JP6509293B2 - 樹脂成形体の破壊箇所の予測方法、及び樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

樹脂成形体の破壊箇所の予測方法、及び樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂成形体の破壊箇所の予測方法、及び樹脂成形体の製造方法に関し、特に、燃料をはじめとする薬品への浸漬による樹脂成形体の破壊箇所の予測方法と、それを基にした、耐薬品性に優れた樹脂成形体の製造方法に関する。
従来から自動車の分野では、車体の軽量化のために、熱可塑性樹脂の射出成形体からなる樹脂成形体によって、金属部品を代替する動きが進められている。熱可塑性樹脂の中でもポリアセタール樹脂は、耐薬品性、特に耐燃料性に優れることから、燃料油と直接接触する部品、例えば燃料ポンプモジュール等に代表される燃料搬送ユニット等の大型部品にも用いられている。
しかし、それらの樹脂成形体を、自動車のように長期間にわたって用いられる製品に用いた場合、樹脂成形体を燃料に長期間にわたって浸漬させたときに割れが発生することで、燃料漏れの原因になることが懸念されている。燃料の浸漬による樹脂成形体の破壊の原因の一つとして、射出成形時に成形体の内部に発生する残留応力が考えられ、その予測及び解析の手法や、対策が求められている。
また、昨今では、バイオディーゼル燃料のように燃料成分が多様化しており、自動車部品用の樹脂成形体では、耐薬品性、特に耐燃料性のさらなる向上が求められている。
このような観点から、例えば特許文献1には、ポリアセタール樹脂と、特定の一般式で表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、脂肪酸カルシウム塩とを含んだポリアセタール樹脂組成物からなる、耐燃料性樹脂成形体が記載されている。
しかし、このような成形体では、樹脂組成物の組成が限定されるため、樹脂の流動性等の制約によって樹脂部品の設計の自由度が低くなる。また、同様の制約によって樹脂の成形条件も限定されるため、樹脂組成物の組成によらない耐薬品性の改善手法が求められていた。
また、特許文献2には、特定の融点を有する結晶性のポリアセタール樹脂組成物を、結晶化度及び自由体積平均直径が特定の範囲となるような条件で成形する、耐薬品性に優れたポリアセタール樹脂成型品が記載されている。
このような結晶性の熱可塑性樹脂は、結晶化によって耐薬品性が有利になると一般的に考えられている。しかしながら、結晶化によって成形時の収縮が促進されることで、成形体の内部の残留応力に対して不利に働く場合があり、結晶化による耐薬品性の向上と残留応力の低減とがトレードオフの関係を有するため、これらを両立させることが困難であった。加えて、このような結晶性の熱可塑性樹脂では、燃料等の薬品の浸漬による、樹脂成形体の破壊の予測及び解析も困難であった。
特開2013−112728号公報 特開2001−278993号公報
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、樹脂組成物の組成によることなく、耐薬品性に優れた樹脂成形体を得る方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、計算機支援工学(CAE)による流動解析と構造解析を組み合わせて、薬品浸漬に伴う破壊箇所を予測し、また、破壊箇所の予測に基づいて成形型における冷却回路等の構造を設計することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 本発明の破壊箇所の予測方法は、樹脂成形体の薬品浸漬による破壊箇所の予測方法であって、前記樹脂成形体を得るときの樹脂の流動解析用モデルを作成し、前記流動解析用モデルを複数の第1領域に要素分割する第1領域準備ステップと、要素分割された前記第1領域の各々について、樹脂の圧力及び温度の状態を基に温度荷重を計算する第1領域温度荷重計算ステップと、前記樹脂成形体の構造解析用モデルを作成し、前記構造解析用モデルを複数の第2領域に要素分割する第2領域準備ステップと、要素分割された前記第2領域の各々の位置に対応する第1領域を選定し、選定された第1領域における温度荷重を前記第2領域の温度荷重として各々設定し、前記第2領域の温度荷重から応力状態を計算する第2領域応力計算ステップと、前記応力状態から求められる破壊発生指標が許容値を超える箇所を破壊発生箇所として特定する破壊発生予測ステップと、を含む、樹脂成形体の破壊箇所の予測方法である。
(2) また、本発明は、前記第1領域温度荷重計算ステップでは、複数の第1領域の各々について圧力及び温度の状態を算出し、前記圧力及び温度の状態を基に、各々の第1領域について、下記式(i)を用いて第1領域の離型直前までの温度荷重(ΔTL1)を計算する、(1)に記載の予測方法である。
(式(i)中、ΔTL1は第1温度荷重[℃]、Mtは冷却水温度[℃]であり、Tは収縮開始時における樹脂の温度[℃]、Pは収縮開始時における樹脂の体積[m]であり、V(Tej、0MPa)は離型時の温度で圧力を掛けていない状態での樹脂の比容積[m/kg]であり、V(T,P)は収縮開始時における樹脂の比容積[m/kg]であり、αは樹脂の体積膨張率[1/℃]である。)
(3) また、本発明は、前記第1領域温度荷重計算ステップでは、複数の第1領域の各々について圧力及び温度の状態を算出し、前記圧力及び温度の状態を基に、各々の第1領域について、下記式(ii)を用いて第1領域の離型後から室温に冷却されるまでの温度荷重(ΔTL2)を計算する、(1)又は(2)に記載の予測方法である。
(式(ii)中、ΔTL2は第2温度荷重[℃]、Rtは室温[℃]、Tejは離型時の温度[℃]である。)
(4) また、本発明は、前記第2領域応力計算ステップでは、各々の第2領域について、設定された前記第2領域の温度荷重を基に、下記式(iii)を用いて前記樹脂成形体の内部における応力分布の計算を行い、下記式(iv)を用いて前記樹脂成形体への薬液の膨潤による応力の計算を行う、(1)から(3)のいずれかに記載の予測方法である。
(式(iii)中、E(t,T)は時間t[s]及び温度T[℃]における弾性率[MPa]、E(T)は規格化定数[MPa]、Eは定数[MPa]、Eiはプローニー級数[MPa]、tは時間[s]、τは緩和時間[s]である。)
(式(iv)中、σは膨潤により発生する応力[MPa]であり、Eは膨潤状態の弾性率[MPa]であり、εは膨潤によるひずみであり、tは時間[s]、Tは温度[℃]、Dは拡散係数[m/h]である。)
(5) また、本発明は、前記式(i)における温度Tとして、樹脂の成形型への充填完了後、樹脂成形体のゲート部が固化する際の温度を設定する、(4)に記載の予測方法である。
(6) また、本発明は、前記破壊発生予測ステップでは、前記膨潤により生じる応力と、前記応力分布から、下記式(v)を用いて前記破壊発生指標を計算する、(4)又は(5)に記載の予測方法である。
(式(v)中、σTOTは破壊発生指標[MPa]であり、σは成形体の内部における主応力[MPa]であり、σoutは外力[MPa]である。)
(7) また、本発明は、樹脂の成形に用いる成形型の設計や成形条件が異なる、複数の仮想成形体モデルを作成し、前記仮想成形体モデルの各々における前記破壊発生指標を比較して、前記破壊発生指標が最も小さくなる仮想成形体モデルを把握する、最適モデル把握ステップをさらに含む、(1)から(6)のいずれかに記載の予測方法である。
(8) また、本発明は、(1)から(7)のいずれかに記載の方法により求められた前記破壊発生指標に基づいて、樹脂の成形に用いる成形型の設計や成形条件を決定する工程を有し、それにより耐薬品性に優れた樹脂成形体を得る、樹脂成形体の製造方法である。
(9) また、本発明は、前記成形型のうち、(1)から(7)のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面した部分における冷却機構を増設するように、前記成形型の設計を決定する、(8)に記載の樹脂成形体の製造方法である。
(10) また、本発明は、前記成形型として冷却水を用いて冷却するものを用い、前記成形型に供給される冷却水の温度を変化させたときにおける、前記破壊箇所に面した部分の温度差が、前記冷却水の温度差の1.2倍以下となるように前記冷却機構を増設する、(9)に記載の樹脂成形体の製造方法である。
(11) また、本発明は、(1)から(7)のいずれかに記載の方法によって予測された前記破壊箇所に面した部分が高熱伝導材料から構成されるように、前記成形型の設計を決定する、(8)から(10)に記載の樹脂成形体の製造方法である。
(12) また、本発明は、前記高熱伝導材料として、100W/m・K以上の熱伝導率の材料を用いるように、前記成形型の設計を決定する、(11)に記載の樹脂成形体の製造方法。
(13) また、本発明は、(1)から(7)のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面したコーナー部の曲率半径Rが0.1mm以上にするように、前記成形型の設計を決定する、(8)から(12)に記載の樹脂成形体の製造方法である。
(14) また、本発明は、(1)から(7)のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面した部分にリブを設けるように、前記成形型の設計を決定する、(8)から(13)に記載の樹脂成形体の製造方法である。
(15) また、本発明は、(1)から(7)のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面した部分の肉厚を増加させるように、前記成形型の設計を決定する、(8)から(14)に記載の樹脂成形体の製造方法である。
本発明によることで、樹脂組成物の組成によることなく、耐薬品性に優れた樹脂成形体を得る方法を提供することができる。特に、本発明によることで、射出成形等によって得られる樹脂成形体において、燃料等の薬品の浸漬による破壊箇所を予測することができ、また、それに基づいて耐薬品性に優れた樹脂成形体を得ることができる。
破壊箇所の予測方法と、耐薬品性に優れる樹脂成形体の製造方法における、具体的態様の一例を示すフローチャートである。 第2領域応力計算ステップにおける具体的態様の一例を示すフローチャートである。 対応第1領域探索ステップにおける対応第1領域の探索の一例を示す概念図である。 対応第1領域探索ステップにおける具体的態様の一例を示すフローチャートである。 一連の解析プログラムを実現するためのハードウェア資源の一例を示す概念図である。 (a)実施例1における流動解析モデルの全体図と、(b)実施例1の流動解析モデルを複数の第1領域に要素分割した後の形状を示す斜視図である。 実施例1の第1領域における圧力の分布を示す断面斜視図である。 実施例1の第1領域における温度の分布を示す断面斜視図である。 実施例1の構造解析モデルを、複数の第2領域に要素分割した後の形状を示す斜視図である。 実施例1の第2領域における温度荷重の分布を示す断面斜視図である。 実施例1の第2領域におけるSigned Von Mizes応力分布を示す断面斜視図である。 実施例1の第2領域における、薬液の浸透による膨張から生じた応力の分布を示す(a)斜視図と、(b)コネクタ部分(点線部分)の要部斜視図である。 実施例1の第2領域における、破壊発生指標σTOTの分布を示す(a)斜視図と、(b)コネクタ部分(点線部分)の要部斜視図である。 実施例2の第2領域における、温度荷重の分布を示す断面斜視図である。 実施例2の第2領域における、Signed Von Mizes応力分布を示す断面斜視図である。 実施例2の第2領域における、薬液浸透による膨張から生じた応力の分布を示す(a)斜視図と、(b)コネクタ部分(点線部分)の要部斜視図である。 実施例2の第2領域における破壊発生指標σTOTの分布を示す(a)斜視図と、(b)コネクタ部分(点線部分)の要部斜視図である。 実施例3の第2領域における破壊発生指標σTOTの分布を示す(a)斜視図と、(b)コネクタ部分(点線部分)の要部斜視図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<破壊箇所の予測方法、及び耐薬品性に優れる樹脂成形体の製造方法>
本発明に係る破壊箇所の予測方法は、複数の第1領域に要素分割された樹脂成形体の流動解析用モデルを準備する第1領域準備ステップS1と、要素分割された複数の第1領域の各々について温度・圧力状態から温度荷重を算出する第1領域温度荷重計算ステップS2と、複数の第2領域に要素分割された構造解析用モデルを準備する第2領域準備ステップS3と、第2領域に対応する第1領域の情報を用いて構造解析を行うことで第2領域の応力分布を求める第2領域応力計算ステップS4と、応力分布をもとに破壊発生指標σTOTの分布を計算し、破壊発生箇所の特定を行う破壊発生予測ステップS5と、を含む。この破壊箇所の予測方法は、複数の仮想成形体モデルの結果を比較して最適な成形型の設計や成形条件を把握する最適モデル把握ステップS6を含んでもよい。
また、本発明に係る樹脂成形体の製造方法は、上述のステップS1〜S6によって特定した破壊発生箇所や、把握した最適モデルを考慮して、樹脂成形体の耐薬品性を改良する樹脂成形体改良ステップS7を含む。
図1は、燃料等の薬品の浸漬による、樹脂成形体の破壊箇所の予測方法と、それを用いた耐薬品性に優れる樹脂成形体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
〔第1領域準備ステップS1〕
第1領域準備ステップS1では、樹脂成形体の流動解析用モデルを作成し、前記流動解析用モデルを複数の第1領域に要素分割することで、樹脂成形体の流動解析用モデルを準備する。より具体的に、第1領域準備ステップS1は、樹脂成形体の流動解析用モデルを作成するステップS11と、作成した流動解析用モデルを、複数の第1領域に分割するステップS12と、を有する。
樹脂を成形する際の成形型内部での樹脂の挙動を予測するにあたっては、成形型の内部における、樹脂の圧力及び温度の状態を把握する必要がある。しかし、圧力センサーや温度センサー等を用いて、樹脂の圧力及び温度の状態を直接的に測定しようとしても、樹脂と成形型との接触面における圧力及び温度の状態が把握されるのみであるため、成形体の内部や肉厚中心部における圧力及び温度の分布を直接的に測定することが困難である。そこで、本発明では、樹脂成形体の流動解析用モデルについて要素分割を行い、要素分割された複数の領域の各々について、樹脂の流動解析を行うことで、成形型の内部における樹脂の圧力や温度の状態についてもシミュレーションを行う。
第1領域準備ステップS1において行う流動解析の手法としては、特に限定されるものでなく、例えば、有限要素法を用いた流動解析等が挙げられる。有限要素法を用いた流動解析によって配向状態の情報を取得する場合、異方性樹脂成形体の肉厚方向に対し、5分割以上で要素分割することが好ましい。要素分割の程度が4分割より多くすることで、肉厚方向の繊維配向が平均化され難くなるため、構造解析の精度を低下し難くすることができる。
また、流動解析の精度を高めるため、成形型のゲート、ランナー、キャビティ部、冷却配管、パーティングライン、入れ駒部等の金型分割、ガスベントについてもモデル化し、流動解析モデルに組み入れることが好ましい。
第1領域準備ステップS1における流動解析用モデルの作成と、流動解析用モデルの要素分割を行う手法は、特に限定されるものでない。一例として、後述する流動解析用要素分割プログラム41Aを用いて行うことができる。より具体的には、まず、CAD(Computer−Aided Design)インタフェース等を利用して樹脂成形体の形状を後述する情報処理装置に取り込み、又は、CADシステムにより樹脂成形体の形状を作成して情報処理装置の記憶装置に保存し、流動解析用モデルや構造解析用モデルにする範囲を設定する。次いで、要素分割プリプロセッサ等で流動解析用要素分割プログラム41Aを行い、有限要素法等の要素分割を行うことで、樹脂成形体の形状を複数の領域に分割する手法を用いることができる。
要素の形状は特に限定されるものでなく、四面体1次要素、四面体2次要素、六面体1次要素、六面体2次要素等を選択することができ、有限要素法ソフトウェアの仕様、計算するコンピュータシステムの仕様、計算コスト等に応じて適宜選択すればよい。
要素の数も特に限定されるものでないが、要素品質(計算精度)、計算時間等を考慮してソフトウェアの特性に応じ適宜選択すればよい。
〔第1領域温度荷重計算ステップS2〕
第1領域温度荷重計算ステップS2では、要素分割された第1領域の各々における温度・圧力状態から、第1領域の温度荷重ΔTL1、ΔTL2を算出する。より具体的に、第1領域温度荷重計算ステップS2は、第1領域の各々について、所定時間ごとの圧力及び温度の状態をシミュレートするステップS21と、シミュレートによって得られた第1領域の圧力及び温度の状態を基に、樹脂成形体の収縮量を温度に換算して、第1領域の各々における温度荷重ΔTL1、ΔTL2を算出するステップS22と、を有する。
ここで、ステップS21における第1領域の各々についての圧力及び温度の状態のシミュレートは、公知の流動解析ソフトウェアを用いて行うことができ、これらは後述する流動解析・温度荷重計算プログラム41Bに該当する。例えば、AUTODESK社製のAUTODESK SIMULATION MOLDFLOW INSIGHTや、東レエンジニアリング社製の3D TIMON、Core Tech社製のMoldex 3D等を用いることができる。
また、ステップS22における第1領域の温度荷重には、樹脂成形体が離型する前の温度荷重である第1温度荷重ΔTL1と、樹脂成形体が離型した後の温度荷重である第2温度荷重ΔTL2とが含まれるため、それぞれ以下のように計算する。
まず、第1温度荷重ΔTL1は、以下の式(i)により計算することができる。
(式(i)中、ΔTL1は第1温度荷重[℃]、Mtは冷却水温度[℃]であり、Tは収縮開始時における樹脂の温度[℃]、Pは前記収縮開始時における樹脂の体積[m]であり、V(Tej、0MPa)は離型時の温度で圧力を掛けていない状態での樹脂の比容積[m/kg]であり、V(T,P)は前記収縮開始時における樹脂の比容積[m/kg]であり、αは樹脂の体積膨張率[1/℃]である。)
また、第2温度荷重ΔTL2は、以下の式(ii)により計算することができる。
(式(ii)中、ΔTL2は第2温度荷重[℃]、Rtは室温[℃]、Tejは離型時の温度[℃]である。)
これらの第1温度荷重ΔTL1及び第2温度荷重ΔTL2の算出も、ステップS21と同様の流動解析ソフトウェアを用いて行うことができる。
なお、本明細書における「収縮開始時」は、樹脂成形体と成形型のゲートとが接する箇所の温度をもとに決定することができる。より具体的には、要素分割された第1領域のうち、ゲートに接する部分(ゲート部)の温度のシミュレーション値で近似することができる。そして、この「収縮開始時」における樹脂の温度としては、樹脂成形体のゲート部が固化する際の温度を設定することができる。例えば、樹脂成形体を構成する樹脂が主として結晶性樹脂である場合は、ゲート部の温度のシミュレーション値が樹脂の結晶化温度以下に達する時点を「収縮開始時」とすることができ、樹脂成形体を構成する樹脂が主として非晶性樹脂である場合は、ゲート部の温度のシミュレーション値が樹脂のガラス転移温度(Tg)以下に達する時点を「収縮開始時」とすることができる。他方で、成形型のゲートを流通する樹脂の温度について、熱電対等を用いて直接的に測定した値を、樹脂成形体と成形型のゲートとが接する箇所の温度としてもよい。
〔第2領域準備ステップS3〕
第2領域準備ステップS3では、第1領域準備ステップS1で準備した流動解析用モデルとは別に、樹脂成形体の構造解析用モデルを作成し、この構造解析用モデルを複数の第2領域に要素分割することで、樹脂成形体の構造解析用モデルを準備する。より具体的に、第2領域準備ステップS3は、樹脂成形体の構造解析用モデルを作成するステップS31と、作成した構造解析用モデルを、複数の第2領域に分割するステップS32と、を有する。
第2領域準備ステップS3における構造解析用モデルの作成と、構造解析用モデルの要素分割を行う手法は、特に限定されるものでない。一例として、後述する構造解析用要素分割プログラム41Cを用いて行うことができるが、第1領域準備ステップS1における構造解析用モデルの作成及び要素分割と同様の手法を用いてもよい。他方で、流動解析用モデルを構造解析用の計算に用いた場合、プログラムが構造解析用の計算に対応しなくなる場合があるほか、要素数が多くなることで計算コストが掛かり、また、計算用に要素品質が悪いモデルを作成する必要があること等によって解析精度が劣る原因になりうる。そのため、流動解析用モデルとは別に、構造解析用モデルを用いることが好ましい。
なお、第2領域準備ステップS3は、第1領域準備ステップS1や第1領域温度荷重計算ステップS2の前に行ってもよいし、第1領域準備ステップS1や第1領域温度荷重計算ステップS2の後に行ってもよいし、第1領域準備ステップS1や第1領域温度荷重計算ステップS2と並行して行ってもよい。
〔第2領域応力計算ステップS4〕
図2は、第2領域応力計算ステップS4の一例を示すフローチャートである。第2領域応力計算ステップS4は、第1領域温度荷重計算ステップS2において求められた第1領域の温度荷重ΔTL1、ΔTL2から、第2領域に生じている応力状態を計算するステップである。具体的には、要素分割された複数の第2領域の各々について、第2領域から最も近い第1領域を探索する対応第1領域探索ステップS41と、対応第1領域探索ステップS41で最も近いとされた第1領域における温度荷重を、各々の第2領域の温度荷重として設定する第2領域温度荷重設定ステップS42と、複数の第2領域の各々について、第2領域の温度荷重の状態を基に、粘弾性情報を考慮して構造解析を実施し、成形体の内部における応力分布を計算する内部応力計算ステップS43と、樹脂成形体への薬液浸透による膨潤から生じる応力を計算する膨潤応力計算ステップS44と、を有する。
[対応第1領域探索ステップS41]
対応第1領域探索ステップS41では、ステップS32で要素分割された構造解析モデルにおける複数の第2領域の各々について、ステップS12で要素分割された流動解析モデルにおける第1領域と比較し、それぞれの第2領域の位置に対応する最も近い位置にある対応第1領域を選定する。
例えば、図3(a)に記載される流動解析用モデルαを、ステップS12でα11〜α44からなる第1領域に要素分割(図3(c))を行い、また、図3(b)に記載される構造解析用モデルβを、ステップS32でβ11〜β44からなる第2領域に要素分割(図3(d))した場合には、第2領域の位置β33に対応する最も近い位置にある対応第1領域α33を、ステップS41で選定することができる(図3(e))。
対応第1領域探索ステップS41の態様は特に限定されるものでないが、例えば図4に示すように、第1領域について第1重心位置を導出する第1重心位置導出ステップS411と、第2領域について第2重心位置を導出する第2重心位置導出ステップS412と、第2領域の第2重心位置から最も近い第1重心位置を有する第1領域を探索し、それを第2領域から最も近い第1領域とする最短第1領域設定ステップS413と、を有する態様を例示できる。
以下、対応第1領域探索ステップS41の具体例について説明する。
(第1重心位置導出ステップS411)
第1重心位置導出ステップS411は、流動解析用モデルを分割するステップS12によって分割された第1領域の要素ごとに、要素を構成する節点の位置から第1重心位置を求めるステップである。
(第2重心位置導出ステップS412)
第2重心位置導出ステップS412は、第1重心位置導出ステップS411と同様に、構造解析用モデルを分割するステップS22によって分割された第2領域の要素ごとに、要素を構成する節点の位置から第2重心位置を求めるステップである。
(最短第1領域設定ステップS413)
最短第1領域設定ステップS413は、第1重心位置導出ステップS411で求めた第1重心位置と、第2重心位置導出ステップS412で求めた第2重心位置とを比較して、流動解析モデルと構造解析モデルを重ね合わせたときに最も近い位置にある、第1重心位置と第2重心位置とを関連付けるステップである。より具体的には、分割された第2領域の要素ごとに、流動解析モデルと構造解析モデルを重ね合わせたときにおける、第1重心位置と第2重心位置との間の距離を計算して、最も近い位置にある第1領域(対応第1領域)として関連付けることができる。
[第2領域温度荷重設定ステップS42]
第2領域温度荷重設定ステップS42は、図2に記載されるように、対応第1領域探索ステップS41の後に行うステップであり、最短第1領域設定ステップS413において第2領域に関連付けられた第1領域における温度荷重を、第2領域の温度荷重として各々設定するステップである。第1領域における温度荷重としては、第1領域温度荷重計算ステップS2において求められた第1領域の温度荷重ΔTL1、ΔTL2を用いる。上述のように、第1重心位置と第2重心位置との間の距離が最も近い位置にある第1領域を対応第1領域として関連付けることで、第1領域準備ステップS1での要素分割が粗く、第1領域の数が第2領域の数より少ない場合であっても、すべての第2領域に対して温度荷重を設定することができる。
この方式に従うことで、要素分割の状態によらずに、第1領域の温度荷重に関する情報を、第2領域に当てはめることができる。第1領域の情報の第2領域への当てはめは、要素の形状関数を用いて情報を補間して求めることもできるが、異なる要素によって分割している場合には情報の補間が困難になり易く、また、構造解析における要素分割や、情報密度に制約が生じる場合があるため、構造解析の精度に影響が及ぶ場合がある。
[内部応力計算ステップS43]
内部応力計算ステップS43は、第2領域の各々について、第2領域温度荷重設定ステップS42で設定された温度荷重の情報を基に、後述する2段階に分け、樹脂の粘弾性情報を考慮して、構造解析用計算プログラムを実行して構造解析計算を行い、成形体の内部における主応力σの分布を求める。
温度荷重からの主応力σの分布の計算は、後述の構造解析用計算プログラム41Dとして、公知の構造解析用計算プログラムを用いることができ、より具体的には、Ansys Inc.社製のANSYS、Dassault Systems S.A社製のABAQUS等を用いることができる。また、以下に記載する構造解析計算の方法によっても求めることができる。
ここで、粘弾性を考慮する構造解析計算は、2段階に分けられる。このうち、第1段階では、第2領域の温度荷重として設定された温度荷重のうちΔTL1を用いて、下記式(iii−a)から離型直後の樹脂成形体の変形状態(変位ベクトル)Uを計算する。拘束条件としては、樹脂成形体をX,Y,Zの3方向で構成される直交座標系で1点をX,Y,Z方向に拘束し、2点目をX,Z方向、3点目をZ方向のみ拘束する。ただし、3点を含む面の法線方向が、直交座標系におけるZ方向に極めて近い場合には、別の点の組み合わせを拘束するか、2点目をX,Y方向、3点目をY方向のみ拘束するようにしてもよい。各拘束点は、それぞれ距離が長くなるように設定する。これは、各点の距離が近い場合に、要素分割の状態によって計算精度が低下する場合があるためである。なお、第1段階での物性としては、静的な温度依存性を考慮した弾性率とポアソン比、線膨張率を各要素に設定する。
(式(iii−a)中、α(T)は温度T[℃]における線膨張率[1/℃]、ΔTL1は第1温度荷重[℃]である。)
また、第2段階では、離型直後の樹脂成形体の変形状態Uを初期の形状として与えた上で、室温に至るまでの内部応力を第2領域の温度荷重として設定された温度荷重のうちΔTL2を用いて計算する。拘束条件としては、第一段階と同様に、樹脂成形体をX,Y,Zの3方向で構成される直交座標系で1点をX,Y,Z方向に拘束し、2点目をX,Z方向、3点目をZ方向のみ拘束する。ただし、3点を含む面の法線方向が直交座標系におけるZ方向に極めて近い場合には、別の点の組み合わせを拘束するか、2点目をX,Y方向、3点目をY方向のみ拘束するようにしてもよい。各拘束点は、それぞれ距離が長くなるように設定する。これは、各点の距離が近い場合に、要素分割の状態によって計算精度が低下する場合があるためである。
第2段階における内部応力の計算は、第2段階での物性として、静的な温度依存性を考慮した弾性率とポアソン比、線膨張率を各要素に設定した上で行う。より具体的には、一般化マクスウェル・モデルに基づいてプローニー級数展開した下記式(iii)を用いて弾性率E(t,T)を計算し、この弾性率E(t,T)から、下記式(iii−b)を用いて、成形体内部における主応力σを計算することができる。
(式(iii)中、E(t,T)は時間t[s]及び温度T[℃]における弾性率[MPa]、E(T)は規格化定数[MPa]、Eは定数[MPa]、Eはプローニー級数[MPa]、tは時間[s]、Tは温度[℃]、τは緩和時間[s]である。)
(式(iii−b)中、σは離型後から室温に至るまでに発生する応力[MPa]であり、E(t,T)は時間t[s]・温度T[℃]における弾性率[MPa]、α(T)は温度T[℃]における線膨張率[1/℃]、ΔTL2は第2温度荷重[℃]である。)
ここで、式(iii)中の各パラメータを求めるには、種々の温度における、応力緩和の測定値あるいは動的粘弾性のデータに基づいてマスターカーブを作成し、少なくとも3水準以上の緩和時間τについてE(T)、E、Eを増減させて得られたE(t,T)と、このマスターカーブとの差が最小になるように設定して求める。
この式(iii)は、一定の温度水準における関係を示しているが、温度が時間や領域によって変化する場合に、弾性率E(t,T)を計算することは容易でない。そこで、温度−時間換算則を用いる。プローニー級数を得る為には、幅広い温度水準で応力緩和を測定し、それを弾性率の時間依存性としてまとめる。温度−時間換算則に従い、ある温度を基準として、時間を増減させ、各温度水準が一つの曲線になるようにあわせた合成曲線を用いることにより、弾性率は温度、時間の関数として求められる。各温度における時間移動量は一般的にシフトファクタと呼ばれ、例えば下記式(iii´)のようにして、シフトファクタaを弾性率E(t,T)の計算式に組み込むことができる。
シフトファクタaを導入する手法については、上記式(iii´)に限定されるものでなく、例えばアレニウス式、William−Landel−Ferry式、Tool−Narayanaswamy式を用いることによっても、温度の関数として表すことができる。このようにシフトファクタaを導入する手法は、構造計算上の扱いが容易になるため、一般的な非線形解析ソフトにも広く採用されている。
式(iii−b)によって得られた、成形体の内部における主応力σは、下記式(iii−c)を用いてSigned Von Mizes応力に換算し、このSigned Von Mizes応力を用いて評価する。
(式(iii−c)中、σsvmはSigned Von Mizes応力[MPa]、σa、σb、σcはそれぞれ、σを最大主応力、中間主応力、最小主応力に分解して表示したもの(σaは最大主応力[MPa]、σbは中間主応力[MPa]、σcは最小主応力[MPa])であり、Sign()は括弧内が正であればSign(σa+σb+σc)=+1、負であればSign(σa+σb+σc)=−1とする。)
成形後の樹脂成形体では、応力(残留応力)の分布状態として、引っ張り応力成分と圧縮応力成分とが混在している場合が多いため、Signed Von Mizes応力分布を評価することで、樹脂成形体における引っ張り応力と圧縮応力の分布状態を、区別して計算することができる。
[膨潤応力計算ステップS44]
また、第2領域の各々について、樹脂成形体の拡散係数Dから、樹脂の粘弾性情報を考慮して、樹脂成形体への薬液浸透による膨潤から生じる応力を計算する。
薬液浸透による膨潤から生じる応力の分布の計算も、後述の構造解析用計算プログラム41Dとして、公知の構造解析用計算プログラムを用いることができ、より具体的には、Ansys Inc.社製のANSYS、Dassault Systems S.A社製のABAQUS等を用いることができる。また、以下に記載する計算方法によっても求めることができる。
ここで、薬液浸透の挙動は、下記式(a)に示されるFickの拡散方程式に従い、樹脂に膨潤した薬液の濃度Cに比例して、寸法が拡大するものとする。
(式(a)中、Cは濃度、Dは拡散係数[m/h]、tは時間[s]、xは位置[m]である。)
このうち、拡散係数Dは、下記式(b)によって求められる。この式における、透過係数P、溶解度係数S、密度ρは、温度、薬液の種類、浸透する樹脂の状態等によって変動する。
(式(b)中、Dは拡散係数[m/h]であり、Pは透過係数(Permeability Constant)[kg・m/h・N]であり、Sは溶解度係数(Solubility Constant)[kg/N・m]であり、ρは密度[kg/m]である。)
Fickの拡散方程式は、ポアソン方程式とも呼ばれ、非定常熱伝導方程式と同形であるため、例えば伝熱解析を行うことで、薬液の拡散に関する挙動を予測できる。より具体的には、薬液の濃度を温度に置き換え、伝熱解析に用いられる比熱と熱伝導率の比率をDに置き換え、且つ、膨潤挙動の時間依存性を測定した結果を膨張挙動の線膨張率に置き換えることにより、簡単な実験と計算によって予測できる。さらに、樹脂の結晶化度が高いほど拡散係数Dは小さくなるため、Fickの拡散方程式を用いることで、樹脂の結晶化度による影響も考慮することができる。
上記の手法により、薬液の濃度が判れば、膨潤量が計算できる。膨潤量は薬液の濃度に比例することが知られているため、薬液による膨潤ひずみとして、下記式(c)により計算できる。
(式(c)中、εは薬液による膨潤ひずみであり、Cは薬液の濃度、Aは薬液浸透度による膨潤係数である。)
次いで、上記式(c)のようにして求める膨潤量を、樹脂部における歪みとして扱った場合、膨潤状態における弾性率Eから、下記式(iv)を用いて、薬液の膨潤により発生する応力σが求められる。
(式(v)中、σは膨潤により発生する応力[MPa]であり、Eは膨潤状態の弾性率[MPa]であり、εは膨潤によるひずみであり、tは時間[s]、Tは温度[℃]、Dは拡散係数[m/h]である。)
〔破壊発生予測ステップS5〕
破壊発生予測ステップS5は、内部応力計算ステップS43と膨潤応力計算ステップS44によって求められる樹脂成形体の応力状態を基に、破壊が予測される箇所を特定するステップである。この破壊発生予測ステップS5は、樹脂成形体の応力状態から破壊発生指標σTOTの分布を計算及び図示する破壊指標計算ステップS51と、破壊発生指標σTOTの分布の図示結果から破壊箇所を評価及び判定する破壊箇所特定ステップS52と、を含んで構成される。
[破壊指標計算ステップS51]
樹脂成形体の内部に生じている主応力σと、薬液の膨潤によって発生する応力σと、外力σout(圧力、荷重、拘束により生じる応力)とを合計した値が、破壊の発生についての指標である破壊発生指標σTOTとなる。具体的には、下記式(v)を用いて計算される。
(式(v)中、σTOTは破壊発生指標[MPa]であり、σは成形体の内部における主応力[MPa]であり、σoutは外力[MPa]である。)
ここで、破壊発生指標σTOTが許容値を超える場合、樹脂成形体に破壊が発生すると予測される。破壊発生指標σTOTの許容値としては、比較的短期での樹脂成形体の破壊については、材料が有する静的破壊強度の大きさを設定することができ、他方で、短期で破壊しない場合はクリープ破壊寿命に基づいて定められ、樹脂の温度や時間によって適宜設定される。
特に、薬液の化学的性質によっては、薬液が分子鎖を切断すること等によって樹脂に劣化が生じる場合がある。この場合における樹脂の劣化は、材料における破壊発生指標σTOTの許容値の低下として考慮することができる。
[破壊箇所特定ステップS52]
上述の破壊指標計算ステップS51において、破壊発生指標σTOTが正の値となった場合、樹脂成形体表面近傍に引っ張りの応力が発生する位置のうち、破壊発生指標σTOTが許容値を超えている位置において、樹脂成形体を薬液(燃料)浸漬したときに破壊が発生することが多い。そのため、第2領域応力計算ステップS4で用いた構造解析用モデルの、要素分割された各第2領域について破壊指標計算ステップS51を行い、破壊発生指標σTOTの分布を求め、σTOTが許容値を超える箇所を把握することで、破壊箇所を特定することができる。
〔最適モデル把握ステップS6〕
最適モデル把握ステップS6は、複数の仮想成形体モデルに基づいて、破壊発生指標σTOTが最も小さくなる仮想成形体モデルを把握するステップである。より具体的には、成形型の設計や成形条件が異なる複数の仮想成形体モデルを作成するステップS61と、それらの仮想成形体モデルの各々について、ステップS1〜S5の解析を行って破壊発生指標σTOTを比較するステップS62と、破壊発生指標σTOTの比較結果から、破壊発生指標σTOTがより小さく、より破壊が発生し難い仮想成形体モデルを把握するステップS63と、を含む。樹脂製品を製造する現場では、射出成形体の成形条件について微調整を行うことがあり、また、製品形状や冷却機構といった成形型の設計の変更がなされることも多い。このとき、複数の仮想成形体モデルでの比較を行っておくことで、成形型の設計や成形条件に変更やバラつきが生じても、実用に適した破壊箇所の予測を、より高い精度で行うことができる。
〔樹脂成形体改良ステップS7〕
樹脂成形体改良ステップS7は、ステップS1〜S5の解析によって予測される破壊発生指標σTOTに基づいて、樹脂成形体の耐薬品性を改良するステップである。樹脂成形体改良ステップS7には、破壊発生予測ステップS5において予測される、樹脂成形体の破壊発生が予測される箇所について、樹脂の成形に用いる成形型の設計や成形条件を最適化する製品設計・成形条件最適化ステップS71や、当該箇所における成形型の冷却構造を最適化する型冷却構造最適化ステップS72、当該箇所における成形型の材質を最適化する型材質最適化ステップS73が挙げられる。
[製品設計・成形条件最適化ステップS71]
このうち、製品設計・成形条件最適化ステップS71では、樹脂の成形に用いる成形型の形状の設計や成形条件の最適化を行う。これにより、製品である樹脂成形体の設計や、成形条件を、破壊の発生し難い条件にすることができる。
成形型の形状の設計を最適化する具体例としては、破壊発生が予測される箇所のコーナー部の曲率半径Rを好ましくは0.1mm以上にし、より好ましくは0.5mm以上にすることが挙げられる。また、成形型にリブ等の補強構造を設けたり、成形型の肉厚を厚くすることも挙げられる。特に、破壊発生が予測される箇所のコーナー部の曲率半径Rを大きくすることで、仮に樹脂成形体と薬品が接触することでクラックが生じたとしても、そのクラックをより小規模なものに抑えることができる。
このとき、他の部品との干渉等によって製品設計に制約が生じることや、成形機の条件設定範囲の上下限等によって製造設備上の制約が生じること、及び、金型構造に起因する熱の蓄積等により、形状変更による破壊発生の対策に限界が生じる場合があり、あるいは逆効果が生じる場合もある。特にそのような場合は、製品設計・成形条件最適化ステップS71と合わせて、又はそれらとは別に、他の樹脂成形体改良ステップS7を行ってもよい。
[型冷却構造最適化ステップS72]
また、型冷却構造最適化ステップS72では、成形型の冷却構造について最適化を行う。より具体的には、成形型のうち、破壊発生予測ステップS5によって予測される樹脂成形体の破壊箇所に面した部分における冷却構造を可能な限り強化し、また製品形状についても必要に応じてリブの削減(リブ間隔の拡大)や薄肉化といった変更を加えることが挙げられる。これにより、成形時の樹脂温度が効率的に調節され、破壊発生指標σTOTが変化するため、破壊発生を低減させることができる。
成形型の冷却構造としては、冷却水路、バッフル管、バブラー管等が挙げられ、これらを破壊発生指標σTOTが高い箇所に増設することで、破壊発生の対策を行うことができる。また、異なる複数の冷却水温度についてCAEによる冷却解析を行った結果に基づき、成形型のうち破壊箇所に面した部分における温度差が、冷却水の温度差の1.2倍以下となるように冷却配管を設計することが好ましい。これにより、冷却水の温度にバラつきがある場合のように、先に述べたような製造設備上の制約があるような場合にも、破壊発生の対策による効果を、安定的に得ることができる。
なお、型冷却構造最適化ステップS72は、それのみで行ってもよいし、他の樹脂成形体改良ステップS7と合わせて行ってもよい。
[型材質最適化ステップS73]
しかしながら、製品形状や金型構造上の制約により、効率的な型冷却構造の最適化は難しい場合もある。そこで、型材質最適化ステップS73では、成形型の材質について最適化を行う。より具体的には、成形型のうち、破壊発生予測ステップS5によって予測される樹脂成形体の破壊箇所に面した部分に、高熱伝導率を有する材料を用いることが挙げられる。これにより、成形型のうち、破壊発生指標σTOTが許容値を超えた箇所の冷却を促進することで破壊発生指標σTOTが変化するため、破壊発生を低減させることができる。また、金型全体を高熱伝導率材料にすることは、耐久性が悪く、コストもかかるため、合理的ではなく、部分的に材質を変えることが、耐久性、コストの観点で合理的である。本発明の方法によれば、金型材質を変更する部分を効率的に予見できるため、型材質の最適化も効率的に行うことができる。
型材質最適化ステップS73において用いられる高熱伝導率材料としては、100W/m・K以上の熱伝導率を有する材料が挙げられ、より具体的には、アルミニウム合金(熱伝導率130W/m・K)、ベリリウム銅(熱伝導率100〜200W/m・K)、等が挙げられる。
特に、型材質最適化ステップS73では、成形型に冷却のための構造物を外付けする必要がなくなるため、樹脂成形体の製品形状が複雑な場合や、成形型におけるアンダーカットやコアピン、ランナー等の他の機構と、冷却構造との干渉が問題となる場合、また、成形型の強度を確保するために冷却機構の増設が困難な場合であっても、破壊発生の対策による効果を、安定的に得ることができる。また、製品形状、金型構造上の制約を受けにくく、解析等による形状最適化前の設計案を忠実に再現しやすいため、金型設計、製造のリードタイムを短縮することが可能になる。
なお、樹脂成形体改良ステップS7を行う際に、あらかじめ前述の最適モデル把握ステップS6を行っておいてもよい。その場合、最適モデル把握ステップS6で得た、より破壊が発生しにくい最適モデルを参照しながら樹脂成形体改良ステップS7を行うことができるため、樹脂成形体改良ステップS7を効率よく行うことができ、また、破壊発生をより確実に低減させることができる。
<耐薬品性に優れる樹脂成形体の製造方法>
樹脂成形体改良ステップS7に従い、射出成形用の成形型を作製し、当該成形型を用いて樹脂組成物の射出成形を行う。樹脂組成物の射出成形の条件は、製造設備上の制約や生産性向上のための成形サイクル等を考慮し、用いる樹脂組成物に応じて適宜設定される。このとき、製品設計・成形条件最適化ステップS71で求めた最適条件を用いることが好ましい。
この製造方法によって得られる樹脂成形体は、耐薬品性に優れる。本発明における耐薬品性としては、燃料に対する耐性が挙げられるが、燃料による耐性の代わりに、酸やアルカリ等の薬品による耐性を評価してもよい。
本発明における耐薬品性の評価手段としては、ストレスクラック試験を用いて、樹脂成形体にクラックが発生するまでの時間を評価する手段が挙げられる。
ここで、ストレスクラック試験は、樹脂成形体に歪又は荷重等の一定の負荷を与えた状態で、薬品を塗布し、滴下し、又は浸漬することによって樹脂成形体と接触させ、樹脂成形体にクラックが発生するまでの時間を評価するものである。樹脂成形体は、実際の使用態様においても、何らかの負荷が加わった状態で薬品に接触しているケースが多いため、ストレスクラック試験は、実際の使用環境に即した試験として広く用いられる。
ストレスクラック試験によってクラックが発生するまでの時間は、43質量%の硫酸水溶液に樹脂成形体を浸漬させた場合で、4時間超が好ましく、10時間超がより好ましく、40時間超がさらに好ましい。クラックが発生するまでの時間が長くなるように成形型を設計及び作製し、その成形型を用いて樹脂組成物の射出成形を行うことで、より耐薬品性に優れた樹脂成形体を得ることができる。
<解析プログラム>
本発明における流動解析用モデル及び構造解析用モデルの要素分割や、第1領域における温度荷重の計算、第2領域の各々の位置に対応する第1領域の選定、温度荷重からの応力状態の計算と破壊発生箇所の特定は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現されることが好ましい。
図5は、一連の解析プログラムを実現するためのハードウェア資源Hの一例を示す。ハードウェア資源Hは、情報処理装置1と、設計者からの各種要求を受け付ける入力装置2と、情報処理装置1が行った解析結果を出力する出力装置3とを備えている。また、情報処理装置1は、LAN(Local Area Network)等のネットワークNWを介して、CAD装置4に接続されている。
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、RAM(Random Access Memory)等により構成される主記憶装置20と、入力装置2及び出力装置3との間でデータ授受を行うI/Oインタフェース30と、ハードディスク等により構成される補助記憶装置40と、ネットワークNWに接続されている装置との間で行うデータ授受の制御を行うネットワークインタフェース(NWインタフェース)50と、を備える。
補助記憶装置40には、上述した一連のステップを情報処理装置1に実行させるための解析プログラム41が格納されている。解析プログラム41は、第1領域準備ステップS1を情報処理装置1に実行させるための流動解析用要素分割プログラム41Aと、第1領域温度荷重計算ステップS2を情報処理装置1に実行させるための流動解析・温度荷重計算プログラム41Bと、第2領域準備ステップS3を情報処理装置1に実行させるための構造解析用要素分割プログラム41Cと、第2領域応力計算ステップS4を情報処理装置1に実行させるための構造解析用計算プログラム41Dと、破壊発生予測ステップS5を情報処理装置1に実行させるための破壊発生箇所特定プログラム41Eと、を含んで構成される。本発明に係る構造解析方法は、CPU10が補助記憶装置40に格納されている解析プログラム41を主記憶装置20にロードして実行することにより実現される。
上記の実施形態では、第1領域準備ステップS1から破壊発生予測ステップS5に至るまでの各ステップは、複数のプログラムが組み合わせられて実行されることで行われているが、これに限られることなく、最初から一体として構築されたプログラムでもよく、また、実行されるコンピュータの形態や規模、設置場所等も限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
〔第1領域準備ステップS1〕
コネクタ部分が高熱伝導材料のアルミ合金(熱伝導率130W/m・K)からなり、他の部分がSUS焼入鋼(HPM38相当、熱伝導率24W/m・K)からなる成形型への射出成形によって作製される、燃料タンク用部品のフランジの形状をCADデータとして作成し、これにランナー、ゲート等を書き加えた流動解析モデルを作成した。このときの流動解析モデルの全体図を図6(a)に示す。この流動解析モデルにおけるコネクタ周囲のコーナー部の曲率半径Rは、0.2mmである。なお、コネクタ部分も含めた全体がSUSからなる成形型に対し、実施例1では、コネクタ部分をアルミ合金としていることにより、樹脂成形体改良ステップS7における、型材質最適化ステップS73(金型材質の高熱伝導率化)がなされた設計となっている。
この流動解析モデルについて、複数の第1領域に要素分割する有限要素分割を行った。
〔第1領域温度荷重計算ステップS2〕
次いで、要素分割された複数の第1領域の各々について、流動解析によって樹脂の温度及び圧力の状態をシミュレートした。ここで、樹脂の流動解析には、流動解析用要素分割プログラムとして、AUTODESK社製のAUTODESK SIMULATION MOLDFLOW INSIGHTを用いた。また、樹脂の流動解析に用いた条件を、以下に示す。
樹脂:非強化ポリオキシメチレン(ポリプラスチックス社製ジュラコン(登録商標)、M90−44)
樹脂の温度:200℃
成形型の温度:80℃
成形型の材質:SUS焼入鋼(HPM38相当、熱伝導率24W/m・K)
成形型のコネクタ部分の材質:アルミ合金(熱伝導率130W/m・K)
射出流量:57.7cm/s
保圧圧力:70MPa
保圧時間:15秒
型への充填完了時からゲート部が固化温度以下になるまでの冷却時間:10秒
要素:四面体1次要素(分割数703040)
流動解析モデルを複数の第1領域に要素分割後した後の形状モデルは図6(b)に示すとおりとなった。また、流動解析によって求められた、第1領域における圧力の分布は図7に示すとおりとなり、また、第1領域における温度の分布は図8に示すとおりとなった。
得られた圧力及び温度の分布から、各1次要素について温度荷重を計算し、1次要素における温度荷重の分布を求めた。
[第2領域準備ステップS3]
流動解析モデルとは別に、樹脂成形体の構造解析のために、燃料タンク用部品のフランジの形状をCADデータとして作成し、これを構造解析モデルとした。この構造解析モデルには、ランナー、ゲート等は含まれていない。また、この構造解析モデルにおけるコネクタ周囲のコーナー部の曲率半径Rは、0.2mmである。
作成した構造解析モデルについて、複数の第2領域に要素分割する有限要素分割を行った。要素分割を行った後の構造解析モデルは、図9に示すとおりとなった。要素としては四面体2次要素を用い、分割数は95870であった。
[第2領域応力計算ステップS4]
第1領域と第2領域の各々について、要素ごとに重心の位置を求め、流動解析モデルと構造解析モデルを重ね合わせたときに、重心位置が最も近い位置にある第1領域と第2領域を関連付けた。そして、第2領域に関連付けられた第1領域の温度荷重を、第2領域の温度荷重として設定した。第2領域における温度荷重の分布は、図10に示すとおりとなった。
次いで、第2領域の各々について、温度荷重に基づいて、Signed Von mizes応力分布を求め、これを成形体の内部における主応力σとした。ここで、Signed Von mizes応力分布の計算には、構造解析用計算プログラムとして、Ansys Inc.社製のANSYSを用いた。得られた主応力σの分布は、図11に示すとおりとなった。
また、第2領域の各々について、上述の構造解析用計算プログラムを用いて、薬液の膨潤により発生する応力σを求めた。得られた応力σの分布は、図12に示すとおりであり、薬液浸透によってコネクタ周囲の応力が高くなっていることがわかった。
[破壊発生予測ステップS5]
得られた主応力σと、薬液の膨潤により発生する応力σと、圧力、荷重、拘束によって生じる外力σoutの合計を求め、これを破壊発生指標σTOTとした。ここで、外力σoutについては、上記の構造解析用計算プログラムによって求めた。得られた破壊発生指標σTOTの分布は、図13に示すとおりであり、コネクタ部周囲のコーナー部において破壊発生指標σTOTが大きいことがわかった。そのため、破壊発生が予測される破壊箇所として、コネクタ部の周囲を特定した。
[樹脂成形体改良ステップS7]
これらのステップS1〜S5の解析によって予測される破壊発生指標σTOTに基づいて、製品である樹脂成形体の設計や成形条件、成形型の材質及び形状、成形型の冷却構造について最適化を行った。
樹脂成形体改良ステップS7の例を、以下の実施例2に示す。
〔実施例2〕
樹脂成形体改良ステップS7として、実施例1の破壊発生予測ステップS5で得られた破壊発生指標σTOTの分布を基に、成形型の形状について最適化を行い、成形型の設計を決定した。破壊箇所として特定されたコネクタの周囲に面したコーナー部の曲率半径Rを1.0mmに変更した以外は、実施例1と同様の成形型を設計し、この設計を基に実施例1と同じ手順で破壊発生指標σTOTの分布を求めた。この成形型を用いたときの第2領域の温度荷重分布は、図14に示すとおりであり、この成形型を用いたときの主応力σの分布は、図15に示すとおりであり、この成形型を用いたときの薬液浸透による応力σの分布は、図16に示すとおりであり、この成形型を用いたときの破壊発生指標σTOTの分布は、図17に示すとおり、コーナー部においてσTOTが最大となっている。
図17に記載されるコネクタ部分の形状を変更した後の破壊発生指標σTOTの分布と、図13に記載されるコネクタ部分の形状を変更する前の破壊発生指標σTOTの分布とを比較することで、コネクタ部分の形状を応力が集中し難い形状に変更したときに、樹脂成形体の破壊発生指標σTOTが小さくなり、樹脂成形体の耐薬品性が改良されることが推察される。具体的には、例えばσTOTの最大値を比較すると、図13に示されるように、コネクタ部分の形状を変更する前のσTOTの最大値は67.7MPaであるのに対し、変更後のσTOTの最大値は41.0MPaに下がっていることが分かる。
〔実施例3〕
樹脂成形体改良ステップS7として、型材質最適化ステップS73における型材質の高熱伝導率化を行っている実施例1とは異なり、成形型のコネクタ部分に熱伝導率の低い型材質を使用した例を示す。コネクタ部分の型材質を、コネクタ部分以外の成形型の材質と同じ、低熱伝導率のSUS焼入鋼(HPM38相当、熱伝導率24W/m・K)に変更した以外は、実施例1と同様の成形型を設計し、この設計を基に実施例1と同じ手順で破壊発生指標σTOTの分布を求めた。すなわち、実施例3ではコネクタ部分を含め金型全体がSUS焼入鋼で作製されたものである。この成形型を用いたときの、第2領域の破壊発生指標σTOTの分布は、図18に示すとおり、コーナー部においてσTOTが最大となっている。
図18に記載されるコネクタ部分の材質を変更した後の破壊発生指標σTOTの分布と、図13に記載されるコネクタ部分の材質を変更する前の破壊発生指標σTOTの分布とを比較することで、コネクタ部分の熱伝導率を低くしたときに、樹脂成形体の破壊発生指標σTOTが大きくなり、樹脂成形体の耐薬品性も変化していることが推察される。具体的には、σTOTの最大値を比較すると、図13に示されるように、コネクタ部分の材質を変更する前のσTOTの最大値は67.7MPaであるのに対し、変更後のσTOTの最大値は78.9MPaに上がっていることが分かる。
[実際の樹脂成形体を用いた耐薬品性の評価]
実施例1〜3で設計した成形型を用いて、樹脂成形体を射出成形によって作製し、硫酸水溶液(23℃、相対湿度(RH)50%の環境下での平衡濃度である、43質量%)に浸漬させた後、23℃、相対湿度(RH)50%で保持し、成形品に大きな破壊(クラック)が発生するまでの時間を計測するとともに、破壊発生箇所を確認し、本発明の方法により予測された破壊の傾向と比較した。また、破壊発生箇所をインクにて染色し、破壊の進展度合い(クラックの貫通の有無)を比較した。
表1に示されるとおり、実施例1〜3において予測された薬品の浸漬に伴う樹脂成形体の破壊の傾向は、いずれも破壊発生箇所がコーナー部で破壊が発生した点、熱伝導率が高い材質を成形型のコネクタ部分に用いた場合(実施例1、2)のクラックが発生するまでの時間が、熱伝導率が低い材質を成形型のコネクタ部分に用いた場合(実施例3)と比べて長くなった点、及び、実施例2において予測された破壊の傾向(σTOTの最大値が最も低く、破壊が起こり難い傾向)が実際の成形品の破壊の傾向(クラックが発生するまでの時間が最も長く、且つクラックの樹脂成形体の貫通もない傾向)と同様に最も有利な結果となった点で一致した。
従って、本発明の方法によれば、薬品浸漬に伴う樹脂成形体の破壊の予測及び、耐薬品性に優れた樹脂成形体の作製が可能であることがわかる。
なお、本発明の方法によって予測される成形品の応力分布をもとに、さらにCAEによる構造解析を行うことで、薬品の浸漬に伴う樹脂成形体の破壊寿命を予測することも可能である。
H ハードウェア資源
1 情報処理装置
2 入力装置
3 出力装置
4 CAD装置
10 CPU
20 主記憶装置
30 I/Oインタフェース
40 補助記憶装置
41 解析プログラム
41A 流動解析用要素分割プログラム
41B 流動解析・温度荷重計算プログラム
41C 構造解析用要素分割プログラム
41D 構造解析用計算プログラム
41E 破壊発生個所特定プログラム
50 ネットワークインタフェース
NW ネットワーク
S1 第1領域準備ステップ
S2 第1領域情報取得ステップ
S3 第2領域準備ステップ
S4 第2領域応力計算ステップ
S41 対応第1領域探索ステップ
S411 第1重心位置導出ステップ
S412 第2重心位置導出ステップ
S413 最短第1領域設定ステップ
S42 第2領域温度荷重設定ステップ
S43 内部応力計算ステップ
S44 膨潤応力計算ステップ
S5 破壊発生予測ステップ
S6 最適モデル把握ステップ
S7 樹脂成形体改良ステップ

Claims (14)

  1. 樹脂成形体の薬品浸漬による破壊箇所の予測方法であって、
    前記樹脂成形体を得るときの樹脂の流動解析用モデルを作成し、前記流動解析用モデルを複数の第1領域に要素分割する第1領域準備ステップと、
    要素分割された前記第1領域の各々について、樹脂の圧力及び温度の状態を基に温度荷重を計算する第1領域温度荷重計算ステップと、
    前記樹脂成形体の構造解析用モデルを作成し、前記構造解析用モデルを複数の第2領域に要素分割する第2領域準備ステップと、
    要素分割された前記第2領域の各々の位置に対応する第1領域を選定し、選定された第1領域における温度荷重を前記第2領域の温度荷重として各々設定し、前記第2領域の温度荷重から応力状態を計算する第2領域応力計算ステップと、
    前記応力状態から求められる破壊発生指標が許容値を超える箇所を破壊発生箇所として特定する破壊発生予測ステップと、
    を含み、
    前記第2領域応力計算ステップでは、各々の第2領域について、
    設定された前記第2領域の温度荷重を基に、下記式(iii)を用いて前記樹脂成形体の内部における応力分布の計算を行い、
    下記式(iv)を用いて前記樹脂成形体への薬液の膨潤による応力の計算を行う、樹脂成形体の破壊箇所の予測方法。
    (式(iii)中、E(t,T)は時間t[s]及び温度T[℃]における弾性率[MPa]、E(T)は規格化定数[MPa]、Eは定数[MPa]、Eはプローニー級数[MPa]、tは時間[s]、τは緩和時間[s]である。)
    (式(iv)中、σは膨潤により発生する応力[MPa]であり、Eは膨潤状態の弾性率[MPa]であり、εは膨潤によるひずみであり、tは時間[s]、Tは温度[℃]、Dは拡散係数[m/h]である。)
  2. 前記第1領域温度荷重計算ステップでは、複数の第1領域の各々について圧力及び温度の状態を算出し、前記圧力及び温度の状態を基に、各々の第1領域について、下記式(i)を用いて第1領域の離型直前までの温度荷重(ΔTL1)を計算する、請求項1に記載の予測方法。
    (式(i)中、ΔTL1は第1温度荷重[℃]、Mtは冷却水温度[℃]であり、Tは収縮開始時における樹脂の温度[℃]、Pは収縮開始時における樹脂の体積[m]であり、V(Tej、0MPa)は離型時の温度で圧力を掛けていない状態での樹脂の比容積[m/kg]であり、V(T,P)は収縮開始時における樹脂の比容積[m/kg]であり、αは樹脂の体積膨張率[1/℃]である。)
  3. 前記第1領域温度荷重計算ステップでは、複数の第1領域の各々について圧力及び温度の状態を算出し、前記圧力及び温度の状態を基に、各々の第1領域について、下記式(ii)を用いて第1領域の離型後から室温に冷却されるまでの温度荷重(ΔTL2)を計算する、請求項1又は2に記載の予測方法。
    (式(ii)中、ΔTL2は第2温度荷重[℃]、Rtは室温[℃]、Tejは離型時の温度[℃]である。)
  4. 前記式(i)における温度Tとして、樹脂の成形型への充填完了後、樹脂成形体のゲート部が固化する際の温度を設定する、請求項1から3のいずれかに記載の予測方法。
  5. 前記破壊発生予測ステップでは、前記膨潤により生じる応力と、前記応力分布から、下記式(v)を用いて前記破壊発生指標を計算する、請求項1から4のいずれかに記載の予測方法。
    (式(v)中、σTOTは破壊発生指標[MPa]であり、σは成形体の内部における主応力[MPa]であり、σoutは外力[MPa]である。)
  6. 樹脂の成形に用いる成形型の設計や成形条件が異なる、複数の仮想成形体モデルを作成し、前記仮想成形体モデルの各々における前記破壊発生指標を比較して、前記破壊発生指標が最も小さくなる仮想成形体モデルを把握する、最適モデル把握ステップをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の予測方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の方法により求められた前記破壊発生指標に基づいて、樹脂の成形に用いる成形型の設計や成形条件を決定する工程を有し、それにより耐薬品性に優れた樹脂成形体を得る、樹脂成形体の製造方法。
  8. 前記成形型のうち、請求項1から6のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面した部分における冷却機構を増設するように、前記成形型の設計を決定する、請求項7に記載の樹脂成形体の製造方法。
  9. 前記成形型として冷却水を用いて冷却するものを用い、
    前記成形型に供給される冷却水の温度を変化させたときにおける、前記破壊箇所に面した部分の温度差が、前記冷却水の温度差の1.2倍以下となるように前記冷却機構を増設する、請求項8に記載の樹脂成形体の製造方法。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の方法によって予測された前記破壊箇所に面した部分が高熱伝導材料から構成されるように、前記成形型の設計を決定する、請求項7から9のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
  11. 前記高熱伝導材料として、100W/m・K以上の熱伝導率の材料を用いるように、前記成形型の設計を決定する、請求項10に記載の樹脂成形体の製造方法。
  12. 請求項1から6のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面したコーナー部の曲率半径Rが0.1mm以上にするように、前記成形型の設計を決定する、請求項7から11のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
  13. 請求項1から6のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面した部分にリブを設けるように、前記成形型の設計を決定する、請求項7から12のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
  14. 請求項1から6のいずれかに記載の方法により予測された前記破壊箇所に面した部分の肉厚を増加させるように、前記成形型の設計を決定する、請求項7から13のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
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