成されており、各磁石保護部151aは連結部151bで連結されている。各磁石取付け凹部131aに、それぞれハンドル側磁石171が圧入された後に、ハンドル側保護プレート151が取付られ、ハンドル部3の対向面131とハンドル側保護プレート151の表面は面一となり、ハンドル側磁石171の表面はハンドル側保護プレート151により保護される。
なお、ハンドル部3の回動範囲は、第1の実施の形態と同じ角度ε(本実施の形態では65度)に規制されている。
次に、ハンドル部3を台座1に組付けた状態における台座側磁石170とハンドル側磁石171の相互の位置関係について図20および図21を用いて説明する。図中、実線がハンドル側磁石171を、破線が台座側磁石170をそれぞれ簡易的に示し、SおよびNの文字は、SがS極を、NがN極をそれぞれ示し、仮想円Cの円周の外側が台座側磁石170の磁極を、内側がハンドル側磁石171の磁極をそれぞれ示している。また、ハンドル側磁石171の位置を明示するため、ハンドル側磁石171の一つに黒丸を付す。
図20に示されるように、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するとき、ハンドル側磁石171aは、台座側磁石170と完全に一致して対向する位置にはなく、台座側磁石170に対して逆方向ACW側(図中、反時計回り方向側)へ所定角度θ(本実施の形態では3.5度)ずれ、台座側磁石170と一部が対向するように配置されている。このとき、台座側磁石170とハンドル側磁石171とは、異なる磁極同士で一部が対向しているので、台座側磁石170とハンドル側磁石171との間には磁力による吸引力及び吸着力が作用している。なお、第1の実施の形態とは異なり、正方向CW側の端に位置するハンドル側磁石171および逆方向ACW側の端に位置する台座側磁石170には、それぞれ対向する台座側磁石170,ハンドル側磁石171がなく、吸引および吸着には寄与していない。
次に、図示はしないが、ハンドル部3が閉位置Pcと開位置Poの中間の中間位置Pmに位置するとき、台座側磁石170とハンドル側磁石171とは、同じ磁極同士で完全に一致するように配置されており、台座側磁石170とハンドル側磁石171との間には磁力による反発力が作用している。
そして、図21に示されるように、ハンドル部3が開位置Poに位置するとき、ハンドル側磁石171は、台座側磁石170と完全に一致して対向する位置にはなく、台座側磁石170に対して正方向CW側(図中、時計回り方向側)へ所定角度θ(本実施の形態では3.5度)ずれて台座側磁石170と一部が対向するように配置されている。このとき、台座側磁石170とハンドル側磁石171とは、異なる磁極同士で一部が対向しているので、台座側磁石170とハンドル側磁石171との間には磁力による吸引力および吸着力が作用している。なお、第1の実施の形態とは異なり、正方向CW側の端に位置する台座側磁石170および逆方向ACW側の端に位置するハンドル側磁石171には、それぞれ対向するハンドル側磁石171,台座側磁石170がなく、吸引および吸着には寄与していない。
このように、第2の実施の形態においては、台座側磁石170とハンドル側磁石171とが各仮想円Cの円周上に半円状に偏って配置されているが、第1の実施の形態と同様に、開位置Poに位置するハンドル部3には、台座側磁石170とハンドル側磁石171との吸着力(吸引力)および反発力の両方が作用し、ハンドル部3を開位置Poに固定するとともに開方向Do側に付勢することができる。また、閉位置Pcに位置するハンドル部3には、台座側磁石170とハンドル側磁石171との吸着力(吸引力)および反発力の両方が作用し、ハンドル部3を閉位置Pcに固定するとともに閉方向Dc側に付勢することができる。
また、本実施の形態においては、第1の実施の形態と比較して使用する台座側磁石170およびハンドル側磁石171の数が減り、扉開閉用ハンドル200の製造コストの低減を図ることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る扉開閉用ハンドル300について、図22ないし図27に基づいて説明する。
第3の実施の形態の扉開閉用ハンドル300が第1の実施の形態の扉開閉用ハンドル100と異なる点は、図22および図23に示されるように、台座側磁石取付け凹部15a、保護プレート取付溝15b、ハンドル側磁石取付け凹部31a、保護プレート取付溝31b、台座側磁石70、ハンドル側磁石71の配置、および台座側保護プレート50、ハンドル側保護プレートの51形状と、第3の実施形態における台座側磁石取付け凹部215a、保護プレート取付溝215b、ハンドル側磁石取付け凹部231a、保護プレート取付溝231b、台座側磁石270およびハンドル側磁石271の配置、および台座側保護プレート250、ハンドル側保護プレートの251形状とである。他の構成は第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同じ部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
第3の実施形態の扉開閉用ハンドル300では、図22に示されるように、台座側磁石270の磁石が、台座1の座面215の仮想円Cの円周上に、隣接する台座側磁石270同士の座面215に現れる磁極がN極とS極とが交互になるように配設されている。台座側磁石270のうち座面215側がN極となるN極台座側磁石270nは、その中心点Nc1が、仮想円Cよりも半径が大きい第1仮想円C1の円周上になるように配置されている。さらに台座側磁石270のうち座面215側がS極となるS極台座側磁石270sは、その中心点Sc1が、仮想円Cよりも半径が小さい第2仮想円C2の円周上になるように配置されている。N極台座側磁石270nと、S極台座側磁石270sは、それぞれの中心点Nc1,Ns1が異なる仮想円C1、C2上に配置されているが、N極台座側磁石270nおよびS極台座側磁石270sのいずれかの部分が仮想円Cの円周上に重なるように配置されている。台座側磁石取付け凹部215aは、N極台座側磁石270nとS極台座側磁石270sの配置に準じて配置されており、台座側磁石取付け凹部215aのそれぞれを連結するように、保護プレート取付溝215bが設けられている。
さらに、各台座側磁石270は、実施例1のように角度間隔βの等角度間隔では配置されておらず、図21に示されるように、δ1、δ2の異なる角度間隔で、δ1、δ2、δ2、δ1、δ1…の角度間隔の順で配置されている。本実施形態では、δ1とδ2を加算すると90度の角度になるように設定されている。
台座側保護プレート150は、図24に示されるように、座面側磁石取付け凹部215aに嵌合する磁石保護部250aが形成され、保護プレート取付溝215bに嵌合する連結部250bが形成されている。各磁石取付け凹部215aに、それぞれ台座側磁石270が圧入された後に、台座側保護プレート250が取付られ、台座1の座面215と台座側保護プレート250の表面は面一になり、台座側磁石270の表面は台座側保護プレート250により保護される。
また、図23に示されるように、ハンドル側磁石271の磁石が、ハンドル201の対向面231の仮想円Cの円周上に、隣接するハンドル側磁石371同士の対向面231に現れる磁極がN極とS極とが交互になるように配設されている。ハンドル側磁石271のうち対向面231側がN極となるN極ハンドル側磁石271nは、その中心点Nc2が、仮想円Cよりも半径が大きい第1仮想円C1の円周上になるように配置されている。さらにハンドル側磁石271のうち対向面231側がS極となるS極ハンドル側磁石271sは、その中心点Sc2が、仮想円Cよりも半径が小さい第2仮想円C2の円周上になるように配置されている。N極ハンドル側磁石271nと、S極ハンドル側磁石271sは、それぞれの中心点Nc2,Ns2が異なる仮想円C1、C2上に配置されているが、N極ハンドル側磁石271nおよびS極ハンドル側磁石271sのいずれかの部分が仮想円Cの円周上に重なるように配置されている。ハンドル側磁石取付け凹部231aは、N極ハンドル側磁石271nとS極ハンドル側磁石271sの配置に準じて配置されている。
さらに、各ハンドル側磁石271は、実施例1のように角度間隔βの等角度間隔では配置されておらず、図22に示されるように、β1、β2の角度間隔で、β1、β2、β2、β1、β1…の角度間隔の順で配置されている。本実施形態では、β1とβ2を加算すると90度の角度になるように設定されている。
なお、ハンドル部300の回動範囲は、第1の実施の形態と同じ角度ε(本実施の形態では65度)に規制されている。
次に、ハンドル部300を台座1に組付けた状態における台座側磁石270とハンドル側磁石271の相互の位置関係について図25ないし図27を用いて説明する。図中、太線がハンドル側磁石271を、細線が台座側磁石270をそれぞれ簡易的に示し、SおよびNの文字は、SがS極を、NがN極をそれぞれ示し、大文字が台座側磁石270の磁極を、小文字がハンドル側磁石271の磁極をそれぞれ示している。また、S極ハンドル側磁石271sおよびN極ハンドル側磁石271nの位置を明示するため、S極ハンドル側磁石271sおよびN極ハンドル側磁石271nのうちそれぞれ一つずつ黒丸を付す。
図25に示されるように、ハンドル部3が閉位置Pcに位置するとき、S極ハンドル側磁石271sおよびN極ハンドル側磁石271nは、それぞれN極台座側磁石270nとS極台座側磁石270sと完全に一致して対向する位置にはなく、台座側磁石270に対して逆方向のACW側(図中、反時計回り方向側)へそれぞれ異なる所定角度ずれ、台座側磁石270と一部が対向するように配置されている。このとき、台座側磁石270とハンドル側磁石271とは、異なる磁極同士で一部が対向しているので、台座側磁石270とハンドル側磁石271との間には磁力による吸引力及び吸着力が作用している。
次に、図26に示されるように、ハンドル部3が閉位置Pcと開位置Poの中間の中間位置Pmに位置するとき、台座側磁石270とハンドル側磁石271とは、S極同士のS極台座側磁石270sとS極ハンドル側磁石271sとは完全に一致して重なっており、一方、N極同士のN極台座側磁石270nとN極ハンドル側磁石271nとは、その一部が重なるようになっており、台座側磁石270とハンドル側磁石271との間には磁力による反発力が作用している。
そして、図27に示されるように、ハンドル部3が開位置Poに位置するとき、ハンドル側磁石271は、台座側磁石270と完全に一致して対向する位置にはなく、台座側磁石270に対して正方向CW側(図中、時計回り方向側)へそれぞれ異なる所定角度ずれて台座側磁石270と一部が対向するように配置されている。このとき、台座側磁石270とハンドル側磁石271とは、異なる磁極同士で一部が対向しているので、台座側磁石270とハンドル側磁石271との間には磁力による吸引力および吸着力が作用している。
このように、第3の実施の形態においては、N極台座側磁石270nのおよびN極ハンドル側磁石271nは、それぞれの中心点Nc1,Nc2が第1仮想円C1上に位置するように配置され、S極台座側磁石270sおよびS極ハンドル側磁石271sは、それぞれの中心点Sc1,Sc2が第2仮想円C2上に位置するように配置されているが、N極台座側磁石270n、N極ハンドル側磁石271n、S極台座側磁石270sおよびS極ハンドル側磁石271sはその一部が仮想円C上に位置するように配置されているので、第1の実施の形態と同様に、開位置Poに位置するハンドル部3には、台座側磁石270とハンドル側磁石271との吸着力(吸引力)および反発力の両方が作用し、ハンドル部3を開位置Poに固定するとともに開方向Do側に付勢することができる。また、閉位置Pcに位置するハンドル部3には、台座側磁石270とハンドル側磁石271との吸着力(吸引力)および反発力の両方が作用し、ハンドル部3を閉位置Pcに固定するとともに閉方向Dc側に付勢することができる。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、各実施の形態においては、前記の説明に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
例えば、各実施の形態において、ハンドル部3が開位置Poに位置するときおよび閉位置Pcに位置するときに、ハンドル側磁石71,171を台座側磁石70,170に対して所定角度θずれることなく完全に一致して対向するように構成してもよい。この場合、ハンドル部3の回動範囲は同極となる台座側磁石70,170およびハンドル側磁石71,171,271が配置される角度間隔γと同じ角度εで規制されることとなる。
また、ハンドル部3が開位置Poに位置するときおよび閉位置Pcに位置するときに、ハンドル側磁石71,171,271は台座側磁石70,170,270と完全に一致して対向しなくても少なくとも一部が対向していればよい。
台座側磁石70,170,270とハンドル側磁石71,171,271の形状(大きさ、厚み等)は、必要とする吸着力(吸引力)および反発力(すなわち、磁力)により適宜選定することができる。例えば、台座側磁石70,170,270とハンドル側磁石71,171,271とは、それぞれ異なる形状の磁石を用いてもよい。また、例えば、台座側磁石70,170,270同士およびハンドル側磁石71,171,271同士においても異なる形状の磁石を用いてもよい。これにより、例えば中間位置Pmにおける反発力を高める、閉位置Pcにおける吸着力のみを高める等の仕様の変更を行うことが可能となる。なお、この場合、台座側磁石70,170,270とハンドル側磁石71,171,271は、各々の中心が所定の角度間隔βに位置するように配置される。さらに、台座側磁石70,170,270とハンドル側磁石71,171,271の其々を、開閉動作に必要とされる磁力に応じて、複数個重ねて用いても良い。
台座側磁石70,170,270およびハンドル側磁石71,171,271の数および配置される角度間隔βは、前記した実施の形態に限定されず、必要とされるハンドル部3の回動範囲の角度εに応じて適宜変更することができる。
台座側磁石70,170,270およびハンドル側磁石71,171,271として用いられる永久磁石は、ネオジム磁石に限定されず、例えば、サマリウムコバルト磁石等の他の永久磁石を用いてもよい。
キー溝40およびキー41は、軸部2を台座1に回動不能に固定できればよく、キー溝40を単なる雌ねじ部として形成し、キー41を雌ねじ部に対応する止めねじで構成してもよい。
また、第1キー部42の雌ねじ部42bを第1キー部42ではなく、キー溝40の座面側の端部に設けてもよい。この場合、第1キー部42の雌ねじ部42bは、第2キー部43の円孔43bと同径の円孔に形成すると好適である。
また、軸部2を台座1と一体に形成してもよい。この場合、軸部2は、第2軸部23に相当する部分が座面15,115の中央から座面15,115と直交する方向に延出して形成され、ハンドル部3の抜けを防止するために、フランジ部24を軸部2とは別体に構成して軸部2に取り付けてもよい。
さらにまた、軸部2をハンドル部3と一体に形成してもよい。この場合、軸部2は、第1軸部21に相当する部分がハンドル部3の対向面31,131の中央から対向面31,131と直交する方向に延出して形成される。このような構成によれば、キー溝40や固定部材4は不要となり、軸部2を別体として設ける必要がなく、部品構成を減じることができる。
扉開閉用ハンドル100,200,300は、扉101の屋内面101aではなく屋外面101bに取り付けられてもよく、扉面101aと屋外面101bの両方に取り付けられてもよい。
さらに、本発明の扉開閉用ハンドル100,200,300を、扉101に設けずに、枠体102または枠体102が取り付けられる壁面に設けて、扉101の開閉操作をするようにしてもよい。